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Full text of "Akutagawa Rynosuke zensh"

影 撮 口 四十 二月 JL 年 ニ和昭 
(て 於 に 抆^等高^^3新) 



Digitized by the Internet Archive 
in 2011 with funding from 
University of Toronto 



http://www.archive.org/details/akutagawarynosuk058800 



























































-リ ;'. 
























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■ 'ト 


ふ 


、v; ^ 







































































































































































































































せ 



大導寺 信輔の 半生 一 

一 :v 

0^0 一 15 



溫泉 だより 八 1!1 

海の ほとり 九 七 

:. 一 一 S 

湖南の 扇 1 二 一 

年末の 一 H 一 四 五 

カ^メン い 一 五 111 



三つの なせ 

春の 夜 …: 

點鬼簿 …: 

悠々 莊 …: 

彼 

彼 笫ニ …: 

玄鶴山 房 : 

S 氣樓 



淺草 公園 一一 一八 一二 

たね子の 憂攀 四 〇 七 

古千屋 四 一七 

冬と 手紙と 四 二 七 

三つの 窓 四五三 

齒車 四 七 一 

閽中 問答 五ニブ 

或 阿呆の 一 生 五 四ん 

或舊 友へ 送る 手記 五八 J 



一 本 所 

ミラ じ しんす ナ う ほんじよ .c; かう ゐん きんじょ かれ きおく G こ う, つ, く, ひち 

道〉 寺 信輒の 生まれた の は 木 所の 囘向院 の 近所だった。 彼の 記憶に 殘 つて ゐる ものに 樊 しい 叫 

クと うつく い: ひと こと かれ いへ あなぐら だいく だ ぐ.^ し- や 

は 一 つもなかった。 美しい 家 も 一 つもなかった〕 殊に 彼の 家の ま はり は穴藏 大工 だの 駄菜子 尾た 

ふる e うぐ e らいへ く めん みち ぬかるみ た いちど - 、 > - 

の 古道具屋 だのば かりだった。 それ 等の 家々 に 面した 道 も 泥濘の 絶えた こと は 一 度 もなかった。 

*ul . みち. つ たけ ぐら お ほどぶ なんきん も う お ほどぶ あくし う な 

おまけに 又 その 道の 突き 當り はお 竹 倉の 大 溝だった。 南京 藻の 浮かんだ 大溝 はいつ も惡臭 を 放つ 

か もちろん 1 .IH ちく ,つうつ かん また ほんじよ いぐ わい t ちノ、 

てゐ た。 後 は 勿論 かう 言 ふ 町々 に 憂 感ぜす に は ゐられ なかった。 しかし 又, 本 i5 以外の i -々 

さら i ふく わ 1 や お ほ や i て はじ こ ぎ れい しゃう てん のき なら え ど でんらい 

は 更に まに は 不快だった" しもた家の多ぃ山の手を始め小綺麗な商もの軒を:^51べた、 江 戶傅來 の 

しヒ まち な こ かれ あつ M く かれ ほんが う. に ほんばし むし V へび ほんじよ ゑ かう &ん . -u£ - せ、 し . 

下町 も 何 か 彼 を壓迎 した。 彼 は 本鄕ゃ 日本 橋よりも 寧ろ 寂しい 本 所 を 11 1^ 向院を 駒 止め 橋 を 

x--fe^ わ ザ す ゐ き ば *15 たけ ぐら お ほどぶ あい Z あるひ あい あはれ ち ふ 

橫鮮 を、 割り 下水 を、 撩の 木馬 場 を、 お 竹 倉の 大溝を 愛した。 それ は 或は 愛よりも 憐 みに 近い も 

し あ.': れ さんじ ふねん 一 こんにち As.r*,\ かれ め け ひ 

2 りだつた かも 知れない。 が、 憐 みだった にもせ よ、 三十 年後の 今日 さへ 時々 彼の 夢に 入る もの は 



生 半の輔 信 寺導大 



未だに それ 等の 場所ば かりで ある …… . 

しんす け ごころ お ぼ た ほんじよ まちく あい な き ほ じ 十な 

信輔 は., > の 心を覺 えてから、 絶えす 本 所の 町々 を 愛した。 並み木 もない 木 所の 町々 はいつ も 砂 

ほこ を さな しんす は し ぜん うつく をし ほんじよ i もく かれ 

埃り に まみれて ゐた。 が、 幼い 信 軸に 自然の 美し さを敎 へたの はや はり, 本 所の 町々 だった。 彼 は 

, - わ,!: らい だ ぐ わし く そだ せう ねん ゐな^ こと す ゐ でん お ほ ほんじよ ひがし 

ごみ ごみした 往來に 駄菜子 を 食って 育った 少年だった。 田舍は 11 殊に 水田の 多い、 木 所の に 

g、 , -ゐ なか、 - い ゾ」 だ >. - かれ す 二 きょうみ あた し ぜん うつ,、 

11 いた 田舍 はかう 言 ふ 育ち かた をした 彼に は 少しも 興味 を與 へなかった。 それ は 自然の 美し さよ 

り も 寧ろ 自然の 醜 さ を 目の あたりに 見せる ばかりだった。 けれども 本 所の 町々 はたと ひ, :iE 然には 

とぼ はな やね くさ みづ ,r つ ± る くも なに IT つく 

乏しかった にもせ よ、 花 をつ けた 屋根の 草 や 水たまりに 映った 春の 雲に, 1: か いぢら しい 美し さ を 

しめ かれ ら うつく ため し ぜん あい だ もっと し ぜん うつく し おい かれ め 

示した。 彼 は それ 等の 美し さの 爲 にいつ か 自然 を 愛し 屮 U した。 . ^も 自然の 美し さに 次第に 彼の:::: 

ひら ほんじよ まち/^ かぎ ほん かれ せう がくじ だ. い なんど ねっしん よ かへ 

を 11 かせた もの は 本 所の 町々 に は 限らなかった。 本 も、 . 1 . 彼の 小學 時代に 何度も 熱心に 請み:. f:! 

, -, -^^ し ぜん じんせい J ん やく し ぜんび ろん もちろん かれ けいはつ かれ し ビん み 

した 花の 「自然と 人生」 や ラボックの 飜譯 「自然美 論」 も 勿論 彼 を啓發 した。 しかし 彼の 自然 を 

め もっと えいき やう あた たし ほんじよ まちく いへ/ \ じゅもく わう らい めう み 卞 に 

る:::: に:: 取 も 影響 を與 へ た の は 確かに 本 所 の 町々 だった。 家々 も 樹木も^ 來も 妙に HfH- ぼらし い 町 

t だった。 . 

じつ いかれ し ぜん み め もっと えい ふ-やう あた み ほんじよ まちく かれ 二う れん ほんしう 

實際彼 の 自然 を 見 る nil に:! 取 も 影 IS を與 へ. た の は 見すぼらし い 本 所 の 町々 だった.〕 彼 は 後年 木 州 



^や 

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聚 

Life や 

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本' 一よ 

へ ひ 

步ぼ 
に 

行い 

つ 

た 



百 さ 

不ほ 

杭う: 
は ひ 



の へ i」TK かい 仏 をした。 が、 ?ね あらしい が の自ぎ は 常に 彼 を 不安に した。 乂 優しい 瀬戶. 

mの^&もーlにiを!iikした。 I は それ 等の 自然よりも 遙 かに 見すぼらしい 自然 を 愛した。 殊 

t う XJ,?,- な = ,き し ぜん あい さんじ ふねん ぜん ほんじよ わ げす- 5 > ii- ぎ 、 ^ 

に のお i のおに かすかに, が 『、ついて ゐる 自然 を 愛した。 三十 年 前の 本 所 は 割り 1^ 水の 柳 を M 

ill のき を、 お! § ぎ 誘 £ を、 11 かう 一 rii の 鬆ぃ さ を まだ f き i して ゐた。 f 

« のお だち の やうに" 曰つ お?、^ iVtc かれなかった。 けれども 毎朝 父と 一 しょに 彼の? 豕の 近: 凡へ 散 

S „ うじ しんす ナ だし お ま かう ふく たかれ とも へ と 

%^に£:った。 それ は 《s 時の 信! i に は 確かに 大きい 幸福だった。 しかし 又 彼の 友 だち の" I に と 

ぼして 聞かせる に は 何か^の ひける 幸福だった。 

お ほ. &は 

大川 

■5- し とく つ し お ほ £ しょ あさ み わた ところ ひとり つ Ti, み- 、 ,, 

の!: 岸で も 特に 釣り師の 多い 場所だった。 しかし その 朝 は 見渡した 所、 一 人 も 釣り^ は 見えた 力 

つた。 1^ い 河岸に は 1^.0 の. 間に 舟蟲の 動いて ゐる ばかりだった。 彼 は 父に ゲ 朝に 限って 釣り師の 

がえぬ 1 を i ねようと した。 が、 まだ 口 を 開かぬ うちに 忽ち その 答を發 見した。 朝燒 けの^ら め 

か,.: なみ ぼ,? ア.? --i し がい ひとり いそくさ み-つく V- つ 一み- ノ, -ら乂 ぺ!^ I ^.fc -0-^^ - - ) > -0 

いた^ ^ に は坊! W 頭の 死骸が 一人、 磯 臭い 水草 や 五味の からんだ 亂 杭の 問に, 漂って ゐた II ^ 

、ま あさ ひやつ にんぐ ひ お V- んじ ふねん まへ ほんじ. i - *サ 、 丄ん才.5 ..^ -ー、--1--^4、.^ 

4 ま: だに ありあり とこ の 朝の 百 本 杭を覺 えて ゐる。 三十 年 前の 本 i€ は 感じ 易ん^ 制の、 もに 他" -數. ^ン 



生 半の 輒 寺 尊大 



つ ゐ おくてき ぶ-つけいぐ わ C こ あさ ひや つぼん ぐ ひ い r ノ. しい ふ ,つに いぐ わ どうじ 4-- た ほんじ n *- ちノ. - 

追憶 的 風景 畫を殘 した。 けれども この 朝の 百 本 杭 は —— この 一枚の 風景 畫. は 同時に 乂本 所の 町々 

な サぃ しんてき いんえい ぜんぶ 

の 投げた 精, m 的 陰影の 全部だった。 

二 牛乳 • 

しんす け ぜんぜん はは ちち す せう ねん ぐわん らいから だ よわ はは ひとつぶだね かれ う 

信輔は 全然 母 の^を 吸った ことのない 少年だった。 元 來體の 弱かった 母 は 一 粒 種の 彼 を 魔んだ 

のち いってき あた う ば やしな * づ かれ いへ .tf いけい で き 

後 さへ、 一滴 の^も 與 へなかった。 のみなら す^ 母 を 養 ふこと も 貧しい 彼の 家の 生計に は 出來な 

さう だん ひと かれ だめ う お とき ぎう にゅう Q そだ & たう じ 

い 相談の 一 つだった。 彼 は その 爲に 生まれ落ちた 時から 牛乳 を 飲んで 育って 來た。 それ は當 時の 

しんす け にく うんめい かれ まいあさ だいどころ く ぎう にゅう ブん けいべつ i たたに し 

信 輔には 憎ます に は ゐられ ぬ 運命だった。 彼 は 毎朝 臺 所へ 來る 牛^の 場を輕 蔑した。 又: E を 知ら 

はは ちち し かれ とも せんば う げん せう がく 二ろ とし わ 力い 

ぬに もせよ、 母 の^だけ は 知って ゐる 彼の 友 だち を 羨望した。 現に 小 學へは ひった •ST 年の おい 

かれ を ば ねんし なに き もち は < だ ちち しんちう うが V やわん 

彼の 叔母 は 年始 か 何 かに 來てゐ るう ちに 軋の 張った の を 苦にし 出した。 ^は 眞鍮の 嗽 ひ 茶碗へ い 

しぱ で こ をば も ゆ なか かれ しん 

くら 絞っても 出て 來 なかった。 叔母 は Eg: を ひそめた まま、 半ば 彼 をから かふ やうに 「信 ちゃんに 

す もら い ぎう にゅう そだ かれ もちろんす し はナ を 

吸って 貰 はう か?」 と 言った。 けれども 牛 裂に 育った 彼 は 勿論 吸 ひかた を 知る 答はなかった。 叔 

ぱ となり こ あなぐら だいく をん な こ かた ち ぶ さ す もら ち ぶ さ も あが はんきう 

母 はとうと う 隣 の 子に 11 穴藏大 ェの 女の子に!: い 乳房 を 吸って 貫った。^ 房 は 盛り 上った 半球 



の -.^ へ 1£ い 靜脈 かがって ゐた。 はにかみ 易い 信輔は たと ひ^ふ こ と は 出來た にもせ よ、.. 叔 

ぎの S など を ふこと は,, ない のに il ひなかった。 が、 それに も 關らす やはり 隣の 女の子 を £ 

んだ。 1 は..' に の だの fij に 筑を吸 はせ る 叔母 を 憎んだ。 この 小 粱們は 彼の 記 惊に直 苦しい 嫉^ 

f かり |_」 して ゐる。 が、 t は その: £ にも 寧の .s;a sexualis は當 時に はじまって ゐ たの かも 知れ 

ない。 …… - 

嶋は 暫^め の?^!^ が^に 1^ の?^ を i らぬ こと を恥ぢ た。 これ は 彼の 秘密だった。 賺 にも 決し 

ン V じ キ, ^ X 1 つし やう ひみつ ひみつ 4: たたう じ かれ あるめい しん と;^ な 

て 知らせる ことの k 來ぬ 彼の J 生の 祕密 だった。 この 祕 ず-は 又當 時の 彼に は. it^ 迷: を も 佇って ゐ 

た。 1 は sii^ かり きい、 き& 味な ほど 瘦 せた 少年だった。 のみなら す はにかみ ぃ丄 にも、 

と す こく や ±0 ちゃう どうき たか せう ねん I てん こ, ひ- - - > て.- に,/;" み/ 厂 ^ 

磨ぎ 澄ました^ 屋の府 丁に さ へ 動 棒の 高まる 少年だった その 點は 11 列にそのir,^伊w;.2l羽,- 

船」に纖ぉ^1」くぐった、 、が- ま^ i の I "に はぎ >」 も修 つかぬ のに^ ひなかった。 彼 はー體 何歳 か 

まこ , if ちち に • ぎう に ゆう ため かくしん J * か,.^" i' は.^ 

らか、 1^ どう 一ず ふ 論理から か、 この 父に 似 つかぬこと を 牛^の 爲と^ 信して ゐた. いや ^の 「的 

いこと を もが^が II と して ゐた。 おし s^i^i とすれば、 ^しで も 弱み をが せた がお 後、 m 

6 のお だち は M のま ILWI^^ してし まふのに 違 ひなかった。 彼 は その 爲 にどう 一 5! ふ 時で も 彼の 友 だ 



生 半の 制 ns 寺 導; c 



てう せん おう てう せん もちろん ひと あろと き たけ ぐら お ほど ふ V を つか と 

ちの 挑 戰に應 じた。 挑戰は 勿論 一 つではなかった。 或 時 はお 竹 倉の 大溝を 械も使 はすに 飛ぶ こと 

あるとき ゑ かう ゐん お ほいて ふ はしご の ほ あるとき 免た かれら ひとり なぐ あ 

だった。 或 時 は囘向 院の大 銀杏へ 梯子 も かけすに 登る ことだった。 或 時 は 又 彼等の 一 人と 殿り 合 

けんく わ しんす け お ほど ふ えへ ひざがしら ふる かん 

ひの 喧嘩 をす る ことだった。 信 輔は大 溝 を 前にす ると、 もう 膝頭の 震へ るの を 感じた。 けれども 

め なんきん も う すゐ めん いっしゃ つけん めい を ど こ キ- ようふ し! S ん じゅん 

しっかり 目をつぶった まま、 南京 藻の 浮かんだ 水面 を 一生懸命に 跳り 越えた。 この 恐怖 や 这巡は 

么 かう ゐん お ほいて ふ のぼ とき かれら ひとり ::: ん くわ とき かれ しふら い かれ 

1^ 向 院の大 銀杏へ 登る 時に も、 彼等の 一 人と i" 曄を する 時に もや はり 彼 を襲來 した。 しかし 彼 は 

たび ゆうかん ら せいふく めいしん はつ たし しき くんれん 

その 度に 1- 敢に それ 等 を; 徒 服した。 それ は 迷信に 發 したに もせよ、 確かに スパルタ 式の 訓練 だつ 

しき くんれん かれ みぎ ひざがしら いっしゃう き きす あと のこ おそ かれ せいかく 

た" この スパルタ 式の 訓練 は 彼の 右の 膝頭へ 一生 消えない 傷痕 を殘 した。 恐らく は 彼の 性格へ も、 

しんす け いま ゐ たけ だか ちち こ ごと お ほ き さま いくお くせ なに 

11 信輔は 未だに 威 丈 高に なった 父の 小言 を覺 えて ゐる。 11 r 贵様は 意氣地 もな い^に、. 何 を 

と. -vt がう じ やう 

する 時で も 剛情で いかん。」 

かれ めいしん V- いは ひ しだいき い かれ せいやう し なか すくな かれ めいしん 

しかし 彼の 迷信 は 幸に も 次第に 消えて 行った。 のみなら す 彼 は 西洋史の 屮に少 くと も 彼の 迷::^ 

はんしょう ちか 亍: つけん 口 I 'マ けんこく しゃ ちち あた お ほかみ 

に は 反證に 近い もの を發 見した。 それ は羅 馬の 建國者 1- ミュ ルス に^ を與 へ たもの は 狼で あると 

マ ひつせ つ かれ はは ちち し じ らいいつ そうれいたん ぎう に i5 う そだ 

言 ふ 一節だった。 彼 は 母 の^を 知らぬ ことに 爾來 一層 冷淡に なった。 いや、 牛 A に 育った こと は 

むし かれ ほこ しんす け ちう がく はる とし かれ をち いつ . たう じ をぢ Jrr 

寧ろ 彼の 誇りに なった。 信 輔は中 學へは ひった 春、 年と つた 彼の 叔父と 一し よに、 常 叔父が 經 



えい -ゝ ちゃうい .JC, ぽ 一一 レー V ヌ、 う、 -.-J、.r、 」 、:ね 

營 して ゐた 牧場へ 行った こと を覺 えて ゐる。 殊に やっと 柵の 上へ 制服の 胸 をのし かけた まま、 目 

まへ あゆ よ しろうし ほ く ざ "c は うし かれ かほ み あ し-つ 

の 前へ 歩み寄った 白 牛に 千し 苗ャを やった こと を覺 えて ゐる。 牛 は 彼の 顏を 見上げながら、 li かに 

ほ くさ はな だ れ かほ たが とき うし ひとみ なか V," にんげん 十 * か t 

干し草へ 鼻 を 出した。 彼 は その 顏を 眺めた 時、 ふと この 牛の 隨の屮 に 何に か 人間に 近い もの を感 

くうさう あるひ くうさう し かれ き おく なか -.. ま お ほ しろうし 1 つとう •,: な 

じた。 空想? —— 或は 空想 かも 知れない。 が、 彼の 記憶の 中には 未だに 尤 きい 白 牛が 一 頭、 ^を 

も あんや えだ した さ,、 かれみ あ. なつか 

盛った 杏の 枝の 下に 柵に よった 彼 を 見上げて ゐる。 しみじみと、 懐し さう に。 …… 

三 貧困 

しんす け か てい ま-つ もっと かれら ひんこん むねわりながや ざっきょ 4- りう, S- いき ふ ひんこん 

信輔の 家庭 は 貧しかった。 尤も彼等の貧困は楝割長屋に雜居する下^^^階.赦の食困ではなかった。 

ていさい つくろ ため く つう う ちう りう^ そう ^-.u- ふ ひんこん しょ,, - くわん リ 

が、 體裁を 線ふ爲 により 苦痛 を 受けなければ ならぬ 中流 下辭隙 級の 貧困だった。 退職お 吏だった 

かれ ちち だ せう ちょきん り し のぞ いちねん -*】 ひゃく ゑん .;:: ん きふ ぢ よちう か ぞく- *1 にん くち ,ご ゆ 

彼の 父 は 多少の 貯金の 利子 を 除けば、 一 年に 五 百圓の 恩給に 女屮 とも i 豕族五 人の 口 を 鯛して I;;: か 

だめ もちろん せつ は ん うへ きつけん く は ヌれら 

なければ ならなかった。 その 爲には 勿論 節儉の 上に も 節儉を 加へ なければ ならなかった。 彼等 は 

げんくわん いつま いへ ひ に..! もんが ま いへ .*> あた も-:: 

玄關 とも 五 問の 家に 11 しかも 小さい 庭の ある 門 構への 家に 住んで ゐた。 けれども 新ら しい^ 物 

H--.;^ ひとり :C つた つく ナ, ち つ *5 き や,、 だ あ,、 しゅ ばんしゃ,、 あま はは 

8 など は? S 一人 減 多に 造らなかった。 父 は 常に 客に も 出されぬ 悪!^ の晚 酌に せんじて ゐた。 母 もや 



zM'. の 輔信寺 導 人 



は おり した おひ t しんす は しんす は いま くさ かれ つく ゑ 

はり 羽織の 下に はぎ だらけの 帶を隱 して ゐた。 信輔も 11 信輔は 未だに 二 スの 臭い 彼の 机 を覺ぇ 

つ,、 ゑ ふる か うへ は みどりいろ ら しゃ ぎんいろ ひか ひキ」 だし かなぐ いっけん 

てゐ る。 机 は 古いの を 買った ものの、 上へ 張った 綠 色の 羅紗 も、 銀色に 光った 抽斗の 金具 も 一見 

こ ぎ xiA で き あが じつ ら しゃ うす ひきだし す なほ 

小 綺麗に 出來 上って ゐた。 が、 實は 羅紗 も 薄い し、 柚 斗 も 素直に あいた ことはなかった。 これ は 

かれ つく ゑ かれ いへ しゃう 4 つよう ていさい つ 二ろ かれ いへ せいく わつ しゃう ちょう 

彼の 机よりも 彼の 家の 象徵 だった。 體裁 だけ はいつ も 轄 はなければ ならぬ 彼の 家の 生活の 象微だ 

つた。 …… 

しんす け ひんこん に,、 いま たう じ ぞう を かれ こころ おくそこ け がた はんき やう C こ 

信輔 はこの 貧困 を. 憎んだ。 いや、 今 もな ほ當 時の 憎惡は 彼の 心の奥底に r がし 難い 反響 を ft べして 

かれ ほん か かき がく かう ゆ あた ぐ わいた う き 

ゐる。 彼 は 本 を 買 はれなかった。 夏期 學 校へ も 行かれなかった。 新ら しい 外 _s も、 治られなかった。 

かれ レー も ら じゅよう かれ かれら う L や とき かれら ねた 

が、 彼の 友 だち は いづれ も それ 等 を 受^して ゐた。 彼 は 彼等 を 羨んだ。 時には 彼等 を 妬み さへ し 

しっと せんば う じにん が へん かれら さいのう けい ペリ ため 

た。 しかし その 嫉妬 や 羨望 を 自認す る こと は肯 じなかった。 それ は 彼等の 才能 を輕 蔑して ゐる爲 

ひんこん たい ぞう を す こ ため か は かれ ふるだた み 5 すぐら 

だった。 けれども 貧困に 對 する 憎惡は 少しも その 爲に 變ら なかった、 彼 は古疊 を、 簿ー附 い ランプ 

を、 蔦の 畫の剝 げかかった 唐紙 を、 11 あらゆる 家庭の 見すぼらし さ を 憎んだ。 が、 それ はま だ 

よ かれ ただみ ため かれ う り や 5 しん にく 二と かれ せ ひく は • 

好かった" 彼 は 只 見すぼらし さの 爲に彼 を 生んだ 兩親を 憎んだり 殊に 彼よりも 一!^ の 低い、 頭の^ 

ちち に,、 ちち たび がく かう ほしょうにん くわい. さ しゅっせき しんす ば かれ とも まへ い ちち 

げた 父 を 憎んだ。 父 は 度た び學 校の 保證人 會議に 出席した。 信輔は 彼の 友 だち の 前に かう 言 ふ 父 



^ ケ: どうじ にくしん ちち かれ じ しん こころ いや は ,、に. モ- だ ど っぽ 

を昆 る;.」 と を恥ぢ た。 同時に また 肉 身の 父 を 恥 ぢる彼 自身の 心の 卑し さ を恥ぢ た。 P 木 W 獨ルを 

も う-う. かれ み-つか あざむ き き けいし いちまい い いっせつ G こ 

模— 倣した 彼の 「自ら 欺かざる の 記」 は その 黄ばんだ 紙の 一 枚に かう 言 ふ 一 節を殘 して ゐる。 11 

よ S あ,. あた いな あい あた あら ふぼ ひと あい . ふ-ぼ: ぐ わ, いにん 

「予は 父, を 愛する 能 はす。 否、 愛する 能 はざる に 非す。 父母 その 人 は 愛すれ ども、 父 I?: の 外 兄 

ち 1 あた たち もつ ひと と 二ん し は ところな り いはん ふ ぽ かたち うんぬん しへ." , 

を 愛する 能 はす。 貌を 以て 人 を 取る は 君子の 恥 づる所 也 C 況ゃ父 a: の貌を 云々 する を や e ダ.; れど 

も予 は^ぜに する も 父母の 外お を^す る 能 はす。 」 

け ,el ども か う 言 ふ 見す ぼ らし さよりも 更に 彼の 憎んだ の は 貧困 に 發 した 似,, り だ つた。 母 は 一 厕 

干つ くわし ゃリ しんせき しんもつ なかみ, ふうげつ ど.^ ろ ♦ 丄丄ょ ゾ、. し, や, 

^」 の 菓子 折に つめた カステラ を 親戚に 進物に した" が、 その 中味 は 「風お」 所 か 近所の 某子屋 

ちち > か ちち ま こと きんけん しゃう ふ をし ちち をし 

の カス テラだった。. 父 も、 11 如何に 父は眞 事し やかに 「勤儉 尙武」 を敎 へたで あらう。 父の 敎へ 

ところ ふる いっさつ ぎょく へん ほか かんわ じ て. ん か, ,、 > : ITi やし. 二べ.? 5_ レ、 --: <- J 

た 所に よれば、 古い 一 冊の 玉篇の 外に 漢和 辭典 を 買 ふこと さへ やはり 「ゾ各 侈 文弱」 たった! の 

しんす すじ しん またう そ うそ かさ かな. T す ふ « おと ; ノ ひ/ i つ. ご, 上っ^:^ > -ーヽ 

みならす 信 輒 自身 も 亦 噓に喊 を 重ねる こと は必 しも 父母に 劣らなかった それ は 一 月 五十 錢 の,^ 

う 1 1 っ士ぐ ょナ もら うへ iM に かれう ほん ざ つし 力 ため 力れ 一ん 

i ひ を.! 錢 でも 餘 まに 焚った 上、 何よりも 彼の 娥 ゑて ゐた本 や 雜誌を 買ふ爲 だった。 彼 はつり 錢 

を 慰した ことにしたり、 ノオト. ブック を 買 ふこと にしたり、 學友會 の 會费を 出す ことにしたり- 

つ ..f ふ い こうしつ ふ ぼ きんせん ぬす - ノ-- >ぷ ) * - . > i-^ 

あらゆる 都 か 口の 好い ロ實の もとに 父母の 金 錢を盜 まう とした それでも また 金の 足りない 時 



生 半の 柳 信 寺導大 



11 



り-く りゃう しん くわん しん か よ/、 5; つ こ -っ I" ま あ つく,;., れ ■ k ) -^-^^.^ は, せ 

に は 巧みに 兩 親の 歡心を 買 ひ、 ^月の 小 遣 ひ を 捲き 上げよう とした。 就中 彼に^かった 老年の 母 

こ もちろん かれ かれ じ • しん うそ り や >4NL ん うそ ふく わい , かれ "そ 

に 媚びよう とした。 勿論 彼に は 彼 自身の 嘘も兩 親の 嘘の やうに 不快だった。 しかし 彼 は^をつ い 

だ, リ-ん .f うく わつ うそ . かれ なに さき ひつえう 4f が-. ; : » どう 

た。 大膽に 狡 猜に噓 をつ いた。 それ は 彼に は佝 よりも 先に 必要だった のに 違 ひなかった が R 

b *、.iJ>SJ^ うごき めく わ 一 なに か.^ ころ に ゆく わい あた 卞カ 力れ し 

時に; な 愉快 を、 1 , 例 か祌を 殺す のに 似た 偸 快を與 へたのに も 違 ひなかった。 彼 は 確かに 

てん ふりや-つせ うねん せっきん かれ み-つか あざむ き ッノ いご , いちほい >• い ^0 

この 點 だけ は 不良少年に 接近して ゐた。 彼の 「自ら 欺かざる の 記」 は その 最後の 一 牧 にかう 一 H ヌ數 

ぎ. S うのこ 

I:;: を殘 して ゐ る。 I - 

どつ こ ひ こ ひ い よ ぞう を ;. てろ を ひんこん たい きょぎ 、 

r 獨歩は 戀を戀 すと 首へ り。 予 は憎惡 を憎惡 せん 「こす。 貧困に 對 する, 虚偽に 對 する あらゆる 

ぞう を ぞ う を . 

憎惡を 憎惡 せんとす。 …… 」 

しんす け ちうじ やう かれ ひんこん たい ぞう を にく ^ に, 

これ は 信輔の 衷情だった。 彼 はい つか 貧困に 對 する 憎 惡 そのもの を も 憎んで ゐた。 かう 言 ふ 一 一 

ちゅう わ ろ;が ぞう を はたち まへ . かれ くる もっと た せう かう ふく かれ ぜん ぜ;^ , 

重に 輪 を 描いた IE 惡はー 一十 前の 彼 を 苦しめつ づけた。 尤も 多少の 幸福 は 彼に も 全然ない 跃 ではな 

かれ し ナし だ, S V- ん ばん よ まん せいせき し A 一た あるか きふ ぴ せう ねん もと かれ あい 

かった。 彼 は 試 i4 の 度 ごとに 三番 か m 番の 成績 を. めた。 又 或 下級の 美少年 は 求めす とも 彼に 愛 

しめ ら しんす け どんてん も ひ ひかり ぞう を い かん ひやう かネ 

を 示した。 しかし それ 等 も 信 輔には 暴 天 を; 池れ る 日の 光だった" 憎惡 はどう 一一 H ふ感 _ ^よりも. 彼の 

こころ あつ かれ こころ け がた こんせき CM ; かれ ^ん; 1:^ . ュ 

心を塑 して ゐた。 のみなら すいつか 彼の 心へ 消し 難い 痕跡 を殘 して ゐた。 彼 は 貧 ti£ を脫 した 後 も 



ひし 二ん に 二 どうじ A へた ひんこん お" 力う しゃ !. た/ 

貧困 を 憎ます に は ゐられ なかった つ 同時に 又 貧困と 同じ やうに 豪奢 を も 憎ます に は ゐられ なかつ 

ド A ケしゥ がう しゃ たい ;- てう を ちう りう か そうかい きふ ひんこん あた らくいん クるひ すうりう 

た。 豪奢 を も、 . I - この 豪奢に 對 する 憎惡は 中流 下曆 階級の 貧困の 與 へる 恪 印だった 或は 中流 

か そぅ,^,ぃきふ ひんこん ゝ 、 あた らくいん か れ こんにち かれ じ し, ん なか う を,、 か:^, ) 

下層階級の 食 困 だけの 與 へる 烙印だった。 彼 は 今日 も 彼 自身の 中に この 憎惡を 感じて ゐる この 

ひんこん たた 1 ハ だう とくて きき よ う ふ • 

贫 困と 鬪 はなければ ならぬ Petty Bourgeois の 道德的 恐怖 を。 …… 

•fr やう ど だ V かく そつ 》b ふ あき しんす は はふく わ ざいがくち う あると も .r..i> もん かれら かべ か- らカ -.1 

丁度 大學を 卒業した 秋、 信輔は 法科に 在學 中の 或 友 だち を 訪問した。 彼等 は 壁 も 紙 も 古びた 

*、 ちで ふ ざ しき け-な うしろ かほ だ ろく じ. V せんつ 1 らう じん しんす け ら, 。じん _ ほ 

^疊の 座敷に: 話して ゐた。 その後へ 顏を 出した の は 六十 前後の 老人だった。 輔 はこの 老人の^ 

ち どく らう じん かほ たいしょ C 、わんり ちょく. A く 

に、 I! アル コ オル 中毒の 老人の 顔に 退職 官吏 を直覺 した。 

ぼく 千, ナ.' 

「僕の 父。」 

かれ とも かんたん ら, T じん せう かい らう じん むし がう ぜん しんす け あい V.,? き なが, -, 

彼の 友 だち は簡單 にかう その 老人 を 紹介した。 老人 は 寧ろ 傲然と 信輔の 挨拨を 聞き流した そ 

ぉノ、 まへ -ご いす い たる ほどに- V やく 

れ から 奥へ は ひる 前に T どうぞ 御 ゆっくり。 あすこに 椅子 もあります から」 と 言った。 成程 二 脚 

ひ W- いす くろ えんが ii なら ,ら 二し たか > あ. か , ヽ い〜 > - 1 

の 肘 かけ 椅子 は黑 すんだ 緣 側に: a んでゐ た。 が、 それ 等 は 腰の 高い 赤い クッションの 色の 褪め 

.ー£ せ、 き ぜん ふるい す しんす け !, ぶ-や,、 い す ぜんち,!' りう かそう.; \ ぃ卡ふ かん - -5 どう.^ - i.^ ハれ > .y.^ 

たギ 世紀 前の 古 椅子だった。 信輔 はこの 二 脚の 椅子に 全 中流 下層階級 を 感じた 同時に 乂 彼の.:^ 

2 かれ ちち よ かん い せう じ けん かれ き お/、、 ベる 

1 だち も; i の やうに 父 を 恥 ぢてゐ るの を 感じた。 かう 言 ふ 小事 件 も 彼の 記憶に 苦し: > ほど はっきり 



'ヒ 半の 信 寺導大 



13 



の 二 し さ う こんご かれ こころ ざった いんえい あた し かれ なに さき 

と殘 つて ゐる。 思想 は 今後 も 彼の 心に 雜 多の 陰影 を與 へる かも 知れない。 しかし 彼は佝 よりも 先 

た-しょくく わんり .4- す こ か そうかい きふ ひんこん きょぎ あま ちう り うか そう. A い々 ふ 

に 退職 官吏の- 子だった。 下曆 階級の >贫 困よりも より 虚偽に せんじなければ ならぬ 中流 下 1^ 階級 

ひんこん う にんげん 

の费 困の 生んだ 人 問だった。 

. 四 學校 

« 'く かう 1 たしんす け うすぐら きおく 「二 かれ だいがく ざいがく ちう しゅつ き 

學校も 亦 信 輔には 薄暗い 記憶ば かり 殘 して ゐる。 彼 は 大學に 在 學屮、 ノオト もとらす に 出席し 

-- v/> かう ぎ のぞ い がく かう じゅげ ふ きょうみ かん いちど 

たづ 三の 講義 を 除き さ へ すれば、 どう 言ふ學 校の 授業に も 輿 味 を 感じた こと は 一 度 もなかった" 

ちう がく かぅとぅ^^くかぅ か, つとう がく かう だいがく いく がく かう とほ ぬ ゎづ ひんこん た 一. しゅつ 

が、 中學 から 高等 學校、 高等 學 校から 大學と 幾つかの 學校を 通り 拔 ける こと は 僅かに 貧困 を脫 

ひと きうめ いたい もっと しんす け ちう がくじ だい い じ- i.- つみ;^ ■ ) ID す、 くな 

する たった 一 つの 救命 袋だった。 尤も 信輔 は屮學 時代に はかう 言 ふ 事實を 認めなかった 少 くと 

1ゾ と うがく そつげ ふ ころ ひんこん けふゐ どんてん し. < す:^ 

も はっきりと は 認めなかった. - しかし 屮學を 卒業す る 頃から、 貧困の 脅威 は 暴 天の やうに 信輔の 

-1 二ろ あつ かれ だいがく かう とうが,、 かう とき なんど はいがく けいく わく , ひズ こん 

心を壓 しはじめた。 彼 は 大學ゃ 高等 學 校に ゐる 時、 何度も 廢學 を計畫 した, - けれども この 貧困の 

, ふゐ たび うすぐら しゃう らい しめ リ 1- うさ じっかう ふか のう かれ もちろん がく.^. う にに: : 二. と 

iE 威 は その 度に 薄暗い 將來を 示し、 無造作に 實行を 不可能に した。 彼 は 勿論 學校を 憎んだ。 殊に 

こうそく お ほ ちう がく に: い か もん ゑい ら つば ね こくはく ひびき つた L 力 ヰ 二/、 

拘束の 多い 屮學を 滑んだ。 如, 可に 門衛の 喇叭の 音 は 刻薄な 響 を 傅へ たで あらう 如何に 又 グラウ 



、うう つ いろ し f しんす け そ こ せいやう れきし じ? しん 

ンドの ポプラ ァは 憂鬱な 色に 茂って ゐた であらう。 信輔は 其處に 西洋 歷史 のデ エト を、 赏驗 もせ 

くわ! A く i うて、, し 今 おうべい いっと し ; „ 'ゆうみん すう む よう せう ち-しき な た 

ぬ 化學の 方程式 を、 歐 米の 一都 布の 住民の 數を、 11 あらゆる 無. 用の 小 知識 を學ん だ。 それ は 多 

.45 どりょく かなら す くる し コと む よう せう ち しきい じじつ わす ノ 

少の 努力 さへ すれば、 必 しも 苦しい 仕事ではなかった。 が、 無用の 小 知識と 言 ふ 事 實をも 忘れる 

こんな,; - し にん いへ なか だいいち みづ だいに • 

の は 困難だった。 ドスト H フ ス キイ は 「死人の 家」 の 中に たと へ ば 第 一 のバ ケッの 水 をまづ 第一 一 の 

うつ さら また だ" に みづ だいいち うつい む よう らうえ き し 

バケツへ 移し、 更に 又 第二の バケツの 水 を 第一 の バケツへ 移す と 言 ふやう に、 無 川の 勞役 を强ひ 

しう と じ さつ かた しんす け ねす みいろ かう しゃ なか たけ たか そよ 

られた 囚徒の 自殺す る こと を 語って ゐる。 信輔は 鼠色の 校 舍の屮 に、 —— 丈の 高い ポプラ ァの ig^ 

なか , しう と けいけん せいしんてきく つう けいけん 

ぎの 中に かう 言 ふ 囚徒の 經驗 する 精神的苦痛 を經驗 した。 のみなら す 1 . 

か. e ラ うし 、 もっと にく ちう がく けうし みな-一 じん あくにん 

の みならす 彼の 敎師と 言 ふ も の を 最も 憎んだ の も 中學だ つ た。 敎師 はせ 個人と し て は惡人 で は 

ちが ナ う、 くじ やう せきにん こと せいと しょ, ケっ けんり かれ 

なかった に 違 ひなかった。 しかし 「敎育 上の 責任」 は 11 殊に 生徒 を處 罰する 權利 はおの づ から 彼 

ら 》H うくん かれら かれら へんけん せいと こころ しゅとう ため い か しゅだん えら 

等 を 暴君に した。 彼等 は 彼等の 偏見 を 生徒の 心へ 稱痘 する 爲には 如何なる ザ 段 を も 選ばなかった- 

5; ん かれら ある だるま い あだな えい-, 1 けうし な *^ い き *、 や ,た= ? : : 

現に 彼等の 或 もの は、 11 達磨と 言ふ譁 名の ある 英語の 敎師は 「生 意氣 である」 と 一一 日,. i 爲に 度た ひ 

しんす け たいはい くわ なまい き ; S ゑん ひっき やう しんす け どつ ぼ くわたい よ t , 

信 輔に體 刑 を 課した。 が、 その 「生 意氣 である」 所以 は 畢竟 信 輔の獨 步ゃ花 袋 を 請んで ゐる ことに 

4 まか iv-.. ハれら ある ひだり め ぎ がん 二く- かんぶん け r,.〕VL- - ) ID ) 

1 it ならなかった。 又 彼等の 或 もの は 11 それ は 左 の^に 義服 をした 國; お 漢文の 敎 M だった この 



生 半の 輒信 寺導大 



15 



け, し かれ t~ げぃ キ- やうぎ きよ-りみ よろこ ため なんど しんす け ま、 をん な 

敎師は 彼の 武藝ゃ 競技に 興味の ない こと を 喜ばなかった。 その 爲に 何度も 信輔を 「お前 は 女 か?」 

一 ^ せう しんす け あるときく わつ ひや, し せんせい をと こ ま ぐもん ナ うし もちろん かれ ふ そん 

と 嘲笑した。 信輔は 或時赫 とした 拍子に 、「先生 は sjn じす か?」 と 反問した。 敎師は 勿論 彼の 不遞 

- ^0^^!^ に,:? -,, お > „ -5 ほか かみ き み-つか あ f む き よかへ み 

に嚴 IFt" を!^ せす に は 措かなかった。 その外もう 紙の 黄ばんだ 「自ら 欺かざる の 記」 を 請み 返して 见 

かれ くつ じな く かう む まいきょ がた くら ゐ じそんしん つよ しんす ォ ぢ かれ じ しん */ も 

れぱ、 彼の 屈辱 を 蒙った こと は 牧擧し 難い 位だった。 自尊心の 强 い: lai は 意地に も 彼 自身 を 守る 

爲に、 いつも かう 一 Ik ふ 屈辱 を 反撥し なければ ならなかった。 さもなければ あらゆる 不良少年の や 

カオ じ L ん 力ろ を は かれ じき やう:: つ おうぐ たう ぜん みづか ぁャ」 む 々- 

うに 彼 自身 を輕ん する のに 了る だけだった。 彼 は その 自彊 術の 道具 を當然 Rni ら 欺かざる の 記」 に 

ちと 

求めた。 1 - 

よ うむ あくめ. い お ほ わか さん な 5 

r 予の 蒙れる 惡名は 多 けれども、 分って 三と 爲す こと を 3: べし。 

いつ ぷん じゃくな り ぶんじゃく にくたい ちから せいしん ちから おも . 

「その 一 は 文弱 也。 文弱と は 肉體の 力よりも 精神の 力 を 重ん する を 一一 一: 2 ふ。 

に けいて う ふ はくな り けいて う ふ よく 二う り まか ぴ あ. - 

「その 二 は輕佻 浮薄 也。 輕佻 浮薄と は 功利の 外に 美なる もの を する をず ふ。 

さん がう i ん なり がう まん みだり た まへ じこ しょしん くつ 

^その三は傲t^也。 傲慢と は妄に 他の 前に 自己の 所信 を 屈せざる を 一一 一一 :! ふ。」 

, , , ポ, "M- こと. ごと かれ はくがい わけ かれら ある か ぞく く ほ さ わく わい かれ せう 

し 力し 敎^ も 悉く 彼 を 迫害した 訣 ではなかった。 彼等の 或 もの は 家族 を 加へ た 茶話 會に彼 を 招 

' : 3 i たかれら- ある かれ えいご せう せつ か かれ し, ん,、 ねん そ. -げふ とき い か 

待した。 又 彼等の 或 もの は 彼に 英語の 小說 など を 貸した。 彼 は 叫 學年を 卒業した 時、 かう 言 ふ 借 



り ものの、 が i の^に r 赚だ" 日つ き」 の ss を 見つけ、 歡 喜して 讀んだ こと を覺 えて ゐる。 が、 「敎育 上 

. の 露 te」 は ぁ| に i17」 だ"^ の き" しみ を T 父へ る 妨害 をした〕 それ は 彼等の 好意 を 得る ことに も 

f か«|-の 歡?^ I- ぎび る^し さの i んで ゐる爲 だった。 さもなければ 彼等の 同性愛に 媚びる 醜 さ 

の^んで ゐ る^だった。 « は K§ の? I へ?: ると、 どうしても 自由に 振舞 はれなかった。 のみなら 

す i」 に は Ks^ に の^へ f を したり、 ち^ をした? したりした。 彼等 は 勿論 

この 観の II と^ 斷 いた。 るの も f?^ いだった。 i は IS^MS きのす るお & では 

か は き やうて-". ふるし やしん からだ ふ つりあ ひ あたま お ほ い-た- -っ ■ め、、 ゝ ^N.^^ h. 

ない のに 違 ひなかった。 彼の 筐 底の 古 寫眞は 體と不 吊 合に 頭の 大きい 徒らに21:はカり^^カせた 

^う^くら しい!; f を g して ゐる。 しかも この il! の^いお f は Ik えす ir まった 軟 i を 投げつ け、 

•k ヒ 3 ナ うし なや む じ やう ゆく わい 

- ^の 好、. - 敎師 を惱ま せる こ と を 無上 の 偸 快と して ゐ るの だつ た! 

^嶠 は,^ の ある!^ に I 魁 はいつ も だった: が、 謂 行點 だけ は 一度 も 六點を 上らな か 

- L , すうじ ナ ぅゐん しつ" ちう れ. - やう t じっさい 4 へたに うし さ。 かう くん ^;: て ぶ あば ^ 

つた。 g は 6 とず ふ アラビア 數 字に 敎員窒 中の 冷笑 を 感じた。. 實際乂 敎師の 操 li^ 點を 糊に 彼を啤 

つて ゐ るの は 事 II- だった。 g の 成績 はこの 六 點の爲 にいつ も 三潘を 越えなかった。 彼 はかう 一 百 ふ 

^ ^SFiJ んだ。 かう, ふき、 斷を する ^^を!^ んだ。 おも、 11 いや、 今 はいつ のまに か當 時の 憎 



生 半の 植信 寺導大 



17 



1ヒ わ 115 ナ うがく, A れ あく *し . 

惡を 忘れて ゐる。 屮學は 彼に は惡 夢だった。 けれども だった こと :5| おに も とは^ら な,, 

つた。 彼 は その 爲 に^くと も に堆 へる li い infill た。 さもなければ t 仏の IT 生ぶ- ||み は r= ちょ 

り ももつ と 苦しかった であらう。 f は g の I みつみて ゐ たやう に かのお のち 1 都に なった。 しかし 

カオ あた / ひっき やうら くばく こ ビ く - * - 、 > .r 

彼に 與 へられた もの は畢 竞落寞 とした 孤獨 だった。 この 孤獨 におん じた-巧」 -、 II f が この^お 

に 安ん する より 外に 化かた のない こと を U 刺った; お 一に 一?.!. んの I 曰" i ふり^つ て^れば、 g をお し 

ちう がく かう レゃ むし うつく f ら、 ろ ,-. 'す あ. - - . S 

め た中學 の 校舍は 寧ろ 美し い ,薇 |3 をした 薄 明ぅ り の おに^-は つ て ゐ る。 おい グ ラ ゥ ン ド の ボ プ ラ 

、二 ; J€D か はふ ナ うつ/ \ しげ こす ゑ さび か^ お 7 

ァ たけ は 不相變 々と 茂った 梢に 寂しい 風の ず を 宿しながら。 …… 

五 本 

ほん たい しんす け じ やう:; 5 つ きうが くじ だ. - よじ ノ I. 、 . 

本に 對 する 信 輔の 情熱 は小學 時代 t から 3? つて ゐた。 この Ie 孰 に, g へた もの はお の^^の 

ぎあった 露瑟 ¥ あ S だった。 酵 かり? い 歸は隱 い ランプの とに f ぎ 

も 「水滸 傅」 を酽 み^した。 のみなら す^を^ か ぬ^に,/ ir^ み^ 敬が« や I ゆ §^ がお ii や^^ 

子張i<lの^に^Bった^^の^をgmした。 gi,, .— しかし その if 斷は^ I ^よりもい 一つお^^ W だ 



りた。 ^は^^^!^^^^を&げ、 ,し I を ぶらず げた 裏庭に 「水 滸傅」 中の 人物と、 . I 一 丈靑愿 

. 一一 と 観した。 この 證 & えす i を S しつづけた。 i は i たび 

: 、 、 : つ 5 t t じ やう しゃじ やう しじ やう とき ろじ やう ね しん ほ;;^ 

^を に? 仪 を^した こと を a やえて ゐる。 いや、 ル 上、 車上、 厠 上、 II - おに は 路上に も 熱、 もに 木 

: rk くけん もちろん すゐこ でん い らいに-ど- ズ - ン-、 ゝ *;o ;、 C 

を んだ こと を I ル えて ゐる。 木劍は 勿論 「水 滸傳」 以來 二度と 彼の^に 取られな 力った 力 枞は 

¥のぉに^2^€ったり&ぃたりした。 それ は^はば i 射だった。 本の 巾の 人物に 變る こと だつ 

た。 «は|_^|.!の辦がゃぅに|ー斷の^".|^^^を通り拔けた。 イヴ アン . カラ マゾ フを、 ハム レツ 卜 を、 

ンド レエ を、 ドン. ジュ アン を、 メ フィス トフ エレ スを、 ライネッケ 狐 を、 — しかも そ 

、-二 C - - ^ ぎ デ,》 あるばん しう -,1 ご . ^れ こ づか もら ため とし 、 

れ I- の もの は. f 時の に は S らな かった。 ^に 或晚 秋の 午後、 彼 は 小 遣 ひ を 赏ふ爲 に 年と つ 

た した。 ^l<l«ii の M だった。 ^はこと さらに ¥r の 前にき V と雜 新の 大業 を 論 

じ、 it は^, llm か ら^は^^ 辩 i に^る を した。 が、 この 艇 ぎの 盧« にがち た 

ろ ち & じら かう とうが く かう せいと たう じ だいだう 丄んせ .^"J- - .fv ひ ヽ;, , / ,ノレ ri:- 二 

衝 i3 の 蒼白い 高等 學 校の 生徒 は當 時の 大! サ信軏 よりも 寧ろ 若 ぃジ ユリアン. ソ レズ 11 「赤と 

, ろ し: § じんこう 

黑」 の 主人公だった。 ■ 

^ かう ふ ま は lil^;^ あらゆる もの を 本の 屮 に^んだ C 少く とも 木に 负ふ 所の 全然ない もの は 



生 半の 輔信寺 導-人 



1 ゥ 



*^と > じ-さい J ハぉ じズ せい し ため がいと ラ かう ヒん なが むし か, ス じん なが ため ミん 

一 つもなかった. - 實際彼 は 人生 を 知る 爲に 街頭の 行人 を 眺めなかった。 寧ろ:;;: 人 を 眺める 爲に^ 

なか じんせい し あるひ じんせい し う ゑん さく し 

の 中の 人生 を 知らう とした。 それ は 或は 人生 を 知る に は 迂遠の 策だった のか も 知れなかった。 が、 

がいとう かう じん かれ ただ かう じん かれ かれら し ため かれら あい ん, れら iv- つ を いれ 

街頭の 行人 は 彼に は 只 行人だった。 彼 は 彼等 を 知る 爲に は、 . I 彼等の 愛 を、 彼等の 15 惡を、 彼 

ら きょえいしん し ため ほん よ ほか ほん こと せいき まつ ョ| ロッぺ う ン 

等の 虛榮心 を 知る 爲には 本を讀 むより 外はなかった。 本 を、 11 殊に 世紀末の 歐羅巴 の^んだ 小 

つ _ ギ. M5;J よく _ れ つめ ひかり なか , かれ * へ てんかい にんげんき げき はっけん あるひ 

說ゃ戲 曲 を" 彼 は その 冷たい 光の 屮に やっと 彼の 前に 展!: する 人間 喜劇 を發 した。 いや、 或は 

-V ん あく わか かれ じ しん た t しひ I: つけん じんせい き. 一 かれ ラん じょ に/ \ し ,ん 

善惡を 分たぬ 彼 自身の 魂 をも發 見した。 それ は 人生に は 限らなかった。 彼 は 本 所の 町々 に 自然 3 

うつつ、 はっけん かれ し ぜん み め た 4- う するど く は な,? さつ あいどくしょ 

美し さを發 見した。 しかし 彼の 自然 を 見る目に 多少の 鋭 さ を 加 へたの はや はり 何册 かの 愛讀 書、 

な ふふづ くげんろ く はいか-い かれ らょ ため みわこ ちか やま なリ うこん たけ あき かぜ 

. I 就中 元祿の 俳諧だった。 彼 は それ 等を讀 んだ爲 に 「都に 近き 山の 形」 を 、「|^) 金. ほの 秋の 風」 を、 

おき しぐれ ま ほ かた ほ やみ ゆ ご ゐ こ ゑ モス:: J よ 卞: 〔/^ や; し し どん うつく 

「沖 の 時雨の 眞帆片 帆」 を T 閣 のか た 行く 五 位 の 骤」 を ,- 1 本 所 の 町々 の敎 へな かつ た 自然 の 美し 

はっけん ほん げんじつ つね しんす け し/り かれ かれ ,.:! ぐせい ち ひだ なんにん 

さ をも發 見した C この「本から現實へ」は常に:^:;^輔には露理だった。 彼 は 彼の 半生の に 何人 かの 

をん な れんあい かん かれら たれ ひとり をん な うつく をし すくな モし キ な "ぐ わ、 

女に 戀愛を 感じた。 けれども 彼等 は 誰 一人 女の 美し さを敎 へなかった。 少く とも^ に^んだ! -ル 

をん な うつく をし かれ ひ ひかり す みみ ほほお まつげ 

の 女の 美し さを敎 へなかった。 彼 は H の 光 を 透かした.; t ゃ顿に 落ちた, 腿 の をゴォ ティ ェ ゃバ 

^ 、 まな をん な いま しんす け ため うつく つた も C 

ルザ ックゃ トルストイに 學ん だ。 女 は 今 も 信 輔には その 爲に 美し さを傳 へて ゐる。 :!:.;^ しそれ 等に 



i£ かれ あるひ をん な か. に めす はっけん し ノ 

學 ばなかった とすれば、 彼 は 或は 女の 代りに 牝 ばかり 發 見して ゐた かも 知れない。 …… 

もっと まづ しんす け たうて いかれ よ ほんじい うか. - で f", 、 > :o ふれ > > や 、 U た-^ 

尤も 貧しい 信輔は 到底 彼の 讀む だけの 本を自 ゆに 買 ふこと は 出来なかった〕 ^の 力う 言 ヌ困鄉 

だつ だいいち としょくわん だいに かしぼん や I だい 

を どうにか かう にか 脫 したの は 第一 に圖書 館のお かげだった。 第二に 货 本屋のお かげだった。 第 

. さん りんしょく そしり まねかれ せっけん かれ _ . ^ぶ- 3 お ほどに -卞 ん 一 

三に 吝嗇の 識 さへ 招いた 彼の 節儉 のお かげだった 彼 ははつ きりと 覺 えて ゐる。 11 犬 溝に 面し 

かしぼん や ひと い かしぼん や ば あ ば あ ないしょく けなかん -5; 一し _ ば-あ 

た 貸本屋 を、 人の 好い 貸本屋の 婆さん を、 婆さんの 內 職に する 花簪を 婆さん はやつ と.. T 撃へ 

t ひ M つ む じゃき しん つ i ほん さ ふう よそ ほ 

;< つた 「坊ちゃん」 の 無 邪氣を 信じて ゐた。 が、 その 「坊ちゃん」 はいつ の 問に か 本 を 探が す 風を裝 

ぬす よ はつめい かれ また ぉぱ ふる はんや-、 . - 

ひながら、 41 み讀み をす る こと を發 明して ゐた。 彼 は 又はつ きりと 覺 えて ゐる —— 古木 屋 はか 

なら こ じふ!^ん+^へ じんぼうち やう どま -,; る £1 んゃ やね うへ ひ ひかり う く だん ざ か しゃ 

りごみ ごみ: H んだー 一十 年 前の 神 保 町 通り を、 その 古本屋の 屋根の 上に U の 光 を 受けた 丸 段 坂の 斜 

め/? もちろんた うじ じんぼうち やう ど ほ でんしゃ ば しゃ つう v,- れ じふに さい せ-つがく せい ぺ たう 

面 を。 勿論 當 時の 神 保 町 通り は 電車 も 馬車 も 通じなかった。 彼 は 11 十二 歲のづ 學.^ • はぎ 當ゃノ 

こ わき お ほ はしと しょくわん かよ ため なんど 七 ほ わ,^ ふく J-t わ, 

オト. ブック を 小脇に した まま、 大橋圖 書 館へ 通 ふ爲に 何度も この 通り を 往復した。 道のり は往 

ふく ひナ, り お ぶしと しょく わ/? ていこくと しょくわん かれ ていこくと しょくわん あた だいいち -^-んめぃ お ぼ 

復ー 里^だった。 大橋 11 書 館から 帝 圃圖書 館へ。 彼 は帝國 11 書 館の 與 へた 第一 の 感銘 をも覺 えて 

^ ^ てんじゃう だ.. きょうふ おな * まど たい きょうふ れ すう いす う つく む すう 

ゐる。 —— 高い 天井に 對 する 恐怖 を、 大きい 窓に 對 する 恐怖 を、 無數の椅子を!^^め盡した無數の 

ひとん、 . ^二 きょうふ きょうふ V- ?ェ に V- んど かよ せう: C つ かれ たち ま えつらんしつ てつ 

2 人々 に 勤す る 恐怖 を。 が、 恐: W は 幸 ひに も 二三 度 通 ふうちに 消滅した。 彼 は 忽ち raM 几.: 4- に, 鐵の 



^ 階段に、 カク。 オダの 箱に、 地下の 食堂に 親しみ 出した。 それから尤«^の岡書|1ゃ||1!^の, 

化よ Y わん かれ ら と しょ,、 わん なんびゃく さつ し ミん か *H た ら まら し 二つ ざ 1- レ 

書^へ。 彼 は それ 等の II 書 館に 何 百 冊と も 知れぬ 本 を 借りた。 又 それ 等のお の. # にば. 膨 とも 知 

ほん あい 

れぬ本 を 愛した。 しかし 11 

かれ あい ほ とん ないよう いかん と まん あ、 

し 力し 彼の 愛した の は 11 殆ど G 谷の 如何 を 問 はすに^ そのもの を^した の はや はり i のず つ 

た 本だった。 信 輔は本 を 買ふ爲 めに カフ H へも足を^<れなかった。 が、 ^の ひは^ si^ に!^ 

そべ r- かれ た いっしう さ んど しんせき ちう がくせい すうが,、 をし 、!" -- 

足だった。 彼 は その 爲 めに 一週に 三度、 親戚の 中學 生に 數學 (!) を貌 へた。 それでも まだお の 足 

> 一き ほん う い 5 A ぉ.^ 一 5 、 ュ ~ あ * 、- - .T う 

りぬ 時 はやむ を す 本を資 りに 行った。 けれども窗り^は^らしぃ.^^でも|-ひ^の^ば^上にな 

: ながねん も ほん ふる ぽパ: "や て ゎヒ っ!^ VI ひ f V. 

つたこと はなかった。 のみなら す 永年 持って ゐた本 を 古本屋の 手に 渡, す こと は $e に 彼に は 悲雜だ 

? :o - - よ"?、 じんぼう ち-やう ど ほ ふるほんや いっけんいっけん のぞ い 5 ち ある ふる W んゃ 

つた。 彼 は 或 薄雪の 夜、 祌保 通りの 古本屋 を 一軒一軒 观 いて 行った。 その に 或 古^ に 「ッ 

g ァラ トス トラ」 を 一 册發 見した。 それ も 只の 「ツァラ トス トラ」 ではなかった。 ?ー :!:: ほどぎ に 狼の 

信 資 つた 手 だらけの 「ツァラ トス トラ」 だった。 彼 は 店 きに 佇んだ まま、 この $s い 「ツァラ トス 

^ ところ よかへ よかへ ぶ,、 ,ぁ つ., 、) 

.^ トラ」 を 所 どころ 讀み 返した。 すると 讀み 返せば 讀み 返す ほど、 だんだん 裏 さ を 1^ じだし. へ>。 

ノ 一 

セ 

/ 「これ はい くら です か?, 一 



-'i つ 
度 ど た 
買 か こ 
ふ と 
こ を 

X. 田お 
し じ、 も 

に ひ 
し Hi だ 
た し 
。 た 

■ ^ゆ 

の が 
夜よ 、 

の や 

往 t つ 
來 と 
は 費う 
家 t 乂 り 
々く 

も の 
ぼ' で -— に 

rtL ん - 

車お 倍! ミ 
も 、 
何き I 
か I 
微'' 一 V: 

m 【fi ほ 



六 友 だち , 

しんす ナ v;-0 う た せう と とも つく で き L. 、ノズ し, - 、 

信輔は 才能の 多少 を 問 はすに 友 だち を 作る こと は出來 なかった たと ひどう 言- 1 君子に もせよ 

そ ういぐ わい と ?- せ、, ねん かれ よう かう じん むし かほ み l^^u ^ > ^ 

素行 以外に 取り柄の ない 青年 は 彼に は 用の ない 行人だった。 いや 寧ろ 額 を 見る度に 拥:^ せす に 

は J ぅナ も さう A うてんろ くてん かれ た^^^ぜん たいど ちが 力れ ちつ 力く 

は ゐられ ぬ. 道^者だった。 それ は 操行 點六點 の 彼に は 當然の 態度に 違 ひなかった。 彼 は中學 力ら 

2 .11' うとうが く かう -f うとう-; A く かう だ、. がく く が,、 かう 七 ほ あ ひだた かれら て, Q そう : ^ 

2 高等 學校、 高等 學 校から 大學と 幾つかの 學校を 通りぬ ける 問に 絶えす 彼等 を 嘲笑した。 勿論 彼等 



じっぷん た のち. かれ ふるほんや をん な しゅじん - 丄 め,, ,-,.- 

十分ば かり 立った 後、 彼 は 古本屋の 女主 人に もう 「ツァラ トス トラ」 を 示して ゐた 

いち ゑんろ くじつ せん ご あい けう いち ゑん-ご じっせん お 

r 一 圓 六十 錢、 11 御 愛嬌に 一 圓 五十 錢 にして 置き ませう」 , 

しんす ナ しち じつ 一ん ほん う 

信輔 はたった 七十 錢 にこの 本を寶 

し じっせん ね ぎ - すゑ 

四十 錢に 値切った 末、 とうとうもう 

し, ジ かれ い わ-つらい - ほんじよ かへ と ナノつ た かれ ふと こ I なか - 一 い *M > f," 

に靜 かだった。 彼 はかう 言 ふ 往來を はるばる 本 所へ 歸る 途屮、 絶えす 彼の 懐ろ の 中に ^鉄色の:^ 

し かし また どうじ くち なか なんど かれ じ しん う 

紙 をした 「ツァラ ト ス トラ」 を 感じて ゐた。 しかし 又 同時に 口の 中には 何度も 彼. R 身 を 1- 笑して ゐ 

た。 …… 



の^もの は 歡の嚼 1^ を磁 ザた。 しかしお HI の!^ もの は 彼の 嘲笑 を感 する 爲 にも 餘 りに 校 範的君 

チ. こった。 ュぉま なま」 と I ばれる ことに は 常に 多少の 偸 快 を 感じた。 が、 :ffi: なる 嘲笑 も 更に 

1 L, ン X ん, -キ ごま げん い くんし ひとり ある 

! J^il へ を it へない ことに は銜 自身, ノら すに は ゐられ なかった。 現に かう 言 ふ 君子の 一人 —— ^ 

: » フ ト,. -ヒ すうよ、 しゃ おな きしゅくしゃ しんす け あるとき. f れ i 

l^ifis のお^の^ i は リヴィ ングス トン の崇 だった。 同じ 舍にゐ た M 輔は或 t 彼に 

しゃかに バ ィ 口 ンも f リヴ イング ス ト ン 傅を讀 み、 泣いて やまなかった と 言 ふ 出たら め を 話し 

Z -,, - - { V - -K 二 ご-ち すう t 、. しゃ ある ャ リスト はう くわい きくわん ざっし あ ひか:;、 ん、 す 

た。 ぎ:^ 叫 一: を^した 今/ s:、 この リヴ イング ス トンの 崇 Is は 或 基督 敎會の 機關雜 誌に 不相變 

さ かれ ぶんしゃう い いちぎ やう け じ 

リヴ イング スト ンを 讚赛 して ゐる。 のみなら す 彼の 文章 はかう 言 ふ 一 行に 始まって ゐる i 

rli^ ^&. が ハイ P ンさ へ、 リヴ イング ス トンの を酽ん で淚を 流した と 言 ふこと は 何 を 我々 

に敎 へ るで あらう か?」! 

大 g 輒 はお HQVS を ik はすに? i だち をお る こと は 出 奢なかった。 たと ひ 子で はない にもせ よ、 

爵 f 晰 を^らない Is^ はや はり « に は, 街の M だった。 « は^のお だち に 腐しい 感情 ビ おめな 

赠 かった。 « のお だち は I 乾ら しいお きを I: たぬ 靑も でも 好かった。 いや、 友 は 寧ろ 彼に は 

^ だった。 その^りに « のお だち は を^たなければ ならなかった。 頭腦 を、 n がっしり 



24 



と w 來 上った: m 腦を。 & はどう 言 ふ 美少年よりも かう きふ, i の^ち? fi を 1^ した。 1^ にお どう. 

in ふ教 子よりも かう 言 ふ 頭腦の 5- ち 主 を 1^ んだ。 iMi のお いつも 歡 おか!^ の^に I ぎ をお 

んだ 情熱だった。 信輔は 今日 もこ dliiif おに Si がない こと を^ ひて ゐる。 ともこ.^ lii; 

ね:^ に Merr undKnecht の 臭味 を帶 びない 友情の ない こと を g じて ゐる。 ^んゃ 垆リぉ i,- ち 

は 一 面に は 相 容れぬ 死 敵だった。 ^は^の^ K を Ski に、 ぎぇす1|^.」^^した。 ホイ ッ卜 マン、 

じ いう 丄. . ざう ざラ てきしん くわ せん V つやう- 一 £ とん /こ ,レ J ト, 

自由詩 創造的 進化、 1- 戰場 § ど M る 所に あった。 1 は そ あ sspi の?^ だち を护ち g 

したり、 彼の 友 だち に ち i されたり した。 この 蒙 は f よりも ii の の!! に a! れ 

たものに 違 ひなかった。 しかしお のづ から その 11 に, い sfe らしい ぎき.! ビ たこと も 

t だった。 I ぎに £p の 辯 の mgiss あらして ゐ たか、 虻ぎ 继 1 ぎ懇 

の 作品 は 彼等の Si を; して ゐ たか、 100$^^ Bl-giV まて^た、 

大きい 幻 取 蟲を覺 えて ゐる。 灯 取蟲は い^の 4 "から!; M きらびやかに まれて >來 た。 が、 

觸れ るが 早い か、 喊の やうにば たばた と^んで ケ t: つた。 これ は 1 も^ i の やうに^! - がるき-ひ のな 

いこと かも;^ れ ない。 しかし^ 鰣 はおお もな ほこの^;! ^を!^ ひ す § に、 ,.— このず^, 



生 半の 輔信寺 ¥大 



ひ とりむ し せいし おも だ ん: ブ かれ こころ そこ た せう V. び もえ 

しい 灯 取蟲の 生死 を 思 ひ 出す 度に, なぜか 彼の 心の底に 多少の 寂し さを感 する ので ある。 

しんす け V,- い C う た やう と とも つく で き へう じゅん 入-だ 

信輔は 才能の 多少 を 問 はすに 友 だち を 作る こと は出來 なかった。 標準 は 只 それだけだった。 し 

へう じゅん ぜんぜん れいぐ わい わけ かれ とも .f. れ あ ひだ せつだん 

かしゃ はりこの 標準に も 全然 例外の ない 訣 ではなかった。 それ は 彼の 友 だち と 彼との 問 を 截斷す 

しゃ, 、わいて きかいき ふ さべつ しんす け かれ そだ に よ ナノつ りう かいき ふ せいねん なん かん 

る 社會的 階級 の 差別だった。 信輔は 彼と 育ち の 似寄 つ た 中流 階級 の 靑 年に は 何 の こ だはり も 感じ 

ゎづ かれ し じ やうり うかいき ふ せいねん とき ち-つり-つ ヒ やうそう,;;、,. きふ せ、, ねノ〉 もう 

なかった。 が、 総 かに 彼の 知った 上流 階級の 靑 年に は、 —— 時には 中流 上^階級の 靑年 にも 妙に 

た にん ぞう々) かん かれら ある たいだ かれら ある お: プ やう いれら あ ノ> 

他人ら しい 憎惡を 感じた。 彼等の 或 もの は 怠惰だった。 彼等の 或 もの は だった。 又 彼等の.^ 

くわん のうし ゆぎ どれい かれに く かな "リア ら だめ 

もの は 官能主義の 奴隸 だった。 けれども 彼の 憎んだ のは必 しも それ 等の 爲 ばかりではなかった。 

むし ら なに ばくぜん ため もっと かれら ある かやり じ しんい しき 

いや、 寧ろ それ 等よりも 何 か 漠然とした ものの 爲 だった。 尤も 彼等の 或 もの も 彼等 自身, 識 せす 

なに にく ため また か りう かいき ふ かれら しゃく わいて きたいし よごん ぴゃ うてき しゃ- リ:: : い ^ん 

にこの 「何 か」 を 憎んで ゐた。 その 爲に又 下流 階級に、 11 彼等の 社 會的對 跡 Si に 病的な 悄 怳を感 

かれ かれら どうじ やう かれ どうじ やう ひっき やう やく た なに あ,、 しめ 

じて ゐた。 彼 は 彼等に 同情した。 しかし 彼の 同情 も 畢竟 役に は 立たなかった。 こ 「何 か」 は 握 f 

まへ けり れ て VI ある かぜ さむ しぐ わつ -づ ご かう とうが く,^ う せ 1. と 外れ 

する 前にい つも 針の やうに 彼の 手 を 刺した。 或 風の 塞い ra 月の 午後、 高等 學 校の 生徒だった 彼 は 

,.か れら ひとり ある だんしゃく ちゃうなん え しま がげ うへ だた す め した .tc らい そ ノ, i 

彼等の 一 人、 11 或 博の 長男と 江の 島の 嵐の 上に 佇んで ゐた。 nl の 下 はすぐ に 荒 碗だった。 彼 

ら もぐ せう ねん ため なんまい どうく わ な せう ねん どうく わ お た; -S 

等 は 「港り」 の 少年た ちの 爲 に何妆 かの 銅貨 を 投げて やった。 少年た ち は 銅貨の 落ちる 度に ぼん ぼ 



26 



うみ なか を ど ひとり あ ま がけ した た あくた び まへ わら なが 

ん 海の 中へ 跳り こんだ。 しかし 一 人 海女 だけ は 崖の 下に 焚いた 芥 火の 前に 笑って 眺めて ゐる ばか 

りだつた。 

「今度 は あい つも 飛び こませて やる ピ . 

, ^れ A- も いちまい どうく わ .*v{ きたば こ はこ ぎんがみ つつ からだ そ おも せいいつ- 

彼の 友 だち は 一枚の 銅貨 を卷 煙草の 箱の 銀紙に 包んだ。 それから 體を 反らせた と 思 ふと、 精一 

どうく わな と どうく わ ひか かぜ たか なみ か お 

ばい 銅貨 を 投げ飛ばした。 銅貨 はきら きら 光りながら、 風の 高い 浪の 向う へ 落ちた。 するともう 

あ ま とき さき うみ と しん. u.h いま くち ざんこく び 斗-う 

海女 は その 時には まつ 先に 海へ 飛び こんで ゐた。 信輔は 未だに ありあり と 口 もとに 殘 酷な 微笑 を 

うか かれ とも お ぼ かれ とも ひとな いじ やう ご がく さいのう そな , A た 

浮べた 彼の 友 だち を覺 えて ゐる。 彼の 友 だち は 人並み 以上に 語學の 才能 を 具へ てゐた C しかし 义 

たし ひとな いじ やう するど けんし そな 

確かに 人並み 以上に 鋭い 犬 齒をも 具へ てゐ た。 …… 

附記。 この 小說 はもう こ の 三 四 倍續け るつ もりで ある。 今度 揭げ る だ け に 「大導 寺信輔 の 牛 生」 と n ふ 题 は 

相赏 しない の に 違 ひない が、 他に る 題 もない 爲 にやむ を 得ず 用 ひる ことにした。 「大? * 寺 信 棘の 牛^」 の 

笫ー篇 と 思って 頂けば 幸^である。 大正 十三 年 十二月 九: :!、 作者 記。 

(大正 十三 年 十二月). 



^!^ぃがくせ+ なか もら ^^.j,- はる した かれ じしん たい をん かん ほのぐら いし .A , だん 

大學 生の 中: 5: は 薄い 春の ォヴ ァ. コ オトの 下に 彼 自身の 體溫を 感じながら、 仄 い 石の 階段 を 

:;1 ベ" つべ わん に • か. 'い 、の. ぼ かいだん ひだり は ちうる ゐ へう ほんしつ た. A むら そ 

博物館の 二階へ 登って いった。 階段 を 登りつ めた 左に あるの は爬蟲 類の 標本 室で ある。 中 杓 は 共 

こ i へ 今一ん うでどけい なが うで どけ" まり さ 、よ b 

處へは ひる 前に、 ちょっと 金の 腕時計 を 眺めた。 腕時計の 針 は 幸 ひに もま だ 二 時に なって ゐ ない 9 

IV んぐ、 わい おく ノ なか むら おも い そん . き 

有 外遲れ すに すんだ もの だ、 —— 屮村 はかう ふうちに も、 ほっとす ると 言 ふより は损 をした ハ浙 

もちに 近い もの を 感じた。 

は うる ゐ へう ほんしつ かんしゅ け ふ ある なか ,: だう す V リ f うちつ 

爬蟲 類の 標本 室 は ひっそりして ゐる。 看守 さへ 今日は 步 いて ゐ ない。 その 中に 唯 簿ら. ^一い^^ 

にい に ほ ただよ なか むら しつない み わた G ち しんこ きふ ハらだ 

劑の臭 ひば かり 漂って ゐる。 屮村は 室 ^ を 見渡した 後、 深呼吸 をす る やうに 體を 仲ば した。 それ 

お ほ ガラスと だな なか ふと か & なん やう だいじゃ まヽた は ちうる ゐ へう まん 

から 大きい 砲子戶 棚の 屮に 太い 枯れ木 をまい てゐる 南洋の 大蛇の 前に 立った。 こ の爬蟲 類の 擦; 54 

しつ 4^- や, T どきよ ねん なつい -IT いみへ こ であ ばしょ さ だ なに シれら こ ゾ £-ぅ てき 

室 は 丁度 去年の 夏 以來、 三重 子と 出合 ふ 場所に 定められて ゐる。 これ は 何も 彼等の 好みの 病的 だ 

00 ため ただ ひとめ. さ ため え こ こ えら こうる! ん 

2 つた 爲 ではない 。只 メ目を 避ける 爲 にやむ を 得す 此處を 選んだ ので ある。 公, 險、 カフェ、 ステェ 



ら き よわ かれら たう わ,、 あた こと かた あ 

.9 シ ョ ン I— それ 等 は いづれ も氣の 弱い 彼等に 當 惑を與 へる ばかりだった。 殊に 一;!^ 上げ をお ろした 

み へ こ たう わくい じ やう おも し かれら わ すう ひと <^、 し せん かれら せなか あつ 

ばかりの 三重 子 は當惑 以上に 思った かも 知れない。 彼等 は 無数の 人々 の 視線の 彼等の 背中に 築 ま 

かん かれら しん ざう ひとめ えい かん へう ほんしつ 

るの を 感じた。 いや、 彼等の 心臟 さへ はっきりと 人目に 映す るの を 感じた。 しかし この 標本 室へ 

く はくせい へぴ とかげ ほか たれ ひとり かれら み ん しゅ くわん らん にん あ 

來れ ば、 剝 製の 蛇 や 蜥暢の 外に 誰 一人 彼等 を 見る もの はない。 たまに 看守 ゃ觀 人に 遇っても、 

かほ み すうべ う あ ひだ 

じろ じろ 額 を 見られる の はほんの 數 秒の 問 だけで ある。 …… 

お あじ ん に b うで ど けい はり ま ちゃう どに じ しめ じっぷ-^ 

落ち合 ふ 時 問 は 二 時で ある。 腕時計の 針 もい つの 間に か 丁度 二 時 を 示して ゐた。 け ふ も 十分と 

ま はす なか むら んが は ナ. - うる ゐ へろ ほん なが い ■ あいにく かれ 

待たせる 普 はない。 11 屮村 はかう 考 へながら、 爬蟲 類の 標本 を 眺めて I:;: つた。 しかし 生憎 彼の 

こころ す こ よろこ を ど むし なに ぎむ たい あき に み かれ 

心 は 少しも 喜びに 躍って ゐ ない。 寧ろ 伺 か 義務に 對 する 諦ら めに 似た ものに 充 たされて ゐる。 彼 

も あらゆる 男 ^ の やうに 三重 子 に 倦 台? を 感じ 出した の であら うか? けれども^. 1:^ を 生す る爲に 

どういつ めん け ふ みへ こ かう ふ かう ぜんぜんき の ふ みへ こ *VQ 

は 同一 の ものに 面しなければ ならぬ。 今日の 三重 子 は 幸か不幸か 全然 昨日の 三 重 子で はない。 昨 

ふ みへ こ やまのて せん でんしゃ なか かれ もくれい かう くわん みへ こ いか ちょが く 

日の 三重 子 は、 11 山手 線の 電車の 中に 彼と nnir だけ 交換した 三重 子 は 如. I: にもし とや かな女 學 

い さいしょ かれ いつ ゐ かしら こう ゑん で みへ こ ど こ や V,- >T:b 

i- 生だった。 いや、 最初に 彼と 一 しょに 井の頭の 公園へ 出かけた 三直 子 もま だ何處 かもの 15 しい 寂 

. 春 しさ を帶 びて ゐた ものである。 …… 



30 



> いちど うでどけい なが うでどけい にじ ごふん す かれ C ナ.' 

中 村 はもう 一度 腕時計 を 眺めた。 腕時計 は 二 時 五分 過ぎで ある。 彼 はちよ つと ためらった 後、 

と あ てうる ゐ へう ほんしつ きんけい てう はちす すめ う-つく だいせ う はくせい とリ ガ-ソ 

隣り合った 鳥類の 標本 室へ は ひった。 力 ナリヤ、 錦鷄 鳥、 蜂 雀、 11 美しい 大小の 剝 製の 鳥 は^ 

ス ,,ー かれ なが みへ こ いとり けいがい のこ た. i しひ うつく しな 

子 越しに 彼 を 眺めて ゐる。 三重 子 も かう 言 ふ 鳥の やうに 形骸 だけ を殘 した まま、 魂の 樊 しさ を 火 

かれ お ぼ みへ こ へ あ とき 

つ てし まった。 彼 はは つ きり 覺 えて ゐる。 三重 子 はこ の前會 つた 時には チ ウイ ン • ガム ばかりし 

7H た 免へ あ とき うた うた こと かれ おどろ ひと 

やぶって ゐた。 その 又 前に 會 つた 時に も オペラの 噴ば かり 歌って ゐた。 殊に 彼 を 驚かせた の は 一 

つき まへ あ みへ こ みへ こ あげく し う 

月 ほど 前に 會 つた 三重 子で ある。 三重 子 は さんざんに ふざけた 揚句、 フット \ポ オルと 稱 しなが 

あ,、、:: てんじゃう け あ 

ら、 枕 を 天井へ 蹴上げた りした。 …… . - 

うで ど づぃ にじ じふ ご ふん なか むら いき も は ちうる ゐ へう ほんしつ ひき かへ 

腕 時 ぼ は 二 時 十五 分で ある。 中 村 はため 息 を:^ らしながら、 爬蟲 類の 標本 室へ 引返した。 が、 

み へ こ ど こ み かれ なに き が る め まへ お ほと >^げ しっけ ひ お ほと かげ めい 

三重 子 は何處 にも 見えない。 彼 は 何 か氣輕 になり、 目の前の 大蜥^に 「失敬」 ァ V した。 大蜥^ は 明 

ぢ 11 ん ねん らい え いきう 二 へび く は え いきう か れ え いきう つ で ど けい にじ 

治 何年 か 以來、 永久に 小 蛇を啣 へて ゐる。 永久に 11 しかし 彼 は 永久にで はない。 腕時計の 二 時 

V. > ご はくぶつ くわん で さくら りゃう だいし. * グ、 

半に なった が 最後、 さっさと 博物館 を 出る つもりで ある。 樱 はま ださいて ゐ ない。 が、 ig 大師^ 

& どんてん す えだ/ ヽ あか つ? 1- み つづ こう ゑん さんぽ み へ : 

にある 木な どは藝 天 を 透かせた 枝々 に 赤い 蕾 を 緩って ゐる。 かう い ふ 公園 を散步 する の は 三重 子 

と问處 かへ 出かける よりも 數等 幸福と いはなければ ならぬ。 …; 



こ 

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彼ォ 力: 

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失' う' 

つな 

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の 
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全で 

mi 



づぎづ .4<Af^! もう 十分 待ち さへ すれば 好い。 彼は歸 りた さ を こらへ たま ま、 標本 室の 屮を歩 

ュフ た, しんりん ,p し W とや > へぴ へ, T ほん めう fc だよ I ン ある:^ しゃ 

きま はった。 熱 1^ の 森林 を 失った 蜥^ や 蛇の 標本 は 妙に はかな さ を 漂 はせ てゐる これ は 或は 象 

ち よう し じ や-つねつ うしな かれ れんあいし やうち よう し/ 3 かれみ, 《 -こ, - ち- つ,、:、 し 

g かも 知れない。 いっか 情熱 を 失った 彼の 戀 愛の 象 微か も 知れない。 彼 は 三 子に ホ ^1:- たった レ 

m 子の 

全き こん すく ん めつ けっく わ けつ けんたい けっく わ 

复 3- である。 少く とも 減の 結 5^ である。 決して 倦怠の 結果な どで はない …… 

はづ時 おになる が^い か、 爬蟲 類の 標本 窒を 出ようと した。 しかし 戶 口へ 來 ない うちにく 

るりと 寧の 1ぉ^ した。 三ず; f は 或 ひ は ひと 足 違 ひに この 部屋 へ は ひって 來る かも 知れない。 そ 

i メ へ こ 々J どメ、 き どく き どノ、 ンカ才 み - こ- ひ 7. J -、 

れ では 三重 子に 氣の 毒で ある。 氣の 毒? —— いや、 氣の 毒で はない 彼 は:: 一 子に:^:^ する より 

かれ じ じん ぎ む かん なや ぎ む &ん やす ため じ, つぶ、 z、、 . - > は. r 二,、 IT ノズ」 

も 彼 自身の 義務感に 惱 まされて ゐる。 この 義務感 を 安ん する 爲に はもう 十ハ 刀. はかり;: ^たな H れは 

ス 、 こ ハ -M ら こ i i -ご ご £:、 わい ひと く にナ 

ならぬ。 なに、 三重 子 は 必す來 ない。 待っても 待たなくて もけ ふの 午後 は:^ 快に 獨 り^ら せる ず 

である。 …… 

!&^の^ぉ1^は|^も!|^^ひっそりしてゐる。 ?^へ^^だにまはって^^なぃ。 そのぎ ぶ 

IE 卜 - 

春 料ら 魏 い 窘の臭 ひば かり 漂 づてゐ る。 中 村 はだん だん 彼,: in 身に 或 f ュた しさ を 感じ 出した リ 



み へ こ ひっき やう ふりやう せ うぢよ かれ れんあい > た- ん ぜん ひ き し 

三重 子 は畢竞 不良少女 である。 が、 彼の 戀愛は 全然 冷え切って ゐな いの かも 知れない。 さもな け 

かれ むかし はくぶつ くわん そと ある もっと じ やうね つ うしな よ,、 ばう C こ 

れば彼 はとうの 昔に 博物館の 外を步 いて ゐ たので あらう。 尤も 情熱 は 失った にもせ よ、 愁^ は tf 

はす よく^う よくばう かれ いま み たしか みへ こ あい 

つて ゐる 害で ある。 慾 望.. しかし 愁望 ではない。 彼 は 今にな つて 見る と、 確に 三重 子 を 愛し 

みへ こ i くら け あ あし いろ しろ ゆび そ 

てゐ る。 三重 子 は 枕 を 蹴上げた りした。 けれども その 足 は 色の. G いば かり か、 しなやかに 指 を 反 

こと とき わら ゑ かれ こ くび かたむ み へ こ わら が ほ おも だ 

ら せて ゐる。 殊に あの 時の 笑 ひ聲は i 彼 は 小首 を 傾けた 三重 子の 笑 ひ 顔 を 思 ひ 出した" 

に じ し じっぷん 

二 時 四十 分。 

にじし じふ ご ふん 

一 一時 四十 五分。 

さんじ 

三時。 

三時 五分。 

さんじ じつ ぶん とき なかむ ら はる した さむ 力ん 

三時 十分に なった 時で ある。 屮村は 春の ォヴァ • コォ 卜の 下に しみじみと 塞 さ を 感じながら 

ひとけ は ちうる ゐ 、う ほんしつ うし いし かいだん お い もやう どひ くれ ほのぐら 

人ぐ やの ない^ 蟲 類の 標本 窒を 後ろに 石の 階段 を 下りて 行った。 いつも 丁度 口の 暮の やうに 仄 1= い 

いし かいだん 

石の 階段 を。 



X X X X X X 

ひ でんとう だ じぶん なか ら ある すみ かれ とも はな かれ とも 

その 日 も電燈 のと もり 出した 時分、 屮村は 或 カフ H の 隅に 彼の 友 だち と 話して ゐた。 彼の 友 だ 

1 りか i せう iJ つか し ばう だいがくせい かれら いつば い こうちゃ まへ じ どうしゃ び てきか ち ろん 

ち は 城 川と いふ 小說家 志望の 大學 生で ある。 彼等 は 一 杯の 紅茶 を 前に 自動車の 美的 惯,: g を 論じた 

けい ざ いてき か ち ろん らっか のち なか むら きんぐち ひ 

り、 セザン ヌの經 濟的惯 値 を 論じたり した。 が、 それ 等に も 疲れた 後、 中 村 は 金口に 火 をつ けな 

ほ とん たにんみ うへ できごと けな だ 

がら、 殆ど 他人の 身の上の やうに け ふの 出 來事を 話し 出した。 

「莫遍 だね、 俺 は。」 

はな を は なか むら く は 

話し を 終った 中 村 はつ まらな さう にかう つけ 加へ た。 

「ふん、 莫翻 がるの が 一 ^莫迦 だね。」 

ほり か は む ざう さ れいせ う またたち ま .CT うどく だ 

堀川 は 無造作に 冷笑した。 それから 又 忽ち 朗讀 する やうに こんな こと を しゃべり 屮:: した。 

きみ かへ は ちうる ゐ へう ほんしつ そこ じ かん 

「君 はもう 歸 つてし まふ。 爬蟲 類の 標本 窒は がらんと して ゐる。 其處 へ、 11 時 問 はいくら もた 

さんじ じさ ふんぐ、,: ゐ そ こ かほ あ を じろ ぢ よがく せい ひとり く もちろんかん しゅ たれ 

たない。 やっと 三時 十五 分 位 だね、 其處へ 顏の靑 白い 女學 生が 一人 は ひって 來る。 勿論 翁 守 も 維 

ぢ よがく せい へび と^-げ なか たたす そんぐ わいく やす 

もゐ ない。 女 學生は 蛇 や 蜥^の 中に いつまでも ぢ つと 佇んで ゐる。 あすこ は^ 外 れ 易いだら う。 



ひかり うす く へ いくわん じ こく く ぢ よがく .411 ,, おな 

そのうちに 光 は 薄れて 來る。 閉館の 時刻 もせ まって 來る。 けれども 女 學生は 同じ やうに いつまで 

たた ナ かんが せう せつ もっと き き せう せつ みへ こ 

もぢ つと 佇んで ゐる。 ,11 と考 へれば 小說 だが ね。 尤も 氣の 利いた 小說ぢ やない。 三軍: 子なる も 

い きみ しゅじんこう ひ 

. の は 好い としても、 君 を 主-^ 公に して ゐた 日に は …… 」 

中 村 は にゃにゃ 笑 ひ 出した。 

「三重 子 も 生憎 肥って ゐ るの だよ。」 

「君よりも か?」 

ばか い おれ に じふさん ぐわん ご ひゃくめ みへ こ たし じふし ちくわん ぐら ゐ 

「莫遍 を 言へ。 俺 は 二 i" 三 貫 五 百 目 さ。 三重 子 は 確か 十七 貫 位 だら う。」 

じふ ねん なが さ なか むら い i みつ ゐ なに つ と みへ こ ナ つ-一し 

十 年 はいつ か 流れ 去った。 中 村 は 今 ベルリンの 三 井 か 何 かに 勤めて ゐる。 三重 子 もとう に 姙 

せう せっか モリ かけやす きち ある ふ じん ざっし しんねん,.^ う くち ゑ ぐうぜんみ へ こ t っナん み/一一 

したら しい。 小説家 堀川 保 吉は或 婦人 雜 誌の 新年 號の ロ繪に 偶然 三重 子を發 見した。 三重 子 は そ 

> ゆしん なか お ほ うし だん ぢ よさん にん こ ども いつ う ふく 2i 

の 寫眞の 中に 大きい ピアノ を 後ろに しながら、 男女 三人の 子供と 一 しょに いづれ も 幸福 さう に. 抑 

, ,、 J ぶで f じふ ねん まへ たい UV は み め 4- すきち 

笑んで ゐる。 容色 はま だ 十 年 前と 大した 變 りも昆 えない ので あらう。 EI かた も、 —— 保吉は ひそ 

„ - ノ め にじつ くわん す こ こ し 

かに 惧れ てゐ る、 目 かた だけ はこと によると、 二十 貫 を 少し 越えた かも 知れない。 …… 

4 

(人 • 化 十四 年 一月) 



はなし しゅじんこう をし の はん ざ ふ., I う い をと こ あいにくたい をと こ ぺ キ ン みつびし つ. V 

この 話の 主人公 は 忍 野 半 三 郞と言 ふ 男で ある。 生憎 大した si- ではない。 北京の 三菱に 勤めて ゐ 

さんじ ふぜん ご くわいし ゃゐん はん ざぶ らう しゃう くわ だいがく そつげ ふ のち ふたつきめ ぺ 千 ン く 

る 三十 前後の 會 社員で ある。 半 三郞は 商科 大學を 卒業した 後、 二月 目に 北京へ 來る ことにな つた。 

どうれ う うは やく ひやう ばん かくべつい い また わる い へい/、 

同僚 や 上役の 評判 は 格別 善い と 言 ふ ほどで はない。 しかし 又惡 いと 言 ふ ほどで もない。 まづ 平々 

ぽん/ \ はん ざぶ らう ふう ざい とほ ひと ついで く は はん ざ ぶつう かていせ いく わつ 

凡々 たる こと は 半 三郞の 風采の 通りで ある。 もう 一 つ 次 手に つけ 加 へれば、 半 三郞の 家庭生活の 

とま - 

! ft} りで ある." 、 

はん ざ ふらう に ねん まへ あるれ いぢ やう けっこん れいち や.^ な まへ つねこ あいにく れんあいけっこん 

半 三 郞はニ 年 前に 或 令嬢と 結婚した。 令嬢の 名前 は 常 子で ある。 これ も 生 I? 戀愛 結婚で はない。 

ある しんせき らう じん ふラふ なかう ど だつ ばいしゃく はつ こん つねこ ぴ じん い もっと たしう ふ 

或 親戚の 老人 夫婦に 仲人 を 頼んだ 媒約 結婚で ある。 常 子 は 美人と 言 ふ ほどで はない。 尤も 又醜婦 

、 」• ービ ふと モょ び せう う ほうてん ぺ キ ン く 七 

と 言 ふ ほどで もない。 只 まるまる 肥った 顿 にいつ も 微笑を浮かべて ゐる。 奉; 太から 北京へ 來る途 

ちう しんだいしゃ なんきんむし さ とき ほか ぴ せう う いま なんきんむし に 

中、 寢臺 車の 南京 蟲に螫 された 時の 外 はいつ も 微笑を浮かべて ゐる。 しかももう 今 は 南京 蟲にニ 

v,o ど さ しん, こ とう しゃたく ゐ i かう もり じる し \ つよち うぎ く ふたくわん そな 

3 度と 螫 される 心配 はない。 それ は X X 胡 同の 社宅の 居 問に 蝙幅 印の 除蟲 菊が ニ議、 ちゃんと 具へ 



37 



つけて あるから である。 

はん ざぶ らう かていせ いく わつ へいく ぽん/ \ キ は い じっさい とほ • が かれ 

わたし は 半 三郞の 家庭生活 は 平々 凡々 を 極めて ゐ ると 言った。 赏際 その 通りに 遠 ひない。 彼 は 

たさつね こ "つ も し /、 ちくおんき くわつ どうしゃ しん み い ぺ 

只 常 子と 一し よに 飯 を 食ったり、 蓄音機 を かけたり、 活動 寫眞を 見に 行ったり、 . I . あらゆる 北 

キン ぢぅ くわいし ゃゐん かに せいく わつ いとな かれら せいく わつ うんめい しはい も わけ は 

京 中の 會 社員と 變り のない 生活 を營 んでゐ る。 しかし 彼等の 生活 も 運命の 支配に ,翻 れる訣 に は I;;: 

うぐめ い ある ± ひる ご -*】 へい ほん/、 かていせ いく わつ たんて う ぃナ、 げき くだ みつ 

かない。 運命 は 或 眞畫の 午後、 この 平 々只々 たる 炭 庭 生活の 單調を 一撃の もとにう ち碎 いた" 三 

びし くわいし ゃゐん をし のに ス ざぶ らう なう いっけつ ため とんし 

菱會 社員 忍 野 半 三 郞は腦 溢血の 爲に 頓死した ので ある。 

t んざぷ <: う ご -ご トンク ヌピ イロ ォ しゃ つ, 、一お しょる ゐ しら つく ゑ む あ 

ギ三郞 はや はり その 午後に も 東 § 卑脾樓 の 社の 机に せっせと 書類 を 調べ てゐ た。 机 を 向 かひ 合 は 

どうれ う かくべつ、, じ やう み いちだんらく み +f きたば こ くち 

せた 同僚に も 格 刖異狀 など は 見えなかった さう である。 が、 一段落つ いたと 見え、 卷堙草 を n へ 

くよ ひやう し とつぜんう つぶ し いか 

g へた まま、 マッチ をす らうと する 拍子に 突然 俯伏しに なって 死んで しまった〕 如何にも あっけ 

し せ け c さ ひ は し あま ひひ やう ひひ やう い 

ない 死に かたで ある。 しかし 世 問 は 幸 ひに も 死に かたに は餘り 批評 をし ない。 批評 をす るの は 生 

はん ざぶ <s う ため かくべつ ひ なん i ね ひ なんど ころ 5 はやく 

きかた だけで ある。 半 三郞も その 爲に 格训 非難 を 招かす に すんだ。 いや、 非難 所ではない。 上役 

どうれ う ぴ ばう じんつ ねこ ふか どうじ やう へう 

や 同僚 は 未亡人 常 子に いづれ も 深い 同情 を 表した。 

どう じんぴ やう ゐズ ちゃろ やま ゐ i かせ しんだん したが はん ざ ふらう し いん なう いっけつ はん ざぶ,:: うじ しん ふ かう 

同仁 病み 1 儿長山 井 博士の 診 斷に從 へば、 半 三郞の 死因 は腦 溢血で ある。 が、 半 三 郞,: nl,:^ は不 



にも 腦 溢血と は 思って ゐ ない。 第 一 死んだ とも 思って ゐ ない" 只い つか 見た ことのない, 務チへ 

& おどろ 

來 たのに 驚いて ゐる。 11 

じ む しつ まど ひ ひかり たか かぜ ふ もっと まど そと なに み じ 

事務室の 窓 かけ は 日の 光の 中に ゆっくりと 風に 吹かれて ゐる" 尤も 窓の 外 は 何も 見えない。 isi- 

. む しつ なか お ほ づくゑ しろ クァ グヮル き し な じん .^.i たり さ む ちゃう ぼ し ひと 

務窒 のまん 中の 大 机に は 白い 大掛兒 を 着た 支那 人が 二人、 差し 向か ひに 帳簿 を撿ら ベて ゐ る-" 一 

り はたち ぜズご ひとり き なが くちひげ 

人 はま だ 二十 前後で あらう。 もう 一人 はや や 黄ばみ かけた、 長い 口髭 を はやして ゐる。 

はたち ぜんご ,レ な じん ちゃ-. っ^ はし めあかれ けな 

そのうちに 一 一十 前後の 支那 人 は 帳簿へ ぺ ンを 走らせながら、 目も擧 げすに 彼へ 話しかけた, - 

「ァ アル. ユウ. ミス タァ. ヘンリイ. バレット. ァ アン ト. ユウ?」 

ほ ス ざぶ らう で き いう It- ん ぺ キンく わん わ へん.:; J われ これにつ ぼんみ っプ しこうし 

半三郞 はび つくりした。 が、 出來る だけ 悠然と 北京 官話の 返事 をした T 我は是 日本 三菱 公司の 

をし の はん ざぶ らう こた 

忍 野 半 三郞」 と 答へ たので ある。 

きみ につばん じん 

「おや、 君 は 日本. < です か?」 

め あ しな じん おどろ い とし ひとり し な しん もやつ T 

やっと 目を擧 げた 支那 人 はや はり 驚いた やうに かう 言った。 年と つたもう 一 人の 支那 人 も 帳簿 

なに か よう ぜん はん ざぶ らう ♦-, か 

へ 何 か 書き かけた まま、 茫然と 半 三郞を 眺めて ゐる。 

3 ひとち が 轚 

3 「どうし ませう? 人 違 ひです が。」 



脚の IT ふ 

な 
い 

折 を 
り 

目め 
の 

正さ 
し 
い 

白 ろ 
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ボ 
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を 
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る 

風力^ 

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爲,: 

め 

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39 



こま じつ こま だいいち かくめいい に -, いちど 

「困る。 實に 困る。 第 一 革命 以來 一 度 もない こと だ。」 

とし し *5-! じん おこ み て "る «. 

年と つた 支 到 人 は 怒った と 兄え、 ぶるぶる 手の ぺ ンを震 はせ てゐ る。 

と かく— や か へ たま 

「5^ に 角 早く 返して やり 給へ。」 . 

やみ を.; 1 の, べん ま, だ 

一 は. —— ええ 忍 野 君です ね。 ちょっと 待って 下さいよ o」 

は.^ ち- , ^ん- ご し な. じん あ あつ *.ゃぅ^,< なに くち なか よ ,r4, っヌ 

二十^ 後の 支那 人 は 新ら たに 厚い 帳簿 を ひろげ、 何 か 口の 中に 讀み はじめた。 が、 その 帳簿 を 

, Z 、 - お 、 * まへ いっそう おどろ とし し な じん i なし 

とさした と と i 一 i よりも 一 歷 驚いた やうに 年と つた 支那 人へ; かけた。 

« ^、め をし Q はん? ぶら うくん みっか まへ し 

「厥 HI です。 忍 半三郞 は 三日 前に 死んで ゐ ます。」 

みっか ま へ し 

「三日 前に 死んで ゐ る?」 

あし くさ りゃう あし もも くさ , 

一 しかも 脚 は 腐って ゐ ます。 兩脚 とも 腿から 腐って ゐ ます。」 

はん ざぶ う いちど かれら もんだ ふ したが ゲ - 1 - ち かれ し レ ご みつ 

半 三 はもう 一度び つくりした。 彼等の 問答に 從 へば、 第一 に 彼 は 死んで ゐ る。 1^1 一に 死後 三 

う へ だいさん あし くさ f か 土 お f , I ^ 

R を 終て ゐる。 第三に 脚 は 腐って ゐる。 そんな 英. i- げた ことの ある はない。 ^に 彼の 脚 はこの 

ゝ か才 ^^ぃレ なが はや おも お ほご ゑ だ お まご ゑ だ ふレ f 

通り 彼 は 胸 を 眺める が 早い か、 思 はす あっと 大聲を 出した。 大聲を 出した のも不 議でま 



なび かれ い くわう けい み , とき ほ ,ごん かれ め り や. つて み 

靡いて ゐる! 彼 はかう 言 ふ 光景 を 見た 時、 殆ど 彼の 目 を 信じなかった。 が、 兩 乎に さはって 见 

じっさいり やう あし もも した くうき つか おな ナ: んざ ふらう しり 

ると、 實際兩 脚と も 腿から 下 は. さ 氣を摑 むのと 同じ ことで ある。 半三郞 はとうとう:^ もち をつ い 

どうじ また あし い ちゃう ど ふうせん ゆか ラへ 

た。 同時に 又 脚 は —— と 言 ふよりも ズボン は 丁度 ゴ ム 風船の しなびた やうに へな へ なと 床の 上 へ 

お 

下りた。 

ち 

「よろしい。 よろしい。 どうにかして 上げます から。」 

とし しな じん い のち よ ふん き わか したやく はな 

年と つた 支那 人 はかう 言った 後、 まだ 餘愤の 消えない やうに 若い 下役へ 話しかけた。 

きみ せきにん い きみ せきにん さつ そ,、 じ やう しんしょ だ 

「これ は 君. の 責任 だ。 好い かね。 君の 責任 だ。 早速 上申書 を 出さなければ ならん。 そこで だ。 そ 

げんざい い 

こで ヘンリイ. バ レット は 現在 どこに 行って ゐ るかね?」 

いまし "つ ところ きふ ハ ン カオ で 

「今 調べた 所に よると、 急に 漢ロ へ 出かけた やうです。」 

ハン カオ でんばう う あし と よ 

「では 漢ロ へ 電報 を 打って ヘンリイ. バ レットの 脚 を 取り寄せよう。」 

だ め ハン カオ ちし ,、 をし の くん どう くさ 

「いや、 それ は 駄目で せう。 漢 口から 脚の 來る うちに は 忍 野 1^ の 胴が 腐って しま ひます。」 

こま じつ こま 

「困る。 實に 困る。」 

とし し な じん たんそく なん きふ くちひげ いっさう . さが * 

年と つた 支那 人 は 歎息した。 何だか ^に 口髭 さへ 一 1^ だら りと 下った やうで ある。 



きみ せャ こん さっそく ヒ わう しんしょ だ あいてく ヒ ようき やく だ】 _ , , 一 

「こ^は 君の 责 a- だ。 早速 上申書 を 出さなければ ならん。 生憎 乘 客は淺 つて ゐま いね?」 

1 ち. シ かノ; 1 まへ もっと うま いつび き 

「ええ、 j 時間ば かり 前に 立って しま ひました。 尤も 馬なら ば 一 匹ゐ ますが。」 

「何 處の馬 かね?」 

とくしょう もしぐ わい う i いち う., H いま し, . > D . 

「# き if 外の 馬市の 馬です。 今し がた 死んだ ばかりで すから」 

「ぢ やその 馬の 脚 をつ けよう。 馬の 脚で もない より は 好い。 ちょっと 脚 だけ 持って 來 給へ。」 

n ザ の ダ¥ ^は l^s.^ 獻を 調れ ると、 すうつ と!: かへ ぎて がって しまった。 半 ョ郞は 三 

ぎび つくりした。 ぎで もケ の^に よると、 馬の 脚 をつ けられる らしい。 H:l の 脚な どに なった U に 

はガ i グビ ある" は 夙 もち をつ いたま ま、 年と つた 支那 人に 歎-做した。 

「もしもし、 i ゾの断 だけ は 縦 It^ て f.- さい。 わたし は 馬 は大嫌 ひなので す。 どうか 後生 一生のお 

: - -^^ く" ヒ な/〉 あし せう くぐら ゐ-に すお 

g ひです から、 ぶ li の 脚 をつ けて 下さい。 へ ン リイ 何とかの 脚で も かま ひません。 少々 位^^で 

も人間の脚ならば我!^しますから。」 

とった 支那 人 は 氣の毒 さう に 半 三 郞を見 F しながら、 何度も 點頭を 繰り返した。 

£ 6 にんげん あし さいなん ぁキ: ら 

脚 「そ, 5:- はあるなら ばつ けて 上げます。 しかし 人 問の 脚 はない のです から。 — まあ、 災難と ふ諦 



うま あし ぢぉ うぶ とき- て いて つ う やまみ ち へ いに- 

めなさい。 しかし 馬の 脚 は 丈夫です よ。 時々 蹄鐵を 打ち か へれば、 どんな 山 近で も 平ぐ 湫で すよ.^ 

…… J . 

わか したやく う iH あし に ほん さ .5 た & ちゃう 

するともう 若い 下役 は 馬の 脚 を 二 本 ぶら下げ たなり、 すうつ と 又 どこかから は ひって 來た e 丁 

ど きふ じ ながぐつ もく おな はん ざぶ らう に 

度 ホテルの 給仕な どの 長靴 を 持って 來 るのと 同じ ことで ある。 半 一 r: 郞は 逃げよう とした, - しかし 

り やつ あし , ^な ようい こし あ でき したやく かれ そ. は く しろ 

兩脚 のない 悲し さに は 容易に 腰 を 上げる こと も E£ 來 ない。 そのうちに 下役 は 彼の 側へ 來 ると、 

ぐつ くっし i, こ 于: づ だ 

靴 や 靴下 をが し 出した。 

う. ま あし たま だいいち ほく しょうだく へ H く あし しう >-ん ,二 か 

「それ はいけ ない。 馬の 脚 だけ はよ して くれ 給へ C 第一 僕の 承諾 を經 すに I 僕の 脚を修 緒す る 法 は 

ない C …… 」 

はんや J ふらう わめ したやく みぎ あな 51 あし いつほん うま あし 

半三郞 のかう 喚いて.^ るう ちに 下役 は ズボンの 右の 穴へ 馬の 脚 を 一. 本 さしこんだ。 馬 の 脚は齒 

みぎ もも く こんど ひだり あな いつ 1<ん あし 

でも ある やうに 右の 腿へ 食ら ひついた C それから 今度 は 左の 穴へ もう 一本の 脚 を さしこんだ。 こ 

$ く 

れも亦 かぶりと 食ら ひついた。 

「さあ、 それでよ ろしい。」 

はたち ザん-ご し な じん ん ぞく チラ う つめ まが りゃうて あに . んざ ふらう 

二十 前後の 支那 人は滿 足の 微笑 を 浮かべながら、 爪の 長い 兩手 をす り 合せて ゐる。 半 三 郎はぼ 



脚の^ 



43 



かお あし が しろ さき ふと くりげ うま あし に ほん 

ん やり 彼の 脚 を 眺めた" するとい つか. m ズボンの 先に は 太い 栗毛の 馬の 脚が 二 本、 ちゃんともう 

ひづめ なら 

蹄 を 並べて ゐる。 ! 

i んざ ぶ,: う こ こ お ぼ すくな さき こ こ き: おべ のし 一 

ニ郞 は此處 まで 覺 えて ゐる。 少く とも その 先 は此處 までの やうに はっきりと 記愤 には殘 つて 

なし ふたり し な じん けんく わ お ぼ またけ は はし-ご だん ころ お 

ゐ ない。 何だか 二人. 3 支那 人と i は嘩 したやう にも 覺 えて ゐる。 又險 しい 梯子段 を轉げ 落ちた やう 

にも えて ゐる。 が、 どちらも 確かで はない。 鬼に 角 彼 はえたい の 知れない 幻の 中を彷 sli^ した 後 

しゃう き くわ、 ふく とき こ とう しゃたく f れ ぐわん なか よこ ちゃう 

やっと 正氣を 恢復した 時には X X 胡 同の 社宅に 据ゑた 寢柁の 中に 橫 たはって ゐた。 のみなら す 丁 

ど ねぐ わん i へ わか ほんぐ わん じ は ふ けうし ひとり ぃス だう なに わた- I 

度寢椅 の. 前に は 若い 本願 寺 派の 布 敎師が 一 人、 引 t ポ か何か を 渡して ゐた。 

、 よぐ ざぶ らう ふくく わつ ひやう ばん もちろん じゅん てんじ . う ため お ほ かれ しゃしん 

かう 言 ふ? H ニ郞の 復活の 評判に なった の は 勿論で ある。 「順 天 時報」 は その 爲に 大きい 彼の isi: 

だ さんだんぬ きじ かか なん きじ したが も ふ 二 き つねこ 

を 出したり、 三段拔 きの 記事 を揭 げたり した 。何でも この 記事に 從 へば、 喪服 を^た 常 子 はふ だ 

、つきう あるう はやく どうれ う む だ かう でん くわい ひ ふくく わつ しゅく. P 

ん よりも 一 層に こに こして ゐ たさう である。 或 上役 や 同僚 は 無駄に なった 香奠 を 會费に 復活 祝贺 

くわ ノ ひら もっと ゃキゐ はかせ しんよう き けん ひん ちが かせ いう ぜん 

會を いたさう である。 尤も山井^^士の信用だけは危險に颜したのに違ひたぃ。 が、 傅 I- は 悠然 

よ t ふ i けむり わ ふ たく しんよう くわい ふく い が 二 てう 么っ し ぜん し/び り. .-^,-リ 

と 葉 卷の煙 を 輪に 吹きながら、 巧みに 信用 を 恢復した。 それ は 醫學を 超越す る 自然の 神秘 を 力説 

たかせ じ しん しんよう か は い がく しんよう ソ-ぅ き 

したので ある。 つまり 士 自身の 信 川の 代りに 醫學の 信用 を拋棄 したので ある。 



たう にん よん ざぶ らう ふくく わつ しゅ C がく わい しゅっせき とき す こ う カ!:^ み. 

けれども 當 人の 牛三郞 だけ は 復活 祝賀 會へ 出席した 時 さへ、 少しも 浮いた 額を见 せなかった 

み もちろん ふしぎ かれ あし ふくく わつ いらい i „ うま あ 化. i は,.'. - - I 

見せなかった の も 勿論、 不思議で はない。 彼の 脚 は 復活 以來 いつの 問に か 馬の 脚に 變 つて ゐんの 

a ぴ ,f J- ひづめ くりげ うま あし か は れ ? ノレ た. たむ なん 

である。 指の 化り に 蹄の ついた 粟 毛の 馬の 脚に 變 つて ゐ たので ある。 彼 はこの 脚 を 眺める 度に 仆 

. ff かん i ん いち あし み ひ , 、わい しゃ かなら はん ざぶ らう くわく しゅ Z 

ともず はれぬ 情な さ を 感じた。 萬 一 この 脚の 見つかった 日に は 會社も 必す半 三 郞を馘 おしてし ま 

ちが どうれ う こん-ご かう さい ご めん うむ _ つねこ 、んむ ) 

ふのに 違 ひない。 同僚 も 今後の 交際 は 御免 を 蒙る のにき まって ゐる 常 子 も —— - ああ 「弱 きもの 

おん ぢ な をん な つねこ おそ れい も うま あし をと こ ご て-いしに, i-r I - 

よ 汝の名 は 女な り」 ー 常 子 も 恐らく はこの 例に れす、 馬の 脚な どに なった を 御 1 や 主に 持って 

はん ざ ふらう かんが たび カ才 あし ソ ,- , 

はゐ ないで あらう。 . 1 . 半三郞 はかう 考 へる 度に、 どうしても 彼の 脚 だけ は 12 さな けれ はならぬ 

つ 一ん わふく 丈、 ため ながぐつ ため よくしつ ど と 

と!^むした。 和服 を廢 したの も その 爲 である。 長靴 を はいたの も その 爲 である。 浴室の 窓 ゃ戶じ 

_T んぢ ゆう ため かれ た ふ あん かん ^.^ i た ん 

まりを 『g 重に したの も その 爲 である。 しかし 彼 は それでも なほ 絕 えす 不安 を 感じて ゐた 又不 v?- 

を 感じた の も 無理ではなかった のに 違 ひない。 なぜと, へば、 —— 



4 



よ んど ぶ. 1 う ナ? か,, どうれ う ;,1 わ: さ かれ ゾ しゾ〉 な〃 , *^ づし/ U ^ズひ 、に 

IH ニ郞 のま づ 警戒した の は 同僚の 疑惑 を 避ける ことで ある。 これ は 彼の 苦、 もの 中で も 比 3^. 的樂 

i う し かれ にっき た せう き はん たたか 

な 方だった かも 知れない。 が、 彼の 日記に よれば、 やはりい つも 多少の 危險と 闘 はな けれ はたら 

なかった やうで ある。 



脚の w さ 



45 



しちぐ わつ にち わか し な じん け あし お XI ち し りゃう t う 

「七月 X 日 どうも あの 若い 支那 人の やつ は 怪しから ぬ 脚 をく つけた ものである。 俺の 脚 は刚方 

とも 资の 巢窟と ーず つても &ぃ。 俺 は 今 H も 事務 を 執りながら、 氣遠 ひになる 位 痒い 思 ひ をした。 

と かくた うぶん ぜんりょく あ のみたい ち く ふう 

鬼に角當分は全カを擧げて义^^退治のェ夫をしなければならぬ。 …… 

はちぐ わつ にち おれ け ふ ところ しゃう ばい はな い t なし 

「八月 X 日 俺 は 今日 マネ H ヂャァ の 所へ 商寶 の こ と を 話しに 行 つた。 すると マネ エヂ ャァは 話 

i た ... な な おれ あし に ほ ながぐつ そと はっさん 

の 中に も 絶え 寸鼻を 鳴らせて ゐる。 どうも 俺の 脚の 臭 ひ は 長靴の 外に も發 散す るら しい。 …… 

くぐ わつ にち うま あし じ いう せいぎょ たし ばじゅつ こんなん お. け ふ ひる やす ,H へ 

「九月 X 日 馬の 脚 を 自由に 制御す る こと は 確かに 馬術よりも 困難で ある。 佈は今 日 午 休み 前に 

いそ よう い こ ば-し はしご だん はしお たれ ^ しゅんかん よう 

急ぎの 用 を:: 一一 II ひつ けられた から、 小 走りに 梯子段 を 走り 下りた。 誰でも かう 言 ふ 瞬 問に は 川の こ 

おも おれ ため i うま あし わす - 

としか 思 はぬ ものである。 俺 も その 爲 にいつ の 間に か 馬の 脚 を 忘れて ゐ たので あらう。 あっと; W 

i おれ あし はしご だん しち だんめ ふ ぬ 

ふ 問に 俺の 脚 は 梯子段の 七 段 E を 踏み抜いて しまった。 …… 

じふぐ わつ にち おれ うま あし AJ い-つ せいぎょ お ぼ だ た.! L とく み 

rf 月 X 日 俺 はだん だん 馬の 脚 を 自由に 制御す る こと を覺ぇ 出した。 これ もやつ と體 して 兒 

ひっき やう こし つ あ ひひと け. ふ しつ い もっと け ふ しつ? S い ^^^^ おれ つみ 

ると、 暴 党 腰の 吊り 合一 つで ある。 が、 今日は 失敗した。 尤も 今日の 失 收は必 しも 怖の ぱ かり 

H 乃れ けさく じ ぜんご じんりきしゃ Q くわいし や い しゃふ じふに せ..? もんせ C 

ではない。 俺 は 今朝 九 時 前後に 人力車に 乘 つて X 誇 社へ 行った。 すると 車夫 は 4- ニ錢の 赏錢を どう 

しても 二十 錢 よこせと ず ふ。 おまけに 晚を つかまへ たなり、 會 社の 門 へ は ひらせ まいと する。 



46 



れ お ほ よら た しゃふ け と しゃふ くう ちう と あが 

俺 は 大いに 腹が立った から、 いきなり 車夫 を 蹴飛ばして やった。 車夫の 空中へ 飛び 上った こと は 

おも くら ゐ おれ もちろんこう くわい どうじ .*H たお も ふんばん と か: あし うつ- 

フット • ボ オル かと 思 ふ 位で ある。 俺 は 勿論 後悔した。 同時に 又 忍 はす 喷 飯した。 15^ に 角 脚 を 動 

とき い つ そうさ いしん ちう い 

かす 時には 一 曆 細心に 注意し なければ ならぬ。 …… 」 

どうれ う まんちゃく つねこ ぎ わく さ はる こんなん と はん ざ ふ 

しかし 同僚 を 瞞着す るよりも 常 子の 疑惑 を 避ける こと は遙 かに 困難に 富んで ゐ たらしい。 半 三 

らう かれ にっき なか だ こんなん つうたん 

郞は 彼の 日記の 中に 絶えす この 困難 を 痛嘆し てゐ る。 

しちぐ わつ にち おれ たいてき つねこ おれ ぶんく わせいく わつ ひつえう たて ひと に ほん *i 

「七月 X 日 俺の 大敵 は 常 子で ある。 俺 は 文化 生活の 必要 を循 に、 たった 一 つの 日本 §1 を もとう 

せいやう ま つねこめ まへ くつぬ つね 

とう 西洋 間にして しまった。 かう すれば 常 子の 目の前で も 靴を脫 がすに ゐられ るからで ある。 常 

子 は疊の なくなつ たこと を 大いに 不平に 思って ゐる らしい。 が、 靴 足袋 を はいて ゐ るに もせよ、 

あし に ほん ま ある たうて いおれ ふ か のう 

こ の 脚で 日本 問を步 かせられ るの は 到底 俺に は 不可能で ある。 ;… 

くぐ わつ にち "ひれ け ふ だう ぐ や う はら か ある ァ ノ リ 

「九月 X 日 俺 は 今日 道具屋に ダブル • ベッド を 資り拂 つた。 この ベッド を 買った の は 或 IS 米 利 

力 じん おれ いかへ そかい な 今- した ある い 

加 人の ォォク シ ョ ン である。 俺 は あの ォ オクシ ョ ン へ 行った 歸 りに 和界の 並み木の 下を步 いて 行 

な き ゑん ヒゅ はな ざ か う ズ が み-つ あか うつく いま ^ん 

つた。 並み木の 槐は 花盛りだった C 運河の 水明り も 美しかった。 しかし 11 今 は そ t ことに^ 

れん ば あ ひ おれ ゆうべ す こ つねこ よこばら け ところ 

f3 として ゐる 場合で はない。 俺 は 昨夜もう 少しで 常 子の 横腹 を 蹴る 所だった。 …… 



ちぐ わつ にち ;,) れ け ふ せんたく も おれし しんせんた.. ■ 、わ ち. い もっと で . 4- んた くや 

7 「十一月 X 日 俺 は 今日 洗 潘物を 俺 自身 洗濯屋へ 持って行った。 尤も 出入りの #^稷 屋 ではな、 >。 

>.ヌ あ- ん丄ぢ や-う そば せんたくや こん-.) じっかう さるまた し、 くっした 

東 tf^lE 場の 側の 洗濯屋で ある。 これ だけ は 今後 も實 行し なければ ならぬ。 猿股 や ズボン 下 ゃ靴ド 

うま け 

に はいつ も 馬の 毛が くっついて ゐ るから。 …… 

じふに ぐ わつ にち くっした き ひ t や-つ ヒっ つ ft こ し く, - した S, £ん 

「十! 一月 X 日 靴下の 切れる こと は 非常な ものである。 實は常 子に 知られぬ やうに 靴 I.. '化 をに.,^ 

する だけで も 並み大抵の 苦勞 ではない。 …… 

にぐ わつ にち おれ もちろん;? とき くっした した ぬ うへ つ こ 

「二月 X 日 俺 は,〃 論寢る 時で も 靴下 や ズボン F を^いだ こと はない。 その上 常 子に 見られぬ や 

おし さき まう-。. かく ようい ぞうはん つねこ うべ ね *、 へ 

うに 脚の 先 を 毛布に 隱 してし まふの はいつ も 容易なら ぬ nn: 險 であ る。 常 子 は 昨夜 寢る 前に 「あな 

たは ほんとうに 寒がりね。 腰 へ も 毛皮 を卷ぃ て いらっしゃ るの?」 と. 一; U つ た。 ことによると 怖の 

5*^ あし ろ けん とき き し 

馬の 脚 も 露見す る 時が 來 たの かも 知れない。 …… 」 

んざ ぶら う ほか い ,、た き けん さつぐ う いちいち i ぃキょ . うてい た ところ 

半三郞 はこの 外に も 幾多の 危險に 遭遇した。 それ を 一 一枚 擧す るの は 到-嫂 わたしの 堪 へる 所で 

はん^^;ぶらぅ にっき なか もっと おどろ しも かか で き ごと 

はない。 が、 半 三郞の 日記の 屮 でも:: 取 も わたし を 驚かせた の は 下に 报げ る出來 事で ある。 

,1 にぐ わつ にち おれ け ふ ひる やす りゅう ふくじ ふるぼん や のぞ い ふる ぼレゃ まへ ひ *, しゃ 

^ 一 二月 X 日 俺 は 今日 午 休みに 隆福 寺の 古本屋 を观 きに 行った。 古本屋の 前の R だまりに は lil 車 

脚 -> い. ちま, ふと, もっと せいやう ぼ しゃ ぁゐ いろ ほろ は しな 1;- しゃ ぎょしゃ もちろん 

がー 臺 止まって ゐる。 尤も 西洋の 馬車で はない。 藍色の 幌を 張った 支那 馬車で ある。 駄者も 勿論 



I 



ば fr^t 5 へ やす ちが おれ かくべつ 今- と ふる is んゃ みせ 

馬車の 上に 休んで ゐ たのに 違 ひない。 が、 俺 は 格別 氣 にも 止めす に 古^屋の 店へ は ひらう とした。 

と たん ぎょしゃ むち な こ ゑ う t あと 

すると その 途端で ある。 敷 者 は 鞭 を 鳴らせながら、 「ス ォ、 スォ」 と聲を かけた。 r スォ」 は 馬 を 後 

とき しな じん つか ことば ば しゃ こと" を は あと さが だ 

にやる 時に 支那 人の 使 ふ 言葉で ある。 馬車 はこの 言葉の 終らぬ うちにが たがた 後へ 下り 出した。 

• どう.^ お, どろ おれ ふるぼん や まへ み ひとあし あと V. が だ とキ- おれ 

と 同時に 驚くまい ことか! 俺 も 古本屋 を 前に 見た まま、 一足 づっ 後へ 下り 出した。 この 時の 怖 

こころ きょうふ い き やうが く い たうて いひつ でつ つく • で き おれ 、」: つ クと し 

の 心 もち は 恐怖と 言 ふか、 驚愕と 言 ふか、 到底 筆舌に 盡す こと は出來 ない。 俺 は 銜らに 一 足で も 

まへ で どりょく おそろ ふ かかう りょく あと が 、 

前へ 出ようと 努力しながら、 しかも 恐し い 不可抗力の もとに やはり 後へ 下って 行った。 そのうち 

ぎ はしゃ い れ ため かう ふく おれ ばしゃ と ひやう し 

に默 者の r ス ォ ォ」 と 言った の はま だし も 俺の 爲には 幸福で ある。 俺 は- 車の 止まる 拍子に やっと 

あと でき ふし ; おれ ひと、 き 

後す さり を やめる ことが 出來 た。 しかし 不思議 は それだけ ではない。 佈は ほっと 一 息しながら、 

おも ばしゃ はう め てん うま ばしゃ ひ あしげ ,つ, H t ん , -な i 

思 はす 馬車の 方へ 目を轉 じた。 すると 馬 は. —— 馬車 を牽 いて ゐた笋 わ 毛の 馬 は 何とも 一一 n はれぬ 脊き 

なん い なん い おれ ^し どし 二 ゑ なか 

かた をした。 何とも 言 はれぬ? いや、 何とも 言 はれぬ ではない。 俺 は その.! g 走った 聲の 中に 

たし うま わら かん うま "つ- れ つど 、なな こ あ 、メ: 

確かに 馬の 笑った の を 感じた。 馬の みならす 俺の 喉 もとに も 嘶きに 似た もの を こみ上げ るの を感 

こ ゑ だ たいへん おれ りゃうみ み て はや ひっさん きこ に 5^ 

じた。 この 聲を屮 I して は大變 である。 俺 は兩环 へ 手 を やる が 早い か、 一散に 其處を 逃げ出し てし 

8 

4, まった。 …… 」 



I の m 



49 



うんめい はん ざぶ.:: う ため さいご だ げき ようい い ほか んぐ わつ す fci 

けれども 運命 は 半 三 郞の爲 に 最後の 打 ど 用意して ゐた。 と 言 ふの は 外で もない。 三 の 末の 

あるひる ごろ かれ とつぜん かれ もし を ど 1; はっけん かれ あし 

或 午 頃、 彼 は 突然 彼の 脚の 躍ったり 跳ねたり する のを發 見した ので ある。 なぜ 彼の. おの 脚 はこの 

A-t きふ i.- わ だ ぎもん こた ため はん ざぶ らう にっき しら ふ かう 

時 急に 騷ぎ屮 Z した か? その 疑問に 答へ ろ 爲には 半 三郞の in 記 を 調べなければ ならぬ。 が、 不幸 

かれ にっき やう ど さい-ご だ げき う いちにち まへ を は ただ ぜんご じじ やう だいたい すん そ,、 

にも 彼の E 記 は 丁度:: 取 後の 打擊を 受ける 一 R 前に 終って ゐる。 只 前後の 事情に, より、 大 1^ の 描 測 

くだ ば せいき ば き げんき やうれ うぎ ぅゼだ しふ 1-/、 らう さう ばき やうとう しょしょ したが かお 

は 下せぬ こと もない。 わたし は- iil? 政紀、 馬 記, 元享療 牛馬 駝 依;^ 们樂 相馬經 等の 諸 112 に從 ひ、 彼 

の 脚の 興奮し たの はか うず ふ爲だ つ た と 確信し てゐ る。 I . 

たう じつ ナ-デ くわ うぢん ,、わ うぢん もうこ しゅんぷう ぺ キ ン はこ く すなほ こ じゅん てんじ はう 

當日は 列 i, しい 黄塵だった。 黄^^,とは蒙古の春風の北京へ運んで來る砂埃りでぁる。 「順 犬 時報」 

& じ たう じつ くわ うぢん じふ すうねんら いいえ かってみ ところ ご ほ そと せいやう もん あ ふ すで 

の 記事に よれば、 當ロの 黄 藤はト 數年來 未だ 嘗 見ない 所で あり T 五步の 外に •: 化 陽 鬥 を 仰ぐ も、 旣 

に 門樓を 見る 可から す」 と 言 ふので あるから、 餘程 烈しかった のに 遠 ひない。 然るに 卞:: :郞の Hil 

.l,c し とくしょう もんぐ わい う i いち へいば ムし またへ い あき t "'やう かこう .t- ん しう とほ 

の 脚 は德勝 門外の Hi!^ の斃 馬に ついて ゐた 脚で あり、 その 又 斃馬は 明らかに 張 家 n、 錦 州 を 通つ 

き もうこ さん ク ー ロンう ま かれ うま おし もうこ くうき かん はや ^, n i. ん」 と 

て來た 蒙古 產の 倫 iiiil である。 すると 彼の 馬の 脚の 蒙古の 氣を感 する が n 十い か、 忽ち 躍ったり 

i だ むし たう どん かつえた たう じ いぐ わい うま ひっし か, T び もと 

跳ねたり し 出した の は 寧 ろ 當 然 ではないで あ ら う か ? は 义當時 は .1 外 の Hilt の 必 死 に 交 を 水め 

ながら、 |ま 横に 駆け ま はる 時期で ある。 して 見れば 彼の STS 脚が ちっとして ゐ るのに 忍びな かつ 



どう ひやう あた ひ い 

たの も 同情に 價 すると 言 はなければ ならぬ。 …… 

かいしゃく ぜひ と かく はん ざぶ らう たう じつ くわいし や とき ふ た ふなに た は 

この 解釋の 是非 は 鬼 も 角、 半 三郞は 當日會 社に ゐた時 も、 舞踏 か 何 かする やうに 絶えす 跳ね ま 

またし やた く かへ と + つう ざん. Ti- やう あ ひだ じんりきしゃ しち だいふ 

はって ゐ たさう である。 又 社宅へ 歸る 途中 も、 たった 三 町ば かりの 間 に 人力車 を 七 蹇路 みつぶ し 

さいご しゃたく かへ のち なん つねこ けなし かれ いぬ あへ 

たさう である。 最後に 社宅へ 歸 つた 後 も、 —— 何でも 常 子の 話に よれば、 彼 は 犬の やうに IW ぎな 

-vi- や i き ながい す さい 

がら、 よろよろ 茶の 問へ は ひって 來た。 それから やっと 長椅子に かける と、 あっけに とられた 細 

くん ま そ、 びき も こ めいれい つねこ もちろん をつ と ようす だいじ けん おこ ャ うてう だいいち 

君に: a 引 を 持って 來 いと 命令した。 常 子 は 勿論 夫の 容 子に 大事 件の 起った こと を 想像した。 第一 

か i 一ろ ひじ やう わる い だ た ながぐつ あし うご か C ちょ 

録色も 非常に 惡ぃ。 のみなら す苟 立た しさに 堪 へない やうに 長靴の 脚 を 動かして ゐる。 彼女 は そ 

た び せう わす いったい ほそびき なん 々- 

の爲 めに い つもの やうに 微笑す る こと も 忘れた なり、 一 體 細引 を 何に する つもり か、 聞かして く 

一ん ぐわん をつ と くる ひた ひ . ^めせぬ ぐ /、かへ 

れと 歎願した。 しかし 夫 は 苦し さう に 額の 汗 を 拭 ひながら、 かう 繰り返す ばかりで ある。 

け や け や はや たいへん , 

「早くして くれ。 早く。 11 早く しないと、 大變 だから。」 

つねこ え に - つく つか ほそ プき ひとた.^ をつ と わた i= 'れ ほそびき ながぐつ りゃう あし しば 

常 子 はやむ を 得す 荷造りに 使 ふ 細引 を 一 束 夫へ 渡した。 すると 彼 は その 細引に 長靴の:. S 脚 を 縛 

か C} ぢょ こころ 1.1 つき やう い きょうふ 七き つねこ をつ と み 

り はじめた。 彼女の 心に 發 狂と 言 ふ 恐怖の きざした の はこの 時で ある。 常 子 は 夫 を a つめた まま、 

ふる こ. * 一 ゃ先ゐ は かせ いしん こ すす だ かれ ねっしん ほそびき あし 

震へ る 聲に山 井 博士の 來診を 請 ふこと を勸め 出した。 しかし 彼 は 熱心に 糾引を 脚へ からげ ながら、 



どうしても その 勸 めに 從 はない。 

や ふい しゃ なに どろぼう おほさ ぎし 生へ こ こ 

「あんな 藪醫 者に 何が わかる? あいつ は 泥 5^ だ! 大 詐偽師 だ! それよりも お前、 此 處へ來 

おれ か.,. J だ お. V,- 

て 俺の 體を 抑へ てゐて くれ。」 

かれら たが ひ だ あ ながいす すわ ぺ キ ン お ほ くわう. ぢん いよいよ けげ く は 

彼等 は 互に 抱き合つ たなり、 ぢ つと 長椅子に 坐って ゐた。 北京 を蔽 つた 黄 は 愈 烈し さ を 加 

いま い ひ t て ど そと ぜん ぜな ひかり い かん に-ご しゅ いろ ただよ 

へる ので あらう。 今 は 入り日 さへ 窓の 外に 全然 光と 言 ふ 感じの しない、 濁った 朱の 色 を 漂 はせ て 

はん ざぶ らう あし あ ひだ もちろん しづ わけ ほそびき くく め 

ゐる。 半 三 郞の脚 は その 問 も 勿論 靜 かにして ゐる訣 ではない。 細引に ぐるぐ る 括られた まま、 目 

み ふ た う 一,) つねこ をつ と いた また をつ と はげ 

に 見えぬ ペダル を 踏む やうに やはり 絶えす 動いて ゐる。 常 子 は 夫を劬 はる やうに、 又 夫を勵 ます 

まな 

やうに いろいろ のこ と を 話しかけた。 

ふる 

「あなた、 あなた、 どうして そんなに 露へ てい らっしゃ るんで す?」 

「例で もない。 何でもない よ。」 

「だって こんなに 汗をかいて、 1 1 この 夏 は. 2: 地へ 歸り ませうよ。 ねえ、 あなた、 久しぶりに. 2: 

地へ 歸り ませうよ。」 . 

「うん、 內 地へ 歸る ことにしよう。 ft 地へ 歸 つて 暮らす ことにしよう。」 



52 



こ ふん じっぷん に じっぷん とき い ふたり うへ ss- あゆ はこ い つねこ ヒ ゆ/てんじ 

五分、 十分、 二十 分、 11 時 はかう 言 ふ 二人の 上に 遲ぃ步 み を 運んで 行った。 常 子 は r 顺 人時 

+ へう き しゃ とき かのちよ こころ ちゃう どく さり つな しう ヒん はな かれ 

鞭」 の 記者に この 時の 彼女の 心 もち は 丁度 鎖に 繁 がれた 囚人の やうだった と して ゐる。 が、 彼 

これさん.:: J つぶん のち つ ひ くさり た とき き もっと つねこ いは ゆるく さり た とき けん 

是三 十分の 後、 畢に 鎖の 斷 たれる 時は來 た。 尤も それ は 常 子の 所謂 鎖の 斷 たれる 時で はない" 半 

ざぶ らう か でノ しば にんげん くさり た とき にご しゅ いろ す * へど なが かぜ 

三郞を 家庭へ 縛りつ けた 人 問の 鎖の 斷 たれる 時で ある。 濁った 朱の 色 を 透かせた 窓 は 流れ 風に で 

あ ふ とつぎん な わた どうじ は/ざぶ らう なに お ほ-ご, *S だ け. や さんじゃく 

も 爆ら れた のか、 突然 がたがたと 鳴り渡った。 と 同時に 半 三郞は 何か大 を屮 いすが 早い か、 三尺 

ちう と あが つねこ とき ほそびき き み はん T ふ う 

ばかり 宙へ 飛び 上った。 常 子 は その 時 細引の ばらり と 切れる の を 見た さう である。 卞:: 一郎 は、 I 

つねこ はなし かのちよ をつ と と あが み ながい す うへ しっしん 

—これ は 常 子の 話で はない。 彼女 は 夫の 飛び 上る の を 見た ぎり、 長椅子の 上に 失祌 してし まった" 

しゃたく し な じん おな き しゃ i, な t. ん r ぶら う なに お 

しかし 社宅の 支那 人の ボ オイ はかう 同じ 記者に 話して ゐる。 11 半 三 郞は何 かに 追 はれる やうに 

しゃ.,,、 く デん くわ C を ど だ いっし, 2 ん かん げんくわん さき たたす み ぶる むと 

社宅の 1_>-關 へ 躍り 出した。 それから ほんの 一 瞬 問、 玄關の 先に 佇んで ゐた。 が、 身. おひ を 一 つす 

ちゃう どう ま いなな に き み わる こ ゑ のこ わう らい こ くわ うぢん なか 

ると、 丁度 馬の 嘶きに 似た、 氣 味の 惡ぃ餘 を殘 しながら、 往 來を罩 めた 黄 簾の. 巾へ まっしぐらに 

走って 行って しまった。 …… 

n -., ^ん ざぶ ,1 う こんにち ざ もん もっと じゅん てんじ.:.. う & 丄ゃ や-う ひ- 

その後の 半三郞 はどうな つた か? それ は 今 口で も 疑問で ある。 尤も 「順 天 時報」 の- 7.^^ は 常 n 

_.J n はち じ ぜん-. 1 くわ うぢん けむ つきあ か なか ギ i うし をと 二 ひ. とり、 * ゾ-; ^り, -ち*\ぅ、々^;ぅ み., > - な; 

の 午後 八 時", 叩 後、 黄塵に 垔 つた:!: 明りの 中に 惰子を かぶらぬ がー 人 寓 里の 長: を! るのに 名 



の 



53 



お 4 ュ つ J.) つ てつ ど- r せんろ はし 3, ;!" う き I 力な f す 力く むつ - ノ 

高 い ル達衝 下 の 鐵道 線路 を 走つ て 行った こと を 報じて ゐ る。 が、 この 記 家 は 、おし も 確赏な 報? :3 て 

I またお な しんぶん き しゃ _.1 はち じ ぜんご ; ス わう 3 ん る ほ Z - I なか -ぺ うし. 

はなかった らしい。 麼に又 同じ 新聞の 記者 はや はり 午後 八 時 前後 黄. 藤 をが した lii: に 巾に 畅 MJ を 

をと こ とり せきじん せき f れつ じふさん りょう だいだう はし い r 5 

かぶらぬ 男が 一人、 石 人 石 馬の 列 をな した 十三 陵の 大道 を 走って In つたこと を 報じて ゐる する 

tcf ぶ,: う こ とう しゃたく げんくわん とだ のち ^^;んぜ;;^ど こョ ' : X- » お"; ゆ \ , 、ヽ nit に 

と^-ーー1郞は>ハ X 胡 同の 社宅の 玄關を 飛び 屮:: した 後 全然 何處 へどう した か 一 然しない と -B はな 

ければ ならぬ。 

灣 1 の も i の 露い」 g じ やうに 議 i なった の は Ms である。 しかし p、 マネ ェギ V 

ァ、 i、 i^. 「si」 あ 攀は いづれ あの 靈 を讀 i:」M いた。 もお 觀 

の II と 解 ffi- るの は i の 脚の 爲と 解釋 する のよりも 容易だった のに 遠 ひない.^ M を.^ つて:. £ 就 

っュ C ん. A こうだう こうだう だいへ う じゅん てん t . う しゅひつむ. だ ぐちし" L.^H \ 

くの は 1.^ に !k P の 公 道 で ある。 こ の 公道 を 代表す る 「順大 ,s 報」 の 主筆 キ多ロ 氏 は 化: ニ^ の ケ、 おし 

t くヒっ てぐ だい ふで ふる しも しゃせつ お ほやけ , 

た 翌日、 その 橡大の 筆 を 抑って 下の 社說を 公に した I . 

みつびし しゃ ゐん をし の .f. んざ ぶら うし さくゆ ふご じ じふ ご ふん A ぶぜん は。 き やう, --^ 、 つ, ねこ, ゾ、 ク と;, ゝ, : がふ 、 -., , 

「マー 菱社 ¥ 一 忍 野, 半 三 郞氏は 昨夕 五 時 十五 分、 突然 發 狂した る が^く 常 子 火 人の d も 一/。 を ^力う 

i! ん しん しつ!? つ どう じんぴ やう ゐん ちゃう やま ゐ に., かせ さ て、 ^,^0' L ^u.^ -^H^^u - -M^^'^- » 

i 息 いづこに か 失踪したり。 同仁 院長 山 井 博士の 說 によれ ぱ 忍^ 氏 は 昨复腦 溢,^ を... -ブリ 

ラ—^ Hii^l^y^ なりし より、 に!^ g を JJ^ せる ものな らんと (U ふ。 乂 常; ナ 夫人の #見 



をし し にっき ちょう し つお きく わい きょうはくく ォん ねん いう 一と しか ご じん 

したる 忍 野 氏の 日記に 徵 する も、 氏 は 常に 奇怪なる 恐 迫 觀念を 有した るが 如し。 然れ ども- r=i:i 人の 

と まつ をし の し 、び やうめ いいかん つね 二 ふ じん をつ と をし G し せきにんい かん 

問 はんと 欲する は 忍 野 氏の 病名 如何に あらす。 常 子 夫人の 夫た る 忍 野 氏の贵 任 如何に あり。 

そ きんおう む けつ こくたい か ぞくしゅぎ . う へた か ぞくしゅぎ うへ た いつ 

「夫れ わが 金 甌無缺 の 國體は 家族 主義の 上に 立つ ものな り。 家族 主義の 上に 立つ ものと せば、 一 

か しゅじん せ. i*,- にん い か ちゅう だい と ま いっか しゅじん みだり はつ やう けんり 

象の 主人た る 貴 任の 如何に 重大なる か は 問 ふ を 待た す。 この 一家の主 人に して 妄に 發;^ する 權利 

> X ご じん かか ぎ もん まへ だんこ いな こた こころ てんか をつ と はつ 

あり や 否や? 吾人 は斯る 疑問の 前に 斷乎 として 否と 答 ふるもの なり。 試みに 天下の 夫に して 發 

き Jo- う ナ しり え かれら ことごとく か ぞく あと あるひ だう と かう ぎん あるひ V; ん v,/、 せう えう あるひ 

狂す る 樣利を 得たり とせよ。 彼等 は 悉 家族 を 後に、 或は 道 塗に 行 i, し、 或は 山澤に 逍^し、 或 

またせい しんび やう ゐんり はう しょく だんい かう ふく う しか せ かい ほこ に せんねん らい か ぞくしゅぎ 

は 文精祌 病院 裡に 飽食暖衣す るの 幸 幅 を 得べ し。 然れ ども 世界に 誇るべき 一 ー干年來の家族主^^は 

ど ほうぐ わかい まめ か ご いはく そのつ み にく そ ひと にく ご じん もと をし の し こく 

土 崩 瓦解す る を 免れざる なり。 語に 曰、 其 罪 を惡ん で 其 人を惡 ますと。 吾人 は 素より 忍 氏に 酷 

しか けいこつ はつ キ- やう つみこ な せ 

ならん とする ものに あらざる なり。 然れ ども 輕忽 に發 狂した る" は 鼓 を 鳴らして 黄め ざるべ から 

な をし し つみ はっき やう きんしれ い とうかん ふ れきだいせ いふ しっせい てん か は せ 

す。 否、 忍 野 氏の 罪の みならん や C 發狂 禁止 令 を 等閑に 附 せる 歷代 政府の 失政 を も 天に 替 つて^ 

めざるべ からす。. 

つねこ ふ じん だん ふ • じん すくな いつ ねんかん こ とう しゃたく とど をし Q し か: 

「常 子 夫人の 談 によれば、 夫人 は少 くと も 一 ケ年 間、 XX 胡 同の 社宅に 止まり、 忍 野 氏の る を 

4 ま ご じん て、. しゅく ふ じん ため まん かう どうじ やう へう 七 も けんめい みつびした うじ ,しゃ 

5 待たん とする よし。 吾人 は 貞淑なる 夫人の 爲に滿 腔の 同情 を 表する と共に、 賢明なる 三菱 當事者 



脚の 馬 



55 



ため ふ じん べんぎ かう りよ やぶ さ せつば う 

の 爲に 夫人 の 便 {1 を 考慮す るに 吝 かなら ざ ら ん こと を 切望す る ものな り。 …… 」 

すくな つねこ はんとし C ち ごかい やす で き ある しんじ じつ 

しかし 少く とも 常 子 だけ は 半年ば かりたった 後、 この 誤解に 安ん する ことの 出 來ぬ或 新 事赏に 

さう ぐう ぺ キ ン やなぎ ゑん じゅ き は お じふぐ わつ ある ュく^ つねこ ちゃ 

遭遇した。 それ は 北京の 柳 ゃ槐も 黄ばんだ 葉 を 落とし はじめる 十月の 或 薄暮で ある。 常 子 は 茶の 

キぃ なが, す っゐ おく し-つ か C ぢょ くちびる いま えい ゑん び せう う 

間の 長椅子に ぼんやり 追憶に 沈んで ゐた。 彼女の 眷 はもう 八/では 永遠の 微笑 を 浮かべ てゐ ない" 

かのちよ 一な 5 ま にく うしな かのちよ しっそう をつ と う けら 

彼女の 頻も いつの 問に かすつ かり 肉 を 失って ゐる。 彼女 は 失踪した 夫の こと だの、 一- S り拂 つてし 

なス きん, P し 力 ズ 力 たれ が 

まった ダブル • ベッドの こと だの、 南京 蟲 のこと だの を考 べつ づけた。 すると 淮 かためら ひ 勝ち 

しゃたく げんくわん お か C ぢょ き とつ ..h お 

に 社宅の 玄關の ベル を 押した。 彼女 は それでも ハ湫 にもせ すに ボ オイの 取り次ぎに 任 かせて 措いた" 

い ようい すがた あらに うち いちど な つねこ 

が、 ボ オイ は どこへ 行った か、 容易に 姿 を 現さない。 ベル は その^に もう 一度 鳴った。 常 子 はや 

ながい す 「な しづ げんくわん ある い 

つ と 長椅子 を 離れ、 靜か に玄關 へ 歩 いてれ つた。 

. お ば ち げんくわん ばう し をと 二 ひとり うす あか なか たたす ?ク つし 

落ち葉の 散らばった 玄關に は 帽子 を かぶらぬ 男が 一 人、 薄明り の 中に んでゐ る。 m 子 を、 — 

了う し をと こ たし すなほ こ うは.; W す, やくよう 

1 いや、 帽子 を かぶらぬ ばかりで はない。 sf- は 破 かに 砂埃り に まみれた ぼろぼろの 上衣 を: 川し 

つねこ をと こ すがた ほ とん きょうふ ちか かん 

て ゐ る 。 常 子 はこの 男の 姿に 殆ど 恐怖に 近い もの を 感じ た。 

「何 か 御用で ございます か?」 



56 



をと こ なん へんじ かみ なが あたま た つねこ すがた す み いち 

男 は 何とも 返事 をせ すに 髮の 長い 頭 を 垂れて ゐる。 常 子 は その 姿 を 透かして 見ながら、 もう 一 

ど おそ おそ く かへ 

度 恐る恐る 繰り返した。 

なに なに ご よう 

「何 か、 …… 何 か 御用で ございま すか?」 

をと こ あたま もた 

男 はやつ と 頭を擴 げた。 

「常 子、 …… 」 

ひと ちゃう どげ つく わう をと こ を A- こ しゃうたい み み 

それ はたった 一 ことだった。 しかし 丁度 月光の やうに この 男 を、 —— - この 男の 正體を る: ij- る 

あき ひと つねこ いき C しばに く 二 ゑ うしな をと こ かほ み 

明らかにする 一 ことだった。 常 子 は 息 を吞ん だま ま、 少時 は聲を 失った やうに iR の 顔 を 見つめつ 

をと こ ひげ うへ べつじん やつ か C ぢょ み ひとみ たし ま 

づけた。 男 は 髭 を 仲ば した 上、 別人の やうに 妻れ てゐ る。 が、 彼女 を 見て ゐる隨 は 確かに 待ちに 

i ひ と み 

待った 瞳だった" 

「あなた!」 

つねこ さけ をつ と むね すが ひとあし だ はや ねって つ なに 二 

常 子 はかう 叫びながら、 夫の 胸へ 槌 らうと した。 けれども 一 足 屮:; すが:: 十い か、 熱鐵か 3: かを^ 

ちま またう し と をつ と や. ふ した け うま あし あに 

んだ やうに 忽ち 又 後ろへ 飛びす さった。 夫 は 破れた ズボン の 下に 毛 だらけの 馬の 腳を! r はして ゐ 

うす あか なか け いろ み くりげ うま あし あらけ 

る。 薄明り の 中に も 毛色の 見える. 架 毛の 馬の 脚 を. it して ゐる G 



lorn 



57 



「あなた!」 

つねこ, - つま あし めいじ やう で き けんお かん いつ さ 1 ご こ ど を. つと あ 

i お 子 はこの 馬の 脚に 名狀の 出來ぬ 嫌惡を 感じた。 しかし 今 を 逸した が は 取 後、 二度と 夫に 會 はれ 

飞 -^^ ' : 3 な; つと ^cy- よ かほ なが つねこ -v.; と をつ と むね 1,.-c ちょ 

ぬ こと を 感じた。 夫 はや はり 悲し さう に 彼女の; f を 眺めて ゐる。 常 子 はもう 一度 夫の 胸へ^ 女の 

だ へ、, ^ け/一 ビ いちど か G ぢょ つき A つた-つ 

體を:^^-けカけょぅとした。 が、 嫌惡 はもう 一度 彼女の Sfj 氣を壓 倒した。 

「あなた!」 

力の ぶよ さんど め い ときをつ と せむ ョも し-つ デし くわ,; > , 

彼女 は 三度 目に かう 言 つた 時、 夫 はくる り と 背 を 向け た と m 心 ふ と、 靜か に ヤス 關を おり て 〔:: つ た" 

つ わ こ- さいご 一 ゆうき ふる ひっし & つと お すが ひ, V 卜し ビ . 1 . ?. ,* み 

常 子は錄 後の 氣を狼 ひ、 必死に 夫へ 追ひ鎚 らうと した。 が、 まだ 一. M 止 も 出さぬ うちに ま 女の .zt 

- • • ^ ^ : > > つ,/、 ひづめ な おと つねこ あ を かほ よ ゆうき うし, 

にはひったのは,.:^^{々と^の鳴る音でぁる。 常 子 は 靑ぃ颜 をした まま、 呼びと める も 失った や 

- 、 *}. 一つと - つし すがた み げん 二わん おばな か t く しゃう き - つし *1 

う に ち つ と 夫 の 後 ろ 姿 を 見つめ た 。 それから、 11 玄關の 落ち葉の 屮に せ々 と ;止氣 を, ク て し ま 

つた。 …… . 

つねこ, じ けんい ^ ^ をつ と にっき しん どうれ. r ^t-,J ォ 

常 子 はこの 事件 以來、 夫の 日記 を する やうに なった。 しかし マネ エヂ ャァ、 M 攸、 山 井^ 士、 

す- fc ぐちし ち. ひと いま をし Q はん ざぶ,」 う う i ちし しし ,,ュ 二 

ネ多 W 氏 等 の 人び と は 未だに 忍 野 半 三郞の 馬 の 脚に なった こ と を 信じ て ゐ ない。 の みならす I 子 

ク; T, お.., 1£;^ , み ^ か、 ベ お, しん ペキンたい k- いちう ゃキ ゐ は," せ れ だ ぐちし 

の 馬の 群 を 見た の も 幻 覺に陷 つたこと と: じて ゐる。 わたし は 北京, 在屮、 山 井 博. } -ゃ牟 多 :!.^ 



に會 ひ、 度た びその 妄を 破らう とした。 が、 いつも 反對の 嘲笑 を 受ける ばかりだった。 その後 も- 

さいきん せう せっか を かお さぶ らうし だれ けなし き み ぶし 

. I いや、 最近に は 小 說家岡 EH 三 郞氏も 誰かから この 話 を 聞いた と 兄え、 どうも 馬の 脚に なった 

しん いて がみ を か だ しも じじつ た ぶんう え i へ あし 

こと は 信ぜられ ぬと 言 ふ 乎 紙 をよ こした。 岡 田 氏 は 若し 事實 とすれば、 「多分 の 前脚 をと つて つ 

おも そくほ い め-つぎ えん う いっそく まへ ちし も Q は く^ ゐ 

けた ものと 思 ひます が、 スペイン 速步 とか 言 ふ 妙技 を 演じ 得る 逸足なら ば、 前脚で 物 を 蹴る 位の 

か は げいし ゆ あさせう さ の はた 5*- じ しん お ほ 

變り藝 もす るか 知れす、 それ とても 揚淺 少佐 あたりが 乘 るので なければ、 して 馬 自身で やり 了 

ぎ もん おも い もちろん てん た せう ぎ わく いだ 

せる かどう か、 疑問に 思 はれます」 と 言 ふので ある。 わたし も 勿論 その 點には 多少の 疑惑 を 抱か 

え りい う ため はん ざぶ らう にっき つれこ はなし ひ てい 

ざる を 得ない。 けれども それだけの 理由の 爲に半 三郞の 日記ば かり か、 常 子の 話 を も 否定す るの 

いさ さ さう けい す げん しら ところ かれ ふくく わつ はう じゅん てん 

は 聊か 早計に 過ぎない であらう か? 現に わたしの 調べた 所に よれば、 彼の 復活 を 報じた 「順: K 

じ はう おな めん に さんだんした いきじ かか 

時報」 は 同じ 面の 一 一三 投下に かう 言 ふ 記事 を も 掲げて ゐる。 —— 

び くわ.^ -ん しゅく わいす.' やう し けいかん てつだう き しゃちう とんし どうし くすり プん て し 

「美 華 禁酒 會 長 へ ン リイ • バ レット 氏 は 京漢鐵 道の 汽車 中に 頓死したり。 同氏 は藥 を 手に 死 

じ さつ うたが しゃう びんち う すゐ やく ぶんせき 1: つく わ るゐ ほんめい 

しゐ たるより、 自殺の 疑 ひ を 生ぜし が、 罎 中の 水藥は 分析の t 柘果、 アル コ オル 類と 判明した るよ 

し。」 . 

(大 lii 十四 年 一 月) 



60 



お ふ はなぐ も あさ ひろこ キ- やうと ていしゃ; T やう とうき やう ほきき ふかう れっしゃ の ナっ こんご に- つ, > 

或 花 暴り の 朝だった。 廣子は 京都の 停車場から 東京 一.:;: の 急行^車に 乘 つた。 それ は^^ 後 二 年 

ひ おや き げん うかが ため はは そ ふ きんこんしき かほ ため 

ぶりに 母親 Q 機嫌 を 伺 ふ爲も あれば、 母 かたの 祖父の 金婚式へ 額 を つらねる 爲 もあった. い しかし 

ほか ざら よう からだ かのちよ ちゃう ど きく わい いもうと たつこ れんよ いも/だい 

まだ その外に-もまん 更用 のない 體 ではなかった。 彼女 は 丁度 この 機會 に、 妹の 辰 子の 戀愛 問-超に 

かいけつ おも いもうと き ばう あるひ IK た と t 

も 解決 をつ けたいと 思って ゐた。 妹の 5# 望 を かなへ るに しろ、 或は 又 かなへ ない にしろ、 见に 

あるかい けつ おも 

或 解決 だけ は つけなければ なら ぬ と 思 つ て ゐた。 

も /だい ひろこ し し -ご にち iH へ う と たつこ て がみ よ とき ;:) ろ こ とし 

一 一 の 問題 を廣子 の 知った の は g: 五日 前 に 受け取つ たお子 の 乎 紙 を 請んだ 時 だ つ た。 廣子は 年 ご 

いも-つと れ ノーめ いもんだ い おこ かくべつ いぐ わい おも 二 き い 

ろの 妹に 戀愛 問题の 起った こと は 格^ 意外に も W やはなかった" 豫 期した と 言 ふ ほどではなかった 

たぅネー^^ たし おも れんあい あ ひて あっすに えら い 

にしろ、 當 然と は 確かに m 心って ゐた。 けれども その 戀愛の 相手に 篤 介 を 選んだ と 一 H ふこと だけ は 

いぐ わい おも ひろこ キー しゃ ゆ いま あっす!:; かんが 

意外に 思 はすに は ゐられ なかった。 廣子は 汽^に 搖られ てゐる 今でも、 篤 介の こと を考 へる と、 



き 



61 



なに きふ い もう と あ ひだ たに で き かん 

何 か 急に 妹と の 問に 谷 あ ひの 出來た こ と を感す る の だ つ た。 

あっすけ ひろこ かほな じ ある やうぐ わけん きう じょ せいと しょちよ じ だい かの ぢょ いもうと 、つ 

旗 介は廣 子に もォ 1 馴染みの ある 或洋畫 研究所の 生徒だった。 處女 時代の 彼女 は 妹と 一 しょに、 

ゑ ぐ せいねん さる あだな かれ じつ V いかほ あか めう め かが ぞ 

この 畫の具 だらけの 靑年を ひそかに 「猿」 と, 評 名して ゐた C 彼 は實際 額の 赤い、 妙に EI ばかり 赫か 

せた、 ——— つまり 猿 じみた 靑 年だった。 のみなら す.: i?- なり も贫 しかった。 彼 は 冬 も 金釦の 制服に 

ふる ひろこ もちろん あっすけ なん きょうみ かん つ こ 

古い レ H ン. コ オト を ひっかけて ゐた。 廣子は 勿論 篤 介に 何の M ハ味も 感じなかった。 iiK 子 も 11 

たつこ あね くら いっそう かれ この あるひ. むし せきき よくて き にく い 

子は姊 に比べる と、 一 曆彼を 好まぬ らしかった。 或は 寧ろ 積極的に 憎んで ゐた とも 云 はれる ほ 

いちど たつこ でんしゃ あっすけ とな すわ .^c ぢょ 

どだった。 一度な ども 辰 子 は 電車に 乘 ると、 篤 介の 隣り に 坐る ことにな つた。 それだけ でも 彼女 

ゆく わい そ こ もた かれ ひ rj うへ しん ふんし - つつ ひろ .A だ 

に は 愉快ではなかった。 其 處へ又 彼 は 膝の 上の 新聞紙 包み を擴げ ると、 せっせと パン を 嚼ぢり 出 

でんしゃ なか ひと めい あは あっすけ わか よ かの ぢよじ しん うへ f/- ノ 

した。 .% 車の 中の 人々 の 目 は 云 ひ 合せた やうに 篤 介へ 向 つた。 彼女 は 彼女 自身の 上に も殘 酷に そ 

め そそ かん かれ ま い-つく く 

の ni の 注がれる の を 感じた。 しかし 彼 は 目 じろ ぎ もせす に悠々 とパ ンを食 ひつ づける のだった。 

や ?.' ん じん ひと 

「野 蟹 人よ、 あの人 は。」 

廣子 はこの ことのあって 後、 かう-政 子-の つたの を 今更の やうに m 心 ひ 出した。 なぜ その パぉ介 を 



あい ひろこ ふかかい いもうと きしつ おも いったんめ つ 

愛する やうに なった か? —— それ は廣 子に は 不可解だった。 けれども 妹の 氣質を 忍へば、 一 且篤 

すけ あい だ さいご くら ゐじ やうね つ も たいてい さう ざう で き き たつこ ぶつ 

介 を 愛し 出した が 最後、 どの位 情熱に 燃えて ゐ るか は 大抵 想像 出来る やうな 氣 がした。 辰 子 は 物 

こ ちち なに い ちづ きしつ あぶら ゑ はじ とき かのちよ 

故した 父の やうに、 何 ごとに もー圖 になる 氣 質だった。 たと へば 油畫を 始めた 時に も、 彼女の 夢 

ちう か げん か ぞく ぢぅ よ さう てう ゑつ かの ぢょ キ やしゃ ゑ ぐ ば こ こ わき あっすけ おな けん 

中に なり さ 加減 は 家族 中の 豫想を 超越して ゐた。 彼女 は 華奢な 叢の 具 箱 を 小脇に、 依 1 介と 同じ 硏 

きう じょ まいにち かよ だ どうじ i たかの ぢょ ゐ ま かべ いっしう かなら いちまい あたら あぶら ゑ 

究 所へ 毎日 せっせと 通 ひ 出した。 同時に 又 彼女の 居 問の 壁に は 一 週に 必す 一 牧づっ 新しい 油賓が 

だ あぶら ゑ ろくがう はちが う じんたい かほ ふうけい せいやう ふう たて 

かかり 出した。 油畫は 六號か 八號の カン ヴァス に人體 ならば 顔ば かり を、 風景なら ば EI 洋風の 建 

もの が お ほ ひろこ けっこん まへ なんか げっ こと ふか あき よ い 

物 を 描いた のが 多い やうだった _レ 廣子は 結婚 前の 何箇:^ か、 ,—— 殊に 深い 秋の 夜な どに はさう 云 

4C ふ..: ゑ なら へや なんじ かん いもうと はな たつこ おつ しん 

ふ 油畫の 並んだ 部屋に 何時 問 も 妹と 話し こんだ。 辰 子 はい つも 熱心に ゴ ォグ とか セザ ン ス とかの 

はなし たう じ ど こ じ やうえん ちう むし^:-のこぅぢ し ぎきょく はなし ひろこ びじゅつ ぶんげい 

話 をした。 當 時何處 かに 上演 中だった 武者 小路 氏の 戯曲の 話 もした。 廣子も 美術 だの 文藝 だのに 

ぜズ ぜんきよう 人 わげ かの ぢょ くうさう げいじゅつ ほ とん えん み い せいく わつ うへ おす 

全然 興味の ない 訣 ではなかった。 しかし 彼女の {4! 想は藝 術と は 殆ど 緣 のない 未来の 生活の 上に 休 

が, め あ ひだ が,、 ふち い っノ、 ゑう へ たまねぎ ほうたい や うぢよ かほ いもばた け 

み 勝ちだった。 目 は その 問 も 額緣に 入れた 机の 上の 玉葱 だの、 繃帶 をした 少女の 額 だの、 芋 inE の 

向う に 連った 監獄の 壁 だの を 眺めながら。 …… 

「何と 一ず ふの、 あなたの 畫の 流儀 は?」 



りろ こ たづ ため たつこ お-一 おも だ もっと 、もうと おこ - た.' 

廣子 はそんな こと を 尋ねた 爲に辰 子 を 怒らせた の を 思 ひ 出した。 尤も妹に怒られることは,^§ャ 

, め/つ , で に-.), と かれら げいじゅつ み もちろん せ.., くわつ.; U やう もん SJ い 、 す,;. お 

しも 珍ら しい 出來 事ではなかった。 彼等 は藝 術の nj- かたは 勿論、 生活 上の 問題な どに も の 遠 

たび げん あるとき むしゃ こ うぢ し ; ききょ: ノ あ に-ね ぎ, にく レっ 

こと は 度た びあった。 現に 或 時 は 武者 小路 氏の 戲. S さへ 言 ひ 合 ひの 種に なった。 その 紘:^ は 失 

めい あに ため ぎ せいてき けっこん あへ いもうと か ひろこ じ やう しん .ro ぶつ 

明した 兄の 爲に 犧牲 的の 結婚 を敢 てす る 妹の こと を 書いた ものだった。 廣子 はこの 上 彼 をお 物し 

-i. & > ヽ かつぢよ たいくつ かぎ せう せつ Jsir よく よ _b 、ヒ * つか. -. だお: 

た 時から、 (彼女 は よくよく 退!:: しない 限り、 小 說ゃ戲 曲 を 讀んだ ことはなかった。) 藝術 家ぎ の: S 

二の しつめい あん..!" なん 、 * もうと ぎ トー、 

を 好まなかった。 たと ひ 失明して ゐ たにしろ、 按摩に でも 佝に でも なれば 好い のに、,. 妹の 犠^ を 

^ I - ) fj こ しゅ しゃ, きょくげん たつこ あね けんたい に いも-つと どうしゃう- 

受けて ゐ るの はや 已 Th 義者 であると も 極言した。 辰 子 は 姊と は反對 に;; ん にも 妹に も 同情して ゐたリ 

あお い けん げんしゅ,、 ひ げ- 々一 *n げ,? -t ん わく せ け/じん >,,,: て , , , 

^ の お ^ は 嚴肅 な 悲動を わざ と T$ 鎖 に飜譯 する 世^人の 遊戯で あるな どと も 言 つた。 かう IU ふ 言 

あ す幺 ふたり 1: 二お IC 二 * ヒ ,: つ こ 

ひみ "ひの つ のった 末に は 一 一人と もき つと 怒り 屮 Z した。 けれども さきに i 心り 出す の はいつ も:;^ 子に 

ひろこ そ こ かの ぢ よじ しん いう ゑつ かん たつこ 

きまって ゐた。 廣子は 其處に 彼女 自身の 優越 を 感ぜす に は ゐられ なかった。 それ はお 子より もん, 

げレ) こ、 ころ かんば、 い いう ゑつ あるひ たつこ くうそ り V. う レ I ら , つ 

問の、.^ を 着 破して ゐ ると 言 ふ 優越だった。 或は 辰 子 ほど i<H 竦な 现 想に 捉 はれて ゐな いと: H ふ Si 越 

だった。 

才ぇ こんや おえ くだ そ,, > め " 勺 乞 

「姊 さん。 どうか 八/夜 だけ はほんた うの 姊 さんに なって 下さい。 聰明ない つもの 姊 さんで はなし 



64 



こ パー 

さんど め ひろこ おも だ い-ちう と て がみ いちぎ やう て がみ あ ひか はらす しろ かみ こ.. H 

三度 目に 廣 子の 思ひ屮 Z したの は 妹の 手紙の 一 行だった。 その 手紙 は 不相變 ,:! い 紙 を 細かい ぺ ン 

b うづ あっすけ くりんけ い ほ とん なに か 1^- だ ねんい く 

の 字に!^ めて ゐた。 しかし 篤 介との 關 係になる と、 殆ど 何 ごと も 書いて なかった。 唯 念入りに 繰 

かへ かれ たが ひ あい あ い かんたん じ じつ ひろこ もれ ろんぎ やう 

り 返して あるの は 被 等 は 互に 愛し 合って ゐ ると 云 ふ、 簡單 な事赏 ばかりだった。 廣子は 勿論:;;: の 

あ ひだ かれら くわん けい よ じっさい また おも よ ゆ うたが か しょ 

問に 彼等の 關 係を讀 まう とした。 實際又 さう 思って 護んで 行けば、 疑 はしい 個所 もないで はな か 

さ いおう かんが み みな かの ぢょ じ やす ゐ ひろこ いま 

つた。 けれども 将應考 へて 見る と、 それ も 皆 彼女の 邪推ら しかった。 廣子は 今 もとりと めの ない 

. -らだ かん いちど なに いうう つ あっすけ すがた おも うか きふ あっすけ に ほひ . 

背 立た しさ を 感じながら、 もう 一度 何 か 憂 11) な 篤 介の 姿 を 思 ひ 浮べた。 すると < !, ふに 介の 勻 -—— 

ちつす ナ からだ はっさん に ほひ ほ くさ に キ- だ かのちよ はいけん あや. 

篤 介の 體の發 散す る勻は 干し草に 似て ゐる やうな 氣 がし 出した。 彼女の 終驗に 誤りがなければ、 

ま くさ に まひ だい 亡 い い あさ どうぶつて き ほんのう と ひろ-一 い あつ 

千し 革の 勻の する 男性 は 大抵 淺 ましい 動物 的の 本能に 富んで ゐる らしかった。 ^子 はさう- ムふ恢 1 

す は いつ ヒ ゆん す ゐ いもうと かんが かんが た こころ 

介と 一 しょに 純粹な 妹を考 へる のは考 へる のに 堪 へない 心 もちが した ノ 

ひろこ れんさう なが かのちよ ク- しゃ ,-v ど f は 

廣 子の 聯想 は それから それへ と、 とめどな しに 流れつ づけた。 彼女 は 汽車の 窓 側に きちり と 膝 

かさ とき *,„ ど そと めう つ き しゃ み の くに ざ かひ ちか あ ふみ や *i かひ :^ん し 

を 重ねた まま、 時 どき 窓の 外へ s を 移した。 汽車 は 美 濃の 國 境に 近い 近 江の 山峽を 走って ゐた。 

やま かひ たナ やぶ すぎ, t やし あ ひだ しろ さくら V- み へんよ ダ-- た ム 

山^に ま 蔽ゃ 杉: It の 間に 白 じろ と 櫻の いて ゐ るの も 見えた。 「こ の? は餘 ほど 狭い と:^ える」 



5 —— 廣子 はい つか 嵐 山の 樱も 散り 出した ことな ど を 思ひ屮 Z して ゐ た。 



二 

ひろこ とうき やう かへ のす.' なに よう お ほ ため に さ にち あ, いだ いも. つと よ なし ネ. くわ" レ- ら 

廣子は 東京へ 歸 つた 後、 何かと 用ば かり 多かった に 二三 ni の 問 は 妹と も 話 をす る 機,^ を捉へ 

■ ) 5 とら はは そ ふ きんこんしき かへ き し,. じふ L 

なかった。 それ を やつ と捉 へたの は 母 かたの 祖父 の 金婚式 か ら歸 つ て來た 夜 の 卜 時 ご ろ だ つ た。 

いもうと ゐま れい とほ かべ い かべ あぶら ゑ た/ぶ i ゑん たく うへ 、ん J^v,, 

妹 の 居間に は 例の 通り 壁と 云 ふ t." に 油 書, がか かり、 に^ ゑた^ ネの 上に も 黄色い 笠. を かけた 

でんとう に ねん まへ ひか はな ひろこ ねまき >- か うへ よ おり も 

電燈が 二 年 前の 光り を 放って ゐた。 廣子は (铲べ 問 着に 着換 へた 上へ、 ^微 だけ 紋の あるの を ひっか 

ゑスた C まへ あんら,、 い す すわ 

けた まま、 圓 t やの 前 Q 安樂 椅子へ 坐った C 

「唯今お 茶 を さし 上げます。」 

たつこ あわ むか すわ t じめ い 

子 は姊の 向う に^る と 、 わざと 眞:. m n にこん な こ と を 言 つ た 。 

4.- や い 

「いえ、 もう どうぞ。 . ほんた うにお t 八 水なん ぞ 入らたい ことよ。」 

こうちゃ 、 

r ぢ や 紅茶 でも 人れ ませう か?」 

た. Y さん. . はなし き や-つ. たい 

「紅茶 も!: 山 . I それよりも あの 話 を 聞かせて 顶 戴」」 



ひろこ いもうと かほ み で さ き がる い い .^-っち.ぶ ,ハ つじ や-つ か たり 

廣子は 妹の 額 を 見ながら、 出來る だけ 氣輕 にかう 言った。 と 言 ふの は 彼女の 感情 を、 —— 可 3 

ふくざつ いんえい ^ かう き しん ひ なん あるひ また どうじ やう みす ため ひ こく 

複雜な 陰影 を帶 びた 好奇心 だの 非難 だの 或は 又 同情 だの を 見透かされない 爲も あれば、 被 小:: じみ 

いもうと こころ らく ため たつこ おも ほか こま 

た 妹の 心 もち を樂 にして やりたい 爲 もあった のだった。 しかし 成 子 は 思 ひの 外、 闲 つたら しいけ 

み とき かのちよ す こ へんく わ t; ふ 

は ひも 見せなかった。 いや、 その 時の 彼女の そぶりに 少しで も變 化が あつたと すれば、 それ は^ 

ぐろ かほ ど こ ほ とん め とま くら ゐ ふ, 1 ん ちゃう いろ うつ) 

黑ぃ 顔の 何處 かに^ ど 目に も 止らぬ 位、 緊張した 色が 動いた だけだった。 

「ええ、 是非 わたし も姊 さんに 聞いて 頂きたい の。」 

ひろ-一 ないしん かんたん まんぞく たつこ い し.: にく 

廣子は 內心プ n 口 オダの 簡單に すんだ ことに 滿 足した。 けれどもお 子 はさう 言った ぎり、 少時 

くち ひら ひろこ いもうと .H.- ん もく if な にく ため .A いしゃく いもうと うなが や- ん 

口 を 問かなかった。 廣子は 妹の 沈默を 話し 惡ぃ爲 と解釋 した。 しかし 妹 を 促す こと はちよ つと 殘 

一-了、 二 ころ どうじ また い いも, つと しつ ケ, ふや-つらく 1 一二ろ ひ/.' こ もんら く 

酷な 心 もちが した。 同時に 又 さう 云 ふ 妹の 一 恥 を享樂 したい 心 もち もした。 かたがた 廣子は 安樂 

い す せ せいやう がみ あたま もた ザん ぜんた うめん もんだい えん えいたん ことば おと 

椅子の 背に 西洋 髮の 頭を靠 せた まま、 全然 當 面の 問題と は緣 のない 詠嘆の 言葉 を 力 めした。 

なん むかし かへ き いす すわ 

「何だか 昔に 返った やうな 氣 がする わね、 この 椅子に かう やって 坐って ゐ ると。」 

ひろこ .,ハ っぢ よじ しん ことば せ うぢよ かんどう もよ ほ へ や な^ なが な, 

.廣 子 は 彼女 自身の 言葉に 少女 じみた 感動 を 催しながら、 うっとり 部屋の 屮を 眺め ま はした。 成 

ほどい す でんとう ゑんた r、 -A ベ おぶ に ゑ むかし き •-, つ、 とほ なに あ ひだ ふ し ザ へんく わ 

程 椅子 も、 雷 燈も、 圓阜 も、 壁の 油畫も 昔の 記憶の 通りだった e が、 かその 問に 不 E 心議 な變化 



^ が 起って ゐた。 何 か- .11 廣子 は!^ ち この^ I を のおに した。 S が:^ の tf?^ だの、 霸 

をした 少女の 額 だの、 竿 の 向う の 監獄 だの はいつ の i にか!: ぎ かへ ぎえ, やせて ゐた。 § ひ は ,きえ 

失せて しま はな いまでも、 二 年 前に は 見られなかった、 お;! い "きる さ を- てゐ た。 ^に g〕f 

は 正面に ある, j 枚の 油畫に 珍ら しさ を 感じた。 それ はぎき かの 齢 を いたお 、ぎつ ばかりの 5^,? まだつ 

た。 A 茶け た, に^ はれた がが と:^ II に いた 艇の^ とがが の n ピ^め いた ■ と、 — ま… に は 

その外に 何もなかった。 しかし 其 處には どの 畫 よりも しっとり した g る さが!! ザ 一」 ゐ, JG 

ゑ 

I あなたの 畫、 あすこに あるの も?」 

.f!„^!- つし ふ む あ ね ゆび V.; え .r.^> --っ 

お 子 は 後ろ を 掘り 向かす に、 姊の 指した 畫を 推察した。 

「あの 畫? あれ は大 村の。」 

大村は 篤 介の 苗字だった。 廣子は 「?< 村の」 にぎ 1^ を f じた。 が、 い TKmp しさに ぎた、^ もリ 

か を 感じた の も事實 だった。 しかし M 子 は無頓 iii^i の 1„を いぢり いぢり、 きち いた 一 g こお 

. しつづけた。 

ィ 一 田舍の 家の 庭 を 描いた のです つて。 -.11 大 村の {豕 は なんです つて。」 / 



「今 は 何 をして ゐ るの?」 

け- o、 わい ぎゐん なん ざんかう くわいし や も 

. r 縣會 議員 か 何 かで せう。 銀行 や 會社も 持って ゐる やうよ」 

ひと じ な/、 V- ん なん 

「あの人 は 次男 か 三男 かなの?」 

. 「長男 11 つて 「K ふかしら? 一 人き りし かゐな いんです つて。」 

ひろこ かれら はなし たう めん もんだい だ, ぶ, むし- クぃ^-ぃ^^.' ^-^ Z 

廣子 はいつ か 彼等の 話が 當 面の 問題へ は ひり 出した —— -と言 ふよりも 寧ろ その. 一 部 を 解:.;^ し 

てゐ たのに 氣が ついた。 今度の 事件 を 聞かされて 以來、 彼女の 氣 がかり になって ゐ たの はや はり 

あっす ナ み ぶぐ こと まづ かれ み せ ぞ,、 マき もんだい いっそう おも く は、 - , 

篤 介の 身分だった。 殊に 貧しげ な 彼の 身なり はこの 世俗的な 問題に 一 層の 重み を 加へ てゐた そ 

• *^ ^ ^ .,i もんだ y つ vj かた じ il> つ キ. - V.JS- 一 ふ 

れ をゲ 彼等 の 問答 は 無造作に 片づ けて しまった のだった" ふと そ の 貧に 氣 のつ いた 銜子は C あに 

JL. やうお ん い くつろ ,つ リス 

^談を 一一 一一 II ふ 寬ぎを 感じた e 

りつ は w かだんな V.- ま 

「ぢゃ 立派な 若旦那 様な のね。」 

f しゅく めう ら しゃ や V,- うこ にかい か 

「ええ、 只 そり ゃボ H H ム なの。 ;ト宿 も 妙な ところに ゐる のよ。 羅紗 屋の 倉^の 二 ^を惜 りて ゐ 

るの。」 

3 „: つ 二 ほ とん かう くわつ あね ゾソ せう お,、 ひろこ ブ せう なか とつぜん いちにん? へ をん な 七 ふ 

6 :!^ 子 は 殆ど 狡猾 さう に ちらりと 姊へ 微笑 を 送った C 廣子 はこの 微笑の 中に 突然 一 人前の 女を捉 



69 



もっと とうき やうえ キ」 で むか いもうと み とき ときん、 い しき C ほ 

へた。 尤も これ は 東京 驛へ 出迎 へた 妹 を昆た 時から、 時々 意識へ 上る ことだった。 けれども まだ 

いま せう てん あ ひろこ い しき 上 も たす.' ま つす け ,、わんい い 

今の やうに、 はっきり 焦點 3 合った ことはなかった。 廣子は その 意識と 共に 忽 ち 艳 一介との 關 係に 

た せう ぎ わく いだ だ 

も 多少の 疑惑 を 抱き 出した。 

「あなた も 其處 へがった こ と が あ る の ? 」 . 

「ええ、 度た び 行 つた ことがある わ。」 

ひろこ れん V う けつ-一ん へ あるよ き お,、 よ おこ はは よ ふ ろ かの 卜,ょ ひ 

廣 子の 聯想 は 結婚 前の.. 嫂 夜の 記憶 を 呼び 起した。 母 は その 夜風::,:: に は ひりながら、 彼女に = ど 

にな じ やう だん まじめ か、:: だ ぐ あ ひ た つ あい 

りの きまった こと を 話した. - それから 常談 とも 眞.^ 目と もっかす に體の 具合 を 尋ねたり した。 化 一 

に,、 よ はは たんば く た いど で かの ぢょ いま ただ いもうと かほ み や も ほか 

憎 その 夜の 母の やうに 淡白な 態度に 屮 いられなかった 彼女 は、 今 も唯ぢ つと 妹の^ を: 3- るより 外 

し たつこ あ ひか j らナぉ つ び せう うか ネふ 了 い, つ 一 Z 上つ 

に 仕 かたはなかった。 しかし-お 子 は 不相變 落ち着いた 微笑 を 浮べながら、 眩し さう に 黄色い. お^ 

の 笠 へ HI を や つ て ゐ るば かりだ つ た。 - 

「そんな こと をしても かま はない の?」 

お ほむら 

「犬 村が?」 

「いいえ、 あなたが よ。 誤解で もされたら、 迷惑 ぢゃ なくって?」 



70 



こかい ど ほ な- - けし チ, つじよ し/や ぢぅ >J > . 

「どうせ 誤解 はされ 通しよ。 何しろ 研究所の 連中と 來 たら、 そり や 口が うるさ いんです もの。」 

廣 7 はちよ つと 苛立たし さ を 感じた。 のみなら す 取り澄ました 妹の!! 度 もせな ではない かと; ず; 1 

ふ 猜疑 さへ 生じた。 するとお 子 は 弄んで ゐた 羽織の 紐 を 投げる やうに するな り、 ifi かう 1" ふ i 

を發 した。 

か あ ^6 くだ 

「母さん は 許して 下さる でせ うか?」 

二/ いちど いらだ かん てん ギ 一ん や- く 、もう A- .•- - 1.,: だ 

廣 子 はもう 一 度 苛立たし さ を 感じた。 それ は 恬然と 切り こんで 來る 妹に 跳す る^ 立た しさで も 

あれば、 だんだん受太刀になっ て來る彼女自身に對,.する^1^立たしさでもぁった。 ^4=-は1^くん.^んぉ 

ゑ う め あそ 二 今- 、 - C 

畫べ 浮かない 目 を 遊ばせた まま 「さう ねえ」 と 煮え切らない 返事 をした。 

.U え はな いただ 

r 姊 さんから 話して 頂けない?」 . 

た 一〕 こ あま ひろこ し せん とら 

お 子 はや ゃ廿 える やうに 廣 子の 視線 を捉 へようと した。 - 

: - な , 

i わたしから 話す つたって、 —— わたし も あなたた ちの こと は 知らな いぢ やない の?」 

キ ちゃう だい い 2 1 T キ, 

_ た 力ら 聞, > て 頂戴つ て 言つ てゐ るの よ。 それ を ちっとも 姊 さん は 聞く 氣 になって くれないんで 

す もの。」 



-^んこ 1,14 し とき たつこ し ビ<: く. ii- ん も/、 はな にく ため かいしゃく いま 

1 廣子 はこの is の はじまった 時、 辰 子の 少時 沈默 したの を 話し 惡ぃ爲 と解釋 した。 が • 八.' になつ 

み. ちんもく はな にく わし は-な あね rr t. 

て 見る と、 その 沈默は 話し 惡 いよりも、 寧ろ 話した さ を こらへ ながら、 姊の勸 める の を 恃 つて ゐ 

ひろこ もちろん うし き 

たのだった。 廣子は 勿論 後ろめ たい 氣 がした。 

ま, T とっさ いもうと ことば り よう わす 

しかし 又 咄^に 妹の 言葉 を 利 ffl する こと も 忘れなかった。 

「あら、 あなた こそ 話さない んぢ やない の? 11 ぢ やすつ かり 聞かせて 頂戴" その上で わたし 

も考 へ て 見る から。」 

「さう? ぢゃ 鬼に 角 話して 見る わ。 その代り ひやかしたり 何 かしち や 紙よ。」 

たつこ あ; t か ほ み かの ぢょ れス あい もんだい はな だ ひろこ. こ、 きび かたむ 

辰 子 はまと もに 姊の額 を 見た まま、 彼女の 戀愛 問題 を 話し 出した 廣子は 小お を 傲け ながら 

と.?., 4. 、へ.," じ かよ しづ てんとう おく ないしん あ ひだ た ふた もんだい かいけつ 

晚々 返事 をす る 化り に靜 かな 點頭 を. 送って ゐた。 が、 內心 はこの 間 も 絶えす 二つの 問題 を 解決し 

ひと かれに 4; ん あい なん ため しやう 、い 、 » 0± 

ようと あせって ゐた。 その 一 つ は 彼等の 戀 愛の 何の 爲に 生じた かと 言 ふこと であり もう 一 つ は 

かれら くわん ァ> くら ゐ すす い しゃ うぢき いもうと はなし ほ とん だいいち もス だい 

彼等の 關 係の どの位 進んで ゐ るかと 言 ふこと だった。 しかし 正直な 妹の 話 も 殆ど 第一 の 問題に は 

なん かいけつ あた たつこ ただ あっすに i いに ちか ほ あは I - かれ 二, ソ》 や、 , » 、 

何 の 解決 も與 へなかった。 炭 子 は 只, お 介と 毎日 顏を 合せ てゐる うちにい つ か 彼と 懇ぉ ^ になり い 

つかお i を 愛した のだった。 のみなら す 第二の 問題 もや はり 判然と はわから なかった。 UK 子 は 他 



72 



にん み, う < かれ き-つ こん とき はな じょ i 'やうし .?■.' >. f v_ 

人の 身の上の やうに 彼の 求婚した 時の こと を 話した。 しかも それ は 抒情詩よりも 寧ろ 練に おい 

ものだった。 11 . - 

お ほ. V ら でんわ きう こん を.^ なん る! しつば- たん-み うへ 

r 大村は 電話で 求婚した の。 可笑しいで せう? 何でも 畫に 失^して、 氬の 上に ころがって ゐた 

ら 急に そんな 氣 になつ たんです つて。 だってい きなり どう だって; 1 日った つて、 返 :4 に^って し 

* とき でんわ しつ そと か あ ざ い J.J 

ま ふぢ やない の? おまけ に そ の 時 は 電話室 の 外 へ 母さん も 探し もの に^て ゐ るん で せ う? わ 

し ただ ノ お 

たし、 仕 かたがなかった から、 只 ウイ、 ウイって 言って 置いた の。 …… 」 

, さき いもうと はなし けいく わい じ けん .:c 、 Jrl, し 、つ 一- Z リん, :• X 

それ 力ら?. I それから 先 も 妹の 話は輕 快に 事件 を 追って 行った。 彼等 は 一 しょに 膨 ils^i^::?- 

しょ,、 ぶ つ ゑん しゃ ト, J い い ある ドイツ き ; - > 

たり、 械物 園へ 寫 生に 行ったり、 或獨 逸の ピア -ー スト を!! いたりして ゐた。 が、 彼等の 亂^ ば^ 

こ 二とば しんよう とも いじ やう で ひろこ ゆだ" もうご - .X 

子の 言葉 を 信用 すれば、 友 だち 以上に 出ない ものだった。 廣子は それでも 油甌 せす il 妹の 紙 化 を 

う ふが はなし うら かんが いちに ど ま み たつ- - でんとう >- "り M 

窺ったり、 話の 裏を考 へたり、 一 二度 は 鎌 さへ かけて 見たり した。 しかし:^子は電燈の^^;!に!^ち 

つ ひとみ す す こ おく いろ み 

着いた 瞳 を 澄ませた まま、 少しも 臆した 色 を 見せない のだった。 

い しまつ ね, A も 

一 まあ、 ざっと かう ーョふ 始末な の。 —— ああ、 それから 姊 さんに わたしから 乎 紙 を 上げた ことね、 

お ほむら はな お 

あ の こ と は大村 にも 話し て 置いた の 。」 



ひろこ いもうと じな をに とき もち-ろん:;: が ゆ ュ: t ひとと i う あ 

3 廣子は 妹の 話し 終った 時、 勿論 齒. 拝い もの 足らな さ を 感じた。 けれども _ー ,^iり打ち明.けられて 

見 る と、 こ れ 以上 第 i 一 の 問题 に は 深入り 出來な い の に 遠 ひなか つ た。 彼女 は そ のばに やむ を!: す 

だいいち もス だい すが 

第 一 の 問題に 鍵り ついた。 

ひと だいきち ,, 

「だって あなた は あの人 は大嫌 ひだって 言つ て ゐたぢ やない の?」 

ひろこ 二 ゑ なか 一, -ぅ せん C- つし , し.,.,, . --っ こ と.., -^; -.. 、よ t 

廣子 はいつ か聲の 中には ひった 挑戰の 調子 を 意識して ゐた。 が、 M 子 はこの 問に さへ 笑 i を 

せた ばかりだった。 

r 大: 5: も わたし は 大^ 嫌 ひだつ たんです つ て。 ヂ ン. コ クテル 位は飮 みさうな 1 湫 がしたん です つ て。」 

「そんな もの を飮む 人が ゐ るの?」 

1 をと こ あぐら はな ひ ひと 

1 そり ゃゐる わ。 男の やうに 胡 坐 を かい て 花 を 引く 人もゐ るんで す もの。」 

「それが あなたがたの 新時代?」 

し おも - 

「力 も 知れな. いと 田, - つて ゐ るの。 …… 」 

f 一〕 こ 1 : は , よ. 、さ V . - ける まじめ へんじ おも ちま ぴ せう い- > /つど 

i;^ 子 は 姊の豫 想した よりも 遙 かに 眞 面目に 返事 をした。 と 思 ふと 忽ち 微笑と 一 しょに もう 一 度 

ケに わとう ひ もど 

ザ 話頭 を 引き戻した。 



「それよりも わたしの 問題 ひた わね、 姊 さんから 話して 頂けない?」 

「そり や 話して 上げない こと もない わ。 上げない こと もない けれども、 —— 」 

ひろこ あ. W ち うこく ことば く は たつ 二 V. 今. - ► な一 

寶子は あらゆる 姊の やうに 忠告の 實葉を 加 へようと した。 すると: 子 は それよりも 先に 力う 151:^ 

. を截斷 した。 

レー か,.. お ほ わら し ねえ に さんち , ^ち お ほむら あ くだ おは 

「15^ に 角 大ぉを 知らな いぢ やね。 —— ぢゃ姊 さん、 一 一三 日中に 大 村に 會 つち や 下さらない? 人 

も 喜んでお 目に かかる と 思 ふの。」 . 

ひち こ わ とう へんく わ おも お ほむら あ. ふ..: ゑ なが ふぢ はな こけ き ぎ あ ひだ % ^ 

廣子 はこの 話頭の 變 化に m や はす 大 村の 油 畫を 眺めた。 藤の 花 は 苔ばん だ 木木の 問に なせ か" 1 よ 

ノのぢ よ いっしゅんかん こころ なか わ かし タる はう ふつ ュぃ まで L - 

り も ほのぼのとして ゐた。 彼女 は 一瞬 問 心の中に 昔の 「猿」 を 勢;^ しながら、 暖眯に 「さう ねえ」 を 

繰り .i^ した。 が、 辰 子 は 「さう ねえ」 位に 滿足 する 氣色も 見せなかった。 

あ くだ お ほむら げし! S く い /、だ 

r ぢゃ會 つて 下さる わね。 大 村の 下 iiS へれって 下さる?」 

げしゅく い 

「だって 下宿へ も 行かれな いぢ やない の?」 

「ぢゃ 此處へ 來て貰 ひませ うか? それ も 何だか 可笑しい わね。」 

7 「あの人 は 前に も來 たこと は あるの?」 



t もど なん を か く J} 

5. 「いいえ、 まだ 一度 もない の。 それ だから 何だか 可笑しい のよ。 ぢゃ あと、 1! ぢ やかう して f.: 

お ほむら 4 め V.- つ てへ うけいく わん ゑみ ゆ じこく ねえ へ,. リナ. - 

さらない? 大村は 明後日 表慶 館へ 畫を 見に 行く ことにな つ てゐ るの。 その 時刻に 姊 さん も 表 劇 

くわん い お ほむら あ くだ 

館へ 行って 大 村に 會っ ち や 下さらない?」 

あ V,- つ て ち やう-と は., ハ ゐ つ、 c 

「さう ねえ、 わたし も i- 後日なら ば、 丁度お 墓參り をす る 次 乎 も あるし。 …… 」 

つろ こ い のち た ま けいそつ こ, くわい たつこ とき ぺ つじん 

廣子 はう つかり かう 言った 後、 忽ち 輕率を 後悔した。 けれども!:^ 子 は その 時にはもう 別人 かと 

おも く *1 ム んほ; :- う よろ 二 みなぎ 

思 ふ 位、 顏 中に 喜び を 漲らせて ゐた。 

やう だい お ほ,;., ら でんわ お 

「さう お? ぢ やさう して 頂戴 C 大 村へ はわた しから 電話 を かけて It ^くわ。」 

o ろ 二 いもうと かほ み くわ/ ぜ/ いもうと い し がいか あ t つ ナ,: > f 'つ 

廣子は 妹の 顏を 見るな り、 いっか 完全に 妹の 意志の 凱歌 を舉 げてゐ たこと を おした。 この 發 

けん 力の ゲ;' よ ぎ む しん か G ちょ じ そスし Z か c_ ちょ V- * ご *ち ど 、も, TAJ よ. A こ 

見 は 彼女の 義務 、七よりも 彼女の 自尊心に こたへ る ものだった。 彼女 は 最後. にもう,! 度,. 妹 の 客び 

丄, . : » 力れ ら ひ ,?っ キ. - たつ 二 と たん あれ く ち^ る つ-ご 

に乘 じながら、 彼等の ?M 密へ 切り こまう とした。 が、 辰 子 は その 途端に、 11 姊 の-行の 動かう と 

, .V たにん とつぜんから だ の はや おしろい は ひろ-一 ほほ おと たか おく ひろこ -も. つと 

した 途端に 突然 體を 仲べ るが 早い か、 ね 粉 を 刷いた 廣 子の 顿へ 音の 高い キス を 贈った。 廣子 妹 

う き おく ほ とん も あは も いちど --3 

の キス を 受けた 記憶 を 殆ど 持ち合せて ゐ なかった。 若し 一度で もあった とすれば、 それ はま だ 

^ -\ \ 么ん 、かよ じだい かの ぢょ い いもうと .r にどろ - し .? っ^ 

子の;$^稚園へ通ってゐた時代の こと だけだった。 彼女 はかう 言 ふ 妹の キスに 瞥: きよりも 寧 ろ^し 



76 



かん もちろ/なみ か cr, よ お つ う くづ かの;, • よ なか ぺ ゃメ 

さ を 感じた。 この ショック は 勿論 浪の やうに 彼女の 落ち着き を 打ち 崩した。 彼女 は 半ば 微笑した 

め いもうと にら は * か 

mi に, Q ざと 妹 を 睨める 外はなかった。 

なに 

「いやよ。 何 をす るの?」 

「だって ほんた うに 嬉し いんです もの。」 

たつこ ゑんた く うへ だ き いろ でんとう かさ-ご あ \: ぐろ かほ かがや 

子は圓 卓の 上 へ のり 巾 I した まま、 黃 色い 電燈の 笠 越しに 淺黑ぃ 顏を練 かせて ゐた。 

はじ おも ねえ ため なん >だ 

「けれども 始めから さう 思つ てゐ たのよ。 姊 さん はきつ とわたし たちの 爲には 何でもして F さる 

ちが じつ き ふ お ほむ. いちん ちね え はなし 

のに 違 ひない つて。 —— 實は 昨日 も大 村と 一 tn 姊 さんの 話 をした の。 それでね、 …… 」 

「それで?」 

たつ 一- めな か いた-つら こ ひらめ おど 

辰 子 は ちょっと 目の 中に 亞^ 戲 っ兒 らしい 閃き を 宿した。 

「それでもう おしま ひだ わ。」 

ひろこ プ1 やう だ-つぐ なに い ぎんざ: >、 さ なん: ^-ん ほ レリん キ- , 、う 

廣子は 化粧道具 や 何 か を 人れ た 銀細工の バ ッグを 下げた まま、 佝年 にも 殆ど 來 たことの ない 表 



^ 慶 館の 廊 一.- を 歩いて it つた。 彼女の 心 は 彼女 31 身の 豫 期して ゐ たより. も靜か だつ.; r のみなら す 

へつ-." よ お つ そこ た せう いうぎ しん い しき すうねん ぜん ぢょ 

彼女 は その 落ち着きの 底に 多少の 遊 戲心を 意識して ゐた。 數 年^の 彼ケ だった とすれば、 それ は 

或は 後め たい $^識 だった かも 知れなかった。 が、 今 は 後め たいより も 寧ろ 誇らしい 位だった。 彼 

女 はいつ か 肥 り 出し た 彼女 の 肉! £を 感じながら、 明るい ぎ 下の 突き 當り にある 蝶 旋狀の 階段 を 登 

つて &: つた。 

ら,/ ヒ やう , ^いだ/ のば ところ な, る つす ぐら だいいつ しつ かのちよ うすぐら な- > に をが ひ ナ- りぶ S 

蝶 旋狀の 階 12 を 登りつ めた 所 は晝も 蒲 In い 第一 . 室だった。 彼女 は そのぎ i= い 中に. 只 を鑠 めた 

-_ だい がく キ- こ だい ぴ やうぶ はっけん かんじん あっすに すがた あいに: へ や み あた 

古代の 樂器ゃ 古代の 碎 風を發 見した。 が、 肝^の 篤 介の 姿 は 生憎 この 部 m に は 見 常らなかった. - 

ひろこ ちんれつだな ガラス か C ぢょ かみ かたち うつ み (十, かくべつ いそ ,ごな り だいに しつ 

廣子 はちよ つと 陳列棚の 础 子に 彼女の 髮形を 映して a た 後、 やはり 格^ r ち e もせす に鄰の 第: : 室 

あし む 

へ 足 を 向けた" 

だいに しつ てんじゃう あか と よこ たて なが へ や i たなが : や nT が は ガ つ ス 

第二 窒は: 大 井から 明り を 取った、 横よりも 竪の 長い 部屋だった。 その 乂 長い 部 の 兩側を 硝子 

越しに 埋めて ゐ るの は 藤 原と か 鎌 倉と かず ふらしい、 もの 寂び た佛畫 ばかりだった" 亇リ 

も IT 版の.^. に 狐色に なった ク レヴァ ァ • ネット を ひっかけ、 この 伽藍に 似た^ 屋の屮 を ぶらぶら 

^ ひとり ある ひろこ かれ すがた み とき とっさ て い おこ かん かれ 

グ 一人 ゃソ いて ゐた" 廣子は 彼の 姿 を 見た 時、 州" お • に 敵意の 起る の を 感じた。 しかし そわ は 掛け 恤な 



78 



とっさ で き ごと れ とキ; なが ひ /- - - ハ や 

しに ほんの 咄嗟の 屮 I 來靠 だった。 彼 はもう その 時には まともに こちら を 眺めて ゐた。 廣子は 彼の 

かほ たいど ,*- 一 ま I さる かん どう;: J またき ^ -9 けい; つ かん 力れ な 力 t L 

額 や 態度に 忽ち 昔の 「猿」 を 感じた。 同時に 又氣 安い 輕蔑を 感じた。 彼 はこ ちら を 眺めた なり、 禮 

まんだん まよ めう お つ よう-^ たし わん 

をした もの かしない もの か 判斷に 迷って ゐる らしかった。 その 妙に 落ち着かない 容子は 確かに 戀 

あい えん A- ま ち パ> ひろこ め ,ひ せ- リ い いもう ヶ 

愛 だの ロマン ス だのと 緣の 逢い ものに 違 ひなかった。 廣子は 目 だけ 微笑しながら、 かう: 百 ふ 妹の 

二 ひびと i ^ こころ あしばや ある い 

戀 人の 前 へ 心 もち 足早に 歩い て 行った。 

お ほむら _-1 ぞんじ 

r 大 村さん で い らっしゃ います わね? わたし は —— 御存知で ございませう?」 

あっすけ ただ こた がっちょ . なか かれ ら-っ ="ぃ かん 

篤 介 は 只 「ええ」 と 答へ た。 彼女 はこの 「ええ」 の 中にはつ きり 彼の 狼^ を 感じた のみなら す こ 

の 一瞬 問に 彼の 段 鼻 だの、 金齒 だの、 左の 揉み上げの 剃刀 傷 だの、 ズボンの 膝の たるんで ゐるこ 

とだの、 —— その外 J ー數 へる にも 足らぬ 無數の i 實を發 見した。 しかし 彼女の 紅 €1 は 何も: m づ 

かぬ やうに 冴え^え して ゐた。 

ふ ヘメ 「て ねが まう ごめい わ ノ、 しつお い 

「今日は 勝手な こと をお 願 ひ 申しまして、 さぞ 御迷惑で ご ざ, いませう" そん た 失^ な こと を と は 

思つ たんで ございま すが、 例で もと 妹が 申す もんで ございま すから。 …… 」 

ひろ 二 t な 、しつ なが か なんき わ, - 

廣子 はかう is しかけた まま、 靜か にあたり を 眺め ま はした。 リノリウムの」 に は 何 脚 かの ベン 



チ なか あ. し なら そこ 二し か、 ひとめ たか 、と 

9 チも北 = 中 合せに 並んで ゐた C けれども 其 處に腰 を かける の は 却って 人 EI に 立ち 兼ねなかった。 ぶ 

め 力れ ら ダ』 んご くわん らん にん さんよ にん いま ふ げん もんじゅ まへ ヒ ど ,.: お 

目 は? —— 彼等の-前後に は觀覽 人が 三 四 人、 今 も 並 H 贤ゃ 文珠の 前に そっと 立ち. .i; まったり 歩いた 

りして ゐた。 

「いろ レろ恨 ひたい こと も あるんで ございます けれども、 ぢ やぶら ぶら 歩きながら、 お ー卞し 

する ことに 致し ませう か?」 

「ええ、 どうで も。」 

7JN- 二 ,レ! "らく. - ごん ざ严 つり ひ-: , ちんもく --し ぁク すす * , ^ ■ h : , , , 

廣 子は少 無言の まま、 ゆっくり 草履 を 運んで 行った。 こ の沈默は確かに篤化には!^ま.^ぉハ^ 

に 比しい らしかった。 彼 は か ず はう とする やうに ちょっと 一虚^ 拂ひを した。 が、 「^"ぎひ は. え 

じ やう ガ ラ ス た t-- ま お ほ はん々 やう しゃう かれ はん、 *r やう ,! 「そ な- - , ぉノ. J 

? R の^子に.^ ち 大きい 反響 を 生じた。 彼 は その 反響に 恐れた のか、 やはり.^ もず はすに.^ き つづ 

ひろこ い ノリれ メヽ つ- T- た i^J-r- .V- ス びん ..4 ノ" *^ - - i V *, ,ノ<^ > 二に, 

けた。 廣子 はかう 言 ふ 彼の 苦痛に 多少の 憐澗を 感じて ゐた。 けれども又何の矛!:5もなしに^^少の 

ふ-やう らく かん もっと しゅ ゑい くォん らん にん とき '、ん べつ あ.,: も r> ろ,; かつ けつに ふく. -- 

享樂を も 感じて ゐた。 尤も IT 衞 ゃ觀覽 人に 時々 一瞥 を與 へられる の は 勿論 彼女に も不; ^だった G 

しかし 彼等 も 年齡の 上から、 , 1 . とず ふよりも 更に 服装の 上から 決して 一 一人の 關係を 誤 級したい 

化 ^ か C ぢょ き やす うへ ふ あん あっす ナ み おろ ハ, I ^6>^ ■Ar-VT- 

: に は 遠 ひなかった。 彼女 は その 氣安 さの 上から 不安ら しい 篤 介 I を 見下して ゐた。 汶は 或は に 



80 



てき し てき よ な いも-つと つ) じつぼ ひやつ は 广-き 

は 敵. であるか も 知れなかった。 が、 敵で あるに もしろ、 惯れぬ 妹と 五十歩百歩の 敵で ある こと 

は 確かだった。 …… 

うかが まう たい 

r:^ ひたいと 申します の は 大した ことで はな いんで ございます けれどもね、 —— 」 

か C ぢょ だいに しつ で とき かれ め ほんもん だ 

彼女 は 第一 H 至 を 出ようと した 時、 ことさら 彼へ 目をやらす にやつ と 本文 へ は ひり 出した。 

まよお ひと リ また ごり やう しん 

「あれに も 母親が 一人 ございま すし、 あなた も 亦、 —— あなた は御兩 親と もお ありなん で ござい 

ます 力?」 

おやち 

「いいえ、 親父 だけです。」 

と う ふ- ま 一- J やう だ い 人 一- し 

「お 父樣 だけ。 御兄弟 は 確か ございませんで したね?」 

「ええ、 僕 だけです。」 

かれら ゼ、 に しつ とミ -ー だいに しつ そと る てんじゃう した ざ いう ろだい ひら ,、> や ,' へ— や- 

彼等 は 第二 室 を 通り越した。 第二 室の 外は圓 天井の: 卜に 左右へ 露薹を ii いた 部 3^ だった 部屋 

もちろ く, ん ナ,. A. た *! ん けい らう か はば しう ゐ あま しろ だいり 一せ 

も 勿論 圓形 をして ゐた。 その 又 圓形は Ig 下 ほどの 幅 をぐ るりと 園へ 餘 した まま、 ..H い 大理石の 

らんかん ご した げん,、 わん c.iv で き まが へ しぜい いり. サき .tLi か, ん そ, と 

憫千 越しに すつ と 下の 玄關 を舰 かれる やうに 屮: 來上 つ てゐ た. - 彼等 は 自然と 大理 るの 爛ト の 外 を 

あっすに か ぞ,、 しん 亡キ- かう いう はな あ か C ちょ ぴ ir つ ふく なり チノ;' 

ま はりながら、 篤 介の { 家族 や 親戚 や 交友の こと を 話し合った。 彼女 は 微笑 を 含んだ まま、 :^^ 也尋 



81 



にく >- にくし よ たくみ よな し い ;; り か C ぢょ -v-- J 二 か てい ド- じ やう N ん.. 5-,、 

ね惡ぃ 局所に も 巧に 話 を 進めて 行った。 しかし その 割に 彼女 や. お 子の ん豕 庭の 事情な どに は沈默 し 

てゐ た。 それ は?^, すし も:^ 初から 相 y ど 坊ちゃんと: 縦った 上の 打算で はない のに 違 ひなかった リ 

けれども 乂 坊ちゃんと: a- 縦らなければ、 彼女 もも つ と こ ち ら の :?: 輪 を 窺 は せて ゐた こ と は 確か だ 

つた。 

「ちゃ 餘 りお 友 だち はお ありに ならな いんで ございま すね?」 (未み 化) 

(大正 十 gl^sIHO 



82 



、ク 

//EL 

泉 
た、、 

よ 



84 



をん せん わ ど ひとつき .^-ぃざぃ 加ん じん ふうけい い fc-*t い し 

…… わたし はこの 1^ 泉 宿に もう 一月ば かり 滯 在して ゐ ます。 が、 肝 gs; の 「風景」 はま だ 一枚 も;; £ 

あ ゆ うだん ぼん よ せま *^ ち V. / ぼ 

上げません。 ま づ设に は ひったり、 講談 本. を讀ん だり、 狹ぃ町 を 散 や〉 したり、 —— そんな こと を 

/■、 かへ く われ あき v,- くしゃち う あ ひだ :に 

繰り返して 暮らして ゐ るので す.」 我ながら だら しのない のに は:^ 木れ ますが。 (作者 註。 この 問に 樱 

ち せきれい やね く しゃてき しち ゑん ご じっせん つか ん なか げいしゃ ん 1 

の 散って ゐる こと、 鶴 f や Q 屋根へ 來る こと、 射的に 七圓 五卜錢 使った こと、 田舍藝 者の こと、 り: A 

き ふしし ばん おどろ わに プが い せう ばう えんし ふ み がまぐち おと 

來節 芝居に 驚いた こと、 藏 狩りに 行った こと、 消防の 演習 を 見た こと、 ^口 を 落した ことな ど を 

しる じふす う.. きわう ついで せう- i,J つ じ じつだん ひと はう- 7、 もっと しろ,;' と 

記せる 十數行 あり。) それから 次 乎に 小說 じみた 事 實談を 一 つ 報 しませう。 尤もゎたしは:_5^^人で 

せう せつ ただ はなし き とき も わう どせ うせつ なに よ 

すから、 小說 になる かどう か はわ かりません。 唯 この 話を閱 いた 時に 厂度小 說か何 か 請んだ やう 

こころ い よ くだ 

な 心 もちに なった と 言 ふだけ のこと です。 どうか その つもりで 讀んで 下さい," 

なん め いぢ さんじ ふねんだ い はぎ ひ はんの I よう い だいく ひとり i 4 まよ す ひ ザつ 

何でも 明治 三十 年代に い 秋 野 半 之 丞と言 ふ 大工が 一 人、 この 町の 山お りに 住んで ゐ ました。 野 

, 二ん C じょう い なまへ き い か やさ をと こ おも し み たけろ くしゃて |,ー すん 

卞. KI^: と 言 ふ 名前 だけ 聞けば、 如何なる 優^ かと 思 ふか も 知れません" しかし 身の 丈 六尺 五寸、 



た- ぢ< ^う V, んヒ ふし +* ノ- わぐ い た ち やま i お ほ をと こ おそ た ち や. 2 

5 體ま 一二 I 七 貫と 言 ふので すから、 太刀 山に も 負けない 大 SR だった のです。 いや、 恐らく は 太刀 山 

8 , 

も 一 篛を輸 する 位だった のでせ う。 現に 同じ 宿の 客の 一人、 -11 「な」 の 字さん と Is ふ (これ は國 . 

き だ どつ *1 つか 二く すゐ てきしゃ-つり や,、 はふした が やくしゅ どひ や わかし St ん こどもごころ お ほ-つつ お ほ 

木 W 獨歩 の 使つ た 國粹的 将略法 に 從 つたの で す。) 藥種 問屋 の 若 主人 は 子供心に も 大砲より は 大き 

おも い どつ ヒ たか ほ いなが は おも い 

いと 思った と, ふ ことです。 同時に 父 顏は稻 川に そっくり だと 思った と 言 ふ ことです。 

は 乂のヒ ぶ-つ たれ 矛つ》 み ごくひと い をと-一 - つへ ,つて ク うたう い 

半 之,^ -は 誰に 聞いて a て も、 極 人の 好い sf; だった 上に 腕 も相當 にあった と 言 ふこと です けれ 

ょ,> つ 卜. - つ くわに t なし た せ を か ところ み あるひ お ほ を A こ-なみ そうみ K ム ま は 

ども 半 之 承に 關 する 話 は どれ も 多少 可笑しい 所 を 見る と、 或は あらゆる 大男 並に 總 身に 蒙が 廻 

^ い おも. C. キ し ほ Z すち まへ いんれい あ 

り 、おねと 言 ふ 趣が あつたの かも 知れません。 ちょっと 本筋へ は ひる 前に その 一 ^を舉 けて おき ま 

やど しゅ ヒん よな し こがらし はげ 一 M ご を/、 せん i.v, ご し フー や 

せう。 わたしの 宿の 主人の 話に よれば、 ぃっか^の烈しぃ:—後にこの溫^;卞ノ町を五十门ばかり燒ぃ 

ち ャ-; 'r ぶ-た、 くわ 七き ん C じ H う ナ.' やう どい 十, り はな じ t ら にめ る t へ た 一- -i. 

た 地 ガ的犬 火の あった 時の ことです" 半 之 は r> 度 一 里ば かり 離れた 「か」 の 字 村 へ^^か 

な: 、 まち くわ ヒ & はや しり け匸 よ チ ん- 

仞 かに 行って ゐ ました。 が、 この 町が 火事 だと 聞く が 早い か、 尻 を 端折る 問 も 惜しい やうに 「お」 

ヒ > - だう と だ あるのう か まへ :リげ -っ i いつび きつな み / 

si の 字! へ 飛び出し たさう です。 すると.:^ sl^ 家の^に 栗毛の-.^ 1 が 一 匹 il- いで ある、 それ を はた 卞 

7 の, U よ f ン >. : とわ 、- おも う. 5 もた 力 しゃに む に 力いだ う ^1 だ 

だ 之丞は 後で 斷れ ば^いと でも つたので せう C いきなり その 馬に 跨って 遮 一 一 無 一 一 柯道を 走り出し 

よ - 

リ ました" そこまで は si^ ましかった のに 遠 ひありません。 しかし 馬 は 走り出し たと 思 ふと、 忽ち 麥 



85 



ばた に 七 むぎ, t たけ i-i かき て だいこんば たけ け, し ぬ か/や i 

畑へ 飛び こみました。 それから 麥畑 をぐ るぐ る 廻る、 鍵の 乎に 大根 畑 を 走り 拔 ける、 蜜柑 山 を ま 

すぐ か お いも あな なか お ほ をと こ はん C じょう ふ おと ど こ 

つ 直に 跃け 下りる、 —— とうとうし まひに は 芋の 穴の 中へ 大男の 半 之 f^- を; i り 落した まま、 何處 

い - い さいなん あ もちろん V 、ゎヒ i. へ あ 

かへ 行って しま ひました。 かう 言 ふ 災難に 遇った のです から、 勿論 火事な どに は 問に 合 ひません リ 

. いん C じょう $ は まち かへ き なん あと き み 

. のみなら す 半 之 丞は傷 だらけに なり、 這 ふやう にこの 町へ 歸 つて 來 ました。 何でも 後で 聞いて 见 

たれ て めくらう i い 

れば、 それ は 誰も 手の つけられぬ 盲 馬だった と 言 ふ ことです。 

ャ- やう ど たいく わ とゥ- に さんねん-ご じ t ち . ひび やうん ん はんの じょう か..: だ 

r.- 度 この 大火の あった 時から 一 一三 年後になる でせ う、 「お」 の 字 町の 「た」 の 字 病院へ 半之丞 の體 

ry か.! だ う い なに むかしふう いっしゃう ぼうこう やくそく わに 

を寶 つたの は。 しかし 體を寶 つたと 云っても、 何も 昔風に 一生 奉公の 約束 をした 訣 では ありませ 

ただな ス ねん し C ち し たい かいほう ゆる か は ご ひゃく ゑん かね もら t* 一 ひわ; 

ん。 唯 何年 かたって 死んだ 後、 死體の 解剖 を 許す 代りに 五 百 圓の金 を 蔑った のです。 いや、 五 

ゑん .f. れ もら にひゃく ゑん し ご う さ あた けいやくしょ ひ か 

圓の金 を 貰った ので はない、 二百 圓は 死後に 受けと る ことにし、 差し 常り は 契約書と 引き 換 へに 

さんびゃく ゑん も,! し ,,ー う にひゃく ゑん いったい たれ てわた い 

一二 百圓 だけ 貰った のです。 では その 死後に 受けと る 一 一 ki: 圓は 一 體 誰の 乎へ 渡る のかと 言 ふと、 1 

なん けい やて しょ ぶんめん ゐ ぞく また ほんにんし てい しはら 

—3: でも 契約書の 文面に よれば、 「遣 族 又は 本人の 指定した る もの」 に支拂 ふこと になって ゐ まし 

ヒっヒ い.. てた ざんきんに ひゃく ゑん うんぬん くうぶん を は ほか なに はんつ 

た G 實際又 さう でもし なければ、 殘金 二百 圓云々 は 空文に 了る 外はなかった でせ う- 何しろ 半 之 

じょう V, いし もちろん しんせき ひとり 

承 は^子 は 勿論、 親戚 さへ 一人 もなかつ たのです から。 



v--「l v./t, やく. &i ん たいきん す, な な, パ だいく : にん C ヒ よう た、, きん ち, A 

7 常時の 三百 圓は 大金だった でせ う C 少 くと も田舍 大工の 牛 之 丞には 大金だった のに 違 ひ ありま 

8 

はん C じょう かね にぎ は や うで ど けい か びろ こしら あ を ,H つ 

せん。 半 之?^ はこの 金 を 掘る が 早い か、 腕時計 を 貪ったり、 背 を 招 へ たり T 靑ぺ ン」 のお 松と 

b まち い たち ま がう しゃ き は V: あ を い とたん や も を 

「お」 の 字 町へ 行ったり、 忽ち 豪奢 を 極め 屮 r しました。 r 靑ぺ ン」 と; 一一 一 II ふの は: C に 鉛尾极 に靑ぺ ンキを 

ぬ だるえ V 'やや たう じ い 土 At うきわう-すつ つき へち i さが 

塗った 達磨 茶 尾です。 當時は 今 ほど 京風に ならす、 軒に は絲 瓜な ども 下って ゐ たさう ですから、 

を Z な みな ゐ なか 支つ あ を と かくだいい ち ぴ じん 

ケも^ 出舍 じみて ゐ たこと でせ う。 が、 お 松 は r 靑ぺ ン」 でも- もに 角 第一 の 突 人に なって ゐ ました U 

も y >. くら ゐ び じん 4- だすし や つなぎ や ず . ^てい 

尤も どの位の 美人だった か、 それ はわた しに はわ かりません。 唯 屋に 11 屋を 妙、 ねた 「お」 の字亭 

かみ はなし いろ あさぐろ , ^み け ちぢ こ を/な ノ 

のお h の 話に よれば、 色の 浅黑 い、 髮の 毛の 縮れた、 小 がらな 女だった と 一 K ふこと です。 

ば あ けなし き もら なかんづく めう き ど,、 

わたし はこの 婆さんに いろいろの 話 を 聞かせて^ ひました。 就屮 妙に 氣の 毒だった の はいつ も 

ん ノ、 て がみい っぽん か い み かんちう どく キ やく はなし また f.v 

蜜 相 を 食 つて ゐ なければ 手紙 一 本書け ぬ と 言 ふ蜜批 中毒の 客の 話です。 しかし これ は乂 いっか 報 

ニノ、 きく わい ま ただ はんの じょう む ちう つ ねこ-ごろ はなし /二 

斗" す る 機 # を 待 つ ことにし ませう。 唯 半 之, K 一 の 夢中に なって ゐ たお 松の 猫 殺しの, 一;^ だけ はっけ 加 

. まつ なん さんた い か すね こか あるひ ざん 

や a へて おかなければ なりません。 お 松 は 何でも 「三 太」 と 云 ふ,: li? 猫 を 飼って ゐ ました。 或::: その 「三 

ぶ 

つ- f& かみ いっち やうら うへ そ そう あ を かみ い ~ 、わ 

た ん」 が r 靑ぺ ン」 の お 上の 一 張羅の 上へ 粗忽 をした のです。 ところが 「靑ぺ ン」 のお 上と 言 ふの は. 几 

よ 

nv wt I ^ - ^ キ-ら くじ やう ,ノ か なし 

來 が 嫌 ひだった ものです から、 苦 を 言 ふの 言 はない のではありません。 しま ひに は^ひ 主の 



83 



まつ あくたい . まつ なに い く- んた とこ. C- い 

お 松に さへ、 さんざん 惡態 をつ いたさう です。 するとお 松 は 何も:: 一::: はすに n:i 太」 を!^ に 入れた ま 

じが 丄 じばし ゆ あ を よど ふ ち な ^ からすね . J は ふ 

ま 、「か」 の 字 川の 「き」 の 字 橋 へ 行き、 靑ぁ をと 澱んだ 淵の 中へ 烏 猫を拋 りこんで しま ひました。 

さき こちゃう し とか くば あ r. な し ほ . とうにん 

それから、 11 それから 先 は 誇張 かも 知れません。 が、 鬼に 角 婆さんの 話に よれば、 發: 如 人のお 

ケ ふ もちろん あ を ぢぅ をん な かほ みみす ^ い 

上 は 勿論 「靑ぺ ン」 中の 女の 額 を 蚯蚓 腫れ だらけに したと , ふこと です。 

よん C じょう がう しゃ キ-は せいふ \ひ とっき はんつき た せ ぴろ き ある くつ 

卞之 1^- の 豪奢 を 極めた の は 精々 一月 か 半月だった でせ う。 何しろ 背廣は 着て 歩いて ゐて も、 靴 

で き あが き とき だい はら しも .. になし . . » / 

の出來 上って 來た 時にはもう その 代も拂 へなかった さう です。 下の 話 もほんた うか どう 力 それ 

しょうで キ- r グ ,.; で じ けん しゅじん はなし 

はわた しに は保證 出來 ません。 しかし わたしの 髮を 刈りに 出かける 「ふ」 の 字 軒の 主人の 話に よれ 

くつや ノ/ C じょう まへ くつ なら とうり やう もとね だれ U 

ば、 靴屋 は 半之^^ 一め 前に 靴 を 並べ T では 棟梁、 元價に 買って おくん なさい" これが誰にでも《1^-け 

る 靴なら ば、 わたし もこん な こと を 言 ひたく はありません。 が、 禁、 お前さんの 靴 は 仁 王様の 

わらち おな あたま VJ た C い もちろん にん Q じょう もとね 

草鞋 も 同じなん だから」 と 頭 を 下げて 賴ん だと 言 ふ ことです。 けれども 勿論 半 之 水 は- 兀惯 にも 1バ 

で き まも ひとびと たれ キ- み にん Q じょう '-. > 

ふこと は、 出來 なかった のでせ う。 この 町の 人人に は 誰に 聞いて 見ても 半 之:^. の 靴 を はいて ゐ 

るの は,. 一 度 も 見かけなかった と; ず つて ゐ ますから。 

.H.i-r じょう くつ よら ふ じ いう ひとつき 

けれども 半之丞 は 靴屋の 拂 ひに 不自由した ばかりではありません。 それから 一 H とたたない う 



9 よ だ寇. i 89 



こんど せ つ かく 5 で どけい せ ろ う き か; 1 い 

ち に 今度 は 折角の 腕時計 ゃ背廣 まで も賫 る やうに なって 來 ました。 で は そ の 金 はどうし たか と 一一: 一 门 

ぜん n ふん パ つなに まつ まつ はんの じ 二う つか 

へば、 前後の 分^も 何もな しにお 松に つぎこんで しまった のです。 が、 お 松 も 中 之 水. に 使 はせ て 

じ かみ は なし ぐわん らい ち だるま V. やや やん な 

ゐ たばかりで はあり-ません。 やはり 「お」 の 字のお 上の 話に よれば、 元來 この 町の 逹磨 茶屋の 女 は 

年々. 夷 講の晚 になる と、 客 を とらす に 内輪ば かりで 三味線 を it いたり 踊ったり する、 その 别 りん 1 

の 算段 さへ 一時 はお 松に は 苦しかった さう です。 しかし 半之丞 もお 松に は, || ほど グ中 になって ゐ 

たに まつ かんしゃ/、 おこ ひ; ん C じょう れ-な ひ た ふ ビ— ルび乂 な-、 

たので せう。 何しろお 松 は 癎瘤を 起す と、 中 之 丞の胸 ぐら をと つて 引きす り 倒し、 麥:. ^=.1 ぶに- 鄕り 

など もした ものです。 けれども? 1 之丞 はどうず ふ 目に 遇っても、 カ^ は 球って 機嫌 をと つて ゐま 

も つ と ゾ- パ _M いす, ど ま つ あるべ つ イラ ふ" ん せがれ じ まん い & とき ベ つ しん 

した。 . ^も 前後に たった 一度、 お 松が 或^ 莊桥の 作と 「お」 の 字 町へ In つたと か 聞いた^ には^ 人 

"で 一 あるひ いくぶ Z 二ち やう し ば あ ー た 

の やうに 怒った さう です。 これ も 或は 幾分 か 誇張が あるか も 知れません。 けれども 波 V さんの 話し 

> け. ん のじよう V; くしゃもう でん ゑんて きしつと へう::: く おも 

たま ま を 書けば、 卞 之,^ 一は (作者 註。 £ 園 的 嫉妬の 表,:: として さも あらんと は 思 はるれ ども、 この 

ュめ ひた かつあい ベ. 4 すう ビ や- リ い 

間 に 割愛 せざる IH^ ら ざ る數行 あり ) と 言 ふ こ と で すで 

t ,、 J\ し V やう ど ころ ばん じょう たう じ せ-:' がく か ••> い A- 

前に 書 い た 「な」 の 字 さ んの 知つ て ゐ る の は 丁度 こ の 頃 の 牛 之,^ • で せ う。 當時 まだ 小學校 の 生;^ 

だ つ た 「な」 の 字 さん は 半- M.^- と 一し よに 釣に つたり T み」 の 字: t へ 登ったり しました。 勿淪^ 



90 



G ヒ よ-つ まつ かよ か:;: こま ビ Z ビん じ 

之 水-がお 松に 通 ひつめ てゐ たり、 金に 困って ゐ たりした こと は 全然 「な」 の卞 さんに はわから たか 

じ 1、 なし ほんす ち くわん にい ただ おもしろ 

つたので せう。 「な」 の 字さん の 話 は 本筋に は いづれ も關 係はありません。 唯 ちょっと 而 白かった 

じ とうき やう かへ のち さしだ にん はぎの -ん のじよ, つ こ づっ ひと う 

ことに は 「な」 の 字さん は柬 京へ 歸 つた 後、 差 出し 人 萩 野 半 之丞の 小包み を 一 つ 受けと りました。 

かご- "にんし ひと ぐら ゐ め ばか かる なに おも み あさひ に じふい 

. 嵩 は 半紙の 一 しめ 位 ある、 が、 目 かたは 莫 遍に輕 い、 何かと 思って あけて 見る と 、「朝: nj の ニト入 

ぶ ば: み-つ う あ をく さ く ぴすぢ あか ほたる なん ぴき い 

りの 穴 1 き 箱に 水 を 打ったら しい 靑 草が つまり、 それへ 首筋の 赤い 埜が何 匹 もす がって ゐ たと 言 ふ 

もっと .*ズ た あさひ あ ば こ くうき かよ み いちめん -V: り 

ことです。 t も その 又 「朝日」 の 空き箱に は 空 氣を通 はせ るつ もりだった と 見え、 ベた 一面に 錐の 

あな い はん じょう ちが 

穴 を あけて あった と 云 ふ の で すから、 や は り 半之丞 らしい の に は 遠 ひない のです が。 

I よくと し なつ はん C じょう あそ かんが ふ かう 

「な」 の 字さん は 翌年の 夏に も 半 之,^ -と 遊ぶ こと を考 へて ゐ たさう です。 が、 それ は 不幸に もす 

あて え-つ い あき ひ がん ちう にち けぎ は ん のしよう あ を まつ 

つかり 當が 外れて しま ひました。 と 一一 一一 〔ふの は その 秋の 彼岸の 中日、 获野半 之,^: は 「w. ベ ン」 のお 松 

いつつ-つ ん しょ C- 一 とつぜん ふうが は じ さつ また ヒ さつ い 

に 「通の 遺書 を殘 した まま、 突然 風變 りの 自殺 をした のです。 では 乂 なぜ 自殺 をした かと 言へば- 

-iii 「めい 于: ラ 二く i つ あて ゐ しょ ゅづ もっと うつ 

11— こ の說明 はわた しの 報吿 よりもお 松 宛の 遣 書に 讓る ことにし ませう。 尤も わたしのお したの 

ヒ つぶつ ゐ しょ やど しゅじん りぬ きて ユ *1 ,-ぅ じ しん ふん C 

は實 物の 遣 書ではありません。 しかし わたしの 宿の 主人が 拔帖に 貼つ ておいた 常時の 新聞に 載 

つて ゐ たもので すから、 大體問 違 ひ は あるまい と m 心 ひます。 



り よ だ' 7 おん "S. 



91 



かお まへ V- ま ふう- まへ さま はら こ し まつ でき X 

「わたくし 儀、 金がなければ お前 樣 とも 夫婦に なれす、 お As 樣の 腹の 子の 始末 も出來 す、 うき 世 

ふら ふ あ ひだ し し じび や, f ゐん おく わか 

がいやに なり. 候 問、 死んで しま ひます。 わたくしの 死が いは 「た」 の 字 病院へ 送り、 (向う からと 

き ご ざ V.- ふ.:: ふ やて しょ にひゃく ゑん くだ たく 

りに 來て もらっても よろしく 御座 候。) このけ い 約 書と ひき か へに 一 :k^ 圓 おもら ひ 下され 度、 その 

ん, ね じ だんな やど しゅじん かねつ. f 、、、つぐ つ 

金で 「あ」 の 字の H: 那 〔こ れ は わたしの 宿の 主人です。〕 のお 金を使 ひこんだ だけ はま ど ふ 〔惯 ふ?〕 

やつ い ぶふ- 1: ふ L だんな め乂 ぼく かね 

やうに 頼み入り 候。 「あ」 の 字の 曰; 那に はまこと に、 まことに 面 目 ありません。 のこりの 金 はみ な 

As へ.. It くだ ひとり たび よ は ス のじよう ヒ せい 

お^様の もの にして 下され。 一 人 旅う き 世 を あとに 半 之丞。 〔これ は辭 f でせ う。〕 おまつ どの。」 

にんの じょう ,^ > -っ いぐ わい おも ヒ A¥. ひ と》^ 

中 之 水 の 自殺 を 意外 に m 心った の は 「な」 の 字さん ばかりで はありません。 この 町の 人々 も そんな 

ゆめ か ス が い もす こ まへ ぜんて-つ 

ダ 1 と は 夢にも 考へ なか つ た と 言 ふこと です。 若し 少しで も その 前に 前兆ら しい こ と が あ つ た と す 

い はたし なん ひ がん まへ あるく じ けん しゅじん は/ C じょ-つ 

れ ば、 そ れ はか う 言 ふ 話 だけ で せ う。 何 で も 彼" お前 の 或^れ がた、 「ふ」 の 字 軒の 主人 は 半 之 水と 

みせ 4: へ えんだい はな そ こ とほ あ を をん な ひとり をん な 

店の 前の 緣臺に 話して ゐ ました。 其處へ ふと 通りかか つたの は r 靑ぺ ン」 の 女の 一 人です。 その 女 

-ズ- り かほ み いま じけん やね ,T 'へ ひた まと い い 

は- ; 人の 額 を 見るな り、 ヶ しがた 「ふ」 の 字 軒の 屋根の 上 を 火の玉が 飛んで 行った と! H ひました。 

はん C じょ お ほ ま じめ いま くちで い い じさつい 

すると 半 之;^: は大眞 面目に 「あれ は 今 おらが 口 か ら 屮:: て 行った だ」 と 言 つ た さ う です。 自殺 と 言 ふ 

とき はん C ヒ よう はら し もちろん あ を をん な わら とほ 

> J と はこ C 時に もう 半 之 水 一の 肚 にあった のか も 知れません。 しかし 勿論 r 靑 ベ ン 」 の 女 は 笑つ て 通 



り 過ぎた と in ふ こ と で す。 r ふ」 Q 字軒 の 人 も、 11 いや T ふ」 の 字 軒 の 主人 は 笑 ふ うち に も 「終 

ぎ おも い 

起で もね え」 と 思った と 言 つて ゐ まし た 。 

それから 幾日もた たない うちに 半 之丞は 急に 自殺した のです。 そ. の 又 自殺 も 首を^った とか、 

.Q どつ い じが は iJ なか いたが-一 とつ-一 ゆ い 

喉 を 突いた とか 言 ふので はありません。 「か」 の 字 川の 瀬の 中に 板 園 ひ をした T 獨站 のぬ」 と 言 ふ 

きょうど 5 いいろ をん せん いしぶ ね なか ひと, ふん しづ にげく し/ざう え ひ おこ ,レ 

共同 風呂が ある、 その 溫 泉の 石槽の 中に まる 一晩 沈んで ゐた 揚句、 心 職 麻^ を 起して 死んだ ので 

じ けん しゅじん はなし となり たば-一 や かみ ひとり たう や かれこれ じ:. に じ 一 ごろ .-^.-.v> 

す。 やはり 「ふ」 の 字 軒の 主人の 話に よれば、 鄰の煙 t^. 屋の 上さん がー 人、 當农 彼是 卜 二 時 顷に共 

どう. ぶ ろ ゆ たばこ や かみ V みち なに - ビン 

同 風呂へ は ひりに 行きました。 この 煙草屋の 上さん は 血の道 か: 1: かだった ものです から、 のう 

,ご 二 今 はんの じょう とき をス ん なか お ほ からだ しづ い, 

ちに も 其處へ 來てゐ たのです。 半 之丞は その 時も溫 泉の 中に 大きい 體を 沈めて ゐ ました。 が、 今 

びる ま ゆ まき ひと か」 な だ い しづた ん 

もま だは ひって ゐる、 これに はふ だん まつ 晝 でも ni! 卷ー つに なった まま、 川の 中の 石 傅 ひに 風 

ろ l," く ; T ょぢ やうぶ おどろ い はんの じょう かみ 二とば 

呂 へ 這 つて 來る 女丈夫 もさす がに 驚いた と 言 ふ > J と で す" の みならす 半 之 承 は 上さん の に ラ 

へんじ た だう すぐら ゆ げ なか か ^ほ あら 

んだ ともつ ぶれた とも 返事 をし ない、 唯簿 暗い い 3 ケ やの 中に まつ 赤に なった 額 だけ 露 はして ゐ る. 

それ も 瞬き 一 つせ すに、 ぢ つと: lai 根 裏の; # ^を 眺めて ゐ たと id ふので すから、 無;. 啾^ だった のに 遠 

2 かみ ため ながゆ で き そう ノ、 ふ ろで - . - : 

9 ひありません。 上さん は その 爲 に. 良 nil も出來 す、 匆々 風呂 を 出て しまった さう です 



キ、. 二つ ど-?; -ろ なか とつ 二 ゆ な まへ し t 二 つ つ. ほ いし ヒソ- け- ん CT£ う 

3 共同 風呂の まん 中には r 獨鈷の 湯」 の 名前 を 生じた、 大きい 石の 獨鈷 があります。 爪. はこの 

9 

ヒ:' 二 まへ き もつ そで ゐ しょ そば げ H: ャ なを てく , 

獨站の 前に ちゃんと 着物 を 袖 だた みに し、 遣 書 は 側の 下駄の I 緒に 括りつ けて あつたと; H ふこと 

なに し たい r だへ.' をん せん なか う も ", つ しょ 

です。 何しろ 死體は 裸の まま、 溫 泉の 屮に ぼいて ゐた のです から、 若し その 遣 書で もなかつ たと 

おそ じャっ やど しゅじん けなし 

すれば、 恐らく は 自殺 かどう かさへ わからす にし まった ことで せう。 わたしの 宿の 主人の 話に よ 

はんの じよう い し いやし び やつ;^ ス う わた ぃト やう かい^,.':, つ _〈に だ 

れ ば、 半 之 水- が か う;: m ふ 死に か た をした の は苟 くも 「た」 , し 字 病院 へ ^り 渡し た 以上、 解剖 川の 1』 

に 傷 を つ け て はすまない と 思 つ たからに 違 ひない さう です。 尤も これが こ の 町 の定說 と?. :! ふ:?!^ で 

はありません。 口の 悪い 「ふ」 の 字 軒の 主人な ど は 「何、 すむ やすまね えお やねえ。 あれ は 體に傷 

をつ けて は T 一 百兩 になら ねえと 思つ たん で す。」 と 大いに 異 說を唱 へて ゐ ました。 

はんの じょう はなし き ふ ご わ ど し: S ヒん じ 

半 之, の 話 は それだけです。 しかし わたし は 昨日の 午後、 わたしの 宿の 主人 や 「な」 の卞 さんと 

せ. d!; くる i ち V. んぼ ついで よんの じょう よ なし く は 

狭苦しい 町 を散步 する 次 乎に 半 之^の 話 をし ましたから、 その こと を ちょっと つけ 加 へ ませう。 

1» つと はなし キ- ぶ-つ ム も れっし じ じ 

^ t もこの 話 に 興味 を 持つ て ゐ た の は わたしよりも 寧ろ 「な」 の 字 さ ん で す。 「な」 の 字さん は カメ ラ 

? (ノ VJ に- リがス き やう やど し じん ねっしん た-つ 

だ を ぶら下げた まま、 老眼鏡 を かけた 宿の 主人に. i€ 心に こんな こと を:! f ねて ゐ ました。 

り つい ズ v んな 

「ぢ やその お 松と 言 ふ 4;<は どう、 ) たんです?」 



94 



まつ まつ はん C じょう こう ■ 

「お 松です か? お 松 は 半 之 丞の子 を 生んで から …… 」 - 

「しかしお 松の 生んだ 子 はほんた うに 卞之 水の 子だった んゃ- すか?」 

,H んっヒ し-,; う こ うりぶ た I. よ 

「やつば り 卞 之丞の 子だった ですな。 瓜二つと: 百っても 好かったです から。」 . 

まつ い をん な 

「さう して そのお 松と 言 ふ 女 は?」 

まつ じ いさ.^ や よめ い 

「お 松 は 「い」 の 字と 言 ふ 酒屋に 嫁に 行ったです。」 , 

ュ つし/? ,v せ,^ i- しつば う カー は 

熱心 になって ゐ た 「な」 の 字さん は 多少 失笔. した らしい 顏を しました。 

はんの じよう. こ - 

「半 之 丞の子 は?」 

つ こい こ ども また 9 

「連れつ 子 をして 行ったです。 その子 供が 又 チブスに なって …… 」 

「死ん だんです か?」 

「いいや、 供は辦 かった 化り に 看病した お 松が 患 ひついた です。 もう 死んで 十 年になる です が 

:…. 」 

「やつば りチブ ス で?」 

. しゃ ,-< ん い かんび や う-つか 

「チブス ぢ やないです。 醫者は とか 言って ゐ たです が、 まあ^ 病 疲れです た。」 



リ よ だ 泉ん 



95 



ちゃう ど ときわれ/ ヽ い-つ びん. 1- よく ,キ: で た-ひ に そんだ ご ノっプ し., V, ク、 i - ^や-. で r 

r 度 その 時 我々 は 郵便局の 前に 出て ゐ ました。 小さい nl,.j^ 建の 郵便局の 前に は若枫 が:^ を 仲ば 

. _ えだ なか さへ ぎ ほ-一り ガー フ スまど なか こ くら,; -,、 せ、 i ん ひと 

して ゐ ます。 その 枝に 牛ば 遮られた、 埃 だらけ の^子 窓の 中には づんぐ りした 小 含膨の が 一 

人、 事務 を 執って ゐる のが 見えました C 

「あれです よ。 半 之丞の 子と;;; :11 ふの は。」 

し, あし と おも lh ど なか C: さ ん ん. ---ii 

一な」 の 字さん も わたし も 足 を 止めながら、 m 心 はす 窓の 屮を舰 きこみました。 その 靑 年が 片: g に 

て なに うご すがた めう わ うれ 

手 を やった なり、 ぺ ンか何 か を 動かして ゐる姿 は 妙に 我々 に は 嬉しかった のです。 しかし どうも 

よ なか かんしん で キ に さん ぼ V ふ- 人- やど し じし -ご , L, ヽ .V か、 

I の 中 はう つ 力り 感心 も出來 ません。 一 ;三歩 先に 立った 宿の 主人 は 眼^ 越しに 我々 を扯り 返る と、 

,つす わら う- 

い つ か 薄 笑. ひ を 浮か ベ て ゐ るので す。 

「あいつ ももう 仕 かたがな いのです よ。 「靑ぺ ン」 通 ひば かりして ゐ るので すから。」 

ゎホく じ まし くち ある ゆ 

我々 は それから 「き」 の 字 橋まで 口 をき かすに 步ぃ て 行きました。 …… 



96 



海の ほと, 9 



あめ ふ ぽ/、 ら ひるめし のち しきし i なんはん は ひ と,;'. t やう 

…… 雨 はま だ 降りつ づけて ゐた。 僕 等 は 午 飯 をす ませた 後、 敷 ^1:1 を 何 本 も 灰に しながら、 東京 

AJJ^5 うけさ 

の 友 だち の 噂な どした。 

ぽ くら なに に は よし 卞 ひよ さ ろくで ふ ふた i は な に は なに 

僕 等の ゐ るの は 何もない 庭へ 葭 簾の 日除け を 差し かけた 六疊ー 一問の 離れだった。 庭に は 何もな 

い うみべ お ほ こうぼ ふむ ぎ ま すな うへ ほ た ほ ぼくら き 

いと 言っても、 この 海 逢に 多い 弘法 麥 だけ は 疎らに 砂の 上に 穗を 垂れて ゐた。 その 穩は僕 等の 來 

とき でそろ で たいてい V. を いま i 

た 時には まだす つかり 出揃はなかった。 出て ゐ るの も 大抵 はまつ 靑 だった。 が、 今 はいつ の に 

ほ おな きつねいろ か は ほ さき しづく 

かどの 穗も 同じ やうに 狐色に 變り、 穗先 ごとに 滴 を やどして ゐた。 

し ごと 

「さあ、 仕事で もす るかな。」 

なが ね C りつよ やど ゆか た そで ん がんき やう だま ぬぐ し ごと い 

M は 長な がと 寢 ころんだ まま、 糊の 強い 宿の 5i 帷子の 袖に 近^鏡の 玉 を 拭って ゐた。 仕事と 言 

3 ぽ くら ざっし i いっきな に ざう さく ざ 

9 ふの は 僕 等の 雜 誌へ 毎月 何 か 書かなければ ならぬ、 その 創作の こと を 指す のだった。 



り と ほの.' 每 



99 



つぎ まり のち ぼく ざ ぶ とん まくら さとみ ほっけんで^ よ 

M の 次の間へ 引きと つた 後、 僕 は 座 蒲國を 枕に しながら、 里 見 八 犬 傅 を讀み はじめた。 きの ふ 

ベ よ し つ げんばち こ ぶんご さう すけ すく で ところ とき あ ざ. てるぶ み 

僕の 讀 みかけた の は 信 乃、 現 八、 小 文 吾な どの 莊助を 救 ひに 出かける 所 だ つた 。「その 時 蟹 崎 照 文 

ふと こ ようい さ きん いつつつ いだ ま みっつ あ ふぎ i ま V- ん厂 ぐし 

は懷 ろより 用意の 沙金を 五 包みと り 出しつ。 先づ三 包み を 扇に のせた る そが 儘に、 …… 三 ガ士、 

かね さんじ," りゃう つつ もっと さ せう も -ろ よ- リ 

この 金 は 三十 兩を ひと 包みと せり。 尤も 些少の 柬西 なれ ども、 こたび の 路用 を资 くるの み。 わが 

わたくし はなむけ さとみ ど たま 、. ろ を さ た. い ぽく よ 

私 の 餞^なら す、 里 見 殿の 賜 ものなる に、 辭 はで 納め 給へ と 言 ふ。」 —— 仪は そこ を讀 みながら、 

とど げんか うれう いちえい よん じっせん おも だ ぼくら ふだり しちぐ わつ だ、 が,、 1 . 

をと とひ: i5 いた 原稿料の 一枚 四十 錢 だった の を 思 ひ 出した。 僕 等 は 二人とも この 七: に. K 學のぁ 

ぶんく わ そつげ ふ したが いしょく はかり-ごと た ぼ,、 ら もく^ T く 

文科 を 卒業して ゐた。 從 つて 衣食の 計 を 立てる こと は 僕 等の 目前に 迫って ゐた。 はだん だん 

ほっけん でん わす けうし かんが だ ねむみ , 

八 犬傳を 忘れ, 敎師 になる ことな ど を考へ 出した。 が、 そのうちに 眠った と 見え、 いっか かう 

みじか ゆめ み 

ふ 短い 夢を見て ゐた。 

なん よふ ぼ,、 と .1^,、ぁ走ど ざ しき ひとり よこ 

—— それ は 何でも 夜更けら しかった。 僕 は 兎, に 角雨戶 をし めた 座敷に たった 一 人极 になって ゐ 

+/ れ >」 .K た ! i ム, /、 一-る S ぼ,、 あ. »^ ど . ^か > t/ 

た。 すると 誰か 戶を 叩いて 「もし、 もし」 と 僕に 聲を かけた。 僕 は その 雨戶の 向う に 池の ある こと 

しょうち ぼく 二 ゑ し- れ す こ 

を 承知して ゐた。 しかし 僕に 聲を かけた の は 誰 だか 少しも わからなかった。 

ねが 

「もし、 もし、 お 願 ひが あるので すが、 …… 」 



100 



あまど f てと こ <^ , ぽく ことば き とき > も 

雨戶の 外の 聲 はかう 言った。 僕 は その 言葉 を 聞いた 時、 「はは あ、 K の やつ だな」 と E 心った。 K 

、 ぽ くら いちねん ご てつがく くわ はし ぼう をと 二 ぼ.;'、 よ 二 

と iu ふの は 僕 等よりも 一年 後の 哲學科 14 ゐた、 缠 にも 棒に も かからぬ sf^ だった 僕 はぽ になった 

か なりお ほご ゑ へ んじ 

まま、 可也 大聲に 返事 をした。 

あよ こる 5 だ だめ i たきみ .1",,^ 

「一:^ れつ ぼい 聲を屮 I したって 駄目 だよ" 又 君、 金の こと だら う?」 

^ 2 だ とも あ を /な 

「いいえ、 <キ のこと ぢ やありません。 唯 わたしの 友 だち に會 はせ たい 女が あるんで すが …… 」 

たれ しんば い ひ レー 

その 聲 はどう も K らしくなかった。 のみなら す 誰か 僕の こと を、, P 配して くれる ス らし 力った。 

だく き-" あまど と お い じっさいに は えん さき ひろ いけ 

俊 は!! _f にわく わくしながら、 雨戶を あけに;; g び 起きて 行った。 實際 庭は緣 先から すっと 廣ぃ 池に 

もちろん たれ ひと み 

たって ゐた。 けれども そこに は K は 勿論、 誰も 人 かげ は 見えなかった。 

f しばら つき うつ いけ うへ なが いけ かい V- 飞 なが , み,.、 ^1 < - ■ - ) - - 

僕 は 暫く 月の 映った 池の 上 を 眺めて ゐた。 池 は 海草の 流れて ゐ るの を 見る と 潮入りに なって 

ゐる らしかった。 そのうちに 僕 はすぐ 目の前に さ ざ 波の きらきら 立って ゐ るの を 見つけた。 さ ざ 

あ i よ /、 、っぴ き ふな ふな み-つ す なか いつ/、 を りれ 

^は 足 もとへ 寄って 來る につれ、 だんだん 一 匹の 鮒に なった。 鮒 は 水の 澄んだ 中に 悠々 と 2^! 赌を 

動かして ゐた。 

ふな '£ 

「ああ、 鲋が聲 を かけたん だ。」 



り と ほの 海 



101 



は,、 おも あんしん 

僕 はかう 思って 安心した。 

i にく め さ とき C きさ A. 一 よしす ひ よ うす ブ ひん .《- す ぼく 亡ん めんき も 

伐の M を覺 ました 時にはもう 軒先の 葭 厳の 日除け は 薄 n の 光 を 透かして ゐた。 僕 は 洗面器 を:; ひ 

つて 庭へ 下り、 裹 の井戶 ばた へ 顏を洗 ひに 16: つた。 しかし 額 を 洗った 後で も、 今し がた ^^たサ::れ の 

キ- に) ベ 、あ^ ぼく ゆめ なか ふな し きゐき か われ い 

記愤は 妙に 伎に こびり ついて ゐた。 「つまり あの 夢の 中の 鲋は識 域 下の 我と 言 ふやつ なんだ。」 11 

そ ん な氣も 多少 はした のだった。 

いも じ か. < C 二つ てぬ ぐ ひ あたま ま ぽ くら か:.. すゐ f う かしげ た つ よ^ち やう 

…… 一時 問ば かりたった 後、 乎 拭 を 頭に 卷 きつけた 僕 等 は 海水帽に 贷 下駄 を 突つ かけ、 ャ町ほ 

う,^ お よ い みち に はさ ム-- お -Hi 

ど ある 海へ 泳ぎに 行った。 道 は 庭先 を だらだら 下りる と、 すぐに 濱へ つづいて ゐた。 

「: 冰げ るかな?」 

「け ふ は 少し 寒い かも 知れない。」 

ぼくら こうぼ ふれ ぎ しげ よ よ しづく こうぼ ふむ ぎ なか あし 、 

僕 等 は 弘法 麥の 茂み を 避け 避け、 (滴 をた めた 弘法 麥の 中へ うっかり 足を^み 人れ ると、 ふくら 

はぎ かゆ へいこう はな ある い き こう つみ ダす 

腿の-がくな るのに 閉口した から。) そんな こと を 話して 步 いて 行った C (湫候 は 海へ は ひるに はへ 加し 



102 



す もが ぼくら かづ さ うみ い むし /、 なク 

過ぎる のに 違 ひなかった。 けれども 僕 等 は 上總の 海に、 —— と 言 ふよりも 寧ろ 慕れ かかった 夏に 

未練 を 持って ゐ たのだった。 

うみ ぼくら き ころ もちろん しち はち にん なんに よ なみの こころ 

海に は 僕 等の 來た頃 は 勿論、 きの ふさへ まだ 七 八 人の 男女 は浪乘 りな ど を 試みて ゐた。 しかし 

ひと かいす ゐょノ 、く ゐき し てい あかはた た ただ ひろ 

け ふ は 人 かげ もなければ、 海水浴 區域を 指定す る 赤旗 も 立って ゐ なかった。 唯廣 びろ と つづいた 

itfw さ なみ た ふ . よしす が こき ぬば ちゃいろ いぬ いつび き 

渚に 浪の 倒れて ゐる ばかりだった。 葭簾圍 ひの 着 もの 脫ぎ 場に も、 —— そこに は 茶色の 犬が 一 匹 

こま はむしむ, お ぼくら み むかに い 

細かい 羽蟲の 群れ を 追 ひかけ てゐ た。 が、 それ も 僕 等 を 見る と、 すぐに 向う へ 逃げて 行って しま 

つた。 

僕 は 下駄 だけ は脫 いだ ものの、 到底 泳ぐ 氣に はなれなかった。 しかし M はいつ の 間に か? おぎ 子 

めが Q き ^ ^ お かいす ゐばぅ ,s "へ ほほ あさせ い 

や 眼鏡 を 着 もの 脫ぎ 場へ 置き、 海水帽の 上へ 頻 かぶり をしながら、 ざぶ ざぶ 淺 瀬へ は ひって 行つ 

た。 

「おい、 は ひる 氣 かい?」 

せっかく キ- . 

「だって 折角 來 たん ぢ やない か?」 

ひ r み-つ なか いくぶ こし ひ や わら ひが ほ む み 

M は 膝 ほど ある 水の 中に 幾分 か 腰 を かがめた なり、 日に 燒 けた 笑顏を ふり 向けて 見せた。 



3 「君 も は ひれよ。」 

I ぼく いや 

「僕 は 厭 だ。」 

えん どん 

「へん、 『嫣 然』 が ゐりゃ は ひる だら う。」 

「莫迦 を 言へ。」 

_|;;へ,^^ザへ;,/ - い . あいさつ あ あるじ ふご 〈く ち,:' がくせ、, 

r 嫣然」 と; 一一 一 n-- の はこ こに ゐる うちに 挨接 ぐら ゐ はし 合 ふやう になった 或 卜 五六の 屮學生 だつ た。 

かれ かゾべ つび -せ うねん わかぎ に みづノ _\ そな せう ねん ちゃ-1^.0とゃ.^> 

彼 は 格別 美少年ではなかった。 しかし どこか 若木に 似た 水々 しさ を 具へ た 少年だった。 丁度 十^ 

、 い ぜん あるぶ ご ぼくら う. み あが からだ あっすな うへ な だ .4 れ し i ね 

ぼかり 以前の 或 午後、 僕 等 は 海から 上った 體を 熱い 砂の 上へ 投げ出して ゐた。 そこへ 彼 も满に ii 

1. た-ご ひ き かれ あし なくら ころ み 

れ たなり すたすた 板子 を 引きす つて 來た。 が、 ふと 彼の 足 もとに 僕 等の 轉 がって ゐ るの を 見る 

あざ や は み いっせう かれ とほ す ち ぱく ぴ く う おく 

と 鮮 かに 齒を 見せて 一笑した。 M は 彼の 通り過ぎた 後、 ちょっと 僕に 微苦笑 を. 送り、 

「あいつ、 嫣 然として 笑った な。」 と 言った。 それ 以來彼 は 僕 等の 間に ri 然」 と 言 ふ 名 を 得て ゐた 

海 のだった。 

ほ 「どうしても は ひらない か?」 

「どうしても は ひらない。」 



104 



「ィゴ ィ ストめ!」 

か. いお ぬ ぬ おき すす ぼく とん;;' やく & ぬ 5* 

M は體を らし! i らし、 すん すん 沖へ 進み はじめた。 僕 は M に は 頓着せ す、 着 もの 脫ぎ i? から 

す 二 i な 二 だか ダ なやま うへ い かしげ た しり した し しキ- しま いっぽんす 

少し 離れた、 小高い 砂山の 上へ 行った。 それから 貸 下駄 を臀の 下に 敷き、 敷 島で も 一本 吸 はう と 

f ひ ; てんぐ わい つよ かぜ ため ようい きたば こ うつ 

した。 しかし 僕の マ ツチの 火 は 存外 强ぃ 風の 爲に 容易に 卷 煙草に 移らなかった。 

「おうい。」 

M はいつ 引つ, したの か、 if うの 淺瀨に 佇んだ まま、 何, か 僕に 聲を かけて ゐた。 けれども あ 45 

こも 一 た ま なみ お レー ため ぼく みみ 

その 聲も 絶え間の ない 浪の 音の 爲に はっきり 僕の 耳 へ は ひらなかった。 

「どうしたんだ?」 . 

ぼく たづ とき ゆかた ひ ぱく となり こし お 

僕の かう 尋ねた 時には M はもう 湯 帷子 を 引っかけ、 僕の 隣に 腰 を F ろして ゐた。 

「何、 水母に やられ たんだ c」 

-「,:< すう;:,. つら、 くに r ふ げん ぼく あさ ひだ リ か た じ やう はく 

海に はこの 數 日來、 ft に 水 が 殖えたら しかった。 現に 僕 も をと とひの 朝、 左の 肩から ヒ膊へ 

はり あと 

かけて すっと 針の 痕 をつ けられて ゐ た。 

「どこ を?」 . 



り と ほの 海 



105 



「頸の ま はり を。 やられた なと 思って ま はり を 見る と、 佝匹も 水の 中に 浮いて ゐ るんだ。」 

「だから 僕 はは ひ ら なかつ たんだ。」 . 

「ま をつ け。 —— だが もう 海水浴 もお しま ひだな。」 

なぎ ふ み わた か) さ う あ . ^いさう ほか しら ひ ひかり けむ ただ 

诸は どこも 見渡す 限り、 打ち上げられた 海 革の 外 は 白 じらと rn の 光に 煙って ゐた。 そこに は 唯 

: も かげ とキ, ん\ お ほ, t し とほ ぼくら しきし ま く ± しばら だま い なき :- ぶ 

雲の 影の 時々 大 走りに 通る だけだった。 僕 等 は 敷 島を啣 へながら、 暫く は默 つて かう-言 ふ诸 にお 

せて 來る浪 を 眺めて ゐた。 

r^s は 敎師の 口 はき まった のか?」 

M は 突と こんな こ と を 尋ねた。 

「まだ だ。 !!^;は?」 

^く ぼく 

「类 か? 僕 は …… 」 

なに い とき ぼくら きふ わら 3^ あし」.? ご おどろ かい すん. き 

M の 何 か 言 ひかけ た 時、 僕 等 は 急に 笑ひ聲 やけた たましい 足 昔に 驚かされた。 それ は 海水^に 

海水帽 を かぶった 同年輩の 一 一人の 少女だった。 被 等 は 殆ど 傍若無人に 僕 等の 側 を 通り- 拔 けながら、 

なぎさ し ぼく...:' うしろ f がた ひとり しんく かいす ゐぎ & ひとり ちゃう 

まっすぐに 渚へ 走って 行った。 僕 等 は その後 姿 を、 i ■ 一 人は眞紅の;^水^^を着、 もう 一人 は r 



ど とら くろ き かいす ゐぎ き けいく わい うしろすがた みおく い あは 

度 虎の やうに 黑と 黄と だんだら の 海水着 を 着た、 輕 快な 後 姿 を 見送る と、 いっか 言 ひ 合せた やう 

に 微笑して ゐた。 - 

かのちよ かへ 

「彼女た ち もま だ歸ら なかつ たんだな。」 

こみ: じ やう だん なか た せう かんがい たく 

M の聲 は常談 らしい 中に も 多少の 感慨 を 託して ゐた。 

「どう だ、 もう 一 べん は ひって 來 ちゃ?」 

「あいつ: 一 人なら ば は ひって 來る がな。 何しろ 『ジ ン ゲジ』 も 一 しょ ぢゃ、 …… 」 

ほくら .55 へ えんぜん かれら ひとり くろ き かいす ゐぎ き せ うぢよ い 

僕 等 は 前の r 嫣然」 の やうに 彼等の 一 人に、 11 黑と 黄との 海水着 を 着た 少女に 「ジン ゲジ」 と 一 百 

あだな かの ぢょ かほ にくかん てき い 

ふ 課 名 をつ けて ゐた。 r ジ ン ゲジ」 と は 彼女の 顔 だち (ゲジ ヒ 卜) の 肉感的 (ジ ン リツ ヒ) な こと を 意 

み ほくら ふたり . せ うぢよ かう い も にく ひとり せう V- よ 

味す るの だった。 僕 等 は 二人とも この 少女に どうも 好意 を 持ち 惡 かった。 もう 一人の 少女に も、 

ひとり せ うぢよ ひ かくてき きょうみ かん きみ 

—— M はもう 一 人の 少女に は 比較的 興味 を 感じて ゐた。 のみなら す 「君 は 『ジ ン ゲジ』 にしろ よ。 

ほく つが ふい しゅち やう 

僕 は あいつ にす るから」 などと 都合の 好い こと を 主張して ゐた。 

か ぢょ ため こ 

「そこ を 彼女の 爲には ひって 來 いよ。」 . 

ぎ せいてき せいしん はっき み い しき 

「ふん、 犠牲的 精神 を發 揮して か? —— だが あいつ も 見られて ゐる こと はちゃん と 意識して ゐる 



り とほの 海 



107 



ん だからな。」 

「意識して ゐ たって 好 いぢ やない か。」 

す こ しゃく 

「いや、 どうも 少し 瘤 だね。」 

かれら て あさせ なみ かれら あし た しぶ う 

彼等 は 手 をつな いだ まま、 もう 淺瀨へ は ひって ゐた。 浪は 彼等の 足 もとへ 絶えす 水 吹き を 打ち 

あ- ふ!. -I かれら, ^. ノ ^ ^-^ ノ たび レ J あが い かれら たは., I- 

上げに 來た。 等 は 1^ れ るの を 惧れる やうに その 度に きっと 飛び 止った。 かう 言 ふ 彼等の 戯れ は 

V ぴ ん しょ なぎ さ ふ てう わ かん はな み じっさい にんげん てム うつく 

この 寂しい 殘:: 者の 诸と 不調和に 感する ほど 花やかに 見えた。 それ は實際 人^よりも 蝶の 美し さに 

か ぼ Z 、ら かぜ はこ く かれら わら ご ゑ き し, じら たたな ぎ さ とほ か. ら 

近い ものだった。 僕 等 は 風の 運んで 來る 彼等の 笑 ひ聲を 聞きながら、 暫く 又 猪から 遠ざかる 彼等 

す 力た なが 

の 姿 を 眺めて ゐた。 

かんしん ^^.かく§ぅかん 

「或 5、.::- に 中々 敢 だな。 一 

「まだ 赞は 立って ゐ る。」 

「もう —— いや、 まだ 立って ゐ るな。」 

かれら て べつ/ \ おき すす かれら ひとり しんく かいす.,〕 ぎ & 

彼等 はとうに 手 をつな がす、 別々 に 沖へ 進んで ゐた。 彼等の 一人 は、 — sg^ 紅の 海水着 を 煮た 

せ うぢよ とく すす おも ちち み-つ なか た ひとり せう;;' よ まね 

少女 は 特に すん すん 進んで ゐた。 と 思 ふと i ほどの 水の 中に 立ち、 もう 一人の 少女 を 招きながら、 



108 



なに だか : ゑ かほ お ほ かい すん ばう とほめ い い わら 

何 か 甲高い 聲を あげた。 その 顏は 大きい 海水帽の うちに 遠目に も 活き活 きと 笑って ゐた. - 

「水母 かな?」 

「水母 かも 知れない。」 

かれら ぜん n さら おき で ゆ 

しかし 彼等 は 前後した まま、 更に 沖へ 出て 行く のだった。 

,, 、ら ふたり ^§ぢ よ すがた かいす る f う み す ノ、 二し お-一 

僕 等 は 二人の 少女の 姿が 海水帽ば かりにな つたの を 見、 やっと 砂の 上の 腰 を 起した。 それから 

あま はたし はら へ ちが やど はう かへ い 

餘り話 もせす、 (腹 も 減って ゐ たのに 違 ひなかった。) 宿の 方へ ぶらぶら 歸 つて I:;: つた。 

ひ くれ もき すす 、ら ^ん めし のち .75 ち キ- せいち ラ い とも 

::: 日の 暮も 秋の やうに 涼しかった。 僕 等 は晚敏 をす ませた 後、 この 町に 歸^ 中の H と 言 ふ 友 

い やど わかしゅ じん いちど はまで い なに よ にん いつ さん 

だち や N さんと 言 ふ 宿の 若 主人と もう 一 度濱へ 出かけて;:: つた。 それ は 何も §: 人と も 一 しょに 散 

ぼた めで むら を ぢ たづ またお な むら t- や にに 

牛グ をす る爲に 出かけた のではなかった。 H は S 村の 伯父 を;!: せね に、 さん は乂 同じ 村の 籠 屋へ庭 

とり ふ か-ご ち. T もん あし はこ 

鳥 を 伏せる 籠 を 註文し に それぞれ 足 を 運んで ゐ たのだった。 

はま-つた わら で みち たか すな やえ すそ ちゃう どかいす ゐ よくく ゐ き はんたい はう がく むか 

濱俾 ひに S 村へ 屮 I る途は 高い 砂山の 裾 を ま はり、 丁度海水?$*£^域とは反對の方角に向ってゐた" 



'; とほの 海 



109 



うみ もちろ x.^ なや? かノ、 なみ "つと キ- 一 tf. .H くい な こ ,、ろ 

海 は 勿論 砂山に 隱れ、 浪の音 も かすかに しか 聞えなかった。 しかし 疎らに 5:H え 仲び たや は^か 黑 

ほ で た しほ か. y 

ぃ械に 出ながら、 絶えす 潮風に そよ いで ゐた。 

へん は くさ こうぼ ふむ ぎ ,,;- . 

「この 邊に 生えて ゐる草 は 弘法 麥ぢ やない ね。 11 N さん、 これ は 何と ぎふの?」 

ぼく あし くさ じんべ いひと わた 

僕 は 足 もとの 草 をむ しり、 甚平ー つに なった N さんに 渡した。 

たで なんい し *T«- 

「さあ、 藝ぢ やなし、 —— 何と肯 ひます かね。 H. さん は 知って ゐ るで せう。. わたしな どと は^つ 

て 土地つ 子です から。」 

ほくら, とう 今-やう むこ き みみ .ノ- つき V ノ / ん キ よはん t リ 

僕 等 も N さんの 東京から 知 耳に 來 たこと は. 斗に して ゐた。 のみなら す (豕附 の 細 ii; はぷ 年の. il- とか 

をと こ こしら いへ で みみ 

に を 持へ て 家出した こと も 耳に して ゐた。 

さかな ci 

「魚の こと も H さん はわた しょり はすつ と 詳し いんです。」 

がノ、 しゃ ほく 良た し けんじゅつ おも 

「へええ、 H はそんな に學者 かね。 僕は义 知って ゐ るの は 劍術 ばかり かと m 心って ゐ た。」 

い ゆみ をつ も a ひ よ-だ む" 

H は M にかう 言 はれても、 弓の 折れの 杖 を 引きす つた まま、 唯 にゃにゃ 笑って ゐた。 

「おさん、 あなた も 何 かやる でせ う?」 

「僕? 僕 はま あ: 冰 ぎだけ です ね。」 



ひ のち きょねんす ゐ えいちう をこぜ さ とうき やう かぶや はなし - -0 、 つ/ 

N さん は バットに 火 をつ けた 後、 去年 水泳 中に 虎魚に 刺された 東京の 株屋の 話 をした その 料 

は 鍵が ぼと si 一口っても、 いや、 1^ がな どの 訣 はない、 確かに あれ は 海蛇 だと 强情を 張って ゐ 

たと か 言 ふこと だった。 

うみ へび • - 

「海蛇なん てほんた うに ゐ るの?」 . 

とひ こた ひとり かいす ゐ J う せ たか I 

しかし その 問に 答へ たの はたった 一 人 海水帽 を かぶった、 脊の 高い H:^ つた。 

「海蛇 か? 海蛇 はほんた うに この 海に もゐる さ。」 

いま ろ 

「今頃 も か?」 

「何、 滅多に ゃゐな いんだ。」 

僕 等 は 四 人と も 笑 ひ 出した。 そこ へ 向う からな がらみ 取りが 一 一人、 (ながらみ と ilii:! ふの は 蝶の 一 

g である じが を ぶら p> げて步 いて 來た。 彼等 は 二人とも 赤 樺 をし めた、 筋骨の 逞しい sf- だった 

が、 观に 濡れ 光った.^ はもの 哀れと ず ふよりも 見すぼらしかった。 N さん は 彼等と すれ違 ふ 時、 

ちょっと M 等の 挨 桜に 答へ T 風呂に お, で」 と I 弦 を かけたり した。 

「あ あ ーず ふ商賫 もやり 切れないな c」 



り と ほの 海 



111 



僕 は 何 か 僕 自身 もながら み 取りに なり 兼、 ねない 氣 がした。 

±- フニ & なに おき およ い なんど うみ そこ もぐ 1 

「ええ、 全く やり切れません よ。 何しろ 沖へ: 冰 いで 行つ ちゃ、 何度も 海の 底へ 潜 るんで す 力ら 

ね。」 

み を なが じふち うはつく たす 

「おまけに! £ に 流されたら、 十中八九 は 助からな いんだよ"」 

み を つ ゑ ふ ふ み を はなし お ほ み を ぎ いす" り,;^. ん 5. き、—, ヽ 

H は 弓の 折れの 杖 を 振り 振り、 いろいろ^の 話 をした。 大きい- 淳は 渚から 一 里 牛 も:?: へ つつ レ 

はなし 

てゐ る、 —— そんな. こと も 話に まじって ゐた 

「そら、 H さん、 あり やい つでした かね、 ながらみ 取りの 幽靈が 出る つて 言 つたの は?」 

キ- よねん あき 

「去年 —— いや、 をと としの 秋 だ。」 

「ほんた うに 出た の?」 

二た まへ わら ご ゑ も 

H さん は M に 答へ る 前にもう 笑 ひ聲を :=i- らして ゐた 

、つ L , 、う 九 ,- で , いそ くさ やえ らんた ふ.. ひ 

「ii ぢゃ なかつ たんです。 しかし^ 靈が屮 I るって 言った の は 磯つ 臭い 山の かげの 卵塔場でした 

し、 おまけに その 又な からみ 取りの 死骸 は 蝦 だらけに なって 上った もんです から、 誰でも 始 のう 

ち は ik に i.^ けなかった にしろ、 氣味惡 がって ゐ たこと だけ は 確かなん です。 そのうちに 海軍の 兵 



112 



v.- う あが をと-一 よ ひ らんた ふば は い-つお い み 

曹 上りの 男が 宵のう ちから 卵塔場に 張り こんで ゐて、 とうとう ま靈を 見と どけたん です がね。 と 

み なん ただ ゝ、 ゝ、 と ふうふ やくそく チち だる i r' r 

つつか まへ て 見り や 何の こと はない。 唯 そのな がらみ 取りと 夫婦約^ をして ゐ たこ の 町の 達磨 茶 

や をん な いちじ ひ も ひと よ こ ゑ 含 二 や いは <-; 

屋の女 だつ たんです。 それでも 一時 は 火が 燃える の 人 を 呼ぶ 聲が 聞え るの つて、 すゐ ぶん 火 6、 ぎ 

をした もんです よ。」 

べつだん をん な ひと おど き 含 

「ぢゃ 別段 その 女 は 人を嚇 かす 氣で 來てゐ たん ぢ やない の?」 

ただまい ばんじ ふに じ ぜんご ヽゝ ゝヽと はかまへ き た 

「ええ、 唯 毎晩 十二時 前後に ながらみ 取りの 墓の 前へ 來 ちゃ、 ぼんやり 立って ゐ ただけ なんで 

す。」 

はなし い うみべ いか きげき たれ わら 

N さんの 話 はかう 言 ふ 海邊に 如何にも ふさ はしい 喜劇だった。 が、 ^も 笑 ふ ものはなかった。 

みな だま あし はこ 

のみなら す 皆 なぜ ともなし に默 つて 足ば かり 運んで ゐた。 

「さあ この 邊 から 引つ 返す かな。」 

はくら い とき ま かぜ お ひとけ なき さ ある 

僕 等 は M のかう 言った 時、 いつの 間に かもう 風の 落ちた、 人氣 のない 渚を步 いて ゐた" あたり 

ひろ すな うへ ナ.' どり あしち と み あか つみ み わた 

は廣ぃ 砂の 上に まだ 千鳥の 足跡 さ へ かすかに 見える ほど 明るかった。 しかし 海 だけ は 見渡す 限り、 

二 つか なみう ぎ は ひと みな わ いちめん , ろ て 

はるかに 弧を描いた 浪 打ち 際に 一 すぢの水^^<:を殘したまま、 一 面に Mi ぐろ と 暮れ かかって ゐた。 



り と ほの 海 



113 



r ぢゃ 失敬。」 

「さやうなら。」 

力 のち ぼ く *^ ノ、 ベ つ 、! V k ;w A^f-J-I- > » X 

H や N さんに g れた 後、 僕 等は袼 g 急ぎ もせす、 冷が えした % を-卯き T きした。 船! i は:^ ち 十」 

なみ, おと ほか とき ,4,.- す わた ひぐ らし こ ゑ ぼくら みみ つ.. -- r すく,!、 : "-.P- ; fc 

る浪の 昔 の 外に 時々 澄み渡った 蜩の 聲も伎 等 の 耳 へ e, は つて た。 それ は ダ, ひと も 一 .rr^?i « れ ヒ 

まつばやし な ひぐ らし 

松林に 鳴いて ゐる躺 だった。 

「おい、 M !」 

僕 はいつ か M よりも 五六 歩 あとに 歩い てゐ た。 

なん 

「:i: だ?」 

^くら とうき やう ひ あ 

「僕 等 ももう 東京 へ 引き上げよ うか?」 

ひ あ わる 

「うん、 引き上げる のも惡 く はない な。」 

それから M は 叙. g さう にテ イツ ぺ ラリイの ロ简を 吹き はじめた。 

(犬 正 十 M:^ 八 B 七! =) 



I 

I 



, 鍵 おの s い ir る。 が、 1の醫は^?ぉ5-ぃぎ|!くはなぃ。 i ザて, S あ 

く はない。 ^ 中の 人々 は その 爲に 大抵 は わざわざ 城外へ 出、 九 小便 をす る ことに 定めて ゐる、 唯 

?耿ま!^ゃ鹏^!:だけは^^器の中に用を足し、 特に 足を勞 する こと をし ない。 しかし この 便 i おの 中 

の!! S もどう にか 始が をつ けなければ ならぬ。 その 始末 をつ ける のが 除魏 人と 呼ばれる.. < 々であ 

る 

, / ; >.-,: , V- よんん にん ひとり しれ . も! いじ やう な. & もっと やう 、 y-^N-. 

もう 紫の 黃ば みかけた 尼提 はかう 言 ふ 除 驚 人の 一 人で ある。 舍衞 城の 中で も 最も や おしい 1:^5- 

もっと しんしん しゃう ヒゃぅ えん とほ ひと ふ \ ひとり , 3 

に 最も 心身の 淸淨 に緣の 遠い 人々 の 一人で ある。 

ち る ひ r 一 ご こ だ, - しょに ふんね う お ほ ぐ わき なか あ-つ- , >*た^^*..-. ^ - - r 

If 日の. 後、 ^^徵はぃっものゃぅに諸家の魏尿を大きぃ瓦器の中に^め、 その 父 瓦 器 を 背に 负 

つた まま、 いろいろの」 M の 軒 を 並べた、 狭苦しい 路を 歩いて ゐた。 すると, M うから 歩いて 來 たの 

u ま 1 を? 寸 つた TV の, IS である。 ,11 はこの fl: ん を^る が, 早い か、 これ は 大變な 人に m# つたと 



提尼 



117 



お f > 5 丄ゃ もん み ところ あた まへ ひと かユ み けん く:^ う ^ ' - - C :-1 ,J 

S えった。 沙門 はちよ つと 見た所で は當り 前の 人と 鍵り はない。 が、 その 2^問 の. si や 主れ の? n 

) たし ぎ をん しゃう じ や しゃか によら, V ちが 

を.^ つて ゐる ものに は 確かに 祇園 精 舍にゐ る 釋迦如 來に違 ひなかつ たからで ある。 

n^^^.^^-^^^c . ^ち *^ ん さんがいろ くだう けうし ゆ じつば うさい しょう くわう みやう む げ おくく しゅじ やうべ. やう どう 、ん 1 こう つうげ . 

!&:^^ー-^來は勿論三界六道の敎主、 十方最 勝、 光 明 無 跪、 傥々 衆生 平等 Hs^ おの 能 化で ある。 け 

なに に だい し ところ 」- だかれ し に? ゑ? 一く :: 

れ ども その 何も のた るか は 尼提の 知って ゐる 所ではない。 唯 彼 の 知 つ て ゐ るの は こ の 舍^ 國の卞 W 

斯. 王 さへ 如來 の. 前に は臣 卜の やうに 禮拜 するとず ふこと だけで ある。 或は 乂名ー n 问ぃ 給-孤 お 者 

ぶ.^」 ±£f; うし や つく ため ぎ だ ど-つじ ゑん ゑん か とき わ-つ ごん ち し - 

も紙^^精金を造る爲に祇陀^!里子の^苑を賈った時には黄金を地に布ぃたと^;::ふことだけでぁる" 

に,, -ぉ l-T: 、 ^ らい ..1* へ ふんき せ ■ お かれ じ しん は £ん , ふ- ぶ れ", さう くわう IV 

尼提は 力う 言 ふ 如 求の:^ i に (與器 を 北:: つた 彼 自身 を 羞ぢ、 萬が 一 にも 無禮 のない やうに と^ 

,? ち ,ズ が 

の路 へ^って しまった。 

にょらい まへ に だい すがた み かれ まか :. へち キパ . どうき 

し 力し 如來は その 前に 尼 提の姿 を 見つけて ゐた。 のみなら す 彼が 佌の路 へ:^ つて つた 動機 を 

ろ, -3 - - ; どうき おも にょらい まほ ぴ せう ただよ もす-ろん び せう 

も つ: D てゐ た。 その 動機が 思 はす 如 來の頻 に 微笑 を 漂 はさせ たの は 勿論で ある。 微笑 を? 

、 > 、 ぴ せう むちぐまい しゅじ やう たい うみ ふか れん ブん じ やう ケ ノーし 

んゃ 、ゼ すし も 「微笑 を」 ではない。 無智 愚昧の 衆生に 對 する、 海よりも 深い 憐 飼の 情 は その:; if 紕 

しはくめ なか いってき なみだ うか い だ、 じひ し,〉 うご --ょ t: - 'r . 

色の 目の 中に も 一 滴の 淚さ へ 浮べ させた ので ある。 かう , ふ大 慈悲心 を 動かした:^ 來は 忽ち .Jfij 

) . とし ちょ ふん にん でし かす くに ナ つし/" 

の 神通力に より、 この年をとった除魏人をも弟子の數に加へょぅと5^レした。 



にだい こんど が まへ せまみ ち かれ r.^ しろ ふ かへ にょらい 二 

尼提の 今度 曲った の もや はり 前の やうに 狹ぃ路 である。 彼 は 後 を 振り返って 如 來の來 ない の を 

たしか うへ はじ ひといき にょらい まか だ こく わう じ にょらい で し たいてい み ぶん 

確め た 上、 始めて ほっと 一息した。 如 來は摩 迦陀國 の 王子で あり、 如 來の笫 子た ち も 大抵 は 身分 

たか ひと,?,. - ざい n ふ ふか かれ みだ し せき さ い i 

の 高い 人々 である。 業の 深い 彼な ど は 妄りに 咫尺す る こと を 避けなければ ならぬ。 しかし 今 は 

-さ 一は ぶじ にょらい め くら にだい た にょらい 力れ ナカ 

幸 ひに も 無事に 如來の 目を晦 ませ、 —— 尼提 ははつ として 立ち どまった。 如來 はいつ か 彼の 向う 

ゐ げん ぴ せう うか あんし やう ある 

に 威嚴の ある 微笑 を 浮べた まま、 安庠 とこ ちら へ 步 いて ゐる。 

に だい ふんき おも いと いちど ほか みち A..- が い にょ^^:-ぃ かれ めん ザ- ん す 力た ぶん は 

尼 提は糞 器の 重い の を 藤 はす、 もう 一度 他の 路へ 曲って 行った。 如來が 彼の 面前へ 姿 を 現した 

ふかしぎ あるひ いっこく はや ぎ をん しゃ-つじ や かへ ため みち なに „ し/ 

の は 不可思議 である。 が、 或は 一刻も早く 祇園 精舍へ 歸る爲 にぬ け 道 か 何 かした のか も 知れない" 

かれ こんど とっさ あ ひだ にょらい こんじん ちか „ しあに-. 

彼 は 今度 も 咄嗟の 間に 如 來の金 身に 近づかす に すんだ。 それだけ はせ めても の 仕 合せで ある け 

に だい おも とき またに よらい むか ある く ぴ つくり 

れ ども 尼提 はかう 思った 時、 又 如來の 向う から 步 いて 來 るのに IK 驚した。 

み たびめ にだい まが みち にょらい いうく ある 

三度 目に 尼提の 曲った 路 にも 如 來は悠 々と步 いて ゐる。 

よ め に だい まが みち にょらい し し わう ある 

M たび 目に 尼提の 曲った 道に も 如來は 獅子 王の やうに 步 いて ゐ る。 

ひつ め にだい まが みち にだい せ え みち なな まが なな にぶらい ク: る に、 

五た び 目に 0:^ 提の 曲った 路 にも、 —— 0^ 提は狹 ぃ路を 七た び 曲り、 七た びと も 如 求の T デニ」 來 

h で あ こと なな め ,が に みち ふ, ろみち にょらい ふれ ち" や, 

1 るのに 出合った。 殊に 七た び 目に 曲った の はもう 逃げ道の ない 袋路 である 如來は 彼の 狼お する 



尼 



み みち なか たたす おもむ .^-れ *<.:.*- £ぴ せんす, やう つめ しゃくどう 

の を 見る と、 路 のまん 中に 佇んだ なり、 徐ろに 彼 を さし 招いた。 「その 指纖 長に して、 爪 は 赤銅の 

ごと たなごころ れん ォ に て あ さて い いみ, しめ 3 * に, だ」 い いはて * 

如く、 掌 は 蓮華に 似た る」 手 を 擧げて 「恐れるな」 と 言 ふ 意味 を 示した ので ある が 尼提は 愈 

おどろ ぐ わ や おと 

驚き, とうとう 瓦 器 をと り 落した。 

おそ い とほ : だ 

「まことに 恐れ 人り ますが、 どうか こ こ をお 通し 下さい まし。」 

しんた。 とも きょ に だノ ふん じふ なか つ にょらい ん ぐわん によ..: い あ ひか はら すん 

進退 共に 窮まった 尼 提は魏 汁の 中に 跪いた まま、 かう 如來に 歎願した。 しかし 如 來は不 相變威 

げん プ -3 じう たた しづ かれ > ほ み おろ 

嚴の ある 微笑 を谋 へながら、 靜 かに 彼の 額 を 見下して ゐる。 

「尼提 よ、 お前 も わたしの やうに 出家せ ぬか ー」 

によら、 らいお.? X とき に だい レー はう /、 あま がっし やう にょらい み あ 

如 來が雷 昔に 呼びかけた 時、 尼提は 途方に 暮れた 餘り、 合掌して 如來を 見上げて ゐた。 

「わたくし は賤 しい もので ございま する。 到底 あなた 樣 のお 弟子た ちな どと 御 一 しょに をる こと 

は出來 ませぬ。」 

ぶつば ふ き せん わか みやう くわ だいせ うかう を や つく か は 

「いやいや、 郎 Si の 貴賤 を 分たぬ の はたと へば 猛火の 大小 好 惡を燒 き してし まふのと 鍵り はな 



• 一 

し 



にょらい げ と き やう もん か とほ 

それから、 11 それから 如來の 偶を說 いた こと は經 文に 書いて ある 通りで ある 



よんつ キ- or> ぎ をく, しゃう.:^ や ま. a きふ こどく やつ やう じ や た ば せう なか ;, り にだい ひと リ あ 6 く 

51- 月ば かりたった 後、 祇園 精 舍に參 つた 給孤獨 長者 は 竹 や 色蕉の 中の 路 を:^ 提が 一 人 歩いて 來 

で あ かれ --. -がた ぶつで し あま ちょ ふん にん レーき か は かれ あ f- ほ 

るのに 屮 Z 會 つた。 彼の 姿は佛 弟子に なっても、 餘 り除魏 人だった 時と 變 つて ゐ ない が 彼の" S 

かみ ナ ^レ- こ だ、 + つやう ヒゃ く み みち た 力つ しゃう 

だけ はとうに 髮の毛 を 落して ゐる。 尼提は 長者の 來 るの を 見る と、 路ば たに 立ち どまって 合掌し 

た。 • 

-, だ、 まへ し あ K ひと にょらい で し えいき-つ しゃつ じ を ど : じ やう じやく 

「5^fe よ。 お前 は 仕 化せ もの. だ。 一た び如來 のお 弟子と なれば、 永久に 生死 を 腿り 越えて 常 寂 

くわう ど あそ で 今 

光 土に 遊ぶ ことが 出來る ぞ。」 

にだい い ちゃう じ や ことば いよいよ いんぎん へんじ 

尼提 はかう 一一 一一 a ふ 長者の 言葉に 愈 悠 勤に 返事 をした。 

「長者よ" それ はわた くしが 惡 かった 訣 では ございませぬ。 唯 どの 路 へ.^ つても、 、ゼ すその 路へ 

お出に なつ た如來 がお 惡 かつ た の で ご ざ い まする。」 

こ だ, き や, T もつ いっしん ちゃう ほふ G ち つ ひ しょく わ え い 、 

しかし 尼 提は經 .jx によれば、 一 心に 聽法 をつ づけた 後、 遂に 初果を 得た と; B ュ ことて ある 

(大正 十四 年 八月 十三: ::) 



カントン うま そん. つ せんら のぞ め しな かくめいか くわう こう さいがく そうけう じんら 

- 廣 東に 生れた 孫 逸 仙 等 を 除けば、 目 ぼしい 支那の 革命家 は、 11 黄 興、 蔡 ir 宋敎仁 等 は いづ 

二 なん うま もちろんそう こくはん ちゃうし どう かんくね かん 

れも 湖南に 生れて ゐる。 これ は 勿論 曾 國藩ゃ 張 之 洞の 感化に もよ つたので あらう。 しかし その 感 

くわ せつめ ひ ため -ー なん たみ じ しん ま き つよ かんが ^く こ なん 

化を說 明す る爲に はや はり 湖南の 民 自身の 負けぬ 氣の强 いこと も考 へなければ ならぬ。 僕 は 湖南 

りよ かう とき ぐうぜん せう せつ しも せう じ けん さう ぐう せう じ けん じ やう 

へ 旅行した 時、 偶然 ちょっと 小說 じみた 下の 小事 件に 遭遇した。 この 小事 件 もこと によると、 情 

ねつ と こ なん たみ めんぼく しめ ,. し. 1 ノ, - 

熱に 富んだ 湖南の 民の 面目 を 示す ことになるの かも,^ れ ない 

X X X X X X 

いしゃう じふ ねん 一 ごぐ わつ じふ. りくに ち 1- 一 I ご よ じ ごろ ほく Q げんかう *: る ちゃう さ さ;^ ば、 し . よこ-つ, ノ 

大正 十 年 五月 十六 日の 午後 四時 頃、 僕の 乘 つて ゐた玩 江 丸 は 長 沙の梭 橋へ 横着け になった。 

^く な ぶん ま、 かん" -、 ぐ ちんかん よ さ げん せま く こ なん ふじ わ-つ 

僕 は その 何分 か 前に 甲板の 欄干へ 凭り かかった まま、 だんだん 左舷へ 迫って 來る 湖南の 府城を 

^ ii べノ たか どんてん やま まへ しらかべ か はら やね つ あ 4 つやう、 さ よ: さ,.〕 い 化 やう み, , 、 - :„ 

1 眺, め て ゐ た- レ 高 い 暴 天 の 山の 前に 白壁 や 瓦屋根 を 接み 上げた 長 沙は豫 想^ 上 に 見すぼらし かつ た" 



--, だ せ はズる , ふ とう あたら あかれん ぐ わ せいやう か をく f やな:! a み a y . >w^ : し 

" 殊に狄苦しぃ埤頭のぁたりは新しぃ赤谏瓦の西洋,:豕屋ゃlj*などもl:3^ぇるだけにず^々淝^l;-rかと 

變ら なかった。 僕 は 當時長 &に& うた 1<%t の il, いに ずん I つして ゐ たから、 "あ. i にも. 11^ の M にみ nj^ 

る ものの ない こと を覺 悟して ゐた。 しかし かう ず ふ 見すぼらし さは やはり I- に. H,iJ^I5- こ 、り^ li 

を與 へたのに 遠 ひなかった。 

^ぬ;? は g ぎ, やうに じりじり gi へ, いて ゆった。 1 ぎに;^ い おもじり じり 

幅 を 縮めて 行った。 すると 薄汚い 支那 人が 一 人、 慰 II か を ぶら 1^ げたな り、 il!^ の^の?!; 

から ひらりと 梭 橋へ 飛び移った。 それ は實際 人間よりも M にあい ifll だった。 が、 あっと II ふう 

) - こ,ん^- , てんびんぼy^ よこ み 1 ごと たみ-つ を ど こ つ-つ ふん., り C.J< .-.-r.: ? ^ 

ちに 今度 は 天 棒 を 横た へたの が 見 蓽に乂 水 を 跳り 越えた。 綾いて ゴ人、 •tif I ^る 

み, - ば マ、 め した さん f し と うつ むすう しな じん うづ .^ a .i 

見る 侵の 目の 下 はの べつに 接 橋へ 飛び移る 無数の 支那 人に 埋まって しまった。 とず ふと. f はいつ 

ヽ - - 4^ かれんぐ わ せいやう か をく はやな ぎ なら ま、 よこ-つ s 

の 問に かもう 赤 煉瓦の 西洋 家屋 や 葉 柳な どの 並んだ 前に どっしりと 橫 着けに, えて ゐた。 

巧,、 ) I は.^ ん はな ノ おな しゃ ぶっしょく だ ちゃう さ ろく a: 

仪 はやつ と 欄 h- を 離れ、 同じ 「社」 の B さん を 物色し 出した。 長沙に 六!!^ ゐる B さんよけ ふ も 

f と, - げんかう まる で む^^ き t* す 

^ 特に 沉江 丸へ 出迎 ひに 來て くれる^ になって ゐた。 が、 B さんら しい t もつ は おに^に はみ つから 

r なかった。 のみなら す 紋梯を 上下す るの は 老若の 支那ん ばかりだった〕^ llsiif に I: しが:: ひへ し 



124 



あ くち-; なに さわ こと ひとり らう しんし 尸くて * お か、 う- 

合 ひ- 口々 に 何か騷 いで ゐた。 殊に 一人の 老; 1 士 など は 舷梯 を 下り ざまに ふり 返りながら、 後ろ 

ゾ ウリィ び <.^、> , ちゃう かう さかのぼ き ぼく けつ め.? し み 

にゐる 苦力 を 鍵ったり して ゐた。 それ は 長江 を 溯つ て 来た 僕に は 決して 珍しい 见 もので はな かつ 

また かくべつみ な +r やう かう かんしゃ み 

た。 けれども 亦裕 5^; 見 恨れ た こ と を 長江 に 感謝したい 見 もので もなかった。 

ぼく いらだ . ん いちど らんかん ひと >M み 今 よら * -.. 

僕 はだん だん 背 立た しさ を 感じ、 もう 一度 攔十 によりか かりながら、 やはり 人波の 去來 する: 

) ぜんご , な. ふ - かんじん もちろん に ほんじん ひとり み あた 

頭の, il 後 を 眺め ま はした。 そこに は 肝腎の B さん は 勿論、 日本人 は 一人 も兑 當ら なかった。 しか 

- 巧へ ゼ、 し むか . . i;, さ はやな ざ した ひとり し な び じん はつ はん か ちょ み-ついろ なつ 

し 僕は棧 橋の 向う に、 . I 枝の つまった 葉 柳. の 下に 一人の 支那 美人 を發 見した。 彼女 は 水色の 一 3- 

^u^,^^ I ^ 、 なに- さ い か こ ども をん な ぼく め あるひ 

衣裳の 胸に メダル か 佝かを ぶら下げた、 如何にも 子供ら しい 女だった。 僕の 目 は 或は それだけで 

.^s ふよ 々、- ノ - し, - かの ぢょ うへ たか かん" -iN? み あ べに 二 くち 

も 彼女に 惹 かれた かも 知れなかった。 が、 彼女 は その上に 高い 甲板 を 見上げた まま、 紅の 濃い n 

-ペ; i せ,, ? 5 ^-^ あ づ はんぴら あ ふぎ 

もとに 微笑 を 浮かべ、 誰かに 合 ひ 11 でもす る やうに 半開きの 扇 を かざして ゐた。 …… 

きみ . 

「おい、 君。」 

J" おどろ かへ ぼくう し , ま ねす みいろ タァ クヮル き しな じら ひ レ-リ か * 二つ, つ 

僕 は 驚いて ュり 返った。 僕の 後ろに はいつ の 問に か 鼠色の 大掛兒 を 着た 支那 人が 一 人、 颇屮に 

愛嬌 を 漲らせて ゐた。 僕 はちよ つと この 支那 人の 誰; であるかが わからたかった。 けれども 忽ち 仏 

^ なん- んづく かれ 5 す まゆげ きうい う ひとり おも だ 

の 顔に、 11 就中 彼の 薄い 眉毛に 舊 友の 一 人 を 思 ひ 出した。 



扁 の 南 湖 



125 



「や あ、 君 か。 さう さう、 君 は 湖南の 產 だった つけね。」 . . 

かいげ ふ 

「うん、 ここに 開業して ゐ る。」 

たんえ いねん ぼく どうき い t- かう とうだ,;. い くわ りうが く. JtJ 、ちう さ, じん 

譚 永年 は 僕と 同期に 一 高から 東大の 醫 科へ は ひった 留學生 中の 才人だった。 

「け ふ は 誰かの 出迎 ひかい?」 

「うん、 誰かの、 —— 誰 だと 思 ふ?」 

「僕 の 出 迎ひぢ やないだ ら う?」 

譚 はちよ つ と 口 をす ぼ め、 ひよ つ と こ に 近い 笑 ひ 顔 をした。 

「ところが 君の 出迎 ひなんだ よ。 B さん は 生憎 五六 日 前から マ ラリャ 熱に 械 つて ゐ る。」 

「ぢゃ B さんに 賴 まれたん だね?」 

r 賴 まれな い で も來る つ もり. だ つ た。」 

ぼ,、 かお れ. かし あい V, う い おもだ たん ぼくら 々., しゅくし やせいく わつ す-う たれ あくかん えた 

僕 は 彼の 昔から 愛想の 好い の を 思 ひ 出した。 IS は 俊 等の 寄 .11£舍 生活 中、 諭に も?^ - 感を與 へた こ 

も またた せう ぼくら あ ひだ ふ ひやう ばん ど 。しつ 

とはなかった。 若し 乂 多少で も 僕 等の 間に 不評判に なって ゐた とすれば、 それ はや はり ゼ だつ 

た 菊池宽 の ず つた やうに 餘 りに 誰に もこ れと i ふ ほどの 惡 感を與 へて ゐな いこと だった。 …… 



キ-み やく かい き どく ^く じつり ど ま 

「だが 君の 厄介になる の は 氣の毒 だな C 僕 は實は 宿の こと も B さんに 任 かせつき りに なって ゐる 

ん だが、 …… 」 

やど に ほんじんく ら ぷ はな はんつき ひとつき さしつ か 

「宿 は 日本人 併樂 部に 話して ある。 半月で も 一 月で も 差 支へ ない。」 

ひとつき ヒゃ うだん い ほく み ばんと もら > 

「一 月で も? 常談雷 つち やい けない。 僕 は三晚 泊めて K へり や 好 いんだ。」 

たん おどろ い きふ あい +: う かほ 

譚は驚 い た と 言 ふよりも 急に 愛嬌 のない 顔に なった。 

み まん とま 

「たった 三晚 しか 泊らない のか?」 

ど ひ ざんざい なに けんぶつ で き かくべ つ 

「さあ、 土匪の 斬罪 か佝か 見物で も 出来り や 格^だ が、 …… 」 

f こた ないしんち や-つ さ ひとたん えいねん かほ よ M- う かれ 

僕 はかう 答へ ながら、 內 心長沙 の人譚 永年の 顔をしかめ るの を豫 想して ゐた。 しかし 彼 はもう 

いちど あいさう い かほ かへ す こ へんじ 

一 度 愛想の 好い顔に 返った ぎり、 少しも こだ はらす に 返事 をした。 

いっしう かん まへ く い す こ あちみ 

「ぢ やもう 一週間 前に 來りゃ 好い のに。 あすこに 少し 《4.; き 地が 見える ね。 —— 」 

あかれん ぐ わ 4.,- いや. T か をく まへ ちゃう ど えだ にやな. き ところ あた 

それ は赤煉 一丸の 西洋 家屋の 前、 —— 丁度 あの 枝の つまった 葉 柳の ある 處に當 つて ゐた。 が、 さ 

つきの 支那 美人 は い つ かもう そ こに は 見えな くな つ てゐ た。 

あ ひだ ご にん いちじ くび き いぬ ある とこん 

「あすこで この間 五 人ば かり 一時に 首 を 斬られ たんだが ね, - そら、 あの 犬の 步 いて ゐる處 で、 … 



扇の 南 も 力 



127 



…… 」 

「そり や 惜しい こと をした な。」 

ザん てい にほん み わけ ゆ 

「斬罪 だけ は 口 本ぢゃ 見る 訣に 行かない。」 

たん お ほ-ご ゑ わら のち まじめ おも む Vj うさ わ とう いってん 

譚は 大聲に 笑った 後、 ちょっと 眞 面目に なった と 思 ふと、 無造作に 話頭 を 一 轉 した。 

で くる u~ t 

「ぢ やそろ そろ 出かけよう か? 車 ももう あすこ に 待たせて あるんだ。」 

X X X X X X 

タ< く よく/ ヽ じふ はちに ち |*) |*) せっかく たん す f したが しゃう かう へだ がくろく ろく ざんじ あいばん てい けんぶつ 

僕 は翌々 十八 日の 午後、 折角の 譚の勸 めに 從ひ、 湘江を 隔てた 嶽 麓へ 麓 山寺 や 愛 晚卒を 見物に 

出かけた。 

くら の ざいり うに ほんじん なか しま よ さんかくす ひだり に じ -t; ん 

僕 等を乘 せた モォ タァ • ボ オト は 在留 日本人の 「中の 島」 と 呼ぶ 三角洲 を 左に しながら、 一 一時に 1 

-. 一 しゃう かう はし い は あが ごぐ わつ てんき りゃうがん ふうけい あざ や ぼく. 

後の 湘江を 走って 行った。 からりと 晴れ 上った 五月の 天 I ゃは兩 岸の 風景 を鮮 かにして ゐた。 僕 等 

みぎ つらな もやう さ しらかべ か はら やね ひか いうう つ み 

の 右に 連った 長沙も 白壁 や 瓦屋根の 光って ゐる だけにき の ふ ほど 憂 靈には 見えなかった。 まして 

かう じる ゐ き しげ いしがき なが さんかくす こ せいやう か をく のぞ 

樹 類の 木の 茂った、 石垣の 長い 三角洲 は ところどころに 小ぢん まりした 西洋 家屋 を^ かせたり、, 



128 



その 乂 西洋 家屋の 間に 綱に He つた 洗濯 もの を s: かせたり、 ^化 にも 、ほき、 おきと 横た はって ゐた。 

たん わか せんどう めいれい あた ひつえう じ やう へ V き ちん もい れい ふた 

譚は 若い 船頭に 命令 を與 へる 必要 上、 ポオ 卜の 鱸に 陣 どって ゐた。 が、 命令 を與 へる よりもの 

ほく け、 な 

べつに 僕に 「話しかけて ゐた。 

に ほんり や, T じくわん つか た i みぎ にっしん々 サんケ わい 

「あれが 日本領 車 館 だ。 •::• この オペラ. グラス を 使 ひ 給へ。 ::: その 右に あるの は nif 所 汽船 

しゃ 

辻。 一 

. ^ まき , 、は ふな そと かたて お とき,, s,\ ぼく ゆ, ひさき あた しぞう かり すゐ せい た 

僕 は 葉 卷を啣 へた まま、 舟ば たの 外へ 片乎を 下ろし、 時々 僕の 指先に 當る湘 江の 水勢 を樂 しん 

たん 二とば ほく みみ だお ひと V うおん かれ ゆび とほ りゃうがん ふうけい め 

でゐ た。 譚の 言葉 は 僕の.;^ に 唯一 つづりの 騷 音だった。 しかし 彼の 指さす: i り、 兩?ルの風^:ー:^へ1= 

もちろん ぼく ふく わい 

を やる の は 勿論 僕に も 不快ではなかった。 . . 

さんか,、 す きっしう い 

「この 三角洲 は 摘洲と 言って ね。 …… 」 , 

とび な 

「ああ、 せ? が 鳴いて ゐ る。」 

とび とび たくさん ちゃうけ いげう ちんえん がい せん V, う と々」 1 

「せ? が …… うん、 せ? も 澤山ゐ る。 そら、 いっか 張繼堯 と. ぼ延闔 との 戰 (.1- があった 時 だね、 あの 

とき ちゃう ぶ かしがい か は なが キー *4 た. Mr.:- ひ とリ しがい に は 

時に や 張の 部下の 死骸が いくつ もこの 川へ 流れて 來 たもんだ。 すると 又^が 一 人の 死骸へ 二 羽 も 

さん お き 

三 羽 も 下りて 來 てね …… 」 

Amummlmvmlmllnlml 



fi^; の 南 湖 



129 



ちゃう どたん い とキ- ?^^くら つ 、ン v-ソ 

丁度 譚 のかう 言 ひかけ た 時、 僕 等の 乘 つて ゐたモ 才ク. ァ • ポオ 卜 はや はり 一 艘のモ オタ ァ • ボ 

ご ろく けんへ だ ちが し な ふく せいねん ほか み ごと よそ ほ しなび じ に V- し- -/Q 

オトと 五六 間隔て て すれ違った。 それ は 支那 服の 靑 年の 外に も 見事に 粧 つた 支那 美人 を 1 一三 人乘 

ぼく ら しなび じん わし お ほす ベ なみ こ み * も 

せた ボ オトだった。 僕 はこれ 等の 支那 美.. <; よりも 寧ろ その ボ オトの 大、、 U りに 浪を 越える の を 見-:;: T 

たん はなしな か かれら すがた み はや ほ とん かたき あ さう くわう ほ, y 

つて ゐた。 けれども 譚は話 半ばに 彼等の 姿 を 見る が n 十い か、 殆ど 仇に でも 遇った やうに 倉皇と 1 

ゥ .こ 

に オペ ラ • グラ スを 渡した。 

をん な み た1 二 へ ざき すわ をん な 

「あの 女 を 見 給へ。 あの 艫に 坐って ゐる女 を。」 

ぼ〉":.^, :. > ) i , . , いっそう なに やす おや ゆ. つ かたい ぢ も ち あは 

僕 は 誰に でも 急つつ かれる と、 一層. i: かと こだ はり 易い 親譲りの 片意地 を 持 合せて ゐた。 のみ 

ならす その ボ オトの 殘 した 浪 はこ ちらの 舟ば た を 洗 ひながら、 僕の 手 を カフ ス まです ぶ; ル 1 れ にし 

てゐ た。 . 

「なぜ?」 

「 、 、,, , い, > をん な み たま 

「まあ なせで も 好い から、 あの 女 を 見 給へ。」 

「美人 かい?」 

「t、 美人 だ。 美人 だ。」 



130 



i 等を乘 せた モ オタ ァ 。 ポオ 卜 はいつ かもう 十 問 ほど 離れて ゐた。 僕 はやつ と IS を杻ぢ まげ、 

ど てうせ つ どうじ .n た とつぜんむ か あと ? くかく かん 

オペ ラ • グラ スの度 を 調節した。 同時に 叉 突然 向う の ポオ 卜の ぐいと 後す さり をす る 鉛覺を 感じ 

をん な る ふうけい な A -^, ほ よこ たれ はなし き み と キん、 

た。 「あの 女」 は圓ぃ 風景の 中に ちょっと 額 を 横にした まま、 誰かの 話 を 聞いて ゐ ると 见ぇ、 時々 

ぴ せう も あ >♦) し かく か ぢょ かほ ただめ お ほ い いぐ わい くべつ ラ つく おも 

微笑 を:^ らして ゐた。 顋の 四角い 彼女の 額 は 唯 目の 大きい と 言 ふ 以外に 格训 美しい と は 思 はれな 

か ちょ i へがみ うす き いろ なつい しゃう かヤ か. せ なみ う とほめ き れい ちが 

かった。 が、 彼女の 前髮ゃ 薄い 黄色の 夏衣 裳の 川, 風に 波 を 打って ゐ るの は 遠目に も 綺醒に 遠 ひな 

かった。 

「見えた か?」 

「うん、 随 毛まで 見える。 しかし あんまり 美人 ぢ やない な。」 

?ズ、 たに とくい たん いちど かほ わ, か あは 

僕 は: E か 得意ら しい 譚 ともう 一 度 額 を 向 ひ 合せた。 , 

をん な 

「あの 女が どうかした のかい?」 

譚 はふ だんのお しゃべり にも 似す、 悠々 と卷 煙草に 火 をつ けてから、 あべこべに 僕に 問 ひ 返し 

た。 . 

マく . さん ズし まへ あ ち ごにん どひ V びキ- 

「きの ふ衡 はさう 一ず つたね、 11 あの 梭 橋の 前の 空き地で 五 人ば かり 土匪の 首 を 斬った つて?」 



I 「うん、 それ は覺 えて ゐる。 一 

r-J- 

な.. ^え とうもく くわう りくい ち い - 

「その 仲 1^ の 頭目 は 黄 六 一 と 言って ね。 11 ああ、 そいつ も^られ たんだ。 11 これが .^l^u の f 

に は 小銃 を 持ち、 左が 手に は ピストル を, つて fi に rp^yi すと I 一 n ふ、 き^でも |g が li^ だ 

つたんだ がね。 …… 」 

乂,、 パゎ. つ" ス いち いつしゃう あくげ ふ はな だ かれ t なし だいぶ ぶんしん ぶんき じろ ラ 

譚は 忽ち 黃六 一 の 一 生の 惡業を 話し 出した。 彼の. 話 は 大部分 新^記事の 受け 一貴り らしかった P 

しかし 幸 ひ 血の た r よりも。 マ ン ティ ックな 色彩に 富んだ ものだった。 黄のs^装l^lg;^.^,^Jちに、ぉリ 

^.^^^T -p,p, ッ r I :^^^ ま.^;^:は,^1ォ,?1?」ん.に,. さんぶん げん がう だつ け. なし 4 たも も だんぐ わん う i.y6 し, r 

もハ. k と 呼 はれて ゐた 話、 又 湘潭の 或 商人から 三千 元を强 奪した 話、 又 腿に 彈 丸.^ 受けた i 阿: と 

や , ±_ム,1:^ もく ん,-..1 • りん. た乂 およ こ けなし i たがくし う あるさん だ. つ- じふに に,? まへ- 、 J- ん is ^ Z . 

霍, さ Hi 頭目 を 11!^ に f 盧林潭 を 泳ぎ 越した 話、 又 liw 州の 或 山道に 十二 人の 歩 を胖, した _| 化 II g 

- ? I とん ベ, c,^ りくい ち すうはい おも くら ゐ ねっしん it 

は 殆ど 黄 六 一 を崇拜 して ゐる のかと 思 ふ 位、 熱心に そんな こと を; 話しつ づけた。 

l^K 々-み > さつじんり よじん ひゃくじ ふしち けん い 

「何しろ 君、 そいつ は 殺人 擄人百 十七 件と 言 ふんだ からね。」 

き,. 5^:1^ なし あま い ちう しゃく く は ぼく もも ろん くじ しん e^,^ . 5 'r 

彼 は 時々 話の 合 ひ にかう 言 ふ 註釋も 加へ たりした。 きも 勿論 iMG 身 に^の^ |i も 受けない^ 

iRT 、 ,,-0 \ . と-ひ, 々IV たいさ ぶ 《 ^う ん >, 

f り 決して 士 匪 は 嫌 ひではなかった^ が、 いづれ も 大差の ない 武勇 談ば かり^かせられ るのに は 

^ た せう たいくつ かん だ 

多少の 退屈 を 感じ 出した。 



「そこで あの 女 はどうし たんだね?」 

.ZJ ん ないしん ぼく よ さう あま か は へ んじ 

譚 はやつ と にゃにゃしながら、 內心 僕の 豫 想した のと 餘り 變ら ない 返事 をした。 

をん な くわう じ やう ふ 

「あの 女 は 黄の 情婦 だつ たんだよ。」 

. £ く -.^ ち-.', つど ま き やうたん わす ゆ う かほ は-えき く は 

僕は彼の註文^^り、 驚嘆す る訣 1 に は 行かなかった。 けれども 浮かない 顏 をした まま、 葉 卷を御 

^ どく 

へ てゐ るの も氣の 毒だった。 

「ふん、 土匪 も 洒落れ たもんだ ね。」 

なに くわう し なに ぜんしん ばつ ねん がう だ, いい , :げっ !^:!;-ぃ-ち^-;^^べ , にェ 1 

「何、 黄な ど は 知れた もの さ。 何しろ 前淸の 末年に ゐた强 盜蔡 などと 言 ふやつ は 月 牧ー萬 元 を 越 

シ, r ン ハイ そ かい そと だう く や,?、 わん かま - ■ , — "il^ べん も.;^, ゾん 

して ゐ たんだ からね。 こいつ は 上海の 祖界の 外に 堂々 たる 洋館 を 構へ てゐ たもん た 細^^は勿^_ 

めかけ 

妾まで も、 …… 」 - 

をん な げいしゃ なに 

r ぢゃぁ の 女 は 藝者か 何 かかい ? 」 

ぎょくらん い f いしゃ ,ムぅ い とき なかく はけ 1- - - - : ノ、 二 ノ 

「うん、 玉 蘭と 言ふ藝 者で ね、 あれで も 黄の 生きて ゐた 時には 屮々 幅 を 0^ 力して ゐ たもん たよ 

…… 」 

i は t か 田 ^ ぎした やうに 少時 口 を噤ん だま ま、 薄 笑 ひば かり 浮かべて ゐた。 が、 やがて 卷 13 



X 



X 



X 



X 



こ, な, まじめ い さう だん 

3 草 を 投げる と, 眞 面目に かう 言 ふ 相談 をし かけた。 

がむ や、 しゃう なんこうげ ふがく かう い がく、 う ひと さき V- ん く") 

r 嶽 麓に は湘南 工業 學 校と 言 ふ 學校も 一 つ あるんだ がね、 そいつ を まつ: iR に參勸 じょ うぢ やない 

ゝ 一 

力?」 - 

「うん、 見ても 差 支へ ない。」 

Ikfi え^らない g ず をした。 それ はついき の ふの g い お Si を itkk かけ、 ぞ しい 

!^; にち 一.;;; 5;」 ベ; I;- き、 ふく わい かん ため ぼくら "く き - 

频日的 {4! 氣に 不快 を 感じて ゐた爲 だった。 しかし 僕 等を乘 せた ポオ 卜 は 僕の I 湫 もちな どに. ぼ |g 

- -. 、「なか > しま- > は お ほ .*5ひ.^"はらすはれ みづ うへ すぐ がく, つく ちか 、 

せす 「中の 島」 の 鼻 を大ま はりに 不 相變晴 やかな 水の 上 を まつ に嶽 麓へ 近づ て つた。 :…, 



. おな ひ ばん あるぎ くわん はしご だんたん いつ あが . 

はや はり 1^ じ 日の 晚、 或妓 館の 梯子段 を譚と 一 しょに 上って 5: つた。 

僕 等の 通った 二階の 部屋 は 中央に 据. < ^たテ H ブル は 勿論、 :ss^ も、 l^-i も、 ^ss まも、 シド 

f ゃ漢 口の 妓 館に あるのと 殆ど 愛り は兑 えなかった。 が、 この!^ まの 一お f が. 1 に は gM«,H の Si 

扇 が TV の i にぶら p. げ てあつた。 その 濯のお は% ぎゴ ぎ、 靈ぼりず^^てすこ 



i34 



と ぎ のぼ くだ まど と ぐち さ あか さら V.- きれ ひつ め-つ <r 

止まり木 を 上ったり 下ったり して ゐた。 それ は 窓ゃ戶 口に 下げた、 赤い 更紗の 布と 一 しょに 珍し 

み ちが すくな , ぼくめ きみ わるみ ナ- が 

い 見 ものに 違 ひなかった。 しかし 少く とも 僕の 目に は氣 味の 惡ぃ En- ものに も 遠 ひなかった。 

へ や ほくら むか こ ぶと ふと ポオ プゥ たん かの ぢょ み はや ゆうべん たに 

この 部屋に 僕 等を迎 へたの は 小肥りに 肥った 婦 だった。 譚は 彼女 を 見る が n 十い か、 雄 誘に 何 

はな だ かのお よ ぁぃ^^ぅ なめら かれ お-つたい がれら はな こと 

か 話し 出した。 彼女 も 愛橋 そのものの やうに 滑 かに 彼と 應對 して ゐた。 が、 彼等の 話して ゐ る;: 

ば ひとこと it^c もちろん? くじ しん し な n つう ため 

葉 は 一 言 も 僕に はわから なかった。 (これ は 勿論 僕 自身の 支那 語に 通じて ゐ ない 爲 である。 しかし 

ぐわん らいち やう さ ことば ぺ キ ン くわん わ つう みみ けつ ようい 

元 來 長沙 の 言葉 は 北京 官話 に 通じて ゐる. にも 決して 容易に はわから ない らしい。) 

たん ポオ プゥ に な のち お ほ こうぼく ぽニ さしむ か こし お よ はこ 

譚は 锡婦と 話した 後、 大きい 紅 木の テ エブル へ 僕と 差 向 ひに 腰を下ろした。 それから 彼女の 運 

キ 1 くわつ ばんす り き」 ゥ、 へう うへ げいしゃ なまへ か もやう しゃう が わう, ハラ うん がん はう すゐぎ よくろう あい. ん 

んで來 た 活版 刷の 局 票の 上へ 藝 者の 名前 を 書き はじめた。 張 湘娥、 王 巧 雲、 含芳、 醉 玉樓、 愛嫒 

ゑん ら りよ かう しゃ ぼく し な せう せつ ちょ しゅじんこう な へ 

緩、 —— それ 等 は いづれ も 旅行者の 僕に は 支那 小 說の女 主人公に ふさ はしい 名前ば かりだった。 

ぎょくらん よ 

「玉 蘭 も 呼ばう か?」 

ぼく へんじ あいに V 、ポオ ブゥ ひ す まきた „tv 一 いつぼん す 

僕 は 返事 をしたい にもし ろ、 生憎, m 録の火 を 擦って くれる 卷 煙草の 一本 を 吸 ひつけて ゐた。 が、 

たん ご ぼく f ノま み むと んぢ やく ふで ふる 

譚はテ H ブル 越しに ちょっと 僕の 顏を 見た ぎり、 無頓着に 筆 を 採ったら しかった. - 

くわった つ き ほそ きんぶち めがね けっしょく い t るが ほ げいしゃ か C ちょ 

そこへ 澗 達に は ひって 來 たの は 細い 金緣の 眼鏡 を かけた、 血色の 好い 11 顔の 藝^ だった" 彼女 



5^ の 南 湖 



135 



は, 门ぃ N 衣裳に グイ アモン ドを 幾つ も 輝かせて ゐた。 のみなら すテ 二 ス かが;, ^ かの!^ f らしい § 

格 も 具へ てゐ た。 l^はかぅまふ&。^^のS^^^IK&^slをカiするょりもylに^ま-なfれ^をぎじたG 

彼女 は實際 この 部屋の 签氣 と、 11 殊にお i のおの- と は はない: に 憩 ひなかった」 

彼女 はちよ つと 目禮 したぎり、 聯る やう に^の 鳩へ! C み I- つた。 しかも^の 艇 Ife ると、 t^li, 

ひざ うへ お る J ん てん なに だ ,一し 'S ^ P ^ 

を 彼の 膝の 上に 置き、 宛 轉と何 かしゃべ り 出した。 1^ も、 ,1 i は 8|§ うにお など 

と 答へ てゐ た。 

「これ はこの 〔まに ゐる塾 者で ね、 林 大嬌と 言 ふ 人 だよ。」 , 

僕は譚 にか う 言 はれ た 時、 お の づ から 彼の 長沙 にも 小々 ない tl^ の 1^ だった の を, I ひ I: した、 し 

それから 十分ば かりたった II、 ilg やはり f ひ I, つた まま、 がの; だ^ 辦 だの? だのの 萄 

ヽ: I ば々 ノ .SJ^ げいしゃ りんたい ナぅ まか ic,sf>„?-,J i 

v^n^^s の 晩飯 を はじめて ゐた。 藝者 はもう 林 大嬸の 外に も. 勢 僕き をと り卷 いて ゐた。 のみ 

ならす彼等の^ろには1校^^どをかぶった|&^^1^^きポを||へてゐた。まぉは1,^ぉった 

なり、 ,度 胡弓の 昔に:: 巾ら れる やうに 5. 高い & をうた ひ I: した。 それ は體 にも かもが しもお^ 耐 

味の ない ものではなかった。 しかし I^Mi の 扉 や 配 き幫 のが よりも I- のき つた i お 



136 



ほる きょうみ かん - 

に遙 かに 興味 を 感じて ゐた。 

ほく ひだり すわ ぼく げんかつ キへ る うへ ゎづ いちべつ しなび じん かの ゲ," i み-ついろ 

僕の 左に 坐った の は 僕の をと とひ 一れ 江 丸の 上から 僅かに 一 瞥 した 支那 美人だった。 彼女 は 水色 

なつ ひしゃう むね あ ひかえら す さ i - ちか き み ぴ やうて き よわ/、 

の复 衣裳の 胸に 不相變 メダル を ぶら下げて ゐた。 が、 間近に 來 たの を 見る と、 たと ひ 病的な!;々 

ぞんぐ わい ところ . ほく かヌ: ぶ よこが ほ み ひ 

しさ はあって も、 存外う ひう ひしい 虚 はなかった。 僕 は 彼女の 橫顏を 見ながら、 いっか 日 かげの 

つち そだ ち ひ きう こん かんが 

土に 育った、 小さい 球根 を考 へたり して ゐた。 . 

きみ となり すわ . 

「おい、 君の 鄰に 坐って ゐ るの はね、 —— 」 

人 一ん フォ チュ ちか ^1 ひさ- ムっ び せう う えび 6 あ V.- にご レ ザん^,、 こも i 

譚は 老酒に 赤らんだ 顔に 人懷 こい 微笑 を 浮かべた まま、 蝦 を 盛り上げた 皿 越しに 突然 俟へ聲 を 

かけた。 

「それ は含芳 とず ふ 人 だよ。」 

ほく たん かほ み かれ う ち こ-一ろ うした 

僕 は 譚の顏 を 見る と、 なぜか 彼に は をと とひの こと を 打ち明ける 心 もち を 失って しまった。 

ひ A 一 こと,! :5 きれい おん フーフ ン ス じん 

「この 人の 言葉 は綺窗 だね。 の 昔な と は佛蘭 人の やう だ。」 

ひと ぺ キ ンぅ 

「うん、 その 人 は 北京 生まれ だから。」 

^^iくら わ だい がん 乂 うじ しん げん ぼく かほ と 今み-す ば や 

僕 等の 話題に なった こと は含芳 自身に も わかったら しかった。 彼女 は 現に 僕の 顔へ 時々 素早い 



扇の 南 湖 



137 



め 1« やくち たん も, < だ ふ お おふし > 二 _w,、 I 

目をやりながら、 早口に 譚と 問答 をし 出した。 けれども 啞 に變ら ない 僕 はこの 時 もや はりいつ も 

. と *に< ただ 二たり .^-SJ^C- み くら ほか 

の 通り、 唯 二人の 顏色を 見比べて ゐ るより 外はなかった。 

キ; み ちゃう VJ き き へんじ ひと 

一 1^ はいつ 長 沙へ來 たと 尋く からね、 をと とひ 來 たばかり だと 返事 をす ると、 その 人 も をと とひ 

は 誰かの 出迎 ひに 埠頭まで 行った と 言って ゐ るんだ。」 

f> ん , い • つうやく つち いちど が/ .f な かのちよ ほほ. *; 二 ども 

譚 はかう 言 ふ通譯 をした 後、 もう 一度 含芳へ 話しかけた。 が、 彼女 は頻 笑んだ ぎり、 子供の や 

うに いやいや をして ゐ た。 

1 ' ' > , は,、 じ やう たれ で ナー,;" い ヤ- 

ー ,> -ん どうしても 白狀 しない。 誰の 出迎 ひに 行った と尋 いて ゐ るんだ が。 …… 」 

とつぜん りんたい にう も まきたばこ がん はう め r> あざに なに , .H な 5^ ん.? ン ^ レ 

すると 突然 林大 は 持って ゐた卷 煙草に 含芳を 指さし、 嘲る やうに 何 か 一; 一 111 ひ^った。 今::^ は 確 

み ? i くひ ざ おさ プ せう .I>b 

かに はっとし たと 見え、 いきなり 僕の 膝 を 抑へ る やうに した。 しかし やっと 微笑した と m 心 ふと、 

Tl- た ひと い かへ ; く もちろん し^^ゐ あるひ し: ふゐ そぐ?,;;、 ふか 

すぐに 又 一 こと 言 ひ 返した。 僕 は 勿論 この 芝 Jig に、 11 或は この 芝居の かげに なった、 存外 t 深い 

, かれら てきい .A うき しん かん 

らしい 彼等の 敵意に 好奇心 を 感ぜす に は ゐられ なかった。 

「おい、 何と 言つ たんだい?」 

ひと たれ で わか . か あ でむ >A 、 * な- - -1 

「その 人 は 誰の 出迎 ひで もない、 お母さんの 出迎 ひに 行つ たんだと 言 ふんだ。 何、 今 ここに ゐる 



せん, ti 一 ちゃう さ やくしゃ で むか なに い 、で あい! く • 

先生が ね、 X X X と 言 ふ 長沙の 役者の 出迎 ひか 何 か だら うと 言った もんだ から。」. (僕 は生愤 その 

名前 だけ は ノオトに とる 訣に 5: かなかった。) 

か あ 

「お母さん?」 

. か あ - ぎり か あ ひと ぎょくらん かか いへ ポ, 力- ブ. ゥ 

「お母さんと 言 ふの は 義理 の お母さん だよ。 つ まり そ の 人 だ の 玉 蘭 だ の を 抱 へ て ゐ る., 豕 の5^$| の 

こと だね。」 

たん ぼ,、 とひ かた ラオ チュ いつば い あ ふ きふ たう/、 べん だ - ザ "く チ-ィ コ 

譚は 僕の 問を片 づける と、 老酒 を 一杯 煽って から、 急に 滔々 と 辯じ屮 いした。 それ は 仪には ー;;3@ 

4- ィコ まか ひと はなし げいしゃ ポオ ブゥ ねっしん き 

這箇の に は 一 こと も わからない 話だった。 が、 藝者ゃ gKi などの 熱心に 閱 いて ゐる だけで も 

£c きょうみ ときん、 ぼく かほ かれら め ところ み すくな 

何か與 味の あ る こ とらし かつ た。 の みならす 時 々僕の 顏 へ 彼等の 目をやる 所 を 見る と 少く とも 

。くぶん ぼく じ しん くわん けい も Si く ひとめ へい ザソ" .1 ふ. た f こ- くヒ、 : ) 

幾分 か は 僕 自身に も 關係を 持 つたこ とらし かつ た。 僕 は 人目に は 平然と 卷 煙草 を 啣 へて ゐ たも Q 

いらだ かん 

の、 だんだん 苛立たし さ を 感じ はじめた レ 

ば 4 なに はな 

「莫迦! 何 を 話して ゐ るんだ?」 . 

な-一 がくろ/、 て と ちう ぎょく.:: ん あ けな . k 

「i^、 けふ嶽 麓へ 出かける 途中、 玉 蘭に 遇った こと を 話して ゐ るんだ それから …… J 

3 たん う i くちびる な まへ じ やうき げん く は 

1 譚は ヒ脊を 嘗めながら、 前よ リも 上機嫌に つけ 加へ た。 



5^ の 南';/! リ 



139 



き A- ざんざいい み ュ スな 

「それ か.ら1^;; は 斬顯 と 一一 n ふ もの を 見たがって ゐるこ と を 話し て ゐ るんだ 。」 

なん 

「何 だ、 つまらない。」 

, や ゅ^; めい き いま ■ か ほみ ぎょくらん もちろん かの ぢょ とも がん う かくべつ 

僕 はかう .1 ふ說 を 聞いても、 未だに 顏を 見せない 玉 蘭 は 勿論、 彼女の 友 だち の含芳 にも 格別 

产 I ^v;v お. f がん はう かほ み とき り も てき か C ちょ こころ か なり 

^の 毒と は 田 やはなかった。 けれども 含 芳の額 を 見た 時、 理智 的に は 彼女の 心 もち を 可也 はっきり 

れ うかい. . かのちよ みみわ ふる ひざ うへ 〈ン. S 一;, わ-す レ, 

と 了解した。 彼女 は 耳環 を 震 はせ ながら、 テ H ブルの かげに なった 膝の 上に 乎 巾 を ん だり 解い 

たりして ゐ た-し . 

「ぢゃ これ もつ まらない か?」 

たん うしろ ポオ プゥ て ち ひ かみ づっ ひとう と とくく まヒ 

譚は 後に ゐた 德婦の 乎から 小さい 紙包み を 一 つ 受け取り、 得々 とそれ を ひろげ だした」 その 乂,' 

かみ なか せんぺい ケ. らゐぉ ほ いろ ひ めう ちま-つつ 

紙の 中には 煎餅 位 大きい、 チョコ レエ 卜の 色に 干からびた、 妙な ものが 一 枚 包んで あった。 

なん 

「何 だ、 それ は?」 

, たた くゎ,;^s^くぃち い どひ とうもく i なし 

「これ か? これ は 唯の ビスケット だが ね。 :••: そら、 さっき 黄 六 一と 云 ふ 土匪の 頭目の g をし 

たらう? あの 黄の 首の 血 をし みこませて あるんだ。 これ こそ, 日本 ぢゃ 見る こと は出來 ない。」 

「そんな もの を 又 何に す るんだ? 一 . 



140 



なん く へん い i く むび やう そくさい おも 

「何に する もんか? 食 ふだけ だよ。 この 邊ぢゃ 未だに これ を 食へば、 無病 息災に なると 思って 

ゐ るんだ。」 . ,. 

たぐ. H ば び せう 7^ やう ど とき ほな に さんにん げいしゃ あいさつ がん 

譚は れ 晴れと 微笑した まま、 丁度 この 時テ H ブル を 離れた 二三 人の 藝^ に 挨拶した C が、 含 

f 、う た みほ とん あはれ こ なに わら 

芳の 立ち かかる の を 見る と、 殆ど 憐みを 乞 ふやう に 何 か 笑ったり しゃべった りした。 のみなら す 

かたて あ しゃう めん f ゆび がんけ-う C ち いす, ど 

しま ひに は 片手 を 擧げ、 正面の 僕 を 指さした りした。 含芳 はちよ つと ためらった 後、 もう 了 股 や 

* ひ f う まへ こし おろ ぼく お ほ かはい いも ざ ひとめ ふ 

つと 微笑 を 浮かべ、 テ H ブルの 前に 腰 を 下した。 僕 は 大いに 可愛かった から、 一座の 人::: に觸れ 

かの;^-ょ て にぎ . 

ないやう に そつ と 彼女の 乎 を 握 つて ゐて やつ た。 

めいしん こくじょく ぼく い しゃ い しょくげ ふじ やう い 

「こんな 迷信 こそ 國辱 だね。 僕な どは醫 者と 言 ふ 職業 上、 すゐ ぶんや かまし くも 言って ゐ るん た 

、- -/1 I 

」 

ざんざい なう み そ くろ や に ほん つ 

「それ は 斬 が あるから だけ さ。 腦味 の黑燒 きな ど は 日本で も嚥 んでゐ る。」 

「まさか。」 

f へく Q つと J ども 

「いや、 まさか ぢ やない。 僕 も嚥ん だ。 尤も 子供のう ちだった が。 …… 」 

f , t なし うち ぎよ くらん き き ちょ ボナ. ブゥ た . マ-なし . - が, ん う 

僕 はかう 言 ふ, の 中に 玉 蘭の 來 たのに 氣づ いて わた。 彼女 は gsj! と 立ち話 をした 後 含芳の 



I に 腰を下ろした。 、 

4 

- . ^に ぎょくらん ゥ み ぼく かの^ょ & "すう £ .-っ.- , , 

譚は玉 蘭の 來 たの を 見る と、 又 僕 を そっちの けに 彼女に 愛,!! を ふりまき がした。 おお が" ソ 

眺める よりも 幾分 か は 美しい のに 違 ひなかった。 おくと もま,^ の 1,^3 ふ g に エナメルの やうに ぎの 

> し .n みこと ち が "ク、 i 

. 光る の は 見事だった のに 違 ひなかった。 しかし僕はその^^|みにぉのづから|^ぎを?2ュ|£した。 

1 い. SI の i を げた^ sli- い ii の f づず もず かに して 

V 、一 こ . 

^tf 、一/ 

ひ. V 

「ちゃ 一 つ これ を どう だ?」 

譚は ビスケット を 折って 見せた。 ビスケット は 把り.? も ほビ u だった e 

「莫 をず へ。」 

ぽく もち-ろん く "ひ ふ たん お ま 1 ごる; りら こ いど ヒ-/ Z . . 

僕 は 勿論 首 を 振った。 譚は 大聲に 笑って から、 今/度 は^, の :|| ポ i へ ビスケットの Tii^ を耐 めよ 

胡 うとした。 林大 はちよ つと 孅を しかめ、 |^めに^の^1,を|;し1した。 g は^じ^^; ^かの 

一 藝 者と 繰り返した。 が、 そのうちに いつの^にか、 やはり ii の, い 鋤 をした まま、 攀 もし 

rg ぎょくらん まへ かっしょく いっぺん つ 

ない 玉 蘭の. 前へ 招 色の 一片 を 突きつ けて ゐた。 



* ほく に ほひ か み いう わく かん 

僕 はちよ つと その ビスケットの 勻 だけ g< いで 見たい 誘惑 を 感じた。 

ぼく み 

「おい、 僕に も それ を 見せて くれ。」 

「うん、 こっちに まだ 半分 ある。」 . 

たん ほ とん ひだりき G こ いっぺんな ばく-一 ざら ほ し あ ひだ.' い. つ. へ, ん ひろ 』 

譚は 殆ど 左利きの やうに 殘 りの 一 片を 投げて よこした。 僕 は 小皿 ゃ统の 間から その 一 片を抬 ひ 

あ つ, A くひろ あ きふ かみき - 、 "一, け > . , > 丄 た 

上げた。 けれども 折角 拾 ひ 上げる と、 急に^い で 見る 氣も なくなつ たから、 iil つて テ H ブルの 卜 

へ ザが してし まった" 

ぎょくらん たん かほ み ふた み もんだ ふ . 5 >- - - 

すると 玉 蘭 は 譚の額 を 見つめ、 二 こと 三 こと 問答 をした。 それから ビスケット を 《乂け 取った 後- 

かの ぢょ み 吏 も い ざ あ ひて はやくち なに だ 

彼女 を 見守った 一 座 を 相手に 早口に 何 かしゃべ り 出した。 

「どう だ、 通譯 しょうか?」 

たん つも ろれつ あや した Si く け-な , : 

譚はテ H ブル に 顿杖を つき、 そろ そろ ui: 律 の 怪しい 舌に かう 僕へ 話しかけた 

「うん、 通譯 して くれ。」 

1 、くご やく よろこ あい くわう らう や ち あち 

rS? いか? 逐語譯 だよ。 わたし は 喜んで わたしの 愛する ;… 黄 老爺の 血 を 味 は ひます。 …… 」 

まく -?" お ふる かん く ひざ おさ がんに う て ふる 

俊 は體の 震へ るの を 感じた。 それ は 僕の 膝 を 抑へ た 含芳の 手の 震へ るの だった 



5i の 南 湖 



143 



「あなたがた もどう かわた しの やうに、 …… あなたがたの 愛する 人 を、 …… 」 

玉 蘭 は 譚のー 百 葉の 中に いっかもう 美しい 齒に ビスケットの 一 片を嚼 み はじめて ゐた。 …… 

X X X X X X 

ほく さんばく よ ていど ほ 一.) ぐ わつ じふく にち ,,) じ _'7J 一へ おな げんかぅ*^る かんばん .-r ん かん 

1^ は 三 泊の 豫定 通り、 五月 十九 日の 午後 五 時顷、 へ? と 同じ〕 丸の 甲板の 搠干 によりか かって 

し.^ かべ か はら やね つ あ もやう さ なに なく ; きみ しだ、 .^ゥ く St し: く 

ゐた。 白壁 や 瓦屋根 を 積み上げた 長 沙は何 か 僕に は |( 氣 味だった。 それ は 次 あに 迫って 來る ^,4- 

えいき ゃラ す, が ほく は まき ズは なんど あ-../ ソ い んぇ、 ねん u-^ お. & お 

の 影響に 遠 ひなかった。 僕 は 葉 卷を啣 へた まま、 何度も あの 愛 Si の 好い 譚. か 年の 額 を m 心 ひ 出した リ 

たん なん ため ぼく みおく た 

が、 譚は 何の 爲か、 僕の 見送りに は 立たなかった。 

ポパ? か, る や,^ さ はつ たし しち じ しも じ はん 《 く しょくじ のん うすぐら せんしつ でん 

一:^: り 丸の 長 沙を發 したの は 確か 七 時 か 七 時半だった。 僕 は 食 をす ませた 後、 蹄 暗 い 船室の!^ 

とう もと ぼく たいざいひ けいさん だ ほく め まへ あ ふ J2 いつぼん にしゃく た つく. Tz- でと もち-, J 

燈の 下に 俊の 滯在费 を 計算し 出した。 僕の 目の前に は 扇が 一本、 二 尺に 足りない 机の がへ 桃お の 

J さ: た あ ふぎ ぼく くまへ たれ お わす ノ て/、 1C 

流 蘇 を 垂らして ゐた。 この 一 :! は 僕の ここへ 來る 前に 誰かの 置き忘れて 行った ものだった。 は g 

ぴっ -っご と. またたん かほ おも だ かれ ぎよ メ、 らぐ くる り 、う SU く 

筆 を 動かしながら、 時々 又 譚の顏 を 思 ひ 出した。 彼の 玉 蘭 を 苦しめた 理. 5 ははつ きりと は 僕に も 

^く たいどい ひ ぼく いま お ぼ に くわし V- ん t.-^ うど 

わからなかった。 しかし 僕の 滞在費 は 11 僕 は 未だに 覺 えて ゐる、 日ポの 金に 換算す ると、 丁度 



じふに ゑん ご じっせん 

十二 圓 五十 錢 だった. 



(大 lii 十四 年, r 二月?) 



4 

4 



p」 く なん ざ" き は V ぴ がけ ラへ ある い がけ した ぬま 

…… 僕 は 何でも 雜 木の 生えた、 寂しい 崖の 上を步 いて 行った。 iiS の 下 はす々 に 沼に なって ゐた。 

またぬ ま きしょ み-つ. V- リ に は およ うす こけ は いし いろ ちか み-つ. V り • 

その 又 沼の 岸 寄りに は 水鳥が 一 一羽 泳いで ゐた。 どちらも 薄い の 生えた 石の 色に 近い 水鳥だった U 

まく かくべつ みづ とり め-つら かん も あま つばさ あざ や み 4? & nr 

僕 は 格別 その 水鳥に 珍しい 感じ は 持たなかった。 が、 餘り 翼な どの 鮮 かに 見える の は 無氣味 だつ 

た。 1 . 

く * ゆめ なか い おと め しょさい かぎ て ざ 

—— 俊 はかう 言 ふ 夢の 中から がたがた 言 ふ 昔に 目 を さました。 それ は 書 齋と鎚 の 手に なった, ぼ 

しゃ, • 力 9 スど おと ぼく しん: ?ん がう し >.1 とちう しょて」 い ね どこ - さん ガん ヤーつ, 丄、, し々 

^の 砲 子戶の 音ら しかった。 僕 は 新年 號の 仕事中、 書 齋に寢 -体を とらせて ゐた。 三 軒の 雜誌 針に 

やくそく し ごと さん べん ぼく ふ まんぞく と かくさい-. ク し >,>y ほ, *1 に - ふた、、/ 

約束した 仕事 は三篇 とも 僕に は不滿 足だった しかし に 角 最後の:; is- はけ ふの 夜明け, iS に片っ 

いて ゐた。 

a, どこ 十 そ しゃう じ たけ .^,げ うつ !, .r、 おも き お-あぶ ひ, と , こ-,; ふ,、 、 i-., う 

寢 床の 裾の 障子に は 竹の 影 もちら ちら 映って ゐた。 僕 は 思 ひ 切って 起き 上り 一 まつ 後^へ 

^ ,2 - ちか ごろ くら ゐ せう べん すゐ じょ ラき さか た べんき- ^-^ . 

1 la- をし に 一, h つた。 近*^^この位小便から水蒸氣の盛んに立ったことはなかった。 僕 は 便器に 向 ひな 



n —の 求 年 



147 



がら 今日は ふ だ ん よりも 塞 い ぞと思 つ た。 

3 て,,, i き えんが は ガラスど みが , .J. と ? で,、 

们? T や 夸は 座敷の 緣 仰に せっせと 俯 子戶を 磨いて ゐた。 がたがた; 百 ふの はこの; ュ 1 だった。 "袖ぎ 

, うへ た, jl-. 一 を ば ざ ふ キーん しほ .: く t 〔 , 

しの. H へ 襟 を かけた 伯母 は バケツの 雜巾を 絞りながら、 多少 にから かふ やうに 「お前、 もう!: 

二 時です よ」 とずった。 成程 十二時に 遠 ひなかった。 を& けた i おの^に はいつ か? S い; 鎖 

の 前 に 晝飯 の 支度 も 出^ 上 つて ゐた。 のみな らす f は I 汄 ^ の y 加 t あ に" おにき うや トォ スト を^ ザて ゐ 

た。 しかし 僕 は 習慣 上 朝ら しい 氣 もち を 持った まま、 たと 4 のない Mi ろへ ひに: _0 つた。 

.5.;」 めし けん ひるめし のち ぼく しょ さ お ご 」 一つ こ ャ;" し A し,":" ヒ . -. 

朝飯 兼晝飯 をす ませた 後、 僕 は 書齋の 置き炬^へ は ひり、 T 一一 の を まみ はじめた。 

の 記事 は諸會 社の ポオ ナス や 羽子板の, れ 行きで きち, つて ゐた。 けれども I- の: ちは^し も 

陽:: 湫に はなら な かづた。 僕 は 仕事 をす ませる 度に 妙に 弱る の を 常と して ゐた。 それ は^ぎの y, か 

で 今 _ 

の やうに どうす る こと も 出 來なハ ものピ つた〕 …… • 

の來 たの はこ 時 前だった。 !^は^^^を&き&廳に醚;;^ し Ir の 船 をす ませる ことに 

した。 縞の 背廣を 着た K 君 はもと は 奉 天の 街^ 員、 II おは めの^ だった。 

ひま で , 

一 どうです? 暇なら ば 出ません か?」 



IK は?^ l^f すませた 頃、 ぢ つと f 豕 にと ぢ こもって ゐ るの はやり^れ ない I 形 もちに なって ゐた。 

「ええ、 ぼ 時 頃まで ならば。 …; どこかお 出かけになる 先 はおき まりに なって ゐ るんで すか?」 

くん る 5 ス りよが と 力 > 

K 君 は 遠慮 勝ち に 問 ひ 返した。 

「いいえ、 どこでも 4 いんです。」 • 

「お 墓 はけ ふは駄 でせ うか?」 

. t . よつ 6 せんき,' i.f f はんとし ま,、 せんそい あいど/、 しゃ /へん 

K のお m とずった の は 夏 目先 生のお *1 だった。 僕 はもう 牛 年 ほ ど 前 に 先生 の 愛讀者 の K 1^ に 

お 驚 を" S へる 、をして ゐた C 年の 暮 にお 墓參り をす る、 11 それ は 僕の 心 もちに、 必 すし もび つ 

たりし ない ものではなかった。 

「ぢ やお 墓 へ 〔n きませ う。」 

ぼく .it つ そくぐ わいた う べん つ, - で I - - .- \、lc 

僕 は 早速 外套 を ひっかけ、 K 君と 一 しょに 家を屮 ^ る ことにした 

! ま は 艇 いなりに!^ れ ^ つて ゐた。 i 苦しい 動 坂の 往來も ふだんより は 人 あしが 多い らし かつ 

た。 g に I- てる 概ゃ 1= しも 円い め S い」 か i ふ 板 t ききの _ 小屋の 側に 寄せ かけて あった。 俊 は 

^ いまちみ とき いくぶん ぽ く せう ねんじ だい いだ; :丄1は>> こ、 ころ フ ... ./ti 一,, :i ピゾ - 

1 かう 言 ふ 町 を 見た 時、 幾分 か 僕の 少年 時代に 抱いた S 走の、 ももち のよ み 返る ジ. を 感じた 



H —の 末年 



H9 



はくら しば.. Is- ま C ち I ご 二く じ まへ ゆき でんしゃ Q で/しゃ わ あ V 、ん ぐ わ" 

僕 等 は 少時 待った 後、 護國寺 前行の 議 車に 乘 つた。 電車 は 割り 合 ひに こまなかった。 K 君 は 外 

だう えり た ごろ せんせい たんじ やく いす, まい て い けなし 

赛の襟 を 立てた まま、 この頃 先生の 短 尺 を 一 枚 やっと 乎に 入れた 話な ど をして ゐた。 

ふじ まへ とほ -ー ころ てんしゃ な., ハ でんきう ひと ぐう. ぜ/ ム お 

すると {ほ 士前を 通り越した 顷、 電車の 中 ほどの 電球が 一 つ、 ^然拔 け _ ^ちて こなごな になった U 

かほみ わるに じふし 1,1 をん な ひとり かたて お ほ つつみ も か., --ご つ か は 

そこに は 額 も 身なり も惡ぃ 二十 g: 五の 女が 一人、 片手に 大きい 包 を 持ち、 片手に ほり 革に つかま 

でんきう ゆかお とたん かのちよ i へがみ か CV- よ めう かま 

つて ゐた。 電球 は 床 へ^ちる 途端に 彼女の 前髮を かすめたら しかった。 彼女 は 妙な 顔 をした なり、 

でんしゃ; r う ひと- なが ひとん、 どうじ やう すくな ひとみ、 ちう い ひ 

電車 中の ス々 を 眺め ま はした。 それ は 人々 の 同情 を、 —— 少く とも 人々 の 注意 だけ は惹 かう とす 

f ぶ たれ い あは ぜんぜん かの ぢょ れいたん ぼく くん はな 

る 顔に 遠 ひなかった。 が、 誰も 言 ひ 合せた やうに 全然 彼女に は 冷淡だった。 僕 は と 話しな が 

なに ひやう しめ かの ぢょ かほ を か わし かん 

ら、 何 か 拍子 拔け のした 彼女の 額に 可笑し さよりも 寧ろ はかな さ を 感じた。 

ぼくら しゅう 匸ん でんしゃ お し め かざ みせ で き まち ざ ふし や ぼ ち ある ノ 

僕 等 は終點 で .m 車 を 卜 り、 注連飾り の 店な ど 出 來た町 を 雜司ケ ハ介 の 墓地へ 步ぃ て 行 つ た レ 

お ほいて ふ は お つく ぽ ち あ ひか はらす はば ひろ ちう あう ド やり みち 

大 銀杏の 葉の 落ち 盡 した 墓地 は 不相變 け ふ も ひっそりして ゐた C 幅の 廣ぃ中 4- の 砂利道に も^ 

まゐ ひと み ぼく くん さき た みぎが は こ ♦ まが ノ こ 

參 りの 人 さへ 見えなかった。 僕 は K 君の 先に 立った まま、 右側の 小み ちへ 曲って 一;;: つた。 小み ち 

かなめ もち い がき あかさび てっさく なか だ.; せう i か なら さき い 

は 要 义, \靑 の 生けお 一 や 赤鏽の ふいた 鐵 柵の 中に 大小の 墓 を 並べて ゐた。 が、 いくら 先へ 行っても、 

せんせい はか み あた 

先生のお 墓 は 見當ら なかった。 



o 

5 



ひ と さ 含 み ち 

「もう 一 つ 先の 道ぢ やありません か?」 • 

「さう だった かも 知れません ね。」 

ぼく こ ひ かへ まいとし じふに ぐ わつ ここのか しんねん がう し ごと お ためめ つた せん 

僕 は その 小 みちを 引き返しながら、 毎年 十二月 九日に は 新年 號の 仕事に 追 はれる 爲、 滅多に 先 

- せい はかま ゐ おも だ なんど こ は 1 ハ- しょざい 

生のお 墓參り をし なかった こと を 思 ひ 出した。 しかし 何度か 來な いにしても、 お 墓の 所在の わか 

ら ない こと は 僕 自身に も 信じられなかった。 

つぎ やや ひろ こ はか おな ぽ くら こんど ひ かノ、 が は い がキ- 

その 次の 稍廣ぃ 小み ち もお 墓の ない こと は 同じだった。 僕 等 は 今度 は 引き返す 代りに 生け の 

あ ひだ ひだり まが け か み あた f み お ぼ いく あ ナ, 

問 を 左へ 曲った。 けれどもお 墓 は 見當ら なかった。 のみなら す 僕の 見覺 えて ゐた 幾つかの おき 地 

さへ 見當ら なかった。 

「聞いて 見る 人 もな し、 …… 困りました ね。」 

ぼく い くん ことば れいせ う ちか かん をし い -て. まへ • 

僕 はかう 言 ふ K 君の 言葉に はっきり 冷笑に 近い もの を 感じた。 しかし 敎へ ると 一-一一 n つた, 前 腹 

を 立てる 訣 にも 行かなかった。 

^くら え お ほ". て ふ め あ ぃ+^ ど よこ い はか 

僕 等 はやむ を 得す 大 銀杏 を目當 てに もう 一度 橫 みちへ は ひって 行った。 が、 そこに もお 墓 はた 

ぼ,、 もちろんい い き そこ ひそ めう ゎブ 二ろ ' ) - , 

, ^つた C 僕 は 勿論 苟ら らして 來た。 しかし その 底に 潜んで ゐ るの は 妙に. 化しい、 ももち だった 



日一 の 末年 



151 



f ぐ わいた う した ぱ くじ しん たい をん かん まへ い こころ し おも 

僕 はいつ か 外 の 下に 僕 自身の 體? J を 感じたがら、 前に も かう 言 ふ 心 もち を 知って ゐ たこと を 思 

だ ぽく せう ねんじ だい あるが きだいし やう な が まん うち かへ 

ひ 出した。 それ は 僕の 少年 時代に 或 餓鬼 大將に いぢめ られ、 しかも泣かすに我|^して家へ^|った 

とさ こ-一ろ 

時の 心 もちだった。 、 

な Z ど おな こ しゅつ に ふ の 二つ ぼく ふるし々」 み た ぽ ち V- うち をん な みち- を そ お ほ せん 

何度も 同じ 小み ちに 出入した 後、 僕 は 古械を 焚いて ゐた 墓地: 除の 女に 途を敎 はり、 大きい 先, 

生 の お 墓 の 前 へやつ と K 1_ を つれ て I びった。 

はか まへ み とき ふる く は け-か つち しも 

お 慕 はこ の 前に 見た 時よりも すっと 古び を 加へ てゐ た。 おまけにお 墓の ま はりの 土 もす つと^ 

あら ここのか た む かんぎく なんてん たば ほか なに した も 

に 荒されて ゐた。 それ は 九日に 手 向け. たらしい 突 一菊 や 南天の 束の 外に何か 親しみの 持てない もの 

/、ん ぐ わいた う ぬ ていねい はか じ ぎ ぼく かんが い i 

だった。 は わざわざ 外套、 を脫 ぎ、 丁寧に お 墓へ お 時宜 をした。 しかし 僕 はどう 考 へても、 八/ 

さら てんぜん くん いつ じぎ ゆうき て にく 

1^ 话 然と K 君と 一 しょに お 時宜 をす る勇氣 は出惡 かった。 . 

なんねん 

「もう 何年になります かね?」 

も やう どく ねん わけ 

「r 度 九 年になる 訣 です。」 

ぼくら はなし n こくじ まへ し! つてん ひ かへ い 

僕 等 はそんな 話 をしながら、 護國寺 前の 終點 へ 引き返して 行った。 

ぼく くん いつ でんしゃ の ほく ひとり ふじ まへ お とうやう ふん こ あ る とも 

伐 は K 君と 一 しょに 電車に 乘り、 僕 だけ 一 人富士 前で 下りた。 それから^£-洋文^^にゐる或友だ 



152 



たつ つち ひ くれ どうざ か かへ つ . 

ち を 尋ねた 後、 日の 暮に動 坂へ 歸り 着いた。 . 

どうざ.; - わ-つらい じ こ/、 まへ いっそう こズ ざつ がう しんだ う とほ す ひと ど ほ 

動 坂の 注來は 時刻 がら だけに 前よりも 一層 混雜 して ゐた。 が、 申 堂 を 通り過ぎ ると、 .< 通り 

へ ぼく う み つ. tlri き み かぜ だ み +*- あ ふ 

も だんだん 減り はじめた。 僕 は 受け身に なりきった まま、 爪先ば かり 兒る やうに 風 立った 路をル 

いて In つた。 , , 

ま ち うら i ち.^; ん ざ か した はこぐ る ま ひ をと こ ひとり か ぢぽぅ て や... タ はこぐ :0.|. ェ 

すると 墓地 裘の 八幡 坂の下に 箱 車 を 引いた 男が 一 人、 揖 棒に 手 を かけて 休んで ゐた。 箱 車 はち 

^ ^ ところ にくや くるま 十>か そば よ み ヒ-- ひろ くち 一一う や.? つえ 

よつ と 眺めた 所、 肉屋の 車に 近い ものだった C が、 側へ 寄って 見る と、 橫に廣 い あと: Z にお 京胞 

A< くわ 1 し Jl- か ほく うしろ こる、 i -.. : る ま お 

衣會 社と 書いた ものだった。 僕 は 後から 聲を かけた 後、 ぐんぐん その 車 を 押して やった。 それ は 

L こ う" b . ?-た J* き V- が t つか. だ たす キ- 

多少 押して やる のに 據ぃ氣 もした のに 遠 ひなかった。 しかし 力 を 出す だけで も 助かる 氣 もした の 

に 違 ひなかった。 • 

は 長い 坂の 上から 時々 まつ 直に 吹き下ろして 來た。 墓地の 樹木 も その 度に さあつ と 葉の^ 

:卡も 一 な ぼ,、 い うすくら なか めう こうふん かん ? *^ くし 1^ ん ん た 

ちた 拊を 鳴らした。 僕 はかう 言 ふ 薄暗が りの 中に 妙な 興奮 を 感じながら、 まるで 僕 自身と 闘ぶ や 

、,つ しん にこぐる生 お い 

うに 一 心に 箱 車 を 押しつ づけて In つた C 

(人 1^ 十 s: 年い 二月 ) 



154 



. ^くめ \ビん .A くめい- *1 .^=くめぃぜん また かくめ t ザん 

革命 前だった か、 革命 後だった か、 11 いや、 あれ は 革命 前で はない。 なぜ 又 革命 前で はない 

ノ ほく f じ こ みみ はさ しゃれ ぉぽ 

かと 言へば、 僕 は當時 小耳に 挾んだ ダン チ H ン コ の 洒落 を覺 えて ゐ るからで ある。 

あるむ あつ あま よ ふ たいかん とく くん ていげき バルコニ ー たたす たんさんす:. Q かた 

或 蒸し暑い 雨 もよ ひの 夜、 舞 裏 監督の T 君 は、 帝劇の 露臺に 佇みながら、 炭酸水の コッ フを片 

て し じん はな あ ま いろ かみ け まう もくし じん 

乎に 詩人の ダン チ H ン コと 話して ゐた。 あの 亜麻色の 髮の毛 をした 盲目 詩人の ダン チ ェンコ とで 

ある。 

「これ もやつ ばり 時勢です ね。 はるばる 露西亜の グラ ンド • オペ ラが 日本の 東京へ やって 來 ると 

言 ふの は。」 

. 「それ は ボル シ ヱ ヴィッキ は カゲキ 派です から。」 

もんだ.! - たし しょにち いっか め ばん ぶ たい のぼ ばん ぼく 

この 問答の あつたの は 確か 初日から 五日 目の 晚、 11 カルメンが 舞臺へ 登った 晚 である。 俟は 

レ C .H す .c う め お ほ -- ばな 

カルメ ンに扮 する 箸の イイ ナ • ブル スカ アヤに 夢中に なって ゐた。 イイ ナは H の 大きい、 .t. 鼻の 



ンメ ノレ 力 



155 



は に/、 かん つよ をん な ぼく もちろん . ^ん み たつ. 

張った、 肉感の 强ぃ 女で ある。 僕 は 勿論 カル メ ン に扮 する イイ ナを觀 る こと を I 木し みに して ゐ た。 

お -ttt^ まく ネ 力 み ふん み-つ、, ろ め it 

が 第 一 幕が 上った の を 見る と、 カルメ ンに扮 したの はィ イナで はない。 水色の 冃 をした、 ^の 

たか なん い ひんさう ちょいつ ぼく くん おな むね なら 

高い, 何とか 云 ふ 貧相な 女優で ある。 僕 は T 君と 同じ ボック スに タキ シ イドの 胸 を 並べながら、 

落膽 しない 訣には 行かなかった。 

ぼくら 

「カルメ ンは俟 等の イイ ナぢ やない ね。」 

こ/や わす げんいん またす こぶ 

「イイ ナは 今夜 は 休み ださう だ。 その 原因が 又 頗る 口 マ ン ティ ック でね。 11 」 

「どうしたんだ?」 

なん い き 5 ていこく こうしゃく ひとり お き と-つ キ. やう つ 

「何とか 云 ふ 舊帝國 の 侯爵が 一人、 ィ イナの あと を 追つ かけて 來 てね、 をと とひ^ 京へ 〈滑い たん 

) と-, 一ん i アメリカじん しゃ-つ にん せわ み. ---リ し 

ださう だ。 所が イイ ナは いつの 間に か 亞米利 加 人の 商人の 世話になって ゐる。 そいつ を 見た 侯 餅 

ザ- つばう じぶんへ やくびく く し 

は 絶望し たんだね、 ゆうべ ホテルの 自分の 部屋で 首を縊 つて 死ん ぢ まったん ださう だ。」 

ぽ,、 はなし キ- ある ぢ やうけ い おも だ よふ ノ-- しつ お まビ- 

僕 はこの 話 を 聞いて ゐる うちに、 或 場 景を思 ひ 出した。 それ は 夜の 更けた ホテルの ー{^:に尤勢 

なんに よ t> ノ もて あそ くろ あか き もの & 

の WR 女に 圍 まれた まま、 トランプ を 弄んで ゐるィ イナで ある。 黑と 赤との 着物 を 着た イイ ナはヂ 

うらな み くん ゑ こんど うん み あ 

プ シィ占 ひ をして ゐ ると 見え, T 君に ほほ 笑み かけながら、 「今度 は あなたの 運 を 見て 上げ ませ 



V 



い あるひ い い いぐ わい " ンァ つ 一 し f も r> ろんじ ふに 

う」 と 言 つ た。 (或は 言った の だと 云 ふこと である。 ダァ 以外の 露 西 IS 語 を 知らない 僕 は 勿論 卜 一 一 

か こ,、 ことば つう くん ほんやく もら ほか み ^ 

箇國の 一 W 紫に 通じた T 君に 飜譯 して 貰 ふ 外 はない。) それから トラ ンプを まくつ て 見た 後 、「あなた 

ひと か-つ-ふく あい ひと けつ こ/で き い ひレ- い 

は あの人よりも 幸 幅です よ。 あなたの 愛する 人と 結婚 出來 ます」 と 言った" あの人と-ぶふの はィ 

そば たれ はな ロシア じん . |^^く ふ か-つ ひと かほ ふくさう お ぼ 

イナの 側に 誰かと 話して ゐた露 西 亞. 人で ある。 僕 は 不幸に も 「あ の 人」 の 額 だの 服装 だの を覺 え て 

わ.. つ ぼく ぉぱ むお さ せきちく あい -? しな ため くび 

ゐ ない。 僅かに 僕が 覺 えて ゐ るの は 胸に 插 して ゐた 石竹 だけで ある。 ィ イナの 愛 を 失った 爲 に: P 

く 二 しい ばん ひと 

を 縦つ て 死んだ と 云 ふの は あの 晩の 「あの人」 ではなかった であらう か.' …… 

「それ ぢゃ 今夜 は 出ない 笞 だ。」 

「好い 加减に 外へ 出て, r 杯 やる か?」 . 

くん もちろん だう 

EH 君 も 勿論 イイ ナ黨 で あ る 。 . 

ひとまくみ ゆ 

「まあ、 もう 一 幕 見て 行か うぢ やない か?」 

^,、 ら はな おそ まく あ 

僕 等が ダン チ ェ ン コと; 話したり したの は 恐らく はこの 幕 合 ひだった であらう。 

つぎ まく ぼくら たいくつ ^^"くら せキ- つ -ご ふん わい こくじん 一, 

. 次の 幕 も 僕 等に は 屈だった。 しかし 僕 等が 席に 就いて まだ 五分と たたない うちに 外國 人が: A 

ろくにん も わう どぼくら しゃう めん あた むか が は き かれら V.. キ- た 

六 人 了 度 僕 等の 正面に 當る 向う 侧の ボックス へ は ひって 來た。 しかも 彼等の まつ 先に 立った の は 



* へぎ い ,つばん. よへ すわ くじゃく よ U -C.VST 一 

7 紛れ もない ィ イナ • ブル スカ アヤで ある。 イイ ナは ボックスの 一 桥 前に 坐り、 孔^の 羽根の II を 

1 つ.^ い-つ/ \ ぶ たい なが だ どうはん ぐ わい こくじんな- < によ な >ハ かなら かの r 、よ 

使 ひながら、 悠々 と 舞臺を 眺め 屮 Z した。 のみなら す 伴の 外國 人の 男女と (その 巾に は必す 彼女 

だんな アメリカ ヒん まじ ゆく わい わら はな だ 

. の 攛那の 亞米利 加 人 も 交 つ て ゐ たの であらう。) 倫 快 さう に 笑 つ たり 話したり し 出した。 

「ィ イナ だね。」 . ノ . 

「うん、 ィ イナ だ。」 

に ノ、. ん V- いご まく し がい H- つ 

僕 等 はとうとう: i 取 後の 幕まで、 —— 力 ルメン の 死骸 を 擁した ホセ が、 「カル メン! カルメン!」 

どう こ 二 ぼくら け な もち-ろん,"; だい 

と慟 S 人す るまで 僕 等の ボックス を 離れなかった。 それ は 勿論 舞臺 よりも ィ イナ . ブル スカ アヤ を 

み ため をと こころ なん おも 口 シ ァ .t 

見 て ゐた爲 である。 こ の si- を 殺した こと を 何とも 思 つて ゐ ない らしい 露西亜 の カルメン を: 3- て ゐ 

た爲 である。 

X X X X X X 

J/ に V,- ん にち あるばん f ある すみ くん .& 二 

ル それから 一 一三 日た つた 或晚、 僕 は或レ ス トラ ン の 隅に T 君と テ ェ ブル を 岡んで ゐた。 

メ 

ン キみ ばんい らい たし ひだり くすり: S び はうたい キ 

「君 は ィ イナが あ の晚 以來、 確か 左の 藥 指に 繃帶し てゐ たのに I 浙が ついて ゐ るかい?」 



「さぅ|^ へば繃!^してゐたゃぅだね。」 

「イイ ナは あの 晚 ホテルへ 歸 ると、 …… 」 

だ め きみ 

「駄目 だよ、 君、 それ を 飮んぢ や。」 

I 一べ 、 K ん ち V や、 , - - す ひかり なか ち ひ こ がね むし --っ ぴキ- あ ふし. - 

伊 は T 君に 注意した。 薄い 光の さした ダラ ス の 中には まだ 小さい 黄金 蟲が 一 匹、 仰向けに なつ 

-- 、i ゝ- , - 2 べん しろぶ だ-つし ゆ ゆか めう かほ くよ 

て も かいて ゐた。 T. 君 は 白葡萄酒 を 床へ こぼし、 妙な S をして つけ 加 ~へ た。 

力へ たた また かけら か は ダ ち で 

I 皿 を 壁へ 叩きつ けて ね、 その 又 缺片を 力 スタ ネットの 代りにし てね、 指から 虹の 35 るの も かま 

はすに ね、 …… 」 

を ど 

「カルメンの やうに 踊った のかい?」 - 

あた しろ きふ じ 

. が 一 人、 II に 独. の 肌 を;.^ んで 



そこへ iis 囊とは つり r ない i をした、 きが S いき :> ひき: しづ:" は- 



來た。 

(大正 十五 年 四月 十 口) 



一 なぜ ファウスト は惡 魔に 出會 つた か? 

ファウスト は^に II へて ゐた。 ゲて s% はかう いふきれ に はいつ も 「智慧の 鬼」 それ 自身だった。 

铲 i ぎ を;^ る S に i お ii をき I ひ r たり、 アダム や イヴ LI ひ, したりして ゐた。 

しかし^ ir おりの ^i^、 ファウスト は s% を; てゐ るう ちに 一枚の 油畫を f ひ 出した。 それ は 

どこかの が にあった、 あ^い 遊ぎ つた。 g ザて P はこの, 來、 彼に は 昔の 5 

ぎぎの g にも 港の 「ii」 にきり f た。 

:J 、 ある あにし けげ よる 

ファウスト は の Mrl のた めか、 1 度 も 林檎 を 食った ことはなかった。 が 或 i. の 烈しい 夜 パ 

, わ ■ - りんつ 一 また ± キーい .1 I. カオ / 7 

と iso^ つたの を^ じ、 つの ffi きを 燒 いて 食 ふこと にした。 林檎 は 又 この 時 以來、 彼に は 食物 

. 1 .>y^^ "つも ミ ぁふにぉ^^ク、 て^^^カュ A/ 力 

にも 観り k した。 齡ゲ て^ は ffi おを^る^ に、 モォゼ の 十 武を思 ひ 出したり、 油綺 具の 調合 を あ 

^ へたり、 S おおのき W るの を ま "じたり して ゐた e , 



ぜ なのつ: 



161 



最後に 或 簿ら效 一い 朝、 ファウスト は 林檎 を 見て ゐる うちに 突然 林擒も 商人に は 商:: 凹:」 ある こと 

はっけん げん た じふに う ぎんいち まい ちが りく-ご とき 

を發 見した。 現に 又 それ は 十二 資れ ば、 銀 一枚になる のに 違 ひなかった。 林檎 はもち ろん この 時 

Z らい かれ きんせん か は だ 

以來、 彼に は金錢 にも 縛り 出した。 

ある くも ご ご うすぐら しょさい リんご かスが "た-, 一 

或 どんより 暴った 午後、 ファウスト は ひとり 薄暗い 書!? に林擒 のこと を考 へて ゐ た。 林 擒とは 

いったいなん、 かれ わかし て がる と もんだい かれ つく, * 一 

一 體何 であるか? それ は 彼に は 昔の やうに 輕には 解けない 問 題だった。 彼 は 机に, :!: つた ま 

ま、 いっか この 謎 を 口にして ゐ た。 

「林擒 と は, j 體何 であるか?」 

. ぽそ くろい ぬ いっぴ キ- し- {さ い き ., ぬ み ぶ. 

すると、 か 細い 黑 犬が 一匹、 どこから か 書 齋へは ひって 來た。 のみなら すその 犬 は 身. 震 ひ をす 

たち ま ひとり きし か は てい^い ヒ ざ 

ると、 忽ち 一人の 騎 k に 變り、 -J 寧に ファウスト にお 時 〈且 をした。 —— 

あくま で あ まへ. A ーチ あくま で に 

なぜ ファウスト は 惡 魔に 出 x% つた か それ は 前に 書いた 通りで ある。 しかし ふ 魔 に 出 <t つ 

ひ げャ I ご キリ/め ある :- む t,VJS . ふべ 十 し ,c く 

たこと は ファゥ ストの 悲劇の 丑 幕 EI ではない, C 或-淡 一 さの 嚴 しい 夕、 フ ァ ウス トは騎 十に たった. か; - 

i 」 リ りん-ご も乂 だい ろん ひと ど ほ お ほ .fhl,,- あな ひ や i そ 二 どち 

魔と 一 しょに 林檎の 問題 を 論じながら、 人通り-の 多い 銜 をず ノぃ てれった。 すると 瘦せ辦 つた子 俱 

ひ. V り かほ ぢぅ なみだ ぬ ネ. づ 十 はお や て 

が 一 人、 顏中淚 に:^ らした まま 貧しい 母親の 手 を ひつばつて ゐた。 



162 



「あの 林檎 を 買って おくれよう!」 

あくま あし やす こ ども 1- し. め 

惡魔 はちよ つと 足 を 休め、 ファ ウス ト にこの 子供 を 指し示した。 

りん-. -) >ご らん が" 「もん おうぐ 

「あの 林檎 を御覽 なさい。 あれ は 拷問の 道具です よ。」 

ひ げキ i ことば -ご まくめ まく あ 

ファゥ ストの 悲劇 はかう い ふ 言葉に やっと 五 幕 目の 幕 を擧げ はじめた ので ある。 

二 なぜ ソ 11 モ ン はシバ の 女王と たった 一 度し か會 はなかった か? 

しゃ" つが.., ,ち ど ぢょ わう あ なに ぢ よわう 七 ほ くに 

ソ a モ ンは 生涯に たった 一 度シバ の 女王に 會っ ただけ だった。 それ は 何も シバ の 女王が 遠い 國 

ふね ふ. 4 V- ん ねん いちど 今ん ぎん ャ うげ V- る くしゃく け-一 

にゐ たためではなかった。 タルシシの 船 や、 ヒ ラムの 船 は 三年に 一度 金銀 や 象牙 や 猿ゃ孔 後を述 

& し しゃ らくだ かこ 含う りょう W ばく いちど くに わか 

んで來 た。 が、 ソ モン の 使者の 駱駝 は H ルサレ ム を 園んだ 丘陵 や 沙漠 を 一 度 もシバ の國へ 向つ 

たこと はなかった。 

きゅうでん おく ひとり すわ こころ さび じん 

ソ 口 モ ン はけ ふ も 宮殿の 奥に たった 一 人 坐って ゐた。 ソロモン の 心 は 寂しかった。 モア ブ人、 

じん じん じん じんとう きと-き かれ こころ なぐさ かれ しゃう がい いちど 

アン モ 二人、 H ドミ 人、 シ ドン 人、 へテ人 等の 妃 たち も 彼の 心 を 慰めなかった。 彼 は 生; g に 一度 

會 つた シバ の 女王の こと を考へ てゐ た。 



ぜ なのつ: 



165 



ぢ よわう ぴ じん ,5- れ とし 6 う,' ざ";. 

シバの 女王 は 美人ではなかった。 のみなら す 彼よりも 年 をと つて ゐた。 しかしが I しい あ: j5 だつ 

-J ; T よ も, < だ. ふ かれ こころ ひ やく かん *,.. h. J レ 

た。 ソロモン はかの 女と 問答 をす るた びに 彼の 心の 飛躍す るの を 感じた。 それ はどうい ふ あぎ; 帥 

ほ丄, T,- な ひ、? つ ろん あ とき かん よろこ か^ こ ど さんど ぁ6ゾ 

と 星 占 ひの 祕密を 論じ 合 ふ 時で も 感じた ことのない 喜びだった。 彼 は 「一度で も 三度で も、 — 

いっしゃう あ ひだ ゐ げん ぢ よわう はな も が 

は 一 生の 間で も あの 威厳の ある シバ の 女王と 話して ゐ たいのに 遠 ひなかった。 

, どうじ * た ぢ よわう おそ ちょ あ t: ひだ 、 

けれども ソ 口 モ ンは 同時に 乂シバ の 女王 を 恐れて ゐた。 それ はかの 女に 會 つて ゐる問 はぎの 智 

惹を失 ふから だった。 少く とも 彼の 誇って ゐ たもの は 彼の I 曰慧か かの 女の 智, か がけ のっかな 

くなる ためだった。 ソロモン はモ アブ 人、 アン モ 二人、 エド ミ人、 シ ドン M、 へテ のキ き, だち 

を蓄へ てゐ た。 が、 彼女 等 は 何とい つても 彼の 精神的 奴 it だった。 ソ 口 モ ンは 155^1- を!^ い!! する 

とき か ちょら に いべ つ - ぢ. U う う とケ -、 1 L , し レ〉 , 1 

時で も、 ひそかに 彼女 等を輕 蔑して ゐた。 しかし シバの 女王 だけ は t4i は 反って^ 自ぁ をう きおの 

, が JI にし かねなかった。 

かの;, ど れい おそ ちが また、 ちめ,? よら こ 

ソ 口 モ ンは彼 の 奴 fl になる こと を 恐れて ゐ たのに 遠 ひなかった。 しかし 乂 I 一 而に はい 35-1: んでゐ 

たのに も 遠 ひなかった C この 矛盾 はい つも ソ 口 モ ン に は 名,. 狀の 出來ぬ 苦痛だった。 t は 継 M が師 

+ニ 二 お ほ ざ うげ ぎょくざ うへ たびく ふと ハき も -キ- t,.- 一な 二 ひや r.' し 、 ノ ,、 ん . X. 

子 を 立てた 大きぃ象牙の玉座の上に度々太ぃ息をf^,^oた。 その 息 は 又. # かの.: Hf に, y 篇. りが 



164 



情 詩に 變る 二と もあった。 - 

あい もの を こ ら うち 

わが 愛する 者の の-子等の 中に ある は 

はやし き なか りん-, 1 

林の 樹 の-中に 林檎の あるが ごとし" 

わがう へ ひるが.; , はた あい 

その 我 上に 廳 したる 旗 は 愛な りき。 

こ ほしぶ だう ちから おぎな 

. 請 ふ、 なん ぢら 乾葡萄 を もて わが 力 を 補へ。 

りズご われ ちから 

林檎 を もて 我に 力 をつ けよ。 

與は 愛に よりて 疾みゎ づ ら ふ 。 

あるひ くれ キ ゆうでん ろだい にし かた なが ぢぷ わう す 

或 日の 暮、 ソロモン は 宮殿の 露臺 にの ぼり、 はるかに 西の方 を 眺め やった。 シバの 女王の 住ん 

で ゐる國 はもち ろん 見えない のに 違 ひなかった。 それ は 何かソ 口 モ ン に 安心に 近い 心 もち を與へ 

また どうじ こころ な にか あた 

た。 しかし 1^ 同時に そ の 心 もち は 悲しみ に. 近 い も の も與 へ たのだった。 

と っぜ/へま;.^<ろし たれ み け も Q いつび 今 い ひ ひかりな..?; げ / だ け も しし に 

すると 突然 幻 は 誰も 見た ことのない 獸を 一 匹、 入り n の 光の 屮に 現じ 出した。 獸は 獅子に 似 

つばさ ひろ あたま ふた そな あたま ひと ; T- よわう あた. fh- ひ, て 

て 翼 を 擴げ、 頭 を 二つ 具へ てゐ た。 しかも その 頭の 一 つ は シバの 女王の 頭で あり、 もう 一 つ は 彼 



ヒ しん ヰた. -r あたま ふた ^ あ ふ し .ゃ な;. だ なが ろし し. ズ、 た ド-, に 

5 .H 身の 頭だった。 頭 は 二つと も f: み 合 ひながら、 不思議に も淚を 流して ゐた。 おは 暫く 漂って ゐ 

i のち おは カぜ J わた おと いつ 1- ノリ ま ま.,: ノ、 うちう 今- 、だ 

た 後、 大風の 吹き 渡る 昔と 一 しょに 忽ち 乂络 中へ 消えて しまった。 その あとに は啡 かがやかしい、 

銀の 鎖に 似た 雲が 一 列、 斜めにた なびいて ゐる だけだった。 

ろし き つも ろ だい たたす *- ^ ろし 1 み あ キ-ら 

ソ 口 モ ンは 幻の 消えた 後もぢ つと 露臺に 佇んで ゐた。 5- の 意味 は 明かだった。 たと ひそれ はソ 

口 モ ン以: ^の 謙 にも わからない ものだった にもせ よ。 

よ ;• いち とし か » 々-. や ら 、 -リ ぷ ビ う 

エルサレム の 夜 も- 史 けた 後、 まだ 年の 若い ソ 口 モ ンは 大勢の 妃た ちゃへ,^ 來 たらと 一 しょに. P 萄 

の 酒 を 飲み 交して ゐた。 彼の 川 ひる 杯 や 1 は いづれ も 純金 を 川 ひた ものだった-し しかし ソ 口 モ ン 

はふ だんの やうに 笑ったり 話したり する 氣 はなかった。 嚷け ふまで I ら なかった、 まに^!^しぃ 

ん がい みなぎ く かん 

感 慨 の 涨 つ て 來 る の を 感じた だけ だ つ た 。 

リフ- ノン くお なん とが なか 

^紅花 の 紅なる を 处:! むる 勿れ。 

三 . 化 枝 のん つへ る を^むる 勿れ。 

つ -!、 

I され ど 我 は 悲しい かな。 

な 

.$J ナ フ ーフ ン あま て.;^ なゐ 

あ 紅 あは ム はり こ 化な り。 



166 



け いし あま に ほ たか 

娃 枝は餘 りに 勻ひ 高し。 

うた お ほ たてこと か な た なみだな が - かお 

ソロ モ ン はかう 歌 ひながら、 大きい 竪琴 を搔き 鳴らした。 のみなら す 絶えす 淚を 流した。 彼の 

うた かれ に げき- a フン しら みなぎ きさき け、 いい かほみ あは 

歌 は 彼に 似げ ない 激越の 調べ を 漲らせて ゐた。 妃 たち ゃ家來 たち は いづれ も 顔 を 見合せ たりした リ 

れ ofc い み たづ -った は わう くわん 

が、 誰も ソロモン にこの 歌の 意味 を 尋ねる ものはなかった。 ソ P モン はやつ と 歌 ひ 終る と、 王冠 

ハただ かしら た しばらく め と きふ ゑ が ほ あ キ. さき 

を 頂いた 頭 を 垂れ、 少時 はぢ つと 目を閉 ぢてゐ た。 それから、 11 それから^に 笑 額 を 舉げ、 妃 

たち や {尿 來 たちと ふだんの やうに 話し 出した。 

ふね ふね さんねん いちど きんぎん ざ うげ さる くじゃく は 二 き 

タル シ シ の 船 ゃヒラ ム の 船 は 三年に 一 度 金銀 や 象牙 や 猿 や 孔雀 を 運んで 來た。 が、 ソロモンの 

し しゃ らくだ かこ きうり よう さ ばく いちど くに わか 

使者の 路駝は H ルサ レ ムを 園んだ 丘陵 や 沙漠 を 一 度 もシバ の國へ 向った ことはなかった。 

(大正 十五 年 四 十二 =0 

三 なぜ ロビ ン ソン は 猿 を 飼った か? 

參 

さる か かれ i かれ み — „ - .* 

なぜ ロビン ソ ンは猿 を 飼った か? それ は 彼の 目の あたりに 彼の カリ カチ ュ ァ を!:^ たかった 力 

しょうち じ!^ぅ いだ ひや- 

ら である。 わたし はよ く 承知して ゐる。 鈇を 抱いた B ビ ン ソン は ぼろぼろの ズボンの 膝 を かかへ 



ぜ なのつ 三 



167 



ながら、 いつも 猿 を 眺めて はもの 凄い 微笑を浮かべて ゐ た。 鈴 JJI の鮮 をし かめた まま、 iJi に 

を 見上げた 猿 を。 

(大正 十五 年 七:::; 五:::) 



168 



ちかごろ ,- かんご ふ き はなし なか/ \ き ふ.. - カネ 

. これ は 近頃 N さんと 云 ふ 看護婦に 聞いた 話で ある。 N さん は 中々 利かぬ 氣 らしい。 いつも 乾い 

く. V.* びる するど けんし み ひと 

た脣 のかげ に銳ぃ 犬齒の 見える 人で ある。 

く たう じ ぼく おと, T と てんち さき やどや に かい だい 4^ やう かた る おこ よこ げ f い, かん , 

俊 は當時 僕の 弟の 轉地 先の 宿屋の 二階に 大腸 加 答兒を 起して 橫 になって ゐた 下痢 は 一 ^間た 

け しき な ぐわん らい おとうと ため 々- やく かい 

つ てもと まる 氣色は 無い。 そこで 元來は 弟の 爲に そこに 來てゐ た N さんに 厄介 を かける ことにな 

つたので ある。 

ある さ み だ れ つ-つ ゆき ひら かゆに いか む ざう さ なし , ,2 

或 五月雨の ふり 緩いた 午後、 N さん は 雪 平に 粥 を 煮ながら、 如何にも 無造作に その, をした。 

X X X X X X 

ぶつる ヒし まる ある ハん 1,) ふく わ > うし ご: P CJ だ い うち ゆ の だ 1 . うち 

或 年の 1^、 N さん は 或 看護婦 會 から 牛 込の 野 田と 云 ふ 家へ 行く ことにな „ ^た。 野 田と 云 ふ 象に 

^ をと こしゅ じん き み をん な いんきょ ひとり よめい ま.、 れ. すめ ひとり . * た. め おと;;'. =,1 ひ. とり,.、 

R は I ^お: < ^ゐ ない。 切り I- にした 女隱 居が 一 人、 嫁 人り 前の 娘が 一 人、 その 又 娘の .f^ がー 人、 



n il あと は 女中の ゐる ばかりで ある。 N さん はこの 家へ 1;;: つた 時、 佝か 妙に のば: < るの を 厳 じ 

た。 それ は 一 つに は 姊も弟 も 肺結核に 罹って ゐ た^で あらう。 けれども * お f つに は Ifc?^ ん誕れ 

力 力 と い Ji と う に. H と N/ さ しデ つつ. ,リ J 5 - 6 < -tnj 

の 抱へ こんだ、 飛び石 一 っ打ってなぃぁに木賊ばかり^:^ってゐたハ::!でぁる。 .lc^iそ^^じぃが、^ 

一一とば したが ご まだけう ぬえし つ あ \f 

は N さんの 言葉に 從 へば、 「胡麻 竹 を 打った 濡れ 緣さ へ 突き上げる やうに つて ゐた。 

んな いんきょ むすめ ゆき よ むすこ せ.' たらうよ r 

A 隠居 は 娘 を 雪さん と 呼び、 ,:111心子だけは淸,.^-郞と呼び捨てにしてゐた。 II さん はきの 膨っ, 4 一;!^ 

たったと 見え、 熱の 高低 を 計る のに さへ、 N さんの 見た ので は 承知せ すに い 一 々|^|ぎを^^かして 

み- - 二 、 せいた らう ゆき はんたい せわ や -4 J. 1 

見た さう である。 淸太郞 は 雪さん と は 反對に N さんに # 話を燒 かせた こと はない。 化で も |a ふな 

りになる ばかり か、 N さんに もの を ーず ふ 時には 顏を 赤め たりす る 位で ある。 ぉぽ^^1^かぅ^ふ|| 

太郞 よりも 雪さん を 大事に して ゐ たらしい。 その 癖 病 氣の重 いのは 雪さん よりも!; ろ 1^1^ g つ だつ 

た。 , 

いく ぢ そだ ぉぽ 

1 あたし はそんな 意氣 地な しに 育てた 覺ぇ はな いんだが ね。」 

& を きょ はな く たび せいた う ± な と 二 つ - * 

f 女 隱居は 離れへ 來る 度に S 太郞は 離れに 床に 就いて ゐた。 ;} いつもつ けつけ とく: 一;; S をず つた。 

^ 、-、 に. 丄 ふい 一ち せいた らう めった くナ -VI た ただら "む -J: 

力 二 i- 1 になる 淸太郞 は 滅多に 口答へ もした こと もない。 唯 仰向けに なった まま、 :!^ 衡よぢ つ 



め と えた かま r しろ ひし ク, なう と か . レ に,. み-、 

と: HI を閉 ぢてゐ る。 その 又顏も 透きと ほる やうに 白い。 N さん は 氷囊を 取り 換へ ながら、 時々 そ 

VC よ --ょ .- つ とく? J ひデ うつ かん f 

の g の あたりに 庭 一 ばいの 木賊の 影が 映る やうに 感じた と 云 ふこと である。 

t: るばん じ,^ じ まへ うす.' 、 に》.. んナ. 'やう はな ひ お ほ IHr- こほり かい 力へ 

或 晚の卜 時 前に、 N さん はこの 家から ニー:: 町 離れた、 ^^の多ぃ町 へ氷を買ひにれった。 その at 

• ひと ど ほ すく f や しき つづ C ぼ ざ か たれ ひと リ , "'丄 ,》 / - 

りに 人通りの 少ない 屋敷 緩き の 登り 坂 へ かかる と、 誰か 一 人 ぶらさがる やうに 後ろ 力ら N さんに 

i こ もちろん うへ どろ ね. t も 

抱きついた ものが ある。 N さん は 勿論び つくりした。 が、 その上に も 驚いた ことに は 思 はすた ぢ 

たぢ となりながら、 i| 越しに 相 v:.. を ふり 返る と、 闇の 中に もちら りと 見えた 額が 淸太郞 と 少しも 

ェ かよ かほ -ご ふ が か あた 4* --/ 力す り 

らな いこと である。 いや、 變らな いのは 額ば かりで はない。 五分刈りに 刈った 頭で も、 紺飛门 

き もつ まとん せ 、乂- らラ かくはつ ,、 わん じ や せいた らう で 

らしい 着物で も、 ^ど 淸太郞 とそつ くりで ある。 しかし をと とひ も.^ 血した 患者の 淸太郞 が 出て 

來る ii! はない。 ^やそん な眞似 をしたり する: _ ではない。 

一; 如さん、 お金 をお くれよう c」 . 

I -i ,y だ ちま . 二る 5 --幺 た ふ し ぎ せ I た 

その 少年 はや はり 抱きついた まま、 廿 える やうに かう 聲を かけた。 その 聲も 亦不 m.- 議 にも 淸太 

らう 二, ♦! おも キ もやう ひだり て ,^ あ ひて- て- ^ . :> 

郞の聲 で はな い かと 忍 ふくら ゐ であ る" ^文な;^ さん は 左 の やにし つ カり相ザ の^^を抑 へ な 力ら- 

1 「化です、 失 な。 あたし はこの 尾 敷の ものです から、 そんな こと をお しな さると、 ET 哥 3 爺 や 



ャ えの- 《も 

爲^ 一 

ば お ] 

か 隱ぇ C 

り 居 :1 / 
で はよ 
は N a 
な さ t 
し 、 ん 1 

C を 

實 S 見'' I 
際 l5 る う 
又え と t 

K 、 ^ 

さ 殆^ Z 
ん ど,' % 
i P 口 じ i 



3 さん を 呼びます よ」 とずった、 e . 

7 

1 , あ ひて, あ ひか:! す かね : 

けれども 相 ザ は 不報變 「お金 をお くれよう」 を 繰り;^ して ゐ る.) さん は ぢりぢ り!; き ®; されな 

がら、 もう t 一度 この 少年 を ふり, 返った。 今度 も がの^ マ:.: ちは艇 かに 「はにかみや」 の!^ 广 

である。 N さん は,^ に無氣 味に なり、 iへてゐた^!:を§めすに^^るだけぉきぃgをぎした。 

「ハ<| やさん、 來 一に 下さい!」 

一-ふ; いつ おさ C ... 

相 ザ は N さんの 聲、 こ 一 しょに、 抑 へられて ゐ た,:. を 板り もぎら うとした。 1 ぼに;^,, ; さん J> お 

の 乎 を 離した e それから 概, が よろよろ する i に に!^ I した。 > 

N さん は, を ら せながら パ後 になって 氣が つい て ^f- る と 、 ま k まに 化ん だ "も; かり お ゲ」 し つ 

む" ち つ £ 

力り 胸に 當 てて ゐ たさう である。 き 田の 家の II 騎,〉 定 りこんだ C i の g は^ II ひっそりして ゐるリ 

r ^ AO かま ビ」 ,^ 、 > 

N さん は 茶の 問へ 顔 を 出しながら、 夕 を ひろげて ゐた I8t ^ちょっと!^ の!! い!^ ひ をした e 

rs A-?r し、 レ -o- 二、」、 、、二,? に: r フ : 」 

る やうに かう ず つ た。 それ は 何もけ たたまし い ::.y_5:: に!! ノ ヒ 

ゆ: f ク からだ ふる A 一 

笑って はゐて も、 體の 麓へ るの は 止まらたかった か,: である:. 



174 



「いえ、 今 そこの 坂へ 來 ると、 い たづら をした, < があった ものです から、 …… 」 

「あなたに?」 

-っ しろ ねえ かね い 

「ええ、 後から かじりついて、 『姐さん、 お金 をお くれよう』 つて 言って、 …… 」 

い かいわい こ ぼり い ふりやう せう ねん 

「ああ、 さう 言へば この 界隈に は 小 堀と か 云 ふ 不良少年が あってね、 …… 」 

つぎ ま 二 ゑ とこ ゆき 

すると 次の 問から 聲を かけた の はや はり 床に つい てゐる 雪さん である。 しかも それ は N さんに 

もちろん をん な いんきょ いぐ わい めう けん ことば 

は 勿論、 女隱 居に も 意外だった らしい、 妙に 險の ある 言葉だった。 

か あ す こ しづ ちゃう だい 

「お母様、 少し 靜 かにして 頂戴 C ,一 

い ! S き ことば かる はんかん い むし ぶ べつ かん キノ、 わい 

N さん はかう 云 ふ 雪さん の 言葉に 輕ぃ 反感 1 'と 云 ふよりも 寧ろ 侮蔑 を 感じながら、 その 機會 

ちゃ ま た い 4.- いた らう に ふりやう せう ねん か,^^ いま め まへ C こ 

に 茶の間 を 立って 行った。 が、 淸太郞 に 似た 不良少年の 額 は 未だに 目の前に 殘 つて ゐる。 いや、 

ふりやう せう. れん かほ ただ りんく わく せいた らう じ しん .^;ほ 

不良少年の 顏 で はない。 唯 どこか 輪廓の ぼやけた 淸太郞 自身 の 顏 で あ る 。 

ご ふん C ち- またぬ えん はな ひょうな う はこ い せいた らう 

五分ば かりたった 後、 N さん は 又 濡れ 緣をま はり、 離れへ 氷囊を 運んで 行った。 淸太郞 は そこ 

にゐ ないか も 知れない、 少く とも 死んで ゐ るので はない か? そんな 氣も N さんに はしないで 

ナ. な ひ み せいた うす? ら でんとう した し-つ ねむ . ^ほ 

はなかった。 が、 離れへ 行って 見る と、 淸太郞 は 薄 In い 電燈の 下に 靜 かに ひとり 眠って ゐる。 ^ 



夜の 恭 



175 



また あ ひ 力 はら ナす しろ +T やう ど-一は 、つ つ と 04- J- デ うつ 

も. & 不相變 透きと ほる やうに 白い。 丁度 庭に 一 ばいに 仲び た 木賊の 散の 映って ゐる やうに- 

ひょうな つ と s^- いた 

「^ 囊を お取り 換へ 致し ませう。」 

さん はかう 一 B ひかけ ながら、 後ろが 氣 になって ならなかった。 



X X X X 



はバ なし を は とき かほ なが た せ-つ あくい ことば だ 

僕 はこの, &の 終った 時、 N さんの 顔 を 眺めた ま ま 多少 惡意 の あ る 言葉 を 出した 

r 淸 太郞? — です ね。 あなた は その 人が 好きだつ たんで せう?」 

す 

「ええ、 好きで ございました。」 



ぼく よ ざう はる へ スじ 

N さん は 僕の 豫想 したよりも 遙 かに さっぱりと 返事 をした。 



(大正 十 五^八 H 十二 m) 



176 




,く ょ± やう じん -t -,、 -V ち-ど てく はは はは した かん _ V" . ?-; 3 

俊の i# は 人だった。 僕 は 一 度 も 僕の 母に 母ら しい 親しみ を 感じた こと はない 僕の 母 は髮を 

< し. K じっか ひとり すわ ながぎ せる たばこ す I ^ 

櫛卷 きにし、 いつも 芝の 實家 にたった 一人 坐りながら、 長 煙管です ぱ すば 煙草 を 吸って ゐる! 5^ 

V ひ か.,: さ ナ, ひ .IK たかま ひ わけ せいき は ひいろ ぼく 

も 小さければ 體も 小さい。 その 又顏 はどう 云ふ訣 か、 少しも 生氣 のない 灰色 をして ゐる。 僕 はい 

せ? さう き よ. . ど こ. うき でい しう み つ 一 で あ とき た /- ま S • > ^ I ^ ) ~ 

つか 践鹿 記を讀 み、 土ロ氣 泥臭 味の 語に 出合った 時-に 忽ち 僕 の^の 顏を —— 瘦せ 細った 橫額を 

おも だ 

思 ひ 出した。 • 

- まく f ± は ぜんぜん めんだ う み もら _ なん、 いち ノ-^ や f ほ: >, —, に,. f, い 

かう 云 ふ 俊 は 僕の 母に 全然 面倒 を 見て 貰った こと はない 何でも 一 度 僕の 養 a: とわ さわ ざ 一 一階 

あ-さつ" あたま ながぎ せる う お ほ D , > \*ズぃたぃ*^〉、、,..'^ ^ か 

へ挨 俊に 行ったら、 いきなり 頭 を 長 煙管で 打 たれた こと を覺 えて ゐる し 力し 大體 俊の は如佧 

しづ 々一 やう じん < く « く あれ る 5 ^ やま , 、 よ .J 々り . ん丄, - 

にも もの 靜 かな 狂人だった。 僕 や 僕の 姊 などに 畫を 描いて くれと 迫られる と つ 折の 牛 紙に 璺 

^ » -a すみ つか まく あね みづゑ C かう らく しちよ い ふく くさき 

ひ をぎ いてく,^ る。 畫は墨 を 使 ふば かりで はない。 僕の 姊の水 繪の具 を 行樂の 子女の 衣服 だの 草木 



179 



はな ただ ら ぐ わち う じんぶつ 今-つね かま 

の 花 だのに なすって くれる C それ 等の 畫 中の 人物 は いづれ も 狐の 額, をして ゐた。 

f はは し ^く じふい ち あき やま ひ 』> め す/ * じゃく .: つ 〉 

僕の 母の 死んだ の は 僕の トー の 秋で ある。 それ は 病の 爲 よりも 衰弱の 爲に 死んだ ので あらう。 

し ザん-ご き おく わ あ ひ C こ 

そ の 死 の 前後 の 記憶 だけ は 割り 合 に はっきりと 殘 つて ゐる。 

- , 一;" ん ば". き, - ため ぼく ある かぜ しんや ぼく じんりきしゃ の 5 ん じょ して 

危篤の. 宿 報で も 來た爲 であらう。 僕 は 或 風の ない 深夜、 僕の 養母と 人力車に 乘り、 所から サ f:^ 

力 , い ぼく こんにち えりまき い t とく よ 

まで^け つけて 行った。 僕 はま だ 今日で も 襟 卷と云 ふ もの を^ ひた こと はない。 が、 特に この.! 仪 

なん ハ-、 わ さんす ゐ なに か うす 今ぬ ハンケ チ ぉぽ 

だけ は 南畫の 山水 か 何 か を 描いた、 薄い 親の 手 巾 を まきつけて ゐ たこと を覺 えて ゐる。 それから 

〈ン んノチ か-つす ゐ い . ^うす ゐ に まひ .;,fr< 

その 乎 巾に は 「アヤメ 香水」 と 云 ふ 香水の 句の して ゐ たこと も覺 えて ゐる。 

7 ス に, か-い ま した はちで ふ ? しき よこ ぼく よつ もが ぼく あね まよ A く, !■ 

僕の «: は 一 一 階の 眞 下の 八疊の 座敷に 橫 たはつ てゐ た。 僕 は §: つ 違 ひの 僕の 姊と僕 の^の:^ もと 

, す,.々 , ;". ^り、 た., „ た, な こと たれ f うし - ごりん じゅう-ごり し * う とき 

に^り 一 一人と も 3.^ えす 聲を 立てて 泣いた。 殊に 誰か 僕の 後ろで 「御 臨終 御 臨終」 と 言った 時には 

いっそ, I あ かん いま めいもく し にん ぼく 于:* とつ ぜぐ 

ー曆 せな さの こみ 上け るの を 感じた。 しかし 今まで 瞧 目して ゐた、 死人に ひとしい 僕の 1$, は 突然 

め なにい ほくら みな かな なか こ -ご幺 わら 

目 を あいて 何 か 一 百った。 僕 等 は 皆 悲しい 屮 にも 小. I" で くすくす笑 ひ 出した。 

ぼく つぎ にん ぼく はは i く、, つ よ あけ t ,か すわ す こ 

僕 は その 次の 晚も 僕の 母の 枕 もとに 夜 明 近くまで 坐って ゐた。 が、 なぜか ゆうべの やうに 少し 

な!^ だ なが ノ ぼ,、 ほ とん な ..J^ た ぼく あねても へ ± 、つし やう ナん 6 > t i n 

も淚は 流れなかった。 僕 は 殆ど 泣き 聲を 絶たない 僕の 姊の 手前 を 恥ぢ、 J 生 r ね 命に^ く 露 i をし 



ど. つじ また ぼく な ぃヒ やう ぼく はは し かなら しん 

てゐ た" 同時に 又 僕の 泣かれない 以上、 僕の 母の 死ぬ こと は必 すない と 信じて ゐた。 

まノ、 はは みっか め ばん ほ とん くる しい しまへ しやう き かへ み V ナ、 ら 

僕の 母 は 三日 目の 晚に 殆ど 苦します に 死んで 行った。 死ぬ 前に は 正氣に 返った と 見え、 僕 等の 

かほ なが ど なみだ おと なん くち き 

截 を 眺めて はとめ 度な しに ぼろぼろ 淚を 落した。 が、 やはり ふだんの やうに 何とも 口 は 利かな か 

つた。 

ぼく な ふ /、わん を は のち とキ, な わう じ をば い あると ほ 

僕 は 納柑を 終った 後に も 時々 泣かす に は ゐられ なかった。 すると 「王子の 叔母さん」 と 云 ふ 或 遠 

えん ば あ ひとり ご かんしん い ぽ くめう かんしん 

緣の お婆さんが 一 人 「ほんた うに 御 感心で ございま すね」 と 言った。 しかし 僕 は 妙な ことに 感心す 

ひと おも 

る 人 だと 思った だけだった。 

^く .H-H v.- うしき で ひ ぽく あね ゐはぃ も ぼく うし かう ろ も ふ.^ り じ V; りきし や 

僕の 母の 葬式の 出た 日、 僕の 姊は 位牌 を 持ち、 僕 は その後ろ に,^ 爐を 持ち 二人とも 人力車に _^ 

い ぼく と キス \ゐ ねむ おも め V.- ひやう し あや ふ かう ろ と- 

つて 行った。 僕 は 時々 居陲り をし、 はっと 思って 目を醒 ます 拍子に 危く 香爐を 落し さう にす る C 

や なか なか/ \ こ か なりな が さう れつ あき. よ とうき やう * へち ね 

けれども 谷 中 へ は 中々 來 ない。 可也 長 い 葬列 は い つ も 秋晴れ の 東京 の 町 を しづ しづ と 練 つて ゐる 

ので ある。 

ぼく はよ めいにち じふい ちぐ わつ にじ ふ はちに ち i たかい みやう キニ やう ゐん めう じょ,, メ にっしんだ いし ぼく V i- なく 

僕の 母の 命日 は 十一月 二十 八日で ある。 又 戒名 は 歸命院 妙乘日 進大姊 である.」 僕 は その 癖 僕 

じっぷ めいにち かいみ やう お K た ぶんじ ふいち な,、 めいにち かいみ やう お ぼ I 二 ひと 

資 父の 命日 や 戒名 を覺 えて ゐ ない。 それ は 多分 十一 の 僕に は 命日 や 戒名 を覺 える こと も 誇りの 一 



ず 點 



181 



つだった 爲 であらう。 . 

ぼく ひとり あね も ぴゃ うしん ふたり こ ども ま. H, ぼ C てん 

僕 は 一 人の 姊を 持って ゐる。 しかし これ は 病身ながら も 一 一人の 子供の^に なって ゐる。 僕の 「;^ ^ 

き ぼ く は もちろん あね ちゃう どぼく う i へ とつぜん えう せリ あ ス 

鬼簿」 に 加へ たい の は 勿論 この 姊 のこと ではない。 丁度 僕の 生まれる 前に 突然 夭折した 姊 のこ, こ. 

ぼくら さんにん き やう だい なか いちばん かしこ い あね 

である。 僕 等 三人の 姊? の 中で も 一 番贤 かった と- ムふ姊 のこと である。 

あね はつ こ い ちゃ うぢよ う ため , 94 く ひへ ぶっだん , M t つ 

この 姊を 初子と 云った の は 長女に 生まれた 爲 だった であらう。 僕の{豕の佛壇には^^だに「5ち 

やん」 の 眞が 1 妆 小さい 額緣の 中には ひって ゐる。 初ち やん は 少しも か弱 さう ではない。 小さ 

ゑ くま りゃう ほほ ヒ ゆく あんす 

い 笑 窪の ある 刚頰 など も 熟した 杏の やうに まるまるして ゐる。 …… 

僕の 父 や の 愛,. を 一 番餘 計に 受けた もの は 何と "おっても 「初ち やん」 である。 「初ち やん」 は. 芝の 

しんせん ざ つき ぢ ふ じん えう ち も プ,) なに かよ ど えう :ir えう 

新錢」 m から わざわざ 築地の サン マァズ 夫人の 幼稚 阅か何 かへ 通って ゐた。 が、 土曜から,::: 曜へか 

かなら ぼく はは いへ ほん ヒょ ぁノ、 たが はに と い t. , ぐ わ, -レ つ A. キ 

け て は、 ゼす 僕の 母の 家へ 1 1 本 所の 芥川家 へ 泊り に 行った。 「「初ち やん」 はかう 云 ふ 外出 の 降に は 

め いぢ に. じふね. ん だい いま t つ. ふく き ,4>:r がかく かよ ォっ 

まだ 明治 ニト 年代で も 今めかしい 洋服 を 着て ゐ た の で あ らう。 僕 は 小學校 へ 通 つ て ゐた 「,§ ち 



やん」 の Ik まの 端.^ を^^ ひ、 ゴム 人形に 着せた のを覺 えて ゐる。 その 又 端 巾 はず ひ 合せた やうに 

細かい 花や 樂器を 散らした 舶來の キャラ コ ばかりだった。 

^截 i のお^の 「^ちゃん」 は を f きながら、 Ife にゐ る^が に K を かけた パ^ は 勿論 

とき あね やう ふく き さう ざう 

この 時の 姊も 洋服 を 着 て ゐ た やうに 想像して ゐる C ) . 

をば なんい き 

「伯母さん, これ は 何と 云 ふ 樹?」 

「どの 樹?」 

つ &i み き 

「この 荅の ある 樹。」 

ほく it じっか に は せ ひく, ほ け き ひと かぶ ふる ゐ ど 、えだ- んに r > :。 T .h 1 \ 

&の 瑶の實 家の 庭に は脊の 低い 木瓜の 樹が 一 株 古 井 戶へ枝 を 垂らして ゐた 髮をぁ T けにし 

た 「初ち やん」 は 恐らく は 大きな 目 をした まま、 こ の 枝の とげとげしい 木^の 樹を 見つめて ゐたこ 

とで あらう。 

まへ おな なまへ き 

「これ はお 前と 同じ 名前 の 樹。」 

を ば しゃれ あいにく つう 

伯母の 洒落 は 生憎 通じなかった 

2 

8 ばかき いき 、 > 

1 「ぢ ゃ莫迴 の 樹と云 ふ樹な のね」 



雜鬼點 



183 



伯母 は 「初ち やん」 の 話さへ 化れば、 未だに この il? を i り || して ゐる。 第 i お 「まち やん」 の!^ 

と つて は その外に 何も 殘 つて ゐ ない。 「初ち やん」 は それから |g もた たす に «ti は ひって しま 

つたので あらう。 僕 は 小さい 位牌に 彫った 「初ち やん」 の^お i& えて ゐ ない C が、 「: まち やん」 の 

= ^いに ち,、 > わつ いり か , めう お ほ 

命日 力 ^月 五日で ある こと だけ は 妙に はっきりと 覺 えて ゐる。 

僕 は なぜか この 姊に、 I4H ん ilK くの が泄ら ない i に fi しみ をカ瓢 じて ゐる。 ri ちゃん」 は^も 

存命す ると すれば、 ral 十 を 越して ゐる ことで あらう。 shV ました 「1 ちゃん」 の縱は おの m 

か. - に 力い ぱぅ ぜん た 》*i こ ぼく よ. H 5 ま ノ : 

象の 二階に 茫然と 煙草 を ふかして ゐた 僕の $1 の S 叫 に^て ゐる かも:^ れ ない。 i は fVIT の やう 

に i の は 母 はと も 場と もっかな いし 四 じ 十 ふ i の S が ひーゃ どこかから きのい 一つし き S つて ゐる やうに 

感じて ゐる。 これ は 珈琲 や 煙草に 疲れた IkSl のし 仕き であらう か? それとも; Ti かの 嫩が ひに 

實 在の 世界へ も 面 かげ を 見せる 超自然の 力の 仕業で あらう か? 

三 

イス はは はっき やう ため う ま. や やう か やう, ± よ 

僕 は 母の 發 狂した 爲に 生まれる が 早い か 養家に 來 たから、 (養ぎ は, 母-かたの^ Is^ だった。) 殿 



ちち れいたん ^,、 もち ぎう に ゆ-つや +っひ せいこうしゃ ひとり VK、 た, T じ あ-こ 

の 父に も 冷淡だった。 僕の 父 は 牛^屋で ぁリ、 小さい 成功者の 一 人ら しかった。 僕に 當時 新ら し 

くだ も いんれ う やし こと-ごと f ちち . 

かった 果物 や 飲料 を敎 へたの は 悉く 僕の 父で ある。 バナナ、 アイス ク リイ ム、 。ハ イナ アップル、 

. ゆ ほか し ぼく たう じ しんじ: W く ぽくぢ やう そと . ^し は 

ラム 酒 II まだ その外に もあった かも 知れない。 僕 は 當時新 i 俩に あった 牧場の 外の 槲の葉 かげ 

C ぉぽ しゅ ひじ やう ぶん すく と, くわ *r しょく お ん 

に ラム 酒 を 飲んだ こと を覺 えて ゐる。 ラム 酒 は 非常に アル コ オル 分の 少ない、 授 iiS: 色を帶 びた 飲 

1: だった。 

ほく ちち を 人な f い めづ すす ^:-っか と rf'.c tr、 いす お i 

僕の 父 は 幼い 僕に かう 云 ふ 珍ら しい もの を勸 め、 養家から 僕 を 取り 昃さ うとした。 僕 は 一 夜大 

もり う をえ い す. ろこつ じっか -- 二 くど 

森の 魚榮で アイス ク リイ ム を勸 めら れ ながら、 露骨に 實 家へ 逃げて 來 いと 口 說 かれた こと を覺ぇ 

ぼく ちち い とき す こぶ かう げんれ いしょくろう あいにく くわん/ ン 、,ち ど かう そう 

てゐ る。 僕の 父 はかう 云 ふ 時には 頗る 巧言令色 を 弄した。 が、 生憎 その 勸誘は 一度 も效を 奏さな 

ぼく やう. A ふぼ こと を あ い 

かった。 それ は 僕が 養家の 父母 を、 —— 殊に 伯母 を 愛して ゐ たからだった。 

ぼく ちち またたん き たぴく たれ けんく わ ぼく ちう がく さんねん せい とき ぼく もち すま ふ 

僕の 父 は 又短氣 だった から、 度々 誰と でも 喧嘩 をした。 僕 は 中學の 三年 生の 時に 僕の 父と 相找 

? Lr、 とくい お ほそと が つか み ごと ぼく ちち な た ふ ぼく ちち お あが おも 

をと り, 僕の 得意の 大外刈り を 使って 見事に 僕の 父 を 投げ倒した。 僕の 父 は 起き 上った と 思 ふと、 

ぃナ. - ばん い ぼ/、 む か き ぼく えた ざう さ な た ふ ぼく ちち さんど め 

「もう 一番」 と 言って 僕に 向って 來た。 僕 は 又 造作 もな く 投げ倒した。 僕の 父 は 三度 目に は 「もう 

4 

00 いちばん い けっさう か と き す- H ふ み ぼく をば ^く はは 

1 一番」 と 言 ひながら、 血相 を變 へて 飛び かかって 來た。 この 相撲 を 兄て ゐた俟 の 叔母 —— 僕の: W 



\.^^ , せべ ちち f 一 さい をば に さんど 7--、 め でく く ちち も 5 つ, つ 

5 の 針で あり 僕の 父の 後妻だった 叔母 は 二三 度 僕に 目く ばせ をした。 僕 は 僕の 父と 揉みな I: つたが、 

Th-l む とき ま |< くちち Jit ン; く 

わさと 例 向 けに 倒れて しまった。 が、 もし あの 時に おけなかった とすれば、 僕の 父 は? す I- にも 

插 みかから すに はゐ なかった であらう。 

ぼく に じふ はち とき け-つし 上ャ; で "よ- 3 

僕 は 二十 八に なった 時、 11 まだ 敎師 をして ゐた 時に r チチ 一一 ウィン」 の IJ^ を 受けと り、 〈ほ、 g 

と 鎌 倉から 東京へ 向った。 僕の 父 は イン フル H ンザの爲に康京病ゃ&ゐ^^はひってゐた。 礙は^ 缀ー 

か、/ 1 、 力、 うか . & ,a: じっか を ば ぴゃ うしつ すみ 52 とま -: ,-- 

日ば 力り 養家の 伯 EjS ゃ實 家の 叔母と 病室の 隅に.:; ベ 泊り して ゐた。 そのうちに そろそろ 艇 12:: し 

, -,' . n^. 二ん い ある アイルランド し.; "ふん ャ- しゃ ひとり っ>*; あ, &. ifc'fe:--' A- - : 

した。 そこへ 僕の 懇意に して ゐた或 愛蘭 土の 新聞記者が 一人、 ャ柔 地の^ 擀^ へ 組 をが 艮ひ に^ない 

かと 云 ふ 電話 を かけた。 僕 は その 新聞記者が 近く 渡米す るの を _nT きつに し、 1|し死の^の5^ど|^した 

つ キ-ぢ ぶる まち あ ひ で 、 , 

まま、 築地の 或 待合へ 出かけて;^:;: つた。 

") 、ら, し- * 一 ご にん げいしゃ いつ ゆく わい に ほん ふう しょ 二 じ しょ: じ ヒレ じ".、」 - ごつ \ rs T 

等 は K 五 人の 藝 者と 一 しょに 偸 快に 日本風の 食事 をした。 食事 は 確か 十 時 頃に, めった。 r 、は 

-. シ; iiii^ き- -,! -ゃ R こ V せま だんば しご くだ い ,--x^ うし JU 、 

その^ 関 記者 を殘 した まま、 狹ぃ段 梯子 を 下って 行った。 すると 誰か 後ろから 「ああさん」 と F に 

1— こ么 ぼ/、 ちう だん 4 めし £ 5 ^ 'W S へ 、ヽ 

錢 聲を かけた。 僕 は 中段に 足 をと めながら、 段^ 子の 上 を ふり i つた。 そこに はがお せて ゐ たぎ 

がー 人、 ぢ つと 僕 を 見下ろして ゐた。 僕は默 つて 段 梯子 を卞 卜り、 |>fi ん のがの タク シィ こぎつ」」。 



うご だ ほく ぼく ちち ムづ /\ せいやう がみ は か よ か は 

タク シィ はすぐ に 動き 出した。 が、 僕 は 僕の 父よりも 水々 しい 西洋 髮に 結った 彼女の 顔 を, I . 

こと か ぢょ め かんが 

殊に 彼女の 目を考 へて ゐた。 

まく プ やう ゐん かへ く ぼく ちち ぼく まか に まい > ^"り ぴキ うぶ そ _ と ことごと 

僕が 病院へ 歸 つて 來 ると、 僕の 父 は 僕 を 待ち兼ねて ゐた。 のみなら す 二 枚 折の 屏風の 外に 悉く 

よじん ひ V.- が ぼく て にぎ な ぼく し 力 かし ■ * ) は 

餘人を 引き 下らせ、 僕の 手 を 握ったり 撫でたり しながら、 僕の 知らない 昔の こと を - 1 仪 の!? 

ナっ こん たう じ はな だ ぼく はは ふたり たんす か で -、 十-し 

と 婚した 當時 のこと を 話し 屮 I した。 それ は 僕の 母と 二人で 萆笥を 買 ひに 出かけた と 力 をと 

/, , さ まつ はなし す ほく はなし まぶた あつ 

つて 食った とか 云 ふ、 琪 末な 話に 過ぎなかった。 しかし 僕 は その 話の うちにい つか-きが 察くな つ 

まく ちち にく お ほほ なみだ なが 

てゐ た。 僕の 父 も 肉の 落ちた 頰に やはり 淚を 流して ゐ た。 

ぼく ちち つぎ あさ あま くる し い しまへ あた. くる る. - 1 - , 

の 父 は その 次 の 朝に 餘り 苦します に 死 んで 11;: つ た。 死ぬ 前 に は 顕も狂 つ たと 見 え 「あ ん なに 

十 S こ た ぐんかん き ばんざい とな い ぼく ぼく ちち さ-つし き 

a>r ど 立てた 軍艦が 來た。 みんな 萬 歲を唱 へ ろ」 などと 言った。 僕 は 僕の 父の 葬式が どんな ものた 

お ぼ ただ ぼく ち し がい ぴ やう ゐん じっか はこ とき お ほ はる つき: ひ, と一 、 力" ^fti J- 

つた か覺 えて ゐ ない。 唯 僕の 父の 死骸 を 病院から 實 家へ 運ぶ^ 大きい 泰の = ^が 一 つ 伎の 父の 

柩車の 上 を 照らして ゐ たこと を覺 えて ゐ る," 



お: 鬼點 



187 



にく -! とし さんぐ わつ なか くわいろ い ひさ つ. i はか i ゐ ひさ 

僕 は 今年の 三月 の^ばに まだ 懐爐を 入れた まま、 久しぶりに 妻と 墓參り をした。 久しぶりに、 

ち ひ はか もちろん はか うへ えだ の ひと かぶ あかまつ か は 

—しかし 小さい 墓 は 勿論、 墓の 上に 枝 を 仲ば した 一 株の 赤松 も變ら なかった。 

てんき ぼ く は さんにん みな や な^" ほち すみ おな せきた ふ した かれら ほむ うづ 

r 點 鬼簿」 に 加 へ た 三人 は 皆 この 谷 中の 墓地の 隅に、 —— しかも 同じ 石塔の 下に 彼等の せ を t め 

ぼく はか した しづ ぼく はは ひつぎ おろ とき おも だ えた よ つ 

てゐ る。 僕 はこの 墓の 下へ 靜 かに 僕の 母の 柩が 下された 時の こと を 思 ひ 出した。 これ は 又 r,i ち 

おな ただ ぼく もち ぼく ぼく ちち ほね しら こま くだ なか 

やん」 も 同じだった であらう。 唯 僕の 父 だけ は、 11 俊 は 僕の 父の ザが 白 じらと 細かに 碎 けた 屮 

きんば まじ お ぼ 

に 金齒の 交って ゐた のを覺 えて ゐる。 ::: 

ほく はかま ゐ この も わす f り やつ しん あね わす 

僕 は 慕 參りを 好んで はゐ ない。 若し 忘れて ゐられ ると すれば、 僕の 兩 親ゃ姊 のこと も 忘れて ゐ 

おも とく ひ にくたいてき よわ はるさき -*) ご ひ ひかり なか 

たいと 思って ゐる。 が、 特に その =1 だけ は 肉 IS 的に 弱って ゐ たせ ゐか、 莽 先の 午後の;:: の 光の 屮 

くろ せきた ふ なが いったい かれら さんにん うち たれ かう ふ,、 か ズ が 

に黑 すんだ 石塔 を 眺めながら、 一 體 彼等 三人の 中で は 誰が 幸福だった らうと 考へ たりした。 

つか そと す 

かげろ ふや 塚より 外に 住む ばかり - 

ほく じっさい とき い ちゃう さう こころ お せ ま く かん 

^は實 際 この 時 ほど、 かう 云 ふ 丈 艸の心 もちが 押し迫って 來 るの を 感じた ことはなかった。 

(大正 十五 年 九月 九 n) 



183 



ヒ ふぐ わつ あ ご n &^くら さんにん はな あ まつ なか こ ある こ 

十月の 或る 午後、 僕 等 三人 は 話し合 ひながら、 松の 中の 小 みちを 歩いて ゐた。 小み ちに は どこ 

ひと とき ふ \ まつ こすも S ひよ どり こ幺 

にも 人 かげはなかった。 ただ 時々 松の梢に 销の聲 のす る だけだった。 

しがいの たまつ 今-だい うへ いま たま つ ,> 

「ゴ オダの 死骸 を 載せた 玉突臺 だね、 あの 上で は 今でも 玉 を 突いて ゐる がね …… 」 

せ , やう か へ き はな き 

西洋から 歸 つて 來た S さん はそんな こと を 話して 聞かせた りした。 

£ くら うす-ごけ み かげい し もん * 二 とほ いし は へつ? <^ Is 

そのうちに 僕 等 は 薄 苔の ついた 御影石の 門の 前へ 通りかかつ た。 石に 嵌め こんだ 標札に は r 悠 

、う V- う か t おく いへ かや ふ や ね せいやう くわん ガ ラ ス まど 

々莊」 と 書いて あった。 が、 門の 奥に ある 家 は、 11 茅 t おき 屋根の 西洋 館 は ひっそりと 子 窓 を 

とざ &i く ひ ごろ いへ あ いぢ やく も -。 と > いに じ し, ん > 、 

鎖して ゐた。 僕 は 日. 頃 この 家に 愛着 を 持た すに は ゐられ なかった。 それ は 一 つに は 家 自身の; > 力 

せう しゃ ま た ほか くわう はいき は . け し t P : ^. 力 „ ^い 

にも 瀟洒と して ゐる ためだった。 しかし 又 その外に も 荒廢を 極めた あたりの 景色に —— び 放^ 

の に はしば み-つ ひ あが ふるいけ ふ ぜぃ お ほ 、、わ. け > . , ' 1 : 

仲び た 庭 芝 や 水の 干 上った 古池に 風情の 多いた め もない 訣 ではなかった 

^ ひと なか み 

1 r 一 つ 中へ は ひって 見る かな。」 



莊々 悠 191 



ぽく さき た もん なか しきいし はさ つ した ひめ ぢ だは あか 

僕 は 先に 立って 門の 屮へは ひった。 敷石を袂んだ松の下には姬路^^などもかすかに赤らんでゐ 

た、 し . 

べつ さう も ひと しんさいい らい こ 

「こ の^ 莊を 持って ゐる人 も. 蟹災 以來來 なくなつ たんだね。 …… 」 

くん か/が ふか げんくわん まへ はぎ め C ち てく ことば はんたい 

す る と T 君 は考へ 深さう に 玄關前 の 萩に 目をやつ た 後、 か う 僕 の 言葉に 反對 した。 

きょねん ぶ. - きょねん • ケ はぎ さ 

「いや、 去年まで は 來てゐ たんだね。 去年 ちゃんと 刈り こまな けり や、 この 萩 はかう は唤 くもん 

ぢ やない。」 

しばう へみ. たま かべつちお み しんさい とき お 

「しかし この 芝の 上 を 見 給へ。 こんなに 壁土 も 落ちて ゐる だら う。 これ は S ;、 露災の 時に 落ちた 

ままに なって ゐ るのに 遠 ひない よ。」 . 

ぼく じっさい しんさい と かへ だ げき 5 ねんせ う じつげ ふか V- うざう 

僕は實 際. 驚災 のために 取り返しの つかない 打擊を 受けた 年少の 實業家 を 想像して ゐた。 それ は 

i たき -つた ふう せいやう くわん こと ガ ラ ス. <H ど まへ う し- S ろ ば せう いくかぶ 

又木 爲の からみついた コッテ H ヂ 風の 西洋 館と 11 殊に^ 子 窓の 前に 彼 ゑた!^ 橺 やお 蕪の 幾 株 か 

てう わ ちが 

と 調和して ゐ るのに 違 ひなかった。 

くん 二し し うへ つち ひろ 、, もど ^く ことば 土ん たい 

しかしで1_^;は腰をかがめ、 芝の 上の 土 を 拾 ひながら、 もう 一度 僕の 言葉に 反對 した。 

かべつち お ゑんげ いよう ふしょくど じ やうとう ふしょくど 

「これ は 壁土の 落ちた のぢ やない。 園藝 用の 腐蝕 土 だよ。 しかも 上等な 腐蝕 土 だよ。」 



192 



ぼくら まど おろ • 力 ーフ スまど まへ たたす まど 。ふび -e: 

僕 等 はいつ か 窓 かけ を 下した 础子 窓の 前に 佇んで ゐた。 窓 かけ は、 もちろん 蠟 引だった。 

「家の 中 は 見えない かね。」 

ぽ くら はな いく ガ ラ ス まど のぞ ある まど げんちぬ いう 

僕 等 はそんな こと を 話しながら、 幾つかの 硝子 窓を观 いて 步ぃ た。 窓 かけ は どれ も嚴 蔑に r 悠 

いう v< う ないぶ かく 4^ やう どみ なみ む ガ ラ スまど か i ち うへ くすりびん に ほんな に 

々莊」 の 內部を 隠して ゐた。 が、 丁度 南に 向いた 硝子 窓の 框の 上に は藥 場が 二 本 並んで ゐた。 

「はは あ、 沃度劑 を 使って ゐ たな。 . I 」 

S さん は 僕 等 を ふり 返って 言った。 

ベ つ さう しゅじん はいび やう,、 わん じ や 

「この 刖莊の 主人 は 肺病 患者 だよ。」 

ほくら すすき ほ だ なか いうく さう うし i は み あか々. び とたん ぶキ- 

僕 等 は 芒の 穗を 出した 中 を 「悠々 莊」 の 後ろへ 廻って 見た。 そこに はもう 赤銷の ふいた 亞 鈴!!:^ の 

な や ひとむね な や なか ひと せいやう ふう つく ゑ ひと あたま うで せつ 

納屋が 一棟あった。 納屋の 中には スト ォヴ がー つ、 西洋風の 机が j つ、 それから 頭 や 腕の ない 石 

. ^う にょにん ざ う ひと こと にょにん ざう い 1 つめん ほこり i へ よこ 

膏の 女人 像が 一 つあった。 殊に その 女人 像 は 一 面に 埃に お ほ はれた まま、 スト ォヴの 前に 橫 にな 

つて ゐた。 

はい やうく わん じ や なぐさ てラ こく 

「すると その 肺病 患者 は 慰みに 彫刻で もやって ゐた のかね。」 

ゑんげ いよう あたま らん う つく ゑ 

「これ もやつ ばり 園藝 用の もの だよ。 頭へ 蘭な どを植 ゑる もので ね。 …… あの 机 や スト ォヴ もさ 



ジ 々悠 



193 



な や と ガ ーソ ン、 をん しっか は つ 1=5 

うだよ。 この 納屋 は 窓 も 硝子に なって ゐ るから、 溫{ 至の 代りに 使って ゐ たんだら う。」 

くん ことば もっと げん ち ひ つくも i へ らんく わしょく ぶつ う つか いた は 

T 君 の 曾 葉 は 尤も だ つた。 現に その 小さい 机の 上に は 蘭 科 植物 を械ゑ る のに 使 ふ コルク 板 の 破 

片も 載せて あった。 

つく ゑ あし した げっけいたい くわん 

「おや、 あの 机の 脚の 下に ヴィク トリ ァ月經 帶の纏 もころ がって ゐるピ 

さいくん ぢ よちう し 

「あれ は 細君の …… さあ、 女中の かも 知れない. よ。」 . 

く せう い 

S さん は、 ちょっと 苦笑して ひ S つた。 

かくじつ べつ さう しゅじん はいび やう ゑんげ い たつ 

「ぢゃ これ だけ は 確赏だ ね 。 !! こ の 训莊の 主人 は 肺病 になって、 それ か ら ^藝 を樂 しん で ゐ て 、 

…… 」 

きょねん し 

「それから 去年 あたり 死ん だん だ ら う。」 

くら また まつ なか いう/^ さう げんくわん ひ かへ はなす すき かぜ だ 

僕 等 は 又 松の 屮を r 悠 , 莊」 の玄關 へ 引き返した。 花 芒 は い つ か 風 立 つ てゐた . 

ぼくら す ひろす と かく ハ うち 

「俊 等の 住む には廣 過ぎる が、 11 しかし^に &: 好い^ だね。 …… 」 

くん かいだん あが ひとりごと い 

T 君 は 階段 を 上りながら、 獨 言 の やうに か う 雷 つ た 。 

い. 5 な 

「こ の ベ ル は 今でも 鳴る かしら。」 



き -った は なか わ-つか ボダン K く ボグン ざ うげ ボ,. 'ン ゆび I 

ベル は 木蔦の 葉の 中に 僅に 釦を あら はして ゐた。 僕 は そのべ ル の釦へ 11 象牙の 釦へ指 を やつ 

あ ひにくな まんいちな ぼく なに ぶきみ にど 

た。 ベル は 生憎 鳴らなかった。 が、 萬 一鳴った としたら、 11 僕 は 何 か無氣 味に なり、 二度と 押 

す氣に はならなかった。 

なん い うちな 

「何と 言った つけ、 この 家の 名 は?」 

げんくわん たたす とつぜん たれ たづ 

S さん は 玄關に 佇んだ まま、 突然 誰に ともなし に 尋ね かけた。 

いう/ ヽ さう 

「悠々 莊?」 

いう/ \ V- う 

「うん、 悠々 莊。」 

ぼくら さんにん し ^ ら あ ひだ なん こと ぱ か は ばう ぜん げんくわん たたす はう だい G にはし^^ 

僕 等 三人 は 暫くの 間、 何の 言葉 も 交さす に 茫然と 玄關に 佇んで ゐた、 伸び 放題 仲び た 庭 芝 だの 

ひ あが ふるいけ なが 

干 上つ た 古池 だ の を 眺めながら。 

(大正 十五 年 十月 二十 六 = . ^お) 



でく ,う r う かれ おも だ かれ な い い- カネ ん-/ リ • 

儍 はふと 舊 友だった 彼の こと を 忍 ひ 出した。 彼の 名前な ど は 言 はすと も奵ぃ 彼 は 叔父さんの 

, -、 で ほんが う ある いんさつや に かい ろくで ふ まぶ カリい か . だ - 

- まを屮 Z てから、 本 鄕の或 印刷屋の 二階の 六疊に 借り をして ゐた 階下の:^ 轉機 のま はり 出す 度 

ち^-ぅどこ。-ょぅき せんしつ み ぶる に かい いちかう せいと ぼく 々しゅ,、 

に- 1 度 小 蒸汽の 船室の やうに がたがた 身 震 ひ をす る 一 一階で ある。 まだ 一 高の 生徒だった 俟 は^お 

一 や „1 ん めし C ち たび に かい あそ い へ." れ ガ ラ ス まど した ひといちばい ほそ くび- 

あの^ &を すませた 後、 度た び この 二階へ 遊びに In つた。 すると 彼 は础子 窓の 下に 人一倍 細い^ 

た うん また かれ あたま うへ しんちう ふら リ は つ 

■ を 曲げながら、 いつも トランプの 運 だめし をして ゐた。 その 乂 彼の 頭の 上に は 眞鍮の 油壶の がり 

ひと まる かげ おと - 

ランプが 一 つ、 いつも 圓ぃ影 を 落して ゐた。 •::• 

^ ^-t ly~,^5 を g * へ ぽ くお な ほんじよ だいさん ちう, ムく かう か よ かれ を ち いへ 

は れ 叔父さんの 家から 僕と 同じ 本 所の 第三 中學 校へ 通って ゐた。 彼が 叔父さんの 家に ゐ 



彼 



197 



• りゃう しん ため り や-つ しん ため い ははし- 

たの は兩 親の ゐ なかった 爲 である。 兩 親の ゐなか つた 爲と 1-ム つても、 母 だけ は 死んで はゐ なかつ 

- かれ 4,- ち はは さいえん はは せ-つれん じ to-- つねつ .A ん 

たらしい。 彼 は 父よりも この 母に、 —— この どこかへ. W 緣 した 母に 少年ら しい 情熱 を 感じて ゐた) 

かれ たし あると し あき ぼく かほ み はや ども ぼ.、 于に/ 

彼 は 確か 或 年の 秋、 僕の 顏を 見る が 早 いか、 吃る やうに 僕に 話しかけた。 

ぼく ごろ ザ: ノ、 いもうと いもうと ひとり 乞し さき & 

「僕 はこの 頃 僕の 妹が (妹が 一 人あった こと は ぼんやり 覺 えて ゐ るんだ がね。) 緣づ いた 先 を^い 

て來 たんだよ。 人/度の 日曜に でも (;; : つて 見ない か?」 

-ぅ、 さっそく 力れ いつ かめ ゐ ど ちか ば すゑ ち- い かれ いもう レー えん Jtv き i てんぐ わ、 み 

僕 は 早速 彼と 一 しょに 龜井戶 に 近い 場末の 町へ 行った。 彼の 妹の 緣づ いた 先 は 存外 見つける。 

n-^ > , とこや うら むれ わ ながや いっけん しゅじ/) きんじょ こ うぢ やう な-」 

に 暇 どらなかった。 それ は 床屋の 裏にな つた 械 割り 長屋の 一軒だった。 主人 は 近所の 工場 か 何 か 

、 g い るす み ざう さく わる いへ なか あかご ち ぶ さ ふく VI 、くん かれ 

へ衝 めに 行った 留守だった と 見え、 造作の 惡ぃ 家の 中には 赤兒に 乳房 を 含ませた 細!;;;、 11 彼の 

いも」 つと ほか ひと かれ いもうと いもうと い かれ おと. M 

針 の 外に 人 かげはなかった。 彼の 妹 は 妹と 云っても、 彼よりも すっと 犬 人 じみて ゐた。 のみ 

き _ なが め じり ほか ほ とん かれ に 

ならす 切れの 長い 目尻の 外 は 殆ど 彼に 似て ゐ なかった。 

こ ども こ とし. T*^ • 

「その子 供 は 今年 生れた の?」 

きょねん 

「いいえ、 去年。」 

「:^ 婚 したの も 去年 だら う?」 



198 



を と と し さんぐ わつ 

「いいえ、 一 昨年の 三月です よ。」 , . 

かれ なに - いっしゃう けんめい はな かれ いもうと とき, 5^ あかご 

彼 は 何 かにぶ つかる やうに 一生懸命に 話しかけて ゐた。 が、 彼の 妹 は 時々 赤兒を あやしながら、 

もい そ よ おうたい ぼく ばんちゃ しぶ -ご ろ はち やわん て かって ぐん 

愛想の 善い 應對 をす る だけだった。 僕 は 番茶の 跪の ついた 五郎八 茶碗 を 乎に した まま、 勝 乎 HQ 

そと ふさ れんぐ わべ い こけ なが どうじ また . ^れら はなし ある さび かん 

外 を 塞いだ 煉瓦 街の 苔 を 眺めて ゐた。 同時に 又 ちぐはぐな 彼等の 話に 或 寂し さ を 感じて ゐた。 

にい ひと 

「兄さん は どんな 人?」 

ひと ほんよ す 

「どんな 人って …… やつば り 本を讀 むの が 好きなん です よ。」 

ほん . 

「どんな 本 を?」 - 

かう だん ぼん なに 

「講談 本 や 何 かです けれども。」 

じつ さ い いへ まど した ふる づ く- 么 ひと す ふる-つく, うへ なん V. つ ほん かう だんばん 

實際 その 家の 窓の 下に は 古 机が 一 っ据 ゑて あった。 古 机の 上に は何册 かの 本 も、 11 講 談本な 

つ ぼく き おく あいにく ほん C こ ただば く ふでた なか 

ども 載って ゐた であらう。 しかし 僕の 記憶に は 生憎 本の こと は殘 つて ゐ ない。 唯 僕 は 筆立ての 巾 

くじゃく はね に ほん あぞ-や ざ おば 

に 孔雀の 羽根が 一 一本ば かり 鮮 かに 摘し て あつたの を覺ぇ て ゐ る 。 

また. 1 グュ」 ノ、 にい 

「ぢゃ 又 遊びに 來る。 兄さんに よろしく。」 

れ いもうと あ ひか はらす あかご ち ぶ さ ふく ^くら あいつつ 

彼の 妹 は 不相變 赤兒に 乳房 を 含ませた まま、 しとやかに 勢に 挨 1^ した. - 



"^い 

ひ 
A あ 

门 li 
せ 

た 
や 
ラ 

少す 

し 

も 
そ 
の 
5|( 人き 

も 
ち 
を 

口 4 

し 
な 



9 「さやう です か? では^さん によろ しく.」 どうもお 下駄 も 直しませんで。」 

1 ザ、 マら, ひ くれ ちか ほんじよ まち ある い かれ ± じ あよ かお 、- ?.. 'と ここち '0 

伎 等 はもう 日の 暮に 近い 本 所の 町 を步ぃ て (n つた。 彼 も 始めて! i を AE せた * の t 妹の 心; P ちに 失 

ばう ちが ぼくら 

望して ゐ るのに 違 ひなかった。 が、 僕 等 は 

. ゝ ^ソ/ J^. ぶ^ かれ ただみち そ けんにん じ がき ゆび ふ 

彼 は 11 僕 は 未だに 覺 えて ゐる。 彼 は 唯 道に 沿うた 建 仁 寺お-に 指 を觸れ ながら、 こんな こと, J 

僕に ずった だけだった。 

ある めう ゆび ふる く 

1 力う やつ て すん すん 步. > てゐ ると, に 指が 變 へ る もんだ ね。 まるで ェ レ キ でも かかって 來る 

やう だ。」 



三 

かれ ちう がく そつげ ふ いちかう し けん う あ > にくら く 1 こ 1 t . ; 

彼 は 中學を 卒業して から、 一高の 試驗を 受ける ことにした。 が、 生|5サ,^|^^した。 彼が あの ぼ 刷 

や, に 力 I" i * ど. T じ また ま、 a ^ i»-> 

屋の 二階に 問 借り を はじめた の は それから である。 同時に 又 マルクス や H ン ゲル スの 14 にき, 巾し 

, / ぼく もちろん しゃく わいく わがく なん ち しき も し し 

はじめた の も それから である。 僕 は 勿論 社 會科學 に 何の 知識 も 持って ゐ なかった。 が、 资:^ だの 

"1; 一く しゅ い ことば ある そんけい い あるきよう-ふ かん かれ ,よう. A り よう や,、, 

搾取 だのと 云 ふ 言葉に 或 尊敬 —— と 云 ふよりも 或 恐怖 を 感じて ゐた C 彼 は その St を 利用し、 , 使 



たび 僕 を 論難した。 ヴ H ルレ H ン、 ラム ポオ 、ポオ ドレ H ル、 . I それ 等の 詩人 は 時の 僕に は 

ケ つ ざう ぃヒ やう ぐう ざう かれ あ へん せいざう しゃ ほか 

偶像 以上の 偶像だった。 が、 彼に は ハツ シッ シュゃ 膽片の 製造者に 外なら なかった。 

ぼくら ぎ ろん い.? ェ み まとん ぎ ろん ぼくら ほんき 

僕 等の 議論 は 今にな つて 見る と、 殆ど 議論に はならない ものだった。 しかし 僕 等 は 本 になつ 

たが ひ はんばく く は あ ただ ぽ くら とも ひとり い い くわ せいと ぽく 

て 互に 反駁 を 加へ 合って ゐた。 唯 僕 等の 友 だち の 一人、 11 K と 云ふ醫 科の 生徒 だけ はいつ も 伐 

等 を 冷評して ゐた。 

ぎろん ゝゝ It ノゝ いつ す さき こ . 

「そんな 議論に むきになって ゐ るよりも 僕と 一 しょに 洲崎 へ でも 來 いよ \i 

ほくら み く わら い f もちろん ないしん す vf- なん- 

K は 僕 等 を 見比べながら、 にゃにゃ 笑って かう 言ったり した。 僕 は 勿論 內 心で は洲 崎へ でも 佝 

ゆ . ^れ てう ビん じつ V. に. てラ ぜん い ほか けいよう で 今 たいど 

でも 行きたかった。 けれども 彼 は 超然と (それ は實際 「超然」 と 云 ふ 外に は 形容の 出来ない 

<i こと *- 一 と あ とキ せんて 

つた。) ゴル、 デン • バット を銜 へた まま、 K の 言葉に 取り合はなかった。 のみなら す 時 々は 先^ を 

う ほこさき くじ 

打って K の 鋒 先 を 挫きな どした。 

かくめい しゃく わいて き い 

「^命と はつ まり 社會 的な メ ン ス ッラチ オン,. こーェ ふこと だね、 …… 」 

ん-れ よくねん しちぐ わつ を かや ろく.^ う に ふがく かれこれ はんとし も. -と .5- れ かう ふ/、 

彼 は 翌年の 七月に は 岡 山の 六 高へ 人學 した。 それから 彼是 牛 年ば かり は:: 取 も 「がに は 幸;, だった: 



2 ので あらう。 彼 は is えす 乎 紙 を 書いて は 彼の 近狀を 報告して よこした。 (その 紙 はいつ も 彼の 讀 



ノ,. -2 ^"わ 4. くわ. がく 4- ん な れっき かれ た せ-つ??、 た 

m ん,^ 社/ゆ-^ 學の 本の名 を ノ 記して ゐ た。) しかし 彼の ゐ ない こと は^ 少 に はもの ni- ら なかった。 

僕 は K と 鲈ふ鹧 に^お^の 嘆 iij した。 K も、 ——^は^に§^:5も|^^^§^^|^^に5^^^|; 

味 を 感じて ゐた。 

「あいつ はどう 考 へても、 永遠に 子供で ゐる やつ だね。 しかし ああ;. K ふ あぜの § にが」 しも ホモ 

• ェ 口 ティッシュ な氣を 起させな いだら う。 あれ は, I 體,. どう i ェふ訣 かしら?」 

ゝ 「しゅ ノ、 しゃ ガ 7 ス, H ど うし まじめ つ r : > : . 

K は 寄 {作 舍の说 子 窓 を 後ろに 眞 面目に こんな こと を 尋ねたり した、 敷 島の を 一 つ 、、つつ ^胎 に 

輪に して は 吐き出しながら。 

•「 二,, ろく 力つ のち いちねん . ひやう こん つ」 -r 、 、 、 、 

彼 は 六 高へ は ひった 後、 一年と たたぬ うちに 病人と なり、 叔父さん のまへ 歸る やうに なった、. * 

びべ うめい たし じん ざつけ つかく H く と チ-ふ \ も -し し: ト-: ヽ r 」 、 

病名 は 確かに 腎臟 結核だった。 僕 は 時 々ビスケット など を 持ち、 ^のゐる^^^ぎまへ?1£|ひに〔仃 

I - かれ とこ うへ ほそ "ざ だ tV んぐ ゎノ、 り./、 んっ .?-< V 、ノ、 、 4, 

つた 彼 はいつ も 床の I: に 細い 膝 を 抱いた まま、 存外 快 潤に 「話したり した。 しかし 使 は 部屋の 

隅に M 近いた 便器 を 眺めす に は ゐられ なかった。 それ は 大抵 础 子の 中に ぎらぎら する: を || かし 



たもの だった。 

、 からだ だ め たうて いらう つフ、 せいく わつ で き 

「かう 云 ふ體ぢ やもう 駄 Rr だよ。 到底 牢獄 生活 も出來 さう もない しね」 

かれ い くせう 

彼 はかう 言って 苦笑す るの だった。 

しゃしん み たくま からだ 

「バ ク 二 ィ ン など は 寫眞で 見ても、 逞しい 體 をして ゐ るから な あ 」 

しかし^飢を2|^るものはまだ<^|然なぃ訣ではなかった。 それ は 叔父さんの 娘 に^する、 極めて 

だった。 &は 彼の 戀愛を 僕に も 一度 も 話した ことはなかった。 が、 或 日の 午後、 i 

ある はなぐ も くも -ご ご ぼく とつぜん かれ くち., かれ め や r , ノニ o ^^^^ ヽ r- 、か.^ ノ 

或 花!^ やりに 暴った 午後、 僕 は 突然 彼の 口から 彼の 静愛を 打ち明けられた 突》 飞 レゃ せし 

とつぜん ぼ; せいねん かれ いと-に み, „ と, で > 、 t5 ..s "^卩 7 : P づ h 

も 突然ではなかった。 僕 は あらゆる 靑 年の やうに 彼の 從妹を 見かけた 時から 佤カ 彼の^ 吸に ffi- リ, 1 

を 持って ゐ たのだった。 

.> V- 1 ま V- くんう れ "ぢぅ を * ヒ ま." り ,、く つたな にげ み よ 

「美 代ち やん は今學 校の 連中と 小 田 原へ 行つ てゐ るんだ がね、 僕 はこの ii 何氣 なしに 美 代ち やん 

に つ き よ み 

の 曰 記 を 讀んで 見たん だ。 …… 」 

sf/ な-. た せう hi 。せう く は もちろんな に い .^才 > さ-ほ ^ ) 

俊 はこの 「何, なしに」 に 多少の 冷笑 を 加へ たかった。 が、 勿論 何も 言 はすに 彼の 話の先 を つ 

2 

2 てゐ た。 



でんしゃ なか し あ ひ だいがくせ、. 

^ 「すると 一 ま 車の 中で 知り合に なった 大學 生の ことが 書いて あるんだ よ o」 

2 

「それで?」 • 

1 ノ、 ぜ- く みよ ち うこく おも 

「そわで 僕 は 美 代 ちゃんに 忠告しょう かと 思って ゐ るんだ がね。 …… 一 

M リ、、 -/ くち . ^パ ; ひひ やう く は 

仪: S とうとう 口 を JJ らし こんな 批評 を 加へ てし まった。 

「それ は 矛盾して ゐるぢ やない か? 君 は 美が ちゃん を § しても 1" い、 IK^ ちゃん はぎ::^ を § ^いし 

て はならん、 11 そんな 理窟 はあり はしない よ。 嗎 みのき もちと してなら ば、 それは.^まが,^|だ 

けれども。」 

力. V あ.^; ら パ くわい まく こヒ SH な こ ,ボ く +- 

彼 は 明かに 不快ら しかった。 が、 俊の 言 紫に は 何 を^へ なかった〕 それから、 11 それ 

から 化 を, 15;^ したので あらう? 僕 は 唯 僕 自身 も不 おにな つたこと を きぼ えて ゐる。 それ llgpf:;^ 

の 彼 を 不快に した ことに 戰 する 不快だった。 

「ぢゃ 僕 は 4 敬す るよ。」 

「ああ、 ぢゃ 失敬。」 . 

^ . ^ォ うな-つ C ち き がる く. H 

彼 はちよ つと 額いた 後、 わざとら しく!: 艰輕 につけ 加ノ /た。 、- 



「rl か « を It て くれない か? 今度 君が 來る 時で 善い から。」 

ほん 

「どんな 本 を?」 . . 

てんさい で^き なに い 

「天才の 傳記か 何 かが 善い。」 

「ぢ ゃジ アン • クリストフ を 持って 來 ようか?」 

たん わう. い ほん い 

「ああ、 何でも 旺盛な 本が 善い。」 

i は P に i いき i£ ち、 聽ぢの S れ たぎ 窗は紀 製 も 

§5 おせなかった。 sk は 解ぎ いず 燈の 下に 獨逸 文法 を. 復習した。 しかし どうも 失, した 彼に、 —1 

たと ひ站 i したに もせよ、 &に さんの 娘の ある 彼に 羨^ を 感じて ならなかった。 

^はtewi^l-のs^ で輕 i する ことにな つた。 それは^?^とは_^^ふものの、 大抵 は 病院 

に ずらす ものだった。 1^ は の お^み を WW し、 はるばる « を ね て^った) 彼の 病室 は =當 

, りの 1" い、 ぎき^ K の? i る づ^だった。 は ベッドに 斷 かけた まま、 相變 一: 几 (あに 笑 ひた どした。 



、 7ノ~? ^、や 5 ,7 ノゃ くわい.::; わがく ほ とん ひとこと はな 

^ 力 文 蜜 や 社 會私學 のこと は 殆ど 一 言 も 話さなかった。 

L ,- 化, ゆ: 5- き み たび めう どうじ やう -'、 .1 , 

1 僕 は あの 棕根の 木 を 見る度に 妙に 同情した くな るんだ がね。 そら,、 あのに-の 紫つ ばが がに てゐ 

る だら う。 . —— 」 

棕橺の 木 はつい- g 子 窓の 外に:^ 末の I- を!^ かせて ゐた。 その I- は;^ お 黥, 4 ら ぎながら、 M か 

さ は さ 今, r^、 ほ とん しんけいて さ ふる * ン - £ 二」 

に^けた 葉の 先々 を 殆ど 神經 的に^ はせ て ゐたレ それ は lilsw ぎビ もの i れを ずび たものに i 

ひなかった。 が、 僕 はこの 病 望に たった" 一と^ j| して, ゐ る^の こと を^〉、 Iz^ る だけ^ I- に y ず 

をした。 

l^h なに うみ しゅろ 

「, 節いて ゐ るね。 何 をく よくよ 海べ の踪橺 はさ。 」 

「それから?」 

「それでもう おしま ひだよ。」 

「何 だつ まらない。」 

ぼく い たいわ うち > .> i 

僕 はかう 云ふ對 話の 中に だんだん 息苦し さ を §1 じす 3 した。 

^ よ 

1 「ジ アン. クリストフ ま廣 ん!. こか 、 ? 」 



す こ よ 

「ああ、 少し 讀ん だけれ ども、 …… 」 

r 讀み つづける 氣に はならなかった の?」 

わう せ い 

「どうも あれ は 旺盛す ぎて ね。」 

ぼく いちど いっしゃう けんめい しづ が はなし ひ もど 

僕 はもう 一 度 一 生 懸命に 沈み 勝ちな 話 を 引き 戾 した。 

あ ひだ みま き 

「こ の 間 K が 見舞 ひに 来たって ね。」 , 

ひがへ き せいたい かいばう はなし なにい ) 

「ああ、 日歸 りで やって 來 たよ。 生體 解剖の 話 や 何 かして 行った つけ。」 

「不愉快な やつ だね。」 , 

「どうして ?」 

「どうしてつ てこと もない けれども。 」 - 

ぼくら ゆ ふ はな ち +T やう どか! y お さい は か いがん さん ぼ で >. ' .t^ い,, ノ 

僕 等 は 夕 就 をす ませた 後、 丁度 風の 落ちた の を 幸 ひ、 海岸へ 散歩に 出かける ことにした。 太 El 

し-つ あか ぼくら ひく ま つ は さ 今-う しゃめん --し 

はとうに 沈んで ゐた。 しかし まだ あたり は 明るかった。 僕 等 は 低い 松の 生えた 砂丘の 斜面に 腰 を 

,つみす ナめ に さんば と み はな, ぁヽ 

おろし、 海^^のニ三羽飛んでゐるのを見ながら、 いろいろ のこと を 話し合った。 

c3 すな つめ ていみ たま 

2 「この 砂 はこん なに 冷たいだ らう。 けれども すっと 手 を 入れて 見 給へ。」 



彼 



207 



ほく かれ ことば とほ こ-つぼ ふ.,;: ぎ か が な な, S- かたて さ み • 

伎 は 彼の 言葉の 通り、 弘法 麥の 枯れ 枯れに なった 砂の 中へ 片手 を 差し こんで 見た。 すると そこ 

たいやう ねつ のこ 

に は 太陽の 熱が まだ かすかに 殘 ってゐ た。 

「うん、 ちょっと 氣 味が 惡 いね。 夜に なっても やつば り溫 いかしら。」 

「何、 すぐに 冷たくな つてし まふ。」 

ぼン、 . いたい わお ぼ ぼくら はんち やう お; か くろ なご 

僕 は なぜか はっきり とかう 云ふ對 話を覺 えて ゐる。 それから 僕 等の 半 町 ほど 向う に黑 ぐろ と 和 

んでゐ た 太平洋 も。 …… 

し し き ちゃう どよ くと し きうし やろ ぐ わつ なし のち T 上な もし • 、や -リ,5 し 

彼の 死んだ 知らせ を 聞いた の は 丁度 翌年の 舊正: :!: だった。 何でも 後に 附 いた^に よればぎ K の 

^ しゃ ハんご ふ きうし やうぐ わつ いは ためよ ふ かる たく わい V お わ れ、, - 

醫^ や 看護婦た ちは舊 正月 を 祝 ふ爲に 夜更けまで 歌留多 會を つづけて ゐた。 彼 は その. 騷 ぎに 眠ら 

ノ t 力, うへ よこ ご ゑ れら しか どつ L ど 、 J- く T 

れな いの を 怒り、 ベッドの 上に 横た はった まま、 お ほ 整に 彼等 を 叱りつ けた、 と:! I: 時に 丸-格^ を 

Z * , し. - い ぼく くろ わく いちまい は が々; なが とき か iH 

し すぐに 死んだ とか 云 ふこと だった レ僕 は黑ぃ 枠の ついた 一枚の 葉書 を 眺めた ゆ、 悲し さより 

も 寧ろ はかな さ を 感じた。 



00 

2 



-s^^ だの したる SI は^^と^に i- き て銜. 5^ ども、 iftl^^y より 御贷與 のま 籍も その 

を さも ふせつ あしから ゆ ゆ, リ /、だ リ もに、, さ 4" - 

巾に まじり 居り 候 節は不 せ-御 赦し 下され 度 候」 



力 



れま その Ife の 隅に 肉筆て 書いて ある 文句だった) 儍 はかう 云 ふ 文句 を讀 み、 柯冊 かの 本 

If つ あち 俨? i を した。 Ms それ is¥ のおに はいつ &が S に r たジ アン -ク 

': .」 二つ たう じ . ^んし やう ご々 - ほく めう しゃう 

ス卜フ の^い 一つ まじつ て ゐ るの に 11 ひなかった) こ の 事實は 常時の 感傷的た 僕に は 妙に 象 

ちょう き 

徵 らし ぃ氣 のす る も の だ つ た。 

fj ろく: ち のち - ほく ぐうぜんお あ - . ?、 \ノ ? I C - 、ーヽ rr^ ま,、" に 、一 二 

そ i:- からお 1 ハ日 たつ た 後、 僕 は 偶然 落ち合 つた K と 彼の こ と を 話し合 つ た K は Nr4F€.x:.^;/. 

して ゐ たのみなら す、 i! 煙草 を銜 へた まま、 こんな こと を 僕に 尊ね たりした。 

をん な し -., . - 

「X は 女 を 知って ゐ たかしら?」 

「さあ、 どう だか 」 

まく うた ぼく かほ なか - - D 

K は 僕 を 疑 ふやう にぢ つと 僕の 顔 を 眺めて ゐた 

1 まあ、 それ はどうで も i い。 …… しかし X が 4; んで 見る と、 何 か 君 は 勝利者ら しい、 ももち も 起 

つて 來 はしない か?」 • 



彼 



209 



でく しゅんじ ゆん う れ じ しん とひ へんじ 

僕 はちよ つと 逡 巡した。 すると K は 打ち切る やうに 彼 自身の 問に 返; 3^ をし た " 

タ くな ぼく ケ 

r 少 くと も 僕 はそんな 氣 がする ね。」 

僕 は それ 來 K に會 ふ こ と に 多少 の 不安 を感す る やうに な つ た 

(大正 リ Hi 年 十一月 十三::!) 



210 

I 



212 



t は 若い 愛蘭 土人だった。 彼の 名前な ど はず はすと も 4? い。 僕 は 唯 彼の 友 だち だった。 彼の 

Is とさん は 僕の こと を 未だに ま y ^M.C^-SM.^X best frieml と 書いたり して ゐる。 , 僕 は 彼と 初對面 

の 時、 何 か 前に も &の顏 を 見た ことの ある やうな 心 もちが した。 いや、 彼の 顔ば かりで はない。 

その 111- の カミンに 燃えて ゐる火 も、 火 かげの 映った 桃花 心 木の 椅子 も、 カミンの 上の プラト 才 

ン お g も 確か に 見た こ と の ある やうな 架が した。 この f ち は 乂 彼と 話し て ゐ る う ちに だんだん 

g まって^る ばかりだった C 僕はぃ っかかぅ.!^ ふ光景-ば五六年:;はの夢の屮にも:3-たことがぁった 

と II ふやう になった。 しかし 勿論 そんな こと は 一度 も 口に 出した ことはなかった。 彼 は 敷.! を ふ 

t が V - う ゼ く" v< くら あ ひ だ おこ アイ ル ラ ン ド さく. A はなし ,^ 

かし 乍ら、 當然僕 等 の 間に 起る 愛蘭 土の 作家た ち の 話 をして ゐた。 

「I detest wernal.d sllaw.」 



3 



僕, 
は 
彼ォ 力; 
が 
傍 ま 
や 

m. 
力、 

5 

*^チ い 

つ 
た 

乙 
を 

m お 
"^ぼ 

免 

ゐ 
る 



そ 
れ 
は 



かぞ どし に じ ュ- ご 

とも 數へ 年に すれば、 二十 五に. 

なった 冬の ことだった。 …… 

二 

僕 等 は 金の H 面 をして は カツ フ H やお 茶屋へ 屮 Z 入した。 彼 は 伎よりも 三 割が た 雄の 特ぎ を":!. へ 

ある こなゆき はげ よる 《,..o すみ ij つ -- . 

てゐ た。 或 粉雪の 烈しい 夜、 僕 等 は カツ フ H • パウリ スタ の^の テ H ブルに や 一って ゐた。 その 顷 

— ちう あ _ う いもだい はくどう ひと い おんがく き 

の カツ フ H • パウリ スタ は屮央 にグラ ノフォ ン がー 臺 あり、 白銅 を 一つ 入れさ へ すれ、. n 昔 樂の M 

, せつび よ ぼくら はなし ほと C *H ん そう た 

力れ る 設備 になって ゐた。 その 夜 も グラノ フォン は 僕 等の 話に 殆ど 伴奏 を |g つたこ と は な か つ 

た。 、 

キ ふじ つうやく たま たれ ご ij/ 、だ たび ぼ: じつせ 

「ちょっと あの 給 什に 通譯 して くれ 給へ。 . I 誰でも 五錢 出す 度に 僕 はきつ とト錢 出す から、 グ 

ラノ フォン の 鳴る の を やめさせて くれって。」 

たの だいいちた にん 乂-- おんがく ぜ に -t? 、しゅ 

「そんな こと は賴 まれない よ。 第 一 他人の 聞きたがって ゐ る昔樂 を錢づ くで やめさせ るの は 惡趣 

彼 味ぢ やない か?」 



214 



たにんき おんがく S き-, . I . 

「それぢゃ他人の聞きたがらなぃ音樂を金、っくで聞かせるのも.^^^赶味たょ 」 

ちゃう ど とき しあ は おとた たち ま とりうち ばう > 

グラノ フォン は 丁度 この 時に 仕 合せとば つたり 音 を 絶って しまった。 が、 忽ち. ii| れ幅を 力ぶ つ 

がくせい をと こ ひとり はくどう い た い かれ こし もや 、- け, や i , . . ^ん 

た、 學 生らし い 男が 一 人、 白銅 を 入れに 立って 行った。 すると 彼 は 腰 を 擦げ るが or い 力 ダム,^ 

とかず ひながら、 クル ゥ H ット スタ ンドを 投げつ けようと した。 

「よせよ。 そんな 莫迴な こと をす るの は。」 

ぽく か L ひ こなゆき わう らい で なに こうふん き 

僕 は歡を 引きす る やうに し、 粉雪の ふる 往來へ 出る ことにした。 しかし 何 か 興奮した 氣 もち は 

t< く ぜんぜん わけ ぽくら うで く かさ ある I I 

僕に も 全然ない 訣 ではなかった。 僕 等 は 腕 を 組みながら、 傘 もさ さすに 步 いて 行った 

ぼく -. - ゆき ばん ある ゆ ,,- 、あ, f I お ^ , , -」 

「僕 はかう 云 ふ 雪の 晚 など は どこまでも 步ぃ て 行きた くな るんだ ど こまで も 足の^く 力 きりは 

…… 」 

かれ まと しか ぼく 二と, ふ ちう だん 

彼 は 殆んど 叱りつ ける やうに 僕の 言葉 を中斷 した。 

ある ゆ ^く ある ゆ ある 

「ぢ やな ぜ步ぃ て 行かな いんだ? 僕な ど は どこまでも 歩い て 行 きたく なれば、 どこまでも 歩い 

て 行く ことにして ゐ る。」 

あま 

「それ は 餘りロ マ ンテ イツ ク だに 



わる ある ゆ おも ある ゆ いく 

5 ra マン ティ ック なのが どこが 惡ぃ? 歩いて 行きたい と 思 ひながら、 步 いて 行かな いのは 意氣 

2 ぢ とうし なん 4^ る み 

地な しばかり だ。 凍死しても 何でも 歩いて 見ろ。 …… 」 

かれ とつぜんく てう か ぼく こ ゑ 

彼 は 突然 口調 を變へ wrother と 僕に 聲を かけた。 

ぼ V、 ほん-ごく せいふ ヒ ゆうぐん い でんばう う 

「僕 はきの ふ 本國の 政府へ 從 軍したい と 云 ふ 電報 を 打つ たんだよ。」 

「それで?」 

「まだ 何とも 返事 は來 ない。」 

ぼくら けう ぶんくわん かざ まど まへ とほ なか ガラス ゆき でんとう あか か r、 

僕 等 はいつ か敎文 館の 飾り窓の 前へ 通りかかった。 半ば 砲 子に 雪の つもった、 雷^の 明るい 飾 

まど なか どく ガ ス しゃしんばん はじ せん さう なん さつ なら ほくら うで く 

り 窓の 中には タンク や 毒 瓦斯の 寫眞版 を 始め、 戰爭 ものが 何册も 並んで ゐた。 僕 等 は 腕 を 組んだ 

まま、 ちょっと この 飾り窓の 前に 立ち止まった。 

「Above the w-al, Romain liolland 」 

「ふむ、 僕 等に は above ぢ やない。」 

かれ めう へう じ やう ちゃう ど をん どり くび は ね V」 かお に 

彼 は 妙な 表情 をした。 それ は 丁度 雄鶏が 頸の 羽根 を 逆立てる のに 似た ものだった。 

なに ぼくら せん さう 

e 「& オランな どに 问が わかる? 僕 等 は 戰爭の amidst にゐ るんだ。」 



216 



,ト てヅ 卜い ふし— てきい も卞- ろん- ii: つつ せ つ したが ぱ, ゝ かれ - -とズ た せう は/かん ;ク? 

獨 逸に 對 する 彼の 敵意 は 勿論 僕に は 痛切ではなかった。 從 つて 僕 は 彼の 言葉に 多少の 反感の 起 

かん どうじ また,^ ひ V- く かん 

る の を 感じた。 同時に 又醉 の 醒め て來る の も 感じ た . 

「僕 はもう 歸 る。」 

ぼく 

「さう か? ぢゃ僕 は …… 」 

. ^い- ん じょ しづ j5 

「どこか こ の 近所 へ 沈んで 行: t よ。」 

;^; くら ちゃ- T どき やうば し ぎ ぼ し まへ たた-下 ひとけ ぶ J だい 二/ * 力 し ゆき 力 

等 は :1 度 京 橋 の 擬費珠 の 前 に 佇んで ゐ た。 人氣 の な い 夜更け の 大根 河岸 に は Si のつ もった 枯 

やなぎ ひと かぶ くろ よど ほり わ みづ えだ た 

れ 柳が 一 株、 黑ぐ ろと 殿んだ 掘 割りの 水へ 枝 を 垂らして ゐる ばかりだった。 

「::! 本 だね、 免に 角 かう 云 ふ 景色 は。」 

彼 は 僕と 別れる 前に しみじみ こんな こと をず つた ものだった。 



かれ あいに,、 考 ばう ど そ- じゅう ケ、 ん て き いちど うへ のち に V.-Ncij ん 

彼 は 生憎 希望 通, りに 從軍 する こと は出來 なかった。 が、 一度 ロンドンへ $1 つた 後、 二三 年ぶり 

*r〉 r ゲ么 くら すくな ^く しゅ ギ- うしな 

に 日 「小に 住む ことにな つた。 しかし 僕 等 は、 —— 少 くと も^はいつ かもう 口 マ ン 主義た 失って ね 



もっと に さんねん かれ へん,、 わ わ!;: ^ a あるし ろうと f しゅく に かい おまし *^ おリ 

7 た。 t もこの 二三 年 は 彼に も變 化の ない 訣 ではなかった。 彼 は 或 素人. 下お の 二階に 鳥 の 1^ 織 や 

着物 を 着、 手 あぶりに 手 を かざした まま、 かう. ベム ふ 痴 など を 洩らして ゐた。 

に ほん ァズ リカ くわ f: とキ、 み、 に ほん フ 1 フン ス す も 

「日本 も だんだん 亞米利 加 化する ね。 僕 は 時々 日本よりも! t 蘭 西に 住まう かと 思 ふこと が ある。」 

たれ ぐ わい こくじん いちど げんめつ ばんねん 

「それ は 誰でも 外國人 はいつ か 一度 は 幻滅す るね。 へ ルンで も 晩年 はさう だつ たんだら う。」 

ぼく げんめつ も よす 

「いや, 伎 はえ 滅 したん ぢ やない。 illusion を 持たない ものに disillusion の ある 苦 はない から 

ね。」 , 

「そんな. こと は 空論 ぢ やない か? 僕た ど は 僕 自身に さ へ、 —— 未だに illusicll を はって ゐるだ 

らう.. に ュ 

「それ はさう かも 知れない がね。 …… 」 

かれう かほ くも たかだい け しき ガ ーソ スど つ なが 

彼 は 浮かない をしながら、 どんより ときった 高薹の 景色 を^ 子 戶 越しに 眺めて ゐた。 

「僕 は 近々 上海の 通信員になる かも 知れない。」 

かれ 二とば とっさ あ ひだ ぼく わす >れ しょ: げふ おも だ ぼく .^-れ 

彼の 言葉 は 咄嗟の 間にい つか 僕の 忘れて ゐた 彼の 職業 を 思 ひ 出させた" 僕 はいつ も 彼の こと を 

. -乂 だげ いじ § つて キ- き しつ も ぼくら ひヒ り かんが かれ , いしょく うへ あ, えい! しん ふ/、 ヰ しゃ 

t 唯藝術 的な I 湫質を 持った 僕 等の 一 人に 考 へて ゐた。 しかし 彼 は 衣食す る 上に は 或 英字新聞の. お 者 



218 



リレー ぼく い げいじゅつか だつ ふ. 、やくで き みせ かんが つと はなし あか 

を 勤めて ゐる のだった。 僕 はどう 云 ふ 藝術家 も脫却 出来ない 「店」 を考 へ、 努めて 話 を 明るく しょ 

うとした。 

シャン ハイ とうき や-つ おもしろ 

「上海 は 東京よりも 面白いだ らう。」 . 

「僕 もさう 思って ゐる がね。 しかし その 前にもう 一度 口 ン ドン へ 1& つて 來 なければ ならない。 … 

とな きみ み 

…時に これ を 君に 見せた かしら?」 

かれ つく- ひキ- だし しろ ぴ ろ う ど はこ だ はこ なか ほそ ゆびわ 

彼 は 机の 抽斗から 白い 天鵞絨の 筐を 出した。 筐の 中には ひって ゐ るの は 細い ブラ ティナ の 指^ 

• ぼく ゅブゎ て み うちが は ほ ももこ い じ も i わけ 

だった。 iK は その 指環 を 手に とって 見、 內 側に 雕 つて ある 「桃 子へ」 と 云 ふ 字に 顿笑 まない 訣には 

ゆ 

1 丁ゝ u 、フこ 

It 力な 力 V 人 

ぼく ももこ した ぼく な い ちう もん 

「僕 は その 「桃 子へ」 の 下に 僕の 名 を 人れ る やうに 註文し たんだ けれど。」 

あるひ しょくにん ま ちが し また あるひ しょくにん あ ひて をん な しゃう ぼい 

それ は 或は 職人の 間違 ひだった かも 知れなかった。 しかし 又 或は その 職人が 相手の 女の 商 _ を 

んが こと さ ぐ わ, こくじん なまへ い お し ァク、 *: 一 

考へ、 故ら に外國 人の 名前な ど は 入れす に 置いた かも 知れなかった。 僕 はそんな こと をハ湫 にしな 

かれ どうじ やう むし さ、 rs かん 

い 彼に 同情よりも 寧ろ 寂し さ を 感じた。 

「この頃 は どこ へ つて ゐ るんだ い?」 



彼 



219 



やな.! ni ばし み. T おと きこ 

「柳 橋 だよ。 あすこ は 水の 音が 聞え るから ね。」 

とうき やう じん ぽく めう き どく ことば か^; ま げん キ」 か は 

これ もや はり 東京 人の 僕に は 妙に 氣の 毒な 言葉だった。 しかし 彼 はいつ の 問に か 元ぐ 乎ら しい 顏 

いろ へ かれ た あいどく に ほんぶん がく はなし だ 

色に 返り、. 彼の 絶えす 愛讀し てゐる 日本 文學 の 話な ど をし 出した。 

あ ひだた に IT- きじゅんい ちらう あくま い せう せつ よ おそ せ かい V う いちばん きたな か. 

「この間 谷 崎 潤 一 郞の 『惡 魔』 と 云 ふ 小說を 請んだ がね、 あれ は 恐らく 世界中で 一 桥汚 いこと を 直 DI 

いた 小說 だら う。」 

なんか げっ のち ぼく なに はなし ついで あくま VJ く か かれ こと. は はな さく か、 

(何箇月 かたった 後、 僕 は 何 かの 話. の 次 手に 『惡 魔』 の 作家に 彼の 首 葉 を 話した。 すると この 作家 

わら む ざ うさ ^く い せ かいいち なん い , 

は 笑 ひながら、 無造作に 僕に かう 言 ふの だった」 —— 界 一 ならば 何でも 好い。」!」 

「『虞美人草』 は?」 

ぼく に ほんな だめ めし あ 

「あれ は 僕の 日本語 ぢゃ 駄目 だ。 …… け ふ は 飯ぐ らゐ はっき 合へ るかね?」 

「うん、 僕 も そのつ もりで 來たん だ。」 

「ぢ やちょつ と 待って くれ。 そこに 雜 誌が 叫 五 傲 あるから。」 

.f- れ くちぶえ ふ . さつ そて やう ふく き か だ ぼく かれ せ む や: ス ぜん 

彼 は 口笛 を 吹きながら、 早速 洋服に 着換へ 出した" 僕 は 彼に 背 を 向けた まま、 Fl^ 然と ブック , 

o^r かれ くちぶえ あ ま とつぜんみ じか わら 一 ごる "~ も に ほん ご ぼく 

マンな どを舰 いて ゐた。 すると 彼 は 口笛の 合 ひ 問に 突然 短い 笑ひ聲 を^ら し、 =本;^|1でかぅ俊に 



れな 

lliS し 力 H た 

ぽ,、 すわ で & 

「僕 はもう きちり と 坐る ことが 出來 るよ。 けれども ズボ ンが イタ マ シィ です ね o」 

K: ... いつ 1 ぶ あ シャン ハイ ある かれ はんとし てんねんとう かか 

僕が 最後に 彼に 八 II つたの は 上海の 或 カツ フ H だった。 (彼 は それから 半年 ほど 後、 天然お に 催つ. 

し ぼくら あか るりとう した たんさん まへ さ いう 

て 死んで しまった。) 僕 等 は 明るい 瑠璃 燈の 下に ゥヰ ス キイ 炭酸 を 前にした まま、 左右の テ ヱ ブル 

むらが ほぜい なんに- -S なが かれら に さんにん しな じん G ぞ たいてい アメリカじん ロシア 

に 群った 大勢の 男女 を 眺めて ゐた。 彼等 は 二三 人の 支那 人 を 除けば、 大抵 は 亜米利加 人 か 露: 

じん なか せいじ いろ をん な ひとり たれ 二う ふん 

人だった。 が、 その 中に 靑磁 色の ガウン を ひっかけた 女が 一人、 誰よりも 興 蜜して しゃべって ゐ 

か c;^' よ からだ や たれ うつく か ほ ぼ 二 か c, ちょ み とキ- ォ いみ h 

た G 彼女 は體 こそ 瘦 せて ゐ たもの の、 誰よりも 美しい 額 をして ゐた。 僕 は 彼女の: i を 見た 時、 砧 

で おも だ . じっさい また か C ちょ うつく い ぴ やうて き ちが 

の ギヤマン を 思 ひ 出した。 實際又 彼女 は 美しい とーム つても、 どこか 病的だった のに 遠 ひなかつ 

た C 

なん をえ な 

「何 だい、 あの 女 は?」 



2 フ I フン ス ぢ よいう い いな とほ 

2 「あれ か? あれ は佛蘭 西の ::: まあ、 女優と ーム ふんだら う。 一 ニーイと 么ふ 名で 通って ねる がね 一 



, —— それよりも あの 爺さん を 見ろ よ」 

ちい で くら, となり り やって ケ: か 二 しゅ :. かつ.. I- あたた てうし あは た -で: ま うご 

一 あの 爺さん」 は 僕 等の 鄰に兩 手に 赤葡萄酒の 杯 を 暖め、 バ ンドの 調子に 合せて は 絶えす 頭 を 動 

まんぞく い --f こ さしつ か す, いた **<く ね …しょくぶつ な: ノ 

かして ゐた。 それ は滿足 そのものと 云っても、 少しも 差 支へ ない 姿だった。 僕 は熱帶 植物の 屮か 

らしつ きりなしに 吹きつけて 來る ヂャッ ズには 可な り 與味を 感じた。 しかし 勿 幸 幅.,: しい 老人 

たどに は 興味 を 感じなかった。 

1 つ-い は ダャ じん シ?' ン ハイ かれこれ V. んヒ ふねんす つ いったい い "や- r にく 

「あの 爺さん は 猶太 人 だが ね。 上海に 彼是: 二十 年 住んで ゐるこ あんな 奴 は 一 $1ど-ン.!^ふ|;貝なん 

だら う?」 

い りゃう けん い 

一 ど う 云 ふ 量 兑で も 善 いぢ やない か?」 

「いや、 決して 善く はない よ。 僕な ど はもう 支那に 飽き飽きして ゐ る。」 • 

「支那に ぢ やない。 上海に だら う。」 

「支那に さ。 北京に も 暫く 滯 在した ことがある) ::: 」 

僕 はか う 一 14 ふ 彼の 不平 を ひやかさない 訣には 行かな かつ た。 . 

「支那 も だんだん 亞米利 加 化する かね?」 



かれ かた そび や しばら なん い まく こうく わい ちか かん 々- 

彼 は 肩を聳 かし、 暫く は 何とも 言はなかった、 レ 僕 は 後悔に 近い もの を 感じた。 のみなら す氣ま 

ためな にい かん 

づさを 紛らす 爲に何 か 言 はなければ ならぬ こと も 感じた。 

r ぢゃ どこに 住みた いんだ?」 

す または,?^ すみ it^、 います み .?; も 

「どこに 住んでも、 —— すゐ ぶん 又 方々 に 住んで 見たん だが ね。 僕が 今 住んで 見たい と 思 ふの は 

ソヴィ ェ ッ ト治 P 'の 露西亜ば かりだ。」 、 

「それならば 露西亜へ 行けば 好い のに。 君な ど は どこ へ でも 行かれ るんだら う。」 

かれ いちど だま ぼく いま とき かれ 4" ほ お ぼ 

彼 はもう 一度 默 つてし まった。 それから、 —— 僕 は 未だに はっきり とその 時の 彼の 顏を覺 えて 

れ め ほそ とつぜん ぼぐ わす まんえ ふし ふ うた だ 

ゐる。 彼 は 目 を 細める やうに し、 突然 僕 も 忘れて ゐた萬 葉 集の 歌 をうた ひ 出した。 

よ なか おも と た と リ 

「世の中 をう しと やさしと 思 へ ども 飛び立ち かねつ 鳥に しあらねば。」 

ぼく かれ に ほん-, 一 てうし ぴ せう わ は ゆ めう ないしん かんどう わけ 

僕 は 彼の 日本語の 調子に 微笑し ない 訣には 行かなかった。 が、 妙に €: 心に は 感動し ない 訣 にも 

行かなかった。 

ぢ, - もちろん ^f、 し あ. 一. * なに キふ し とほ 

「あの 爺さん は 勿論 だが ね。 一一 一一 ィ さへ 僕より は 仕 合せ だよ。 何しろ 君 も 知って ゐる 通り、 …… 」 

2 

2 ぽく とっさ くわいく わつ 

2 僕 は 咄嗟に 快濶 になった。 



3 「ああ、 ああ、 聞かないでも わかって ゐ るよ。 お前 は 『さまよへ る 猶太 人』 だら う. に 

2 

2 かれ た n: さん ひとくちの い 4^ ど かれ じ しん か: 

彼 はゥヰ ス キイ 炭酸 を 一 口 飲み、 もう 一 度 ふだんの 彼 自身に 返った。 

ほく たんじゅん し じん ぐ わか ひひ やう か しんぷん き しゃ れ す-一 あに どくしん 

「僕 はそんな に 單純ぢ やない。 詩人、 畫家、 批評家、 新聞記者、 …… まだ ある。 ,2^ 子、 兄、 獨身 

もの アイん 一 フン ド じん き しつじ やう しゅぎ しゃ じんせい くわん じ やう げ Z トリ しゅぎしゃ やい _ち ひや- リ きょうさんし!! ん *J 

者、 愛蘭 土人、 …… それから 氣質 上の n マン 主義者、 人生 觀 上の 現 實 主義者、 政治 上の 共産主義 

しゃ 

者 …… 」 

ぼくら わら い す お た あが 

僕 等 は いっか 笑 ひながら、 椅子 を 押しの けて 立ち上って ゐ た。 

かの ぢょ じ やう じん 

「それから 彼女に は 情人 だら う。」 

じ やう じん しゅうけ うじ やう む しんろん じ や てつがく;: J やう ぶっしつしゅぎ しゃ 

「うん、 情人、 …; まだ ある。 宗敎 上の 無神論者、 哲學 上の 物質主義者 …… 」 

よ パ わう らい もや い しゃう. IV- ちか ! A 、とう ひかり めう 

夜-皮け の 往來は 靄と 云 ふよりも に 近い ものに こもって ゐた。 それ は: g 燈の 光の せゐ か、 妙 

またせ いろ み J ぼ,、 ら うで ,/ に じふ, ご わかし おな お ほ ま.,: 

に 又 黄色に 兑 える ものだった." 僕 等 は 腕 を 組んだ まま、 二十 五の 昔と 同じ やうに 大股に ァ スフ ァ 

^ い にじ ふ-ご わかし おな ぼく いま ある 

ル トを 踏んで 行った。 一 一十 五の 昔と 同じ やうに —— しかし 僕 はもう 今では どこまでも 步か うと は 

おも 

思はなかった。 

4 乂 きみ い ぼく せいたい しら もら ±. なし 

^ 「まだ^?;には言はなかったかしら、 僕が 聲帶を 調べて 賞った 話 は?」 



224 



「上海で かい?」 

かへ レ -キ,- く せいた メ しら もら せ か 二-き 

「いや、 口 ン ドン へ歸 つた 時に。 11 SK は 聲帶を 調べ て 世 只ったら、 *1 界 的た バリ 卜 オン だつ たん 

だよ。」 

かれ ぼく かほ C ぞ な こ ひ にく ブ せ。 

彼 は 僕の 顔 を^き こむ やうに し、 何 か 皮肉に 微笑して ゐた。 - 

しんぷん ふ」 しゃ 

「ぢゃ 新聞記者 など をして ゐ るよりも, …… 」 

もちろん やくしゃ に い- 

「勿論 オペラ 役者に でもな つて ゐれ ば、 カル ゥソォ ぐら ゐに はれって ゐ たんだ。 しかし 今から ぢ 

やどう にもなら ない。」 

きみ いっしゃう そん 

「それ は 君の 一 生の 損 だね。」 

なに そん ぼく せ か いぢう にんげん そん 

「何、 損 をした の は僕ぢ やない。 I 界 中の 人 問が 損 をし たんだ。」 

81 入 くら ふね ひ お ほ くわう ほかう きし んる かれ ぶ ゆ h,'^ み ノ 

僕 等 はもう 船の 灯の 多い 黃沛 江の,: がを步 いて ゐた。 彼 はちよ つと 步み をと め、 顋で r 兑ろ」 と. ム 

あ ひ-つ もや なか ほ G みづ しろ こ いぬ し がい いっぴき £ る なみ た ゆ 

ふ合圃 をした。 靄の 中に 仄めいた 水に は 白い 小犬の 死骸が 一 匹、 緩い 波に 絶えす 杵 U すられて わた" 

また こ いぬ だれ し わざ くぴ はな も ひと く さ V.- r ん- 一く 

その 又 小犬 は 誰の 仕業 か、 頸の ま はりに 花 を 持った 一 つづりの 草 を ぶら; 卜げ てゐ た。 それ は慘^ 

キ- ど 一つ じ うつく き ちが ^く . ^れ -5/ え ふし ふ 

な氣 がする と 同時に 美しい:; M がする のに も 遠 ひなかった" のみなら す 僕 は 彼が うたった is:? 紫^の 



うたい らい た せ, つ., ^ ん しゃう しゅぎ でんせん 

5 歌 以來、 多少 感傷主義に; S 染 して ゐた。 

2 

「二 二 ィ だね。」 

「さもなければ 僕の 屮の 聲樂 〔.^ だよ。」 

かれ こた はや と はう お ほ くさ 

彼 はかう 答へ るが 早い か、 途方 もな く 大きい 嚏め をした。 - 

-れ いも-つと ひさ , て がみ き ため ほく に 5 ん にち まへ よる § め 

一一 イスに ゐる 彼の 妹さんから 久しぶりに 乎 紙の 來た爲 であらう。 僕 はつい 二: 二 s 前の 夜、 夕の 

なか かれ はな かんが しょたいめん とき ちが よか ひ 

巾に 彼と, 1;^ して ゐた。 それ はどう 考 へても、 初對 -.m の 時に 遠 ひなかった。 カミン も # あかと 人 を 

うつ) また ほ マホガ ニイ いす うつ ぼ,、 めつ ひ らう 

動かして ゐれ ば、 その乂火かげも桃花心木のテ ヱブルゃ:^^子に映ってゐた。 僕 は 妙に 疲^しな が 

たう ぜん ぼくら あ ひだ おこ アイ ルーフ ンド さく か よ なし ぼく く n.c け 

ら、 常 然僕等 の 問に 起る 愛 蘭 土の 作家た ちの を し て ゐた〕 しかし 僕に のしかか つ て 來 る 眠ハ姒 と 

, たたか ようい ^く お ぼっか い しき ,r ち い かれ ことば き 

鬪 ふの は 容易ではなかった。 僕は覺 束ない 意識の 中に かう 云 ふ 彼の 言葉 を 聞いたり した。 

一 ト detest i3el-nal.d Sliaw. 一 

タ, しかし 僕 は 腰かけた まま、 いっかう とうと 眠って しまった。 すると、 —— おの づ から IE を ま 



した。 夜 はま だ 明け 切ら-すに ゐ るので あらう。 風呂敷に包んだ.電燈は離1=ぃ光を^>がしてゐる。 僕 

とこ う、 ± ら f めう こう: ん しづ ため し々 - しま いっぽん ひ み な 力 

は 床の 上に 腹 這 ひに なり、 妙な 興奮 を 鎮める 爲に 「敷 島」 に 一本 太 をつ けて た。 が、 夢の 屮に眠 

つた 僕が 現在に mi を醍 まして ゐ るの はどう も 無^味で ならなかった.) 

(火 正 十五 ^十一お: :1| 九 H.} 



一 

…… それ は 小ぢん まりと 出來 上った、 奥床しい 門 構への 家だった。 尤も この に はかう 云 ふ 

, へ 6 づら f ん かくさん^う がく へ , _ ご み に. H キ 1 : r7 V -1 

家 も 珍しく はなかった。 が、 r 玄鶴山 房」 の 額 や * 越しに 見える 庭木な ど は どの 家よりも 数 火 Z を 凝 

らして ゐた。 

この 家の 主人、 堀越玄 鶴は畫 家と しても 多少 は 知られて ゐた。 しかし 资產を 作った の は ゴム 印 

とくき よ う だめ あるひ いん とくき よ う ぢ しよ ばい^い ため げん かれ 

の 特許 を 受けた 爲 だった" 或は ゴム 印の 特許 を 受けてから 地所の 寶買 をした 爲 だった。 現に 彼が 

も かう ぐ わい ある.. -っ めん しゃう が ろく で き いま あかが はら いへ 

持って ゐた 郊外の 或 地面な ど は 生^さ へ 碌に 屮 Z 來な いらし かった。 けれども 今 はもう 赤 の 家 や 

あ をが.,!:! ら いへ た なら いは ゆる ぶんく わ むら ^-u ) , 

靑 瓦の 家の 立ち並んだ 所謂 「文化 村」 に變 つて ゐた …… . 

デん. A くさ C ばう と かく こ で き あが おく ゆか もんが ま いへ - 一と V かご ズノ 

しかし 「玄鶴 山 房」 は 15- に 角 小ぢん まりと 出來 上った、 奥床しい 門 構への 家だった。 殊に 近 は 

^ み-一 まつ < ^き なよ げん ,•:- ん えへ し か まつば やぶ.;' うじ み あか 

2 昆 越しの 松に 雪よ けの 繩が かかったり、 玄關の 前に 敷いた 枯れ 松 紫に *^ 桥.^ の實が 赤らんだり、 



^山 鶴 玄 



229 



、つそう ふうり う み いへ よ, やう ほ とん ひと ど ほ い 

1 曆 風流に 見える のだった。 のみなら す この 家の ある 横町 も 殆ど 人迎 りと K ふ ものはなかった。 

とうふ や とま とき に お まどえ らっ? < ふ ヒ** 

豆腐屋 さ へそ こ を 通る 時には 荷 を 大通りへ おろした なり、 喇叭 を 吹いて 通る だけだった。 

げんかく V.- ん ばう げんか,、 い なん 

r 玄鶴山 房. I- 玄 鶴と 云 ふの は 何 だら う?」 - 

、へ まへ とほ かみ け なが *、 わが,、 せい ほそなが る i ぐ ば こ こ わ々" 

たまたま この 家の 前 を 通りかかった、 髮の 毛の 長い 靈學生 は 細長い 綺の ハ箱を 小脇に した まま _ 

おな きズ ボブ ン せいふく き ひとり ぐ わがくせ い い 

同じ 金釦の 制服 を 着た もう 一 人の 畫學 生に かう 言ったり した" 

なん げんかく い しゃれ 

「何だかな、 まさか 嚴 格と 云 ふ 洒落で も あ るまい。」 

か:^ ら ふん-り わら き がる いへ まへ とほ い ただ L 々- 人, T 

彼等 は 一 一人と も 笑 ひながら、 氣輕 にこの 家の 前 を 通って 行った。 その あとに は 唯:^ て 切った, 迫 

かれら r い すがら いつはん あ を ひと - にたり 

に 彼等の どちら かが 捨てて 行った 「ゴ ルヂ ン . バ ット」 の 吸 ひ效が 一 本、 かすかに 靑ぃ 一 す ぢの煙 

I ま そ た 

を 細 ぼ そと 立てて ゐる ばかりだった。 …… 

ちゅうきん げんかく む-一 まへ ある ぎんかう つと したが いへ かへ I ベ、 ' I ^v:^-^ I 

fsB:! は玄鶴 の 婿になる 前から 或 銀行 へ 勒 めて ゐた。 從っ て 象に^つ て來る の はいつ も. ま^ のと 

ころ かれ すうじつ ひ らい もん 5 ち はや たち まめう しう き かん ノ らう 

もる: だった。 彼 はこの 數日 以來、 門の rw: へ は ひるが n 十い か、 忽ち 妙な 臭氣を 感じた。 そ^は 老 



230 



人に は 珍しい 肺 J お 核の 床に 就いて ゐる玄 鶴の 息の 勻 だった。 が、 勿論 家の外に はそんな;; 4 ひの!: る 

はす ふゆ ぐ わいた う わき した をり かギ: ん かか ぢ ゆうきち げんくわん まへ ふ * し ある 

51;^はなかった。 冬の 外套の 腋の 下に 折飽を 抱へ た逮吉 は玄關 おの 路み石 を 歩きながら、 かう いふ 

かれ しんけい あやし わ 1; ゆ 

彼の 神 經を怪 まない 訣には 行かなかった。 

け/う;; はな とこ よこ とき よ ぎ やま ;: ゆう 今ち ぐ わ つ 

玄鶴は 「離れ」 に 床 をと り、 横にな つて ゐ ない 時には 夜着の 山に よりかかって ゐた C 東吉は ル^ 

5 m..'L か f もら .1.1 な ノ かほ だ ただいま いかが ことば 

や 帽子 を と ると 、ゼす こ の 「離れ」 へ 蘇 を 出し 、「唯今」 とか 「け ふ は 如何です か」 とか 首 紫 を かける 

の を 常と して ゐた。 しかし 「離れ」 の 閥の. へ は 減 多に 足 も,: <れ たこと はなかった。 それ は の^ 

竹つ If で 力ん せん おそ ため また ひと いき に ほひ ふ: わい おも ため ヂ /か 二 卜れ 

結核に 感染す るの を 怖れる 爲 でも あり、 又 一 つに は总 の勻を 不快に 思ふ爲 でもあった。 玄鶴は 彼 

) み, たび > 」:,: た かへ こた こる; * たちから な こも; ぃキ- +- か 

の^を 見る度に いつも 唯 「ああ」 とか 「お;; J り」 とか 答へ た。 その 聲は又 力の 無い、 聲 よりも に 近 

ぢ うきち しう と い ときみ \ かれ ふ にんじゃう c し おも ゎァ 

いものだった。 重吉は 舅に かう 言 はれる と、 時々 彼の 不人情に 後ろめ たい E 心 ひもし ない;^ ではな 

か つ た。 け れ ども 「離れ」 へ は ひる こ と はどう も 彼に は 無 氣味だ つ た" 

ゲ,: ^うきち ちゃ ま とな と- - つ しう とめ とり み ま A- り デ" か, 

そ れ か ら 重 吉は茶 の 問の 鄰 りに やはり 床に 就いて ゐる 姑の お ifl を 見舞 ふ の だ つた; お ci? は玄鶴 

ね, まへ . しす. "はち ねん まへ こしぬ べんじょ かよ からだ げんかく 

の 化 こまない 前から、 11 七 八 年 前から 腰拔 けにな り、 便所へ も 通へ ない 體に たって ゐた。 玄鶴 

^orj^ もら か 0:>: よ ちる たい:! i ん か ヽぅ わすめ い ほつ,. 今り やうの iv い か Q 

が 彼女 を 貫 つ た の は 彼女が 或大藩 の 象 老 の 娘と 云 ふ 外に も 器量^ みから だと 一 K ふこ と だ つた。 彼 



^け ni;ft 玄 



231 



; T よ とし め うつく とこうへ f た 

女 は それだけに 年 をと つても、 どこか n: など は 美しかった) しかし これ も 床の 上に 坐り, 丹念に 

しろた び つくろ あま か は ; f ゆうきち か c-i. よ か あ 

白 足代.^、 など を t おって ゐ るの は餘り ミイラと 變ら なかった。 直 士:! はや はり 彼女に も 「お母さん、 け 

,■ てみ ヒか いちご C. 二 ろくで ふ ちゃ ま 

ふ はどうで すか?」 と: ムふ、 乎 短た 一語 を殘 した まま、 六疊の 茶の 問へ は ひるの だった。 

つま ナ, や ま しんしう う ぢ よちう t. つ せま だいどころ はたら こ ぎ れい 

麥 のお 鈴 は 茶の 問に ゐ なければ、 :::! 州 生まれの 女中のお 松と 狹ぃ薹 所に 働いて ゐ へた 小綺 1- に 

かた t- や ま もち ,つ, つ ぶんく わか まど だいどころ しう と しう とめ ゐま はる ぢ ゆうきち した 

片づ いた 茶の 問 は 勿論、 文化 寵を据 ゑた 臺所 さへ や 姑の 居 問より も^かに 東- 亩には 親しかった" 

かお 、ちヒ ちじ あるせ いぢ か じ なん • がう けつ はだ ナ.' t> おや むかし ぢ よりう か じん 

彼 は 一 時 は 知 * などに もな つた 或 政治 の 次 wi- たった。 が、 毫傑 肌の 父親よりも 昔の 女流 歌人 だ 

.H.^ おや も か しう-; -. -ぃ ■* たかれ ひ. V なつ め ほ あご あき ちゅう 今ち 

つた 像 親に 近い 秀才だった。 それ は义 彼の 人懊 こい ほや 細つ そりした 願に も 明らかだった。 m. 古 

ャゃ ± やう- プ、 わ ,づ、 キ, - か うへ らく/ \ なが ひ ばち まへ すわ やす は ま J ふ 

はこの-茶の 問へ は ひると、 洋服 を 和服に 1^ 換 へた 上、 樂々 と 長火鉢の 前に や 一り、 .: 女い 葉卷を 吹か 

したり,、 今年 やっと 小學 校に は ひった 一 人 子の 武夫にから かったり した。 

;: ゆう t ち すす だけ を だい かこ しょくじ かれら しょくじ に ゲ-ゃ ち 力 ご.:' 

ず: 士 n はいつ もお 鈴 ゃ武ネ 八と チヤ ブ臺を 阐んで 食 Is?- をした。 彼等の 食事 は娠 かだった。 が、 近顷 

は 「娠 か」 とづ ム つても、 どこか 乂窃 屈に も 遠 ひなかった。 それ は唯玄 鶴に つき 添 ふ S- 野と. "ム ふ^ 護 

ふ き ため もっと たは を かふ C す こ 力 は 

録 の來て ゐる爲 だった。 尤も 武夫 は rE. 野さん」 がゐて も、 ふざける のに 少しも 變ら なかった。 い 

あるひ ^ .S た^ よけい く. ん ケ す とキ. み、 *^ ゆ い た: L を 

や、 或は「甲^1^さん」がゐる爲に餘計ふざける位だった。 お 鈴 は 時々 眉 を ひそめ、 かう 云 ふ 武夫 を 



232 



或 意 
雪 ま 
の、 
晴' よ 
れ 

Lis 
ェ が 

つ 
た 
午:' 



十 i 
叫し 
五 ご 
の 

女き 

がな 



入、 



一- ら ャを お ほぎ やう ちゃわん めし か み 

,ん だり した。 しかし 武夫 はきよ とんと した まま、 わざと 大仰に 茶碗の 飯 を 接き こんで 0- せたり 

する だけだった。 重吉 は,^ 說 など を讀ん でゐる だけに 武夫の はしゃぐ のに も 「^」 を 感じ、 不快に 

たいてい び せう だま 力し く 

なること もないで はなかった。 が、 大抵 は 微笑した ぎり、 默 つて 飯 を 食って ゐる のだった。 

デ /かく. ---H 二つ よ しづ あさ はや いへ で たけを もちろん V- ゆうきち ふうふ たいてい じふ じ と-一 つ 

「お 鶴 山 房」 の 夜は靜 かだった。 朝 n 十く 家 を 出る 武夫 は 勿論、 重吉夫 も 大抵 は 十 時には 床に 就 

あと お くじ ぜん n よ とジに かん-, 一 ^.r^ . 、 

くこと にして ゐた。 その後で もま だ 起きて ゐ るの は 九 時 前後から 夜 他 をす る^ 護:^ の 巾 野 は 力り 

,f ふ C げス か,、 ま,、 ら あ, A ひ おこ ひばち かか. > ゐ ね:;.; - す.^ i - : ゼん 

だった。 甲 野は玄 鶴の 枕 もとに 赤 あかと 火の 起った 火鉢 を 抱へ & 5 陵り もせす に 化って ゐた。 丄 

鶴 は、 —— 玄鶴も 時々 は Se を醍 まして ゐた。 が、 湯たん ぼが 冷えた とか、 濕 が 乾いた とか 云 ふ 

"ぐ 5 とん くち き い はな きこ く 5 Z ヽ" > そぶ, 

に 3^ ど 口 を 利いた ことはなかった。 かぅ.云ふ「離れ」に聞ぇて來るものは^^ゑ込みの竹の.恥き 

かふつ うす さむ しづ なか げんかく み え も 力/力 

だけだった。 甲 野 は 薄ら寒い 靜 かさの 中に ぢ つと 玄鶴を 見守った まま, いろいろ のこと を^へ て 

, つ ひ と,. こころ か C ぢ よじ しん ゆ す,^ 

ゐた. - この 一 家の人々 の 心 もちや 彼女 自身の 行く末な ど を。 …… 



^そ をと こ 二て ひ ひ やどつ 一 

か 細い 男の子の 乎 を 引いた まま、 引き窓 越しに 



膽 '("ft 玄 233 



あ をぞら み ,\- りこし け だいどころ かほ だ ^ゆう キ、 ち もちろん うち ちゃ-;' い」 

靑空の Ht- える 堀 越 家の 臺 所へ 顏を 出した。 直吉は 勿論 家に ゐ なかった) 丁度 ミシ ンを かけて ゐた 

すす た せうよ 今一 たう わ,、 ちか かん A- かく 今やく むか 

お 鈴 は 多少 豫期 はして ゐ たもの の、 ちょっと 當 惑に 近い もの を 感じた。 しかし に ce: この 客を迎 

な 力 ひ ば y まへ た い キ. やく だい ど- M リ あが のち か Q ぢょじ しん は もの とこ こ 二つ ?ろ なま 

へ に 長火鉢の 前 を 立って 行った。 客は臺 所へ 上った 後、 彼女 自身の 屐き牧 や 男の子の 靴 を 揃へ い i 

をと こ こ しろ き かの ぢょ め かん い しょさ 

しん (SR の 子 は 白い スゥ H H タァを 着て ゐ た-」) 彼女が ひけ 目 を 感じて ゐる こと はかう 云 ふ 所作 だ 

15 き ) : „ / むり か C ぢょ 一 *) ろく;? んぃ ^^ ^ とう/.. やう あるきん ざい げス > く 

けに も 明らかた つた。 が、 それ も 無理はなかった。 彼女 はこの 五六 年 以來、 束 京の 或 近在に 玄鶴 

二う ぜん か-一 お ちょち. T ぶが よし 

が 公然と 園って いた 女中 上りのお 芳 だった。 

すす よし かほ み とき ぞんぐ わい かの ぢょ ふ かん かま 

お 鈴 はお 芳の 1» を 見た 時、 存外 彼女が 老けた こと を 感じた" しかも それ は 額ば かりで はな かつ 

よし し ご ねんい ビん まる ふと て とし か C ぢょ て ヒ やうみ や,、 み 

た。 ぉ芳は 叫 五 年 以前に は圓 まると 肥った 手 をして ゐた。 が、 年 は 彼女の 乎 さへ 靜-康 の 13- える ほ 

; ノ, か cr, よ み すナ か C ちょ やす s ひわ なに し-に ■:■ 

ど 細らせて ゐん。 それ 力ら 彼女が 身に つけた もの も、 . I お 鈴 は 彼女の 安 ものの 指 に 何 か 骨 傲 5^ 

じみた 寂し さ を 感じた。 

. ^に だんな さま V; あ ま を 

「これ は 兄が 搜那樣 に 差し上げて くれと 中し ましたから。」 

よし いよいよき おく ふる しんぶんし つつ ひと ちゃ ま い ま: だいどころ 

ぉ芳は 愈 氣 後れの したやう に 古い 新 問 紙の 包み を 一 つ、 茶の 問へ 脇 を 人れ る 前に そつと 査所 

の 隅へ 出した。 折から 洗 ひもの をして ゐ たお 松 は せっせと 手 を 動かしながら、 水々 しい 銀 术:: 返し 



にぎった おお を に 親 ザたり して ゐた。 が、 この 新聞紙の 包み を:^ ると、 更に 恶 意の ある 

ii^i_i」 した。 それ は 又實際 文化 竈 や 華表な 皿 小鉢と 「調和したい 惡 n 犬 を: § つ て ゐ る の に逮 ひなかつ 

た。 お i_ ^はお i をがなかった ものの、 少く ともお 鈴の. 額 色に 妙な け は ひ を 感じた と兑ぇ 「これ は、 

あの、 ド い IS でございます」 と說 明したり それから 指 を嚙ん でゐた 子供に 「さあ、 坊ちゃん、 お 時 11 

なさい」 と i を かけた。 s!^!!,^ は きえ i がお 芳に 生ませた 文太郞 だった。 この 子供 をお 力が 「坊 

f r , . tj どメ、 かのちよ じ やうし き ゝ 1、 

ちゃん」 と , ぶの はお I 如に は^ぎに も氣の _s た つ た。 けれども 彼女の 常識 はすぐ に そォも 力う ぶ 

-0 も-、 すつ- かま ^やます みす 〃• 

ふお Isii かたがない ことと S 心 ひず』 した。 お 鈴 は さりげない 纖 をした まま、 茶の 問の 隅に ゆった 

^デ にぎり;^ E せの ぎ 子 や 茶な ど をす すめ、 玄 鶴の 容態 を 話したり、 文 太郞の 機嫌 をと つたり しゃい 

した。 …… 

お f お m を i ひ 1: した 1、 Tii にい f 一一 度 づっは 必す荣 宅 

へ g つてかった C お g はかう r で ふ 父の (湫 もちに 始めのう ち は 嫌惡を 感じて ゐた。 :, ちっと はおお 

さんの 一 まも I?》 れば in いのに、」 1. そんな こと も 度た び考 へたり した) 尤もお.:: S 何 ごと も;. 在 

4 rf 、つ:, ごう. H よ き どく おも ちち せ ふたく で > - 

" め".^ つて ゐる らしかった。 しかし お^は それだけ. I 曆 S, を氣の 毒に m 心 ひ、 父が 妾宅へ^ 力 けん^ 



u し くわい し 。み、 ろ ,ご ;ーご つ 、 : 

5. でも eg に は り ふ は 詩の 會で すって」 などと 白々 しい!! をつ いたりして ゐた。 その; S が.^ 义 に?^ たな 

いこと は 彼女 自身 も ,:R らな いのではなかった。 が、 時々 母の 額に 射 IK つに & いがま. iv/i ると、 1 を 

ついた こと を 後悔,^ る、 . —— と -ム ふよりも 寧 ろ 彼女 の 心 も 、:^ みがけ て くれない ii- ぬひの,: P に 5- か 

な.. に, な かん が 

情無 さ を 感じ 勝ちだった。 . 

.r% ん r> おく だ のち いっか かスが ため て -r , 

ま 鈴 は 父 を, 送り W した 後 一 家の こと をい.^,^ る 爲にミ シ ン の を やめる の も 度た びだった。 :^:>ー, 

鶴 はお 芳を圍 ひ 出さない:; 1 にも 彼女に は 「立派な お父さん」 ではなかった。 しかし lli そんな こと 

は M の 優しい 彼女に は ど.: りら でも 善かった。 唯 彼女が きがかりだった の は 1^ が^ m 化 P まで もす 

せ." たく はこ すす よし ; りよち う 七 や, , )^ : 卜て:" -". も 

ん すん 荣^ へ 運ぶ ことだった。 お 鈴 はお 芳が 女中だった 時から、 ^女 を :5J でと S ちたこと はな か 

O こ r フ , .;7,;r- ひひ- f 二 、 一. レ 、*, ゾんな お %シ - - , -と う々 や-つ. あるば r*J さかなや よし 

つん レ夕、 寧ろ ス 1 みよりも.^ 米な と つて ゐた。 が、 束 京の 或 場末に \ も屋 をして ゐ るお ^:方 

の::^ は 何 をた くらんで ゐる かわからなかった。 ,に 乂^ は銜 おのが には^に しかった 

すす と 今. '; i- ゆうきち か C ぢ よしんば. -ぅ あ ち 

お 鈴 は 時々 重吉 をつ かまへ、 彼女の 心配 を 打ち明けたり した〕 けれども ^ は 取りが はなかった。 

^ 「僕から お父さんに &I ふ 訣には 行かない。」 11 お 鈴 は 彼に かう f^" はれて? ると、 i つてし まふよ 

厂" り 外はなかった。 



レ-う やう まう ゑ よし おも ゝ, -、 - 、、ム - 

「まさかお 父 さ んも 羅兩峯 の 畫 がお 芳 にわ か る とも 思 つて ゐな V ん で せう 力」 

t な とり ちゆ,! ち み あ 

ffiisci たまお Si に は それと なしに こんな こと も is したりして ゐた。 が、 お 鳥 は m 丄" を见 上げ 

い つ も 唯 苦笑し て か う^ ふ の だ つ た。 

「あれが お S さんの ^ お^の さ。 ^しろお おさん は あたしに さへ 『この S はどう だ?』 などと" いふ 

人なん だからね。」 、 

ケ L f ^ i ^ し,、. よい げんか,、 こ レ-し もい た- 

しかしそんなことも^^になって^れば、 誤に も しい 心配だった) 玄鶴は 今^の 冬^ 來 

K 』 3 ., -, 1 つゆう きち も だ て ぎ ばな し もっと はなし 

どっと£が«った^3に|^ぉ^ひもに家なくなると、 重吉が 持ち出した 手切れ 詁 に?^ も その 話の 

J „ す-? ぞ ぐぐ わいすな ほ しょうだく 

^1: など は? お^より もお i やお^が 称. -た とず ふのに 近い ものだった 。¥ 外 素直に 承認した- 

-. し C: .0 J よし せん ゑん て ぎ きん もら -- , づノ 1 

それ は?? お^が^れて ゐ たお^の y も^じ ことだった。 ぉ劳は 干圓の 手切れ金 をれ ひ 丄總 

にある^ 鋭が ^へぼった ギ お W お^ の 養育 料と して 若 千の 金 をお つて 世 只 ふ、 11 彼 はか 

亡 一, -、 お げんか-、 ひ ザ-う やんちゃ だう ぐ 

う ^ ふ艇 M に^し も ハ pvfe へなかった レ のみなら す€ に 置いて あった t>fi の 祐錄の 煎茶 Mnv 

など も膨 れぬ うちに 衝ん で^た。 お i は 做に 疑 ひて ゐ ただけ に 一 彼に i 意 を 感じた。 

6 1> C : - ごかん" やう あが ま を : 

" 「!-きまして:^^がゃっが^^しぉ^^でも足りませんゃぅなら、 御 に 上りたい と 申して をり ま 



お 山 t^ift 玄 



237 



すんで す 力 」 

すす た おう i へ --し ± は さう だん か C ぢょ しっさく い さ つか 

お 鈴 は こ の 頼みに 應 じる 前に 腰ぬ け の 母に 相談した。 それ は彼ケ の 失策と 云 つ て も 差し 支 へ な 

ちが とり か G ぢょ さう だん う よし ぶんた らう キ- もら 

いものに 遠 ひなかった。 お, it は 彼女の 相談 を 受ける と、 あしたに もお 劳に文 太郞を つれて 來て^ 

寸す だ . ^す はは き ほか いっか くうき みだ おそ なんど はは ジノん が 

ふやう に勸め 出した。 お 鈴ば 母の 氣 もちの 外に も 一家の 空 氣の擾 される の を Si 、れ、 何度も 母に^ 

なほ ッ、 せ 走たい V 'めん す, ち げんかく よし あに す.' うかん た くわん けい ヒ やう 

へ 直させよ うとした (その 癖乂 一 面に は 父の 玄 鶴と ぉ芳の 兄との 中 に 立って ゐる關 係 上、 い つ 

f f せんば う たの ことわ キ- お とり かのちよ ことば 

か素氣 なく 先方の 頼み を斷れ ない 氣 もちに も 落ち こんで ゐた, しが、 お,::;! は 彼女の. 言葉 を どうして 

す なほ と あ 

も 素直に は 取り上げなかった。 

みみ i へ かてべ つ よし て は-つか 

「こ, がま だ あたしの 耳 へ は ひらない 前なら ば格训 だけれ ども ! お 芳の乎 前も羞 しい やね。」 

すす え よし あに よし く しょうだく また あるひ せけん し か cy- よ 

お 鈴 は や む を 得 , ザ ぉ芳の M 儿 にお 芳の來 る こと を 承諾した。 それ も 亦 或は^ を ら ない 彼. の 

しっさく し げん ゆう キち ぎ/. f う かへ -I- す はなし キ」 とき を/な 

失策だった かも 知れなかった。 現に 重吉は 銀行から 51 り、 お 鈴に この 話 を 聞いた 時、 女の やうに 

やさ ゆ あ ひだ ふく わい へう じ やう しめ ひとて ふ ありがた にか 

優しい の 問に ちょっと 不快ら しい 表情 を 示した。 「そり や 人 乎が 殖える こと は 難 有い にも 遠 ひ 

A 一う いちおう はな み い とう ことわ まへ せ- e.- 

ない がね。 …… お父さん にも ー應 詰して 見れば 善い のに。 お父さんから 斷 るの ならばお 前に も 

任の ない 訣 なんだから。」 11 そんな こと も 口に 出して ず つたり した。 お 鈴 はいつ になく 1^ ぎこん 



だま ま 、「さう だった わね」 などと 返事 をして ゐた。 しかし 玄 鶴に 相談す る こと は、 ,1 - お^に^ や 1 

の あ る瀕 处 の 父 に 相談す る こと は 彼女に はケ になって 見 て も 屮:: 來な い 相談に 違 ひなかつ ブ 

すす A 、し r や 二 あ. M」 い きょくせつ おも だ よし な 力,)、, て- 

…… お 鈴 はお 芳 親子 を 相 乎に しながら、 かう 云 ふ 曲折 を 思 ひ 出したり した" お H 方 は 長 火 割に f 

レ J だ が かのちよ あに ぶんた らう はな か C ちょ ベと.^: k^.^_L«v.,.l^ 

も か ざ さ す、 途 $g え 勝ちに 彼女の 兄の こと や 文 太郞の こ と を 詁し てゐた 彼女の 一 一 一一 異术は ゆ 五 年" W 

はつおん ゐな. A なま あら.,: すす ゐ なか、 な,4^ -、 ク i ^,0 

の やうに 「それ は」 を s-l.ya と發 昔す る田舍 訛り を 改めな かつ た。 お 鈴 はこ の W 舍.^ りに レ つ カ^ 

1£ 'に ニニ 二 T>6 --. ^ r, し ,ヒ かぐ どうじ また ふす. -; ひとへ. C か せキ ひ. V i'^ . 

:5.-の心もちも1^氣安さを持ち屮^,-たのを感じた。 同時に 又 換ー 重 向う に 咳 一 つし すに ゐ る:^ の-あ 

A- り なに ばく ダ j ん ふ 少ん かん 

鳥に 何 か 漠然とした 不安 も 感じた。 

「ぢ や,. 一 週 問 位 はゐて くれられる の?」 . 

v.i さしつ か ン、 1 - 

「は い、 こちら 樣さ へお 差 支へ ございません ければ」 

「でも 着換へ 位な くち やい けなかない の?」 

「そ れ は!^ が 夜へ に で も屆け る と 申し て をり ました から。」 

- おし 二-; た 1 ノ、 つ ぶした らう 一: ろ 

ぉ芳 はかう あへ ながら、 退13^りしぃ文太郞に懊の キャラメル を 出して やく たりした 

8 & とう よわ 1- やうし は-つ む. & 

^ r ぢ やお 父 さ- -二 さう ずって 东 ませう。 お父さん もす つかり 「:i つてし まって ね。 陴 子の 方へ 向つ 



房 山 1!:^ 玄 



239 



て ゐ る 耳 だけぎ 燒 けが k 來 たりし てゐ るの よ。」 

t r な が ひ ば ち *へ へ よ な i へ た ん て つ :、- ん なま - 

お 鈴 は 長 太 鉢の 前 を 離れる 前に 何とな しに 鐵瓶を かけ した。 . 

「お母さん。」 

七り なに へんじ .Ac ゲ.' よ ニ幺 め ざ ね^ 

お 鳥 は 何 か 返事 をした。 それ はやつ と 彼女の 聲に RI を 醜ました らしい 粘り il! だった。 

「お母さん。 ぉ芳さんが::^^ぇましたょ。」 

お 鈴 は ほっとした (湫 もちに なり、 お 芳の額 を 見たい やうに 早速 長 火 ルの前 をが: ち 上った。 それ 

つき ま とほ ぃ寸. 'ど よし 二 ゑ A,- り よ-一 よ ゲ えり 

から 次の間 を 通りし なにもう 一度 「ぉ芳 さんが」 と聲を かけた。 お.:: I は橫 になった まま、 _ 妆; おの 襟 

/、ち うづ か G ぢょ みあ め びせ う ち か つ 

に::! もと を 埋めて ゐ た。 が、 彼女 を 見上げる と、 目 だけに 微笑に 近い もの を-びかべ 、「おや、 ま、 

よく 早く」 と返桌 をした。 お 鈴 ははつ きりと 彼女の 北::: 屮 にお 芳の來 る こと を 感じながら、 き の あ 

に は わか らう か はな いそ い 

る 庭に 向つ た廊: 卜 を そ は そ は 「離れ」 へ 急いで I:;: つた。 

けな あか らう か とつぜん き すす め じっさいい じおう うすぐら げんかく t, や-;' ど.;,. 

「離れ」 は 明るい 廊 卜から 突然 は ひって 來 たお 鈴の n に は實際 以上に 薄暗 かつ た。 玄鶴は r 俊 起 

なほ かふの しんぶん よ すす かほみ し 二么 

き つた まま、 5. 野に 新聞 を讀 ませて ゐた。 が、 お 鈴の 額 を 見る と、 いきなり 「お 芳 か?」 と聲を 

めう せっぱく きつもん ちか しゃが f ^ ふ、 r あぎ は たたす よんし や? - 

かけた。 それ は 妙に 切迫した、 詰問に 近い れ聲 だった。, お 鈴は澳 側に 佇んだ なり、^ 射的に 「え 



240 



へ .,? じ たれ くち キ- 

え」 と 返事 をした。 それから、 —— 誰も 口 を 利かなかった。 

「すぐに ここへ よこします から。」 

よしひとり 

「うん。 …… ぉ芳 一 人 かい?」 

「いいえ。 …… 」 

げんかく だま うな-つ 

玄 鶴は默 つて 額いて ゐた。 

「ぢゃ 甲 野さん、 ちょっと こちらへ。」 

rr . -5 .S とも ぶ さ- - 二 £ し らうが いそ ,. ちゃう ど S き C こ し .5 ろ は, ラへ. せ,?. - 

ぉ^は^^^^^ょりも ー ^-#-に小走りに廊下を急ぃで行った。 丁度 雪の 殘 つた^ 橺の 葉の 上に は^ 

|i がい 一 羽 尾 を i つて ゐ た、」 しかし 彼女 はそんな ことよりも 病人 臭い 「離れ」 の 中から 何か氣 味の 悪 

いものが つ い て來る やうに 感じて ならなかった。 

おや 祈が 贿 りこむ やうに なつてから、 一 家の i<a ポは: y に 見えて 險惡 になる ばかりだった。. それ は 

,ニ .:. :| ,う よじ ぶんた らラ もち げんかく はは よし に、 一-, 

まづ gi< が; t4< ^を いぢめ る ことから 始まって ゐた。 文 太郞は 父の 玄 鶴よりも 母のお 芳に 仰た 子 



ども き よわ ところ はは よし に こ ども すす もちろん い こ ども どう トゃぅ 

E^: だった。 しかも 氣の 弱い 所まで 母のお 芳に 似た 子供だった。 お 鈴 は 勿論 かう 云 ふ 子供に :i:iE し 

4 

ない 訣 ではない らしかった。 が 時々 は 文 太郞を fn^m 地な しと 忍 ふこと も あるら しかった。 

一. お 護 の 甲 野 は 職業 がらに 冷やかに この ありふれた.:^ 庭 的 悲軌を 眺めて ゐた、 —— と U ム ふより 

むし キ,^. うらく かのちよ くわ こ くら .AGiT よ 。;! やう か しゅじん ぴ やう みん い しゃ 

も 寧ろ 享樂 して ゐた。 彼女の 過去 は 暗い ものだった。 彼女 は 病 家の 主人 だの 病院の 醫^ だのとの 

關, ST 上、 何度 一塊の 靑酸 加里 を嚥 まう とした こと だか, 湖れ なかった。 この 過去 はいつ か 彼女の 

こころ L こ こん く つう き やうら く、 ぴ やうて き きょうみ う か Q ちょ ほり こしけ き レズ.」 こし 

心に 他人の 苦痛 を」 B 户樂 する 病的な 與 味を植 ゑつけ てゐ た。 彼女 は 越 家へ は ひって 來た 時、 腰ぬ 

けのお. n:! が 便 をす る に チを洗 はない のを發 見した。 「この 家のお 嫁さん は^が 利いて ゐる。 あ 

たした ちに も:;, つかない やうに 水 を 持って it つて やる やう だから。」 —— そんな こと も t 一 時 は 疑 

ぶか かのちよ こ-一ろ かげ おと し ご にち ぜん ヂ-ん ;! 'や-つ さ * そだ r> て, お, - 

深い 彼女の 心に 影 を 落した。 が、 M 五 H ゐる うちに それ は 全然お 嫁樣 育ちのお 鈴の ザサ めち だった 

よつ けん かの ぢょ はっけん なに まんぞく ちか かん とり べん たび せんめん キ- みづ 

のを發 見した。 彼女 はこの 發 見に 何か滿 足に 近い もの を 感じ、 お.:: :! の 便 をす る 度に 洗., m 器の 水 を 

運んで やった。 

鶴 rs- 野さん、 あなたの おかげさまで 人 問 並みに 乎が 洗へ ます。」 

お,!: は 乎 を 合せて 淚を こぼした。 甲 野 はお-:::! の 害び に は 少しも 心 を 動かさなかった。 しかし そ 




い らいに, -んど い 4., ど みづ も ゆ 十す ,メ け,、 J い »L ん L 

れ以來 三度に 一度 は 水 を 持って行かなければ ならぬ お 鈴 を 見る こと は 偸 快だった。 從 つて かう:. ム 

. ;;. C ぢょ 二 ども けんく わ ふく わい か G ちょ げんかく よし, -"V 二 ど-;' じ やう , て 

ふ 彼女 には子 供た ち の iM: 嘩も 不快ではなかった。 彼女 は 玄 鶴 に はお 芳 親子に 同情の あ る に しい 素 

ぶ しめ どうじ また とり よしお や 二 あくい そ ぶ しめ おもむ 

振り を 示した。 同時に 又お 鳥に はお 芳 親子に 惡 意の あるら しい 素振り を 示した。 それ はたと ひ徐 

かくじつ かう くわ あた 

, ろに もせよ、 確 實に效 果を與 へる ものだった。 . 

よし とま いっしう かん のち たけを また ぶんた う けんく わ けんで わ ただぶ た し ぼ つし 

ぉ芳が 泊って から 一 週 問 ほどの 後、 武夫 は 又 文太郞 と喧啤 をした。 i?. 啤 は 唯 豚の:^ つ:^ は:^ の 

、 尻つ よりも 太いと か 細い とか: お ふこと から 始まって ゐた。 武夫 は 彼の 妙强 部::^ の 隅に、 ,—— 玄 

くわん 七な り よ で ふ はん すみ ぼ そ ぶんた らう お うへ ラ . ^ . ' マノ: ソ 

關の, 鄰 の四疊 半の 隅に か 細い 文 太郞を 押しつけた 上、 さんざん 打ったり 蹴ったり した。 そこへ: J 

どき あは よし な ご ゑ で ぶんた らう だ あ たけを . . 

度來 合せた ぉ芳は 泣き 聲も 出ない 文 太郞を 抱き上げ、 かう 武夫 をた しなめ にかかった。 

「坊ちゃん、 弱い もの いぢめ をな すって はいけ ません。」 

- つちき かの ぢょ め-つ とげ - 一とぶ た!: を よし けん お. V ろ こんど かれ じ しん 

それ は 內氣な 彼女に は 珍ら し:^ 棘の ある 曾 葉だった。 武夫 はお^の 權 幕に 驚き、 今度 は 彼 自身 

な すお ちゃ i に .UAS- み て し 

泣きながら、 お 鈴の ゐる茶 へ 逃げ こもった。 するとお 鈴ん かつと したと 兑ぇ、 ミシンの 化 

,*) と よし;:: や-一 ところ むりやり たに を V い 

事 を やりかけた まま、 ぉ芳 親子の ゐる 所へ 無理 八现に 武夫 を 引きす つ て (n つた" . 

^ え f * つ. T * わが. まま よし て 

2 「お前が ー體 我儘なん です。 さあ、 ぉ芳 さんに おあやまりなさい、 ちゃんと^ をつ いてお あやま 



3 りなさい。」 

2 レ、 

ぉ芳 はかう 云ん お 鈴の 前に 文 太郞と 一 しょに 淚を 流し、 平 あやまりに あやまる ではなかった。 

そ の 又: 役 を M める もの は 、ま" 着 i„i の 甲 野 だ つ た。 甲 野 はぎ を^め た お ま をい f ISi に!: し 

M しながら、 いつももう 一 人の 人間の、 —— ぢっ とこの 騷ぎ を附 いて ゐる の^いち を ffii し、 

な t しん れいせ-つ う もちろん そ . ^ま- ジ A 

內. V に は 冷笑 を 浮かべて ゐた。 が、 勿論 そんな 素ぶ り は 1^ して! S にも せた ことはなかった C 

^ つ;? , .J あん —"な-.: す ども —にん,.;,. 二-: 

けれども 一. 1 豕をォ .:;f< にした もの は、 ゼ しも 子供の 哈: f- ばかりではなかった。 お^よ.^ -、 つり,:::: T こ 

か 何 ご ともあきら め:^ つたら しいお 鳥の 嫉妬 を既 つて ゐた。 尤もぉ^sはぉgiII^にはYぎもilみ 

など を ま 2 つたこと はなかった o( これ は 又 五」 ハ年 前、 ぉ芳 がま だお おき I- に !^ぎ きして ゐた g も; 

じだった。) が、 全^ 關係 のない u:: に 何かと 當り 勝ちだった。 軍: 吉は 勿: i とりが はなかった e お 

レ,- 卞 き ど,、 おも とき- はは ^± b > I C , 

鈴 は それ を氣の 毒に 思 ひ、 時々Efの^tfりに詫びたりした。 しかし^ は^ k したぎり、 「お ^ まで; J 

ス テ リイに なって は 困る」 と 話 を 反らせる の を 常と して ゐた。 

玄 

嶋 甲 野 はお 為の 嫉始 にも やはり 興 あ を^ じて ゐた。 お Si の^ i それ^ 射 は 2、 ^おが 惑 に 

巧 る氣 もち も 甲 野に ははつ きりと わかって ゐた。 のみならすまぉはぃっの^^にか^1^^1:^.^|^5;ぉ 



244 



ふ しっと ちか かん すす かのちよ ;: やう v.i ぢ fi うきち ;: ゆう キ-ん レ- か, 

擦に 嫉妬に 近い もの を 感じて ゐた〕 お 鈴 は 彼女に は 「お 壞樣」 だった。 古 も -11 _m 士:: はもに, 灼叩 

にパな で き あが をと こ ちが かつぢよ けいべつ いっぴき オダす ナ: か い 

間 並みに 出來 上った 男に 違 ひなかった。 が、 彼女の 輕蔑 する 一匹の 雄に も 違 ひなかった。 かう: ム 

ハぉ かう ふく かのちよ ほ とん ふ せい か G ちょ ふせい た ため ぢ ゆ きち な な 

ふ 彼等の 幸福 は 彼女に は 殆ど 不正だった。 彼女 はこの 不正 を 11 める 爲に (!) 重 士:: に 馴れ馴れしい 

そ ふ しめ あるひ * ちゅうきち な Z し とり い <: だ 

素 掘り を 示した。 それ は 或は 重 吉には 何ともな いもの かも 知れなかった。 けれどもお.::;! をみ 立た 

ぜっかう きく わい あた とり ひざ *4 しら あら V ゆう キ, h 4- . 

せる に は 絶好の 機 會を與 へる ものだった。 お,:::? は 膝頭 も 露 はに した まま、 「llsii 吉、 お前 は あたしの 

十め こし わすめ ふ そく ど:/、 くち 

娘 で は —— ぬけの 娘で は 不足な のかい? 」 と 毒 々しい 口 をき いたりした。 

すす だめ ゲ、 ゆ-つきち うたぐ ヒっ V いか ふ C ふに ど, 

しかしお 鈴 だけ は その 爲に 重吉を 疑ったり はしない らしかった。 いや、 實際甲 野に も; :!^ のぶ 母に 

m 心って ゐる らしかった。 甲 野 は そこに 不滿を 持った ばかり か、 今更の やうに 人の 1:! いお I を S: 蔑 

V ゆうきす, か ぢょ VJ だ ザ-いに ,"CVT よ 

せす に は ゐられ なかった。 が、 いつん 重吉が 彼女 を 避け 出した の は 偸 快だった。 のみたら す 彼女 

さ かへ つ かのちよ をと 二 かう き しん も だ ゆ,、 わい つ" れ * 人 かふの 

を 避けて ゐる うちに 反て 彼女に 男らしい 好奇心 を 持ち出し たの は 愉快だった。 彼 は^に は 甲 野が 

とき だいどころ そば ふ ろ ため はだ. >ハ す.' か-ごろ 

ゐる 時で も、 薹 所の 側の 風呂へ は ひる 舄に 裸に たる こと を かまはなかった。 けれども 近.: では そ 

すがた い + つど かふの み かれはね ぬ を/ ど り *.ノ*" かれ からだ は 

んな姿 を 一度 も 甲 野に 見せない やうに なった e それは彼が羽根を拔ぃた雄鶴に近ぃ彼の體を^^!^"ぢ 

ため ちが かち い かれ み かれ かほ また そ ぱ^ す . いったいか. ^ 

て ゐる爲 に 違 ひなかった。 甲 野 はかう 云 ふ 彼 を 見ながら、 (彼の! g も 亦 後 斑 だらけだった。) : 1^ 彼 



ゾを山 も昏玄 



245 



はお 鈴 以外の 誰に 惚れられる つもり だら うな どと 私 かに 彼 を 嘲ったり して ゐた。 

あるし もぐ も くも あさ かふの かの ぢょ へ や ぽんく わん さんで ふ .f ゲみ か c_ ちょ ><h, 

或. 評 暴り にきった 朝、 甲 野 は 彼女の 部屋に なった 玄關の 二 Ei!:d に 鏡を据 ゑ、 いつも 彼女が 結びつ 

- かみ わす ちゃう どい よいよ よし ゐ なか か" い ビス ヒっ 

けた ォ オル ,バックに 髮を 結び かけて ゐ た。 それ は 丁度 愈 ぉ芳が W 舍へ歸 らうと P ふお::: だつ 

よし いへ さ ぢ ゆうきち ふうふ うれ か、 とり 、「そ..'、 にだ 

た。 ぉ芳が この 家 を 去る こと は S 吉 夫婦に は 嬉しい らしかった" が、 反って お,::::! に は 一 厨":? 立た 

ふめた かふの かみ むす かんだか とり こ& 5 き か C ぢょ レ-も 

しさ を與 へる らしかった。 甲 野 は髮を 結びながら、 甲高い お 鳥の 聲を 聞き、 いっか 彼女の な だち 

はな ある をん た おも だ かのちよ す はげ くわい. _v や-つび やつ -; r 

が 話した 成 女の こと を 思 ひ 出した。 彼女 は パリに 住んで ゐる うちに だんだん 烈しい-: m 鄉 病に i 济 

、 ,メ つと 七 も - せ てう さい は いつ ふね C なが かっかい か cy.., 

ち こみ 夫の 灰 だち が歸 朝す るの を 幸 ひ、 一 しょに 船へ 乘 りこむ ことにした。 い 航询も 彼女に 

そんぐ わいく つう か C ぢょ き しう おき きふ こつ ふん 

は 存外 苦痛で はない らしかった。 しかし 彼女 は紀州 沖へ かかる と、 ハ.^ に なぜか 興 蜜し はじめ、 と 

うとう 海へ 身 を 投げて しまった。 ^本へ 近づけば 近づく ほど、 懷 t 鄕.」 1^ も 逆に 2? ふって 來ろ、 I 

ぅパ C しづ あ、,, S ら て ふ 二し A リ しっと もちろん .,ハ のちよ.: J しん し > レ- ノ 

1 甲^ は靜 かに 油つ 手 を 拭き、 腰ぬけのぉ^:;lの嫉:^は勿論、 彼女 自身の 嫉^に もや はり かう ームふ 

一, i ■ ひ ナ. よ - - ン 、 ■- : 

祌祕な 力が 概 いて ゐる こと を考 へたり して ゐた。 

「まあ、 お Era さん、 どうしたん です? こんな 所まで 這 ひ 出して 來て。 お母さんった、 り。 n 屮 

の V; くだ 

野さん、 ちょっと 來て 下さい。」 



246 



、-す -- み】 はな ちか え Z がに > び く かんみ こ, 05 & と Av す わた 

お 鈴の 聲は 「離れ」 に 近い 緣 側から 響いて 來る らしかった。 甲 野 はこの 聲を 聞いた 時、 澄み渡つ 

いがみ わか はじ かいせ. つ も おどろ ただいま , 、ん 

た 鋭に 向った まま、 始めて にやり と 冷笑 を:^ らした。 それから さも 驚いた やうに 「はい 唯々」 と 返 

事 をした。 

五 

,-ス かく すゐ じゃく い かれ なが:;; -ん び や-つく も, つんん かれ せ なか 二し とこ いた 

玄鶴 はだんだ ん袞 弱して 行った。 彼の 永年の 病苦 は 勿論、 彼の 北 n 中から 腰へ かけた.^ やれの^ 

かれ とキ, Ax ,つな 一 あ わ-つ くる かれ たや 

み も 烈しかった。 彼 は 時々^ り聲を 擧げ、 僅かに 苦しみ i 粉ら せて ゐた。 しかし 彼 を 惱ま せた も 

な.. にす にくたいてきく っ.^' かれ よし とま あ ひだ た せう なぐさ う かに 

のは必 しも 肉體的 苦痛ば かり で はたかった" 彼 はお 芳の 泊って ゐる 11 は 多少の 慰め を 受けた 代り 

ヒり しっと 一一 ども "に,: ハ- くる かん よ 

に お の 嫉^ や 子供た ち の i は嗶 にしつ き り な い 苦しみ を .0 じ て ゐた。 けれども それ は まだ 善 か つ 

たレ 玄 鶴 はお 芳の 去った 後 は 恐し い 孤獨を 感じた 上、 長ぃ彼の1 生と{i:ひ合はなぃ訣には:;;^;^な. 

かった。 

げ Z か: いっしゃう い かれ い か あ V. いつ, しゃう なるほど いん とくき よ 5 たらぐ J 

玄 鶴の 一 生 はかう 云 ふ 彼に は 如何にも 淺 ましい 一 生だった。 成程 ゴ ム 印の 特許 を, けた^ 座 は 

. になぶ だ さは ひ く た- rlj.,. ひ か X てきかれ いっしゃう あか じだい ちが 

li 花札 や 酒に 日 を 暮らした 當座は 比較的 彼の 一生で も 明るい 時代に は 遠 ひなかった" しかし そ 



247 



こ に も の 嫉妬 や 彼の 利益 を 失 ふ ま い と す る彼自^!;' の 焦燥 の 念 は 絶えす 彼 を 苦し め て ゐ た。 ま 

かこ だ ?, . ^れ か てい 、 /• ,> ゝ w へ." かれら し ..J-;J く め,, 

して あ:. 方 を圍. ひ した 後 は、 —— 彼 は 家庭の いざこざの 外に も 彼等の 知らない 金の エ^に いつも 

重 荷 を 背 负 ひ つ づ け だった。 しか も ま に淺 ましい こ と に は 年の 若い お 芳に惹 かれ て ゐ た ものの、 

すくな いちに ね ス なズど ないしん よしお や こ し .:.:; も し 

少く ともこの 一 二 年 は 何度 :2: 心に ぉ芳 親子 を 死んで しまへ と つた か 知れなかった。 

て カスカみ 力,、 ベ つ かさ 

「淺 ましい? しかし それ も考へ て 13^ れば、 格训 わし だけに 限った ことで はない。」 

V 力- よる カズ 力 かれ しス せき ち じん い 4*.-/ ヽこま おも だ かれ もちお や 

彼 は 夜な ど はかう- ズ ノ、、 彼の 親戚 や 知人の こと を 一 々細かに 思 ひ 出したり した。 彼の 婿の 父 鋭 

ぶん 々い よ-クー.. 一 ため かれ うで き てき なんにん しゃく わいて き ころ かれ 

は:^ 「憲政 を * 護す る爲 に」 彼よりも 腕の 利かない 敵 を 何人も 社會 的に 殺して ゐた。 それから 彼に 

いにば/した ある ねんば い こつと つや せス ざい わすめ つう ある べんつ i し きょうたくきん ひ せう 

^親しい 或 年輩の 董屋は 先赛の 娘に 通じて ゐた" それから 或 辯 護士は 供託金 を费 消して ゐたリ 

ある てんこく か やぶら を か つみ ふ し ぎ かれ くろ なん へぐ くわ あた 

それから 成 篆刻 家 は、 . I しかし 彼等の 犯した! は 不思議に も 彼の 苦しみに は; 1: の變 化も與 へた 

かった。 のみな ら ザ 逆 に 生 そのもの にも 暗い 影 を 擴 げ るば かりだった。 

「H、 この 苦しみ も畏 いこと はない。 お::: 出度くな つてし まひ さへ すれば …… 」 

, げんか ソ、 01 ひと なぐさ かれ しんしん く く くる 

これ はぶ 鶴に も殘 つて ゐ たたった 一 つの 慰めだった。 彼 は 心身に 食 ひこんで 來 るいろ いろの 苦 

4、 ぎ ため たの- き おく おも おこ かれ いっしゃう まへ い あ V 

しみ を 紛らす 爲に I 木し い 記- M を 思 ひ 起さう とした。 けれども 彼の 一 生 は 前に も; 百った やうに, ま 



243 



しかった。 若し そこに 少しで も赫 かしい 一面が あると すれば、 それ は 唯 何も 知らない 幼年^, 化の 

き おく かれ たび ゆめ あ ひだ かれ りゃう しん す しんしう ある V.- ん はふ む C 

記憶 だけだった。 彼 は 度た び 夢うつつ の に 彼の 兩 親の 住んで ゐ た.^ 州の 或 山 峽の村 を、 !- 殊 

に 石 を 置いた 板葺き 屋根 ゃ蠶 臭い 桑 ボャを S 心 ひ 出した" が、 その 記惊も つづかなかった。 彼 は 時 

ど ユ.」 うな ご ゑ あ ひだ くわん C1 んぎ やう とな み わかし うた み ^-..-.i.i ス く.? z ザ 

時 唸り 聲の 問に 觀音 經を唱 へて 見たり、 昔の はやり 歌 をうた つて 見たり した" しかも 「妙. 背 觀ゅ 

おん ぽん おんかいて うおん しょうひせ けんおん セ な のち つに い 

音、 梵昔 海潮音、 勝 彼 化 問 f?jH」 を唱 へた 後、 「かつ ぼれ、 かつ ぼれ」 をうた ふこと は: ffi:^ にも 彼に は 

勿體 ない 氣 がした。 

ね ごくら,、 ね ごくらく 

r 寢 るが 極樂。 寢 るが 椒樂 …… 」 

げん.. ぐ.、 なに か わす ため ただ ぶむ ヒっ V- いまた^ ふの かれ ため V- いみん やく あた ほか 

玄鶴は 何も彼も 忘れる 爲に唯 ぐっすり^り たかった。 實際又 甲 野 は 彼の 爲に 催眠 藥を與 へる 外 

ちう しゃ れねむ やす か ぎ -, い 

にもへ &ィ ン など を 注射して ゐた。 けれども 彼に は 眠り さ へ いつも,:^ ら かに は 限らなかった. - 彼 

と きぐ ゆめ なか よし ぶんた らう で あ かれ ゆめ なか あか 一三ん 

は 時々 夢の 屮 にお 芳ゃ文 太 郞に屮 :: 合ったり した.」 それ は 彼に は、 11 夢の 中の 彼に は 明るい 心 も 

か れ あるよ ゆめ なか あたら はなふだ さくら に じふ はな 

ちの する も の だ つた。 (彼 は 或 夜の 夢の 中には ま だ 新しい 花札 の r 樱の 二十」 と し てゐ た) しかも 

また さ くら に じふ し ご ねんさ」 へ よし かほ め く- あと ぃプ て. ノ. "れ 

その 又 「櫻の 二十」 は 五 年 前のお 芳の額 をして ゐ たじし かし それだけに ini の 醒めた 後 は 一 ^彼 を 

み げんかく ねむ 今, -.S う 二 ちか ふ あん かん 

見 じめ にした。 玄鶴 はいつ か 眠る ことに も 恐怖に 近 い 不安 を感 する やうに なった." 



房-山 鶴玄 



お ほみ そか ちか ある-ご -ご げんか,、 あ ふむ よ 二 免 くら V - こも 一 

大晦 IZI も そろそろ 近づいた 或 午後、 玄鶴は 仰向けに 橫 たはった なり、 枕 もとの E. 野へ 鼓 を かけ 

た。 

、ふの ひさ ふんどし さら も めん ろ,、 しゃく か くだ 

「甲 野さん、 わし はな、 久しく 撺を しめた ことが ないから、 晒し木綿 を 六尺 買 はせ て 下さい。」 

晒し木綿を乎に^<れることはゎざゎざ近所の吳1屋 へ お 松 を ひに やる まで もなかった。 

「しめる の はわし が 自分で しめます。 こ こ へ #1. んで 置いて it つて 下さ い。」 

げん^く ふんどし たよ ふんどし , 、プ し たよ みじか はんに ナ.' くら 

玄鶴 はこの 禅 を 便りに、 . 1 - この 禅に 総れ 死ぬ こと を 便りに やっと 短い 半 n を 幕した。 しかし 

とこ うへ お なほ ひとで か か 力- ようい f わい え 

床の 上に 起き直る こと さ へ 人 乎 を 借りなければ ならぬ 彼に は 容易に その 機會も 得られなかった。 

し み げんか?、 おそろ かれ う す;….:: でス と-つ ひかり ハぅ",、 

のみなら す 死 はい ざと なって 見る と、 玄鶴 にも やはり 恐. しかった。 彼は滞-附ぃ竟燈の光に黄^^の 

いもぎ やう なが いま せい むさ^ れし しん あざけ 

1 行 もの を 眺めた まま、 未だに 生 を 貪らす に は ゐられ ぬ 彼 自身 を 嘲ったり した。 

「中 野さん、 ちょっと 赶 して 下さい。」 

よる じふ じ ごろ 

それ はもう 夜の 十 時 だった。 

「わし はな、 これから ひと 眠りし ます。 あなた も 御 遠慮なく お休みな すって 下さい。」 

野 は 妙に. M 鶴 を 見つめ、 かう 素つ 氣 ない 返事 をした.〕 



250 



た 今,: 
" 度 こ 
そ は 
(0 ど. 

m う 

夢, mi 
1 に 
m し 
しん て 
力、 下^ 
つ さ 
た い 

は 
木き 



「いえ、 わたくし は 起きて をり ます。 これが わたくしの 働めで ございます から。」 

r < r ,"r ナク、 わく ,パ; ハ ため み や ふ ケん うたづ なに い 

鶴 は 恢の計 畫も甲 野の 爲に赠 破られた の を 感じた" が、 ちょっと 額いた ぎり, 何も;: n はすに 

|§:<り をした。 s% はもの i もとに: t 人雜 誌の 新年 號を ひろげ、 何 か W み 耽けって ゐ るら しか 

"つ,, ノ、 .V とん 一つば ;ん. こし かんが うすめ かふ C み キも 

つた" ま 鶴 はや はり it 團の 側の 襌 のこと を考 へながら、 簿目にw.野をo^;:!^っ てゐた すると — 

に しさ を じた。 

「3.:^ さん。」 . 

III- も .JSftQ 蒙— を 見た 時 はさす が. にぎよ つ としたら しかつ たし 玄鶴は 夜着に よりかかった まま- 

い つかと めどな しに 笑って ゐた。 . . 

r た ん で ご ざ います?」 

「いや、 何でもない。 何にも 一 Hi 夭し いこと はあり. W せん。 —— 」 

鶴 はま だ 笑 ひながら、 細い 右 乎 を 板って 見せたり した" 

「八, 度 は …… なぜか かう 可笑しうな つてな。 …; 

一 時? S ばかりた つ た 後、 玄: 51 は い つ か 眠, つ て ゐ 



房 山 fft 玄 



251 



た屮に 立ち、 腰の 高い 障子の 隙から is- めいた 部屋 を • いて ゐた。 そこに は; < "まる の IVi が T 

人、 こちらへ 顏を 向けて 橫 になって ゐた。 それ は 子供と は 云 ふ ものの、 老人の やうに 湯く ちゃ だ 

げん 力く こも J あ ね あせ つ さ 

つた C 丄 鶴は聲 を擧げ ようとし、 寢汗 だらけに なって 目を^ました。 …… 

「離れ」 に は 誰も 來てゐ なかった。 のみなら すま だ^ 暗かった。 まだ? —— しかし お^は 

丄丄ぃ み か.;; これし やう, ご ちか し かれ こころ "リ しゅん ハし つ, 

引 を a 彼是-」 T に 近い こと を 知った。 彼の 心 は, I 瞬 問、 ほっとした だけに^る かった レ けれど 

も乂 いつもの やつに 忽ち 陰 P になって 行った。 銜は けにな つた まま、 ^が 射の!. g を搬 へて 

ゐた。 それ は J 度 何もの かに 「ん, だぞ」 とせ かれて ゐる I- もちだった。 お^は そつ,; き!?、 

力れ ぶたえ ま りゃうて ひ 

彼 の . 如 に 卷 き つける と 、 兩乎 でぐ つと 引っぱ る や う にした。 

そこ へ r 度顏を 出した の はまる まると^-まれた 武夫だった。 

「や あ、 お 爺 さ んが あんな こ と を し て ゐ ら あ 、し 」 

r,: を はや いっさん ちゃ ま よし - 

武火 はかう 蝶しながら、 一散に 茶の へ.^ つて 1& つた。 

六 



き i 

つ 

つ 
ヒ 



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いな 

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乘。 
つ 

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從リ 
弟 三 
だ 
つ 

た 



彼ォ 力: 
の 

/ふ1 八 • 



2 

5 



Y,iii ばかりた つた 後、 玄 鶴 は 家族た ちに 圍 まれた まま、 肺 核の 爲に絶 〈i した。 彼の f.^ ズ 

せ 、"; - ヒ -- 一 レーり し. *-1 で じ ゆ 力 -tr I y Jrf -, 



t * ,、 二 , こ 二し AJ り マ ォに J^i. I ' 

は (!) だった。 (唯、 腰ぬ けのお 鳥 だけ は その 式に も 出る 訣 にれ かなかった。 j> 彼の {豕 に $1- まつ 

ひとみ、 ち? つき も; つつ ふ くや の うへ しろ りんす お ほ ノ - かれ -6. で へ - :o 、、、 、 も,^ - で一 ク 

ただ々 は に 悔み を 述べた 上、 白い 綸 子に 蔽 はれた 彼の 柩の 前に 燒 香した が 門をリ る 

i ビ はお 抵« のこと を 51 れてゐ た。 ^^"1^¥のき脾輩だけは例外だったのに遠ひなかった。 「あの 

(銀さん も 本望だった らう。 若い 妾 も 持って ゐれ ば、 小金 もた めて ゐ たんだから。」 11 彼等は^;^も 

おな はな. あ ; 

同じ やうに こんな ことば かり 話し合って ゐた 

-L ひつ ビ V; つよう; しゃ -4.- リ やう J しゃ したが ひ ひかりお し はす ほち ある. くわ SJl- ば- 1 

1 の柩 をのせ た 葬 用 馬車 は 一 輛の 馬車 を從 へた まま、 ロの^Kも落ちなぃ^走3^を或火*<^ へ 

と- - だいが- へ. い ぱ 

. > , 、; , ' — : g あの. 火 平^は .15 

レ to^ どうえ う き ぢゅぅ.^ち あま は なし こ 6 た- ほん よ ぶ-し、 二 r- ノ-、 J- • 1 1 1 J 

車の 動 抨= を 氣 にしながら、 重 吉と餘 り 話 もせす に 小型の 本に 讀み耿 つ てゐた それ:: iLlel>km-(.llt 



つん" C. くろ,、 えいやく ぼん r. ゆうき., つ や Y-,A , ため ^ ^> 二 > - : ノ., -」、 爿 V .> 

の 「追憶 錄」 の英譯 本だった。 が、 重吉は 通夜 疲れの 爲に うとうと り をして ゐ なけれ は 窓" 

"も』 の, 隨町を i め T こ の 41 もす つ かり 變っ たな」 などと I 平の な い 獨り語 を:^ らして ゐ た.) 

「う ま ぶ、 -も ち くわ さつば たど つ あら かヒ でんわ ジ」 *T - 

i 一輛 の -ぉ tif は どけ の 道 を や つ と 火葬場 へ 迪り着 い た。 しかし 豫め锺 話 を かけ て わち 合せ て :.;^ 

ハ たのこ も 隠び-す、 f 等の ぎは滿 員に なり、 二等 だけ 殘 つて ゐ ると 一 t ェ ふこと だった U それ はれ 等 



よ vflT.*., ち しう と ぶ:: し v.,^ "「- "よ く かんが よ.? ヂっナ <- どご ュノ 

3 に は どちらで も 善かった。 が、 重 吉は: よりも 寧ろお 鈴の 思 f_ ケど考 へ、 ギ^^の 窓越しに 熱心に 

2 じ 卜む ゐん かう 亡 ふ じつ て おく ぴゃ うにん くわ さう レ i ! とう 

ず務 員と 交涉 した。 「實は 乎; i れ になった 病人 だしす るから、 せめて 火葬に する- i だけ は, T 等に 

いも うそ み パ れ t よ 、- ク,、 - 

したいと m:^ ふんです がね。」 11 そんな 譃も ついて 見たり した。 それ は 彼の 豫 期した よりも 效 I の 

多い II らしかった。 

「、 ゝ I 0- ^5 .J^/f\ ^ん A ズ、 べつ いつとう れっきん とくとう や *C 

「では 力う しませう。 一等 はもう 滿〕 貝です から、 特別に 一等の 料金で 特等で 燒 いて 上げる ことに 

しませう ピ , 

ィ-- 「き 十, いくぶん ま わる か/ なんど ヒむ ゐん れい ひ じむ, ん しんちう め > 5 ■ • < 

PH" は 幾分 か 間の 惡さを 感じ 、 何度も 事務員に 禮を 言 つ た。 ぉ務 は腐鍮 の を かけ た i 人 

ぶ つ にう じん 

物ら しい 老人だった。 

「いえ、 何、 お に は 及びません。」 

かれ.^. • ,^.1?! ふういん のち ろす ぎた な ば しゃ Q くわ さ うば もん で ノ、 : 一 

彼等 は 籠に 封印した 後、 薄 1^ い 馬車に 乘 つて 火葬場の e: を 出ようと した。 すると?:!:^ にもお, 

、; -ク とり、、 力. >- マノん へ . ^"へ たす かれら ば しゃ もくれい ぢ ゆう々,. ち につ i. - 

カー 人 :15 瓦 翁 C ふ に- 4 ^ん だま ま 彼等の-: iill 車に 目禮 して ゐた。 士 :! はちよ つと, 奴^し、 まの, In 

あで かれら ノゾ しゃ とき かたむ ^ ^ 

^ を丄 けようと した,^ しかし 彼等 を乘 せた 馬車 は その 時にはもう 傾ノ きながら、 ボブ ラァ の; S れたゅ i3 

お を 走って ゐた。 



「あれです ね?」 

おれ ォー とき I 

「うん、 …; 俺た ちの 來た時 も あすこに ゐ たかしら」 

こ じき おも をん な へ ふ.. - - -- - - 

「さあ、 乞食ば かり ゐ たやう に 思 ひます がね。 …… あの 女 はこの 先 どうす るで せう?」 

ぢ ゆ う ふ 七 マ っぽん し きし まひ で 今- れいたん へんじ 

重吉は 一 本の 敷 島に 火 をつ け、 出來る だけ 冷淡に 返事 をした。 

「さあ、 どう ふこと になる か。 …… 」 

かれ 、とこ だま かれ ざう ざう か-つ V,- あるかい がん れ ふし 1 ち.^ -o I Jo 

彼の 從弟 は默 つて ゐた。 が、 彼の, 想像 は 上 總の或 海岸の 漁師町 を 描いて ゐた それ 力ら その M 

師 S に 住まなければ ならぬ ぉ芳 親子 も。 11 彼:^念に險しぃ顔をし、 いっか さし • はじめた = の 光 

たか し 1? ど よ 

の 中に もう 一度 リイ プク ネヒ トを 護み はじめた" 



一 

0$ i は gK- ら i びに I た ぎ K ず 一 つし よに ま i をが に k か はふった. し 

-- L し げん ぽく r^^ ぢょ r'v -. 

^ま? の^ 1^ に 観 の^える こと は觀 でももう 知って ゐる であらう。 現に 僕の 家の 女 巾な ど は 逆 

うつ み あ ひだ しんぶん で しゃし マ" I -., 二.,、, Tew しソ て - ? <|0 

まに,; S の ^ つ た の を 見、 「こ の ^ の 新聞に 屮リ」 ゐ た i や」 そっくりで すよ」」 なと と^ 、もし-」 ゐ ん 

P は聽の ,きり、 まにあ も i ふこと にした。 g 變 シャツ を S た あは さ 

^でもして ゐた のか、 ^まし に^える^ il^ にせつ せと ポンプ を 動かして ゐた。 伤は秦 皮 樹のス 

あ くん あ 7> つ 

テッキ を 擧げ、 君に ちょっと 合 11 をした 

あぶ て. ヒ 今す t- き 

「そっちから.^って下さぃ。 —I . や あ、 も 來てゐ たの 力?」 

0^^は銜が£^^」1っしょに|びに^たものと思ったらしかった。 - 

S rl^iHisi^ 観 を^に^ て^たん だよ。 も r しょ にれ かない か?」 



5 

2 







「蟹 氣樓 か? —— 」 

君 は 急に^ ひ 出した。 

「どうも この頃 は髮 氣樓ば やりだな。」 

五分ば かりたった 後、 僕 等 はもう oi^ と) つし よに の!! いき ビ I ヅてハ ゆった。 ,1 の ま: g だ 

うしぐ る まわ だち ふた く, つ な. ふ- vH - . . 

つた。 そこに 牛車の 轍が 二す ぢ、 I? ろと 斜めに 通って ゐた。 ^はこの&かぃきた!!-^^^か!!!^ヽぉぃ 

力ん た,、 ま ごん さ * しつ J とちと J . 

もの を 感じた。 退し い 夭. 才の 仕事の 痕、 11 そんな 氣も 迫って 來な いのではなかった。 

「まだ 僕 は 健全 ぢ やない ね。 ああ 云 ふ 車の 痕を 見て さへ、 g に つてし まふんだ から。! 

くん .♦"w- なん ぼく こと f こた く こ 二, リ 

CE?; は 屑 を ひそめた まま、 何とも 僕の 言葉に 答. へなかった。 が、 俊の 心 もち は oi^ に ははつ き 

り 通じたら しかった。 

そのうちに 霧 は 1 の p、 —f らに g い g の f:,. きり、 き i の? g あいてび つた。 ^は 

ぎ レ砂濱 の 向う に 深い 藍色に 晴れ渡って ゐた。 が、 緒の 島 は" お,^ ゃ樹 -.1^ もた 吐か: まに^ 3 つてち ヒ。 

しんじ だ 、 

「新時代です ね?」 

K 君の 言葉 は 唐突だった。 のみなら す 微笑 を 含んで ゐた C ^^^9 —— しかも i は 雜!! の if に 



V 、ん しんじ だい はっけん すな ど ささが き うし 5, み なが なんぶよ, I -3 も.,/」 "il.:!: 、 

K 君の 「新時代」 を發 見した。 それ は 砂 止めの 接 垣 を 後ろに 海 を 眺めて ゐる sf^ 女だった 尤も^い 

4.- か をれ ズぅ をと-一 しんじ だい よ あた をん な だ r んば: つ .1 ち. S ん * 

インバネスに 中折帽 を かぶった は 新時代と 呼ぶ に は當ら なかった。 しかし 女の 斷變は 勿論 バ 

かかと ひく くつ たしか しんじ だい で き あが 

ラ ソル や 踵の 低い 靴 さへ 確に 新時代に 出來 上って ゐた 

ふ う ふ く 

「幸福ら しいね。」 

きみ う. IT やま なかま 

「君なん ぞは 羨し い 仲間 だら ぅピ . 

君 は K 君 をから かったり した。 

しんき ろう み ば しょ かれら いっち やう へだた |! 义ら 、 ノ はふ^ - W 、 、 >^A,;- ^ 

餐氣樓 の 見える 場所 は 彼等から 一 ほど 隔 つて ゐた 僕 等 は いづれ も 腹 這 ひに なり ^炎の ふぶ 

すなはま か は 1-1 す なが すな はえ うへ あ を ひと... - ) - 

つた 砂濱を 川越しに 透かして 眺めたり した。 砂濱の 上に は靑 いものが 一 すち リボン ほどの 札に 

5 み いろ かげろ ふ うつ ほか r ん"^ i 

ゆらめいて ゐた。 それ はどうしても 海の 色が 陽炎に 映って ゐる らしかった。 が その外に は 砂..^ 

にある 船の 影 も 何も 見えなかった。 

しんき ろう ノ 

「あれ を 屡 氣樓と 云 ふんです かね?」 

くん あつ) す」^" しっ^-ぅ い . からす )》t .M 

K 君 は 顋を砂 だらけに したな り、 失望した やうに かう 言って ゐた C そこへ どこから か 鴉が 一羽 

5 にさんち やうへ だた すな, Hi うへ あんいろ うへ , さら またれ か ^ 、 V が > : じ 

2 二三 町隔 つた 砂 濱の上 を、 藍色に ゆらめいた ものの 上 を かすめ 更に 乂向 うへ 舞 ひ 下った と. 1^ 



259 



時に 狼の 影 は その Ei 炎 の帶の 上へ ちらりと 逆 まに 映って 〔むつ ヒ。 

1 , じ やうとう ぶ 

「これで もけ ふ は 上等の 部 だな。」 

^くら くん こと, いつ す 」* うへ んー あが F! 

僕 等 は 君の 言葉と 一 しょに 砂の 上から 立ち上った。 するとい つか glj- のまに は II- のおして 

& しんじ だい ふたり む ある 

來た 「新時代」 が 二人、 こちらへ 向いて 歩いて ゐた。 

僕 はちよ つと びっくりし、 僕 等の 後ろ を ふり y つた。 しかし1|-は.^1»ぃ「^^ど1ぅの掘.^ 

5 し なに. H な tr - つ 

を 後ろに 何 か 話して ゐる らしかった。. 徵 等 は、 II に oif は i や,! けの したやう に繁ひ I- し、」: 

はう かへ しんき ろう 

「こ の 方が 反って 蟹 氣樓ぢ やな いか?」 

俊 等の 誉にゐ る 「^11?」 は^ iip とは^:^ だった。 が、 ^が^ 1^ や が を かぶつ 411; 

かれら ほ とん か は 

は 彼等と 殆ど 變ら なかった。 

ぼく なん きみ わる 

「僕 は 何だか 氣 味が 悪かった。」 

ぼく ま 4 おも 

「僕 もい つの 問に 來た のかと 思 ひました よ。」 

僕 等 はこん な こと を i しながら、 ぉ|5き^の^^に|はすに黻ぃ|!をまぇー」デっ.た^ お^ 

すな ど さ ざがき •*。 そ ひく まつき , 

は 砂 止めの^ 垣の 祸に やはり 低い 松 を 黄ばませて ゐた。 oi" は そこ を f る f に 「どつ こ ハ しょ」 と 



• きふ やうに^ を かがめ、 ^の^の を 1^ ひゼ げた。 それ は k 円らし い m 枠の 中に 桢 文字 を 並べ 

き ふだ ; 

た 木 札だった。 

「ぼ だ、,、 そ 小 は? S1, H. …… .ulsa A.l〕l.ilo J.al.o 1906 」 

「ぜ かしら? dua …… Majesta …… です か? li としてあります ね。」 

「これ は、 ほれ、 水葬した 死骸に ついて ゐ たん ぢ やない か?」 

. くん い すゐ そく くだ ' :o 

君 はかう 云 ふ 推彻を 下した 

ン : , す 3 さう とき ま ぬの なに つつ 

「だって 死^ を 水葬す る 時には 帆布 か 何 かに 包む だけ だら う?」 

「だから それへ この をつ けて さ。. I . ほれ、 ここに k が 打って ある。 これ はもと は 十字架の 形 

をして ゐ たんだな。」 

? 、つ とき べつ さう し がき まつばやし あ ひだ ある :3.*.へ、ふ《^-、 I "ト:^ r> ...It^Jr は 二 r4 

徴!. はもう その i に は, 莊 らしい 篠垣ゃ 松林の 間を步 いて ゐた。 木 札 はどう もり, の 推 に T」 

チ、 またな に ひ ひかり なか ^v. X ? 1ナ> 、ヽ 14 いひ :t; ^二 こ。 

い, ものら しかった。 僕 は 叉 何 か 日の 光の 中に 感じる^ のない 無 I 米 味 さ を 感じた 

「緣起 で もない もの を 拾った な。」 . 

はたちぐ らん し — 

^ .「.^、 街 は マスコット にす るよ。 …; しかし 190G から 192G とすると、 二十 位で 死ん だんだ な 



樓氣蠻 



261 



二十 位と 1 .」 

をと こ をん な 

rsR です かしら? 女です かしら? I 

1 I I. 3 と, かく ひと あ ひのこ し 

「さあね …… しかし 鬼に 角 この 人 は 很血兒 だった かも 知れない ね。」 

僕 は K 君に 返事 をしながら、 船の 中に 死んで 行った 混血 兒の I 円い f を した。 ^ は 僕の ぎ 像, に 

に ほんじん はよ ょナ 

よれば、 日本人の 母の ある 箸だった。 

しスき ろう 

r 蟹氣樓 か。」 

> : ? 寸"; • - だ, み 二- » S - ひと _-) と い あるひ なに い ことば 

君 はまつ 直に ボを 見た まま、 きに かう 獨り語 を 言 つた。 それ は 或は 何げ なしに 言 つ た 言葉 か 

し f. ^く 1 - 二ろ こ. a, 十 S. 

も 知れなかった。 が、 僕の、.? もちに は 何 か 幽かに 釅れる ものだった。 

--ぅ ちゃ ゆ 

「ちょっと 紅 茶 でも 飲んで 行く かな。」 

1 、いへ お ほ ほんど ほ かど たた サ ■ い へお ほ .r な .f, みち ? -C 

僕 等 はいつ 力 家の 多い 本通りの 角に 佇んで ゐた。 家の 多い? —— しかし 砂の いた 道に は, 財 ど 

ひと ど ほ み 

人通り は 見えなかった。 . 

くん • 

一 K はどうす る の?」 

く 条 

「簾 はどうで も、 :::」 . : 



まっしろ いぬ いっぴき むか を た き 

そこ へ 属 白い 犬が 一 匹、 向う から ぼんやり 尾 を 垂れて 來た。 , 

くん とうき やう かへ ちぽく また くん つま いつ ひきぢ が は はし わた い こんど ご ご 

K 君の 東京へ 歸 つた 後、 僕 は 又 君 や 妻と 一 しょに 引地 川の 橋 を 渡って 行った。 今度 は 午後の 

しち じ ひろ S ふめし 

七 時 頃、 . i 1 夕飯 をす ませた ばかりだった。 

まし み Hi くら あま はなし ひと すなはま ある い すなはま 

その 晚は星 も 見えなかった。 僕 等 は 餘り話 もせす に 人げ のない 砂 濱を步 いて I:;: つた" 砂: m に は 

ひきぢ が は か はぐち ほ ひと うご おき れふ い ふね め 

引地 川の 川口の あたりに 火 かげが 一 つ 動いて ゐた。 それ は 沖へ 漁に 行つ た^の 目 じる しになる も 

のらし かった。 

なみ おと もちろんた なみう ぎ は ちか いそくさ つよ だ , 

浪の音 は 勿論 絶えなかった" が、 浪 打ち 際へ 近づく につれ、 だんだん 礎 奥 さも 强まリ した。 

うみ ぼ 二ら あし う あ うみぐ さ しほぎ に ほひ ぼく 

それ は 海 そのものよりも 僕 等の 足 もとに 打ち上げられた 海 艸ゃ汐 木の 勻 らしかった" 僕 は なぜ 力 

に ほひ はな ほか ひふ うへ かん 

こ の勻を 鼻の 外に も 皮膚の 上に 感じた。 

* ゅフ、 ら しばら なみう ぎ は た なみ ほのめ なが うみ み ノら - : 

僕 等 は 暫く 浪 打ち 際に 立ち、 浪 がしら の くの を 眺めて ゐ た。 海 は どこ を 見ても まつ 一お だった 

く かれこれ じふ ねん まへ かづ さ あるかい ゲん たいざい おも だ どうじ • i,.-. い • つ , - , - 

僕 は 彼是 十 年 前、 上 總の或 海岸に 滯 在して ゐ たこと を 思 ひ 出した。 同時に 又 そこに 一 しょに ゐた 



愤氣麼 



253 



t^^.A おも だ かれ かれ t しん ベ.,、々. や-つ ほ か いもが ひ まく たんべん -f .A 

ず 友 だち のこと を 思 ひ 出した。 彼 は 彼 自身の 勉強の 外に も 「t 于粥」 と 云 ふ 僕の 短篇の 校..^ f を諫ん 

で くれたり した。 …… 

くん なみう ぎ は > つ M ん 

そのうちに いっか 君は浪 打ち 際にし やがん だま ま、 一 ポの マツ チを ともして ゐた。 

なに 

「何 をして ゐ るの?」 

なに * 

rj^ つて こと はない けれど、 …… ちょっと かう 火 をつ けた だけで も、 いろんな ものが がえ るで 4,J 

う?」 

べん かた ご.. - . ヌく ら- み あ なか つま ,はな なるほど >っ¥- ん J ,f ,a 

ol??; は 肩 越しに 僕 等 を 見上げ、 半ば は 妻に 話しかけ たりした。 成程, ^のマ ツチの, 火 はぎ 松 ふ 

て ん ぐ さ ち なか かひ がらて だ くん 《き 

さや、 七 太!: の 散らかった 中に さまざまの 只殼を 照らし 出して ゐた。 君 は その 火が 消えて しま ふ 

また あら す なみう ぎよ ある . 

と 又 新たに マッチ を 招り、 そろそろ 浪 打ち 際を步 いて 行った。 

き み わる ど ざ ゑ もん あし おも 

「や あ、 氣 味が 惡 いな。 土左衛門の 足 かと 思った。」 

, な 力、 . ^な うづ いうえい ぐつ かた またう みぐ さ な.^ お ま ^ > 

それ は半ぱ 砂に 埋まった 游: 冰 靴の 片 つぼだった レ そこに は 又 海艸の 中に 大きい ぎ もころ がつ 

てゐ た。 しかし その 火 も 消えて しま ふと、 あたり は 前よりも 暗くな つてし まった。 

ひるま え もの 

r 晝問 ほどの 獲物 はな か つ た;! S だね。」 



264 



「獲物? ああ、 あの 札 か? あんな もの は ざら にあり はしない c」 

ぼくに た ま なみ おと あと ひろ すなはま ひ かへ ぼくら あし すな ほか ヒき, み 

僕 等 は 絶え間ない 浪の昔 を 後に 廣ぃ 砂濱を 引き返す ことにした。 僕 等の 足 は 砂め 外に も 時々 海 

艸を 踏んだり した。 

「こ こい ら にも いろんな もの が あるんだ らうな あ。」 

「もう 一度 マッチ をつ けて 見よう か?」 

「5- いよ。 …… おや、 鈴の 音が する ね。」 

ぼく みみ す n ろ ぼく お ほ さく. A く おも . ため じつ さ 一す 卞 

僕 はちよ つと-耳を澄ました。 それ はこの 頃の 僕に 多い 錯覺 かと 思った 爲 だった。 が、 實際 鈴の 

音 は どこかに して ゐ るのに 違 ひなかった。 僕 はもう 1 度 君に も 聞え るか どうか 尊ね ようとした" 

に さん ぼ おく つま わら -. ぼくら はな 

すると 一 一三 歩 遲れて ゐた妻 は 笑 ひ 聲に僕 等へ 話しかけた" 

ぼっくり すす な 

「あたしの 木履の 鈴が 嗚 るで せう。 11 」 

しかし 妻 は 振り返らす とも、 草履 を はいて ゐ るのに 違 ひなかった。 

こんや 二 ども つくり ある 

「あたし は 今夜 は 子供に なって 木履 を はいて 步ぃ てゐ るんで す。」 

お,、 V- もと なか な f ァ 

「奥さんの 袂の 中で 鳴って ゐ るんだ から、 —— ああ、 Y ちゃんの おもちゃ だよ) 鈴の ついた セル 



樓氣' 虔 



265 



ロイドの おもちゃ だよ。」 

, ^、ん い b らだ つま まくら お さんにんい ちれつ ある い 

も かう 言って 笑 ひ 出した。 そのうちに 妻 は 僕 等に 追 ひっき、 三人 一列に なって 歩いて 行つ 

ぼくら つま じ やう だん きく わい まへ げんき よな 

た。 僕 等 は 妻の 常談 を機會 に 前 よりも 元氣 に, i し 出した。 

ぜ" べん ゆめ はな ある ぶんく わち ゆうた く まへ じ どうしゃ うんてんしゅ なし 

僕 は 君に ゆうべの 夢 を 話した。 それ は 或 文化 住宅の 前に トラ ッ ク 自動車の 運轉. f と^をして 

ゆめ ? 1! く ゆめ なか たし うんてんしゅ あ おも 

ゐる 夢だった。 僕 は その 夢の 屮 にも 確かに この 運 には會 つた ことがあ ると 思って ゐた。 が、 

あ め のち 

ど こ で會 つ たも のか は 目 の 醒めた 後に も わから なか つ た。 

1 ノ,. , „ お f だ . み- . さんよ ねん まへ いちど だんわ ひっき き ふ じ/き しゃ 

「それが ュと& ^ひ 屮,. して ると、 三 S: 年 前にた つた 一 度 談話 筆記に 來た 婦人 記老 なんだ がね。」 

をん な うんてんしゅ 

「ぢゃ 女の 運轉 手だった の?」 

もちろん をと こ かほ ただ ひご いちど み あた i 

「いや、 勿論 男なん だよ。 顏 だけ は 唯 その 人に なって ゐ るんだ。 やつば り 一 度兑 たもの は 頭の ど 

こかに 殘 つて ゐ るの かな。」 . 

かほ いんし やう つよ 

「さ うだらうな あ。 額で も 印象の 强 いやつ は、 …… 」 

f ひと かほ .^ょ,っみ なに かへ きみ わる 

「けれども 僕 は その 人の 顏. に 興味 も 何もな かったん だが ね。 それだけに 反って^ 味が. 惡 いんだ。 

なん い しき し 今- ゐ そこ 4., 

.ii: だか 意識の 閾の 外に も. いろんな ものが ある やうな 氣 がして、 …… 」 



266 



「つまり マッチへ 火 をつ けて 見る と、 い ろん な ものが 見える やうな もの だな。」 

ほく はな ぐうぜん ぼくら かほ み ± っナし 々しあ.. J 

僕 はこん な こと を 話しながら、 偶然僕等の顏だけははっきり見ぇるのをl,"b^Jた。 しかし 星 明 

/み J , 、 ほへ す こ か は ぼく A たなに ぶ & み なんど そら あ ふ み 

りさへ 見えない こと は 前と 少しも 變ら なかった。 僕 は 又 何 か無氣 味に なり、 何度も 空 を 仰いで 见 

き み なんい ぼく ぎ もん へ/" じ 

たりした。 すると 妻 も 11* づ いたと 見え, まだ 何とも 言 はない うちに 僕の 疑問に 返事 をした。 

すな 

「砂の せゐ です ね。 さう でせ う?」 

つま り や, T そで あは ひろ すな, H ま かへ 

妻 は 兩袖を 合せる やうに し、 廣ぃ 砂濱 を ふり 返って ゐ た-" 

「さう らしい ね。」 . . 

「け. な ^ - い たづら しんき ろう こしら おく しんき ろ. つ 

「砂と 云. V やつ は惡戲 もの だな。 蠻1 颯樓 もこ, いつが 持へ るんだ から。 …… 奥さん はま だ 蜃氣樓 を 

見ない の?」 

あ ひだい ど なん あ を み 

「いいえ、 この 問 一度、 11 何だか 靑 いものが 見えた ばかりです けれども。 …… 」 

Hi く み 

「それだけで すよ。 け ふ 僕たちの 見た の も。」 

ぼくら ひきぢ が は はし わた あ-つ. fh や ど て そと ある い ま つ みな おこ だ かで 

僕 等 は 引地 川の 橋 を 渡り、 東 家の 土手の 外を步 いて 行った。 松は告 いっか 起り 出した 風に こう 

:ナも 5 な せい ひく をと こ ひとり あしばや く ぽく 

こうと 枬を 鳴らして ゐ た-」 そこへ 脊の 低い 男が 一人、 足早に こちらへ 來る らしかった。 僕 はふと 



愤氣蠻 



267 



なつみ ある v.- くかく おも だ いばん えだ かみ 

こ の 夏 见た或 錯覺を 思ひ屮 Z した。 それ はや はり かう 云 ふ 晩に ポプラ ァの 枝に かかった 紙が へ ル メ 

f 5 み をと こ さく かく たが ひ ちか 

ット帽 の やうに 見えた のだった。 が、 その 男 は錯覺 ではなかった。 のみなら す 互に 近づく のにつ 

むね み 

れ、 ワイシャツの 胸な ども 見える やうに なった。 

I だら う、 あの ネクタイ • ピン は?」 

ぼく こ ごふ; い のち たち ま おも まきたばこ ひ はっけん つ i 

俊 は小聲 にかう 言った 後、 忽ち ピン だと 思った のは卷 煙草の 火だった の を發见 した。 すると 

たもと く は たれ さき しの わら だ をと こ め ぼくら 

は 袂を銜 へ、 誰よりも 先に 忍び 笑 ひ をし 出した。 が、 その 男 はわき 目 も ふらす にさつ さと 僕 等と 

すれ 遠って 行った。 

「ぢ やおやす みたさい。」 

「おやすみなさい まし。」 

ぼくら 今, - がる くん わか まつかぜ おと なか ある い た i つ かぜ おと なか むし こ-^ 

僕 等 は 氣輕に 君に 別れ、 松風の 音の 中 を 歩いて 行った。 その 又 松風の 昔の 中には 蟲の I 嫁 も か 

すかに まじって ゐた。 . 

ざんこん しき 

「お ぢ いさんの 金婚式 はいつ にな るんで せう?」 • 

い ちち 

「お ぢ いさん」 と 云 ふの は 父の ことだった。 



「ヽ、 i とうさ やう 

rv つになる かな。 …… 東京から バ タ はと ど い て ゐ る ね? 

r バ タは まだ。 とどいて ゐ るの はソ ウセ H ヂ だけ。 一 

ぼくら もん まへ J ^ t f 

そのうちに 僕 等 は 門の 前へ 11 51. 開きに なった i: ん のまへ 



どうか KapDa と發- • せして; 卜 



序 、 

ある 亡い しんび やう ゐ A くわん じ や だいに-じふさん がう たれ .H なし れ さん ゥ," た 

これ は 或 精神病院の 忠者、 . I 第二 十三 號が 誰に でも しゃべる Ig である。 彼 はもう 三ゼを 越し 

- - いつはん , - ところ い か わかく キ- やう;: J ん .,;- れ はんせ ノ ナぃナ 0- 

てゐ るで あらう。 が 一 見した; S は 如何にも 若々 しい 狂人で ある。 彼の 半生の 1^ 驗は、 11 いや、 

* ノ . よ, カオ ただ りゃう ひざ とき- SL\ ,まど そと め V: がう し 

そんな こと はどうで も 善い。 彼 は唯ぢ つと 兩膝を かかへ、 時々 窓の 外へ 目 を やりながら、 (鐵 格. J 

まど そと か は み . ^しきいつ ぼん ゆきぐも そら えだ 乙ん す, r: ソ 

を はめた 窓の 外に は 枯れ葉 さ へ 見えない 徑の 木が 一 本、 雪 曇りの { 仝に 枝 を!^ つて ゐ た。) 院長の S 

け かせ ぼく あ ひて ながく はなし もっと み リナ -I 

博士 や 僕 を 相手に 長々 とこの 話 を しゃべり つづけた。 尤も 身ぶ り はしなかった ii ではない。 ま は 

おどろ い . とき きふ かほ ぞ 

たと へ ば 「驚いた」 と 一一 m ふ 時には 急に 額 をのけ 反らせた りした。 …… 

一. 1、 く い かれ はなし か せいかく うつ も またたれ ぼ,、 ひっき あ た 

僕 はかう 云 ふ 彼の 話 を 可な り 正確に 寫 したつ もりで ある。 若し 又 誰か 僕の 筆記に 飽き 足りたい 

ひと とうき やうし ぐ わい むら せいしんび やう ゐん たづ み よ とし わか だいに じふ. a ん.. ;-ぅ 

人が あると すれば、 東京 市外 X X 村の S 精神病院 を 尋ねて 兒 るが 善い。 年よりも 若い 第二 十三 號 

ていねい あたま さ ふ とん いす ゆび パぅ うつ ブ せう う しづ 

はま づ 丁寧に 頭 を 下げ、 蒲團 のない 椅子 を 指さす であらう C それから 褒 |^) な 微笑 を 浮かべ、 か 



はなし く かへ V.- いご ぼく はなし を は とき ふれ かはいろ お ぼ J!. は 

1 にこの 話 を 繰り返す であらう。 取 後に、 I -僕 はこの 話 を 終った 時の 彼の 額 色を覺 えて ゐる C. 彼 

7 

は:: 取 後に 身 を 起す が 早い か、 忽ち 拳骨 を ふりま はしながら、 誰に でも かう 怒 りつけ るで あらう リ 

で い あくた う き さ i ばか しっと ぶか わいせつ づ, r/\ ぼ 

11 r 屮 Z て 行け! この 惡黨 めが! 貴様 も 莫.! な、 嫉^深い、 察な、 n 々しい、 うぬ 惚れき つ 

た、 殘 酷な、 蟲の い 動物なん だら う。 出て 6: け! この 惡黨 めが!」 

さん!^ ん まへ なつ ほ,、 ひ. V な せ お かみ かう ち ゃス せんや ど 5 

三年 前の 瓦の ことです。 僕 は 人並みに リ ユック, サック を背负 ひ、 あの h 高地の、 闪.! ,:: 水おから, g 

たかや ま のぼ ほ たかや ま のぼ 一 ごしょうち とほ あ-つ さが は ャ-か C ぼ ほ^ ま、 

高山へ な マら うとし ました。 德高 山へ 登る のに は 御 承知の 通り 梓川 を 溯る 外はありません。 俟は: 

ほ たかや ま もちろん やり たけ の ほ あさぎり お お-つ. が H たに .li: ん た-しゃ 0^. 

に 機 高山 は 勿論、 搶ケ 岳に も 登って ゐ ましたから、 朝霧の 下りた 梓川の 谷 を 案 :2: 者 もつれす に 登 

ゆ あさぎり お あ-つ さが は たに .< ?リ は ^ IV. み 

つて!;;: きました。 朝霧の 下りた 梓川の 谷 を —— しかし その 霧 はいつ までた つても 晴れる 景色 は 見 

カハ パカ ほく いも ヒ かん ある C ち ぃナ, ど かみ かう ち. をん せん 

えません。 のみなら す 反って 深くなる のです。 僕 は 一時 問ば かり 步 いた 後、 ー度は上高,地の溫^:水 

f ど 、 ひ かへ おも かみ かつち ひかへ と か,. ャリ i 

1 1 侣へ rin き 返す ことにしようかと 思 ひました。 けれども 上 高地 へ 引き返す にしても、, 见に角 霧の 晴 

.ijsll ノ i うへ い 今り いつ 二く-ごと ふか 

れ るの を 待った 上に しなければ なりません。 と 云って 霧 は 一 刻 毎に すん すん 深くなる ばかりな の 



272 



いつ の Si 6i く かんが あ. つ V. が は たに はな く *, や-さ 

です。 「ええ、 一 そ 登って しまへ。」 11 僕 はかう 考 へました から、 梓川の 谷 を 離れない やうに 熊^ 

の 中 を 分けて 行きました。 . 

ぼく め さへ ぎ か きり もっと とき- SL^ 今. り なか ふと ぶ な もみ えだ 

. しかし 僕の 目 を 遮る もの はや はり 深い霧ば かりです。 尤も 時々 霧の 中から 太い 毛. il^ti や 樅の 枝 

あ を は た み わけ また +i う ぼ,、 5i うし 4- っ^ん^ く 

が靑ぁ をと 葉 を 垂らした の も 見えなかった 訣 ではありません。 それから 乂 放牧の 馬 や 牛 も 突然 僕 

まへ かほ だ らみ おも .,に ち i またもう く キり なか かく 

の 前へ 顏を 出しました。 けれども それ 等 は 見えた と 思 ふと、 忽ち 义漠々 とした 霧の 屮 に^れて し 

あし く はら へ >- り 

まふので す。 そのうちに 足 も くたびれて 來れ ば、 腹 も だんだん 減り はじめる、 —— おまけに 霧に 

ぬ とほ と ざん ふミ まう ふ な たいてい おも ぼく が を 

濡れ 透った 登山 服 や 毛布な ども 並み大抵の 重さではありません。 僕 はとうとう 我を折りました か 

いは みづ おと たよ あづさが は たに お 

ら、 5 石に せかれて ゐる 水の 音 を 便りに 梓川の 谷へ 下りる ことにしました。 - 

,f み-つ いは こし しょくし くわん 今 

僕 は 水ぎ はの 岩に 腰かけ、 とり-あ へす 食事に とりかかりました。 コ オンド • ビィフ の 纏 を 切つ 

か えだ あつ ひ かれこれ じつ ぶん 

たり、 枯れ枝 を 築めて 火 をつ けたり、 —— そんな こと をして ゐる うちに 彼是. I 分 はたった でせ う" 

あ ひだ い ぢ わる 今. り は く.^ 

その 問に どこまでも 意地の 惡ぃ霧 はい つか ほの ぼ のと 晴れ かかりました。 ti- はパ ンを f: じりな が 

r> で ど けい のぞ み じ 二く いちじ に じつ ぶんす おど, 

ら、 ちょっと 腕時計 を舰 いて 見ました。 時刻 はもう 一時 二十 分 過ぎです。 が、 それよりも 驚いた 

なに き み わる かほ ひと まる うで ど けい ガ ーフ ス うへ かげ おと f おどろ 

の は 何か氣 味の 惡ぃ 額が 一 つ、 圆ぃ 腕時計の 础 子の 上へ ちらりと ^を 落した ことです。 §s 驚い 



n て ふり 小」 りました。 すると、 —— 僕が 河童と 云 ふ もの を 見た の は fjl; にこの 時が ^ めて:, こったので 

す。 僕の 後ろに ある 5 石の 上に は畫 にある 通りの 有 か Tl.- t^f は. S 潜の S をき/、 ^^^i^D 

うへ つ-つ ■ • I 

上に 力 さした なり、 珍ら しさう に 僕 を 見お ろして ゐ ました C 

僕 は-木つ 氣に とられた まま、 慙くは 身動き もしす にゐ ました〕 河童 もや はり いたと がえ、 が 

の 上の ザ さへ 動かしません。 そのうちに 僕 は考ぴ 立つ が いか、 の の!: つ I 里へ 離り かかり まし 

た。 问 時に 又 河童 も 逃げ出しました。 いや、 勸 I らく はきげ!: したので せう。 は ひらりと 

したと と、 忽ち どこかへ 消えて しまった のです。 1^ はい 4rsJ ながら、 ^,の! g を^ ま はし 

ました。 すると 河童 は 逃げ腰 をした なり、 1 一一) f メ H トル i ケた i うに I を;! り まって Is- てゐ るの 

です。 それ は 不思議で も 何でもありません C しかし 僕に 意外だった の はつ g ず 1 の If の 15 のこと です。 

J 石の 上に 僕 を 見て ゐた 河童 は 一 面に 灰色 を まびて ゐ ました。 けれども おは 體ぉ f つかり ^いろに 

變 つて ゐ るので す。 僕 は 「畜生!」 とお ほ聲を 舉げ、 もう 一 度 河童へ 飛び かかりました。 ^1 星が, 

河 げ したの は.^ 論です。 それから 僕 は 三十 分ば かり、 ま 1! を, きぬけ、 ^を^び ぎえ • ^づ Ml 

^m, か? ば お 

河童 を 追 ひ つづ: b ました。 



4- っぽ .tH た あし はや けつ V. る おと ぼく む ちう お あ ひだ なんと 

河 宣も亦 足の 早い こと は 決して 猿な どに 劣りません。 僕 は 夢中に なって 追 ひかけ る 1^ に 何度も 

すがた みうしな あし すべ ころ たび お ほ 

もの 姿 を 見失 はう としました。 のみなら す 足 を、, W らして 轉 がった こと も 度た びです。 が、 大きい 

とち き ひつ ん ふ. VI えだ は した く さい は ,に う^く うし いっぴき „ ハジば ゆ V. キ- た 

, 橡の木が 一, 本、 太ぶ とと 枝 を 張った 下へ 來 ると、 幸 ひに も 放牧の 牛が 一 匹、 河童の 往く 先へ 立ち 

ふさ つの ふと め ち ばし を うし . ^つば を うし み 

塞がりました。 しかも それ は 角の 太;;、 目 を 血走らせた 牡牛な のです。 河童 はこの 牝牛 を 見る と _ 

なに ひめい あ ひと たか くまざさ なか う とこ ぼく 

何 か 悲鳴 を擧げ ながら、 一 き は 高い 熊 の 中へ もん どり を 打つ やうに 飛び込みました 僕 は 1 

ぼく おも お ぽく 

-— 僕 も 「しめた」 と 思 ひました から、 いきなり その あとへ 追 ひすが りました。 すると そこに は 僕の 

し あな ぼく なめら かつば せなか ゆびさき おも 

知らない 穴で も あいて ゐ たので せう。 僕 は 滑 かな 河童の 背中に やっと 指先が さはった と m 心 ふと、 

たち ま ふか やみ. なか さか ころ お われ/ \ にんげん こころ い き き いつげ;;" ノぃ 

忽ち 深い 闇の 中へ まつ 逆さまに 轉げ 落ちました" が、 我々 人 問の 心 はかう 云ヌ 危機 ー髮の 際に も 

と よ う かんが ぼく おも ひやう し かみ かう ち をん せんや ど そば かつば ばし 

途方もない こと を考へ る ものです。 僕 は 「あつ」 と 忍 ふ 拍子に あの 上 高地の 溢-:: 水 宿の 側に 「河 童梳」 

^ ± し K も だ さき おな く 

と 云 ふ 橋が あるの を 思 ひ 出しました。 それから、 —— それから 先の こと は覺 えて ゐ ません" 僕 は 

よ 二 だ, i へ 、な-つま に ,f ん i しゃう き 5 しな 

准 目の前に 稻 妻に 似た もの を 感じた ぎり、 いつの 問に か 正氣を 失って ゐ ました. - 一 



^ そのうちに やつと 氣が ついて 見る と、 僕 は 仰向けに 倒れた まま、 大勢の 河童に とり 園 まれて ゐ 

•! ふと くちばし うへ はなめ がね かつば いっぴき ぼく そば ひざ ま-つ ぼ-、 れね ちゃう 

ました。 のみなら す 太い 嘴の 上に 鼻 目 金 を かけた 河童が 一匹、 僕の 側へ 跪きながら、 僕の 胸へ 聽 

しんき あ かつば ぼ 二め み ぼく しづ て iH ね 

診 器を當 てて ゐ ました。 その 河童 は 僕が 目 を あいたの を 見る と、 僕に r 靜 かに」 と 云 ふ 乎 ぼ; 似 をし、 

それから 誰か 後ろに ゐる 河童へ Quax, cjuax と聲を かけました。 すると どこから か 河童が 二 匹、 

^1, ん かこ も- ある 今- ぼく だんか お ほ .ij い かつば わに なか しづ 

擔架を 持って 步 いて 來 ました。 僕 はこの 擔架 にの せられた まま、 大勢の 河童の 群がった 屮を靜 か 

なんち やう すす ゆ ほく りゃうが は なら まち す こ ぎん r どま もが 

に 何 町 か 進んで 行きました。 僕の 兩 側に 並んで ゐる町 は 少しも 銀座 通りと 遠 ひありません。 や は 

ぶ, は、 な き みせ ひよ なら またな I はさ みち じ どうしゃ 

り 毛 生櫸の 並み木の かげに いろいろの 店が 日除け を 並べ、 その 叉 並み木に 挟まれた を 自動車が 

何臺も 走って ゐ るので す。 

ぼく の たんか ほそ よこち やう まが おも あるう ち- なか ^ J のち 

やがて 僕 を 載せた 擔架は 細い 横町 を 曲った と 思 ふと、 或家の中へ^:^-ぎこまれました。 それ は 後 

に 知った 所に よれば、 あの 鼻 目 金 を かけた 河童の 家、 , I チャックと f ムふ ii 者の 家だった のです。 

ぼく こ、 ぎ れい うへ、 ね なに とうめい み-つぐ すり いつば い 

チャック は 僕 を 小 綺麗な ベ ッドの 上へ 寢 かせました。 それから 佝か 透明な 水藥を 一 杯 飲ませ まし 

河 た。 僕 は ベッドの 上に 横た はった なり、 チャックの する ままに なって ゐ ました。 { れ際乂 俟の體 は 

ろく み うご で き ふしぐ いお 

^ 碌に 身動き も出來 ない ほど、 節々 が 痛んで ゐ たのです から。 



- ちにち に さんど かなら ほく しん ざつ き またみ つか いす: どぐ らゐ f さいしょ み 力つ 

チャック は 一 日に 二三 度 は 必す僕 を 診察に 來 ました。 又 三日に 一度 位 は 僕の 最初に かけた 河 

X い れ ふし たづ き かつば われく にんげん かつば し 

童、 . l バッグと 云 ふ 漁夫 も 尋ねて 來 ました。 河童 は 我々 人間が 河童の こと を 知って ゐ るよりも 

はる にんげん し われく にんげん かつば ほく わく かつば に.^ 

遙 かに 人 問の こと を 知って ゐ ます。 それ は 我々 人 問が 河童 を 捕獲す る ことよりも すっと 河童が 人 

げん ー工 くわく お ほ ため な, 、わく い あた われく にんげん ぼく まへ たびく 

間 を 捕獲す る ことが 多い 爲で せう。 捕獲と 云 ふの は 當らな いまでも、 我々 人間 は 僕の 前に も 度々 

かつ! y くに キ- いっしゃう かつば くに す お ほ 3 

河童の 國へ 來てゐ るので す。 のみなら す 一生 河童の 國に 住んで ゐ たもの も 多かった のです なせ 

>. ご らん ぼくら ただかつば に Z げん い とく けん ため はたら く 

と 言って 御覽 なさい。 僕 等 は 唯 河童で はな. い、 人 il であると 云 ふ 特權の 爲に嫩 かすに 〈仪 つて ゐら 

デん ヶ なし ある わか おうろ こうふ ぐうぜん くに き のち めす 

れ るので す。 斑に バッグの 「話に よれば、 或 若い 道路 工夫な ど はや はり 偶然 この 國へ來 た 後 雌の 

河童 を 妻に 娶り、 死ぬ まで 住んで ゐ たと 云 ふこと です。 尤も その 又 雌の 河童 はこの 岡^ 1 の 美人 

うへ をつ と だう ろ こうふ -ご i か めう キ-は い 

だ つた 上、 夫 の 道路 工夫 を 護摩 化すのに も 妙 を 極め て ゐ たと.: K ふこと です。 

T ク、 、つし うか^ ち : に はふり つ さ だ ところ とくべつ ほ 一. M ちゅう みん 

俊 は 一 週 IT ばかりた つた 後、 この 國の 法律の 定める 所に より 、「特別 保護 住 尺」 として チャック 

七 なり す b 一く うち ち ひ わり いか 1- うし や で き あが ^t'^A 

の 隣に 住む ことにな りました。 僕の 家 は 小さい 割に 如何にも 瀟洒と 出來 上って ゐ ました 勿論 こ 

くに ぶんめい われく にんげん くに ぶんめい すくな に ほん ぶんめい あえ たいさ, - , J ^ ^^- -^^ - 

の國の 文明 は 我々 人間の 國の 文明 11 少く とも W 本の 文明な どと 餘り大 はありません。 柱來に 

"ん キ- やく i すみ ち ひ いちだい i たかべ がくぶち い 

面した 客 問の 隅に は 小さい ピアノが 一 臺 あり、 それから 乂 辟.;; に は 額緣へ 人れ た エッティ ンク たど 



ただかん じん うち いす すん ば ふ かつば しんちゃ. つ あ 

7 も懸 つて ゐ ました。 唯 肝腎の 家 を はじめ, テ エブル や 椅子の 寸法 も 河童の 身長に 合 はせ て ありま 

7 

2 こどもへ やい ふべんお も 

すから、 子供の 部屋に 入れられた やうに それだけ は 不便に 思 ひました。 

ひく へや わ. A かつば こと. は なら 

僕 はいつ も 日暮れが たになる と、 この 部屋に チャック や バッグ を迎 へ、 河童の 言葉 をお ひまし 

かれら とくべつ ほ -J ちゅう みん ぼく たれ みな か-つき しん も 

た。 いや、 彼等ば かりではありません。 特別 保護 住 だった 僕に 誰も 皆 好奇心 を 持って ゐ ました 

まいにち けつあつ しら もら よよ い カラス くわいし や しゃち やう 

から、 毎日 血壓を 調べて 貫 ひに、 わざわざ チ. ャック を 呼び寄せる ゲ H ルと云 ふ^子 會 社の 社長な 

へや かほ だ さいしょ はんつき あ ひだ いちばん ほ,.、 した 

ども やはり この 部屋へ 顏を屮 I した ものです。 しかし 最初の 半月 ほどの 問 に 一 ^^と 親しくしたり 

はや はりあの バ ッグ とぜふ 漁夫だった のです。 

あるな まあた た ひ くれ ぼく へ や なか おふし わか あ 

或 生暖かい 日の 暮 で す。 僕 は こ の 部屋の テヱ ブル を 中に 漁夫の バ ッ グ と,;! ひ 合って ゐ ました" 

おも きふ だ i うへ お ほ め いっそうお ほ ぼく み 

すると バッグ はどう 思った か、 に 默 つてし まった 上、 大きい! n を 一層 大きく して ぢ つと 仪を見 

ぼく もちろん めう おも い 

つめました。 僕 は 勿論 妙に 思 ひました から T<5uax, Bag, quo quel quart ?」 と;)" ひました。 これ 

に ほん ご まん やく い へ んヒ 

は 日本語に 飜譯 すれば 、「おい、 バッグ、 どうしたんだ」 と 云 ふこと です。 が、 バッグ は 返 * をし 

た あが した だ もやう どかへ る は と 

ません。 のみなら すいきな り 立ち上る と、 ベろ りと 舌 を 出した なり、 丁度; M の 跳ねる やうに 飛び 

河 

け しき しめ ぼく いよいよぶ きみ いすた あが いっそくと と 

t かかる 氣色 さへ 示しました。 僕 は 愈 無氣 味に なり、 そっと 椅 子から 立ち上る と、 一 足 飛びに 戶 



278 



ぐち At だ ちゃ ど かま だ V- い 丁- 」 しゃ 

口 へ 飛び出さう としました。 丁度 そこ へ ■ を 出した の は 幸 ひに も醫 者の チャックです。 

「こら、 バッグ、 何 をして ゐ るの だ?」 

はなめ がね い にら おそい 

チャック は 鼻 目 金 を かけた まま、 かう 云 ふ バッグ を 睨みつ けました。 すると バッグ は 恐れ 人つ 

み なんど あたま て い 

たと 見え、 何度も 頭へ 手 を やりながら、 かう 言って チャックに あやまる のです。 

あ ひ じつ だんな き み わる おもしろ 

「どうも まことに 相す みません。 资 はこの 旦那の 氣味惡 がるの が而 白かった ものです から、 つい 

てうし Q いた-つら だんな かんにん くだ 

調子に 乘 つて 惡戲 をした のです。 どうか 旦那 も 堪忍して 下さい。」 

三 

f さき はな も: へ かつば い せつめいお かっ^ いえ 

僕 はこ の 先 を 話す 前に ちょっと 河童と 云 ふ. もの を說 明して 置かなければ なりません C 河 荒 は 未 

じつざい ぎ もん どうぶつ ぼ くじ しん かれら あ ひだ す 

だに 實在 する かどう かも 疑問に なって ゐる 動物です。 が、 それ は 僕 自身が 彼等の ii に 住んで ゐた 

いじ やう す こ うたが よ ち 免た い どうぶつ い あたま みじか け もち 

以上、 少しも 疑 ふ餘地 はない 害です。 では 又 どう 云 ふ 動物 かと 云へば、 頭に 短い 毛の あるの は 勿 

ろん て あし み-つか すゐ こかう りゃく で いちじる ちが 

論、 手足に 水擾 きのつ いて ゐる こと も 「水 虎考 略」 などに 出て ゐ るのと 著しい 遠 ひはありません。 

しんちゃう いち こ こ くら ゐ たい V- ゆう いしゃ --じ リ 

身長 も ざっと 一 メ 二 トル を 越える か 越えぬ 位で せう。 體 重は醫 者の チャック によれば、 1 一十 ボ \ 



さし 二つ まれ ご じふなん ぐら ゐ お ほかつ ば い • . 

9 ド から 三十 ボンドまで、 —— 稀に は 五十 何 ボンド 位の 大河 童もゐ ると 言って ゐ ました それから 

2 ぁヒま ざ ゑんす * さら *i たさら ねんれい かな く は 、 > 、 ,^ げん. 

II のまん $ には^ 圓^ の 皿が あり、 その 又 皿 は 年齢に より、 だんだん!: さ を 加へ る やうです 現 

とし さら わか さら ぜんぜんて 4^が いちばん ふ 

に 年 をと つた バ ッグの 皿 は 若い チャックの 皿な どと は 全然 手 ざ はり も 違 ふので す。 しかし 一 桥不 

し ぎ かつ *< ひふ いろ かつば われく にんげん いってい ひふ いろ もピ I 

思議な の は 河童の 皮膚の 色の ことで せう。 河童 は 我々 人間の やうに 一 定の 皮膚の 色 を 持って ゐま 

」t しう ゐ 。ろ おな いろ か は . 、 くさ なか .^fj ) ) 

せん。 & でも その 周 園の 色と 同じ 色に 變 つてし まふ、 —— たと へば 草の 中に ゐる 時には 草の やう 

み どリ、 5 かま -は ,r- へ とき いは は ひいろ か は ノ もらろ、 ん かっぱ か; 5- » 

に綠^ に镇 り、 3}f の 上に ゐる 時には 岩の やうに 灰色に 愛る のです。 これ は 勿論 河 意に^ら す 力 

あるひ かっぱ ひふ そしき うへ なに ち か, ところ も,. 、 ) 

メ レオ ン にも ある ことです。 或は 河童 は 皮膚 組織の 上に 何 か カメ レオ ンに 近い: M を 持って ゐ るの 

レ まく じ じつ i つけ.? とき さいこく かつば みどりいろ とうほく かつば あか い 

かも 知れません。 俊 はこの 事 實を發 見した 時、 西國の 河童 は綠 色で あり、 束 北の 河童 は 赤い と 云 

ふ s^^li の 記錄を ml ひ m しました。 のみなら す バッグ を 追 ひかけ る 時、 突ぎ どこへ がった のか 

み . ;ク LO ざ かつ ぼひ ふ した よ ほど あつ し ばう も み 

見え なくなつ たこと を 思 ひ 出しました。 しかも 河童 は 皮膚の 下に 餘程 厚い^ 肋 を 持って ゐ ると 3^ 

ち か くに をん ど ひ かくてき ひく かか は へいきんべ わし ご じふ..^ _ ぜんご-. 3' ^ や、, I 

え、 この 地下の 國の溫 度 は 比較的 低い のに も關ら す、 (平均 華氏 五十 度^ 後です)^ 物と 云ュ もの 

レ もちろん かつ めがね i きたば こ はこ だ-つ さ かねい , も 

を 知らす にゐ るので す。 勿論 どの 河童 も 目 金 を かけたり、 卷 煙草の 箱を携 へたり、 金 スれを 持つ 

河 , 

-. ,A つ はら ふくろ も .,-*.►■ 

f たりよ して ゐ るで せう。 しかし 河童 は カン ガル ゥの やうに 腹に 袋 を 持って ゐ ますから、 それ 等の 



280 



もの をし まふ 時に も格训 不便 はしない のです。 唯 僕に: F 笑し かった の は 腰の ま はり さ へ蔽 はない 

まく あると キ, しふくわん たつ み 

ことです。 僕 は 或 時 こ の 習慣 を なぜかと バ ッグに 尋ねて 見ました。 すると バ ッグは のけぞつ たま 

ま、 いつまでも げらげら笑って ゐ ました。 おまけに 「わたし はお 前さん の 隠して ゐる のが 可 1 夭し 

い」 と 返事 をし ました。 

ぼく かっぱ つか にちじ やう こと ぱ お^ & しへ-が かリば ふうぞく しふくわん 

僕 はだん だん 河童の 使 ふ rn 常の 言葉 を覺 えて 來 ました。 從っ て 河童の 風俗 ゃ習惯 ものみ こめる- 

キ- なか いちばん ふ し ぎ いつば われく にんげん まじめ おも 

やうに なって 來 ました。 その 屮 でも 一 番 不思議だった の は 河童 は 我々 人 問の 眞:. §::: に 思 ふこと を 

可笑しが る、 同時に 我々 人 問の 可笑しが る こと を眞 面: E に 思 ふ —— かう ふとん ちんかん な 1::^ 

われく にんげん せいぎ じんだ う い まじめ おも つば 

です。 たと へば 我々 人間 は 正義と か 人道と か 云 ふこと を廣面 ml に 思 ふ、 しかし 河童 はそんな こと 

.t- はら わら だ れら こっけい い くわん れん われ/、 こつ はい い くんん ねん 

を 聞く と、 腹 を かか へ て 笑 ひ 出す のです。 つまり 彼等の 精と ニム ふ 觀念は 我々 の:^^^^と-ムふ觀念. 

ぜんぜんへ つじ はん こと ぼく ある. ニキ-い ,-ゃ さんじ .V い f ん はなし 

と 全然 標準 を 異にし てゐ るので せう。 僕 は 或 時醫者 の チヤ ッ ク と .M 兒 制限 の 話 をして ゐ ました。 

お ほぐち はなめ がね お わら だ K く もちろん はら た 

すると チャック は 大口 を あいて、 鼻 目 金の 落ちる ほど 笑 ひ 出しました。 伎 は 勿論 股が 立ちました 



を か きつもん なん へんた ふ だノ •- - ;ま 

^ 力ら 何が 可笑しい かと 詰問し ました。 佝 でも チャックの 返答 は 大^かう だった やうに 敏 えて, 0;- 

ます。 尤も 多少 細かい 所 は 1^ 違って ゐる かも 知れません。 f しろ まだ その _i は M も?^ I 星の E ふ iiJi 二 

葉をすっかり理ぎ^,-てゐなかったのですから。 一 

りゃう ルん つが ふ かんが を か あ C もヽ: CMJ 一 

「しかし 兩 親の 都合ば かり 考 へて ゐ るの は 可笑し い ですからね。 どうも 餘り ですから i 

ね。」 . ^ 

.f^ は われく にんげん み じっさい また かつば さんぐら ゐ を か f ん 

その代りに 我々 人間から n 几れば、. 實際又 河童のお 產位、 可笑しい ものはありません。 ^こ^は 

»^ ばら -ヽ さいくん ざん とこ 一つ こ や ナ しふつ 、-; k .1- ;* 一 

暫くた つてから、 バッグの 細君のお 產を する 所 を バッグの 小屋へ 物に 行 きました。 1ずもぉ^^ 

AJC^J われく に/" げん ";な -. しゃ さんば たす > -. ん 

をす る 時には 我 々 人^と M じ ことです。 やはり 醫者 や^ 婆な ど の 助け を 借りて お をす る の です? 

ン さん ャ.' r.- おや でんわ ははおや せ * し J ク、 き /、ち 一 さ/ 

けれどもお 產を するとな ると、 父親 は 電話で も かける やうに 母親の 生琉 器に 口をつけ、 「ぉ脉 は こ „ 

の i 界へ 生れて 來 るか どうか、 よく 考 へた 上で 返事 をし ろ。」 と 大きな 一 赏で尋 ねる のです。 バ ッグ 

ひど なんど く かへ > t6 

もや はり 膝 をつ きながら、 何度も 繰り返して かう 言 ひました。 それから テ H ブルの 上に あった^ _ 

どくよう すゐ や,、 う が V ノ、 ん ± ら な, J- -I た ト, つ V, が) < ゝ 一 

河 毒 用の 水 藥で嗽 ひ をし ました。 すると 細君の 腹の 屮の子 は 多少 叙 兼で もして ゐ ると え、 かう 小 . 

一 ご ゑ へ んじ - 

4 聲に 返事 をし ました。 . 一 



ぽく うま だいいち ぼく とう ゐ でん せいしんび やう たい C へ h; く 

「僕 は 生れた くはありません。 第一 僕のお 父さんの 遣傳は 精神病 だけで も大 へんです。 その上 £k 

かつば て 々そんざい わる しん 

は 河童 的 存在 を惡 い と 信じ てゐ ますから。」 

へんじ き とき あたま か あは さんば 

バッグ はこの 返事 を 聞いた 時、 てれた やうに 頭を搔 いて ゐ ました。 が、 そこに ゐ 合せた 魔 婆 は 

たち ま さいくん せいしょて き ふと ガ ラ ス くわん つ なに えきたい ちう しゃ さいくん 

忽ち 細君の 生殖器へ 太い 硝子の 管 を 突き こみ、 何 か 液體を 注射し ました。 すると細!;^;はほっとし 

ふと いき も どうじ またい ま お ほ はら ゐそ がす ぬ ふうせん 

たやう に 太い 息 を 洩らしました。 同時に 又 今まで 大きかった 腹 は 水素 瓦斯 を拔 いた 風船の やうに 

ちぢ 

へたへ たと 縮んで しま ひました。 

い へんじ くら ゐ かつば こ ども うま はや もちろん ある 

かう 云 ふ 返事 をす る 位です から、 河童の 子供 は 生れる が 早い か、 勿論 歩いたり しゃべつ たりす 

なん はなし しゅっさん ごに じふろ くにち め か みう む つ かう えん こ ども 

るので す。 何でも チャックの 話で は出產 後一 一十 六日 目に 神の 有無に 就い て 講演 をした 子供 も あつ 

い もっと こ ども ふたつきめ し い 

たと か 云 ふこと です。 尤も その子 供 は 一 一月 目に は 死んで しまったと 云 ふこと です が" 

さん まなし ついで ほく くに き み つきめ ぐうぜん ある まち かど み お ほ 

お 產の話 をした 次 手です から、 僕が この 國へ來 た 三月 目に 偶然 或 街の 角で 见 かけた、 大きい ボ 

はなし お ほ した らっぱ ふ かつば けん も 

スタァ の 話 をし ませう。 その 大きい ボ スタァ の 下に は 喇叭 を 吹いて ゐる 河童 だの 劍を 持つ てゐる 

かつば じふに さんびき か たうへ かつば つか ちゃう どと けい に 

河童 だのが 十二 三 匹 描いて ありました。 それから 又 上に は 河童の 使 ふ、 丁度 時計の ゼン マイに 似 

2 

00 ら せん も じ いちめん なら ら せん も じ ほんやく だいたい い いみ 

2 た 螺旋 文字が 一面に 並べて ありました。 この 蝶旋 文字 を飜譯 すると、 大體 かう 云 ふ 意味になる の T 



直 河 



283 



不ふ 惡き m, 遣ゐ 
健:^ 遣ゐ 全 だ m 
全 だ m な 的ず 
なをる 義ぎ 
る 撲' ぎ w% 
男 2 減ミ お 
女^ す の を 
の る 河ミ 募 S 
河よ 爲 き 童' ^ る 

童ば に よ !!! 

と !!! 

せけ 
ホロつ 

婚ぇ 

せ 

よ 

Ml 



あるひ こま ところ ま ちが し と かくほく ? 11 く い J 

です。 これ も 或は 細かい 所 は 間違って ゐる かも 知れません。 が、 见に 僕と して は 僕と 一し よに 

ある い J 户 つば がくせい お ほ n<oS よ あ ことば いち/ \ お 

步 いて ゐた、 ラップと 云 ふ 河童の 學 生が 大 聲に讀 み 上げて くれる 言葉 を 一 々ノオトに とって S い 

たのです。 



ぼく もちろん とき おこな はな き 

僕 は 勿論 その 時に も そんな ことの 行 はれない こと を ラップに 話して 聞かせました。 すると ラ ッ 

きんじょ かつば こと-ごと わら だ - 

プ ばかりで はない、 ボ スクァ の 近所に ゐた 河童 は 悉く げらげら笑 ひ屮 Z しました。 

おこな はなし われく お-一な おも 

「行 はれない? だって あなたの 話で は あなたが たも やはり 我々 の やうに 行って ゐ ると 思 ひます 

れいそく ぢ よちう ほ れいち やう うんてんしゅ ほ なん ため おも 

がね。 あなた は 令息が 女中に 惚れたり、 令嬢が 運轉 手に 惚れたり する の は 何の 爲 だと m 心って ゐる 

みなむ い しきて き あく ゐ でん 、めつ だいいち あ ひだ はな 

のです? あれ は 無意識的に 惡造傳 を 撲滅して ゐ るので すよ。 第一 この あなたの 話した あな 



284 



r/.'c ぎ ゆ, つたい いつぼん てつだう うば ため たが ひ --ろ あ ぎ ゆうたい い 

たがた 人 の 義勇 隊 よりも、 —— 一本の 鐡道を 奪 ふ爲に 互に 殺し 介 ふ義 隊で すね、 11 ああ", T 

ぎ ゆうだい くら ぼく ぎ ゆうたい か-;' しゃう おも 

ふ 義勇 隊 に比べ れば、 すっと 僕たちの 義勇 隊は 高尙 ではない かと m 心 ひます がね。」 

ラップ は眞 面目に かう 言 ひながら、 しかも 太い 腹 だけ は 可笑し さう に 絶えす 浪立 たせて ゐ まし 

ぼく わら あわ あるかつ ば つか ぼく ゆ だん み 

た。 が、 僕 は 笑 ふ どころ か、 慌てて 或 河童 を摑 まへ ようとし ました。 それ は 俟の油 斷を兑 すまし" 

かつよ ^く へん ねん ひつ ぬす ^_ ひ ふ なめら かつば ようい われ 

その 河童が 俊の 萬 年 筆 を 盗んだ ことに (れいが ついた からです。 しかし 皮膚の:^ かな 河 意 は 容易に 我 

われ つか かっぱ すべ ぬ はや いっさん に だ 

我に は 摘まり ません。 その 河童. も ぬらり と、、 一」 り拔 ける が 早い か 一 散に 逃げ出して しま ひました 

ちゃう どか や かたお た ふ おも くら ゐ 

丁度 蚊の やうに 瘦 せた 體を 倒れる かと E 心 ふ 位 のめらせながら。 

五 

なく いかつば お,' 一 せわ なか. f げ ノノ, 

僕 はこの ラップと 云 ふ 河童に バ ッグ にも 劣らぬ 世話になりました? が、 その 屮 でも 忘れられな 

、- JJ- つ *^ せう かノ かつば なかま し じん し じん 力-" な 力 

いのは トツ クと云 ふ 河^に 紹介され たこと です。 トツ クは 河 童 仲 il の 詩人です。 詩人が 2^ を 長く 

われ z\ にんげん かよ. ぽく とき 力、 6^. たいくつ しの も そ ゆ 

して ゐる こと は 我々 人 と變 りません。 僕 は 時々 トツ クの 家へ 退屈凌ぎに 遊びに:;:;: きました ト 

せま へ や かう ざんしょ くぶつ はちう なら し か たばこ 4 い,! ハ I. き、 ち,^ 

ック はいつ も 狹ぃ部 Ml に 古 2 山 植物の 鉢 植ゑを 並べ 、 詩 を 書いたり 煙^ を の ん たり にも ハ飒樂 



^ さう に 暮らして ゐ ました e その 乂 部屋の 隅に は 雌の 河童が 一 匹 X トツ ク は^^ 豕 ですから、 

細君と rK ふ もの は 持たない のです。 x€ み 物 か 何 かして ゐ ました。 トツ クは攀 の 1 を;^ ると、 いつ 

も 微笑して かう 言 ふ の です。 (尤も 河童 の微 I 夭す るの は餘 りか いもの ではありません。 5\ くひと も 

は I 取 初のう ち は 寧ろ 無氣 味に 感じた ものです。) 

「や あ、 よく 來 たね。 まあ、 その;^ 子に かけ 給へ。」 

トツ クは よく 河童の 生活 だの 河童の 蕩術 だの の 話 をし ました。 トツ ク の!^ する 船に よれば、 

り 前の 河童の 生活 位、 莫迦げ てゐる ものはありません。 親子 ^どと ふの ひ ti^ti やお 

しめ <in ふこと を 唯一 の樂 しみに して 暮らして ゐ るので す。 姝 に.;^ 族 制度と 云 ふ もの は莫 ぎげ てゐ 

t7 ぺ, 一り ば 力 あると..^, まど そと ふび み ま f ^ f ^ 

る z^i にも 莫遍げ てゐ るの です。 トツ ク は 或 時 窓 の 外 を 指さし Tn ル給 へ 。 あ の^きげ さ 加 1 を!」 

丄, 广- I まど そと わう らい とし わ. A ふつ 1 つ ぴキ- り i-,- しし ハ つ M i -; 

と S き 5... す やうに 言 ひました。 窓の 外の 往來に はま だ 年の 若い:!: 童が J 匹、 : ゆ 鋭ら しい ぽ i 里 を; _5 

しち はち ひき めす をす かつば くび さ 、き ..K ^る 

め 七 八 匹の 蝶 雄の 河童 を 頸の ま はりへ ぶら下げながら、 も 絶え絶え にや ク いて ゐ ました。 しん 

メ^バ,、 と r- -f. か t クば ぎ, せいて 今せ いしん かんしん かへ ナなデ ま 

河 しき は 年の 若い 河童の 權牲的 精神に 感心し ましたから、 反って その 俯 5 ポさを め 立てました。 

^ 「 > ノ、 v ノ- C ) K^-. 7* み, ん しかく も とき きみ しゃ くわいし ゆぎ しゃ 

1 ..i ん .^^はこ の國でも1£民になる資格を持っ てゐる。 ::: 時に 君 は社會 主義者 かね? I 



まく もちろん か- J ば つか ことば- しか い. -ぃ み;、 あ f つ? - - -, - 3/ .- V 、 ' : 3 

僕 は 勿論 qg (これ は 河童の 使 ふ 言葉で は 「然 り」 と 云 ふ 意味 を 現す のです) と 答 へ ました 

ひゃく こ .,.5 ぽん じん ため あま ひとり てんさい ぎ せい 力, り はす 

「では fc 人の 凡人の 爲 にせん じて 一 人の 天才 を犧牲 にす る こと も 顧みない: _も だ」 

キみ なにし S ぎ しゃ だれ くん しんで う む せい パ し W ぎ い * 

「では 君 は 何 主義者 だ? 誰か トツ ク 君の 信條は 無政府主義 だ と 言 つて ゐ たが …… 」 

まく ぼく てう じん ちょくやく てう かつば 

「僕 か? 僕 は 超人 (直譯 すれば 超 河童です。) だ」 

.A う ダ】 ん 、 ± な い げいじゅつ うへ どくとく かんが も 

ト ッ ク は昂, 一とず ひ^ちました。 かう 云 ふ トツ ク は藝 術の 上 にも 獨特 な考 へ を 持つ て ゐ ます。 

トツ クの する 所に よれば、 藝術は 何もの の 支配,. を も 受けない、 藝術の爲の!^術でぁる、 從 つて 

t 、しゃつ. f なに さき ぜんあく ぞっ てう じん L , , と 

戴 術 家た る も の は 何よりも 先に 善惡を 絶した 超人 でなければ ならぬ と: ムュの で す 尤も これ は 

- らャ . 'っぴ き . ナん なかま し じん たいてい どういけん も 

が しも トツ ク,. 一匹の 意 ではありません。 トツ クの仲 の 詩人た ち は 大抵 同意 见を 持って ゐる 

f ん 1M く 、つ たび てう じんく ら ぷ あそ ゆ てう じん 二 ら ふ あつ 

やうです。 現に I- は 卜 ックと J しょに 度た び 超人 俱樂 部へ 遊びに: きました。 超人 仉樂 |E に 染ま 

く し じん せう せっか ぎきょく, ^ ひひ や 5 か ぐ わか おんがくか て。:!:.、^、、 げ,か^\1^じ,_^丄^."/」と;^-. - . 

つて 來 るの は 詩人、 小說 家、 戯曲 家、 批評家 畫家、 昔樂家 彫刻家 翁 術 上の 人 です し 

てう じん かれら で. V 、と, つ あか くわいく わつ は な あ 

かし いづれ も 超人です。 彼等 は 電燈の 明るい サロンに いつも 快活に:^ し 介って ゐ ました, のみな 

らす 1」 に は 得べ と 彼等の 超人ぶ り を 示し 合って ゐ ました。 たと へ ば 或 彫刻. 冢 など は 大きい 鬼羊齒 

^ の Ik ゑの に i 'の 若い!: 童 をつ かまへ ながら、 頻に 男色 を 弄んで ゐ ました。 乂.: ^雌の..^ 說 {豕 な 



7, どはテ H ブルの 上に 立ち上つ たなり、 アブサン トを 六十 本 飲んで 見せました。 尤も これ は 六十 本 

2 つ- した ころ お はや たち ま わう じ やう , 

目に テ H ブルの 下へ 轉げ 落ちる が 早い か、 忽ち 往生して しま ひました が。 - 

I よく あるつ き 、, ばん し じん ひぢ く てう しんく ら ぶ へ キ. - 

iK は 或 月の 好い 晚、 詩人の トツ クと肘 を 組んだ まま、 超人 俱樂 部から 歸 つて 來 ました トツ ク 

はいつ になく 沈み こんで 一 こと も 口 を 利かす にゐ ました。 そのうちに 俊 等 は 火 かげの さした、 小 

まど まへ とほ また まど むか ふうふ めす やす .4- つば に ひ々」 A んびき C ど f 

さい 窓の 前 を 通りかかりました。 その 又 窓の 向う に は 夫婦ら しい 雌雄の 河童が 二 匹、 二 匹の 子仉 

の i: 童と 一し よに 晩餐の テ H ブルに 向って ゐ るので す。 すると トツ クは ためお をしながら、 突然 

かう 僕に 話しかけました。 

「僕 は 超人的 戀愛家 だと 思って ゐる がね、 ああ ョ ふ 家庭の 容子を 見る と、 やはり 羡 しさ を 感じる 

ん だよ。」 

「しかし それ はどう 考へ て も、 矛盾して ゐ ると は 思 はない かね?」 

つきあ か した うで く ち ひ キど すか r 才 ご 

け, ども トツ クは 月明りの 下に ぢ つと 腕 を 組んだ まま、 あの 小さい 窓の 向う を —— 平和な £ 

ひき *^;っ*^ ばんさん み * /も しばら 二た 

匹の 河-賢た ちの 晩餐の テ エブル を 見守って ゐ ました。 それから きくして かう 答へ ました 

£ たまご やき なん い れんあい , ^いせいて ふ- 

3 「あすこに ある 玉子 燒は 何と 言つ て も、 戀 愛な どよりも 衛生的 だからね」 



六 

じっさい また かつば れんあい われく にんげん れんあい よ ほど おもむき こど めす かつば い 

實際又 河童の 戀愛は 我々 人 問の 纖 愛と は餘程 趣 を 異にして ゐ ます。 雌の 河童 はこれ ぞと云 ふ 

をす かっぱ み はや をす かつば とら い か しゅだん ハム リ いちばんし やう ぢキ. - 

雄の 河童 を 見つける が 早い か、 雄の 河童 を捉へ るのに 如 化なる 乎 段 も 頼みません 一 ^正直な 難 

しゃに む に をす かつば お げん ぼく キ- ちが をす かつば お- 

の 河ず, は 遮 一 一 無 一 一雄の 河童 を 追 ひかけ るので す。 現に 僕 は氣違 ひの やうに 雄の 河童 を 追 ひかけ て 

ゐる 雌の 河童 を 見かけました。 いや、 それば かりではありません。 若い 雌の 河童 は^ 論、 その 河 

童の 兩親ゃ 兄^お で, 1 しょに なって 追 ひかけ るので す。 雄の 河童 こそ じめ です。 何しろ さんざ 

ん 逃げ ま はった 揚句、 運 好く つかまら すに すんだ としても、 二三 筒 月 は 床に ついて しま ふので す 

ぽメヽ あるとき ぼく いへ しし ふよ か き 

から。 僕 は 或 時 の 家に トツ クの 詩壤を 請んで ゐ ました。 すると そこ へ跃 けこんで 來 たの は あの 

ラップと ふ學 生です。 ラップ は 僕の 家へ 轉 げこむ と、 の 上へ 倒れた たり、 も::?^ れはれ にか 

うず ふので す。 

r 大變 だ! とうとう 僕 は 抱き つかれて しま つ た!」 

獎は咄 に 詩集 を 投げ出し、 戶 口の 錠 をお ろして しま ひました。 し. かし 鍵穴から 舰 いて 見る と 



9 ^黄の 粉末 を 額に 塗った、 ^の 低い 雌の:^ 童が, T 匹、 まだ 戶 口に うろついて ゐる のです。 ラップ 

2 ひ なんしう かん ぼく とこ うへ ね くち はし くさ 

は その 日,^ ら何 週間 か 僕の」 休の 上に 寢てゐ ました。 のみなら すいつか ラップ の 嘴 はすつ かり:.^ つ 

て 落ちて しま ひました。 

もっと またとき めす かつば いっしゃう けんめい お ,? かっぱ 

尤も 又 時には 雌の 河童 を 一 生 懸命に 追 ひかけ る 雄の :!: 童 もないで はありません C しかし それ も 

ほんた うの 所 は 追 ひか: t すに は ゐられ ないやう に 離の 河童が;; i,N ける のです。 僕 はや はり ハ ^ひ 

の やうに 雌の 河童 を 追 ひかけ てゐる 雄の 河童 も 見かけました C 難の, :!: 童 は 逃げて;:;: くつ, ちに も、 

時々 わざと 立ち 4= 一 まって 見たり、 叫 つん 這 ひに なったり して 見せる のです。 おまけに 厂, 址 Is^ い 時 

ぶん らく./^ ぽ-、 み ゃ广 ^ 

分になる と、 さもが つかりした やうに 樂々 とっか ませて しま ふので す。 僕の 見かけた 雄の 河童 は 

雌の 河童 を 抱いた なり、 暫く そこに 轉 がって ゐ ました。 が、 やっと 起き. 4 つたの を 兄る と、 

い こうく わい い と かくなん けいようで き /. き どく かほ 

と 云 ふか, 後悔と ニム ふか、 觅に .5: 何とも 形容 出來 ない、 やの 毒な. 額 をして ゐ ました。 しかし それ 

い , くみ なか す, ひ をす かつば いっぴき めす か:' は お 

はまた 好い のです。 これ も-僕の 見かけた 巾に 小さい 雄の 河童が 一匹、 雌の: E 童 を 追 ひか け てゐま 

めす かつば れい とほ いう わくて きとん マごう ゎパ :- tf. お 5 ^'r 

^ した。 雌の 河童 は 例の 通り、 誘惑 的 遁走 をして ゐ るので す。 すると そこへ,: 1: うの 情から 尤 きい 雄 

し; Is! かつば いっぴき はないき な ある き めす かつば なに ひやう し やす .4 つ み 

の 河童が 一 匹、 鼻息 を 鳴らせて 歩いて 來 ました。 雌の 河童 は 何 かの 拍子に ふと この 雄の:!: f を: :!- 



-, てへ し ュ/ , だ かつば ころ 力な キ-- 一 -V: 

ると r 大 t 變 です! 助けて 下さい! あの 河童 はわた し を 殺さう とする のです!」 と金^り を 巾- 

さナ もん ろん お ほ をす かつば たちえ ち ひ .^>っば I : f,-「i^ 、い- ノな ^ X _ - 

して^び ました。 勿論 大きい 雄の 河童 は 忽ち 小さい 河童 を つかまへ 來 の まん., r へね ち 伏せ ま 

した。 小さい 河童 は水摇 きの ある 手に 二三 度. S を摑ん だな り、 とうとう 死んで しま ひました」 け 

とき め.^ ん つよ お ほ かつば くび たま 

れ どももう その 時には 雌の 河童 は にゃにゃしながら、 大きい 河童の 頸つ 玉へ しっかり しがみつい 

てし まって ゐ たのです。 

• 傑の 知って ゐた 取の 河童 は 誰も is 口 ひ 合 はせ たやう に 雌の 河童に 追 ひか けられました。 勿論お 

し. - r に さんど 

子 を 持って ゐるバ ッグ でも やはり 追 ひか けられた のです。 のみなら す 1 1 三」 はつ 力まった のです" 

モー J . て. く;、 - し じん 七な り かつば いちど 

マ ッ グ と ij^ ふ 折 fr^ 者 だけ は (これ は あの トツ クと云 ふ 詩人 の 隣に ゐる 河童です。 ) 一 皮 もつ 力ま 

ゾと く、っ1^^ 一-く > リ 『よ すく ため * ニノ 乙と 

つたこと はありません。 これ は 一 つに は マッグ 位、 醜い 河童 も 少ない 爲で せう。 しかし 乂ー つに 

は マ ッグ だけ は 餘り往 來へ顔 を 出さす に 家にば かり ゐる爲 です。 伐 はこの マ ッグ の. 冢へ も 時々 話 

しに 出かけました。 マッグ はいつ も 薄暗い 部屋に 七色の 色^ 子の ランタ アン をと もし、 脚の 高い 

娘 tiM ぴ, 一ながら、 !?ぃ^^ばかり&んでゐるのです。 僕 は 或 時 かう f U ッグと の をみ 1 じ 

2 合 ひました。 



^ 「なぜ 政府 は 雌の 河童が 雄の 河童 を 追 ひかけ るの を もっと? igl-i り f らな いのです?」 

「それ は T つに は のおに 曙の きのおば い i です よ。 卿の I! は iQMf よりも Y ま^ぎ^ 

は强 いものです からね、 雌の 河童の 吏 さへ きえれば、 きっと!^ よりも 猶の^ ||は|^ ひか けられ 

すに 暮せ るで せう。 しかし その 效カも 知れた ものです ね。 なぜと J:Ei つて! :!^ なさい。 :as^IS 心で 

めす かつば をす , ^っぱ お 

も 離の 河童 は 雄の 河童 を 追 ひかけ ますから ね。」 

「ぢゃ あなたの やうに 暮 して ゐ るの は,, 一 番幸 な訣 です, P5。 一 

い す はな ぼく りゃうて ぎ J , 

すると マック は 椅子 を 離れ、 僕の 兩乎を 握った まま、 ため息と f しょに かう ず ひました。 

「あなた は 我々, 刖 童ではありません から、 おわかりに ならな いのも:^ ゲ です。 しかし わた ) もど 

X- , おそ めす かっぱお 今,. つ 二 

う 力す ると あの 恐ろしい 雌の 河童に 追 ひか けられたい 氣も 起る のです よ。」 

河 僕は乂 詩人の トツ クと 度た び 音 樂會へ も 出かけました。, が、 お だに i れられ ない のに 一 Vj ぎ^に 

聽 きに 行った ま E 樂會 のこと です.^ え も會 場の 容 子な どは餘 りが! f と II つて ゐ ませ, レ。 やはり どん 



だんせり^った^に聯腐のま|^がーー祐ほ|" いづれ もプ n グラム を V にしながら、 一心に 耳 を 泣 

ぼメ、 さんど め おんがく,、 わい とき かっぷ. ノほ 、力 ズ - カレ.;! や 

ま せ て ゐ るので す C 僕 はこの 一一 一度 目 の 音樂會 の 時には トツ- クゃ トツ クの邺 のか 童" 外に も^ 

の マッグと い 一つし よに なり、 い 一 番 i の 席に 坐って ゐ ました。 すると セ W の 獨奏が 終った 後、 妙に = 

ミ, 二 - リ! U , く少ャ 1 r. ざう さ ふ ま,? . ^か だん ,つへ あ 力 キ』 > ^ - t. • ■ V > , 

の 終い ぽ f 里が, T ぎ、 き (ぎ 作に is^ を彻 へた まま、 壇の 上へ 上って 來 ました。 この 河童 はプ" クラ 

V. レ とま ぞ; だ f い さくき よく か ク丄 、 、 * J * 

ム の^/る 垂り、 名高い クラ バックと 云 ふ 作曲家です。 プログラムの 敎 へる 通り — }、 フ 

n グ ラ ム を るまで もありません。 クラ バ ックは トツ ク が屬し て ゐ る 超 ス仉樂 部 の \t:H で すから、 

く *t たか ほ し 、 - 

僕 も亦顏 だけ は 知って ゐ るので す 

「Lied 11 CrabackJ (この 圃のプ ログ ラ ムも 大抵 は 獨逸語 を 並べ てゐ ました。) 

クラバックは^1んな§^,ゅの5_にちょっと我> へ ー禮 した 後、 靜 ピアノの」 きへ 歩み寄り ましたへ 

. ことば 

そ^から やはり MP に sum のリ イド を^き はじめました。 ク ラバ ックは 卜 ックの 言 紫に よれば- 

この^の んだ I 嶽 ^^に^^のない ださう です。 餵は クラ バックの 昔樂は 勿論、 そ 

• r ま わみ んと れ.' しん ,\ み 

の; filsi;:li きも を& つて ゐ ましたから、 おきい? ラ なりの ピアノの- -1" に 熱心に. 枓を 傾け 

2 /、わう-一 ゥ あるひ ぽく まさ ♦ ' \ 

^ てゐ まし,. こ。 トツ クゃ マッグ も irc 惚 として ゐ たこと は 或は 僕よりも 勝って ゐ たでせ う。 力 あの 



ろつ く ケ くな かつ,」 はなし めす かつよ -, ぎ 

3 美しい 广 バンく とも 河童た ちの 話に よれば) 雌の 河童 だけ はしつ かり プ B グラ ム を 握った なり、 ^sn^ 

さも?: E ら 立た しさう に 長い 舌 をべ ろべ ろ 出して ゐ ました。 これ は マッグの によ, てば、 、おで も 

これ じふ ねんどん つか -t S な-く > > > -- 

年 前に ク ラ バ ッ ク を摑ま へそ こなった もの ですから、 t 未だ に この 昔ぎ % を Si の. sl^ して ゐ る 

の だと か 云 ふこと です、. 

クラ バック は 全身に 情 を こめ、 戰 ふやう に ビア ノを彈 きつ づけました。 すると" か^ ITII いぢ 3!" の 

なか 4, みな- ひびきわた えんそう キ-ん し > こ. a; f - 、 

中に:^^ りの やうに 響 渡った の は 「演奏 禁止」 と 云ふ聲 です。 僕 はこの や ^ にび つくりし、 £| は.^ g 

- カノ こ,^ めし まぎ ちばしう し 7 つ ^?- み に- ナ f つ,、 ノ -.yp ン S- b ソ- 

を ふりまり ました。 聲の主 は 紛れ もない、 ー桥 後の li にゐ る^の のし 巡ん & です、 M 截は赠 が 

-\ り 向いた 時 悠^と 腰をおろした まま、 もう,! 度 前よりも お ほ聲に 「: 浙奏 禁ト: て」 怒鳴りました" 

それから、 1 - 

さき だいこんらん けいくわん わう ばう ひ ^' . 4 

それから 先 は 大混亂 です。 「警官 横暴!」 「クラ バック、 彈け! it け!」 「^ぎ!」 「^p.」 「ひ 

つ こめ!」 「負けるな!」 I か-リぺ1^ふ聲の湧き上った中に椅1:^,は1れる、 プログラム は I ぶ、 お 

河 まけに 誰が 投げる のか、 サイ ダァの 空 曙 や 石ころ ゃ嚙 じり かけの キ きらん さへ^って^ るので す。 I- 

は 呆っ氣 に とられました から、 トツ クに その 理由 を 尋ねようと しました。 が、 卜 ックも gl! した 



と^え、 椅 1^ のおに 突っ立ちながら、 「クラ バック、 彈 け! It け!.」 と 喚きつ づけ. てゐ ます。 のみ 

、す かつ だ ま てき、 わす けいくわん わう ばう 少. 《は 、〕 こ ィ 

ならす トツ ク の I の 河 f 里 も いつの 問に 敵意 を 忘れ た の か Tt: 官 横暴」 と 叫んで ゐる こと は 少しも 

a たつ U 

トツ クに餐 りません。 僕 はやむ を 得す マ ッグに 向か ひ T どうした のです?」 と 零ね て ました- 

「これです か? これ はこのば で はよ く あ る ことです よ。 元 來畫だ の 文藝だ の は …… 」 

な-, と く たド くび もぢ あ ひか は.. ^すし-つか せつめい 

マ ッグは if か 飛んで 來る 度に ちょっと 頸 を 縮めながら、 不相變 靜に說 明し ました 

お だのえ 蒙 だの は 誰の 目に も 何 を 表 はして ゐ るか は 免に 角 ちゃんと わかる きです から こ 

く: ナっ よ つ „*: き,; -し てんら.? んし お-一な かに > ; ゾ、 し-.、、 - ^ ^ ; 

の^で は 犯して 發寶 禁止 ゃ展覽 禁止 は 行 はれません。 その代り にある のが てす , ^しろ 

11^1^ と f ムふ もの だけ は どんなに 風俗 を壞亂 する 曲で も、 耳の たい IE 童に はわ かりません からね。」 

じゅんさ みみ 

「しかし あの 巡査 は 耳が あるので すか?」 

「さあ、 それ は です ね。 多が 今の 旋雜を 聞いて ゐる うちに 細 と 一し よに 腐て ゐる 時の 心^ 

-, 一 どう おも だ 

の 鼓動で も m 心 ひ 出し たので せ う。」 

. かう ず ふ nil も II 脆ぎ はい tfll ん になる ばかりです。 クラ バック は ピアノに 向った まま、 傲が 

^ と 々、を ふり つて ゐ ました。 が、 いくら. S ぎ; として ゐて も、 いろいろの ものの 飛んで 來 るの は 



5 よけない 訣に 行きません。 從 つてつ まり 二三 秒 置きに 折角の 態度 も變 つた 訣 です。 しかし に If 

し たいたい だいおん がく か ゐ げん たも ほそ め >u'v-l が K く 

大體 として は 大音樂 (豕の 威嚴を 保ちながら、 細い 目 を 凄まじく 赫, やかせて ゐ ました。 僕 は I. 

もも ろん き けん さ ため こ だ匸 、うき 一ん 、 . . 

も 勿論 危險を 避ける 爲に トツ クを小 桐に とって ゐ たもので す。 が、 やはり 好奇心 にぎられ、 ぎ; 

に マ ッグと 話しつ づけました。 

けんえつ らんば う 

「そんな 檢閱は 亂暴ぢ やありません か?」 

「^ に- せん;: ii- か: しん ぼ くら ゐ ご らし _^ん 

「何 どの 園の 檢£ ^よりも 却って 進步 して ゐる 位です よ。 たと へば X X を 御 n:- なさい。 ^につい 

ひとつき まへ 

1 月ば かり 前に も、 …… 」 

■^^-or; つど い と たん あいにくな うてん あきびん お . 

T 度 かう 言 ひかけ た 途端です。 マッグ は 生憎 腦 天 に (〈丄 gf! が 落ちた ものです から、 quack (これ 

は 昨 5^ 投詞 です) と 一 聲 叫んだ ぎり、 とうとう (激を 失って しま ひました C 

八 

ぼ: ガラス くわいし や しゃち やう ふ し ぎ かう い も -." ~ か ちう -ま >- 

河 伎 は?^ 子會 社の 社長の ゲ ェ ル に不 E 心議 にも 好意 を 持つ てゐ ました。 ゲ H ル は 资ボ象 屮の资 お 家 

. お! y くに かつば なか お ほ はら かつ? - "つ/. rj 

です . おらく はこの 國の 河童の 中で も、 ゲ H ル ほど 大きい 腹 をした 河童 は 一 * 匹もゐ なかった の こ 



す.' が ,, ^いし に て-いくん キ. J ぅリ に 二 ども や 一 いう あん^: い 广 ノん- 

違. ひありません。 しかし 蒸 枝に 似た 細; や 胡瓜に 似た 子供 を 左右に しながら、 ,WIK 椅子 に^って 

ところ まとん かう ふ,、 ぼく ときん \ さいばん くわん ノ しゃ 

ゐる所 は 殆ど 幸! i そのものです。 俟 は 時々 裁判官の ぺ ッ プゃ醫 者の チャックに つれられて ゲ ェ ル 

け ばんさん で また せう かいじ やう も いう じん . た せう ノ、 わん はい 

家の 晩餐へ 出かけました" 又ゲ H ル の 紹介 狀を 持って ゲ H ルゃゲ エル の 友人た ちが 多少の 關係を 

も .J うぢ やう み ある こ うぢ やう なか こと ^く おもしろ 

持つ てゐ るいろ いろの 工場 も 見て 歩きました。 そのいろ いろの 工場の 屮 でも 殊に 僕に:. s,:: かった 

しょ ij きせい ざ-つく わ-しゃ 二 うぢ やう ぼく とし わか かっぱ ぎ し こ .r\c やうな か すゐ りょく でんき どう 

の は 書籍 製造 會 社の 工場です C 僕 は 年の 若い 河童の 技師と この 工場の 屮へは ひり、 水力: まハ! ^を 動 

りょく お!? * き か。 なか と キー ... まさら かつば くに きかい 二 うげ ふ しん?, * やうたん なん 

力に,, : た、 大きい 機械 を 眺めた 時、 今更の やうに 河童の 國の 機械工業の 進歩に 驚嘆し ました" 何 

いちねんかん し.,. - ひゃくまんぶ ほん せい ダ-ぅ く おどろ ほん ••: r リ 

でも そこで は 一年 問に 七 百 萬 部の 本 を 製造す る さう です。 が、 僕 を 驚かした の は 本の ぽ數 では あ 

ほん せい Vj う す こ て すう なに くに ほん 

りません。 それだけの 本 を 製造す るのに 少しも 手數 のかから ない ことです。 何 しろこの 國 では 本 

つく > だき かい ヒ やう コ かた くち かみ は ひいろ ふんまつ い 

を 造る のに 唯 機械の, 漏斗 形の 口 へ 紙と インクと 灰色 をした 粉末と を 人れ る だけな のです から。 そ 

ら れぅ >f い なか ほてん -ニ ふん , きく どん し ろくばん きく はん V- いぶん .W 

れ 等の 原料 は 機械の 中へ は ひると、 殆ど 五分と たたない うちに 菊 版、 §: 六 版、 菊^ 裁 版な どの 無 

う まん で く ^くた き なが お ほん なが そ み 

數の 本に なつ て 出て 來 るので す。 僕 は瀑の やうに 流れ 落ちる いろいろの 本 を 眺めながら 仅り身 

かつば ぎ し は ひいん ふんまつ なん い たづ み ぎ し くろび か 

になった 河童の 技師に その 灰色の 粉末 は 佝と云 ふ もの かと 尋ねて 見ました。 すると 枝 師は黑 光り 

2 に 光った 機恢 の: に 佇んだ まま、 つまらな さう にかう 返事 をし ました。 



7 「これです か? これ は驄 iil の腦髓 です よ。 ええ、 J 度 乾燥 させてから、 ざっと 粉末に した だけ 

2 じか いっとん に さん ぐ 

の ものです。 時愼 はー贿 二三 錢で すがね。」 

^ -^^ > ハ 、こう^ ふじ やう き せ さ しょせ キ. - せいざう: わい しゃ おこ わす くわ-ぐ わせ- つ 

タ論 かう 云 業 上 の 奇踏は 書籍 製造 會 社にば かり 起 つて ゐ る; f で はありません。 

.1 わい 丄ゃ おんがくせい"..,: つく わい しゃ おな おこ じノ- -.? -- t なし 

#s 社に も 昔樂 製造 會社 にも、 同じ やうに 起って ゐ るので す、) 實 際乂ゲ エルの Si によれば、 この 

^-- へ, ぃキ U んっ; 1, げっ しち はっぴ ゃゾ、 し 5 き かい しんあん なん ひとで ま たいり やうせ いさん おこな 

し は 午 均 一 筒 月に 七 八 ぼ 種の 機械が 新案され、 何でも すん すん 人チを 待た すに 火 量 生 魔が は 

し した 力 またし よ >、---;- んぃ I- し ご i ん. ひキ- くだ ,、- i- 

れる さう です 從っ て 又 職工 の 解雇され るの も g: 五 萬 匹 を 下らない さう です。 その》 船 まだ こ の!; 

-. '^^.^^^A^ ^ いちど ひ げ ふい じ であ ,つく めう おも 

では, sg- ぎ 聞 を讀ん でゐて も、 一度 も f 能 業と 云 ふ 字に 出會 ひません。 俊 はこれ を 妙に E 心 ひました 

. ^ると き. -h た ケ f ん V- ん ま J き,、 つ . ' J 

力ら、 時 又べ ッ フゃ チャックと ゲ H ル 家の 晩餐に 招かれた 機會 にこの こと を なぜかと 尋ねて 

ました。 

「それ は みんな 食って しま ふ のです よ。」 

しょくご は まき く は いかわ でう さ 、 // - 

. ば 後の 葉卷 を^へ たゲ H ルは 如何にも 無造作に かう 一 K ひました。 しかし 「食って しま ふ」 とせ ふ 

^ の は.^ のこと だか わかりません。 すると 鼻 HI 金 を かけた チャック は 僕の 不{ 称 を 察した と 見え、 横 

f あ ひから 說明を 加へ て くれました。 



298 



L よくこう 一一ろ にく しょくお つ つか し/,. J ん こ J 。ん こス 

「その 職工 を みんな 殺して しまって、 肉 を 食料に 使 ふので す。 こ こにぁる新問を^^覽たさぃ 今 

げっ V やう どろく まん よんせんし ち ひゃくろ くじ ふく ひき しょくこう かいこ にく だん ャカ , , - 

月 は 丁度 六 萬 四千 七 百 六十 九 匹 Q 職工が 解雇され ましたから、 それだけ 肉の^ 段 も 下った 訣 です 

よ。」 . 

しょくこう だキ, ころ ■ 

「職工 は默 つて 殺される のです か?」 

V わ し しょくこうと さ つ はふ 

「それ は 騒いでも 仕 かたはありません。 職工 屠殺 法が あるので すから。」 

やま もも はちう うしん にが かほ ことば ぼく もちろん: つ-、. 7」 力ん X : ン 

これ は 山 桃の 鉢 植ゑを 後に 苦い 額 をして ゐたぺ ップの 言葉です。 僕 は 勿論 不快 を 感じました 

しゅじんこう もちろん たう ダん お. f X > 、 * . 

しかし 主人公の ゲ H ル は 勿論、 。へ ップ や チャック も そんな こと は當 然と m:- つて ゐる らし V のです. 

f ん J:..: あざに ぼぐ はな 

現に チヤ ックは 笑 ひながら、 嘲る やうに 僕に 話しかけました。 

がし じ V,: つ て すう こく か てき しゃう りゃく いう ど, -が 一』.^ 

「つまり 餓死したり 自殺した りする 手數 を!; 家 的に^ 略して やる のです ね。 ちょっと 有 儿^ を 

g< がせる だけです から、 大した 苦痛はありません よ。」 

「けれども その 肉 を 食 ふと 云 ふの は、 …… 」 • 

やう だん , 々- お ほ わら わら く-,' 

「常 談を 言って はいけ ません。 あの マッグに 聞かせたら、 さぞ 大笑 ひに 笑 ふでせ う。 あたたの^ 

ゾ* " し か、 や-ふ わすめ f 、せう ふ しょく-一う にく く "ゾ 

でも 第四階級の 娘た ちは賫 笑お 1 になって ゐ るではありません か? 職工 の 肉 を 食 ふこと たどに 愤 



9 慨 したりす るの は 感傷主義で すよ。」 

9 

2 い も乂 だ.. I き てぢか うへ さら rr 

かう 云 ふ 問答 を 聞いて ゐたゲ ェ ルは 手近い テ ェ ブル の 上に あった サ ン ドウ イッチの 皿 を勸 めな 

がら、 恬然と 僕に かう fin ひました。. . , 

「どうです? 一つと りません か? これ も 職工の 肉です がね。」 

ほノ、 もちろんへ きえき わら ご么 う, I 

僕 は 勿論 辟易し ました。 いや、 それば かりではありません。 ぺップ や チャックの 笑 ひ -聲 を 後に 

け 今やく *A と だ ちゃう どい:/ \ そ-:: ほし あか み あ も や-つ ト、 る 

ゲ H ル 家の 客間 を 飛び出しました。 それ は 丁度 家々 の 空に 星 明り も 見えない 荒れ 校 様の 夜です C 

ぼく やみ なか ぽく すま ひ かへ まく 、どよ よん し, リ 

僕 は その 闇の 中 を 僕の 住居へ 歸 りながら、 のべつ 幕な しに 1: 叶 を i.: きました。 夜::: にも 白 じらと 

な,.^ へ ど 

流れる •# 吐 を。 . 

九 

ガー フスく わい しゃ しゃち やう ひとな つ かつば ^i^ tH く たび 、ン 

しかし 硝子 會 社の 社長の ゲ H ルは 人懐こい 河童だった のに 違 ひません。 僕 は 度た びゲ H ルと. 1 

ぞく くらぶ ゆ ゆ,、 わい ひとばん く ひと く 

可 しょに ゲ H ルの屬 して ゐる 俱樂 部へ 行き、 愉快に ー晚を 暮らしました。 これ は 一 つに は その 供 

v.u^^ ぶ I ぞく てう じんく ら ぶ はる ゐ- ごこん よ ため ヰに- 

ゴぷ 部 は トツ クの屬 して ゐる 超人 供樂部 よりも 遙 かに 居 心の 善かった 爲 です。 のみなら す又ゲ H ルの 



300 



はなし てつがくしゃ はなし ふか も ^く ぜんせん あた せ かい 

は哲學 者の マ ッグの 話の やうに 深み を 持って ゐ なかった にせよ、 僕に は 全然 新ら しい^ 5- を, 

ひろ せ かい のぞ じゅんきん さじ カツ フエ ちゃわん くわい 

11 廣ぃ 世界 を观 かせました。 ゲ エル は、 いつも 純金の 匙に 珈琲の 茶碗 を かき ま はしながら、 快 

くわつ はなし 

活 にいろい ろの 話 をした ものです C 

ナ よん ある キ. り ふか ばん ぼく ふ: i きうび も くわ びん なか はなし き たし 

何でも 或 霧の 深い 晚、 僕 は 冬 薔薇 を 盛った 花瓶 を 中に ゲ H ルの話 を 聞いて ゐ ました。 それ は^ 

か 部屋 全體は 勿論、 ^li 子ゃテ 二 ブル も 白い 丄に 細い 金の 緣を とった セ セ ッショ ン 風の 部屋だった 

お; K とくい かほち-つ び せう みなぎ ちゃう ど 二ん 

やうに 覺 えて ゐ ます。 ゲ エル はふ だんよりも 得意 さう に顏 中に 微笑 を 漲らせた まま、 丁」 R その 

てんか と たうない, はケ い ことば- ただいみ 

天下 を 取って ゐた さ lorax 黨 内閣の ことな ど を 話しました C クオ ラック スと 云. ふ 言葉 は =1 意味の 

かくと つし ゃノ、 ほか と かくな に さき かつば ザ- ん たい り 

ない 問投詞 ですから、 「おや」 とで も譯す 外はありません," が、 1^ に 角 何よりも 先に 「河童 全 體の利 

えき い : • つばう せいた う 

益」 と 云 ふこ と を 標榜し て ゐた 政黨だ つたので す。 

たろ. し はい な だか せ いぢ か しゃ うぢき さいり やう ぐ わい かう 

「ク ず ラック ス戴. を 支配して ゐる もの は 名高い 政治家の a ッべ です。 『正直 は 最良の 外交で ある』 

. ことば しゃう; r- き な いぢ うへ およ 

とはビ スマ. < ク の 言った 言葉で せう。 しかし 口 ッぺ は正直を內:^,^の上にも及ぼしてゐるのです。 

一 

し 

えんぜ つ 

「けれども ロッぺ の 演說は …… 」 



い き え /、ぎ j もす-ろん-一と 一 ごと つ そ - 「そ - 

「まあ、 わたしの 言 ふこと をお 聞きなさい。 あの 演? 1^ は 勿論 悉 く;^ です。 が、 II と-. ム ふこと は 

誰でも 知って ゐ ますから、 畢竞 正直と 變ら ないで せう、 それ を 一 概に^^と.パーふのはぁなたがただ 

けの 偏見です よ。 我々 河童 は あなたがたの やつに、 :… .. しかし それ はどうで もよ ろしい。 わたし 

はな たう しはい し 

の 話した いのは ロッぺ のこと です。 口 ッぺは クオ ラックス 黨を支 配して ゐる、 その 义 :! ッぺを 支 

配して ゐる もの は Pou-Foii 新聞 の (こ の 『プ ゥ. フゥ』 と-,, ムふ 言葉 も やはり!?』 味の ない k 投 です。 

若し 强 ひて 譯 すれば、 『ああ』 とで も 一 1^ ふ 外はありません。) 社長の クイ クイです。 が、 クイ クイ も 

かれ;: J しん しゅじん いわけい しはい まへ 

彼 自身の 主人と:! ^ ふ 訣には 行きません" クイ クイ を 支配して ゐる もの は あなたの おに ゐるゲ H ル 

です。」 

しつれい し しんぶん らう ど, つし や み しん 

「けれども:— これ は失禮 かも 知れません けれども、 プゥ • フゥ 新開 は勞働 者の 味 かた をす る 新 

ぶん しゃ rl やう しはいう " 

聞で せう。 その 社長の クイ クイ も あなたの 支配 を 受けて ゐ ると 云 ふの は、 …… 」 

しんぷん き しゃ もちろんら うどうし や み き しゃ し はい 

「プゥ • フゥ 新聞の 記者た ち は 勿論 勞働 者の 味 かたです。 しかし 記者た ち を支ぽ する もの は クイ 

ほ 力 二う ゑん う 

クイの 外 はありますまい。 しかも クイ クイ はこの ゲ H ル の 後援 を 受けす に は ゐられ な い の です。」 

あ ひか はらす び せう じゅんきん さじ * えく 1 み 

、ゲ H ル は 不相變 微笑しながら、 純金の 匙 をお もちやに して ゐ ます。 僕 はかう 云ふゲ H ルを はる 



302 



じ し^ こく しんぶん キ1 しゃ ど, つじ やう おこ 力ん 

と、 ゲェ ル 自身 を 憎む よりも、 プゥ • フゥ 新聞の 記者た ちに 同情の 起る の を 感じました すると 

ぼく む ん たち ま どうじ やう かん み お ほ はら. ふつ 、ら ,A ' I - 

ゲ H ルは SK の 無言に 忽ち この 同情 を 感じた と 見え 大きい 腹を膨 ませて 力う 言.. i のです 

な: しん ふん き しゃ ぜんぶ .1: うど-つ しゃ み r くな ^^(^. ^ . 

「ig、 プゥ • フゥ新 の 記者た ち も 全部勞 働 者の 味 かたではありません よ。 少く とも 我々 か i と 

ふ もの は 誰の 味 かた をす るよりも 先に 我々 自身の 味 かた をし ますから ね。 ……しかし 一史に^ 介 

な ことに はこの ゲニ ル 自身 さへ やはり 影 人の 支お を 受けて ゐ るので す。 あなた は それ を だと 忍 

つま うつく ふ じん 

ひます か? それ はわた しの 妻です よ。 美しい ゲ H ル 夫人です よ。」 

ごろ i わら 

ゲ エル はお ほ 聲に笑 ひました。 

「それ は 寧ろ 仕 合せで せう ピ - , 

「s ^あに S: 、わたし は獻 C 止して ゐ ます。 しかし これ も あなたの 前 だけに、 11 河童で ない あなたの 

て ばな ふいち やうで き 

だけに 手放しで 吹聽屮 I 來 るので すに ■ 

「するとつ まり クオ ラ ック ス: SJ. 閣はゲ H ル 4< 人が 支 して ゐ るので すね。」 

、 しち れん まへ せん V, う たし あるめす か"!. i ため は, じ _ : 

「さあ さう も ia はれます かね C …… しかし 七 年 前の 戰爭 など は 確かにい 坎 雌の 河童の 爲に 始まった 

ものに 違 ひありません。」 



3 r 戰爭? この 國 にも 戰爭 はあった のです か?」 . . 

, 

「ありました とも d ぎ來 もい つ あるか わかりません。 何しろ 隣國の ある^り は、 ;… 」 

ぼく じっさい ときけ じ かつ ぼ くに こく か てき こ りつ し せつめい 

. 僕 は實際 この 時 始めて 河童の 國も 国家的に 孤立して ゐな いこと を 知りました。 ゲ H ルの:^^明す 

と-一ろ かつ 2 人 か は を そ か せって き い かに やそ かつば i 

る 所に よれば、 河童 はいつ も 獺 を假設 敵に して ゐ ると 云 ふこと です。 しかも 獺 は 河童に ft けない 

ぐんび そな い. ぼく . かはク > て あ ひて いつは せん さう はなし すくな キ ようみ. かん 

, 軍備 を 具へ てゐ ると 云 ふこと です。 僕. はこ の 獺 を 相 乎に 河童の 戰 ハサした 一 話に 少 からす 興味 を 感じ 

なに かつば き やうて 今 か は を そ い ゐ-- かつり やく . によし や もも ろん ぺんた つみん たんし パ 

ました。 (何しろ 河童の 强 敵に 獺の ゐる などと 云 ふ こ と は 「水 虎考 略」 の 著者 は 勿論 、「山,: si-rM 梨」 

の 著者 柳 ffl 國男 さ ん さへ 知らす に ゐ た ら しい 新事赏 で す か ら 。 し 

せ New つ おこ え 二: もす, ろんり やう 一 ごく ゆ, だん あ ひて うかぶ い 

r あ の 戰 (ザ の 起 る 前 に は 勿論 兩國と も油斷 せす にぢ つと 相手 を 窺 つ て ゐ ました。 と "ム ふ の は ど ち 

, おな あ ひて きょうふ くに かはん 「そ いつび 今- ある いっぱ ふうふ はう 

らも 同じ やうに 相手 を 恐怖して ゐ たからです。 そこ へ この 瞬に ゐた 獺が 一 匹、 衆の 夫:! を訪 

問し まし た 。 そ の 又 雌の 河童と 云 ふの は 亭主 を 殺す つもり で ゐ た のです。 何しろ」::? 主 は 道樂者 で 

したから ね。 おまけに 生 <| 保險の つ い てゐ たこと も 多少の 誘惑に なった かも 知れません。」 

ふうふ -ご ぞん 

J 「あなた は その 夫婦 を 御存じで すか?」 

V.M^ を」 タ かつば し- つま- . ^つば あくにん い 

ま 「ええ、., II いや、 雄の 河童 だ: t は 知って ゐ ます。 わたしの, 妻な ど はこの 河童 を惡 人の やうに 言 



304 



い あくにん 卜し めす かつば つか お, そ ノ 

つて ゐ ますが ね。 しかし わたしに 言 は せれば、 惡人 よりも 寧ろ 雌 の 河童に 摑ま る こ と を 恐れ て ゐ 

ひ がい まう ざう お ほ 今やう じん めす かっぱ てに いしゅ ケ. や ふん, / 1-」 っパカ リ- t . 

る 被害妄想の 多い 狂人です。 ::: そこで その 雌の 河童 は 亭主の コ コアの 茶碗の 屮へヒ 円 化.^ を 人 

お また i ちが きゃく か は を そ の ., でし ケそ も r-< -んし 1 

れて 5f はいたの です。 それ を 又 どう 問 遠へ たか、 客の 獺に 飲ませて しまった のです e 獺 は 勿み ま:^ ん 

でし まひました。 それから …; 」 

せん V- う 

「それから 戰 に なった の です か? 」 

あいに; か. j を そ くんし やう も ,- し • 

「ええ、 生憎 その 獺 は 勳章を 持 つ てゐ たも の ですからね。」 

r 戰 ハサ は どち ら の 勝に な つ た のです か ? 」 

もちち し くこ いち さんじ ふろくまん キ: つせ スご ひやつ びき かつ ため けなげ せんし 

「勿^1鼠この亂の膨になったのです。 三十 六 萬 九 P 五.. n 匹の 河童た ち は その 爲に 健氣 にも 戰死 しま 

てきこく くら く^ ゐ そんがい な? へ - 5 にに ひ: 力ぶ ハ * し: 力; 

した。 しかし 敵國 に比べれば、 その 位の 担 害 は 何ともありません この 國 にある HT- 皮と 云.,.. I モ皮 

た-て-か 4 を.. て ナ 《 'は せん V.- う とき ガラス せいざう ほか せき 力ん;. i た 山 ^-^(' J \} ン. 

は 鉱鞭 の i^p 皮です。 ゎたしもぁの戰ハ学の時には^^子を製造する外にも石炭-效を戰地 へ送りま 

した。」 

せきた ス がら なに 

「石 i 灰殻 を 何に する の です か?」 

「勿; i 冊禽 情に する のです。 が々 は、 河童 は i さへ 減れば、 何でも 食 ふのに きまって ゐ ますから 



5 才」 

o 

「それ は どうか 怒らす に 下さい。 それ は戰 地に ゐる 河童た ちに は …… % やの-ぼ では 醜 i で, V 

がね。」 

「この 國 でも 醜聞に は 遠 ひありません。 しかし わたし^ 射 かう, つて ゐれ ば、 1 も • 附に はしな 

いもの で す。 哲學者 の マッグ も , つて ゐ るで せう。 『汝の 惡 は 汝 自ら 言 へ。 惡 はおの づか らまお す 

り えき .1 め ニノ 、し? や も た 

べし。』 …… しかも わたし は 利益の 外に も愛國 心に 燃え立 つて ゐ たのです からね G」 

. 丁度 そこへ は ひって 來 たの はこの 樂 部の^^ です。 ^^は ゲ H ル にお をした ffii で 

もす る やうに かう fn ひました。 

たく となり くわ じ 

「お宅の お 隣に 火事が ございます。」 

くわ くわ じ 

「火 —— 火事!」 

ゲ H ルは 驚いて 立ち上りました。 俱も 立ち上つ たの は 勿 です。 が、 "lli はぎち ぎき^つ てお 

J の 首 葉 をつ け 加へ ました。 

カル 「しかしもう 消し 4:; めました C I . 



ャ」 -Ji じ み おく わら ちか へう じ やう ぼく い かほ み 

ゲ H ルは 給仕 を見途 りながら、 泣き 笑 ひに 近い 表情 をし ました。 僕 はかう 云 ふ 額 を 貝る と、 い 

ガラスく わ、, しゃ しゃす.' やう にく き いま だいし ほ/ふ 、 

つか この 硝子 會 社の 社長 を 憎んで ゐ たこと に氣 づきました。 が, ゲ H ル はもう 今では 大資木 1,^ で 

ん ただかつ „s た ! く くわ びん なか ふゆ さう び はな ," 

も 何でもない 唯の 河童に なって 立って ゐ るので す。 僕 は 花瓶の 中の 冬 薔截の 花を拔 き、 ゲ エルの 

て わた 

手 へ 渡しました。 

くわ じ き い おく おどろ も かへ 

「しかし 火事 は 消えた と 云っても、 奥さん は さぞお 驚きで せう。 さあ、 これ を 持って ぉ歸 りな さ 

い。」 

「難 有う。」 

まく て 二ぎ きふ わら こ -, Ui ぼく はな 

ゲ エル は 俊の 手 を 握りました。 それから 急に にやり と 笑 ひ、 小聲 にかう 僕に 話しかけました。 

となり か さく くわ さい ほ けんかね ノ . - 5 - 

「隣 はわた しの 家作です からね。 火災 保 險の金 だけ はとれ るので すよ」 

IK く A 一き び せう け 、べつ で 々- ぞう を て き 

僕 はこの 時の ゲ H ルの 微笑 を —— 輕蔑 する こと も屮 I 來 なければ、 憎惡 する こと も出來 な: >ゲ H 

び せつ- いま お ぼ 

ルの 微笑 を 未だに ありあり と覺 えて ゐ ます。 



お 可 



307 



「どうしたね? け ふ は 又 妙に ふさいで ゐるぢ やない か?」 

く.^ じ. r ょノ、 じつ f i きたぶ ご J く は ぼく ; <!,; やく ま 、 .r- こし Jj=- く 4. 、 

その 火事の あった 翌日です。 僕は卷 煙草 を啣 へながら、 僕の 客間の 椅子に 腰をおろした 學 生の 

い . ^つ さい また みぎ あし うへ ひだり あし くさ - 、ち- だし み 

ラッフ にかう 言 ひました。 實際又 ラップ は 右の 脚の 上へ 左の 脚 をのせ たま ま、 腐った 嘴 も 見えな 

いほ ど * ぼんやり」 脉の 上ば かり 見て ゐ たのです。 

くん い 

「ラップ }3^、 どうした ねと 言へば。」 

「いや、 何、 つまらない ことなので すよ。 —— 」 

ラップ はやつ と 頭 を 擧げ、 悲しい 鼻, 聲を 出しました。 

ぽノ、 まど そと み むしと すみれ なにげ つぶや く 

「僕 はけ ふ 窓の 外 を 見ながら、 『おや £i| 取り 童が いた』 と 何 4 ポ なしに 眩いた のです。 すると 僕の 

いもうと きふ かほい ろ か おも わしと ナ みれ あ-二 ち 

妹 は 念に 顏色 を變 へ たと 思 ふと、 『どうせ わたし は蟲 取り 童よ』 と當り 散らす ぢ ゃぁリ ません か? 

また ぼく だい いも- 「七び いき ぽ C /、 

おまけに 又 僕のお ふくろ も 大の妹 # 、属で すから、 やはり 僕に 食つ て かかる のです。 - 

れ* しと すみれ さ い いもうと ふく わ , 

「蟲 取り 童が^い たと 云 ふこと はどうして 妹さんに は 不快な めだね?」 

た ぶん をす かっぱ つか い いみ t かわる や- 

一 さあ、 多 〈刀 雄の 河童 を摑ま へ ると 云 ふ 意味に でもと つたので せう。 そこ へ おふくろと 仲 惡ぃ叔 

けん/;! わ なかま い いよいよお ほさ-つどう ねんち うよ 》^ ら 

母 も 喧嘩の 仲間入り をした のです から- 愈 .K 騷動 になって しま ひました) しかも 年屮醉 っ拂っ 



けんく わ v^.. たれかれ さ ベ つ なぐ だ ノ し 

てゐ るお ゃぢ はこの 喧嘩 を 聞きつ ける と、 誰彼の 差^な しに 毆り 出した のです。 それだけでも:^^- 

* ち ところ ぼく おとうと あ ひだ さいふ ぬす はや なに,, T ぶ" -- L 、 

末の つかない 所へ 僕の 弟 は その 間にお ふくろの 財布 を盜 むが 早い か、 キネ マ か 何 か を兒に 行つ て 

しま ひました。 僕 は …… ほんた うに 僕 はもう、 」 , 

り r つて かま うづ なに な ぼく どうじ やう もちろん どう 

ラップ は兩 手に を 埋め、 何も 言 はすに 泣いて しま ひました。 僕の 同情した の は,〃 論です ^ 

じ ii-A ;. てく- IJ : ど た 1 し じん けいべつ おも だ も ナ> ろん ぼく 力た ナん V 

時に 乂 家族制度に 對 する 詩人の トツ ク の 輕蔑を 思 ひ 出した の も 勿論です。 僕 は ラップ の 肩 を 叩き 

, 、つし やう けんめ い なぐ 一- 

1 生 懸命に 慰めました" 

「そんな こと は どこでも ぁリ 勝ち だよ" まあ 氣を 出し 給へ。」 . 

, 、ち^し くさ 

「しかし …; しかし 嘴で も 腐って ゐ なければ、 …… 」 

か くん うち い 

「それ は あきらめる 外 はない さ。 さあ、 トツ ク;^ の 家へ でも 行かう。」 

「トツ ク さん は 僕を輕 蔑して ゐ ます。 僕 は 卜ック さんの やうに 大膽に 家族 を 捨てる ことが 出來ま 

せんから J 

「ぢ ゃク ラバ ック 君の 家へ 〔n かう。」 

僕 は あの プ贫 i 木會 以來、 クラ バックに も 友 だち になって ゐ ましたから、 觅に灼 この 大昔 樂 家の 《ノ办 



i. こ 

9 へ ラップ を つれ 出す ことにしました。 クラ バック は 卜ック に比べれば、 遙 かに! JBIr.: に 暮らして ゐ 

3 いし ほんか : --み 一; こ 

ます。 と 云 ふの は 資本家の ゲ H ルの やうに 暮らして ゐ- ると 云 ふ 意味ではありません。 喉い 7 つ、, ろ 

> こ, つ; v.„^ 、 - にん-さや-つ た. つき へやい つ なら なか "う な,. A > r 

の^ 董を 11 タ ナグラ 3 人形 やべ ル シァ の^ 器 を 部屋 一 ばいに 並べた 中に トル コ;^ の 良 ゅチを 

す じ しん せ-つぐ,: つぐ わ した 二 ども ちそ 

据ゑ、 クラ バック 自身の 肖像 畫の 下にい つも 子供た ちと 遊んで ゐ るので す。 が、 け ふ はどうした 

のか: S 腕 を 胸へ 組んだ まま、 f 古い 顔 をして 坐って ゐ ました。 のみなら すその 又 足 もとに が 

いちめんち しじ" » J r: 

, 一 面に 散らばって ゐ ました。 ラップ も 詩人 トツ クと 一 しょに 度た びク ラバ ックに は! "つて ゐる 1." 

です。 しかし この 容 子に 恐れた と 貝え、 け ふ は 了 寧,. にお 時宜 をした なり、 li つて 部屋の 隅に に を 

おろしました。 

「どうし たね? クラ バ ッ ク 君。,」 

f. 、二 ほ、 A 一ん あいさつ か は だいおんが,. か とひ 

僕 は おど 挨俊 の 代りに かう 大昔 樂 〔豕 へ 問 かけました。 

ひひ やう か あ はう : く じょ ヒ やうし じょ レ、 :;,■- つし くら 

「ど うづ る も の 力 ? 批評 〈豕 の 阿;! 木 め ! 僕 の 杆情詩 は 卜ック の 抒情詩と 比 ベ も の に た ら な い と 

7 ず やが るんだ。」 

河 

M >. み おんがく. A 

? 「しかし は 音樂家 だし、 …… 」 



「そもだけならばぎ!^も^^る。 I はで ソク に^べれば、 音樂 家の 名に 憒 しないと 言 やが るぢゃ 

ないか?」 

。ック と^ふの は クラ バックと^ たび^べ られる i= ^夢 夢です。 が、 生憎 超人 m 樂 部の 會 にな 

t もっと くちばし そ あが ひとくせ 、 

つてわない ぼ^お 、ぅ|" は も It- たこと はありません。 尤も 嘴の 反り 上った、 ー?^ るら し v 

^で だけ は 度た び寫眞 でも 見かけて ゐ ました。 

- > 1 おんで i おんがく ぁ:\ .^ y - - 

「ロック も! Klvt に は 11 ひない。 しかし ロックの 音樂は 君の 音樂に 溢れて ゐる 近代的 忭 を 持って 

ゐ ない。」 

きみ おも 

「君よ ましたう にさう 田ん ふか?」 

「さう 田 じふと も 」 

すると クラ バック は f あ 4 るが, か、 タ ナグラ の義 ^っ摑 み、 いきな-床の 上に 叩きつ 

けました。 ラップ はぎ i ,たと k え、 i か i を 1 げて ぎょうと しました。 が、 クラ バック は 

ラップゃ傑にはちょっと「|^ひな」とーガふ_^5-すずをしたピー、 ゲ 1- は 冷やかに かう 一ず ふので す。 

, 「それ±"ねも%"礙だのゃぅに^^^^ってゐなぃからだ。 僕 は。 ックを 恐れて ゐる。 …; 」 



きみ けんそん か き たま • 

1 「君が? 謙遞 家を氣 どるの はやめ 給へ c」 

3 たホ けんそべ か き だいいちき み き み くらち ►'-"J^CJS ,ヽ き 

「誰が 謙遞 象を氣 どる もの か? 第 一 君た ちに 氣 どって 見せる 位なら ば、 批評家た ちの 前に 氣ど 

み ぼく てんさい てん おそ 

つて 見せて ゐる。 僕 は —— ク ラバ ックは 天才 だ。 その 點 では 口 ックを 恐れて ゐ ない。」 

なに おそ 

「 で は 何 を 恐れて ゐ るの だ?」 

なに しゃうたい し い し, H まし 

「何 か正體 の.^ れな いもの を、 —— 言 はば 口 ックを 支配して ゐる星 を。」 

ぽく ふお 

「どうも 僕に は腑に 落ちない がね。」 . 

い &i く えい 今やう う なく *i 

「では かう 言へば わかる だら う。 ロック は 僕の 影響 を 受けない。 が、 僕 はいつ の 間に か ロックの 

えいき やう う 

影響 を 受けて しま ふの だ。」 

きみ かんじ ゆせい . 

「それ は 君の 感受性の …… 。」 

き たま かんじゅせい もんだい おす で き し 

「まあ、 聞き 給へ。 感受性な どの 問题 ではない。 ック はいつ も 安んじて あいつ だけに 出來 る: if 

ご: V - - x ^ くいい めみ あるひ ひ? ぼ さ 

事 をして ゐる。 しかし 僕 は 苛 ら^ら する の だ。 それ は a ックの 目から 見れば、 或は 一 步の差 かも 

し ほく じふ マイル ちが 

知れない。 けれども 僕に は 十 哩も違 ふの だ。」 

i ひ 

せんせい えいゆう きょく 

「しかし 先生の 英雄 曲 は …… 」 



ク ラバ ックは 細い を T 歷 細め、 忌々 しさう に ラップ を 睨みつ けました。 

,上 . へ いしん ご いとう いめ 

ri り li へ。 ま" など に^がわ かる? iK は? ソクを 知って ゐ るの だ。 ?ソク に 平 身 低 如す る 犬 ど 

もよりも 口 ックを 知って ゐ るの だ。」 

「まあ 少し 靜 かにし 給へ。」 

-dt く 一つ も l^iくら し 穴-に 

「ずし S かにして ゐられ るなら ば、 ::: 僕 はいつ も かう 思って ゐる。 . 1 僕 等の, 5^ ら なレ仆 もレ 

に 、- 1 てつ パハ くしゃ l 

か は I を、 i ク ラバ ック を嚼? に P ックを 僕の 前に 立た せた の だ。 祈 n 學者の マ ッグ はかう- ム 

ふこと を^も ぎも^^して ゐる。 ぃっもぁのgi^i-のランタァンの下に古ぼけた本ばかり讀んで 

ゐる 癖に。」 

「どうして?」 ♦ 

> . か ち ±-7 こと-ふ い ほんみ i 

「この }ii 頃 マ ッ グ の * い た 『阿呆 の 言葉』 と 云 ふ 本 を 見 給 へ — 」 - 

クラバックは!^にぺ肥の^を艇す — とォ ふよりも &げ つけました。 それから 又 腕 を 組んだ ま 

っリ いはな 

ま、 突 けん どんに かう 言 ひ 放ちました" 

^ しっけ- 

3 「ぢ やけ ふ は 失敬しょう ピ 



ぼくし. J-» '"へ * ゥ ^ ^ .. ) 1- ) » . 

3 僕 は; e 氣 返った ラ ップと 一 しょに もう 一 度 往來へ 出る ことにしました.」 人ぎ りの^い よお 

祀變毛 生櫸の 並み木の かげに いろいろの 店 を 並べ てゐ ます。 俟等は 何と f ム ふこと もな しに!! つ て 

ある ゆ と_ は 、, み なに- ) ;> . 

步ぃ て 行きました。 すると そ こ へ 通りかか つ た の は髮の 長い 詩人 の トツ ク です。 卜ック は 1| マの 

>ポ み j 、 .^丄>,;_,ノ ろ- (- ンケチ だ なんど ひた ひ ぬぐ 

S を 見る と 股の 袋から ザ 巾 を 出し、 何度も 額 を 拭 ひました。 . 

「や あ、 暫らく <£: はなかった ね" 僕 はけ ふ は 久しぶりに クラ バック を II ねようと 1| ふの だが、 … 

, J 

僕 は こ の 藝衡 家た ち を 喧嘩 さ せて は 惡 いと 思 ひ、 ク ラ バ ヅ クの 如何に も^, 舰だ つ た こ と を? 

. ^に トツ クに訪 しました" 

「さう か: ぢ ややめ にしよう。 何しろ クラ バック は神經 衰弱 だからね】 …… ^もこの づヨ Mil は 

ねむ よわ 

眠られな いのに 弱って ゐ るの だ。」 

ぼくら いつ さん ぼ 

一 どう だね、 僕 等と 一 しょに 散歩 をして は?」 

可 「いや、 け ふ はやめにしょう。 おや!」 

^ トツ クは、 かう 叫ぶ が 早い か、 しっかり. 僕の 腕 を 摘みました。 しかもい つか t¥ ピゲ 5..^ を きし 



てゐ るので す。 

「どうしたの だ?」 

「どうしたの です?」 

なに じ どうしゃ まど なか みどり さる いっぴき てび だ み 

「何 あの 自動車の 窓の 中から 綠 いろの 猿が 一 匹 首 を 出した やうに 見えた の だよ」 

ぼく た せう しんば い と かく い しゃ しんさつ もら v,^ 

僕 は 多少 心配に なり、 兎に角 あの 醫 者の チャックに 診察して 貨 ふやう に觀め ましん し 力し 卜 

なん い しょうち け しき み なに 5 たが ソ、 f, み, 

ックは 可と 言っても、 承知す る氣色 さへ 見せません。 のみなら す 何 か 疑 はし さう に仪 等の を:^ 

比べながら、 こんな こと さ へ 一一 一一 I: ひ 出す のです。 

ぼく けつ む せいふ しゅぎ しゃ わす - ノ へ" * 山 ,5 、、- 

「僕 は 決して 無政府主義者 ではない よ。 それだけ はきつ と 忘れす にゐて くれ 給へ 11 では さや 

まっぴら-,! めん 

うなら。 チャック など は眞平 御免 だ。」 

ま 1、 たヒす うし すがた み おく ぽ くら な, に 

僕 等 は ぼんやり 佇んだ まま、 トツ クの 後ろ姿 を 見送って ゐ ました。 伎 等 は— いや、 「^等」 て は 

がくせ,' i わう らい なか あし じ ど" l-t , ひと 

ありません。 學 生の ラップ はいつ の il にか 往來 のまん 中に 脚 を ひろげ, しっきり ない 自動^ や 人 

どま ま,: め のぞ ti く かつば はつ キ やう f. ゆ どろ.' 。 P. , 

通, り を 股 E 金に 现 いて ゐ るの です" 僕 は この 河童 も發 狂した かと ひ 驚: > て ラッフ を riy き 起し 

4 

3 ました。 



じ やう だん なに 

5 「常 談ぢ やない。 何 をして ゐ る?」 

し. かし ラップ は 目 を こすりながら、 f 思 外に も 落ち着いて 返 をし ました。 

あま いうう つ V.- かさ よ なか なが み おな 

「いえ、 餘 り憂聽 ですから、 逆 まに 世の中 を 眺めて 見た のです。 けれども やはり!:^ じこと です 

ね。」 

十一 

てつがくしゃ か あはう ことば な 「" なんし やう 

これ は 祈 n 學 者の マッグの 書いた 「阿呆の 一 W 葉」 の 中の 何 章 かです C 1 . 

X 

あ はう かれいぐ わい あ はう しん 

阿呆 はい つも 彼 以外の もの を 阿呆で あると 信じて ゐる。 

X 

われく し ぜん あい し ビん われ- -\ にく しっと ため 

我々 の 自然 を 愛する の は 自然 は 我々 を 憎んだ り 嫉 した り しない 爲 もない こと はない。 

河 

もっと かしこ せいく わつ いちじ だい しふくわん けいべつ またし ふくわん す こ やぶ く 

お 最も 賢い 生活 は 一 時代の 習 I 识を輕 蔑しながら、 しかも その 又 習 惯を 少しも 破らない やうに 暮ら 



す ことで ある。 

X 

われ/.^ もっと ほこ われ/, も 3 

我々 の: 取 も 誇りたい もの は 我々 の 持って ゐな いもの だけで ある 

X 

1/ ぐう li- つ » 、 i くん も ど-つじ i たなん ぐ-つ ざう 

何び と も 偶像 を 破歡す る こ と に 異存 を 持って ゐる もの はない。 M 時に 又 何び と も 偶像 になる 一" 

, そつ も ぐう ざ-つ だいざ うへ やす すわ , 、もつ、 と 

と に 異存 を 持つ て ゐる もの はな い 。 しかし 偶像 の薹座 の 上に-女ん じて f.: つ て ゐ られる もの は 最も. 

かみ ふ、 めぐ あ はう あくにん えい ゆう 丄 や-つ え, 、 つ 5- 

神々 に惠 まれた もの、 11 阿呆 か、 惡人 か、 英雄 かで ある X クラ バック はこの 萆の丄 へ 爪の,.^ を 

つけて ゐ ました。) . . 

y^/ \ .*..>, 、-ン ひつえう し V- う V ん 产-, P ねく ぜん つ し われ/、 ただ ふる た々 J.1 あた -.-r, " く! J1 

我々 の 生活に お 要な 思想 は 三 干 年 前に 盡き たか も 知れない。 我々 は 唯 古い 薪に 新ら し ノ炎を 加 

へ る だけで あらう。 

X 

ォれ /\ とくし.. ゥ、 われ/.、 じ しん い しき て, f-.* マつ つね 1 

我々 の 特 Jf- は 我 々 自身の 意識 を 超越す る の を 常と し て ゐ る 



幸 幅 は 苦痛 を 伴 ひ、 平和 は 倦怠 を 伴 ふと すれば、 11 ? 

自己 を 辯 護す る こと は 他人 を 辯 護す る ことよりも 困難で ある。 ^ジ もの は 辯 護 十 を 見よ。 

X 

キ」 よ.^ -く^ 4£ 小-ひべ、 ギ, に 化;,、、 つみ V.- んぜん ねんらい さんしゃ はつ どうじ またお そ 

矜誇 愛慾 疑惑 —— あらゆる" 鲊は: 二 千年 來、 この 三者から 發 して ゐる。 同時に 乂 恐らく は あ 

ら ゆる 德も。 

X 

ぶ" しつてき. ^くば, げん かなら チ へいわ もたら われ ノ\ へいわ う ため 屮- > し么」 今-よく:?..,' p- ん 

物^的 欲ば 1- を 減す る こと は必 しも 平和 を II さない。 我々 は 平和 を 得る 爲には 精神的 欲望 も, じ 

なければ ならぬ。 (ク ラバ ック はこ の 章の 上に も 爪の 痕を殘 して ゐ ました。) 

.^"/\: に" ぱ . ふ、 か: つ, . にべ げん か つば しんく わ ぼく しゃう よ ときお も 

J ^々は ス £E よりも r^+?tr である ス はは:!: 意 ほど 進化して ゐ ない。 (僕 はこ の 章 を 請んだ 時 思 はす 

童 笑って しま ひました。) 、 



戎す こと は 成し 得る ことで あり、 成し 得る こと は 成す ことで ある。 畢竞 我々 の 生活 はかう 云 ふ 

ヒ ゆん くわん らんば ふ だつ でき すな は ふ がふり 丄# うし r- 

循 環 論法 を脫 する こと は出來 な, い。 11 卽ち 不合理に 終始して ゐる 

X 

± くち のち かれ じんせ、. くわん いちつ 1 ちょいん いち- * 一 へう はく 

ポオ ドレ H ルは 白痴に なった 後、 彼の 人生 觀を たった 一語に、 11 女 陰の 一;? i に 表白した し 

かし 銜^ 身 を る もの は必 いも かう, つたこと ではない。 寧ろ 彼の 大才 に、 11 彼の 生活 を 維持 

する に 足る 詩的 天才に 信頼した 爲に 胃袋の 一 語 を 忘れた ことで ある。 (この にも やはり ク ラバ ッ 

つめ あと こ 

クの 爪の 痕は殘 つて ゐ ました。) 

も り, -. 二 しう-うし われ/.、 たう ぞん われ/、 じ しん そん グーい ひてい ノ. . り,. ネー,, : 

若し 理性に 始 すると すれば、 我々 は當然 我々 自身の 存在 を 否定し なけれ はならぬ H 性 を 一 

かう チ.、 いっしゃう をに すな は にス げん かつば 丄乂く あ .--、、. しソ, 

にした ヴ オル テ H ルの 幸福に 一 生 を 了った の は卽ち 人間の 河童よりも 進化して ゐなレ こと を-..^ す 

ものである。 



9 

^ 十二 

ある わ あ ひ さむ ご « く あ はう ことば よ あ てつがくしゃ -3 

或 割り 合に 寒い 午後です。 僕 は 「阿呆の 言葉」 も讀み 飽きました から、 哲學 者の マッグ を,!^ ねに 

で > ある さび まち かど か や かつ 、っぴ き : へ 

5:1 力け ました〕 すると 或 寂しい 町の 角に 蚊の やうに 瘦 せた; 1: 童が 一 匹、 ぼんやり^に よりかかつ 

まぎ チく えく ねん ひつ 力す > ん 3 *^ V- N 

てゐ ました。 しかも それ は 紛れ もない、 いっか 僕の 萬 年 筆 を 盗んで!;;;: つた 河童な のです。 僕 はし 

おも ちゃう ど とほ ん- くま じめん さ よ 

めた と 3- ひました から、 丁度 そこへ 通りかかった、 逕 しい 巡査 を 呼びと めました。 

「ちょっと あの 河童 を 取り調べ て 下さい。 あの 河童 は r 度 一 月ばかり前にゎたしの£|^^^範を|^ん 

だのです から。」 

じゅん、.,^, - みぎて ぼう くに じゅん v.- けんか: Ife- ゐ!? ジも . 'み 

巡査 は 右 \lh の 棒 を あげ、 (この 國の 巡査 は劍の 代りに 水 松 の^を 持って ゐ るので す。) 「おい、 t ;」 

力-ば こ ゑ ぼく あるひ -.^!っょ こ ざ も 

とその 河童へ 聲を かけました。 僕 は 或は その 河童 は 逃げ出し はしない かと 思って ゐ ました。 が、 

ぞ. んぐ わい 5 つ はら じゅんさ まへ あゆよ ,Te く .- 1 " rc 

存外 落ち着き 拂 つて 巡査の 前へ 歩み寄りました。 のみなら す 腕 を 組んだ まま、 :ffi: にも 傲ぎ と 

河 の 顏ゃ巡 茶の S を じろじろ見て ゐ るので す。 しかし 巡 杏 は 怒り もせす、 ぎの,袋,からー^^sをmして 

V ノっ, く寸乂 もん 

早速 尋問に とりかか りました-つ 



320 



「お前の 名 は?」 

「グ ルック。」 

「職業 は?」 

に さんに ちまへ い, つ びん はいたつ ふ 

「つい 一 一三 日 前まで は 郵便配達 夫 をして ゐ ました。」 

ひと え i う た きみ ひと まんねんひつ ぬす L い 

「よろしい。 そこで この 人の 申し立て によれば、 ij?; はこの 人の 萬 年 筆を盜 んで I;;: つ た と 云 ふ こ と 

だが ね。」 

ひとつき まへ ぬ ケ. 

「ええ、 一 月ば かり 前に 盗みました。」 

なん ため 

「何の 爲 に?」 

こ ども おも i:- や おも 

「子供の 玩具に しょう と 思った のです。」 

一 I ども 

「その子 供 は?」 

じ.^ んさ はじ あ ひて かつば するど め そそ 

巡査 は 始めて 相手の 河童へ 銃い H を 注ぎました" 

いっし-つ. A ん えへ し 

n 週間 前に 死んで しま ひました ヒ 

しばう しょうめ いし, 二 も 

「死亡 證吼書 を 持って ゐ るかね?」 



瘦 せた. は 腹の 袋から 一枚の » を とり I: しました。 K_ ^は その ^ へ, を と、 おこ こや こ 



2 

3 



河 

童 



や 笑 ひながら、 相手の 肩 を 嘴き ました 



「よろしい。 どうも 御 苦 勞 だった ね。」 

僕 は 呆氣に とられた まま、 巡査の 顔 を 眺めて ゐ ました。 しかも そのうちに ぎせ たま fi"^ かぶ 

つぶつ 眩きながら、 僕 等 を 後ろに して 行って しま ふので す。 § はやつ と I- をと り! g し、 かう gj^ 



に 尋ねて 見ました 



かつば 



「どうして あの 河童 を摑ま へない の です?」 

「あの 河童 は 無罪です よ。」 

1 > ぼく まんねん ひ つ ぬす 

「しかし, 僕の 萬 年 筆 を盜ん だの は … … 」 

こ ども おもちゃ ため 

「子供の 玩具に する 爲 だった のでせ う。 けれども その子^ は 死んで ゐ るので す。 5^ し^か^^^ 

: - ) -- けい はふ せんに ひゃく はち じふ ご でう しら 

だったら、 刑法 千 二百 八十 五條 をお 調べなさい。」 

じゅんさ い , 

巡^ はかう, ひすて たなり、 さっさと どこかへ 1^ つてし まひました。 i はが かたが ありま 4-, レ 

. け 1, は fj せんに ひゃく は., つじ ふご でう くち く / 、 

力ら 「刑法 千 二 八十 五^ を 口の 中に 繰り返し、 マッグの 家へ いで^きました。 の マ 



ッ グ は き で す。 まビけ ふも辦 ii い 部屋 に は 裁判官 の 。へ ッ プ や S 酉 者 の チャック や 砲 子會社 に 社 

1;^ がゲ H ルな どがま"、 のき ま ランタ アンの に i, の M おち 船ら せて ゐ ました。 そ 

こに iiw ベ. S が ぺップ が てゐ たの は^よりも 街に は 好都合です。 僕 は 椅子に かける が n 千い か、 ^ 

H,vt 、せん: ひゃく. S ちじ ふご でう しら か は ざっそく _ / ii- 、 、ト: \ こ- 

干 一 一 百 八十 五條 を檢べ る 代りに 早速べ ヅ フ へ ^ひ 力: C ました 

「ぺ ップ 散、 甚だ 失 ffe. です が、 この 國 では I 非人 を 罰しない のです か?」 

ぺ ップは|^^?の^ずの^^5づ|^ぺと^¥上げてから、 如何にも つまらな さう に 返 ま をし まし 

た。 

f つ し け ひ おこな ノ、 らゐ 

「灘 します とも。 死舺 さへ 行 はれる 位です からね 」 , 

?-/ に ひとつき まへ 

「しかし 僕 は 一 月ば かり 前に、 …… 」 

Islife した, こと を i ねて ぎした。 

「ふむ、 それはかぅ^^^ふのです。 11 『11: なる 犯罪 を 行 ひたりと 雖も、 該犯 f ど^は しめたる 事 

J*^ ち, I" かつ- 

辦 おした る.^ は l^^i 教を s_ まする こと をぎ す』 つまり あなたの 合で 言へば、 その 河童に 

^ |£ てま. i だった のです が、 ケ はもう 親ではありません から、 犯.?=^も自然と消滅するのです 」 



3 「それ はどう も 不合理で すね。」 

2 

「常 談をず つて はいけ ません。 親だった 河童 も 親で ある :!: 童 も Ml に 見る のこ そ 不合理です。 さ 

うさう、 日ポの 法律で は 同一 に 見る ことにな つて ゐ るので すね。 それ はどう も 我々 に は 滑稽です。 

ぺッ プは卷 煙草 を拋り 出しながら、 氣 のない 薄 笑 ひ を:^ らして ゐ ました. し そこへ 口を出し たの 

はふり つ えん とほ けなめ がね なほ ぱく しつ も/、 

は 法律に は緣の 遠い チャックです。 チャック はちよ つと 鼻 n 金 を 直し、 かう 僕に 質問し ました。 

にほん しけい 

「n 本に も 死刑 はあります か?」 

. に ほん かう ざい 

「あります とも。 日本で は 絞罪です。」 

俊 は 入 然と 構へ こんだ ぺ ップに 多少:.^ 感を 感じて ゐ ましたから、 この 機會に 皮肉 を 浴せ て やり 

ました。 

くに し けい に ほん ぶ z めいてん r で キ- 

「この 國の 死刑 は 日本よりも 文明 的に 出 來てゐ るで せう ね?」 

もちろん ぶんめ いてき 

サ 「それ は 勿論 文明 的です。」 

ま ぺ ップ はや はり 落ち着いて ゐ ました。 



「こり 離で. Hn, ひな ど は 用 ひません。 稀に は. 宦氣を 用 ひる こと もあります。 しかし 大抵 は電 H- も 

まひません。 霧 そ の 犯 の 名 を f 一 c つて 聞かせ る だけです。」 

「それだけで 河童 は 死ぬ のです か?」 

「.>t にます とも。 ^ V t1 里 の 祌ん經 作用 は あなたがた のよりも 微妙 で す か ら ね。」 

「それ は 丄死葡 ばかりではありません。 殺人に も その VJ を 使 ふの があります 11 」 

Js« がゲ H ルは の!^ きに i りながら、 おつ こい 笑 をして 见 せました。 

「わたし はこの ifiss お に 『$fc? は t だ だ』 Is れ たき" S ぎ 库 を 起し かかった もの 

です。」 

< ^ ' L ち- ゥ し 

「それ II が站 いやう です ね。 わたしの 知って ゐた或 辯護士 など はや はり その 爲に 死んで しまつ 

たのです からね。」 

l^はかぅ^^をだれたp、 —が の マッグ を ふり かへ りました。 マッグ はや はりいつ もの 

やうに ぎ^な 鲈 i を? & かべた まま、 謎 の 額 も 見す にしゃべ つて ゐ るので す。 . 

, 「その1ォぃ?里ま||かに^|^すはれ、 I ま II あなた も 御 承知で せう、 この M で处 だと 言 はれる り 



にんぴにん い いみ ぐらん おれ \ ,0 ji 、 

^ は 人非人と 云 ふ 意味になる こと 位 は。 —— 己 は 蛙 かな? きぜ はない かな? と i§r 老, てゐる 

3 し - 

うち に とうとう 死んで しまつ たも の です。」 

「それ はつ まり 自殺です ね。」 

もっと かっぱ かへ る い ころ . 

「尤も その 河童 を 蛇 だ と 言 つた やつ は 殺す つもりで 一 It つたので すがね C あな た が た の , が か ら が し 

ば、 ゃはりそれも自殺とー!^ふ …… 」 

丁度 マッグが かう 云った 時です。 突然 その 部屋の Ikf うに、 II 艇 かに!^ M の トツ クのギ J 

す, ど おと いつば つ くうき は . か 《ド r- 

銃 レビス トルの 昔が ー發、 空氣を 反ね 返へ す やうに 響き渡りました。 

十三 

僕 等 は 卜 ックの 家へ g けつ けました。 トツ ク はお パの に ピストル を赌 り、 tfvm からぎ を だし 

かう ざんしょ くぶつ はちう なか あ ふ. > : ふ , 

たま ま、 高山植物の 鉢植えの 中に 仰向けに なって 脾 れてゐ ました > その; ^離に は «の: まぎが ぃーっ¥ 

むね かほ う-つ お ほご 么 あ な だく 3. す > l-,^ -C 6 

河 卜 ックの 胸に 顏を 棚め、 大聲を 舉げて 泣いて ゐ ました。 俊 は^の!: f をぎ き^しながら、 (い 一つ 

かつば ひふ r .^ * あ, - こ r- . 

は ぬらぬらす る. れ 童の 皮膚に 手 を 觸れる こと を餘り 好んで はゐ ない の です が。 J 「どうしたり で 



す?」 と 尋ねました。 

ただな に か おも あたま う 

「どうしたの だか、 わかりません。 唯 何 か 書いて ゐ たと 田. - ふと、 いきなり ピストルで 頭 を 打 \ 一た 

かつば な っ-么 

のです。 ああ、 わたし はどうし ませう? qiir-r-r-r-r, qm.-r-r-r-rj (これ は, ひ 童に 泣き 聲 です ) 

「何しろ トツ ク君 は我傣 だった からね。」 

ま f^^JM のせ 長の、 ゲ H ルは 悲し さう に 頭 を 振りながら、 裁^官の ぺップ にかう 一 K ひました。 し 

か V ヘップ は 可 も 言 はすに <^ 口の 卷 煙草に 火 をつ けて ゐ ました C すると ゲ まで 跪いて、 卜ック の 

"ct! など を 腿べ てゐた チャック は^!: にも is? らしい 態度 をした まま、 僕 等 五 人に 塞 n しまし な 

(實は 一人と s: 匹と です。) 

「もう iSn です。 トツ ク i^"- ん ん I ぃ勖 病でした から、 それだけ でも 憂 |^) になり 爿" かった のです。」 

「何 か 書いて ゐた と ik ふこと です が。」 

• ' : to 、-、 "、- ひと-ご とも つくおう へ 力み あ- - 

mss^ の マ ッグはiiまするゃぅにかぅ獨り語をt^らしながら、 机の 上の 紙 をと り丄げ まし ムレ 

^||マは§| 鶴 をのば し、 {: おい i だけ はま 外です。 :} 幅の 廣ぃ マッグの-お越しに 一 枚の 紙を观 きこみ ま 

6 

2 

3 した。 



童 河 



327 



た ゆ しゃば かい へだ たに 

「いざ、 立ちて 1;;: かん。 、娑婆 界を隔 つる 谷へ。 

岩 むら はこ ごしく、 やま 水は淸 く、 - 

やくさう はな たに 

藥 草の 花 はに ほへ る 谷へ。」 、 

マ ッグは 僕 等 を ふり 返りながら、 微苦笑と 一 しょに かう 一一:; n ひました。 

「これ はゲ ェ テ の 『ミ 一一 ョ ン の 歌』 の剽竊 です よ。 すると トツ ク の 自殺した の は t!:^ 人と しても 

れてゐ たのです ね。」 

、ぐ Htf 、んじ ど-つし や おんがくか - く.; うす- 

そこ へ 偶然 自動車 を乘 りつけ たの は あの 昔樂 家の クラ バ ック です。 ク ラバ ックはかぅ『1^ふ光^| 

み , しばら と ぐち たたす ぼくら まへ あゆ よ ど な 

を 見る と 暫く 戶 口に 佇んで ゐ ました。 が、 僕 等の 前へ 步み 寄る と、 怒鳴りつ ける やうに マッグ 

に 話しかけました。 . 

ゆみ r) んじ や, T 

「それ は トツ クの 遣言狀 で すか ? 」 

「いや、 最後に 書いて ゐた 詩です。」 

「詩?」 - 

す 二. ズ.. マ かみ さかだ し かう わた 

やはり 少しも 騷 がない マ ッグ は髮を 逆立てた ク ラバ ックに トツ クの 詩稿 を 渡しました。 ク ラバ 



ックは あ た りに は 目 もやら すに 熱 心 に そ の 詩稿 を 讀 み 出 し ま した。 しかも マツ グ の :: 一 s 紫 に は, 桥ど 

返 _5 ^さへ しないの です。 . 

「あなた は トツ ク の 死 を どう 5.- ひます か?」 

「いざ、 立ちて、 …… 僕 も 亦い つ 死ぬ かわかり ません. - …… ^婆 界を隔 つる 谷へ, - …… 」 

「しかし あなた は トツ ク 君と はや はり 親友の 一人だった のでせ う?」 - 

しん/つ こ ど,、 しゃじ ..^ い へだ たに ただ ふ ふう 

「親友? トツ クは いつも 孤獨 だった のです。 …; 裟婆 界を隔 つる 谷へ、 …… 唯 トツ クは 不幸に 

も、 …… 岩 むら はこ ごしく …… 」 . . 

「不幸に も?」 

「やま 水は淸 く、 …… あなたが たは 幸福です。 …… f 石 むら はこ ごしく。 …… 」 

僕 は 未だに 泣き 聲を ぎたない 雌の 河童に 情し ましたから、 そっと を 抱へ る やうに し、 部: tej 

すみ なが,' す _a に ノ i. さんさい かつば いっぴき なに し わら 

の 隅の 長椅子へ つれて St きました。 そこに は ニ歲か 三歲, ^河童が 一匹、 何も 知らす に 笑って ゐ 

!?、 めす つば かよ ,ー ども かつば I _ 巧、、 > め - な. に" 

るので す。 僕 は 雌の 河童の 代りに 子供の-河童 を あやして やりました。 すると. しっか 僕の 口 にも:^ 

^ t _?、 .f- つ £ くに す なみだ い 〈二- 

3 のた まるの を 感じました。 僕が河童の國に住んでゐるぅちに淚と云ふものをこぼしたのは"_吡に..^^ 



あと と キ- 

9 後に もこの 時 だけです。 

3 い わがまま かつ ぼい つ か r, ;,、 き どく 

「し 力し かう ームふ 我儘の 河童と 一 しょに なった 家族 は氣の 毒です ね〕」 

なに かんが 

「何しろ あとの こと も考 へない のです から。」 

*;.1^-^^ダ,、ゎん あ ひか はに ナ あたら 卞 きたば こ ひ し まん か へん,】 

裁 一. 1 目の ぺッ プは不 相變、 新しい 卷堙 草に 火 をつ けながら、 资 本家の ゲ H ルに 返事 をして ゐま 

?— ク、 ら おどろ おんがくか ごも? L » > 

した。 する と 僕 等 を 驚か せた の は 昔樂家 のク ラバ. ック のお ほ聲 です? クラ バック は 詩 1 を g つ た 

まま、 誰に ともなし に 呼びかけました。 

さう そうきょく で & 

「しめた! すばらしい 葬送曲が 出來る ぞ。」 . 

, ほそめ かが て ヌぎ レ-, ち と 

クラ、 ノック は 細い R を赫 やかせた まま、 ちょっと マッグの 手 を 握る と、 ぃきなり1^ロ / =^^んで 

ゆ もす, ろん レーキ- A 一な りきん じょ かつ ズ お *i.*.」 1 - へ と ぐち 'ク 6ぅ 

行きました。 勿論もう この 時には 隣近所の 河 f 里が 大勢 > トツ クの I. 豕の戶 口に 艇 まり、 I らし さう 

に 家の 中 を. 观 いて ゐ るので す。 しかし ク ラバ ック はこの!: 童た ち を 遮 一 一 無 一 一 左. S へ!:; しのけ るが 

は-や、、、、 b ばう ュ, ノノ の どうじ ま-じ ど. つし や ば,、 お,? ,,- . 

4 レカ りら りと 自動車へ 飛び 乘 りました。 同時に 乂 自動車 は 爆" W を 立てて!^ ち どこかへ がって 

J しま ひました。 . 

「こら、 こら、 さう 现ぃ てはいかん ピ 



330 



さ >i ん くわん じゅんさ か は お ほぜい かつば お だ C ち いへ、 と ' 

^ I: 官のぺ ップは 巡査の 代りに 大勢の 河童 を 押し出した 後、 卜 ックの 家の 戶を しめてし まひ ま 

した。 部屋の 中 は そのせ ゐか 急に ひっそり なった ものです C 僕 等 はかう TK ふ!^ かさの 中に 11 ...^ 

や-, -レ にく ふつ ,H な か まじ ち に ほひ なか あとし まつ さラ だん > 1 へ- 

山 r 植物 の^の 香に 交った トツ クの 血の 勻の 中に 後始末の ことな ど を 相談し ました。 し 力し あの^ 

: ノゃ し t * な. か なに かんが ほく かた 

§子 者の マッグ だけ は トツ クの 死骸 を 眺めた まま、 ぼんやり 何か考 へて ゐ ます。 僕 は マッグの-おや』 

V- た なに かんが たづ 

叩き、 「何 を考 へて ゐる の で す? 」 と 尋ねました。 

riE 童 の 生活と 「ェ ふ もの をね。」 

「河童の 生活が どうなる のです?」 

つれ/ \ かつ: U なん ひ かつば 士ぃ くわつ まった ため 

「我々 河 「f は 何と 云っても、 河童の 生活 を完 うする 爲には ::: 」 

マ ッグは 多少 羞 しさう にかう ^ 聲で つけ 加 1 へ ました。 

「鬼に 角 我々 河童^ 外, -の 何もの かの 力 を 信す る ことです ね。」 

十四 

* ■ . ;も だ . こ AI 一. i ?ズ、 もちろんぶ :- しっし:^ にや 

|^に^||^ぃ」ー、ムふものをぎひ出させたのはかぅ「ェふ マ ッグの 言葉です C 僕 は 勿論 物質主義者です 



まじめ しゅう!: う かんが いちど ち 力 とき 

1 から、 眞 面目に 宗 敎を考 へた こと は 一度 もなかつ たのに 遠 ひありません" が、 この 時 は トツ クの 

3 

3 し ある. A ん どう う ため いったい かっぱ しゅうけ う なん かん ゲ だ ぼく ~> そくが くせい 

死に 或 感動 を 受けて ゐた爲 に ー體 河童の 宗敎は 何で あるかと 考へ屮 I したので す。 僕 は n 十速學 生の 

ラ ップ にこ の 問 を 尋ねて 見ました。 

キリ ストアう ぶ つ ナぅ けう は いく わけう おこな いちばんせ いりょく 

「それ は 基督 敎、 佛敎、 モ ハ メッ ト敎、 拜火敎 など も 行 はれて ゐ ます。 まづ 一 桥 勢力の ある もの 

^ん " きんだ 1 けう せいく わつ けう い せいく わつ けう い や くご あた 

は 何と im つ て も 近代 敎で せう。 生活 敎 とも 言 ひます がね" に (「生活 敎」 と 云 ふ譯語 は當っ てゐ ない 

かも 知れません。 この 原語 は Quemooclla です。 clia は 英吉利 語の ism と ふ 意味に 常る でせ 

う。 quemoo の原敢 quemal の 譯は單 に 「生きる」 と 云 ふよりも 「飯 を 食ったり、 :„6 を 飲んだり、 

• 交合 を 行ったり」 する ま 味です。) 

r ぢゃ この 國 にも 敎會 だの 寺院 だの は ある 訣 なの だね?」 , 

じ や,;' だん い きんだい けう だいじ ゐん くに だいいち だい けんちく 

「常談 を 言って はいけ ません。 近代 敎の 大寺院な ど はこの 國 第一 の. K 建築です よ どうです、 ち 

よつ と兑 物に つ て は?」 

あるな * あたたか どんてん _* 一 -,ー とくく ぼく いつ だいじ -," ん で > 5 なる はノ ノ ,, 

或 生 溫 い 暴 天の 午後、 ラップ は 得々 と 僕と 一し よに この 大寺院へ 出力け ました 成程 それ は 

だう じ.; S い だ、. ナ.. ?ちく けんちく や-つし き ひと く ぷ ^IPAt: 

二 コ ライ 堂の h 倍 も ある 大蜜 築です。 のみなら す あらゆる 建築 様式 を 一 つに 組み上げた 大^ 築で 



ぼく だいじ ゐん まへ た たか た ふ まる や ね なゲ とき なに ぷ & み かん じつ 

す。 僕 はこの 大寺院の 前に 立ち、 高い 塔ゃ圓 屋根 を 眺めた 時、 何 か 無 架 味に さへ 感じました。 賞 

さい ら てん むか の む すう しょくしゅ み ほくら げんく..::. パ ま へ たたす 

際 それ 等 は 天に 向って 仲び た 無 數の觸 手の やうに 見えた ものです" 僕 等 は玄關 の. 前に!^ んだ まま _ 

またげん くわん くら み くら ゐ ぼくら ち ひ しば けん. つ,、 .1:; し レー 

(その 又玄關 に比べ て 見ても、 どの位 僕 等 は 小さかった のでせ う!) 暫 らくこの 建築よりも 寧ろ 途 

はう くわい ふつ ちか きたい だいじ ゐん みあ 

方 もない 怪物に 近い 稀代の 大寺院 を 見上げて ゐ ました」 

だいじ ゐん ないぶ またく わう だい ふう る 1 んちぅ ん- なか .^.,んけぃにん なんにん おる 

大寺院の 內部も 亦廣大 です。 その コ リ ン 卜 風の 圓 柱の 立った 中には 參詣 人が 何人 ム步 いて ゐま 

ら ^、くら ひじ やう ち ひ み i>」 てら 二し まが 

した。 しかし それ 等 は 僕 等の やうに 非常に 小さく 見えた ものです。 そのうちに 僕 等 は 腰の 曲った 

いっぴき かつば で あ かつば あ...: ま さ うへ ていねい はな 

一 匹の 河童に^ 合 ひました" すると ラップ はこの 河童に ちょっと 頭 を 下げた 上、 丁寧に かう 話レ 

かけました。 

やうら う -ご たっしゃ - なに 

「長老、 御 達者な の は 何よりも です。」 

あ ひて かつば じぎ のち ていねい へんじ 

相手の 河童 もお 時宜 をした 後、 やはり 丁寧に 返事 をし ました。 

あ ひか はら ナ い ことば 

「これ は ラップ さんです か? あなた も不 相變、 . I ! (と 言 ひかけ ながら、 ちょっと (m 葉 をつ がな 

か つ た のはラ ッ プの 嘴の 腐って ゐ るのに やつ と氣が つ い た爲だ つたで せ う。) -—— ああ、 见に角 1: 

2 

3 ぢ やうぶ また 

3 丈夫ら しい やうです ね。 が、 け ふ はどうして 又 …… 」 



" 「け ふ はこの 方のお 伴 をして 來 たのです。 この 方 は 多お!:;^: i の 腐り、 (1 」 

それから ラップ は滔々 と 僕の こと を 話しました。 どうも;^ それ はこのお へ ラップが まがに 

來な いことの 辯 解に もな つて ゐ たらし い のです。 

p-L. ヽ-、 - かた ご あんない ね-か おも 

「就いては どうか この 方の 御 案 內を願 ひたいと 思 ふので すが 」 . 

長老 は 大様に 微笑しながら、 まづ § に をし、 i かに j^il が i^g を II さしました。 

-ご ぉパ、 ない まう なに お やく た で き 

「御 案內と 申しても、 何も 御 役に立つ こと は出來 ません。 ^^.氣iのitvるのは^ilがigl^に 

せべ^ t き せいめい & つ) らん きん -でニ I' ス 

. ある 『生命の 樹』 です。 『生命の 樹』 に は 御覽の 通り、 ふ. I- と綠 との f がな. つて ゐ ます。 あの $1^ ぎ丫 J 

『善の 果』 と rn ひ、 あの 綠の を 『惡の rao と 云 ひます。 ::: 」 

僕 はかう 云ふ說 明の うちにもう 退屈 を^ じ I- しました。 それ は 船 の が 1^ ぎ も: g い! -I の 

やうに g えたから です。 ^は 勿 軋 熱心に^い てゐる をき ザて ゐ ました C が、 お,^ よ!,^ の 

ないぶ め ゥュ 

內か. 5 へ そっと を やる の を 忘れす にゐ ました。 

ふう はしら ふう キ ふ-つり ゆ-つ -ちヒ つも , 

河 コ リント: の 柱、 ゴシック 風の si、 アラビア じみた 市松 校 様の g、 セ セッション まひの ず § 

机、 11 かう お ふ ものの 作って ゐる 調和 は 妙に 野 蠻な美 を 具へ てゐ ました。 しかし P のが をが い 



たの は^よりも MWMl の にある 大理石の 半身像です。 僕 は 何 かそれ 等の 像 を 見知って ゐるゃ 

- i た ふ し ぎ こし も, i かつば せいめい き せつめい を は 

うに S 心 ひました。 それ も亦不 田心議 ではありません。 あの 腰の 曲った 河童 は 「生命の 樹」 の 說明を 了 

こん. ヒ f "つ みぎが は がん まへ あゆ よ がん なか は;.! し, んざ- つ L - 

ると、 今度 は 街 や ラップと 一し よに 右側の 龕の. 前へ 歩み寄り、 その 翁の 中の 叶 身 像に 力う. ぶ.. -說 

- めい /、は だ 

明 を 加へ 屮:: しました。 

「これ は 射べ の 聖徒の 一人、 11 あらゆる ものに 反逆した まも 徒 スト リン 卜べ リイです。 この i^- 徒 

はさん ざん 苦しんだ 揚句、 スゥ エデン ボル グの 學の爲 に 救 はれた やうに: 言 はれて ゐ ます。 が、 

1^ は 僻、 はれなかった のです。 この 聖徒 は 唯 我々 の やうに 生活 敎を 信じて ゐ ました。 —; と 云 ふよ 

り も じる M はなかった ので せ う。 この 聖徒の 我々 に 殘し た 『傅, 説』 と 云 ふ 本 を讀 ん で御覽 なさい" 

せ、 と じ さつみ すゐ しゃ せいと じ しんこく はく 

こ の 聖徒 も 自殺未遂 者 だ つ た こと は 聖徒 自身 告白し て ゐ ます」 

ま 、メ つつ . ^ぎ が ~ め つぎ が-) はんしん ざう くちひげ ふと ド ィ ッ じん 

はちよ つと 憂 1^ になり、 次の 翁へ n を やりました。 次の 翁に ある 半身像 は "髭の 太- >獨 逸人 

です、」 

「これ は ツァラ トス トラの 詩人-一 イチ ヱです。 その 聖徒 は 聖徒 自身 の 造つ た 超人に 救 ひ を 求め ま 

した。 が、 やはり 齡 はれす に氣違 ひに なって しまった のです。 若し 氣違 ひに ならなかった とすれ 



あるひ ^;-ぃと $ で 今 し 

5 ば、 或は 聖徒の 數へは ひる こと も出來 なかった かも 知れません。 ::: 一 

3 t, 

3 ち-や, らう つち おい V- ん :£ん まへ あんない 

長老 はちよ つと 默 つた 後、 第三の 龕の 前へ 案: M: しました。 

• 「三 桥 目にある の は トル. ス トイです。 この 聖徒 は 動より, も 苦行 をし ました。 それ :^リ=^% 費" か だつ 

ため かう き しん お ほ こうしゅう くる み やら >>_ : じ. >じ やう レ" 

た爲に 好奇心の 多い 公衆に 苦しみ を 見せる こと を 嫌った からです。 こ の I ぬ 徒 は _5?; 贤 上き ぜらレ L な 

キ 1 スト しん どりょく しん こ-つ f ん 

. し 基督 を 信じようと 努力し ました。 いや、 信じて ゐる やうに さへ 公一 W した こと もあった のです。 

ばんねん ひ ャ う うそ た ト」 、七 

し 力し とうとう 晚 年に は悲壯 な譃 つきだった ことに 堪 へられない やうに なりました。 こ, リ| 力. 徒 も 

と. lvr<\ しょさい はり 今; ようふ かん "うめ" 上-と- ナ ) J 

時々 齊齋の 梁に 恐怖 を 感じた の は 有名です。 けれども!^徒のまにはひってゐる:^ぉ^すから、 ^;! 

肉 殺した のではありません。」 

,f I > なか > んルん ザ」 う われく に ほんじん ひ 七り f に な r "じつ、 .A-i み ir 

第 四の 龠の屮 の 半身像 は 我々 日本人の 一人です。 僕 はこの 日.^ 人の 敏を 兄た 時、 さすがに 貧し 

さ を 感じました。 

. くに だ ど っぽ れきし にス そく こころ しし じん * 

「これ は國木 田獨步 です。 櫟死 する 人足の 心 もち を はっきり 知って ゐた 詩人です。 しかし そ X- 少: 

^ 上の^_说明ばぁなたには不必要に違ひぁりません。 では ヌ桥 のきの 巾 を御覽 1^ さい C —— 」 

「これ は ワグネルではありません か? 一 



336 



「さう です。 H 王の 友 だち だった 革命".?. 〈です。 聖徒 ワグネル は晚 年に は 食前い:: -祈禱 さへ して ゐま 

もケ, ろん キリスト:: う せいく わつ けう しんと ひとり ♦ 二 て が" 

した。 しかし 勿論 基督 敎 よりも 生活 敎の 信徒の 一人だった のです C ワグネルの 残しん 舐に よれ 

しゃば : なんど せいと し まへ か 

ば 、 ま 婆 苦 は 何度 この 聖 徒 を 死 の 前 に驅り やった かわかり ません」 

ザ/、 ら と キー だいろ く がん へ た 

僕 等 はもう その 時には 第 六の 龕の 前に 立って ゐ ました 

4-1 と とも 二 ども おほ^い ぶいくん か は じ, づ -ス し 

「これ は 聖徒 スト リントべ リイの 友 だち です。 子供の 大勢 ある 細君の 代りに レー- * 叫の クイ ティの 

レんな めと しゃう ギ いにんめ V- フ ラ ン ス ぐ わか せいと ;-と し つく.? ん た. >" す ぷ i . 广カ 

女 を娶っ た 商寶人 上りの 怫蘭西 の 畫 家です。 こ の 聖徒 は 太い 血管 の 巾に 水夫の. 1 を 流し て ゐ まし 

くナ, -, る ご らん ひ そ なに あと のこ だいしん がん なか 

た。 が、 替 を御覽 なさい。 砒素 か 何 かの 痕が殘 つて ゐ ます。 第 七の 籠の 屮に あるの は …; もつ あ 

なた はお 疲れで せう。 では どうか こちら へ お で 下さい。」 

ぼく じつ つか .. リ +■^^'^5 したが かう に は ひ らう か づ た -ゥ つへ や 

僕 は實際 疲れて ゐ ましたから、 ラップと 一し よに 長老に 從ひ、 ,^::! の勻 のす る 廊下 傅 ひに 成お fel 

„ 一 たち ひ へ や すみ くろ V- つ した や iYr-A^ う -- ひ, と. - - > 

へ は ひりました。 その 乂 小さい 部屋の 隅に は 黑ぃヴ H ヌスの 像の T に 山, * 萄 カー- メ さ^じて ある 

まく なん さっしよ く • そうばう * で-つ ダ: つ ャぐ 力い カレ) . '13 - わ-,/ ぃパ 

のです。 僕 は 何の 装飾 もない!^ 房 を 想像して ゐ ただけ に ちょっと 意外に 感じ ましん すると:^^*^ 

まく ようす ,, き かん み ぼくら い す すす まへ なか, キ/ ゾゾ. 'K^. , 

は IK の容 子に かう 一! 4 ふ氣 もち を 感じた と兑 え、 僕 等に 椅子 を^め る. 前に 半 は II の,? さう に ^^s- し 

ました。 



^ 「どうか 我々 の 宗敎の 生活 敎 である こと を 忘れす に 下さい。 我 T の I み、 11 『5J^II の&』 の « へ は 

3 わう せい い , 

『ii に 生きよ』 と 云 ふので すから。 …… ラップさん、 あなた はこの かたに^ バ のせ をぎ S ピ: < 

-Nc ましん 力?」 . 

じつ じしん ほ とん よ 

「しえ 實 はわた し 自身 も 殆ど 請んだ こと はない のです。」 

あたま V,- ら ^ しゃ うぢき へんじ ^やうら う .c-*- 、よ-' -1^ ; < ,ク 

ラッフ は 頭の 皿を搔 きながら、 正直に かう 返事 をし ました。 が、 長老 は K^wlfll かにぎ I 尺して 

はな 

話しつ づけました。 

1 ノ , ォれ Z ヽ かみ いちにち せか 》■ つく 4.」 - め- 卞 

一 それで は あわ 力り なりますまい。 我々 の祌は 一 日のう ちに この 世界 を 造りました o(『t:3.^ 晰り: ls』 

は樹と UK ふ ものの、 成し 能 はない こと はない のです。) のみなら す 雌の 河童 を!^ りました。 する ,こ 

=„a す かっぱ たい,、 つ あ *^ をす かつ もと ,- , し/、 St し -^i 、 Ja- c ^ J 

雌の 河童 は 退屈の 餘り、 雄の 河童 を 求めました。 我々 の; I はこの 孰き を 齢: V 離の,!:^ の sir 

% 、 ふ」:^.^ ゆつ 力べ . : われ/、 かみ に ひき かつば く か うれ" -ノっ ト: - 

取り 雄に、 ひ i を 造りました。 我々 の祌 はこの 二 匹の 河童に 『食へ よ、 交合せ よ、 にに きょ』 

と"^ ムふ 祝福 を與 へました。 …… 」 

ほく ナ, やうら う ことば しじん おもだ しじ" ふ、 つ U 

河 僕 は 長老の 言 紫 のうちに 詩人の トツ クを思 ひ 出しました。 詩人 の トツ クは不 まに も I- の やうに 

vn^^ む しんろん しゃ ^く かつば せ 1 くわつ ナっ i r り 

. 無神論者です。 俟は 河童ではありません から、 生活 敎, を 知らなかった の も I ー现 はありません。 け 



か cs くに う もちろん せいめい き し > ま, Y 〈丄 、 丄 丄 力 

れ ども 河童の 國に 生まれた トツ クは 勿論 「生命の 樹」 を 知って ゐた哲 です 伎 はこの 敎へ に從 はた 

さ、 ご 4,〈±れ ちゃうら う 二とば さへ ぎ はな だ 

かった トツ クの 最後 を憐 みまし たから、 長老の 言葉 を 遮る やうに トツ クの こと を 話し 屮_ しました" 

どく しじん 

「ああ、 あのへ M の 毒な 詩人です ね。」 

ちゃうら う ぼく はなし き ふか いき も 

長老 は 僕の 話 を 開き、 深い 息を泱 らしました 

ha/ 、 うんめ,' V- だ しんかう き やうぐ う. ぐつ ぜん もっと ほか ぷ > て〕" , 

「s# 々の 運 を 定める もの は 信仰と 境遇と 偶然と だけです。 (尤も あなたが たは その外に^ 仲 を あ 

雷へ なさる でせ う。) トツ ク さん は 不幸に も 信仰 をお 持ち に ならなかった の で す。」 

うらや ぽノ、 うらや くん 七丄 ゾ. 力 、 ノ、 

「トツ クは あなた を 羨んで ゐ たでせ う。 いや、 僕 も 羨んで ゐ ます。 ラッ フぉなどは<^も^!^,^し 

I 

ぽ,、 くち し あるひ らくてんてき 、レ- ノ - メ 

「僕 も 嘴 さ へ ちゃんとして ゐれば 或は 樂天 的だった かも, 力れ ません 一 

• > 1 ち 、 * 、 . つも めな.? だ 

長老 は iK 等に かう 言 はれる と、 もう J 度 深い 息 を迚 らしました。 しかも その:: :! は淚 ぐんだ まま 

くろ み 

ぢ つ と黑 ぃヴェ ヌス を 見つ めて ゐ るので す 

じ J ひみつ たれ おっしゃ くだ i クこ 

「わたし も實 は、 —— これ はわた しの 祕密 ですから、 どうか 誰に も W 有らす に 下さ レ — ズん 

8 „ r ;ノ つ 

3 しも.|^は^々 の祌を信する訣に£:かなぃのです。 しかしい つかわた しの 祈 ゆ" は、 11 」 



^ 丁度 長老の かう 言った 時です。 突然 部屋の 戶が あいたと ^1 ふと、 ほきい 麟の T^li がい 一, I い いき 

3 もやう らう と ぼくら 、す - つ nJ 

なり 長老へ 飛び かかりました。 僕 等が この 纖の 河童 を 抱きと めようと したの は.!!! です。 が、 ^ 

かつば とっさ あ ひだ ゆか うへ ちゃうら. つ な 

の 河童 は 咄嗟の 問に 味の 上へ 長老 を 投げ倒. しました。 

卞 *^、ナ また さいふ ,- つ *^ 1 かュ .3 す 

「この 爺め! け ふ も 又 わたしの 財布から 一 杯 やる 金 を 盗んで ハ:; : つたな!」 

十.; 8 はかりた つた 後、 僕 等 は實際 逃げ 山-:: さない ばかりに 長老 夫:^ を あとに, し、 

を 下りて 行きました。 

「あれで は あの 長老 も 『生命 ノ の樹』 を 信じない です ね。」 

し ら た.? 5 ある n ^ ァ i 1 f、 ゝ ".ン . . , , J 

暫く つて 步 いた 後、 ラップ は 僕に かう 言 ひました。 が、 は 返/事 をす るよりも よす おおお" 

を报り 返りました。 大寺院 は どんより 暴った; 〈丄 にや はり 高い I ゃ圓 屋^ をき 一 寧の fcv^ "の やうに ぎ 

, , なに さ ばく そら み しん キ」 ろ-つ ぶ 今 み V V.- よ 

はして ゐ ます .i^ か 沙漠の 穴 H に 見える 壁 氣樓の 無 I 颯味さ を 漂 はせ たま ま。 …… 

十五 

れ « 

,M ン > かれこれ いつ-しうかん のち ぼく い しゃ めづ -? 二 N V- , 

それ 力ら 彼是 一 週 問の 後、 僕 はふと 醫 者の チャックに 珍ら しい 訳 を 聞き ましな。 と リム ふの: H あ 



の 卜 ックの S に Sli の r きふ, のです。 その i に はもう 雌の I は どこか 外へ 行って しま 

L 、4,~ なん はなし 

ヌ、 I? ずの? S だち の& だのき も iSi の ステュ ディ ォに變 つて ゐ ました。 何でも チャックの 話に 

》 ,1 ス „ ふ f 、-ー かなら もうろう 今や,、 つし 

よれば、 この ステュ ディ ォ では 舊 をと ると、 トツ クの f いつの 問に か必 S 朧と 客の 後ろに 

i つて ゐる とか ことです。 チャック は i 鍵 ■ ですから、 死後の 生命な ど を伹. ^て ゆ 

ません。 ぎ その P した 晴 にも 響の ある S を, ながら、 「やはり 謹 あ ふ." の" 物質的 

^おと 贮 えます ね」 などと 難め いた こと をつ け, てゐ ました。 僕も 幽靈 を 僧 じない こと はチ 

ャツク とず i りません。 けれども の トツ クには i しみ 息 じて ゐ ましたから、 早速 I の 

チ kb つけ、 トツ クの Sli に や トツ クの麵 § 眞 S て ゐ るぎ 閱 ゃ雜誌を おって 

f した。 それ f ii^ を るし」、 どこか トツ ク らしい i ぎ 一匹、 老 I 女の 2 の 後 

f ん や り と 1 たど I び てゐ ました。 し かし i を IT か. せ たの は トツ ク の 幽霊 の 寫眞 よりも トツ ク-幽 

齔に gr ま、 -Is に トツ クの 謹に 鍵. I 蟹 &ま ,す。 僕 は 可也 i 的に そ > 

を f て F ましたから、 P に 8を%?」- にし ませう。 S し 括弧の 巾に あるの は 僕自 

^ しん く. ほ ちう しゃ i 、 

3 身の 加へ た註釋 なのです I 



4 

3 



河 

ま 



し じし くん /.-.s い くわん はう こく しん i;- いが, 、はふ, 、わい- J しだい はっせ/にひゃくし ちじ ふし つうしよ い 

詩人 トツ ク の 幽靈 に 關す る 報告。 C 心靈學 協, ぽ雜誌 第 八 干 二 "rC 七 十 叫 號 所戰) 

しんれ I ひがく け ふく わい せんばん じ さつ し じん くん きうき よ げ /、ざい しゃしんし 

わが 心靈學 協會は 先般 自殺した る 詩人 トツ ク^の 舊居 にして 現在 は X X 寫眞: 帥の ステュ ディ ォ 

だいに ひゃく ご じふい ちがう りんじ てう さく わい かい V い れっせき :ネ いんん しも ごと し めい り わく 

なる 口口 街 第一 一 百 五十 一 號に 臨時 調査 會を 開催せ り。 列席せ る會〕 貝 は: 卜の 如し。 (氏名 を 略す C) 

われら じ" しちめ い くわい ゐん しんれいけ ふく わい/ \ん やう し とも くぐ わつ じふし ちに すに) ぜんじ ふじ さん じっぷん われら もっと しん、 にい 

我等 十七 名の 會員は 心 靈協會 々長べ ック 氏と 共に 九月 十七 日 午前 十 時 三十 分、 我等の最も:;::^頼 

じん どうはん にリ い いっし ジ さんし. ぶ ふ じん 〃-ぃ 

する メ、 ディ アム、 ホップ 夫人 を 同伴し、 該 ステュ ディ ォの 一室に 參築 せり。 ホップ.^ 人は該 ステ 

い すで しんれいて きくう き かん ぜんしん けいれん もよ ほ お 5 と くわい およ 

ュデ ィォに 人る や、 旣に 心靈的 空氣を 感じ、 全身に 瘦攣を 催しつつ、 卟 する こと 数:! に 及べり. 

ふ じん かた ところ し じん くん き やうれ つ たばこ あい けっく わ しん.;^ ぃてきく--'き また 

夫人の 語る 所に よれば、 こ は 詩人 トツ ク 君の 强. 烈 なる 煙草 を 愛した る 結 mr その 心靈 的-お (ザ も 亦 

一一 コ ティン を 含有す る爲 なりと 云 ふ。 

われら くわい ゐん ふ じん とも ゑんた く めぐ もくざ ふ じん さんぷんに じふ-, 1 ペラ のち き は キ; ふ r キ- 

我等 會員は ホップ 夫人と 共に 圓車 を繞 りて, ihI 坐したり。 夫人 は 三分 二十 五 秒の 後、 極めて <i 助 

わい うじ やうたい おちい かっし じん くん しんれい ひょうい ところ われら くわいん/、 ねんれい ド い t/、 したん 

なる 夢遊狀 態に 陷り、 は 詩人 トツ ク^の 心靈の 憑依す る 所と なれ リ, - 我等 會員は 年^順に 從ひ、 

夫人に 憑依せ る 卜ック 君の 心 li と 左 の 如き 問答 を 始 したり。 

とひ きみ なに ゆ. 0" いうれ い い 

問 ^は 何故に 幽靈 に出づ るか? 

答 死後の 名聲を 知らん が爲 なり。 



ヒび キ; み あるひ しんれい しょ,、 ん し 一 ご な はめい せい ほつ 

問 君 11 或は心靈諸^^^は死後も尙名聲を欲するゃ? 

-ー たへ すくな よ ほつ あた しか よ かいこう に ほん いたし じん ごと し -* 一 めい 屮-ぃ 

答 少く とも 予は 欲せざる 能 はす。 然れ ども, r の邂遁 したる 日本の 一 詩人の 如き は 死後の 名^ 

を慨 蔑し 居たり。 

問 君はその詩人の姓名^VJ知れりゃ? 

二た へ 1^ ふかう わ. r ただ かれ この つく じふし ちじ し いっしゃう & おく 

答 予は 不幸に も 忘れたり。 唯 彼の 好んで 作れる 十七 字 詩の 一章 を 記憶す るの み。 

とひ し いかん 

問 その 詩 は 如何? 

-ー たへ ふるいけ か は-つと み-つ おと , 

. 答 「古池 や 蛙 飛び こむ 水の 音」。 

問 君 は その 詩 を 佳作な りと 做す や? 

こたへ よ かなら す あく V- く な ただ か は づ かつば ^ さら くわう さいり,、 リ 

答 予は必 しも 惡作 なりと 做さす。 啡 「蛙」 を 「河童」 とせん 乎、 更に 光彩陸離たる べし。 

問 然 らば その 理. m は i!l>. 

こたへ われら かつば いか げいひ^つ かつば もと つ, T せつ 

答 我等 河童 は 如何なる 藝術 にも :!: 童 を 求む る こと 痛切 なれば なり C 

く、 わい ん わう し とき あた われら じふし ちめい くわい ゐん しんれい がくに- •: くわ:. リんじ てう さく わい がつ び やう 

會 長 ペック 氏 はこの 時に 當り、 我等 十七 名の 會員 にこ は 心 靈^ 協會の 臨時 調 i^, 會 にして 合: t 

會 にあらざる を 注意したり。 



とひ しんれいし よくん せいく ォっ いかん 

3 問 心靈 諸君の 生活 は 如何? 

4 

3 こたへ しょくん せいく わつ ことな な 

答 諸君の 生活と 異る こと 無し。 

とひ しか ャ〕 み きみ じ しん じ さつ こ 5 くわい 

^ 然 らば 君 は 君 自身の 自殺せ し を 後悔す る や? 

こたへ かなら す こうく わい よ しんれいて きせいく わつ う さら と 、 、 

答 、ゼ しも 後悔せ す。 予は 心靈的 生活に 倦まば、 更に ピストル を 取りて,; Z 沾 すべし。 

とひ , , ようい 、な 

問 活 す る は 容易な り や 否 や ? 

くん しんれい とひ 二た さら とひ もつ くん し こぶ 

トツ ク S の心靈 はこ の 問に 答 ふるに 更に 問 を 以てした リ。 こ は トツ ク^ を 知れる ものに は颇る 

し ぜん おうしう 

.3: 然 なる 應甽 なるべし。 

答 自殺す る は 容易な り や 否や? 

とひ しょくん せいめい えい ゑん 

問 諸君の 生命 は 永遠な り や? 

こたへ われら せいめい くわん しょせつ,^ んぷん しん V,- いは しれら あ ひだ キリスト けう ぶ リ.. 'う 

答 我等の 生命に 關 して は 諸說 i 々として 信す ベから す。 幸 ひに 我等 si^ にも^ 将敎、 佛敎、 

けう はいく わけう と-つ しょしゅう わす なか 

モ ハ メッ ト敎、 拜火敎 等の 諸宗 ある こと を 忘る る 勿れ。 

At ひ きみ じ しん しん ところ, 

7 問 君 自身の:^ する 所 は? 

、ひ 

かズ こたへ よ つね くわいぎ し: ォ I しゃ • 

r 答 予は 常に 懐疑主義者 なり。 



とひ しか な 人 すくな しんれい そ/ふ」 い つたが 

問 然 れ ども 君は少 くと も 心靈の 存在 を 疑 はざる べし? 

こたへ しょくん ごと か,、 しん あた 

答 諸君の 如く 確信す る 能 はす。 

とひ キ. -み かう いう た せう いかん 

問 氣の 交友 の 多少 は 如何? 

答, 予の 交友 は 古今東西に 亙り、 三百 人 を; 卜らざる べし。 その 著名なる もの を擧 ぐれば、 クラ 

ィ スト、 マ イン レンデル、 ワイ ニン ゲル …… 

とひ きみ- かラ いう じ さっし や 

問 君の 交友 は 自殺者の みなり や? 

こたへ かなら す しか じ 、-」 つ べんご ごと よ ん いう いに にん ただ 上 

答 必 しも 然り とせす。 自殺 を 辯 護せ るモ ンテ ェニュ の 如き は予 がに R 友の 一 人な り。 =i ^予は 

じ さつ ぇス せいしゅぎ しゃ はい 加うて- * 

自殺せ ざり し 厭世主義 者、 . I -シ ョ オペ ン ハヮェ ルの辈 と は 交際せ す。 

とひ .1- スざ い 

問 ショォ ペン ハウ 二 ル は 健在な り や? 

-ニ」 へ かれ もく か しんれいて きえんせ いしゅぎ じゅりつ 、 、 かひ ろん し, ハ ばい々 ん 

答 彼 は 目下 心靈 的厭哥 i 主義 を 樹立し、 自活す る; 否 を 論じつつ あり。 然れ ども コレラ も 徽^ 

び やう し す こぶ あんど - ごと 

病な りし を 知り、 頗る 安堵せ る ものの 如し。 

わ.,^ ら くわい ゐん あ ひつ 二-つし ,しゃ ノぃ 

我等 會員は 相次いで ナボ レオン、 孔子、 ドス 卜 H フス キイ、 ダァ ウイ ン、 ク レ ォパ 卜ラ、 釋迦、 

せん り き-つとう しんれい せう そ W しつ,, ん しか くん ふ かう しわう 

、デモ ステ ネス、 ダンテ、 干の 利 休 等の 心靈の 消,: 《 ケ y 質問した リ。 然れ ども 卜ック 1?; は 不幸に も詳 



お 可 



345 



細に 答 ふること を 做さす、 反って トツ ク翁 自身に 關 する: 極々 のゴ シップ を 質問ん したり。 

とひよ し ご めいせい いかん 

問 予の 死後の 名聲は 如何? 

こたへ あるひ ひやう か ぐんせ うし じ/? ひとり 、 

答 或 批評家 は 「群小 詩人の 一人」 と fl" へり。 

問 彼 は 予が詩 集 を 贈ら ざり しに 怨恨 を 含める 一 人なる べし。 ,产の^!_^^は屮:^/せら^-しゃ? 

に へ .^.」み ズん しふ し 2 つばん う ^ ゆきよ なよ ふる ,-:- 

省 君の 全集 は 出版せられ たれ ども、 寶 行^、:^ 报は ざるが 如し。 

P 一 よ, , ,乂 し" さんびゃく ねん C ち すな は +!- よさ,、; ん うしな ot- fc じん あ: な ところ : 

問 予の 全集 は 三 Kn 年の 後、 1 .卽 ち 著作 機の 失 はれた る,、 れ: f 人の 齢ダ I ^い」 なるべし」 ひすの 

どうせい をん なと も - かん 

同 接せる 女 友 だち は 如何? 

こたへ かのちよ しょし くん ふ じん 

答 彼女 は 書肆 ラック の 夫人と なれり" . 

^ .fci^ よ いま ふ かう : ま がんし し, こ :ズ 

mm. 彼女 は 未だ 不幸に も ラックの 義 股なる を 知らざる なるべし。 予が子 は 如;^? 

二た へ こくりつ こ じゐん き 

答 國立 孤兒院 にあり と 聞け り。 

トツ ク君は 暫く 沈默 せる 後、 新たに, 問 を^ 始 したり。 

と ひ よ いへ いかん 

つ $ ク乂 .rs TT 1 1 - 

^ . J 力 v^.? は 如何? 

こた へ .,+^っしゃしんし 

答 ?水寫 眞師 の ステュ 、デ ィ ォ となれ り。 



問 予の机 は^ 何に なれる か? 

答 何 なれる か を 知る ものな し。 

i! ; I は が姆だ r ぎ ませる のが Eyili れど もこ は 幸 ひに も 多忙た るぎ S 

斷 r ,あらす。 ん P やわが 翁 ftliKFS まんと す C デは!^ と 訣別 すべし C さらば。 

しょくん ぜんり やう ;:^ょゾスじ 

君。 さらば。 ゎが善良なる諸!^^ 

ホップ だ M は の i 一! 一 %と||^ に 街^!! 露に^^ したり。 fiH. 七 名のが 員 はこの 問答の 眞 なり 

しこと をお, i& つて gi せんとす。 (1 お あずる ホップ に對 する 報酬 善て お 

じ,》 およいう とき にった う したが し \i. ん Z I - o\ 

人が 女優たり し 時の 日 當に從 ひて 支ぎ したり ) 

十六 . 

» うう つ き 

I? かう # ふ _k ず を&ん だき だんだんこの 亂にゐ る こと も ifi になって 來 ましたから、 どう 

V が ある ぽく お あな 

かずれ々 \ だ II の K へ^る ことにしたい と^ひました。 しかしい くら 探して ゃゲ いても、 僕の 落ちた 穴 

M よ!^ つかりません。 そのうち にあの バッグと-云 ふ 漁夫の 河童の 話に は、 何でも この 阈の街 はづれ 



347 

と 早ミ 僕で I: 



- や.,〕 と.: レ へ" つば いつび き ほん よ ふえ ふ し-つ く , 

或 年 をと つた 河童が 一 匹、 本 を讀ん だり、 侑 を 吹いたり、 靜 かに 暮らして ゐ ると Tl^ ふこと です リ 

は こ の 河童 に 尋ね て 見れば、 或は この 國 を 逃 げ 出す i で b も わ かり はしない かと,^ I ひました から、 

速 a: は づれへ 出かけて 行きました。 しかし そこへ つて ると、 き!: にもお さいきの" おに を 

力つ ば あたま さら かた じふに さ,? かつよ "っゾ き » 5 ' . . 

つた, M 里 どころ か- 頭の 皿 も!: まらない、 やっと 十二 三の 河童が,! 匹、 J ぶと g を 4; いて ゐま 

f も VI ろん ま ちが ぃヽ - おも ュ -; 

した。 僕 は 勿論 問 違った 家へ は ひった ではない かと 思 ひました。 が、 t の i にが をき いてが ると、 

をし とし .f つ f ちが 

やはり バ ッグ の敎へ て くれた 年よりの 河童に 遠 ひない のです。 

- 一 ども 

「しかし あなた は 子供の やうです が. :… 」 

「お." 1 さん はま だ 知らない のかい? わたし は ど 4h ま^か、 の^をぎ た^に は: sl^ 爾を 

して ゐ たの だよ。 それから だんだん 年が 若くな り、 今では こんな チ 1 になった の だよ。 けし ども 

ひ- r\ i^f; 一う ノ 、う, ノ へ ろく じふ かれ-一れ ひゃくじ ふーゴ つく し 

, ヰ を 甚定 すれ は.^ まれる 前 を,: ハ ト としても、 彼是 百 十五 六に はなる かも 知れない。 - 

僕 は 部屋の 屮を兒 ま はしました C そこに は 僕の 氣 のせ ゐか、 な Ig. 子ゃテ H ブルの nv^ か 

淸ら かな 幸福が 漂つ. てゐる やうに 見える のです。 

かつば しあ はく, 

1 あなた はどう も ほか の 河童よ り-も 什 合せ に 暮らし て ゐ る や う で す ,n? ? 」 



* レ J キー >」 し レーし レ -.VI 4- 

「さあ、 それ はさう かも 知れない。 わたし は 若い 時 は 年より だった し 年 をと つん 時 は 若.^ も" 

: なって ゐる。 i ゲて よりの やうに 愁 にも 渴 かす、 若い ものの やうに 色に も 溺れない。 见に川 

わたしのお .§ば たと ひ^おせ ではない にもし ろ、 安らかだった のに は 違 ひ あるまい。」 

たるま ど やす 

「成程 それで は 安らかで せう 」 

か.^ だ ぢ やうぶ いっしゃう,、 : ま 

「、や、 まだ それだけ では t 女ら かに はならない。 わたし は體 も. - 夫だった し、 一生 < せ 、、〈に 闲らぬ 

• - . -ct! . う き と とし 

it^Ki を つて ゐ たの だよ。 しかし 仕 化せだった の はや はり 生まれて 來た 時に 年より たつ 

たこと だと 思つ てゐ る。」 

J な ^ 气ク- ち、 レゃ み もに はなし 

銜は^ ひこの^ と^ « した トツ クの だの^ m 翳 者に 見て m つて ゐるゲ エルの 話 だの をして 

ゐ ました。 が、 なぜか をと つた &1 里 は 嫩り 僕の 話な どに 與味 のない やうな 額 をして ゐ ました ゥ 

「では あなた は ほかの mlA の やうに 格別 生 き て ゐ る ことに 執着 を 持つ て は ゐ な い の で す ね ? 」 

をと つた ^|里は|^ のぎ, を R ながら、 靜か にかう 返事 をし ました。 

、: う く いちおうち ちお つ ぶ V おわ,. 

「わたし も ほかの r^l 里の やうに この 亂へ 生まれて 來 るか どうか、 一 鹿 父親に 尋ねられて からお 親 

ヌ のおれ を 離れた の だよ。」 



9 「しかし 僕 はふと した 抢 子に、 この 國へ 轉げ 落ちて しまった のです。 どうか 僕に この 國 から 出て 

行かれる 路を敎 へ て 下さい。」 

で ゆ みちひと 

「出て 行かれる 路は 一 つし かない。」 • 

「と 「ェ ふの は?」 

ま へ き み ち 

「それ はお. 前さん のこ こへ 來た路 だ。」 

ぼく こたへ き . とき み は 

はこの 答 を 聞いた 時に なぜか 身の 毛が よだちました。 

「その 路が 生憎 兑っ からない のです。」 

かっぱ み-つく め ほ-、 かほ み からだ おこ 、や 

年 をと つた 河童 は 水々 しい n にぢ つと 僕の 額 を a- つめました。 それから やっと 體を 起し、 1^ 尾 

す; 5 , あゆ よ てんじゃう さが いつぼん つな ひ -..i & 

の 隅へ 步み 寄る と、 天井から そこに 'つ てゐた 一 本の 綱 を 引きました。 すると 今 • まで氣 のっかな 

\ ) - てん t.t) "と P ら また まる てんまど そと まつ ひのきえ だ は むか おほそら あ を 

力った 一大 窓が 一 つ II きました。 その 又圓 い; 大 窓の 外に は 松 や 枪が枝 を 張った 向う に 大穴, 一 が 靑ぁを 

ノ. f? へ,! > お ほ や t リ に やり たけ みね そび ほく ひ か, T き み こ ども 

と れ 渡って ゐ ます。 いや、 大きい 鏃に 似た 枪ケー の 祟 も 聳えて ゐ.^ 、す" 僕 は 飛行機 を 見た 子供 

じっさいと あが よろこ 

J の やうに. K 際 飛 び 上つ て 喜び ました。 

M 「さあ、 あすこから 出て 行く が ゆい。」 



七し かつ =M い つな ゆび いま ザ/、 つなお も > - 

年 をと つた 河童 はかう 言 ひながら、 さっきの 綱 を 指さし ました。 今まで 僕の 練と 田 つて ゐ 力の 

, じつ つな, はし-ご で き . 

は 實は綱 梯子に 出 來てゐ た の です。 

「では あすこから 出さして 世 M ひます。」 

「f わ た し は 前以 て 言 ふが ね。 出て 行って 後悔し ないや う に 。」 

だハぢ やうぶ ほく n うく わい 

「大丈夫です。 僕 は 後悔な ど はしません。」 . 

X く C- なじ はや つなば し-ご よ の ム ) とし 、 :.i つぶ.,.'.!!: i : 

俊 はかう 返事 をす るが 早い か、 もう 綱 梯子 を攀ぢ 登って ゐ ました 年 をと つた 河童の 頭の 皿 を 

はる した なが 

^か 下に 眺めながら。 

十七 

f J- つば くに かへ き ち し ら われ/、 にんげん ひ ふ に ほひ .L, いこう , ' : わ, 5/、に/-^. - V? く 

僕 は 河童の 國 から 51 つて 來た 後、 暫く は 我々 人間の 皮膚の 勻に 閉口し ましん 我々 人 £E に比ハ 

- つま --ノ つ せ- T つ わ. a くにん げん あたえ つば み く い.' う 

れば、 河童 は 實に淸 潔な ものです。 のみなら す 我々 人 問の 頭 は 河童ば かり 昆てゐ た 僕に は. ^伺に 

も氣 味の 惡 いものに 見えました。 これ は 或は あなたに はお わかりに ならない かも 知れません。 し 

3 かし目ゃロは兎も^9-も、 この 鼻と ヨふ もの は 妙に!? しい; r 求 を 起させる ものです。 俟は 勿論 出來る 



^ だけ、 請に も會 はない 箅段 をし ました。 が、 街 勺 にもい つか^お に^れぎ したと どえ、 

3 

ばかりた つうちに どこへ でも 出る やうに なりました。 有 それでも iv たこと は f か f.^ して ゐる 

うちに う つ かり; 刖童 の麼の 言葉 を 口 に 出して しま ふ こ と です。 

きみ _lr ち 

「君 は あした は 家に ゐ るかね?」 

rQua」 

なん 

「何 だって?」 

「いや、 ゐ ると 「K ふこと だよ。」 

だいたい い てうし 

大體 かう 云 ふ 調子だった ものです。 . 

ノ 、 ノ: irw,>MH 、 ふへ き のち i つやう どい ち ねん Arr JK く あるじ rj. し-. M* 

し 力し』 U 里の 匯 力ら つて 來た 後、 丁度 一年 ほどた つた 時、 僕 は 或 事靈の 失^した St に ;… 

(S 博士 は 彼が かう 一一 一一 I: つた 時、 「その, はおよ しなさい」 と 注意 をした。 何, でも 啦.^ の II ひ よれ,: H、 

. ^れ はなし たび .^-んご にん て を '-^^J , 

彼 はこの 話 をす る 度に 着 護人の 手に も 了 へ ない 位、 亂蔡 になる とか 「ム ふこと である。) 

河 では その 話 はやめ ませう。 しかし i ず II のお 1^ した If に 1? は;^;^ Is^ へ 11 りたい と II ひ I- し 

ました。 さう です。 「行きたい」 のではありません。 「歸 りたい」 と ひズ したので す。 : ま I- の, よ 



f 寺の 僕に は 故鄕の やうに 感ぜられました から" 

' ■ P あ、 - ズ、 じゅんさ 

i は そでし i をぬ 脫け f 、 5^§ん の S へ f うとし ました。 そこ をき I. にっか まり、 と 

うとう US れられ たのです。 銜はこの1,はひった1^ぎも!の國のこと|ひっづけま 

てつがく ー や あ ひか はら, なない-^ い Z へ,?, I; ソス、 

し-こ。 i ^鋭の チャック はどうして ゐ るで せう? 哲學 者の マッグ も 不相變 七色の. ^ぼ 子の ランタ 

y ;、 Z ん、 う くちばし くさ 力く せ (* 

アンの し か S てゐ るか も r ません。 殊 i の 親お だった、 嘴の 腐った 雰のラ ッフは 

つ- r*?£-、 ふァ ぼく おも こお あ ノ-、 ノ 

11^ け ふの やうに « つた です。 こんな 追憶に 耽って ゐた俊 は W 思 はす 聲を舉 けようと しまし 

i L 、 一 -- > よ 、 つび き ぼく 生へ た たづ > , 

,, こ。 それまい つの r 二 は ひって がた か、 バッグと 一お ふ 漁.^ の 河童が 一匹、 僕の 前に 佇みな 力、 - 

: I ^ J ぉぽ 

fMf.<p?i i はおとり g した i、 —& いた I つた tf てゐ ませ 

ん。 が、 ^ に 、だしぶ りに MIa の 國の言 葉 を 使 ふこと に 感動して ゐ たこと は 確 力です 

「おい、 バ ッグ、 どうして 來 た?」 

「へ い、 おみ 見 i- ひに B つたので す。 I ん でも &び f& だと か 云 ふこと ですから。」 

「どうして そんな こと を 知って ゐ る?」 

^ 「ラヂ ィォの 二 ウスで 知った のです。」 



5 

3 



凡 

蛮 



バ ッ グ は 得意 さう に:^ K つて ゐる リ で す * 



「それにしても よく 來 もれた ね?」 

なに Vj う. -,」 七 う々. やう か は な< り 丄リ » ? / ^ > ) » ' ^ . 

「仆 造作はありません。 束 京の 川 や 掘 割り は 河 啻に は往 來;; P 同樣 ですから。」 

ぼく いつば かへ る ゐ りくり やう 4j 1 どつ.,. し 、 J ) 

僕 は 童 も 蛙の やうに 水陸 兩樓の 動物だった ことに ケ更の やうに J- がっきました。 

「しかし こ の 邊には 川 はない がね。」 

「 い え、 こ ちら へ 上 つ た の は 水道 の 鐵管 を拔 けて 來た の です。 それから ちょつ と i お g を あけて 



「消火栓 を あけて? 一 



「 n: 那は お忘れな すつ た のです か ? 河童に も 機:^ 屋 の ゐ る と -ぶ ふ I J と を 。 I 

それから 僕 は 二三 日毎に いろいろの!: 童の 訪問 を 受けました。 g の や % は S ^ゼ によれば ¥1"!^ 

ち はう しゃう い 、しゃ" ャ-, よ 

】. ^呆 症と 云ュ ことです。 しかし あの 醫 者の チヤ ッ クは (これ は^だ あなたに も 1^1" に るり- こ〕 4 

. ) - / ... うおつ せい t, はう しゃう く.;:. んヒゃ さう はっせいち.? つし やうく. りんじ や た」 

ひありません C) 僕 は n 干發性 痴呆症 忠. ではない、 n.. 發性疯 n 木症忠 お;^ S 撒 f を^め、 あなたがた 

自身 だと 言って ゐ ました。 醫 者の チャック も 米る すじす から、 il^ の ラップ おの マッグり 



354 



Sjfit ひに, たこと は i>i です。 が、 あの 漁夫の バッグの 外に 晝 は 誰も 尋ねて 來 ません。 殊に 二 

rfsT しょ に^るの は 夜、 1. それ も 月の ある 夜です。 僕 は ゆうべ も = ^明りの 巾に 础子會 社の 社 

0.^ H ルゃ l^ill の マ ッグと 話 をし ました。 のみなら す 昔樂 家の ク ラバ ック にも ヴ アイ オリ ン 

をい つ 一き いて m ひました。 そら、 g うの 机の 上に 黑 百合の 花束が のって ゐ るで せう? あれ も ゆ 

みやげ も き 

うべ クラ バックが 土産に 持って 來て くれた ものです。 :•:• 

(i は^ り i つて 見た。 が、 勿論 あの 上に は 花束 も 何もの つて ゐ なかった。 リ 

f - 1 i 1 、 し 

それから この % も |r 學 者の マッグが わざわざ 持って 來て くれた ものです。 ちょっと 最 初" ゾノ おに を 

' J ^ .,ハっ=^ぁ ,、に ことば コ ぞんじ ■ ばナ . 力 は 

# ん でぎ なさい。 いや、 あなた は 河童の 國の 言葉 を 御存知になる 蒈 はありません では 代りに 

t ,^ ちかつ 一. C しゅつばん ぜんし ふ いつじ-つ. , - 

讀んで 見 ませう。 これ は 近頃 出版に なった トツ クの 全, 絮に ー汕 です. n 

(t はおい lE^Ey ひろげ、 かう 云 ふ £ をお ほ 聲に讀 み はじめた。) 

や し はな たけ ぬか 

—— 椰子の 花や 竹の^に . . - 

ぶっだ む > . . 

哪 i 叱 はとうに 眠って ゐる。 



5 

li ノ 

3 みち か いちじゅく いつ • 

路ば たに 枯れた 無 花 こ 一 しょに 

基督 ももう 死んだら しい。 . 

しかし 我々 は 休まなければ ならぬ 

た と ひ 芝居の 北れ £1:^ の 前に も。 

(その 又背氣 の裹を 見れば、 繼ぎ はぎ だらけの カン ヴァス ばかり だ?) il 

ぼく し じん えんせいてき かつば とキ*^.^キ, かさ 

けれども 僕 はこの 詩人の やうに 廠 ゆ 的ではありません。 河童た ちの 時々 來て くれる 限り は、 1 

わす ぼく とも ク いばん くわん おば 

—ああ、 この こと は 忘れて ゐ ました。 あなた は 僕の 友 だち だった 裁判官の ぺッ ブを覺 えて ゐ るで 

かつば しょく うしな G も はっき やつ なん ぃキ: .A リば くに せいしん 

せう。 あの 河童 は 職 を 失った 後、 ほんた うに 發 狂して しま ひました C 何でも 今 は :!: 童の 國の 精: t; 

河 . . 

r 病院に ゐ ると fK? ふこと です。 僕 は S 博士 さへ 承知して くれれば、 見舞 ひに: 5: つて やりたい のです 



力 



ね 



5 

3 



(昭和 二 年 二月 T ; MW 




1^ ぉ獄, のお 轉 b 11^、 その ^ に 見える の はかう 云 ふ 文字で ある 

0^^0S$ せば すち あんし si し 奉る" 

にぐ わつ せう 

一 ーパ。 小。 . - 

づ:^ お s。 さんた まりやの 御 つげの 日。 

一 一十 七日 C どみ いご。 

さんぐ わつ おい、 

三月。 大。 

ffi, 日。 どみ いご、 ふらんし す こ。 



359 



日本の 南部の 或 山み ち。 大きい 樟の 木の 街 を i つた f うに? き f の, 口ち が ひ 一とつ み 見える。 ^ひたって 

から 木 樵り が 二人、 この 山 みちを 下って 來る。 木樵りの 「"は1|^ゲ」^ さし、 もう ひ r だに * おか n 

しかける。 それから 二人とも 十. 字 を 切. り、 はるかに 洞穴 を if 拜,. する。 

3 

> お ほ ノ、 す き こす ゑ し ぼ なが さ る いっぴき あるえ \こ うへ J„, リ ヒま -' * * L- } 

この 大きい 梓の 木の 拊 C 尻つ 尾の 長い 猿が 一 匹、 或 枝の 上に 坐った まま、 ぢっと^ぃ?!を,^^^!^ 

5 - 「 "r.;? う,! ほ, まへ せん いっさう ほ まへ せん すす く 

つて ゐる。 ,6 の 上に は 帆" M 船が 一 艘) 帆前船 はこ ちらへ 進んで 來 るら しいし 

4 

うみ はし ほ まへ せん いつ V- う 

海 を 走って 力る 帆前船が 一 艘。 

5 

ほ * グ やん な こう うじん すゐふ ふたり if しら し.: V- * こ- コ -. r 

この 帆前船の S ^り 紅毛人の 水夫が 二人、 is のにに 幾 を^が して ゐる。 そのうちに 艇ぉ のま-が 

を 生じ、 一人の 水夫 は 飛び立つ が n 十い か、 もう 一人の 水夫の 桢腹 へす ぶりと ナイフ を I 犬き f てて 

, ほ ザ- t すゐふ ? I たり し ま う. よつ at* う あつ /, 

しま ュ。 火勢の 水夫 は 一 ー人のまはりへ^:^ル方から^^;^^って來る。 

6 



360 



あ ふむ r^:^ し が 5 レーつ. せん はな あな し ぼ- なが ャ -,0 いつび キ- あつ I ,.ク へ は, だ , 

1%けになった冰夫の死に^©。 突然 その 鼻の 穴から:^ つ li^ の 長い 猿が 一 匹、 n の 上に 道 ひ 出し 

く r? お も たち i またはな あな た" 

て來 る。 が、 あたり を 見 ま はした と 思 ふと、 忽ち 又 鼻の 穴の 巾へ は ひって しま ふ" 

7 

5 . な-二 み か *:p ん き; V 、うす ノリ レ? んふ し 力い ひと お 二 し t ス V- 

上から 斜めに 見お ろした 海面。 <:.^ にど こか i4i 中から 水夫の 死骸が 一 っサ がちて 来る。 死骸 は 水り 

r *M か V- ちま - ^がん- うしな 人-だな み r ノ、 - 6 い- き 

ぶり の^った 中に 忽ち 姿 を 失って しま ふ。 あとに は 唯浪の 上に 1ぉ が 一 匹 もがいて ゐるは 力り 

8 

海の 向う に 兄え る 半島〕 

9 

ぎの M みちに ある 樟の 木の 稍。 猿 はや はり 熟 心に 海の 上の 帆 前 ^ を 眺めて ゐる。 が、 やがて 

一 T を ぎげ、 i ま に St び を 漲 せる。 すると 猿が もう,. 一 匹、 いっか Li じ 枝の 丄に ゆらり と 腰をおろ 

二 -リき る てま ュ しばら な: ナ * な (ち さる な. え し 

して ゐる。 T 一-匹の 猿 は 乎 虞 似 をしながら、 暫く.^ か 話しつ づける。 それから 後に 來た猿 は-民し 

つ nii- を 杖に まきつけ、 ぶら りと 宙 に!..^ つた まま、 椅の 木の 枝 や #5- にきら れた 向う を 口の 上に や を 

やって 眺め はじめる。 



o 

前の 洞穴の 外部し お茶 i や 竹の 茂った 外に は^も そこに 動いて ゐ ない。 そのうちに だんだん =: の 

くれ ほらあな なか かう., > り いっぴき そら ま あが ゆ 

暮 になる。 すると 洞穴の 中から 蝙蝠が 一 匹 ひらひらと 穴 丄へ舞 ひ 上って I;;: く。 

この 洞穴の, 「さん • せば すち あん」 がた つた 一 人 岩の 壁の 上に 懸けた 十字架の 前に 一 まって 

ゐる。 「さん. せば すち あん」 は黑ぃ 法服 を 着た、 に 近い 口木 人。 火 をと もした 一本の 嬾燭は 

机 だの 水瓶 だの を 照らし て ゐ る 。 

2 

蠟燭の 火 かげの ちた 5. おの 壁。 そこに は 勿論 はっきりと 「さん • せば すち あん」 の 橫額も 映って 

ゐる。 その 横 額の 頸す ぢを 夙つ 尾の 長い 猿の 影が 一 っ靜 かに 頭の 上へ 登り はじめる。 核いて 乂: 

じ 猿の 影が 一 つ。 , 

3 

惑 「さん • せば すち あん」 の 組み合せた 兩乎。 彼の 刚乎 はいつ の 問 にか 紅 モ《< ;のパ イブ を 握 つて 



る.) パイプ は 始めは 火 をつ けて ゐ ない。 が、 見る る 空中へ 煙草の 煙 を舉げ はじめる。 :.:• 

4 

まへ ほ.,:: あな ないぶ きふ た あが い-は 义, チ. I . 、, 

前の 洞穴の .2: 部。 「さん • せ ばす ちあん」 は 急に 立ち上り バイフ を 5 おの 上へ 投げつ H てし ま- T 

しかし パイプ は 不相變 煙草の 煙 を 立ち! n 升ら せて ゐる。 彼 は きを 示した まま、 二度と パイプに 近 

よ ら な い 。 

5 

, i» I つ/ おもむ さ!;: い びん ズに 

^の 上に 落ちた パイプ。 パイプ は 徐ろに 酒 を 人れ た 「ふらす こ」 の 瓶に 變 つてし ま-. I。 のみなら 

• ま., 二 ヌし ひと 丈な か は X. い-ご にな 

すその 乂 「ふらす こ」 の 瓶 も 一 きれの 「花 かすて いら」 に變 つてし まふ C 最後に その 「花 かすて レら」 

,ま しょくもつ とし わか け いせい ひとり な. -H めか ひざ く-つ , - 、ほ— . i 

さへ 今 はもう 食物で はない。 そこに は 年の 若い 傾城が 一人、 艷 しい 膝 を 崩した まま ハ索めに^?^カ 

の顏を 見上げて ゐる。 …… 

6 

15, うよん しし かれ きふ じふ I き へ-〕 し-やう - ^ C. 

「さん. せば すち あん」 の 上半身。 彼 は 与^に 十字 を 切る。 それから ほっとした 衮 3^ を 力べ 7- 

5 



> r な パ i に ひき 1. つ!^ ん らふ そノ、 した う-つく i ^ \ 、ヽ 、-, 、ゝ - 

^^っ:ぉの艮ぃ猿がニ匹、 一本の 蠟燭の 下に^って ゐる, - どちらも 額 をし 力めた 力に- 

6 

3 

8 

m の^! ^の!^ ぎ。 「さん , せば すち あん」 はもう. 一 度 卜 { ^架の 的に ぎつ てゐ る。 そこへ 大きい 

,M ふが TI さっと どこかから it ひ?^ つて^る と、 ー錢 ぎに 螺 節の 火 を 消して しま ふ。 が、 一す ぢ 

の お の IT がかす かに 十字架 を 照 らして ゐる。 

, , 一 ... 、 ま-: ン ふ- ソ ケ つし -:- レリ やう、 うけい キ-ど か は ちゃう はう 

^の 慰のお に i ^けたけ yr sfssl^ 十字の き 子 を^め た 長方形の 窓に 愛り はじめる。 S 方. 

^の^の^はぉ,きのfcが.^っぁるK„^ おのま はりに は 誰も ゐ ない。 そのぅちに^*はぉのづか 

ら II の 像へ iru より はじめる。 に まの S 部 も 化え はじめる。 そこに は 「さん • せ ばす ちあん」 

- --VJ チ V- くら えだ も に V- ん V しい 二 ども 

に^た 穀 さんが ィ-〃 に 籾 ま はしながら、 ^^に 實の なった 楼の枝 を 持ち、 二三 歳の 子供 

を || ばせ てゐ る。 11.^ も^ « のチに _| ひない。 が、 ^_^^^はき|、 彼赛 もや はり 霧の やうに お 

, ) "ビ >^ -、 ぅレ は V け はたけ し じぶ ナカ をん な LA- り 

が a£ のず をが きぬけて しま ふ。 今度 見える の は 家の 後ろの a。 S に はは. t 'に 近 V 女 カー 人せ つせ 



と 驢麥を 刈り 千して ゐる C 



364 



長方形の 窓を观 いて ゐる 「さん • せば すち あん」 の, 上半身い- 仉し 剥めに. がろ を ij- せて ゐる。 1- る 

いのは 窓の 外ば かり。 窓の 外 はもう.;: ¥ はない。 大勢の 老若^女の 頭が Ti に そこに i いて ゐるリ 

また-. V ほぜい あたま 5 へ じふ じ か かヶ 1 よ, )-- よ )*- ん: ぐ, --ハ り r-?-? 、ろ - . , . , 

その 又 大勢の 頭の 上に は 十字架に WW つ た 男女が 三 人 一 g だ か と g 腕 を^げ てゐ る。 まん 1: の お t^^lf 

, 〃か をと 二 ぜんぜん かれ か は ハカ ど , ;グ、 .H_ な _:,.> •- • 

に懸 つた 男 は 全然 彼と 變り はない。 彼 は 窓の 前 を 離れよう とし、 思 はすよろ よろ とぽれ かかる。 



2 

前の 洞穴の 內部。 「さん • せ ばす ちあん」 は 十字架の ドの おの 上へ 倒れて ゐる。 が、 やっと i\y 

起し、 月明りの 落ちた. :- 字 架 を 見上げる-」 —字 架 はいつ か 初 ひ. 初 ひしい の ぎに f つてし ま 

ふ。 「さん • せば すち おん」 は 驚いた やうに かう 云 ふ 1^^ を?: つた 捉、 11_|に.^^ち^っては^;^.^ 

せる。 月の 光の 中 を かすめる、 大きい 一 羽の 率の 影。 ぎ誕 の釋迦 はもう 一 きもとの 十? に I- つ 

てし まふ C 



5 前の 山み ち。 月の 光の 落ちた 山み ち は 黑ぃテ H ブ ル に變 つてし まふ。 テ ェ ゾ ル の 上に は トラ ン 

6 

ウノ ひとくみ やと こ て ふた あら. * ひ し-つ & うへ ぶ いう ふだ. くば 

プが 一組。 そこへ 男の 手が 二つ 現れ、 靜 かに トランプ を 切った 上、 左右へ 札 を 配り はじめる G 

3 

2 

まへ で.,::.:, な ない ふ すた ま た ほらあな なか ある かれ あた i 

前の 洞穴の 內部。 「さん • せば すち あん」 は 頭 を 垂れ、 洞穴の 屮を步 いて ゐる C すると 彼の 頭の 

,つ、 ゑん,、 わう ひと どうじ また ほ.:: あな なか おもむ あか , いれ 

上へ 圓光 がー つかが やき はじめる。 同時に 又 洞穴の 屮も 徐ろに 明るくな り はじめる。 彼 はふと こ 

の 奇蹟に 氣 がっき、 洞穴の まん 中に 足 を.^ める。 始めは 驚きの 表情. し それから 徐ろに 喜びの 衷情。 

かれ じふ じ か 生へ ふ :>- ど ね- ン しん いつ V---,.- 

彼 は 十字架の 前に ひれ 伏し、 もう 一 度 熱心に 祈り を 捧げる。 

4 

2 

みぎ みみ みみ なか じゅ も,. いつぼん るん/,^ キる み 

「さん • せば すち あん」 の 右の 耳。 .pt たぶ の 中には 樹木が 一 本、 々と 间ぃ實 をみ のらせて ゐる。 

• みみ ぶな なか はな V- ,、v はら くさ 「r な か^ ご 

环 の 穴 の 屮は 花の い た 草原。 草 は そよ風に 動 いて ゐる。 

5 

2 

まへ ほに あな ないぶ ただ 二ん ど ぐ わい ぶ めん ゑんく わう いただ じふ じ か 

前の 洞穴の 內部。 仍し 今度 は 外部に 面して ゐる。 圓 光を預 いた 「さん • せ ばす ちあん」 は 十 卞ぉ木 

まへ た あ し-つ ほ.. r あな そと ぶる ゆ かれ すがた み ち じ,^ じ か 

/ の 前から 立ち上り、 II かに 洞穴の 外へ 歩いて 行く、」 彼の 姿の 見え なくなった 後、 卜 字 架 はおの 、、つ 



356 



いは うへ お どうじ またみ-っ^め なか セる いつ, ひ キ-を ど だ : ご じ" じ か ちか 

から 岩の 上へ 落ちる。 同時に 又 水瓶の 中から 猿が 一 匹 躍り 出し、 怖 は 怖 は 十字架に 近づかう とす 

また いっぴ々) 

る。 それから すぐに 又もう 一 匹。 

6 

2 

ほ.. い あな ぐ わい ぶ つき ひかり なか しだい ある く かれ かげ 

この 洞穴の 外部。 「さん • せば すち あん」 は 月の 光の 中に 次第に こちらへ 歩いて 來る。 彼の 影 は 

ひだり もちろん みぎ ひと お またみ ぎ かげ つば ひろ ばう し なゥ 

左に は 勿論、 右に ももう 一 つ 落ちて ゐ る.。 しかも その 乂 右の 影 は 鍔の 廣ぃ 帽子 を かぶり, ":!^ い マ 

かれ じ 力 うはん しん ほ とん まら あな そと ふ さ とき た ど そに 

ン トル を まとって ゐる。 彼 は その上 半身に 殆ど 洞穴の 外 を 塞いだ 時、 ちょっと 立ち止まって お を 

見上げる。 

7 

2 

a し てん/ \ そら とつぜんお ほ ふんど き ひと うへ お ほ * た ,が く し だい 

^ばかり 點々 とかが やいた {4r 突然 大きい 分度器が 一 つ 上から 大股に 下って 來る。 それ は 次, m 

さに バ したが し だい また ナ. -ぢ り わ-つんし そろ おも おもむ . ^す 

に 下る のに 從ひ、 やはり 次第に を:; i め、 とうとう 雨脚 を 揃へ たと 思 ふと, 徐ろに-中 はん で^えて 

しま ふ。 

8 

2 

ひろ やみ なか ,?.■,- いく だい やう ら たいやう ち き,^ つ *^ 3 

廣ぃ 暗の 中に 懸 つた 幾つかの 太陽。 それ 等の 太陽の ま はりに は 地球が 又 幾つ もま はって ゐる 



まへ やま .OS ん くわう い i ,一 だ ふた かげ おと し. つ やま くだ 

前の 山み ち。 圆 光を預 いた 「さん • せ ばす ちあん」 は 二つの 影 を^した まま、 1^ かに 山 みちを 下 

つて 來る。 それから 樟の 木の 根 もとに: み、 ぢ つと 彼の 足 もと を 見つめる. レ 



3 

なな - つへ み や i やま つき ひか リ なか いし ひと ころ いし 

斜めに 上から 見お ろした 山み ち。 山み ちに は 月の 光の 中に 石ころが 一 っ轉 がって ゐる。 ころ 

しだい せきふ か は またたん けん か は さいご か は 

は 次第に 石斧に 變り、 それから 又 短 劍に變 り、 最後に ピストルに 變 つてし まふ。 しかし それ もも 

う ピストル ではない。 い つか 又もとの やうに 唯の 石ころに 變 つて ゐる。 

3 

攀 

まへ やま だ ど , あし み かげ 

前の 山み ち。 「さん • せ ばす ちあん」 は 立ち止まった まま、 やはり 足 もと を 兌つ めて ゐる。 ^5!^の 

ふた か は 二/ど あたま あ くす き みキ- な, 

二つ ある こと も變り はない。 それから 今度 は 頭 を 擧げ、 樟の 木の 幹 を 眺め はじめる。 …… 

2 

3 

つき ひかり う ,、す A;- みき あら き か は よろ みき なに はじ あ-, Tt5 

月の 光 を 受けた 樺の 木の:^。 荒 あらしい 木の 皮に 鎧 はれた 幹 は佝も 始めは 现 して ゐ ない。 が、 

しだい うへ せか:' くんりん かみ ふ、 かほ ひと あざ や うか く い.. いご レ ゆなん キ" スト .ISJ ほ 

次第に その上に^ 界に 君臨した 祌々 の 額が 一 つづつ 鮮 かに 浮んで 來る。 最後に は 受難の 基将 の額リ 



さいご ていご みみよ を とうふ. やつ しん ふん んに 

最後に は? いや 、「2 取 後に は」 ではない。 それ も 見る見る つ 折りに した^ 京 X X 新聞に, つ 

てし まふ。 

3 

3 

オ」 やま そくめ ス つば ひろ ば, T し キ かげ i た あが も;' と 

前の 山み ちの 側面。 鍔の 廣ぃ 帽子に マ ン卜ル を 着た 影 はおの づ から 眞 つす ぐに 立ち上る" t も 

た あが とき _-: だ かげ や ぎ ひげ C め するど 二う m ろじん .1 ん 

立ち上って しまった 時 はもう 唯の 影で はない。 山羊の やうに を 仲ば した、 nil の 鋭い 紅毛人の 船 

長で ある。 

3 

やま くす き した せんちゃう なに はな かれ かほ おも 

この 山み ち。 「さん • せば すち あん」 は樟の 木の下に 船長と :!: か 話して ゐる" 彼の 顔 いろは 艰. お 

.tr ノ.. 'やう く tr, ひる た れ、, せう う J^^ しば。 はな のち いつ よこ 

もしい。 が、 船長 は 眷に絕 えす tie 笑 を 浮かべて ゐる。 彼等 は 暫く 話した 後、 一 しょに 横み ちへ は 

ひって 行く。 

5 

3 

うみ み V- き うへ かれら たた ャ なに ねっしん . にな せんす, 《う 

海 を 見お ろした 岬の 上。 彼等 は そこに-むんだ まま、 :!: か 熱心に 話して ゐる。 そのうちに 船長 は 

6 な.,, ばうる 一ん き やう と だ い て チ ^. かれ 

3 マントル の 中から 望遠鏡 を 一 つ 出し 、「さん • せば すち あん」 に 「見ろ」 と 云 ふ 乎眞似 をす る, - 彼 は 



C ん ばう. ^;スキ. やつ つ 2 ゾ うへ C そ み かれら ふう もく もす?,: ん 

ちょっと ためらった 後、 望遠鏡に 海の 上を舰 いて 見る。 彼等の ま はりの 草木 は 勿論 、「さん. せば 

ほふ ふく うみかぜ ため ゆ せんちゃう ろご 

すち あん」 の 法服 は 海風の 爲 にしつ きりなしに 搖 らいで ゐる。 が、 船長の マントル は 動いて ゐな 

ヽ 

レ 

6 

3 

?ら 幺んき やう うつ だいいち くわう けい なんまい ゑ か へや たか こうま うじん な ス によ ふ、 り 

望遠 鋭に 映った 第一 の 光景。 何枚も畫を懸けた部屋の屮に紅毛人の^^^.がニ人テ ェブルを巾に 

はな . ^ふそく ひかり お つへ V ぶ づき ば ら はな ま 4---- つ t- 「卜し 

話して ゐる。 螺燭の 光の 落ちた テ H ブルの 上に は 酒杯 や ギタァ やま: 微の 花な ど。 そこへ 乂 紅毛人 

をと 一- ひとり とつぜん へや と お けん ぬ く ひとり こ *r まう じん や. V こ レ リ 

の 男が 一 人 突然 この 部屋の 戶を 押し あけ、 劍を拔 いて は ひって 來る。 も、 リー 人の 紅毛人の 男も咄 

さ に な はや けん ぬ あ ひて むか とき あ ひご 

=ii に テ H ブル を 離れる が 早い か、 劍を拔 いて 相 乎を迎 へようと する。 しかしもぅその時には相^.- 

けん しん ざう う あ 二む ゆか うへ た ふ こうまう ヒん をん な へ や み と = やうて 

の劍を 心臓に 受け、 仰向けに」 泳の 上へ 倒れて しま ふ。 紅毛人の 女 は 部屋の 隅に 飛びの き、 乎に 

ほ *H おさ ひ げき なが 

顿を 抑へ たま ま、 ぢっ とこの 悲劇 を 眺めて ゐる。 

7 

3 

ばう も、 i んき やう うつ だいに くわう にい お ほ しょだな なら へ や なか こうまつ じん ^と こ ひとり 

望遠鏡に 映った 第一 -の 光景。 大きい 書棚な どの 並んだ 部屋の 屮に 紅毛人の w;^ が 一 人 ぼんやりと 

ジ くも 5 むか で m: と-つ ひかり お つく ふ J うへ しょる ゐ にやう ぼ ャ 一つし こう ま うじん こ ども ひと 

机に {! つて ゐる。 電燈の光の=^ちた机の上には書類ゃ帳簿ゃ雜;^.|など。 そこへ 紅 \. ^人の子 供が 一 



り ぃケ i ひ と く -了 つまう じん こ ども だ なんど かほ せ: -ぷん C ち 

人 勢 よく 戶を あけて は ひって 來る。 紅毛人 はこの 子供 を 抱き、 何度も 顏へ 接吻した 後 、「あちら 

ゆ いて i ね こ ども す た ほ で い また-一う まう じん っニ么 むケ 

へ 行け」 と 云 ふ チ眞似 をす る。 子供 は 素直に 出て 行 つ て しま ふ。 それから 乂 紅毛人 は 机に. ひ、 

ひ-^ - だし ^に と だ おも きふ あたま は. T,, り しゃ-つ 

抽斗から 佝か 取り出し たと 思 ふと、 急に 頭の ま はりに 煙 を 生じる-し 

8 

3 

ば-つも; んャ」 やう うつ だいざん くわう けい ある a ン ァ じん はんしん ざう す 〈 や なか -7. 'まう じん をん な ひ A り 

望遠鏡に 映った 第三の 光景 e 或 露西亜 人の 半身像 を据 ゑた 部屋の 巾に 紅^人の 女が 一 人せ つせ 

たた 二う まう じん ば あ ひとり しづ と をん な ケ, か 、. つ 

と タイプライタ ァを 叩いて ゐる。 そこ へ 紅毛人の 婆さんが 一 人靜 かに 戶を あけて 女に 近より、 一 

f てが, ひだ よ み いて i ね をん な でん A 一う ひかり なか て がみ め 

封の 乎 紙 を 出しな が ら、 「讀ん で 見ろ」 と 云 ふ 手眞似 をす る。 女 は 莆燈の 光の 巾に こ の 乎 紙 へ を 

とほ はや とげ おこ ばぶ あっけ 

通す が 早い か、 烈しい ヒ ステ リイ を 起して しま ふ。. 婆さん は:: 木氣に とられた まま、 あとす さりに 

と ぐち しりぞ ゆ 

戶 口へ 退いて 行く。 

9 

3 

f う. Ql ノぶ: やう うつ だいし く;: うけい へ, つげん は 么 に へや なか こう i ,つじん なんに よ ふたり な A 

, 望遠, 鏡に 映った 第 ra: の 光景。 表現 派の 畫に 似た 部屋の 中に 紅毛人の 男女が 一 :人テ ェ ブル を 巾に 

i な ふ し ギ I ひ.^ り お うへ しはんく わん じ やう-ご ふい ご かれ。 

話して ゐる。 不思議な 光の 落ちた テ H ブルの 上に は 試 驗管ゃ 漏斗 や 吹 皮な ど" そこへ 彼等よりも 

せい たか 二う まう じん をと 二 にん. y 一 やう ひと ぶ ± ーメ と お じん: う はなたば も 

3 脊の 高い、 紅毛人. の の 人形が 一 っ無氣 味に も そっと 戶を 押し あけ、 人工の 花束 を 持って は ひつ 



メ、 に 4! に :ば わた ^1 かい 二に やう しゃう み 七,, ぜん をと-一 と : r -.' V 

1 て來る e が、 花束 を 渡さない うちに 機械に 故障 を 生じた と 見え、 突然 SR に 飛び かかり、 無 造:^ に 

7 

3 ゆかう へ お た ふ -- うまう じん お/た : や すみ AI りゃうて ほ- 5^ おさ ャふ 

」i£ の 上に 押し倒し てし まふ C 紅毛人の ケは 部呈の 隅に 飛びの き、 兩 手に 顿を 抑へ たま ま、 ケ わにと 

めどな しに 笑 ひ はじめる。 —— 



4 

ばう ゑんき や-.!' うつ だいご くわう けい こんど また まへ へ や か は ただ まへ か は たれ 

望遠鏡に 映った 第五の 光景.^ 今度 も 亦 前の 部屋と 變り はない。 唯 前と 變 つて ゐ るの は 誰も そこ 

とつ. ぜんへ や ぜんたい .r さ けれり なん,' ばくはつ たや- Ifj 

にゐ ない ことで ある。 そのうちに 突然 部屋 全體は 凄まじい 煙の 中に 爆發 してし まふ。 あと は 唯一 

めん やけの はら しばら いつぼん やなぎ か は は くさ なが G はに か は 

面の 燒 野原ば かり, - が、 それ も 暫くす ると、 一本の 柳が 川の ほとりに 生えた、 草の長ぃ^^.!3§に:愛 

またの はら ま あが なんば し しら さぎ いちぐん 

り はじめる。 その 又 野原から 舞 ひ 上る、 何 羽と も 知れない 白鷺の 一 群。 …… 

4 

まへ み さき うへ ば-つ ゑんき や-つ も なに せん もやう はな ii ん ちゃつ 

前の 岬の 上、」 「さん. せば すち あん」 は &ま, 迩鏡を 持ち、 何 か 船長と 話して ゐる。 船長 はちよ つと 

あたま ふそら ほし ひと み み あわ ヒ ふじ 今 

頭 を 振り、 空の 星 を 一つと つて 見せる 。「さん • せ ばす ちあん」 は 身 をす さらせ、 慌てて 十ネを 5^ 

ご 一ん. と き • せんちゃう ほし て ひら かれみ いて あね 

らうと する。 が、 今度 は 切れない らしい。 船長 は 星 を 手の平に のせ、 彼に 「見ろ」 と 云 ふ 手 似 を 

誘 



*-、 し せんちゃう て ひ、 り ほし おもむ いし か は いし また じ やがい も か は ひやが いも さんど 

星 をのせ た^ 長の 手の平。 星 は 徐ろに. ころに 變り、 石ころ は 父 馬 鈴 薯に變 り、 Hill 鈴薯は 一二 成 

め て, か. H て ふ さいご ご も ひ ぐんぷくす がた か は -- ひら 

目に if に變 り、 蝶 は::;^ 後に 極く 小さい 軍服 姿の ナボレ オンに 變 つてし まふ。 ナボレ オン は チの平 

なか た なが C ち せなかむ て ひ.,' そと 

のまん 中に 立ち、 ちょっと あたり を 眺めた 後、 くるりと こちらへ 背 巾 を 向ける と、 手の平の 外へ 

せう ベ ん 

小便 をす る。 

• 3 

4 

i 一 やま せス ちゃう か,、 く せんち わ. リ 

前の 山み ち。 「さん • せば すち あん」 は 船長の あとから すごすご そこ へ つて 來る。 船長 はちよ 

た もやう どかね わ ゑんく わう 

つと 立ち どまり、 丁度 金の 輪で も はづす やうに 「さん • せ ばす ちあん」 の 岡 光 をと つてし まふ。 そ 

かれら てす き しん- いちど なに はな うへ お 么ん くわう おもむ お ほ ノ わい 

• れ から 彼等 は樟の 木の下にもう 一度 何 か 話し はじめる。 みちの 上に.?^ ちた^ 光 は 徐ろに 大きい 1^ 

ちう どけい じ 二く にヒ さん じっぷん 

中 時計になる。 時刻 は 二 時 三十 分," 

4 

4 

やま ただ こんど き いは もちろん 4^ま た かれら じ しん なな うへ 

この 山み ちのうね つた あたり。 但し 今度 は 木 や 岩 は 勿論、 山み ちに 立った 彼等 自身 も 斜めに 上 

^ み つき ひかり なか ふうけい む すう な n: によ み >s だい .4 は , 

3 から 見お ろして ゐる。 月の光の中の風景はぃ っか無數の!^^に滿ちた近代のカッ フ H に つてし 



まふ。 彼等の 後ろ は樂 器の 森。 尤もまん 中に 立った 彼等 を 始め、 何も彼も 鱗の やうに 細かい。 

5 

4 

ないぶ お ほぜい を ど こ たち かこ たう わく 

この カツ フ H の. S: 部。 「さん • せば すち あん」 は 大勢の 踊り子 達に とり 圍 まれた まま、 常 惑 さう 

なが とき.. ふ く はなたば を どこた ちかれ ざげ かれ く 

にあたり を 眺めて ゐる。 そこへ 時々 降って 來る 花束。 踊り子 達 は 彼に!^ をす すめたり、 彼の^に 

さが かほ かれ で キ- こうまう じん せんちゃう 

ぶら 下ったり する。 が、 顏を しかめた 彼 はどうす る こと も出來 ない らしい。 紅毛人の 船長 はかう 

い いれ ま うし た あ ひか はらす れいせ う か かほ ちゃう ど はん ふん のぞ 

云 ふ 彼の 眞 後ろ に 立ち、 不相變 冷笑 を 浮 ベ た 顔 を r 度 半分 だけ 观 かせ てゐ る。 

6 

4 

まへ か ゆか うへ くつ あし いく た う-ご ら あし また 

前の カツ フ H の 床。 床の 上に は 靴 を はいた 足が 幾つ も 絶えす 動いて ゐる。 それ 等の 足 は乂 いつ 

ま うま あし つる あし しか あし か は 

の 問に か 馬の足 や 鶴の 足 や 鹿の 足に 變 つて ゐる。 

7 

4 

前の カツ フ H の 隅。 金 鈕の服 を 着た 黑 人が _ー 人 大きい 太鼓 を 打って ゐる。 この mi 人 も 亦い つの 

問に か 一 本の 樟の 木に 變 つてし まふ。 



まへ やま せんちゃう うで く くす き お き うしな み 

前の 山み ち。 船長 は 腕 を 組んだ まま、 樟の 木の 根 もとに 氣を 失った 「さん • せ ばす) り あん」 を 兌 

かれ だ おこ なか かれ ひ むか ほらあな C ほ ゆ 

おろして ゐる。 それから 彼 を 抱き起し、 半ば 彼 を 引きす る やうに 向う の 洞穴へ 登って 行く。 

9 

4 

まへ ほ..:: あな ないぶ ただ こんど ぐ わい ふ めん つき ひか リ お 力 れら か-, 

前の 洞穴の 內部。 仍し 今度 も 外部に 面して ゐる。 月の 光 はもう 落ちて ゐ ない。 が、 彼等の つ 

き とき うす あか せん 卞, やう とら 

て來た 時にはお のづ から あたり も 薄明る くな つて ゐる。 「さん • せば すち あん」 は 船長 を 促へ、 も 

いちど ねっしん はな せんす" やう れいせ う なん かれ 二とば : た 

う 一度 熱心に 話しかける。 船長 はや はり 冷笑した きり、 何とも 彼の 言葉に 答へ ない らしい。 が、 

やっと 一 1 こと 三 ことし やべ ると、 未だに 薄暗い-おのかげ を 指さし、 彼に 「見ろ」 と ぜふ个 似 をす 

る 



5 

ほらあな ないぶ すみ. あごひげ し 《- い ひと いは かべ 

洞穴の 內 部の 隅。 顋髯の ある 死骸が 一 つ 岩の 壁に よりかかって ゐる。 

5 

かれら ひや-つ はんしん おどろ おそ しめ せんちゃう なに にな やんちゃつ ひと 

彼等の 上半身。 「さん • せば すち あん」 は 驚き や 恐れ を 示し、 船長に 何 か 話しかける。 船 .4^ は 一 

4 ン. - : い 

3. こと 返事 をす る。 「さん • せば すち あん」 は 身 をす さらせ、 慌てて 十字 を 切らう とする。 が、 八/度 



も 3 る こと は出來 たい。 

5 

Judas 

3 

5 

まへ しがい よこが ほ たれ て かほ とら か は な 

前の 死骸、 11 ュダの 横顔。 誰かの 乎 はこの 額を捉 へ、 マッサ ァヂ をす る やうに 額 を 撫でる。 

あたま とうめい ちゃう どい ちまい かいぼう づ なう ナゐ あら は なう す, 1 はじ 

すると. 娘 は 透明に なり、. 丁度 一 枚の 解剖 II の やうに ありあり と 腦髓を 露して しま ふ。 腦髓は 始め 

さんじ ふまい ぎん うつ うへ ま あざけ あはれ お 

は ぼんやりと 二十 枚の 銀 を 映して ゐる。 が、 その上に いつの にか それぞれ 嘲り ゃ憐 みを帶 びた 

しと かほうつ ら- わか いへ み づぅみ じふ じ か わい つ 

使徒た ちの 顔 も 映って ゐる。 のみなら すそれ 等の 向う に は 家 だの、 湖 だの、 十字架 だの、 in 幾な 

形 をした 手 だの、 橄攢の 枝 だの、 老人 だの、 11 いろいろの もの も 映って ゐる らしい。 

4 

5 

まへ ほらあな ないぶ すみ いは かべ しがい おもむ わか あかご か は 

前の 洞穴の 内部の 隅。 5 石の 壁に よりかかった 死骸 は 徐ろに 若くな り はじめ、 とうとう 赤 兒に變 

あかつ 1 あつ 一 あ-ご ひげ C こ 

つてし まふ。 しかし この 赤兒の 頸に も願释 だけ はちゃん と殘 つて ゐる。 



376 



あかご し がい あし あし なか いす- リん i n はな る: ゲ 3 ノ 

赤兒の 死骸の 足の うら。 どちらの 足のう らもまん 屮に 一輪 づ つま S 藻の 花 を 描いて ゐる。 けれど 

みみ いよ うへ よな おと 

も それ 等 は 見る見る うちに 岩の 上へ 花びら を 落して しま ふ。 

6 

5 

かれら じ やう よん しん いよいよ 二う ふん なに またせん ちゃう はな せん 4..- やう なん 

彼等の 上半身。 「さん • せば すち あん」 は 愈 興奮し、 何か乂 船長に 話しかける。 船. 4i は: 1: とも 

へんじ まとん げんしゅく かほ み 

返事 をし ない。 が、 殆ど 嚴肅に 「さん. せば すち あん」 の顏を 見つめて ゐる。 

7 

5 

な. f ぞうし め するど せんちゃう かほ せんちゃう おもむ した だ み した うへ 

半ば 帽子の かげに なった、 目の 鋭い 船長の 額。 船長 は 徐ろに 舌 を 出して! せる。 古の 上に はス 

いっぴ ネ 

フィンク スが 一匹。 

ま、 ま 4,? あな な、 ふ み 、よ かべ あか-一 * 一 し がい し だい ま たかは 

の^ 穴の ほ 部の 隅。 岩. の 壁に よりかかった 赤兒の 死骸 は 次第に 乂變り はじめ とうとう ちゃ 

ち V.- . 、る i に ひき ざる 

んと 肩車 をした 一 一匹の 猿に なって しま ふ。 . 

5 

まへ まら あ * 二 > 二 せんちゃう りっしん なに ほな - 

前の 5t 穴の 內部。 船長 は 「さん • せば すち あん」 に 熱心に 何 か 話しかけて ゐる。 が、 一 さん • せ は 



たま た Z ん ちゃ- ソ ことば き *-,.、 ち f. つ きふ か.^ うで とら ま ヽぁ t 

7 すち あん」 は 頭 を まれた まま、 船長の 言葉 を 聞かす にゐ るら しい。 船長 は < おに 彼の 腕を捉 へ、? ^ 穴 

の-外部 を 指さしながら、 彼に 「見ろ」 と fft ふ 手眞似 をす る 。 



6 

- つき ひかり う さんちう ふうけい ふうけい いそ じゅう,! 、し ナょ .-± 

月の 光 を 受けた 山中の 風景。 この 風景 はおの づから 「破 ぎんち やく」 の充滿 した、 ^しい むら 

か は. く, T ちう ただよ く,: げ れ-れ & ち产 +. >- ) 1ムー 

に變 つてし まふ。 〈や: 中に 漂 ふ 海月の 群。 しかし それ も 消えて しま ひ、 あとに は.^ さい 地 班が. 一つ 

廣ぃ 暗の 巾に ま はって ゐる。 

6 

「しろ やみ なか ち キぅ ち きう る した! , ^よ 

廣ぃ 暗の 屮にま はって ゐる 地球。 地球 はま はるの を 緩める のに 從ひ、 いっか オレン ヂ に^って 

ひと あら は ま ふた レろ だ::^ 、 . J 

ゐる。 そこ へ ナイフが 1 つ 現れ、 眞ー 一つに ォレ ン ヂを截 つてし まふ。 白い ォレ ンヂ の^ 斷., § は,. f 

じしん あら は 

本の 磁針 を 現して ゐる。 

2 

6 

^ A じ やう は. ^し/ せん ちゃう くう ちう み • 、4 二. 

彼等の h; 半身。 「さん • せば すち あん」 は 船長に すがった まま、 ぢ つと 空中 を a つめて ゐる。 ,り 

き やう じん ナ-か へう ヒゃぅ 4,- んナ, やう れいせ う つげ ひと つ ご * 

か 狂人に 近い 表情。 船長 はや はり 冷笑した まま、 腿, 毛 つ 動かさない。 のみなら す 又 マ ン卜ル の 



378 



4< か どくろ ひと だ ス. r- 

中から 髑髏 を 一つ 出して 見せる .. 

3 

6 

J / とり., し ひと くう すノっ の ほ: S , 

^雨が f の 1^ に^った 霞^。 i まの^から は 火取蟲 がーつ ひらひらと 格 屮へ界 つてれ く。 それ 

からお f 一一つ、 二つ、 五つ。 

4 

6 

^の ^tQI^ ぎ is^。 i¥ は 寡? dte. にきび かふき m のか is におち 滿 ちて ゐる。 

5 

6 

それ だ^ li の T」 つ。 5<^|| は SiS ^をまん でゐる うちに i の 鷲に 變 つてし まふ。 

6 . 

6 

ま cfel ^の!^ ぎ 。「さん. せば すち あん」 はや はり 颭 * にす がり、 いっか 目をつぶって ゐる C の 

, , ^ やう たくした おこ いちど せん t, やう 

みならす i;^ が 贓れ ると、 のお へ^れて しま ふ。 しかし 又 上 I を 起し、 もう 一度 船畏の 

かほ みあ 

額を昆 上げる。 



379 



岩の上に倒れてしまった「さん•せばすちぁん」のf^:^^^> |:の^^はき「ド/ぉ.へながら、 g| 一 f| の 

上の 十字架 を捉 へる。 始めは 如何にも 怯 づ怯づ と、 それから P た I? こしつ かりと。 

8 

6 

十字架 を かざした 「さん • せば すち あん」 の 乎。 

9 

6 

うし む せんちゃう じ やう はんしん せぐ ちゃう かた-ご - 6 - ,^ -of 3 I . 

後ろ を 向いた 船長の 上 や 身。 船長 は 肩 越しに 何 I か を m ひ、 先^に きちたず IkV 、- g ベる。 それ か 

しづ あごひげな 

ら靜 かに if 髯を 撫でる。 



7 

へ ほらあな ない ふ せんち-やう ほ.」 あな で う-す あ j ハ やま 、 - , 

の 洞穴の 部。 船長 はさつ さと 洞穴 を^、 薄明る い 山 みちを ド つて 來る。 船 ザて W みちの i 

景も 次第に 下へ 移つ て^る。 船長が 銜 ろから はまが hto ^^か购のぉの!^へ^ると、 ちょっと 

立ち止まって 帽を とり、 講か 見えない ものに お 時せ をす る。 

7 

生へ ほらあな ないぶ ただ こんど ぐ わ" 二 ,, 'ん , ,-- 

ひ m の 洞穴の 內部。 伍し 今度 も 外部に 面して ゐる。 しっかり 十ノ子 I 木 を艇ゲ たま ま、 ;^^:;^こ碟れ 



ほらえ な ぐ わい ぶ おもむ あさひ ひかり ほのめ 

てゐ る、 「さん • せば すち あん」。 洞穴の 外部 は 徐ろに 朝日の 光 を 仄かせ はじめる- 

2 

7 

V- ■ X / ,よ うへ かま かれ かほ ほほ うへ おもむ なみだ なが 

i めに. 4 から おろした f 石の 上の 「さん • せば すち あん」 の 額? 彼の 額 は頰の 上へ 徐ろに-奴 を 流 

ちから あさひ ひかり なか 

しはじめる、 力の ない 朝 nl の 光の 中に 

3 

7 

? I の § みち。 衡^の IT の& ちた § ^みち はおの づ か ら^ も と の や う に 黑 ぃテ H ブルに 變 つてし ま 

ふ。 テ エブルの 左に 並んで ゐ るの は スぺ イドの 一 ゃ畫 おば かり。 

4 

7 

§1n の IT のさし こんだ!^ f だは pil^ を あけて i か を. 送り m したば かりで ある。 この 部屋 

り1^のテヱブルのぉには^の|^ゃ^2」ゃトランプなど。 主人 はテ H ブルの 前に, り、 卷堙 i ふ 一 

6*. h>? h^</f よ しゅじら かほ 二う i うじん せんち 《う か は 

* ねだ をつ ける。 それから 1^ きい :1<# どす る。 isl を f 、した 主人の ® は 紅毛人の 船長と 變り はな 

, (昭和 二た ゃコ: 七: =〕 



惑 誘 



381 



******* 

こ-つき でんせつて きし 4v ざい お :5:" い に ほん てんし jg ナ うと うら .&+- り 

後記。 「さん • せば すち あん」 は 傳說的 色彩 を帶 びた 唯 一 の 日本の 天主 敎徒 である。 沛^ 和 三 

らうし ちょ に ほん お こうけ,、 わい ふくく わつ だいじ ふはつし や, T さんせ う 

郞氏著 「日本に 於け る 公 敎會の 復活」 第 卜 ル章參 ST 



332 



I 



淺草 公園 

-或 シナリオ 11 1 



あさく さ に わう もん なか つ ひ お ほち や, つちん ち や-つちん し > だい う • へ : , て.;^ た,;" , - v^..^-^ 

淺 草の 仁王門の 中に つた、 火のと もらない 大 提灯。 提灯 は 次第に 上へ あ 力り 雜 した; 5: リ 

み こ ただ おまち やう ん か ぶ き う もん .-H へ と む す*^^ は ひ- 

を 見渡 >^ やうになる。 祖し 4^ 提灯の 下部 だけ は 消え失せない。 門の 前に 飛び かふ 無數 のが ほ 

2 

かみ J< り もし J】 て ,.K 1 二い み +」 しゃう めん に わう もん み じゅもく rf なォ き 

雷 門から 縱に 見た 仲 店。 正面に はるかに 仁王門が 見える。 樹木 は 皆 枯れ木ば かり 

3 

な t せ かたが は ぐ わいた う き をと こ ひ. V り じ 一に さんさい せう ねん いつ, „ 、-, た! i"1」 1i るヽ --、 )D や、 r 

仲 店の 片側 C 外套 を 着た 男が 一 人 十一 一三 歳の 少年と 一 しょに ぶらぶら 化 をル いて ゐる 少 

ねし ちちおや て ± な とケ おもちゃ や i へ た ど ちちおや もちろん い _ せ 、うね マ 、し.^ 

に 父親の 乎 を 齦れ、 時々 玩具 屋の 前に 立ち止まった りする。 父親 は 勿論 かう 云.. - 少年 を-お々 叱 

*- れ か t し i> せう ねん わす ば うし や .7 び- 

った りしない こと はない。 が、 稀に は 彼 自身 も 少年の ゐる こと を 忘れた やうに 子屋 の:^ り 窓た 

ど を 眺めて ゐる。 



い おや-一 :^, や-;' にぐ しん 4.* ちお や , か Tc*:.*^ Jg- つ y ? -J ^ « P 

^ かう 云 ふ 親子の 上半身 e 父親 は 柳-何にも m 合 者ら し い、 き i ま g を I: ばした, そ s^d^,^ 、 と 

云 ふより-も 寧ろ 可憐な 翻 をして ゐる。 彼等の 後ろに は^ 伊." した f.f。 P はこ ちらへ 1 い C ^る。 

5 

ほノ - み- - :t^„^"?.f ちゃや みせ せう おん ■ みせ まへ た たす つ 5 ... . ;,. 一 

か; めに 兄た 或 玩具 屋の 店。 少年 はこの 店の. 前に-むんだ まま、 綱 を. 4 つたり 卜り たりす るお;;! り 

タ. る なが おもす. や みせ たか し み 』-3nT ん ふ t , ヽ 

猿 を 眺めて ゐる。 玩具 屋の 店の 巾に は 誰も 兑 えない。 がノゃの|1^:^»のぉまで。 

6 

つなつ JJ^ * つ - '- - > . 

綱 を 上った リ 下りたり して ゐる 猿し 猿 は 燕尾服の 尾 を I; れた 1^.、 シルク. ハツ 卜 を, ItM けこ か 

つな さる うし ふか やみ 

ぶって ゐる。 この 綱 や 猿 の 後 ろ は 深い 暗 の あ る ばかり。 

7 

この 玩具 屋の ある 仲 店の 片側。 猿 を 見て ゐ たお f は^に:^^ のゐ ない ことにき がっき、 きょろ 

きょろ あたり を 見 ま はし はじめる。 それから!: うに 何 かがつ け、 その t おへ, に!^ つて? r く。 

公 

ト -. i i & とこ - つし すがた ただ ひざ う、 t ; 4 つ ; 

f 父親ら しい 男の 後ろ姿 C 低し これ も 膝の 上まで。 少ゃ はこの g」 に, ひすが り、 しっかり とお 



そ ひ とら おどろ かへ をと こ かほ あいにく ゐなか もつ ちちおや , れい くん ひげ て, ノ 

の 袖を捉 へる。 驚いて ふり 返った 男の 額 は 生憎 田舍 者ら しい 父親で はない 綺麗に 口髭の ザ 人れ 

とく、 わ * じん しんし せう ねん かほ わう らい しつば う たう わく み へう じ やう しんし せう /ん 

をした、 都々 i 人らしい 紳士で ある。 少年の 顏 に往來 する 失望 ゃ當 惑に 滿 ちた 表情。 糾 十-は 少^ を 

のこ むかい せう ねん とほ かみなり もん 5 し ひ 七り...^, たす/ . 3 

殘 した まま、 さっさと 向う へ 行って しま ふ。 少年 は 遠い 雷 門 を 後ろに ぼんやり 一人 柠ん でゐる 

9 

-, ち ど ちちおや うし す 《: た ただ こんど じ や-つ はんしん せう ねん をと こ お- り^, V . ) : 

もう 一度 父親ら しい 後ろ姿 C 但し 今度 は 上半身。 少年 はこの 男に 追 ひついて 恐る恐る そレ を 

み あ かれら むか に わう もん 

見上げる。 彼等の 向う に は 仁王門。 



をと 二 まへ む か, i かれ くち- お. ** にんげん どうぶつ ち A う ほ 

この 男の 前 を 向いた 額,。 彼 は、 マスクに ロを蔽 つた、 人 問よりも、 動物に 近い 額 をして ゐる 

たに あくい かん び せう , 

佝 か 惡 意 の 感ぜられる 微笑 

み せう ねん をと こ み おく と はう ,、 たす . - ち t; お <^ f ゲた 

き^の 臂。 ダず, はこの 男 を 見. 送った まま、 途方に 暮れた やうに 佇ん-:」 ゐ る。 父親の 姿 は どち 

なが ち、 こく; n せう ねん かんが のに あて t: る 

らを 眺めても、 生 階 目に はは ひらない らしい。 少年 はちよ つと 考 へた 後、 當 どもな しに ルノき はじ 

5 

3 やう V: つ せ うぢよ ふたり かれ よ 3 

3 める。 いづれ も 洋装 をした 少女が 二人、 彼 を ふり 返った の も 知らない やうに。 



-^0^4oiil<i i , け&ぎ どの f だ 中 

に 西洋人の 人形の 首が 一 つ、 fi? かけて ■ んでゐ る。 その^の1に借:-だが|^ぉ1ひ 鶴し 

斜めに 後ろから 見た 上半身。 はおの づか、 あ i あに i つてし まふ。 のみなら すかお 

年に 話しかける。 11 

3 

wa . ^ね か とう み,^」 

I 目 金 を i 貞っ てお かけなさい。 お父さん を 見 化る には^ 1 を かける のに g リ ますから ュ。 

「5、 め び やうき ) ブ L 

一 僕の E は病氣 ではない よ。」 

4 

斜めに 見た 慰ぎ きりお、 羅は だの、 ま の i だのの, ぼ いて ゐる。 も^ 

ば:? 1 ほ ひだり おに ゆ り ,H な ;,, 、ト 1 1 一一 

桥 大き いのは 左に ある 鬼 百合のお 飾り窓の は §;rQijs おしはじめる。 E^iM の 

やうに ぼんやり, こ。 



ず i の きしに 疆を i てた g あ 避" il^^l?.-^o そのうち 

こ せゐ か、 纖 だけ ぼんやりし」 曇って しま ふ。 



^り. i の S の^^^の^。 銜ろは II である。 の&の 下に 謂れて ゐた荅 もい つか 次第 

こ?? き はじめる。 



つぼみ 



- つく 



「わたしの 美し さ を御覽 なさい。」 

まへ ざう くわ 

「だってお 前 は 造花 ぢ やない か?」 



0Q 



fimf^$ 議 f ,き i の i、 パイプな ど 2 並んだ 屮に 斜めに 札が 一枚 

M つて ゐる。 このぎ き 曰いて あるの は、 ——「1^ の P 一 Si の 門です。」 徐ろに パイプから 立ち 



..X け. C り 

口 升る BT 

00 

^ 9 



閬公 草' ほ- 



389 



けれり み み .Ar 一 まど しゃ-つめ ス せう ねん. みぎ た. r す ただ ひざ へ -:: れり なか 

煙の 滿ち充 ちた 飾り窓の 正面。 少年 はこの 右に 佇んで ゐる。 但し これ も 膝の 上まで。 煙の 中に 

は ぼんやりと 城が 三つ 浮かび はじめる。 城 は ,rlll.c,e Castles の 商標 を立體 にした ものに 近い c 



2 

ら しろ ひと しろ もん へいそつ ひとり じ! S- ン も たた ナ .》...,•」」 つ うし もん わか 

それ 等の 城の 一つ。 この 城の 門に は 兵卒が 一人 鉄 を 持って 佇んで ゐる。 その 又鐵 格子の I: の, M 

しゅろ なん ぼん 

うに は:^ 橺が 本 も そよ いで ゐる。 

2 

この 城の 門の 上。 そこには横にぃっの問にかかぅー.^^ふ文句が浮かび始める。 11 

「この 門に〃 る もの は 英雄 と な る ベ し 。」 

. ある く せう ねん si,: まへ v-.i 二 や や- キ ど なな せう ねん ,つし た せ-つ; I ん 

こちら へ * いて 來る 少年の 姿. レ 前の 煙草屋の 飾り窓 は 斜めに 少年の 後ろに 立って ゐる。 少年 は 

ちょっと ふり 返って 兑た 後、 さっさと 乂 歩いて (び つてし まふ。 

つ がね み しゅろう ないぶ しゅもく よ: れ て つな ひ おもむ かね な いち 

门 山り 線 だけ :!^ える 鐘摟 の. £ 部。 掩木は 誰かの 乎に 綱 を 引かれ、 徐ろに 鐘 を 鳴らし はじめる。 一 



ど に ど v-z ど しゅろう そと まつ き 

. 度、 二度、 三度、 11 鐘 樓の外 は 松の木ば かり。 

4 

2 

なな み しゃげ., h や みせ まと うし i きたば こ はこ つ まへ はかた にん..: a やり な". てま,、 なら 

斜めに 見た 射 擊屋の 店。 的 は 後ろに 卷 煙草の 箱 を 積み、 前に 博 多 人形 を 並べて ゐる。 v:.^^ に 並 

くうき じ う もれつ にんぎ やう ひと あ ふぎ も せいやう ヒん をん な せう ねん お お 

ん だ空氣 銃の 一列。 人形の 一 っはド レツ スを つけ、 扇 を 持った 西洋人の 女で ある。 少年 は つ 怯 

みせ くうきじゅう ひと あ ぜんぜんむ ふんべつ まと ねら しゃげき や みせ たれ 

づ この 店に は ひり、 签氣銑 を 一 つと り 上げて 全然 無分別に 的 を 狙 ふ。 射 擊屋の 店に は 誰も ゐ ない" 

せう ねん すがた ひざ うへ 

少年の 姿 は 膝の 上まで。 

5 

2 

せいや-つ ヒん をん な にんぎ やう にんぎ や- づ- しづ あ. かほ t ,- にんぎ やう 

西洋人の 女の人 形。 人形 は靜 かに 扇 を ひろげ、 すっかり 顏を隱 してし まふ。 それから この 人形 

あた た ま にんぎ やう もちろん あ ふむ た ふ に 尺 ぎ やう - つし やみ 

に 中る コルクの 彈丸。 人形 は 勿論 仰向けに 倒れる。 人形の 後ろに も 暗の あるば かり。 

2 

まへ しゃげき や みせ せう ねん またく うき じゅう あ こんど ねっしん まと ねら さんばつ し はつ ご はつ 

前の 射 擊屋の 店。 少年 は 又 i4l 氣銃 をと り 上げ、 今度 は 熱心に 的 を 狙 ふ。 三發、 四發 五發 1 

まと ひと お せう ねん し し ぎんく わ だ みせ そと い 

—しかし 的 は 一 つも 落ちない。 少年 は 跪. ぶ 跪ぶ 銀貨 を 出し、 店の 外へ ーれ つてし ま. r 



9 

3 7 

2 



鬩公 草' 7蹇 



591 



はじ ただ-つす ぐら なか し かく み なか し かく と ス でんとう 

始め は 唯雜晴 ぃ屮に 叫 角い ものの 見える ばかり。 その 中に こ の い も の は 突然 電燈 をと もし 

たと E3< え、 橫にかぅ.っ^^ふ字を浮かび上らせる。 —— 上に 「公園 六 ぼ」 下に 「夜 詰 所, T 上の は is- い 

中に 白、 下の は黑ぃ 中に 赤で ある。 - 

3 

2 

棘 場の 裘の 上部。 火のと もった 窓が 一 つ 兄え る。 まつ 直に 雨樋 をお ろした I- に はいろ いろの ボ 

スタァ の 刹 がれた」 &。 . 

9 

2 

この 前場の 裏の 下部。 少年 は そこに 佇んだ まま、 暫く は どちらへ も 行かう としない。 それから 

たか 牛. ど み あ キレ? たれ み ただた く いつび き せう ねん あし とま 

高い 窓 を 見上げる。 が、 窓に は 誰も 見えない。 唯逕 しい ブル テリアが 一 匹、 少年の 足 もと を:^, つ 

ゆ せう ねん に ほひ か み 

て 行く。 少年の 勻を g< いで 兑 ながら。 

3 

おな げ,. r- ぢ やう うら じ やうぶ ひ まど を ど こ ひとり あら は れ,, たん め した わう^、 なべ.' 

11: じ賴 場の 裏の 上部。 火のと もった 窓に は 踊り子が 一 人 現れ、 冷淡に HI の 下の 柱來を 眺める。 

がた もも ろんぎ やくく わ, T せん ため かほ せつ;? ぐ に か れに か, H 

この 姿 は 勿論 逆光線の 爲に顏 など ははつ きりと わからない。 が、 いっか 少年に 似た、 可憐な 親 



を 現して しま ふ。 ぎり 子は靜 かに 窓 を あけ、 小さい 花束 を 下に 投げる G 

3 

わ つら、, た せ 5 ねん あし ち ひ はなたば ひと お く せ- 「ねん て ひろ はなたば わう 

往來に 立った 少年の 足 もと。 小さい 花^が 一 つ 落ちて 來る。 少年の-手 はこれ を 拾 ふ。 花來 は:^ 

來を 離れる が 早い か、 いっか 茨の 朿に變 つて ゐる。 

2 

3 

黑ぃ 一 妆の揭 示 板。 掲示板 は 「北の: k、 晴」 と: ムふ字 を チヨ オタに 現して ゐ. る。 が、 それ は ぼん 

やりと なり、 「南の 風强 かる ベ し 。 雨模様」 と ーズ ふ 字に 變 つてし ま ふ 。 

力" 

4- 力-! つ ノビ * つや -っ てし ごんと した なら み まん と,、 v^i い、. 5 にメ に > み やそん と,、 わたな ベ,、 C ザ- ん 二ん どうい-み 

斜に 見た 標札 屋の 露店、 :大 慕の 下に 並んだ 見 木 は t 勺い 川 家康、 二. H 尊德、 渡 邊?? r 山、 近 藤:^ く 近 

も,? r ゑ J^A な ら い な まへ i あ さ-た な まへ か は 

松 門左衞 門な どの 名 を 並べて ゐる。 かう 云 ふ 名前 もい つの 問に か 有り 來 りの 名前に t~ つてし ま: つ 

ら へう V- つ む., a- うや く へ-.? i ちゃばたけ 

のみなら すそれ 等の 標札の 向う にかす かに んで來 る 南凤帛 …… 

4 

、ひ わか なら なん "^ん えい r わくわん いに もちろん でん A 一う かげ いく う:' いに ひだり 

池の 向う に 並んだ 何 軒 かの 映畫 館、" 池に は 勿論 電燈の 影が 幾つ ともなし に 映って ゐる 池の 左 



鬧 公で:';?? 



393 



た せう ねん ; :> や-;' はんしん i-. つねん ばう とっさ ひだ かぜ ため いに と せ- つ; 1 ん 

に 立った 少年の ヒ 半身 C 少年の 帽は 咄^の 問に 風の 爲に 池へ 飛んで しま ふ。 少年 はいろ いろあせ 

C に お ある とズ ぜ つに-,..' ナ, か へ. っト. やう 

つた 後、 こちら を 向いて 歩き はじめる。 殆ど 絶望に 近い^ 情。 . 

お 

かざ まど たう た ふ なまぐ わし ^:^ぎれハ い ゾォ ダ. U ゐ むか ひナ- 

カツ フ H の 飾り窓。 砂糖の 塔、 生菓子、 枣 藁の パイプ を 人れ た • 達 水の コップな どの 向う に 人 

い,、 らご せ-つねん .f ^ざ 4,- ど ± 入 とほ かて まど ひだり あし と 

かげが 幾つ も 動いて ゐる。 少年 はこの 飾り窓 の^へ 通りかかり、 飾り窓の 左に 足 を.. -め てし まふ。 

や-つねん 十 た ひざ ろへ . 

少年の 姿 は 膝の ヒ まで。 . 

ぐ わい ふ ふつん V うねん なんに よ ふたり ガラスど なか ゆ や/な 

この カツ フ H の 外部。 夫 :! らしい 屮 年の 男女が 二人 「砠子 戶の屮 へ は ひって 行く。 ケはマ ン卜ル 

き こ ども だ ベ や う。 あ。 

を.^;5た子供を抱ぃ てゐ る。 もりう ちに カツ フ ェ はおの づから ま はり、 コ ッ ク部屋 の 二 を 現 はして 

ベ や うら えんとつ いつ >」ん またら うどうし や ふたり -リご 

しま ふ。 コ ッ ク 部屋の 裏に は 煙突が 一 本。 そこに は乂勞 働^が- 一人 せっせと シャ ベ ル を 動かして 

ひ 七 . 

ゐる C カンテラ を 一 つ ともした まま。 

7 

3 

f, : どもい す * つへ いや-つ はんしん み .5 へ : ども こ ども h ら : び 

テ エブル の 前の 子供 椅子の 上に 上半身 を兑 せた 丄 1 の 子供」 子供 はに こに こ 笑 ひながら、 ; を;^ 



て あ こ ども うし なにみ ?ひ <1 はな ひ々 

つたり 乎を舉 げたり して ゐる。 子供の 後ろに は 何も 兄えない。 そこへ いっか ま I 藏の 花が 一 つづつ 

靜 かに 落ち はじめる。 

8 

3 

なな み じ ど, T- けいさ/. けいさんき まへ て ふ tl つつ) もす. ろん. 5.-/ な て i.: か 

斜めに 兌え る 自動 計算器。 計算器の 前に は 乎が 二つし きりなしに 動いて ゐる。 勿論 女の 乎に 途 

た ひら ひきだし ひキ だし なか 俨-に 

ひない、」 それから 絶えす, g かれる 抽斗。 抽斗の 中は錢 ばかりで ある.。 

9 

3 

まへ .ir- キ/ ど せう ねん すがた か は しば C ち せう ねん おもわ " かへ あ: ば わ 

前の カツ フ ェ の 飾^窓。 少年の 姿 も變り はない。 暫 らくの 後、 少年 は 徐ろに^り 返り、 足:: 十に 

ある く かほ とき た なに み た ij., おどろ 

こちらへ 步 いて 來る。 が、 額ば かりにた つた 時、 ちょっと 立ち どまって 何 か を 見る。 多少 驚きに 

やか へう レ- やう 

近い 表情。 



4 

ひと なか た せ あき, T ど かれ ふく なか た いつほん おび 

人だかり のまん 中に 立った 鞭り 商人 e 彼 は nJK 服 もの を ひん, げた 中に 立ち、 一本の 帶を ふりな が 

ねっしん ひと H 

ら、 熱心に 人だかりに 呼びかけて ゐる。 



かれ て —h いつぼん おび おび ぜんご さ いう ふ か 1. へ にさん ヒ やく あらに おひ も 

彼の 乎に 持った 一本の 帶。 帶は 前後左右に 振られながら、 片 はし を 二三 尺 現して ゐる。 帶の模 

やう ノ、 わく だい せく 八ん せっぺん し だい おび そご お, 

樣は廓 大した 雪片。 雪片 は 次第に ま はりながら、 くるくる 帶の 外へ も 落ち はじめる。 

や ろ てん した つ した ば あ ひとり あんく わ あた ば あ 

メリャ ス屋の 露店。 シ ャ ッ ゃズボ ン 下 を 吊った 下に 婆さんが 一 人 行火に 當 つて ゐる C 婆さんの 

*,;、 るム リ いと あ i ヒ あんく わ すそ くろねこ いっぴきと きふ、 免へ 

前に も メリ ヤス 類。 毛絲の 編み も Q も 〈父って ゐな いこと はない。 行 火の 据に は黑 猫が 一 匹 時々 前 

あし な 

足 を 嘗めて ゐる。 

3 

4 

あん,、 わ .r そ すわ くろねこ, ひだり i- うねん か はんしん み くろ W こ はじ か は 

I:;: 火の 锯に 坐って ゐる黑 猫。 左に 少年の F 半身 も 3- える。 黑猫も 始めは 變り はない。 しかしい 

つか 頭の 上に 流 蘇の 長い トルコ 帽を かぶって ゐる" 

4 

ぱっ ひと か 

「坊ちゃん、 スゥ H エタ ァを 一つお 買 ひなさい。」 

「僕 は 帽子 さへ 買へ な いんだよ。」 , 



メリャ ス屋の 露店 を 後ろに した、 疲れたら しい 少年の 上半身 C 少年 は淚を 流し はじめる。 が、 

キ- なほ たか そら み あ い. r 「ど ある 

やっと 氣を とり 直し、 高い 〈4- を兑 上げたがら、 もう 一度 こちら ヘルき はじめる。 

6 

し ゆ ふそら お ほ ほ ひと -っ く ^ X 

かすかに 星の かがやいた 夕 空。 そこへ 大きい 額が 一 つお のづ から ぼんやりと^ かんで 來る C 

.ij うねん たもお や あいじ やう なに む げん がな へう ヒ やう ほ 

は 少年の 父親ら しい。 愛情 はこ もって ゐる ものの、 何 か 無限に もの 悲しい^ 情。 しかし この 都 も 

らくの 後、 霧の やうに どこかへ 消えて しま ふ。 

7 

4 

. たて み わう らい ゃぅ;^ん うし み わう らい ある ゆ わう。 い あえ ひ .vvi に 

縱に 見た 往來。 少年 はこ ちらへ 後ろ を :3- せた まま、 この 往來 を步 いて 行く。 往來 は餘り 人通り 

うねん 5 し ある ゆ をと-一 をと- I ふ へ 人 かほ み 

はない C 少年の 後ろから 歩いて 行く ST この sf- はちよ つと 板り 返り、 マスク を かけた; ig を见 せる。 

少年 は 一度 も 後ろ を 見ない。 . 

8 

4 

なな み か-つし ど - つ,、 いへ t 、わ、. -ぶ い: t,\ じんりきしゃ V. んだ い-つし .0 と ひ .>--.*- ほ 

斜めに 見た 格子 戶 造りの 家の外 部" 家の 前に は 人力車が 三 棗 後ろ向きに 止まって ゐる。 人 迎,, ソ 

6 

9 たくさん つ C か,、 ほな よめ rs とリ なんにん ひとみ、 いつ かう し ど て しづ まへ 

3 はや はり^ 山ない。 角隱し をつ :!: た 花嫁が 一 人、 何人 かの 人々 と 一 しょに 格子 戶を 1^ かにん g 



じくり.. 1: しゃ C しん;:^ キ しゃ だい ひと C はなよめ さき はし ゆ 5 せう ゎ乂 

7 の 人力車に 乘る。 人力車 は三臺 とも 人を乘 せる と、 花嫁 を 先に 走って 1:; く。 その あとから 少年の 

9 

後ろ姿。 格子 戶の 家の? i に 立った 1 々は 勿論 少年に, もやらない。 

4 

rx Yzi ォ:^ 特御 、ん 迷 ひ 子、 」^^ノ1的映畫」と書ぃた長方形の板。 これ もこの 板 を 前後に した サ 

ン ドウ イッチ. マンに, つてし まふ。 サンド ワイ ツチ. マン は 年 をと つ てゐる もの の、 どこか 

)^- をせ いて ゐた、 都會 人らしい 紳士に 似て ゐる。 後ろ は 前よりも. k 通り は 多い、 いろいろの 店の 

並んだ 往來。 少解は そこ を 通りかかり、 サンド ウイ ツチ. マンの 配って ゐる 廣吿を 一枚 赏 つて 行 

5 

て A まへ リぅ ら" まつ, i - つん- i よいへ いひ セり . ^か ある ゆ いへい だ 

縱に il- た 前の 往來。 松葉杖 をつ いた 廢 兵が 一 人 ゆっくりと 向う ヘルいて;:;: く。 瘦兵 はいつ か駝 

,1:1 に 雷って ゐる。 が、 暫 らく 歩いて 行く うちに 叉癡 丘へ になって しま ふ 。横町の 灼には ボス 卜が 一 

单 つ。 

公 y 



398 



「急げ。 急げ。 いつ 何時 死ぬ かも 知れない。」 

2 

5 

往來の 角に 立って ゐる ポスト。 ポスト はいつ か iii になり、 I 一^の ぞ1 の^り 崖な つた « まの 

內部を 現して 見せる。 が、 見る見る 前の やうに 唯の ポストに つてし まふ。 ボス 卜の-後ろ こよ 

の あるば かり。 

3 

5 

なほ > - み,.:? やん やや, ほち,, ざ, しき で げいしゃ ふたり ある ご しんとう か,; ど で しづ 

おめに 見た 藝者屋 町。 お 座敷へ 出る 藝 者が 二人 或 御神燈 のと もった 格子 戶を fz、 i かに こちら 

、 . ^る く、 つ なん へう じ やう み ふたり 《 ^いしゃ とま つち ひか b , h I 

へ 歩いて 來る。 どちらも 何の 表情 も 見せない。 二人の 藝 者の 通りす ぎた 後、 向う へ步 いて 〔仃 く:^ 力 

f r~ す」 か A うね <ん かへ み i ,. i 气ひ 、うじ やう i- う ^> 

年の 姿 少年 はちよ つと ふり 返って 見る。 前よりも 更に 寂しい 表情。 少年 はだん だん 小さくな つ 

す J 力 た せ ひく こわ、 つ. A とり ち! , . * - 

て 行く そこ へ 向う に 立って ゐた、 の 低い 聲色遣 ひが 一 人 やはり こちらへ 步 いて 來 る。 ^ の See 

の あたりへ 近づ い た の を 見る と、 どこか 少年に きて ゐな いこと はない。 

4 

5 

te- ほ +; り-, A な わ なん ぽん さ 、、、、、、なか ザ, *•、 

大きい 針金の 環の ま はりに ぐるりと 何 本 も ぶら下げ たか もじ。 かも じの 中には 「すき \^:;^ り:; i 



園 公草淺 399 



1^ 立て」 と 書いた 札 も 下って ゐる。 これ 等の かも じ はいつ の 問に か理髮 店の 棒に 變 つてし まふ。 

棒の 後ろに も 暗の あるば かり。 

5 

5 

り はってん ぐ わい ぶ お ほ まど ガ ラ ス わか なんに よ なんにん つ 一 * 一 せ-つれん とほ . 

理髮 店の 外部。 大きい 窓 砲 子の 向う に は Ei- 女が 何人も 動いて ゐる。 少年 は そこへ 通りかかり、 

ないぶ のぞ み 

ちょっと 內部 を舰ぃ て 見る。 , 

6 

5 

あたま か をと こ よこ «- ほ しば C ち お ほ はりがね わ さ なん ぼん 、 、 

頭 を 刈って ゐる 男の 橫額。 これ も暫 らくた つた 後、 大きい 針金の 環に ぶら下げた.^ 本 かの かも 

じに 變 つてし まふ。 かも じの 中に 下った 札が 一枚。 札に は 八/度 は 「人れ 毛」 と 書いて ある。 

7 

5 

ふう で き あが び やう ゐん せ- 「メ ゾ( あゆ よ いし かいだん C ぼ ゆ 

セセ ッショ ン 風に 出來 上った 病院 C 少年 はこ ちらから 步み 寄り、 石の 階段 を 登って In く、 しか 

と なか おも またかい だ ス くだ ,、 せう ねん ひだり い のち び やう ゐん し-つ 

し戶の 中へ は ひった と 思 ふと、 すぐに 又 階段 を 下って 來る。 少年の 左へ I;: つた 後、 病院 は 1: かに 

こちらへ 近づき、 とうとう 玄關 だけにな つてし まふ。 その 砲 子戶を 押し あけて 外へ 出て 來る \ ^渡 

婦 が 一 人。 看護: i は玄關 に, i んだ まま、 何 か 遠い もの を 眺めて ゐる。 



8 

5 

ひざ - つへ く か 乂_ ご ふ りゃうて まへ ひだり て 二ん や-、 § びわ ひと ゆび 

膝の 上に 組んだ 看護 ill の 兩チ。 前にな つた 左の 手に は 婚約の 指環が 一 つ はまって ゐる。 が、 指 

は お の づ から 急に 下へ 落ちて しま ふ。 

9 

5 

わ-つ そら G-J へい と-つめい てつが, T し 4 ヌ ^f'.^ な Ni び. 

僅かに 空を殘 した コンク リ イトの 鄉。 これ もお のづ から 透明に なり、 鐵 格子の 屮に 群った 仙 匹 

V- る あら は み またへ いぜんたい あやつ にんぎ や-つ ぶ たい か は ぶ たい と ,fv いや-つ 

かの 猿 を 現して 見せる。 それから 又 辨全體 は 操り人形の 舞 臺に變 つてし まふ。 舞 裏 は.^ に^ 

しつない せいやう じん にズぎ やう ひと お お うかが ん くめん み 

じみた 室. s:。 そこに 西洋人の 人形が 一 っ怯づ if つ あたり を 窺って ゐ る.。 : 锐面を かけて ゐ るの を: 

へや し C; ぬす バと へや J* み きんこ ひと 

ると、 この i 至へ 忍び こんだ 盜 人らしい。 窒の 隅に は 金 靡が 一 つ。 . 



きんこ ヰ-いや-つじん にんぎ やう ただ にんぎ やう て あし ほそ いと なんはん 

金庫 を こじ あけて ゐ る两洋 人の 人形。 仍 しこの 人形の 手足に ついた、 細い 絲も佝 本 か ははつ き 

り, こ 見える。 



なな みまへ へいへい なに あら. ほ とほ 斗- --, わん ハげ 

斜めに 昆た 前の コンク リ イトの 堺」 街 はもう 何も 現して ゐ たい。 そこ を 通りす ぎる 少ギの 影. 



園ム にせ 淺 



401 



その あとから 今度 は 背む しの 影。 

2 

6 

まへ なな み わう らい h うらい - つへ お K いちまい かぜ ふ 

前から 斜めに 見お ろした 往來。 往來の 上に は 落ち葉が 一 枚 風に 吹かれて ま はって ゐる。 そこ へ 

さが く まへ .v:- ひ おちば 1> ち i い V- いご ぐ」 つし ;ゎ うこく かみ いもまい ひるが へ ,、 

又 舞 ひ 下って 來る 前よりも 小さい 落葉が 一枚。 i„ 取 後に 雜 誌の 廣吿 らしい 紙 も 一枚 つて 米る。 

かみ あいにく ひ さ み せいく.,; つし やうぐ わつ t*^ う い しょが *f くわつ ヒ 

紙 は 生憎 引き裂かれて ゐる らしい。 が、 はっきりと える の は 「生活、 正月 號」 と 云 ふ 仞號活 ,::M じ 

ある。 

3 

6 

お ほ とき は ぎ した き わ か み まへ いけ い t> ぶ せ-ソれん 

大きい 常 磐 木の下に ある ベンチ。 木々 の 向う に えて ゐ るの は 前の 池の 一部ら しい。 少年 は そ 

こへ 步 みより、 がっかりした やうに 腰 を かける。 それから 淚を拭 ひ はじめる。 すると 前の 背む し 

ひとり き - 一し とキ 'かぜ ゆ うし レ.; キは ぎ せう ねん & み 

が 一 人 やはりべ ンチ へ 來て腰 を かける。 時々 風に 搖れる 後ろの 常 木。 少年 はふ と^むし を:^ つ 

める。 が、 背む し は 振り返り もしない。 のみなら す懷 から 燒き字 を 出し、 がつがつして ゐる やう 

に 食 ひ はじめる。 



燒き芋 を 食つ てゐる 背む しの 顏 C 

5 

6 

まへ とき は ぎ せ やい もく せ ,つねん た あ 力 

前の 常 磐 木の かげに あるべ ンチ。 背む し はや はり 燒き竿 を 食って ゐる。 少年 はやつ と 立ち 卜; り 

あたま た ある ゆ 

頭 を 垂れて どこかへ 步 いて 行く。 

6 

6 

ななう へみ いたす うへ が 支ぐ に ひと C こ I 

斜めに 上から 見お ろした ベ ンチ。 板 を i^J, かした ベ ンチの 上に は 慕 口が 一 っ殘 つて ゐる。 すると 

だれ て ひと がまぐち あ 

誰かの 手が 一 つ そっと その 募 口 をと り 上げて しま ふ。 

7 

6 

まへ とき は ぎ ただ こんど なな ■ ラパ » ,,> -ひソ -り、 

前の 常 木の かげに あるべ ンチ。 但し 今度 は 斜めにな つて ゐる。 ベ ンチの 上に は 背む しが 一 人 

まぐち なか しら せ さ いう i 一 なんにん あ <i, は 

墓 口の 中を檢 ベて ゐる。 そのうちに いっか 北 n むしの 左右に 北::: むしが 何人も 現れ はじめ とうとう 

うへ せ ス>, れら ..パ な , , ム., なね JT 、し、/) 

しま ひに はべ ンチの 上 は 背む しばかり になって しま ふ。 しかも 彼等 は 同じ やうに それぞれ 熱、 も 

がまぐち なか しら だハひ なに はな あ 

に 慕 口の 中を撿 ベて ゐる。 互に 何 か 話し合 ひながら。 



403 



i::! 眞屋の 飾り窓。 男女の i ぉ眞が 何牧も それぞれ 雜緣に は ひって 懸 つて ゐる。 が、 それ IjlT のお 

の 額 もい つか 老人に 變 つてし まふ。 しかし その 中に たった 一枚、 フロック. コ オトに つけ 

あごひげ らう じん はんしん か は ただ か ま ま まへ .4.1 に ま 

た、 顋 髭の ある 老人の 半身 だけ は變ら ない。 唯 その 1^ はいつ の 問に か 前の 背む しの 繊 になって ゐ 

る。 

9 

6 

よこ み くわん のんだ う せう ねん した ある ゆ くわん C ん だう 、へ みか づき ひと 

横から 見た 觀音 堂。 少年;!^その下を歩ぃ て!;;:く。 觀昔 堂の 上に は 三日月が 「つ。 



7 

く 丄乂の う しゃう めん いちぶ .> ただ - ごびら まへ らい t い なんに.? ひ. v..5i- せ-つ," ん 

觀音 堂の 正面の 一 I。 但し 1% はし まって ゐる。 その前に禮1^^してゐる仞人かの人々。 少年 は そ 

こへ 歩みより、 こちらへ 後ろ を 見せた まま、 ちょっと 觀 一^::: 堂 を 仰いで 見る。 それから 突然 こちら 

む なな ある い 

を 向き、 さっさと 斜めに 步 いて 行って しま ふ。 

7 

な、 う 〈 „ み お ほ やう はう けい て うづ ばち :„- しゃく なん ぼん う みづ S 

斜めに 上から 見お ろした, 大きい 長方形の 手水 鉢。 柄杓が 何 本 も 浮かんだ 水に は^かげ もちら 

, J またう つ く せう すん き せぅ ねん かほ 

ちら 映って ゐる。 そこへ 又 映って 來る、 惟! £ し 切った 少年の 顔。 



お ほ いしどうろう か ぶ せう おん こし り や-つて か は かく な 

大きい 石燈 籠の 下部。 少年 は そこに 腰をおろし、 兩 手に 顏を隱 して 泣き はじめる。 

3 

7 

まへ いしどうろう か ぶ うし をと こ ひとり たたす なに みみ かた も 

前の 石燈 籠の 下部の 後ろ。 男が 一人 佇んだ まま、 何 かに.: t を 傾けて ゐる。 

4 

7 

をと こ ヒ やう はんしん もっと かほ む しづ ふ かへ み 

この の 上半身。 尤も 顔 だけ はこ ちら を 向いて ゐ ない。 が、 靜 かに 振り返つ たの を:: ると マ 

まへ をと-一 かほ しばら C ち せう ねん .^ん おや か は 

スクを かけた 前の 男で ある。 のみなら すその 額 も 暫くの 後、 少年の 父親に 變 つてし まふ。 

5 

7 

ま/ 1 しどうろ- リ ヒ やうぶ ぃしど^0ろぅ はしら G こ ほのほ も あが ほのほ 

前の 石燈 籠の 上部。 石 燈籠は 柱を殘 した まま、 おの づ から 炎に なって 燃え 上って しま ふ。 炎の 

し 一 こび のち ひら はじ f、 はな ゾ つりん キく はな いしとう ろう かさ お ほ 

下, 火に なった 後、 そこに開き^£める菊の花が 一 輪」 菊の花 は石燈 籠の 笠よりも 大きい。 

6 • 

7 

まへ > しど- つろう か ぶ せう ねん まへ か は ばう ま ふか じゅんさ ひとり あゆ 

前の 石燈 籠の 下部。 少年 は 前と 變り はない。 そこ へ帽を H: 深に かぶった 巡 杏が 一 人步 みより、 

せう ねぐ かた て せう ねん おどろ た あが なに じゅんさ はなし じゅんさ て ひ 

少年の 肩へ 乎 を かける.〕 少年 は 驚いて 立ち上り、 何 か 巡査と, llii をす る。 それから 巡^に ザ を 引か 



問 氧淺 



<C5 



ノ しつ 丄,, か ある ゆ 

れた まま、 靜 かに 向う へ步 いて 行く." 



まへ いしどうろう か ふ うし こ. ど 

前 の 石燈籠 の 下部の 後ろ 今度 は もう 誰も ゐな い 。 

00 

7 

まへ に わう もん お ほぢ や- 「ちん お ほち やう ちん し だい うへ まへ なかみせ み わた ,: さ 

前の 仁王門の 大 提灯。 大 提灯 は 次第に 上へ あがり、 前の やうに 仲 店 を 見渡す やうになる" 仙し 

お ほち やうす, ん か ふ き う 

大 提灯の 下部 だけ は 消え失せない。 

(L.^祁ニ年三H:十W::2) 



403 



罄 



I 



こ をつ レ J せんばい あた あるじつ f ふか れ いぢおう けつ: んひ ろうしき つう ナ ,- もら とき ちゃう どっと V,- キ- で 

たね子 は 夫 の 先 號- に 當る或 赏業象 の 令孃 の 結婚 披露 式 の 通知 を賀 つ た 時、 丁度 勤め先 へ 出か か 

. をつ と ねっしん はな 

つた 夫に か う 熱心 に 話し かけ た。 

r あ た しも 出なければ 惡 いでせ うか?」 

わる 

「それ は惡 いさ c」 

をつ と むす かゲみ なか こ へんじ もっと た/す うへ た かがみ うつ 

夫 は タイ を 結びながら、 鏡の 中 の た ね 子 に 返 事 を した。 尤も それ は ^筍 の 上に 立 て た 鏡に 映つ 

くわん けいじ やう こ .^IVJ こ まゆ 〈スじ ちか 

て ゐた關 係 上、 たね子より も 寧 ろ たね子の 眉に 返事 をした- —— の に 近い も の ^つた C 

「だつ て 帝國 ホテルで や るんで せう ? 」 , 

「帝 國ホテ ル 11 か?」 

-ご ぞんじ 

「あら、 御存知なかった の?」 

8 

4 「うん、 ::: おい、 チ ョ ツキ!」 



■ 憂の 子ね た 



4C9 



: 1/ こ," そ あ いちど ひ ろうしき はなし だ 

たね子 は 〈1^ いで チ ョ ツキ をと り 上げ、 もう 一 度 この 披露 式の 話 をし 出した。 

ていこく やうし よく 

「帝國 ホテル ぢ や 洋食 でせ う?」 

_ あた まへ い 

一 當り 前な こ と を , つて ゐる 。」 

こま 

「それ だから あたし は 困って しま ふ。」 . . 

「なぜ?」 

やうし よく た ち ど つ * そ 

「なぜって ::: あたし は 洋食の 食べ かた を 一 度も敎 はった こと はな いんです も 2 ヽ」 

「誰でも 敎 はったり 佝 かする もの か! …… 」 

をつ と うはぎ はや む ざう さ はる なか をれば う たぐす うへ 

夫 は 上着 を ひっかけ るが 早い か、 無造作に 春の 中折帽 を かぶった。 それから ちょっと I: 卜^の 上 

ひ ろうしき つうち め とほ なん しぐ わつ ヒ ふろくん ち 

の 披露 式の 通知に 目を通し 「佝 だ、 叫 月の 十六 日ぢ やない か?」 と 言った。 

「そり や 十六 H だって 十七 日 だって …… 」 

「だから さ、 まだ 三 口 も ある。 そのうちに 古 をし ろと ず ふんだ。」 . 

「ぢゃ あなた、 あしたの-日曜に でもき つと どこか へ つれて 〔n つて: 卜さる!」 

をつ と なん い くわいし や でい こ 一 どっと み おく 

しかし 夫 は 何とも 言 はすに さっさと 會 社へ 出て 行って しまった。 たね子 は 夫 を: 3-. 送りながら、 



いうう つ か C ちょ か f だぐ あ ひ てつだ たし 

ち よ つ と憂靈 になら すに は ゐられ なかった。 それ は 彼女の 體の 具合 もチ傳 つて ゐた こ と は 確か だ 

こ ども かのちよ • なが ひ ば ゴ,- まへ しんぶん あ なに い & ヒ 

つた。 子供の ない 彼女 は ひとりに なると、 長火鉢の 前の 新^ をと り 上げ、 何 かさう 云 ふ 記事 はな 

いす-/,.. -らん ぐ わい め とほ け ふ こ Z だ やうし よく た い 

いかと 一 々額 外へ も: ni を 通した。 が 、「今日の 獻 立て」 はあって も、 洋食の 食べ かたな どと- ムふも 

やうし よく た い か Q ちょ ぢ よがく,;" う けうく わしょ 

のはなかった。 洋食の 食べ かたな どと 云 ふ もの は? —— 彼女 はふと 女學 校の 敎科 書に そんな こと 

か かん さっそく ようだんす ひキ」 だし ふる か せいどく ほん にさつ だ ら ほん 

も 書いて あった やうに 感じ、 早速 用箪笥の 抽斗から 古い 家政 讀本 をニ册 出した。 それ 等の 本 はい 

i て あと すす また あ,: そ くわ こ に ほひ はな こ 

つの 間に か 手 すれの 痕 さへ 煤けて ゐた。 のみなら す 又 (や はれない 過去の 勻を 放って ゐた。 たね子 

ほそ ひざ うへ ら ほん ひら い せう せつ よ とき いっしゃ うけんめ い もくじ たと 

は 細い 膝の 上に それ 等の 本 を 開 いたま ま、 どう 云 ふ 小 說を讀 む 時よりも 一 生 懸命に 01 次 を 迪 つて 

行った」 . 

も め n; およ あさおりもの せんたく まへ か は た び チエ ブル か 1^ 

「木綿 及び 麻織物 洗濯。 ハンケ チ、 前掛、 足袋、 食卓 掛、 ナプキン、 レ H ス、 ::: 

し も たたみ じゅうたん 

「敷物。 墨、 絨毯、 リノ リヮ ム、 コ才ク 力 ァぺト :… : 

だいどころ ようぐ たうし き るん ガ ラ スき るゐ きんぎんせ いき ぐ 

「臺所 ,具。 陶磁器 類、 砲 子 器 類、 金銀 製 器具 …… 」 

いっさつ ほん しつば う -J いっさつ ほん しら だ 

1 冊の 本に 失望した たね子 はもう 一 冊の 本 を檢べ 出した。 



1 はうた いは ふ まき ぢく おび i うた いぎれ 

4 r 繃帶 法。 卷 軸帶、 繊帶 巾、 …… 



懲 憂の 7 "ねた 411 



し つさん せいじ い ふく さんしつ さんぐ 

「出 產。 生兒の 衣服、 康窒、 產具 …… 

しう に; I およ ししゅつ らう ぎん りし き げ ふしよ とく 

r 收入 及び 支出。 勞銀、 利子、 企类 所得 …… 

いっか くわん り か ふう し はふ こころえ きんべん せっけん かう さい し! 5 み 

「一 家の 管理。 家風、 主^の 心得、 勤勉と 節儉、 交際、 趣味、 …… 」 

こ ほん な だ お 5, も 1 乂 ケゃ うだい まへ かみ ゆ た *, ; 1; ン 

たね子 はがつ かりして 本 を 投げ出し、 大きい 樅の 鍺臺の 前へ 髮を結 ひに 立って 行った。 が、 泎 

食の 食べ かた だけ はどうしても i 浙に かかって ならなかった.」 …… 

つぎ ごご をつ と こ しス ばい み かのちよ ぎ/ ざ うら 4め る 

その 次の 午後、 夫 はたね 子の 心配 を 1:^ かね、 わざわざ 彼女 を 銀座の 裏の 或 レス 卜 オランへ つれ 

て 〔打った。 たね子 はテ エブルに 向か ひながら、 まづ そこに はぎ 等 以外に 誰も ゐな いのに 安心した。 

みせ おも をつ と えい々. やう ふ けいき かん 

しかし こ の 店 もはやらない のかと 思 ふと、 夫の ポオ ナス にも 影響した 不景氣 を 感ぜす に は ゐられ 

なかった。 ノ 

キ- どく . やく 

の 毒 だ わね、 こんなにお 客が なくって は。」 

「常談 言 つち やい けない。 こっち はお 客 の な い 時 問 を 選つ て來 たんだ。」 

それから 夫 は ナイフ ゃフォ オタ をと り 上げ、 洋食の 食べ かた を敎へ 出した。 それ も亦赏 は必し 

も 確かで はない のに 違 ひなかった" が、 彼 は アスパラガスに 一 々ナイフ をん れ ながら、 鬼に 角た 



412 



こ をし かれ ぜんち しき かたむ かのちよ もちろんね つ しん さいご 

ね 子を敎 へる のに 彼の 全智 識を倾 けて ゐた。 彼女 も 勿論 熱心だった。 しかし は 取 後に オレン ヂ だの 

で き とき い くだもの ね だん かんが わけ ゆ 

バ ナナ だのの 出て 來た 時にはお のづ からかう 云 ふ 菜 物の 値段 を考 へない 訣には 行 かなかった。 

かれら ぎんざ うら ある い をつ と ぎむ はた i ん ぞく 4- ん 

彼等 はこの レスト オラン を あとに 銀座の 裘 を 歩 い て I;;: つた。 夫 はやつ と 義務 を 5^ した: f 足 を 

こ こころ なか なんど つか の 

じて ゐる らしかった。 が、 たね子 は 心の 巾に 何度も フォ オタの 使 ひかた だの カツ フ H の 飲み かた 

おも かへ まんいち ま ちが とき い び やうて き ふ あん かん ぎん 

だのと 思 ひ 返して ゐた。 のみなら す 萬 一 間違った 時には 11 と 云 ふ 病的な 不安 も 感じて ゐた。 銀 

ざ うら し-つ うへ おひ しづ はる 

座の 裏は靜 かだった。 ァ スフ ァ ルトの 上へ 落ちた ほ あし もや はり 靜 かに 春めかし かった。 しかし 

こ をつ と ことば い かげん へんじ あた おく が あし はこ 

たね子 は 夫の 言葉に 好い加減な 返事 を與 へながら、 遲れ 勝ちに 足 を 運んで ゐた C …… 

ていこく なか もちろん かの ぢょ はじ -I もんぷく き をつ と まへ せま かい 

帝國 ホテルの 屮へは ひるの は 勿論 彼女に は 始めて だった。 たね子 は 紋服 を 着た 夫 を 前に 狭い^ 

だん G ぼ お ほや いし れんぐ わ もち ないぶ なに ふ き み ちか かん かべ 

段 を 登りながら、 大谷石 や 谏瓦を 用 ひた: S: 部に 何 か無氣 味に 近い もの を 感じた。 のみなら す 壁 を 

つた はし お ほ いつび き ねナみ かん か, じっさいかん か G ちょ をつ と 

傳 はって 走る、 大きい 一 匹の 1^ さへ 感じた。 感じた? —— それ は實 tT 感じた」 だった。 彼女 は 夫 

たもと ひ ね卞み い をつ と かへ たう ゎメ へう じ やう う か 

の袂を 引き T あら、 あなた、 が」 と 首った e が、 夫 はふり 返る と、 ちょっと 當惑 らしい^ 情 を^ 

き 二た をつ とい まへ J ぶ 

ベ、 「どこに? I 凇 の せ ゐ だ よ」 と 答 へたば かりだった C たね子 は 夫に か う 言 はれない 前 に も 彼 

ぢょ V- くかく き • き *:す,、,^-0:ぢょ しん はい わ 

女 の 覺 に 氣づ いて ゐた。 し か. し 氣づ い て ゐれ ばゐる だけ 益々 彼女の 神經 にこ だはらない 訣には 



it 憂の 子ね た 413 



行かなかった。 

彼等 はテ H ブルの 隅に ゆ: り、 ナイフ ゃフォ オタ を 動かし 出した。 たね子 は し を かけた^, § 

にも 時々 目 を 注いで ゐた。 が、 それよりも 氣 がかり だった の は 勿論^の 上の 料理だった。 g あは 

くち I 力ら だ v う し ス:::!, バ る かん と とき 上 よう く 

パ ンをロ へ 入れる のに も體 中の 神經 の. 震へ るの を 感じた。 まして ナイフ を 落した 時には こ暮 

れ るより 外はなかった。 けれども 晩餐 は 幸 ひに も 徐ろに:: 取 後に 近づいて I,i つた。 たね f は 皿の.!^ 

の サラド を: Hi- た 時、 「サ ラド のつ いた ものの 屮:: て來た 時には 食^も おしま ひに なった と m 心へ」 と il 一 

をつ と こと ギひ おも だ いき おも こスど シ." ン バン か-つ々, h .: 

ふ 夫の 言葉 を E 心 ひ 出した。 しかし やっと ひとまつ いたと 思 ふと、 今度 は 三 鞭 洒の杯 を げて 立ち 

上らなければ ならなかった" それ はこの 晩餐の 屮 でも I 取 も 苦しい 何分 かだった。 彼女 は if つ 怯づ 

い す にな め はち ぶん さ かづ. あ せ ぼれ ふる だ かん 

子 を 離れ、 0: 八 分に 杯 を さし 上げた まま、 いっか ^^せ さへ 靈へ屮 Z したの を 感じた。 

かれら ある でんしゃ しゅうてん ほそ よこち や, C ネが い をつ と か なりよ こ 

彼等 は 或: の終點 から 細い 横町 を 曲って 行った。 夫 は 可也 醉 つて ゐ るら しかった。 たね子 は 

をつ と あし な ぎ み なに ,, ち ォ, かれら でん とう 

夫の 足 もとに (湫 をつ けながら はしゃぎ 氣 味に 何かと 口 を 利いたり した。 そのうちに 彼等 は: m 燈の 

明るい 「食堂」 の 前へ 通りかかった。 そこに は シャツ 1 枚.. の 男が 一 人 「食堂」 の 女中と ふざけながら、 

ユ-ん 一-こ、 さかな "-け もちろ Z かリ ちょ め み かのちよ 

や 一!: を 看に 酒 を 飲んで ゐた C それ は 勿論 彼女の 目に はちら りと 见ぇ たばかりだった。 が、 彼女 は 



をと 二 , ぶしょうひげ C をと こ けいべつ ゆ どつ じ i たし ぜ,; 

この を 11 この 無精髭 を仲ぱ した 男 を!! 蔑し ない 訣には 行かなかった。 同時に 乂 自然と 彼の 

じ I, う うらや わけ ゆ しょ V 、だう .V 一 ま 二 あと ゝ、 ゝゃ 

自由 を 羨まない 訣 にも 行かなかった。 こ の 「食堂」 を 通り越した 後はぢ きにし もた {i^ ばかりに なつ 

た。 從 つて あたり も 暗くな り はじめた。 たね ぞ はかう 「ム ふ 夜の 中に 何 か 木の芽の 勻 ふの を 感じ、 

, かのちよ う ゐなか おも だ ご じふ ゑん ざいけん に *r ん i いか 

い つ 力 しみじみと 彼女の 生まれた 田舍の こと を 思 ひ 屮:: して ゐた。 五十 圓の倩 券 を; : 三枚 inx つて 

ふ どうさん ふ とく- i±, おや 

「これで も 不動産 (!) が 殖えた の だからね」 などと 得意に なって ゐた 母親の こと も。 …… 

カギ ひ > lijly* めう げんき- , かほ こ . をつ と はな をつ と かがみ まへ 

次の 日の + お、 妙に 元氣 のない 額 をした たね子 はかう 夫に 話しかけた。 夫 はや はり 鏡の 前に タイ 

を 結んで ゐる 所だった。 

「あなた、 けさの 新聞 を讀ん で?」 

「うん。」 

ほ n: ヒょ べんた ゲゃ わ すめ き 1., が い キじ よ 

「本 所 かど こかの お 辨當屋 の 娘の 氣違 ひ に な つたと 云 ふ 記^ を 蘭ん で?」 , 

はつ 今やう なん 

「發 狂した? 何で?」 

をつ と うで とほ かがみ なか こめう つ こい こ 

夫 は チョッキへ 腕 を 通しながら、 鏡の 中の たね子へ 目 を 移した。 たね子と 云 ふよりも たね子の 



it 憂の 子ね た 415 



「職工 か 何 かに キ ス された からです つ て。」 . 

ぐら ゐ .Ho 今, やう 

「そんな こ と 位で も發 狂す る もの かな。」 

「そり やする わ。 すると 思った わ。 あた しもゆう ベ は 怖い 夢 を た。 …… 」 

S め 二 とし 

一 どんなず, を? この タイ はも ラ八: '年ぎ り だね。」 

「何 か大 にんな 問 遠 ひ をして ね、 . 1 -佝 をした の だか わからな いのよ。 何 かお へんな ひ をし 

き しゃ せんろ ゆめ 今 しゃ き 

て 汽車の 線路へ とびこんだ 夢な の。 そこへ 汽車が 來 たもの だから、 11 」 

「礫 かれた と 思ったら、 目を醒 ましたの だら う。」 

を-つと ,p はぎ、 はる なか やれば う かがみ わか む r 

夫 はもう 上衣 を ひっかけ、 春の 中折帽 を かぶって ゐた。 が、 まだ 鋭に 向った まま、 クイの:^ び 

かた を氣 にして ゐた。 - 

「いいえ、 礫 かれて しまつてから も、 夢の中ではちゃんと^!^ざてゐるの。 唯^ は 滅茶滅茶 になつ 

4? にげ せんろ C 二 こ ざ/? ち やうし じく ヒ f 

て 眉毛 だけ 線路に 殘 つて ゐ るの だけれ ども、 …… やっぱり こ. の 二三 日 洋食の 食べ かたばかり:; i| に 

して ゐ たせ ゐ ね。」 

「さう かも 知れない。」 



こ をつ と み おく なか ひと 1 ごと はな 

たね子 は 夫 を 見送りながら、 半ば 獨り 語の やうに 話しつ づけた。 

お ほ なに 

「もうゆうべ 大 しくじり をしたら、 あたしで も 何 をした かわからない の だから。」 

をつ と なん い くわいし や で い « こ 

しかし 夫 は 何とも 言 はすに さっさと 會 社へ 屮 I て 行って しまった。 たね子 はやつ とひと りになる 

ひ なが ひ ばち まへ すわ きふす ゆ の ばんちゃ G 

と、 その :n も 長火鉢の 前に 坐り、 与- 須の 飲みに ついであった、 ぬるい 番茶 を飮 むこと にした。 

か C ぢょ こころ なにお つ うしな がっちょ 卞へ しんぶん はな ざ か ^^'への しゃしん 

が、 彼女の 心 もち は 何 か 落ち着き を 失って ゐた。 彼女の. 前にあった 新聞 は 花盛りの 上野の.: を 

い ふ C ぢょ しゃしん み いたど ば * んケ "や の ばんちゃ 

入れて ゐた。 彼女 は ぼんやり この 寫眞を 見ながら、 もう 丁度^ 茶を飮 まう とした。 すると 桥茶は 

ま .*^-<:: ら に う .<w かのちよ 4- ゆ 

いつの 問に か 雲母に 似た あぶら を 浮かせて ゐた。 しかも それ は氣 のせ ゐか、 彼女の に そっくり 

だった。 

r 」 

こ ほほ づゑ かみ ゆ げんき おこ にんち や なが 

たね子 は顿杖 をつ いたま ま、 髮を結 ふ元氣 さへ 起ら すに ぢ つと 番茶ば かり 眺めて ゐた …… 

(昭和 二 年 三月 二十 八 =0 

6 



^ - J -, こ- f ん, N; 、わん ねんしぐ わつ に じ .ブ、 にに お ほ マ^ ぜぃ なか な し 1 ノ - - ^w^.^ . 

の が の あった の は ik 和 元年 SI:^ 一 一十 九 日 だった。 大阪 勢の 中で も 名 を. 5- ら れんお 降 も f 

.^s. ^1^^1绍^^8きはぃづれもこの1^-のためにがち^した。 i に sift 也 之 は 金 

c4;y りおし 1 こゼ S おの 化 を ふりかざし、 槍の まの 折れる まで 戰 つた 後、 體 井の W の 巾に 打ち 

死した。 - 

. , ^y .> -フ、 .A れら ぐん. ザ-ひ う や ふ あさ じ まっかみ なが あきら お ほつ 1 しょとくが はい; や. 厂 たたか し ハウ., リ 

ョゼ fni の气 のき、 銜 等の 軍 きハ を 打ち破った 淺野 $ 馬 守 長 辱 は 大御所 德川. 冢 嵌に 戰 ひの 勝利 

あじた ギ Issm を i;^ いた。 (欽 i は は? お iW の f にと どまって ゐた。 それ は 

&^;^^^^;^11から.^_^るのを1::ったギ の^をせ める ためだった. この 使に 立った の は 

あきら ケ らい せ ふ-そつべ も 一 てら か fv- まの す" ; 二,' り』、 ) 1 J 

默宗 兵衞、 寺 川 左 M 助の 一; 人だった。 

、き 歡^ は sf^^^si に^じ、 13 の m を しょうと した。 純 は 次ぎの i に 返いて に^ 



M 千古 



419 



fj^ > ;„K 一 なほ はき くび ないけん ふた うへ i んじ ^ さら i たや ね ふ のち 

桥の盖 をと り、 直 之の 首を內 見した。 それから 蓋の 上に 卍 を 書き、 M に 父 矢の 根 を 伏せた 後、 か 

う 家康に 返事 をした。 

なほ はふ- くび しょちう *^ り ほほ /、び し.; -V- しう ず .H な H 

「直 之 の 首 は 暴 中 の 折 か ら、 顿た れ^ になって を り ます。 從 つ て ,2^ ぐ湫 も^だし うご ざ い ます ゆ ゑ 、 

御 檢分は いかがで ございませ うか?」 

I 厂 やす しょ, つち 

しかし 家康は 知し なかった。 

「誰も 死んだ 上 は變り はない。 に I: これへ 持って 參る やうに。」 

ま, すみ またつ ま しり 1て ほ ろ , 、び を サ ま: すつ- • 

正 純 は 又 次ぎの へ 退き、 母 布 を かけた^ 福 を 前に いつまでも ぢ つと 坐 つ 一 」 ゐ た。 

「¥ うせぬ か。」 、 

いへやす つ ま 二 ゑ も. ん しうよ 二十 か か ち ばス だん る; も Z なほ S き てんか 

象:^ は 次ぎの 問 へ 變を かけた。 遠 州 橫須賀 の徒士 の も の だ つ た」:^ M 阐右衞 門 直 之 はい つ か大 下に 

名 を 知られた 物 :1 の 一人に 數 へられて ゐた。 のみなら す 定廢の 妾お 万の 方 も 彼女 の^んだ 賴宣の 

ため いちじ . かれ とし にひゃく りゃう かね がふり よく さいご なほ ゆき ぶ げぃ ほか だいり ゆう やしゃ-つ ゑ か 

爲に 一 時 は 彼に 年 ごとに 一 一 百 雨の 金 を 合力して ゐ た.) 1: 取 後に 旌之 は武 f 一の 外に も. ^龍 和-: の會下 

さん いも じ ふ り ふ みち を ざ いへやす なほ ゆ 今 く * ひ ヒ つけん おも かなに 

に參 じて 一 字不 立の 道 を 修めて ゐ た"〕 率 娘の かう いふ 直 之の j= を實撿 したいと 思った の も必す し 

も 偶然で はない のだった。 …… . 



i さすみ へんじ つま ひか なる. て はい. V つし や-つ 4V- な パどゐ お ほん 

しかし 正 純 は 返事 をせ すに、 ゃはり次ぎの^^に控へ てゐた成瀬华人正正成ゃ土井人炊:汕^;^-^^へ • 

問 はす 語りに 話しかけた。 

「1^ ぎ, と 申す も の は 年 を と るに 從っ て 情ば かり!: くな る ものと 聞い て を り ます。 人 軒 所 ほどの 

^ ^ しも-^ す こ か は まさ すみ ! Sh: や 二 じ J 

i;, ュ収も わ、 はりこれ だけ は 下々 の ものと 少しもお 變り なさり ませぬ。 正 純 も 弓矢の 故實 たけ は耶カ 

な, H ゆ,, くび ひと くび め みひら _ 、一,, L —" - - 7,〉 

わき まへ たつ もりで をり ます。 直 之の 首 は 一 っ贯 でも あり、 目 を 見^いて をれば こそ 锅. を 

お 断 おし ゼげ ました。 それ を强 ひて お 目通りへ 持つ て 參 れ と 御意な さ る の は その 釘い 設據で は 

ございませぬ か?」 

^ 爭は i^ii の 襖趑し に 正 純 の 言葉 を 聞い た 後、 もちろん 「一度と 直 之 の 首 を 實檢し よ うし」 は 〈"り は 

たかった。 

二 

すると II じヨ ips の 一が、 ^ygli 脆 iK? の^ &に Si し i ひに なって ゐた 女が 一人 俄に; S 狂つ 

さナ だ かつぢよ さんじ ふ 1 二 ち や な や/な 

たやう に^ ひ 出した。 彼女 はやつ と 三十 を 越した、 古 千 星と いふ 名の, だった 



尾 千古 



421 



^ス だん ゑ もん さむら ひ くび お ほご しょ じっけん そな それがし ひとて たいしゃう 

ni^ 團 右衛門 ほどの 侍の 首 も 大御所の 實檢に は 具 へ をらぬ か? 某 も 一 手の 大將 だった もの を。 

は-つか う うへ かなら たた 

かう い ふ 辱し め を 受けた 上 は必す 祟り をせ すに はおかぬ ぞ、、 …… 」 

こ ち や さけ たび くう ちう を ど あが また さ いう なんに よ 

古 干屋は つづけさ まに 叫びながら、 その 度に 空中へ 踊り 上らう とした。 それ は 又 左右の 男女た 

ちから ほ とん おさ で き す さま こ ち や さは ご ゑ . ^れら か cr.- よ 

ちの 力 も 殆ど 抑へ る ことの 出來 ない ものだった。 凄じい 古 千屋の 叫び 聲は もちろん、 彼等の 彼女 

ひ.^ -ナ V- わ ひと ちが 

を引据 ゑようと する 騒ぎ も 一 かたならない のに 遠 ひなかった C 

井 化の 隙 屋の騷 がしい こと はおの づ から 德 川家康 の 耳に も は ひらない 訣には 行かなかった。 の 

なほた か いへやす えつ こちゃ ■ なほ ゆき あくり やう Q うつ ため たれ みなお そ はな 

みならす 直 孝 は 家康に 謁し、 古千屋に直之の惡靈の乘り移った爲に誰もi^:恐れてゐることを話し 

、 、一 

なほ ゆき うら ふ し ぎ さっそく じっけん 

「直 之 の怨む の も 不思議 はない 。 で は 早速 實檢 しょう ピ 

いへやす おほら ふそ,、 ひかり なか ことば くだ 

象康は 大蠟燭 の 光の 中に かう きっぱり 言葉 を 下した。 

よ に でう しろ ひろま なほ ゆき くぴ じっけん ひるま かへ いへやす 

夜 ふけの ニ條の 城の 廣問 に 直 之 の 首 を 赏檢す るの は晝 問よりも 反っても の ものし かった。 { 次:^ 

ちゃいろ ± おり き したくく はかま しき ど ほ なほ ゆき くび じっけん えたく び さ いう 

は 茶色の 羽織 を 着、 ド 括りの 祷を つけた まま、 式 通りに 直 之の 首 を實檢 した" その 乂 首の 左右に 

ぐ そく はたもと ふたり た ち つか て いへ わす じっけん あ ひだ くび め そそ 

は 具足 をつ けた 旗本が 一 一人 いづれ も 太刀の 柄に 手 を かけ、 家康 の實檢 する 問はぢ つと 首へ 目 を: ぼ 



な は ゆき く ほほ く r しゃくどう/つ お ぅヽ 5 くだ , つ-ダム 、 

いで ゐた" 直 之の 首は頻 たれ 首ではなかった。 が、 赤銅色 を帶 びた 上、 本 多 正 純の いった やうに 

お ほ りゃうがん み ひら 

大きい 兩眼を 見 11 いて ゐた" 

「これで 墙團 右衛門 も 定めし 本が If: で ございませう。」 

はたもと ひとり よこた じん も J もん い いへやす いんれい 

旗本の 一 人、 11 橫田甚 右衛門 はかう 言って 家康に 一 禮 した。 

いへやす うな づ なん ことば こた なほた か よ よ 

しかし 家康は 頷いた ぎり、 何とも この 言葉に 答へ なかった。 のみなら す 直 求 を 呼び寄せ ると、 

かれ みみ くち をん な すじ やう しら 1 ご幺 J ハれ めい. K- い 

彼の. 斗 へ 口をつける やうに し、 「その 女の 素姓 だけ は檢べ ておけよ」 と 小聲に 彼に 命令した. レ 

いへやす ヒ つ!.: ん はなし • ゐ い ぢスゃ つ た -- -- ちゃ 

家康 の實檢 をす ました 話 はもち ろん 井 5- の 陣屋に も傳 はって 來 すに は ゐ なかった C 古 r 屋は 二 

はなし みみ まん まう KM んまぅ こも I しばら せう う つか 

の 話 を 耳に する と 、「本望、 本望」 と 聲 を あげ、 暫く 微笑を浮かべて ゐた。 それから いかにも 疲れ は 

てた やうに 深い 眠りに 沈んで 〔打った。 井伊の 陣屋の 男女た ち はやつ と 安 の m 心 ひ をした。 實際 十:: 

ちゃ をと 二 ふと -row c;c- し た き み わる す.' が 

千屋の 男の やうに 太い 聲に 篤り 立てる のは氣 味の惡 いものだった のに 遠 ひなかった e 

よ あ い なほた か さつ そ,、 二 ち や め ,5:G ぢょ. すしやう つ み 

そのうちに 夜 は 明けて 行った C 直 孝 は 早速 古干屋 を 召し、 彼女の 素姓 を 尊ね て 見る ことにした" 



屋 千古 



423 



か C ちょ ぢ や あま ぽそ をん な こと かた お あは 

彼女 はかう い ふ 陣屋に ゐ るに は 餘り にか 細い 女だった。 殊に 肩の 落ちて ゐ るの はもの 哀れよりも.. 

寧ろ 痛々 しかった。 

「そち は どこ で 產 れ た な ? 」 

「|^州廣^2 の 御城 下 で ございま す。」 . 

なほた か ニナ.' やみ , もんだ ふ かさ C ち おもへ., ろ V,- い-ご レ -ゾ くだ 

直 孝はぢ つと 古 干屋を 見つめ、 かう いふ 問答 を 重ねた 後、 徐に: J 取 後の 問 を 下した。 

「そち は-; f の ゆかりの もの であらうな? 」 

古干屋 ははつ としたら しかった C が、 ちょっと ためらった 後、 存外 ぼっきり 返^ をした。 

は-つ か 

「はい。 お著しう ございま すが …… 」 

なほ ゆき こ す- や t なし か ぢょ こ ひとり う 

直 之 は 古 干屋の 話に よれば、 彼女に 子 を 一 人生 ませて ゐた。 

「そのせ ゐで ございませ うか、 昨夜 も 御實檢 下さらぬ と 聞き、 女ながら も 無念に 存じます と、 い- 

しゃう き うしな み なに くち だし ラけ たま いち- 

つか 正 (m を 失 ひました と 見え、 何やら 口走った やうに 承 はって をり ます。 もとより-わたくしの 一 

存 には覺 えの ない ことば かりで ございま すが。 …… 」 

こ ち や りゃうて あきら 二. T ふん また かのちよ すがた ちゃう. 

古 干 屋は兩 手 をつ いたま ま、 明かに 興奮して ゐ るら しかった. - それ は乂 彼女の やつれた 姿に 厂. 



424 



ど .tt: さ ひ かがや . うす ひ ち. A あた 

度 朝 :11 に 輝い てゐる 薄ら 氷に 近い もの を與 へて ゐた" 

よ よ さが き- 「そ; . 

「善い。 善い。 もう 下って 休息せ い。」 

なほた か こちゃ しりム.^ ち いちど いへやす め ど ほ で いち/、 か ^>ぢ よ み うへ はな . 

直 孝 は 古 干屋を 退けた 後、 もう 一度 家康の 目通りへ 出、 一 々彼女の 身の上 を 話した。 

「やはり 墙團 右衛門に ゆかりの ある もので ございました"」 

/ やす ±b び せう じんせい かれ とうかいだ う ち -っ あき <^ いへ わ f 二 ^ や 々んっ *. つん 

家康は 初めて 微笑した。 人生 は 彼に は 東海道の 地 圃 の やうに 明かだった。 家康は 古 干屋の 狂. 亂 

なか じんせい かれ をし なに へう リ じ t つかん ^v. ゆ.. , 

〇 中 にもい つか 人生の 彼に 敎 へた、 何 ごとに も 表裏の あると いふ 事實を 感じない 訣には (n かな 力 

す.. C そ; こんど しち じっさい こ かれ け いはん がつ 

つた。 この 推測 は 今度 も 七十 歲を 越した 彼の: 絵驗に 合して ゐた" …… 

「さも あらう。」 

「あの 女 はいかが いたし ませう?」 

「普い わ、 やはり 召使って おけ。」 . 

直 孝 はや や 苛立 たしげ だ つ た 。 

かみ ち ざむ つみ . 

「けれども 上 を 欺きました 罪 は …… 」 

いへやす . しばら かも こころ め じ. < せい そこ .- りんこく また-一-: ん 二く なか 

家麼は 暫く だまって ゐた) が、 彼の 心の 目 は 人生の 底に ある, £^ 黑に —— その 又 闍黑の 中に ゐる 



お 千古 



425 



いろいろの 怪 鞭に 向つ てゐ た。 

い t ^そん はか 

一 わたくしの 一存に とり; ii;: ら ひましても、 よろしい もので ございませう か?」 

かみ あや 一む 

「うむ. 上 を 欺いた ::: 」 

それ は 實際直 孝に は 疑ふ餘 地た どのない ことだった。 しかし 家 嵌 はいつ の 問に か,, rf^!?^ き い 

め な に 一 し き. 一 一い むか あ だう/ ヽ へ/やじ 

口 をした まま、 :!: か 敵勢に でも 向 ひ 合った やうに かう 堂々 と 返事 をした。 

「いや、 おれ は 欺かれ はせ ぬ。」 

(昭和 二 年 五月 七::!) 



426 



42S 



冬 



f '、く おも ぐつ 1 たう ばう い』.,' や けいむ しょ ある い ぽ,、 いとこ し -- . 

^は 重い ル套 にァス トラ 力 ン の帽を かぶり、 巿ケ 谷の 刑務所へ 歩いて 行った。 僕の 從兄は 叫: 九 

*- ち,、 ナ > む しょ ぼく いとこ た;、 V- しんせき そ, T だい ほか き, 

t 飾に そこの 浙務 所に は ひって ゐた" 僕 は 從兄を 慰める 親戚 総代に 外なら なかった し が ^^^^ 

なか けいむ しょ たい かう き しん たし.,, , - I 二,, 3 

もちの 中には 刑務所に 1? する 好奇心 もま じって ゐる こと は^ 力た く た 

わ ち a つうら 1 う 1- だ また G こ さ. ザ- んたぃ 、、、>、、 ほ,. セ, 3- 

叫 一月に 近い 往来 は寶 出しの まハ などの 殘 つて ゐ たもの の、 どこの 町 全體も 冬枯れて ゐ た。 僕 は 坂 

C ぼ S くじ しん にくたいてき つ. A かん ヌく ほ、 ぢ, き,; ね S ^ じ. ふい, ちぐ わつ- 

を 登りながら、 俊 自身 も肉體 的に しみじみ 疲れて ゐる こと を 感じた 僕の 叔父 は 去年の. r 1 月に 

こうとう * かん ん-め こ r く とほえん せう ねん しゃう ぐ わつ いへ で ン 

喉頭癌 の 爲に 故人に なつ て ゐた。 それから 僕の 遠鎵の 少年 はこの 正月に 家出して ゐた それ 力 ら 

- とこ しう. A ん ぼく なに き ぼく いとこ おとうと いつ も-つ. と ? マ-い 1 ^ 

—— しかし 從 兄の 收監は 俊に は 何よりも 打撃だった。 僕は從 兄の 弟と 一 しょに::!^ も 伎に は緣の H 

かう かさ ら じ けん しんせ, どうし . か んじ やう じ > う もん 

い 交 涉-を 重ねなければ ならなかった。 のみなら すそれ 等の 事件に からまる 親.!: 2: い.. -の %ん ^上の 



と 紙 手と^ , 429 



題 は 東京に 生まれた 人々 以外に 通じ 惡 いこ だはり を 生じ 勝ちだった。 僕は從 兄と 面會 した 上、 

く *1- し-つか せいやう おも 

も^ どこかに 一 週間で も靜 養したい と 思 はすに は ゐられ なかった。 

ノち や けいむ しょ くさ か . だか ど て ちう せいき もん 

ケ 谷の 刑務所 は 草の 枯れた、 高い 土手 をめ ぐらして ゐた。 のみなら す どこか 中骨紀 じみた 門 

に は 太い 木の 格子 戶の 向う に、 霜に 焦げた 檜な どの ある、 砂利 を 敷いた 庭 を 透かして ゐた。 僕 は 

もん i へ た なが はんばく ひげ た .A うじんぶ つ かんしゅ めいし わた あま 

この 門の 前に 立ち、 長い 半白の 髯を 垂らした、 好人物ら しい 看守に 名刺 を 渡した。 それから 餘り 

もん はな ひさし あつ こけ かわ めんく わい にん ひかへ しつ い もら ぽく ほか 

門と 離れて ゐ ない、 庇に 厚い 苦の 乾いた 面會人 控室へ つれて 行つ て^った。 そこに はもう 僕の 外 

にも 簿緣り を 張った 腰かけの 上に 何人も 腰をおろして ゐた。 しかし 一 ^=1 立った のは黑 ii 縮の^ 

おり なに f つし よ さんじ ふし ご を/な 

織 を ひっかけ、 何 か雜誌 を讀ん でゐる 三十 五の 女だった。 

もう . .: めい さう ひとり かんしゅ とき- <^ い ひかへ しつ き す こ よくやう こ *5 ちゃう どめん くわい じゅん あた 

妙に 無愛想な 一 人の 看守 は 時々 かう 云 ふ 控室へ 來、 少しも 抑揚の ない 聲に 丁度 面會の 順に 常つ 

た 人々 の I 號を 呼び上げて つた。 が、 僕 はいつ まで 待っても、 容易に 桥號を 呼ばれなかった。 

い つ ま で 待 つ て も —— 僕 の 刑務所の 門 をく ぐ つ た の. は t";^ 十 I- になり かか つ て ゐ た。 けれども^ 

うで ど r; い いちじ じっぷん まへ 

の 腕時計 はもう 一 時 十分 前だった。 

僕 は 勿論 腹 も 減り はじめた" しかし それよりも やり切れなかった の は 全然 火の 氣と ふ ものの 



430 



ひか,、 しつ なか * ほく た あしぶ いら ノ、 こころ おさ 

- ない 控室の 中の 塞 さだった U 僕 は 絶えす 足踏み をしながら、 せ々 する 心 もち を 抑へ てゐ た。 が、 

,お ほぜい めんく わい にん た^ ぞんぐ わい へいき こと たんぜん に まい か ばくん う や A£ し,:" ん 

大勢の 面 會人は 誰も 存外 平氣 らしかった、。 殊に 丹前 を 二 枚 重ねた、 博 突 打ちら しい E?^ など は 新^ 

ひと よ みかんく 

一 っ讀 まう ともせす、 ゆっくり 蜜 相ば かり 食 ひつ づけて ゐ た.。 

お ほぜい めんく わい にん かんしゅ よ だ く 人-び すう へ い f: 

しかし 大勢の 面 會人も 看守の 呼び出しに 來る 度に だんだん 數を 減らして:;;: つた。 僕 はとうとう 

ひか,、 しつ * へ で じゃり し に は ある "は ひ ひかり あた 

控室の 前へ 中::、 砂利 を 敷いた 庭 を 歩き はじめた。 そこに は 冬ら しい 口の 光 も 常って ゐ るのに 遠 ひ 

ただ かぜ ぼく かほ うす そ- リ ふ : ri^ 

なかった。 けれども いっか 立ち 出した 風 も 僕の 顏 へまい 塵 を 吹きつけて 來 るのに 遠 ひたかった。 

僕 は 自然と 依怙地に なり、 1^ に 角 g: 時になる まで は 控室 へ は ひるまい と 決心した。 

僕 は 生憎 叫 時に なっても、 まだ 呼び出して 貰 はれなかった。 のみなら す 伎よりも 後に 來た 人々 

もい つか 呼び出しに 遇った と 見え、 大抵 はもう ゐ なくなって ゐた) 僕 はとうとう 控室へ は ひり、 

^^/、.r, う を. VI 二 じ ぎ うへ ? J_r、 ば あ ひ ざう だん .-i-Je な:. H ぶし かた 

博 突 打ちら しい 男に お 時宜 をした 上、 僕の 場合 を 相談した。 が、 彼 はに こりと もせす、 :igfg ノ諧 

り に 近 い 聲 に か う ^^ ふ 返 事 を し た だ け だ つ た . 

r 一 E に 一 人し か會 はせ ません からね。 お前さんの 前に 誰か 會 つて ゐ るんで せう ヒ 

もちろん い かれ 二とば ぼ/、 ふ あん V, が lbf,、 ま たばん バニつ よ >. しゅ . ン 

勿論 かう 云 ふ 彼の 言葉 は 僕 を 不安に したのに 遠 ひなかった」 僕 は乂^ 號を 呼びに 來た着 守に 一 



i 紙 手と ち 431 



ん: 、 とこ めく ノ、 わ、 で き たづ か/しに ぽく ことば ぜス. ぜス ヘス I 

體從 兄に 面會 する こと は出來 るか どうか 尋ねる ことにした。 しかし 看守 は 僕の 言葉に 全然 返事 を 

うへ vr、 か-よ み ある > ど, T じ 1 たば cv. A, をと こ に さんにん y ん 

しなかった 上、 僕の 額, も 見す に步 いて 行って しまった。 ;: 1: 時に 又 博奕打ち らしい 男 も 二三 人の 面 

くリ ん 、つ かぐし ゆ い ?,」 二 ど ま なか た さ . ^いてき キ- たまこ 

會^ と 一し よに 看守の あとに ついて 行って しまった。 僕は丄 問の まん 中に 立ち、 機械的に 卷煙草 

ひ じ, いんうつ ぶ あいさう かんしゅ たい にく パか 

に 火 をつ けたり した。 が、 時間の 移る につれ、 だんだん 無愛想な 着 守に 對 する 憎しみの 深まる の 

かん だ ぼく ぶヒ 1 ゥ、 う とき きふ ふ/、 わい し ぎ 

を 感じ 屮:: した。 (僕 はこ の 侮辱 を 受けた 時に 急に 不快に ならな い こ と をい つも 不 B^ti に m.- つて ゐ 

る。) 

かスし ± いちど よだ ォ 一 かれ 二れ ご じ - ぼく *= た ^-A, 

お 守の もう 一 度 呼び出しに 來 たの は 彼是 五 時に なり かかって ゐた 俊 は 又 アストラカン の帽を 

とった 上、 ず 守に k じこと を 問 ひかけ ようとした" すると 看守 は 横 を 向いた まま、 の 葉 を 聞 

わか い あ i い i ヒ つい. い い し 3/、 かん ぼく. 

かないう ちに さっさと 向う へ n つ てし まった。 「餘 りと 言 へ ば餘 り」 と は實際 かう-ぶふ 瞬 ii の 僕の 

くヒ や-;' もが ^ゾ、 まきた^こ す な ひかへ しつ .4; か けいむ しよ げ /;.、 わん ある 

感情に 違 ひなかった。 僕 は卷堙 草の 吸 ひさし を 投げつ け、 控室の 向う にある 刑務所の ケー^ ヘル, - 

て::: つた。 

f/: わん 、しだん のぼ ひだり わ ふ,、 き ひと なんにん ガ -フ ス まど むか じ と ^,、 

^關の 石段 を 登った 左に は 和服 を 着た 人 も佝人 か础子 窓の 向う に 事務 を 執って ゐた" 僕 は その 

ガラス まど くろ つむぎ もん き や: と 】 で き し-つ はな かほい ろ. は 

础子窓 を あけ.^ 黑ぃ 紬の紋 つき を 着た に 出來る だけ 靜 かに 話しかけた。 が 翻 色の 愛って ゐる 



432 



》 J と は 僕 自身 は つきり f 思識し て ゐた。 - 

ぼく めんく わい にん めんく わい で き 

「僕 は T の面會 人です。 T に は面會 は出來 な いんです か?」 - 

r 番號を 呼びに 來 るの を 待って 下さい。」 

「僕 は 十 時 頃から 待つ てゐ ます。」 

「そのうちに 呼びに 來る で せ う。」 

一 呼びに 來 なければ 待つ てゐ るんで すか? 日が 暮れても 待つ てゐ るんで すか?」 

と >i ^く i くだ と かく i つへ くだ 

「まあ、 鬼に 角 待って 下さい。 鬼に 角 待った 上に して 下さい。」 

あ ひて ぽく しんば い ぼく はら た う 

相手 は 僕の あばれで もす るの を 心配して ゐる らしかった。 僕 は 腹の 立 つ て ゐる屮 にも ちょっと 

をと こ どうじ やう しんせ キそ うだ い わか ュノ 、む しょそぅ^.- > 

この 男に 同情した。 「こ つち は 親戚 總代 になって ゐれ ば、 向う は 刑務所 總代 になって ゐ る、」 11 

を. A かん 

そんな 可笑し さも 感じない のではなかった。 

1 ご じ す めんく わ いでき と はから く た 

「もう 五 時 過ぎに なって ゐ ます。 面會 だけ は 出來る やうに 取り 計って 下さい。」 

僕 はかう 一 Ik ひ 捨てた なり、 ひとま づ 控室へ 歸る ことにした。 もう 暮れ かかった 控室の 屮には あ 

*、 る きげ をん な ひとり こんど ダ,. つし ひ ざ うへ ふ かほ おこ み か cvi 

の 丸 |i の 女が 一人、 今度 は 雜誌を 膝の 上に 伏せ、 ちゃんと 額 を 起して ゐた" まともに た 彼女の 

I 



" 額 は どこか ゴシックの 彫刻ら しかった。 i はこのお がまに f、 お だに 纖に itM 

4 はんかん かん ■ 

の 反感 を 感じて ゐた。 

僕の やっと 呼び出され たの は 彼 Ife 六 時に なり かかって ゐた。 は! il^ はがの くりく りした、 キ機 

-) ス 力, しゅ あんない ! しで わ, -しジ な- 

敏 らしい 卷 守に 案內 され、 やっと 面會 室の 中には ひる ことにな つた。 1.11 わ! /j^tll と U ム. - ものの、 

せい. <. ^に V 一ん じ や,、 し よ う ほく ^、 

S 々二三 尺 SI 方ぐ らゐ だった C のみなら す 僕の は ひった 3; 力に もべ ンキ I りの 一 ドの歡 つも « んでゐ 

るの は 共同便所に そっくりだった。 reis つの^ i め!! i これ も IVIP^ しに 艇の ikj とつ あり、 

1 ん Y わい にん まど わ-か かほ あら し く 

面會人 はこの 窓の 向う に 顏を顯 はす 仕組みに なって ゐた。 

き はこの ioi うに、 141 がお しい の i うに i^H る. fe つた i を f た。 しかし 棍 

外變っ てゐ ない こと は 幾分 か 僕 J 力 丈 i にした。 lisigi^ilT^ へす に 一, g かに ま^を 11 し 

がちた。 が、 僕の?^ に はま 兄に に鲈 ひに^たら しいお ぺ:? の ゲ」 めどな しに, がき K を %ら 

ひ 一 して ゐた) 僕は從 兄と 話しながら、 この 右 隣り の 泣き 聲に I- をと めない;! けに は _w かなかった。 

^ - ) ぜんぜんえ ズ v,」 い みな - ..C 

m 「今度の こと は 全然 宽 ですから、 どうか 皆さんに さう;: ia つて 下ノ, ハ。」 

と t と 二 き こうじ やう , ;?、 、とこ ひ , 

從兄は り 口上に かう 言ったり した。 僕 は I 仅兄を 13- つめた まま、 この 一 i 一」 fe- こ 4/^ とも^へ たか 



なん こた じ し/ぼく いきぐ る あた わけ W 

つた。 しかし 何とも 答へ なかった こと は それ 自身 僕に 息苦し さを與 へない 訣には l:; かなかった- レ 

f に まく ひだり どな だ あたま は らう じん ひとり は/ばつが まど-ご れすこ をと こ い 

^に 僕の 左 隣り に は 斑ら に 頭の 秀 げた 老人が 一 人 やはり 半月形の 窓越しに, り-子ら しい にかう 言 

つて ゐた。 

あ とき おも だ あ わす, 

「會 はすに ひとりで ゐる 時にはい ろ いろの こと を 田ん ひ 出す の だが、 どうも 會 ふとなる と 忘れて し 

まって な。」 

ぼく めん くわいし つ そと で とき なに いとこ かん - ぽ,. り, どうん、 .?^乂^^.ぃ 

僕 は 面 會窒の 外へ 出た 時、 何か從 兄に すまなかった やうに 感じた。 が それ は 僕 等 同. r:.- の 速 i め 

せきにん かん Jli く i たかんし ゆ あんない V- む み けいむ しょ らう か おほえた げん 

貴 任で ある やうに も 感じた。 僕 は乂潘 守に 案: 5: され、 寒さの 身にしみる 刑務所の 廊: 卜 を 大股に 玄 

くわん ある い 

關へ步 いて 行った。 

ある やま て . 'と 二 、. へ ぼく ち わ いとこ ひとり ぼく まく はす ぽニ 

或 山の手の 從 兄の 家に は 僕の 血 を 分けた 從姊が 一 人 僕 を 待ち暮らして ゐ る^だった。 僕 は ごみ 

ま,., なか よつ やみつけ ていりう じょ で まん ゐん でんしゃ の -ぁ 

ごみした 町の 中 を やっと 四 谷 見附の 停留所へ 出、 滿 員の 電車に 乘る ことにした。 r 會 はすに ひとり 

とき - めう ちから らう じん ことば いま ^く みみ の 二 を/な な 

ゐる 時には」 と 言った、 妙に 力の ない 老人の 言葉 は 未だに 僕の 耳に 殘 つて ゐた。 それ は 女の 泣き 

_ご ゑ いっそう ぼく にんげ ズ てき ぼくつ か は , - ゆ ふ あか > な か , - _ 

聲 よりも ー曆 僕に は 人間的だった。 險は 吊り革に つかまった まま 夕明りの 屮に をと もした 

4 

3 うじ., H ち _,, へ/、 なが いまさら ひと い 一-とば おも だ ノ、 > ニ& 

4 纏 町の 家々 を 眺め、 今更の やうに 「人 さまざま」 と 云 ふ 言葉 を ひ 出さす に は ゐられ な 力った 



と 紙 手 と 冬 435 



きん じっぷん f いと-一 いへ まへ た かべ ボ クン ゆび 

三十 分ば かりたった 後、 僕は從 兄の 家の 前に 立ち、 コンク リイ 卜の 键 についた ベルの 纽へ指 を 

つた く おと げんくわん * 力 ーフ スど なか でんとう とし 

やって ゐた。 かすかに 傅 はって 來る ベルの 音 は 玄關の 砲 子戶の 中に 電燈 をと もした。 それから 年 

ぢょ ナ, う ひとり ほそめ ガ 一 マ スど み のち なん かんと-つし も ぽく 

をと つた 女中が 一 人 細 RI に 础子戶 を あけて 見た 後 、「おや …… 」 何とか 問投! I を^ら し、 すぐに 僕 

わう らい むか にかい へや あんない f ,f 'へ ぐ わいた う ば, f し な だ i 

を 往來, に 向った 一 一階の 部屋へ 案内した。 僕 は そこの テ H ブルの 上 へ 外^ や 帽子 を 投げ出した 時、 

、,ちじ 、,ま わす つか かん ぢ よちう ガ ス だんろ ひ ぼくひと 

一 時に 今まで 忘れて ゐた 疲れ を 感じす に は ゐられ なかった。 女中 は 瓦斯 暖爐に 火 をと もし、 僕 一 

人 を 部屋の 中に 殘 して 行った。 多少の 蒐第癖 を 持って ゐた從 兄 はこの 部屋の 壁に も ご 三枚の 油 塞 

r ゐ V 一い ぐ わ ^く ゑ み くら い えさ ら う ゐ てんぺん い 

や 水 彩畫を かかげて ゐた。 僕 は ぼんやり それらの 畫を 見比べ、 今更の やうに 有爲 轉變 などと r ムふ 

むかし ことば おも だ 

昔の 言葉 を 思 ひ 出して ゐた。 . 

ぜぐご ャ- いと- - いとこ おとうと いとこ &f 二 H ふ: お 

そこへ 前後して は ひって 來 たの は 從姊 ゃ從兄 の 弟だった。 從,姊 も 僕 の豫 期した よりもす つと 

つ ほく で き せいかく かれら いとこ でんごん はな こんど しょち さ- ッ i 

ち 着いて ゐる らしかった。 僕 は 出来るだけ 正確に 彼等に 從 兄の 傳言を 話し、 今度の 處置を 相談し 

だ いと-一 かくべつせ ききょくて キ- い き も あは なし あ ひ *- 

出した。 從姊 は格刖 積極的に どうしょうと 云 ふ氣も 持ち合せなかった。 のみなら す, 話の fflii にも 

アストラカン の帽 をと り 上げ、 こんな こと を 僕に 話しかけ たりした。 

「妙な 帽子ね。 ^本で 出來る もん ぢ やないで せう? J 



「これ? これ は 口 シァ 人の かぶる 帽子 さ。」 

いとこ おとうと いとこ いじ やう し ごとし し. うが . み 二 

し かし 從兄 の 弟 は從兄 以 上 の 「仕事師」 だけ にいろい ろの 障害 を 見越して ゐた。 

1..^ . あ ひだ あにき とも し /しふん しゃく わい ぶ きしゃめ いし, P . 

一 しろこの 問 も 兄 食の 友 だち など は X X 新聞 の 社會 部の 記者 に 名刺 を 持た せて よこ すん です。 

- I めい; ij くちど れ うきん はんきん じ ばら き お ざん やん わん- 

その 名^に は 口止め料 金の うち 半金 は 自腹 を 切 つ て ;.;^ いたから、 残金 を 渡し て くれと 患 3 いて ある 

ノ-、 , - ノ I -ん. 3-、 み- しス ぶん. -V.- しゃ はな ちに- チ- とも じ し/" 

A てす それ もこつ ちで 檢 ベて 見れば、 その 新聞記者に 話した の は:: 儿责の 友 だち 自身なん です か 

もちろん はんきん わ fj. だ だ r ん きん レ :パ ■/ 

らお ,ク 論 半金な ど を 渡したん ぢ やない。 唯 殘金を とらせに よこして ゐ るんで す。 その 乂新 斷, 

しゃ し/ (ぶんき しゃ 

者 も 新聞記者で すし、 …… 」 

1^^ と かくしん ぶんき しゃ みみ いた つ 1 6 ん. む 

「僕 も 15- に 角 新聞記者で すよ。 耳の 痛い こと は 御免 蒙ります かね c」 

*,-()、、-、 ぞ 一べ じ し」 ひ. • • > ため じ やう だん い いとこ ぶと,? レゅさ .r, 

^は 僕自. 2^ をき き 立てる 爲 にも 常 談を言 はすに は ゐられ なかった。 が、 從 兄 の 弟 は を IJ^ び 

た 目 を 血走らせた まま、 演說 でもして ゐる やうに 話しつ づけた。 それ は實際 常談さ へう つかり fic 

けんま t ちが 

はれない 權 幕に 違 ひなかった。 

「おまけに 豫審 判事 を 怒らせる 爲に わざと 判事 をつ かま へ て は 兄 贵を群 護す る ^ ;:, 合 ひも あるんで 

6 

4 すから ね。」 



7 「それ は あなたから でも, 一 tS して 頂けば、 …… 」 

3 

4 「, 、 3 、 .tx.^s ん い,, ' ^ こうい ぢ ゆう/ \ かんしゃ はんじ か. <L や-つ ゲぃ 

「いや 勿論 さう 言って ゐ るんで す" 御 厚意 は 重々 感謝し ます けれども、 判事の 感情 を すると、 

かへ ご 二う い そむ あたま さ た 

反って 祸 厚意に 背きます か らと頭 を 下げ て 頼んで ゐ るんで す。」 

いと-. に, ガ. -ス だんろ, - まへ すわ ばう なく しゃ うぢき よ くヒ やう 

從姊は 瓦斯 暖爐 の, 1 肌に 坐った まま, アストラカンの 帽を おもちゃ にして ゐた。 僕 は 正直に 白狀 

いとこ おとうと はな ばう ひ なか おと 

すれば、 從 兄の 弟と 話しながら、 この 帽 のことば かり 氣 にして ゐた。 火の 中に でも 落されて はた 

とキ; ん、 カズう ばう ^v、 A- も じん キち や 

まらない。 . —— そんな こと も 時々 考 へて ゐた。 この 帽は 僕の 友 だち の ベルリンの ユダヤ人 町 を 探 

-5 へ ぐう. せ;^ あし の とき て い で き 

がした 上 ^然モ スタブへ 足 を 仲ば した 時、 やっと \ ^に 人れ る ことの 出來 たもの だった。 

「さう 一一 目つ て も 駄目です かね?」 

I^vy - - 3 せく きみ ため おも ,ミ ね を しっけ,., ,, 

r 駄 HI どころ ちゃありません。 僕 は 君た ちの 爲を 思つ て 骨 を 折つ てゐて やる のに 失敬な こと を 言 

ふなと 來 るんで すから。」 

なるほど で き 

冬 一 成程 それ ぢ やどう する こと も出來 ない。」 

と 

一! でき はふり つ;: J やう もんだい もちろん だう とく ヒ やう もんだ > 

g 「どうす る こと も出來 ません。 法律上の 問題に は 勿論、 道德 上の 問題に もなら な いんです からね Q 

辛 

と と; かくぐ > いけん いう じん ため じかん て すう じ じつ いう じ/,) ため おと な i て っゼ 

に 角 外見 は 友人の 爲に 時間 や \JJ 數を つぶして ゐる、 しかし 事實は 友人 Q 爲 に^し^ を^る 傅 



ふんとうし ゆぎ い て あし だ 

ひ をして ゐる、 —— あたし もす ゐ ぶん 奮闘 主義です が、 ああ 云 ふやつ にか かって は 手 も 足 も 出す. 

こと は出來 ません。」 

い ぼくら はなし うち に は ^くら おどろ くんばん ざい _\ こ ゑ ぽく かたて まど 

かう 云 ふ 僕 等の 話の 巾に 俄かに 僕 等 を 驚かした の は rT 君 萬 歳」 と 云ふ聲 だった。 僕 は 片手に 窓 

あ まど-ご わう、, りい め おと せま わう らい ;S とみ、 お ほぜいみ.^ はば メっ あつま 

かけ を 擧げ、 窓越しに 往來へ 目 を 落した。 狹ぃ往 來には 人々 が 大勢 道 幅 一 ぱいに つて ゐた。 の 

ま. せいねんだん か ちゃう ちん いく うご ^1 * とこ かほ み あよ いとこ 

みならす X X 町 靑年團 と 書いた 提訂が 幾つ も 動いて ゐた。 僕 は從姊 たちと 顔 を 見合せ、 ふと 從:: 儿 

せいねんだん/ \ち やう い かたがき おも だ 

に は X X 靑年團 々 長 と 云 ふ 肩書 も あ つ た の を 思 ひ 出した 。 

r お M を 言 ひに 出な くつち やい けないで せう ね。」 

從姊 はやつ と 「たまらない」 と 「K ふ顏 をし、 僕 等 一 一人 を兒 比べる やうに した。 

「何、 わたしが 行って 來 ます。」 

いとこ おと. f 'と む ざ うさ へ や つし い ぼく かれ ふんとうし ほぎ ある うらやえ かん 

從 兄の 弟 は 無造作に さっさと 部屋 を 後ろに して 行った。 僕 は 彼の 奮闘 主義に 或 羨 しさ を 感じ 

ながら、 ゆ 姊の額 を 見ない やうに 壁の 上の 畫 など を 眺めたり した。 しかし 何も 一一 Si はすに ゐる こと 

じ しんぼく くる い なに い ため ふたり かんしゃうて 今 

は それ 自身 僕に は 苦しかった。 と 云って 佝か言 つた 爲にー 一人と も 感傷的に たって しま ふこと はた 

さに? Lr- くる f だま まきたば 二 ひ かべ も i い、 *i .■ い. V 二 じ しん 

ほ更 僕に は 苦しかった。 僕は默 つて 卷 煙草に 火 をつ け、 壁に かかげた 畫の 一 に、 —— 從兄 自身 



せうて うぐ わ ゑん きん はふ くる み.,.' - - 3 

y の 肖像 畫に 遠近法の 狂 ひな ど を 見つけて ゐた 

「こっち は 萬 J|g どころ ぢゃ あり はしない。 そんな こと を 言った つて 仕 かたはない けれども ::: 」 

>- こ めう そら こる S ぼく はな 

I 仉姊は 妙に 签ぞ らしい tf- にとうとう 僕に 話しかけた 

ちゃうない し ,, , - 

「町內 では まだ 知らす にゐ るの かしら?」 

「ええ、 …… でも 一!^ どうしたんで せう?」 

「何が?」 

とラ 

「T のこと よ。 お父さんの こと。」 

み み じじ やう 

「そ, は T さんの, になって 見れば、 いろいろ 事情 もあった らうし さ 」 

「さう でせ うか?」 

、 , レ 1 とこ うし む * ど i へ ある い キ: ど した ひと. 

i はいつ か!?? 1 たし さ を i じ、 f 仪姊に 後ろ を 向けた まま、 窓の 前へ 步 いて 行った。 窓の 下の 人 

冬 はが" 輒 Ills の K をぎ げてゐ た。 それは?^.^ま、 萬 歳」 と 三度 i り 返して W へる ものだった。 

お 0§§^^ rrsr し:^ げた 歸 のお T にお IS をして ゐたレ のみなら 

と す歡 の?^^ に は % ひさい Ifest だち も 人、 街に おをひかれた まま、 時々 取って つけた やうに ち 



I さ あたま s.f 

よつ と あ 下げの 頭 を 下げたり して ゐ た, …… … 

それからもぅ1|^かたった、 さの 騰 しい, i は徵の のおの i に 議1 めた,。 ハイ 

プを 御へ、 從姊と 差し 向 ひに f てゐ た。 srf た i のせ はき § の g いほ どもの g か だつ 

た。 從 兄の 白木の 位牌? の 前に は燈 心が T お 1< を!? して ゐた。 その pi: い をぎ" えた まこお は 

ふた リ よぎ ぼく " V f 

たちが 二人 夜着 を かぶって ゐた。 僕 はめつ ff とった, の めながら、 ふと あり I を 

くる い .rj- ち で & つ; と おし .C r J>l 

苦しめた 一.: の m 來事 I ひ 出した。 しかし街の^^に^ たのはかぅー-|^まぁぎけだっ 

た。 . 

「薄荷。 ハ イブ を 吸って ゐ ると、 餘計塞 さも かにし みる やう だ r -。 一 

1 V. , てあし ひ 

I さう を あたし も 手足が 冷えて ね。」 

M1.^.^」」;;li^* 、 . > なが ひ ばち すみ なま 

^^.^ 姊 は 餘 り 氣 の な レ や う に 長 火 鉢 の 炭 な ど を |^し て ゐ た C 

• (L 口和 二 年 六月 S::::> 



手 
紙 



ほく いま * ゾ ス r ス や ど /一 いざ い ひしょ さ 

僕 は 今 この 、源泉 宿に 滞在して ゐ ます。 避 暴す る氣 もち もないで はありません。 しかし まだ その 

ほ 力 よ 力 たし りよ, つちし な » く.^. 'うこ,、 

外に ゆっくり 讀ん だり 書いたり したい 氣 もち も ある こと は 確かです。 こ こ は 旅行 案內 の廣吿 によ 

ノ、 しんけいす ゐ じゃく よ い .f ふ- -リ じん ふ.!: リ 、い.,. : じ. ひ- ナ- ;.. ち 

れば、 神經衰 弱に 善い とか 云 ふこと です。 そのせ ゐか 狂人 も 二人ば かり ゐ ます。 .) 人 は 二十 七 

をん な をん な なに くち き て ふうきん ひ み 

の 女です。 この 女 は 何も 口 を 利かす に 手風琴ば かり 彈 いて ゐ ます。 が、 ,:^ なり はちゃん として ゐ 

- i i さうた う うち おく に さんど み ところ に ひ 

ます 力ら どこ 力 相せ S な 家の 奥さんで せう。 のみなら す 一 一三 度 見かけた 所では どこか ちょっと::^ 

血 J}< じみた、 輪廓の 正しい 額 をして ゐ ます。 もう 一 人の狂人は赤ぁかと額の禿げ^1^った§;ぉ;仉|1 

をと-一 をと こ たし ひだり うで まつば い -\ ^み とこち み キ や-つ..」 ん - . 

の 男です。 この 男 は 確か 左の 腕に 松葉の 入れ II. をして ゐる所 を 兌る と、 まだ 狂人に ならない ぎに 

冬 は 何 か 窟氣 な商寶 でもして ゐ たもの かも 知れません。 僕 は 勿論 この 男と は 度た び i-n,:: の.^ でも Y 

1 二 , - - 3 Y ス , ノ たいざい ある だいが,、 がくせい をと こ い クみ <ez 

I しょになります。 K 君 は (これ はこ こに 滯 在して ゐ る或大 學の學 生です。) この 男の 入れ墨 を 指さ 

と . きみ さいくん な まつ い をと- - ゆ ひた 

し いきなり rlH^ の 細君の 名 はお 松さん だね」 と 首った ものです。 すると こ の 男 はい. i に 浸った まま- 



こ ども よ. かか ほ 

子供の やうに 赤い 顔 をし ました。 …: 

C ん -嗲く と を わか ひと おな やど こ おやこ か なり-一ん い ひと 

K 1^ は 僕よりも レも 若い 人です。 おまけに 同じ 宿の M 子さん 親子と 可也 懇意に して ゐる 人です". 

こ れか しふう い わかしゅが ほ い ぼく こ ぢ よがく かう じ だい 

M 子さん は 昔風に 一 百へば、 若衆 顏 をして ゐ ると でも 言 ふので せう。 僕 は M 子さん の 女學校 時代に 

さ しろ うし けち まき うへ なぎなた なら い き さ だ うし わか *K る なに 

お下げに 白い 後ろ 鉢卷 をした 上、 雞刀を 習った と 云 ふこと を 聞き、 定めし それ は 牛 若 丸 か 何 かに 

に おも もっと こ おやこ くん かつ-. -ぃ 

似て ゐ たこと だら うと W わ ひました。 尤も この M 子さん 親子に は S 君 もや はり 交際して ゐ ます。 :/? 

くん くん とも ん」 だ くん ちが ぽく せう せつ H ふたり だんせい V. 

君 は K 君の 友 だち です。 唯 K 君と 違 ふの は、 11 僕 はいつ も小說 など を讀 むと、 二人の Ef^ 性 を 差 

べつ ため ひとり ふと をと こ ひとり や をと こ こっけい おも 

^する 爲に 一 人 を 肥った 男に すれば、 一 人を瘦 せた 男に する の を ちょっと 滑 精に m 心 づてゐ ます。 

また ひとり がう はう をと こ ひとり せんじゃく をと 二 ほほ. <^ 

それから 又 一 人 を 豪放な に すれば、 一 人を纖 弱な 男に する のに もや はり 顿 笑ます に は ゐられ ま 

げん くん くん ふたり ふと ふたり きすつ やす しんけい も 

せん。 現に K 君 や S 君 は 二人とも 肥って はゐ ない のです。 のみなら す 二人とも 傷き い 神 經を持 

つて 生まれて ゐ るので す。 が、 K 君 は S 君の やうに 容易に:;:^ み を 兄せ ません。 賁際 又; 1 み を:: JH. 

しゅげ ふ つ 

ない 修業 を 積まう ともして ゐる らし い のです。 

くん くん こ おやこ ぽ,、 あ もっと あ い 

K 君、 S 君、 M 子さん 親子、 —— . 僕 のっき 合って ゐ るの はこれ だけです。 尤もつ き 合 ひと 言つ 

2 

4 ただいつ さんぽ 11 な ?-か なに をん せんや ど ほ 力 

4 たにしろ、 唯一し よに 散步 したり 話したり する 外はありません。 何しろ ここに は溫, の 外に 



と ね I- 手. と 冬 



443 



に けん ひと ぼく い V- び す こ ふ そく 

(それ もた つた 一 一軒 だけです ■ ) カツ フ H 一 つない のです。 俊 はかう 云 ふ 寂し さ を 少しも 不足に は 

おも くん くん とき. <^ われら とく わい たい ケ やうし う い かん 

思って ゐ ません。 しかし K 君 や S 君 は 時々 「我等の 都 會に對 する 鄕愁」 と 云 ふ もの を 感じて ゐ ます 4- 

こ おやこ こ おやこ ば あ ひ ふ,、 ざつ こ おやこ き ぞ, 、し: 3ぎ しゃ したが 

M 子さん 親子 も、 —— M 子さん 親子の 場合 は 複雑です。 ^子さん親子は贵族主義^<-です。 從 つて 

い やま なか i んぞく わけ ふ まん なか まんぞく かん 

かう 云 ふ 山の 中に 滿 足して ゐる訣 はありません。 しかし その 不滿の 屮に滿 足 を 感じて ゐ るので す. 

す,、 な . ^れ これひと つき まんぞく かん 

少く とも 彼是 一 月 だけの 滿足を 感じて ゐ るので す。 

&T、 へや にかい すみ "ぼく へや すみ つく ゑ む |*】 ぜん べん キ; やう 

僕の 部屋 は 二階の 隅に あります。 僕 はこの 部屋の 隅の 机に 向か ひ、 午前 だけ はちゃん と勉强 し 

ご ご やね ひ あた はげ ほ て たうて いほん よ 

ます。 午後 は トタン 屋根に 日が 當る ものです から、 その 烈しい 火照り だけで も 到底 木な ど は め 

なに い くん くん き もら しゃう ぎ ひま 

ません。 では: 1: をす るかと 首へば、 K 君 や に來て 貰って トランプ ゃ將 薬に^ をつ ぶしたり、 

く た T いく 今 まくら めいさん ひるね ご ろくにち+^へ - ご 

組み立て 細工の 木 枕 をして (これ はこ この 名產 です。) 晝寢 をしたり する だけです。 五 六 = の 午 

ご ぼ,、 きま くら あつ しぶかみ へう し お ほく K むさし あぶみ よ 

後め ことです。 僕 はや はり 木 枕 をした まま、 厚い 跪 紙の 表紙 を かけた r 大久 保武藏 Hi を んでゐ 

ふすま かほ だ したへ や こ K く 

ました。 すると そこへ 襖 を あけて いきなり 顏を 出した の は 下の 部 星に ゐる M 子さん です。 僕 はち 

よつ と 狼狽し、 莫迦 莫迴 しい ほど ちゃんと 坐り 直しました。 . 

「あら、 错 さん はいらつ しゃいません の?」 



4 く 4 



だれ ま 

「ええ。 け ふ は 誰も、 …… まあ、 どうかお は ひりなさい ピ 

M 子さん は 襖 を あけた まま、 僕の 部屋の 緣 先に 佇みました。 

「この 部屋 はお 暑う ございます Q ね. ピ 

3aii やくく わ- リ; f」 ん こ f I A し,、. tf ^ : - 

• 逆 光 緣 になった M 子さん の 姿 は 耳 だけ 眞 紅に 透いて 見えます。 は" きか ぎ^に; ffi いもの を g 

じ、 M 子さん の 隣に 立つ ことにしました。 . 

「あなた の お 部屋 は 涼し い でせ う。」 

1 * て ふ-つきん おと 

「ええ で も 乎 風琴 の ずば かりして。 I 

1 , キに ちが へや むか 

一 ああ あの I 米 違 ひの 部屋の 向う でした ね。」 

僕 等 はこん な をしながら、 暫く 緣 先に んでゐ ました。 西日 を ぅ受 けた 卜 クンぎ-ぎ は K がた に 

ぎらぎら かがやいて ゐ ます。 そこへ 庭の 葉 櫻の 枝から 毛蟲 が, fg 幅げ おちました。 は, 船い 卜 

タ ン 屋根の 上に かすかな 音を立て たと 思 ふと、 一 ニニ 度 Is をう ねらせた ぎり、 すぐ こぐ つし りがん 



ら お 



でし まひました。 それ は實に 呆っ氣 ない 死です。 同時に また 實 にお, I のきい-かです 



ff.^ なか お 

「フ ラ ィ 鍋の 中 へ でも 落ちた やうです ね- レ」 



I 



と 紙 手と 冬 



443 



「あたし は 毛 蟲は大 t 嫌 ひ. に 

「僕 は 乎で もつ まめます がね。」 

「:/: さん も そんな こと を 言つ て いらっしゃいました。」 

こ まじめ ぼく かほみ 

M 子さん は眞 面目に 僕の 額 を 見ました。 

「y 君 もね。」 

僕の 返事 は M 子さん に は氣乘 りの しない やうに 問えた のでせ う。 (僕 は赏は M 子さん に、 I i と 

I ^ こ い せ うぢよ しん リ きょうみ も こ ゾ、 ぶん 

ザ 一よりも M 子さん と 云 ふ 少女の 心理に 興味 を 持って ゐ たのです が。) M 子さん は 幾分 か 糊ね たや 

いて はな 

うに かう 言って 手すり を 離 れ ました-」 

ま/一つす, 

r ぢゃ乂 後 ほど。」 

こ かへ い のち ぼ,、 +t たき まくら お ほく ぼ .CV.- しあ ふみ よ 

M 子さん の歸 つて 行った 後、 僕 は 又木 枕 をしながら、 「犬 久保武 藏證」 を讀 みつ づけました。 が、 

:ゎ つじ お あ ひだ とき ,,5L,- け むし 」:: も だ 

活字 を 追 ふ 間に 時々 あの 毛蟲 のこと を E 心 ひ 出しました。 … … 

せ-",, ' tj!, で たいてい ゆ ふめし まへ い とき こ おや 二 

僕の 散歩に 出かける の はいつ も 大抵 は 夕飯 前です。 かう 云 ふ 時には M 子さん 親子 を はじめ、 K 

ノ ノズ "つ で .,.ニ,:..- んぼ ば しょ むら ぜんご にさんち やう まっ^ゃし そか 

君 や S 君 も 一 しょに 出る のです。 その 乂 散歩す る 場所 もこの 村の 前 I 一 一三 町の 松林より によ あ 



446 



け t し お み とき あるひ まへ で き ごと ぼくら 

りません。 これ は 毛蟲の 落ちる の を 見た 時よりも 或は 前の 出來 事で せう。 僕 等 はや はり はしゃぎ 

まつばやし なか ある ぼくら もっと こ か あ れ-ぐ わ- 

ながら、 松林の 中 を 歩いて ゐま した" 僕 等 は? 尤も M 子さん のお さんだ け は 例外です。 こ 

おく とし す; な と をぐ らゐ み- ぼく こ 、つか な こ し 

の 奥さん は 年より は少 くと も 十 位 はふけ て 見える のでせ う。 僕 は M 子さん の 一.:?^ 水の こと は 何も 知 

つと り よ しんぶんき じ おく 二 こ 

らな いものの 一 人です。 しかしい つか 請んだ 新聞記事 によれば、 この 奥さん は M 子さん や M 子 さ 

にい う ひと はす こ にい に ふがくし けん 。くだい ため 

んの 兄さん を 産んだ 人で はない 曾です。 M 子さん の 兄さん は どこかの 入學 試験に^ 第した 爲 にお 

とう じ さつ ぼく キ I おく しん しんぶん みなに い じ ヤリ 

父さんの ピストルで 自殺し ました) 僕の 記憶 を 信す ると すれば、 新^ は iju:: 儿 さんの 殺した の も 

•*1 - さい き おく せきにん か おく 七し あるひ 

この 後妻に 來た 奥さんに 責任の ある やうに 書い てゐ ました。 こ の 奥さんの 年 をと つて ゐ るの も 或 

はそんな 爲 ではない でせ うか? 僕 はま だ 五トを 越して ゐな いのに 髮の 白い 奥さん を 見る度に ど 

力 ズ 力 やす ぼくら よにん と かく 

う も そんな こと を考へ 易い のです。 しかし 僕 等 四 人 だけ は 鬼に 角 しゃべり つづけに しゃべ つ てゐ 

ました。 すると M 子さん は佝を 見た のか 、「あら、 いや」 とずって K 君の 腕 を 抑へ ました。 

なん ぼ ク-、 へび で おも 

「何です? 僕 は 蛇で も 出た のかと 思った。」 

じっさいなん ただ かわ やますな うへ こま あり なんび き はんし .-i ん ー やう あか. Ht, ひ ゆ 

それ は實際 何でもない、 唯 乾いた 山 砂の 上に 細かい 蟻が 何 匹 も 半死半生 3 赤 蜂 を 引きす つてれ 

あ., V 一 i ち あ ふむ とき-^,、 V.- -^^ な あり むれ お 

かう として ゐ たのです。 赤 蜂 は 仰け になった なり、 時々 裂け かかった 翅を 鳴らし、 蟥の群 を逐ひ 



と 紙 手と 冬 



447 



は,: あり む れ け ち おも .》< た あか はち はね あし 

拂 つて ゐ ます。 が、 蝶の 群 は 蹴散らされ たと 3 心 ふと、 すぐに 乂赤 蜂の 翅ゃ 脚に すがりついて しま 

ふので す。 僕 等 は そこに 二 ,1 ち どまり、 暫く この 赤 蜂の あがいて ゐ るの を 眺めて ゐ ました。 現に M 

こ はじに あ めう しんけん かほ くん そぱ た 

子さん も 始めに 似合 はす、 妙に 眞劍な 額 をした まま、 やはり K 君の 側に 立って ゐ たのです。 

ときぐ けん だ 

「時々 劍を 出します わね。」 

「蜂 の 劍は夠 の やうに =S つて ゐる もので すね c」 

ぼく たれ だま こ はなし 

僕 は 誰も 默 つて ゐる もの で すか ら、 M 子さん と こ んな話 をし て ゐ ました。 

「さあ、 〔むき ませう。 あたし はこん な もの を兒 るの は大, > 嫌 ひ。」 

こ か あ たれ さ ある お ぼくら ある だ もちろん .5 つば やし 

M 子さん のお 母さん は 誰よりも 先き に步き 出しました。 僕 等 も 歩き 出した の は 勿論です。 松林 

みち たか くさ Q ^'6 はな ご ゑ ま:' ば やし なか ぞん 

は路を あました まま、 ひっそりと 高い 草 を 仲ば して ゐ ました。 僕 gt- の 話し 聲 はこの 松林の 中に 存 

ぐ わいた か はんき やう おこ 一一と くん わ" ご ゑ くん くん こ くん いもうと 

外 高 い 反響 を 起しました。 殊に K 君の 笑 ひ聲は 11 K 君 は- b 君 や M 子さん に K u?; の 妹さんの こ と 

はな ゐ なか いもうと ぢ よが /、かう そつげ ふ なん 

を 話して ゐ ました。 この 田 舍にゐ る 妹さん は 女 學校を 卒業した ばかりら しいので す。 が、 何でも 

をつ と ひと たばこ さけ ひんかう はう せい しんし い 

夫になる 人 は 煙草 ものまなければ 酒 ものまない、 品行方正の 神 十, でなければ ならない と 言つ てゐ 

ると 云 ふこと です。 



448 



ぼくら みな.,: くだ い . 

「僕 等 は 皆 落第です ね?」 

くん ぼく い ぼく め くら め f リ き 、よ 

S 君 は 僕に かう 言 ひました。 が、 僕の 目に は いぢら しい 位、 妙に てれ 切った 1 をして ゐ まし, ヒ。 

1 煙草 ものまなければ 酒, ものまない なんて、 …… つまり 兄貴 へ當 てつけて ゐ るんだ, r- 。一 

K ん とっさ, く は ぼくい かげん へんじ i く -.. 

K 君 も 咄嗟につ け 加へ ました。 僕 は 善い 加減な 返事 をしながら、 だんだんこの 散歩 を にし k 

したが とつぜん こ かへ - とき -キ 

しました" 從っ て 突然 M 子さん の 「もう 歸り ませう」 と 言った 時には ほっと ひと,!!:^ つ いた ものです リ 

こ はば かほ ぼくら なん- t ' 

M 子さん は 晴れ晴れした 顔 をした まま、 僕 等の 何とも 首 はない うちにく るりと 足 を- .5^ しました レ 

が、 溫泉 宿へ 歸る 途中 は M 子さん のお 母さんと ばかり 話して ゐ ました。 等 は Ms? きと^.^ 

な, A ある い あか はち . 

の 中を步 い て 行 つ た の で す。 けれども あ の 赤 蜂 はもう ど こかへ 1& つて ゐ ました。 

> はんつき のち 一せ,、 くも , ?- ? 

それ 力ら 半月ば かりたった 後です。 僕 は どんより! II つて ゐ るせ ゐか、 何 をす る:;^ もなかつ たも 

のです から、 池の ある 庭へ おりて 行きました C すると M 子さん のお 母さんが 一 人 Ijfc^l^ に ^ を 

おろし、 東京の 新聞 を 請んで ゐ ました。 M 子さん はけ ふ は K 君 や と溫泉 宿の 後ろに ある Y 山 

^ぼ い はす おく ぼ C み らうべ.' んキ やう あ リ 

へ 登りに 行った です。 この 奥さん は 俊 を 見る と、 老眼鏡 をはづ して 挨俊 しました。 

• 、す あ 

「こちらの 椅子 を さし 上げ ませう か ?」 



と 紙 手と^ 449 



けっこう 

「いえ、 これで 結構です。」 

卞」 く ナ > やう ど ふると, ついす 

僕 は 下 度 そこにあった、 古い 藤 椅子に かける ことにしました。 

さくばん やす 

「昨晩 はお 休みに なれなかった でせ う?」 

「いいえ、 …… if かあつた のです か?」 

& もが をと こ かた らう か か だ 

「あ の 氣の 違った 男の 方が いきなり 廊下へ 跃け 出したり なすつ たも の で すか ら ピ 

「そんな ことがあつ たんです か?」 

ぎぺ 力う と さわ しんぶん よ ti 

1 ええ、 どこかの 銀行の 取りつ け 騷ぎを 新聞で ぉ讀 みなす つたの が^ まりなんで すって。」 

ずン、 まつば い すみ き ナ.' が いっしゃう さ- T てう ; , ン 

僕 は あの 松葉の 人れ 墨 をした 氣遠 ひの 一生 を 想像し ました。 それから、 I -笑 はれても 仕 かた 

ほく おとうと も かぶけん おも だ 

はありません、 僕の 弟の 持って ゐる 株券の ことな ど を 忍 ひ 出しました。 

r,b さんな ど はこ ぼして いらっしゃい ましたよ。 …… 」 

こ か あ ぼく ゑスき よ,、 くん たづ だ ぽ,、 , へズニ 

M 子さん のお 母さん はいつ か 僕に 婉曲に St; のこと を 尋ね 出しました。 が、 僕 はどう U ム ふ).^ 事 

ノ、 丄 J ぼく ^とり ..^ .M レ- 

にも 「でせ う」 だの 「と 思 ひます」 だのと つけ 加へ ました o( 街 はいつ も 一 人の 人 を その 人と して だけ 

, > ふ /6 , - か ぞく ざいさん しゃく わいて きち ゐ い し .>|,* ん わ、 ヒん 

しカ考 へられません。 家族と か財產 とか 社會的 地位と か 云 ふこと に は 自然と あ 淡に なって ゐ るり 



450 



い t-> ばん わる ひと かんが とき ぼ, じしん に てん 

です。 おまけに 一番 惡 いこと は その 人と して だけ 考 へる 時で もい つか 僕 自身に 似て ゐる點 だけ そ 

ひとなか ひ だ うへ かって か 6 を Y だ おく や 

の 人の 中から 引き出した 上、 勝手に 好惡を 定めて ゐ るので す。) のみなら す こ の 奥さん り氣 もちに 

くん み しら 今! ある を ハ. かん 

—— S 君の 身 もと を 調べ る氣 もちに 或 可笑し さ を 感じました。 

「s さん は神經 質で いらっしゃ るで せう?」 

「ええ、 まあ 神經 質と 「ェ ふので せう。」 

ひと 

r 人 すれ はちつ ともして いらっしゃいません ね。」 . 

な に ぼつ ひ と とほ こころえ r - つ 

「それ は佝 しろ 坊ちゃん ですから、 …… しかしもう 一 通りの こと は 心 特てゐ ると 思 ひます が。」 

びパ、 い .W なし - つち いけ み-つ-ビー は V. はがに . に み V.- はがに 

僕 はかう- ムふ, ぎの 屮に ふと 池の 水際に 澤 蟹の 這って ゐ るの を 見つけました。 しかも そ 2. 灣 蟹 は 

いっぴき さはが に かふら なか くだ い びき さ は がに ひ ゆ ところ 

もう 一 匹の 潸蟹 を、 —— 5. 羅の 半ば 碎け かかった もう 一 匹の 澤蟹を じりじり^き すって 行く 所な 

ぼ,、 V. うご ふ じょろん なか かに は なし おも W に 

のです。 僕 はいつ か クロポトキンの 相互扶助 論の 屮 にあった 蟹の 話 を 思 ひ屮: しました。 ク II ボ卜 

キンの 敎 へる 所に よれば、 いつも 蟹 は 怪我 をした 仲 問を扶 けて ハ i つて やる と 「ム ふこと です。 しか 

i た ある どう. ふつが,、 しゃ じつれい くわん さつ とこ. つ け たか i く ため 

し 又 或 動物 學 者の 實 例を觀 察した 所に よれば、 それ はいつ も 怪我 をした 仲 £ ^を 食ふ爲 にやって ゐ 

い ぼく せ々 しゃう に ひき vtr.^ に か,、 み こ 

ると 云 ふこと です。 僕 はだんだ ん石菖 のかけ に 一 一匹の 澤 蟹の 隱れ るの を 13- ながら、 お子さんのお 



" ^ よ な チ- . -て たし ん ぜん キ, ようみ うし よ 

1 母さんと 話して ゐ ました。 が、 いっか 僕 等の 話に 全然 興味 を 失って ゐ ました。 

「みんな の 歸 つて 來る の は 夕が た で せ う ? 」 

. はつ、 い だ あが どうじ また -- か あ かほ A める へう I や. . ^ん 

僕 はかう 言って 立ち上りました。 !M 時に 又 M 子さん のお 母さんの 顏に或 表情 を感 にました。 そ 

おどろ いつ なに ほん C うてき に,、 ひ..;: め へ.? やう おく 

れ はちよ つと した 驚きと 一 しょに 何 か 本能 的な 憎しみ を 閃かせて ゐる 表情です。 けれども この 奧 

し-つ へ んじ 

さ ん はすぐ にも の 靜 かに 返事 をし ました。 

「ええ、 M 子 も そんな こと を 申して をり ました c」 

ぼく ^く へや かへ く またえん ク々」 て まつばやし うへ も あが や i いん-だ 今- 

僕 は 僕の 部屋へ 歸 つて 來 ると、 乂緣 先の 乎す りに つかまり、 松林の k に 盛, り 上った Y 山の頂 を 

なが や i いただき いは - 「へ つす ひ ひかり • it -,、 いけ レ *リ み 

眺めました。 山の頂 は 岩 むらの 上に 薄い nl の 光 をな すって ゐ ます。 僕 はかう 云 ふ 景色 を 見ながら、 

ふと 僕 等 人間 を憐 みたい 氣 もち を 感じました。 

こ おやこ くん いつ に さんに ちまへ とう キ. やう か ( くん なん を /- せ Z やど いもつ と 

M 子さん 親子 は S 君と 一し よに 一 一三 日 前に 東京へ 歸 りました。 は 何でも この、 ぷ,^ 泉 宿へ 妹 さ 

く ま ぶ は うへ た ぶんぼく かへ いっしう.; I ん お,、 か: t たく 

夂ー んの來るのを待ち合せた上、(それは多分僕の^|るのょりも 一 週 ir ばかり: 屮 S れ るで せう e) 歸り什 度 

17) い ぼく くん ふたり と-^,. いくぶん •:、 つろ かん もっと くん 

ほ をす ると か 云 ふこと です。 僕 は K 君と 二人 だけにな つた 時に 幾分 か 賓ぎを 感じました。 尤も 

」 を劬 りたい 氣 もちの 反って K 君に こたへ る こと を惧 れてゐ るのに 遠 ひありません。 が、 鬼に 角 K 



メ、 ん いつ ひ かくてき き らく く . げん ふ ろ いちじ かく 

19; と」 しょに 比較的 氣樂に 暮らして ゐ ます。 現に ゆうべ も 風呂に は ひりながら、 一時 問 も セザァ 

ろん 

ル • フランク を 論じて ゐ ました。 

ぼく いま ぼく へや てがみ か しょし-つ ぱく 6 

僕 は 今 僕の 部屋に この 手紙 を 書いて ゐ ます。 ここ はもう 初秋に は ひって ゐ ます。 僕 はけさ 目 を 

さ A- き ぼく へ や しゃう じ うへ ち ひ やま まつばやし さか うつ み 

醒 ました 時、 僕の 部屋の 障子の 上に 小さい Y 山 や 松林の 逆さまに 映って ゐ るの を 見つけました。 • 

もちろんと ふしあな く ひかり ため ぼく はら いつ ii ん まきた^ 

それ は 勿論 戶の 節穴から さして 來る 光の 爲 だった のです。 しかし 僕 は 腹ば ひに なり、 一本の 卷堙 

こ めう す わた +r ひ しょしう ふうけい しづ かん 

草 を ふかしながら、 この 妙に 澄み渡った、 小さい 初秋の 風景に いつにない 靜 かさ を 感じました。 

とうき やう あさばん だい. 江 L0 こ 

では さやうなら。 東京 ももう 朝晚は 大分 凌ぎよ くな つて ゐ るで せう。 どうかお 子さん たちに も 

よろしくず つて 下さい。 . • . 

广 昭和 ニギ 六月 七 =〕 



454 



搴 

ぃン とうせんと うかん よこ. ゾ か ぐんかう ろくぐ わつ ぐん.^ う かこ ^*'( 

一 等 戰鬪艦 X X の 横鎖贺 軍港へ は ひった の は 六月に は ひった ばかりだった。 軍港 を^んだ 山々 

みな あめ ため けむ ぐわん らい ぐんかん ていはく さい 1*1 ねナみ ふ い 

は どれ も ii:! 雨の 爲に 煙って ゐた。 元來 軍艦 は 碇泊した が 最後、 〔取の 殖えなかった と 云 ふためし は 

またお な ながあめ なか はたた に ま ん とん やん ばん した わすみ 

ない。 —— X X も 亦 同じ ことだった。 長雨の 中に 旗 を 垂らした 一 一 萬^の X X のギ 板の 下に も 一:^ は 

い つ か 手箱 だのお 囊 だのに も つきはじめた。 

い ねナみ ため ねナみ いっぴ キ とら いちにち じ やうり く ほる い ふくち やう めいれい くだ 

かう 云 ふ 一: 取 を 狩る 爲に 一;^ を 一 匹捉 へた ものに は 一 日の 上陸 を 許す と 云 ふ 副 長の 命令の ド つたの 

ていはく > ご みっか - 一ろ もちろんす ゐ へい きくわん へい めいれい くだ とき ねっしん ねす み., ハ 

は 碇泊 後 三日に ならない 頃だった。 勿論 水兵 や 機關兵 はこの 命令の 下った 時から 埶 一心に m 狩りに 

. ねナみ かれら ちから ため みみす うへ い したが かれら いっぴき ねナみ あ- しそ 

とりかかった。 11^ は 彼等の 力の 爲に 見る見る 數を 減らして 行った。 從 つて 彼等 は 一 匹の-::^ も は 

ない il- に は 行かなかった。 

「こ の 頃 みんなの 持つ て來る fl 取 は 大抵 八つ裂き になって ゐ るぜ。 寄って たかって 引つ ばり 介 ふ も 



窓の つ. 二- 



455 



の だから。」 

ガン ルゥム に 集った 將校 たち はこん な こと を 話して 笑ったり した。 少年ら しい 額 をした A 屮尉 

もや はり t 等の 一人だった。 つゆ 空に 近い 人生 は のんびりと 育った A 中尉に はほんた うに は 何も 

r ふへ い きくわん へ 一 じ やうり ノ、 . こころ かれ ちう 

わからたかった。 が、 水兵 ゃ機關 兵の 上陸したがる 心 もち は 彼に も はっきり わかって ゐた。 A + 

ゐ まきた^^^こ か, W ら ,になし とき いへん じ , 

尉は卷 煙草 を ふかしながら、 彼等の話にまじる時にはぃ っもかぅ云ふ返_5^-をしてゐた 

「さ うだらうな。 おれで も 八つ裂き にし 兼ねないから。」 

かれ 二とば どくし,? も かれ い 4 つが かれ とも ち うん い.! つねん へ 

彼の 言葉 は獨身 者の 彼 だけに 言 はれる のに 遠 ひなかった。 彼の 友 だち の Y 中尉 は 一 年 ほど 前に 

V ふたい ため たいていす ゐ へい きくわん へい うへ れいせ う あ _ i た 1^ に よつ い 

^帶 して ゐた爲 に 大抵 水兵 ゃ機關 兵の 上に わざと 冷笑 を 浴びせて ゐた。 それ は乂何 ごとに も容: ^め 

よわ み かれたい どが つ たし かっしょく くちひげ みじか 

に 弱み を 見せまい とする ふだんの 彼の 態度に も 合して ゐる こと は 確かだった。 視 色の 口 鬆の 短い 

ャは 、 > よ 1 ビ I ル よ とキ- うへ ほ. C 一-つ 么 とき 力、 ち うん い 

彼 は 一杯の 麥 に醉 つた 時 さへ、 テ H ブルの 上に 頻杖 をつ き、 時々 A 屮尉 にかう 言ったり して ゐ 

こ。 

「どう だ、 おれたち も 泉 狩 をして は?」 - 

. ^いる あめ は あ-. 4 あ-. - かんぱんし くわん ちう ゐ い すゐ へい じ f" りく. fsi か ゆれ こヽ 

1? 雨の 晴れ 上った 朝、 甲板 士官だった A 中尉 は S と 云 ふ 水 v,^;; に 上陸 を 許可した。 それ は^の.;:. 



r 456 



鼠 を 一 匹、 11 しかも 五體の 整った^ 泉 を とった i だった。 ^^11^£が§ぃぃ3は^;:3ぃぃ 

ひ 力り あ はば やま げんて 1 く \ こ 、 ぶ- ん J J 、- > : 

の 光 を 浴びた まま、 幅の 狭い 舷锻を 下って つた。 すると化問のぉ;^がっ^矿^に鉱^を!^りな 

> _ 亡 > や うど かれ ちが ひやう し じ やう だん ハ L こ么 

がら 丁度 彼と すれ違 ふ 拍子に 常談の やうに 彼に 聲を かけた。 . 

「おい、 輸入 か?」 

「うん、 輸入 だ。」 . 

彼等の 問答 は A 中尉の 耳に は ひらす にはゐ なかった。 彼ビ S を, び. し、 の:!; I にせ; たきた 

かれら も 尺 だ ふ い み たづ だ . 

まま、 彼等の 問答の 意味 を 尋ね 屮 Z した。 

ゆに ふ な に 

「輸入. と は 何 か?」 

ちょくりつ ちう ゐ • かま み あき ,,, 

S はちゃん と 直立し、 A 中尉の 額 を 見て ゐ たもの の、 明らかに しょげ 切って ゐる らしかった. > 

「輸入と は 外から 持つ て來 たもので あります。」 

なん ため そと も き 

「何の 爲に 外から 持って 來 たか?」 , 

もう..^ もち .j- んなん ため も キ, しょうち へんじ > 、 . 

A 中 ni ^は 勿論 何の 爲に 持って 來 たかを 承知して ゐた。 が、 S の 返 察 を しないの を ij- ると、 おに 

かれ い *7、 かん ちからい つ かれ まよ なぐ 

彼に 忌々 しさ を 感じ、 カー ぱい 彼の 頰を擲 りつけ た。 S はちよ つと よろめいた ものの、 すぐ こ P, 



窓の つ 三 



457 



不動の 姿勢 をした。 

たれ そと も き 

「誰が 外から 持って 來 たか?」 

S は乂 何とも i_ "へなかった。 <1ぉ&は^を^5めながら、 もう Y ぎ i の 纏 を I りつけ るず f 

を 想像して ゐた。 

「誰 だ?」 、 

「わたくしの 家 內,. であります。」 

一面 會に來 たと きに 持って 來た のか?」 . - 

「はい。」 

A 中 HIT は 何 か、 七の 中に 微 I 夭し すに は ゐられ なかった C . 

「.1: に 入れて 持って 來 たか?」 . 

「菜 子 折に;^ れて 持って 來 ました。」 

まへ うち 

「お前 の 家 は どこ にある のか?」 

「平 坂 下であります。」 . . 



458 



ま へ お や た つ 1 や 

「お前の 親 は 達者で ゐ るか?」 

「いえ、 家內と 二人 暮らしで あります。」 . 

こ ども 

「子供 はない のか?」 

「はい。」 . 

い もんだ ふ うち ふ あん ようす あらた ちう ゐ かれ た お 

S はかう 云 ふ 問答の 中 も 不安ら しい 容子を 改めなかった。 A 中尉 は 彼 を 立た せて 抬 いたま ま、 

よこす か えち- め うつ よこす か 卞ち なか やね つ あ 

ちょっと 橫須賀 の 町へ 目 を 移した。 橫須賀 の 町 は 山々 の 中に も ごみ ごみと 屋根 を 積み上げて ゐた y 

ひ ひかり あ めう み け しき 

それ は 日の 光 を 浴びて ゐ たもの の、 妙に 見すぼらしい 景色だった。 

f-, へ L やうり v,、 キ J,- ムか 

「お前の 上陸 は 許可し ない ぞピ 

「はい。」 . ~ . 

ちう ゐ だま み まよ ち うん つぎ めい 

S は A 中尉の 默 つて ゐ るの を 見、 どうしようかと 迷って ゐる らしかった。 が、 A 屮尉は 次に 命 

れい ことば こころ たか ようい しばら たにい かんばんう へ ある ^ > 

令す る 言葉 を 心の中に 用意して ゐ た。 が、 暫く 何も 言 はすに 甲板の 上 を 歩いて ゐた。 「こ い つ は I 別 

う おそ き じ や くわん す. 'う ふく? .. 

を 受ける の を 恐れて ゐ る。」 —— そんな 氣も あ. ら ゆる 上 {ほ の やうに A 屮 尉に は 愉快で ない ことにな 

、フこ C 

力 つ た 



9 「もう 善い。 あっちへ 行け。」 

A 中尉 はやつ とかう 言った。 S は擧 手の をした 後、 くるりと 彼に 後ろ を 向け、 ハッチの; I:;-/ 

•V な 1-1^ \ . ノ J^JT r せつ どりょく ご ろつ X 、 ir- た r こよ 

歩 V て 行 力う とした。 彼 は 微笑し ないやう に 努力しながら、 S の 五六^! g つた 後、 衝 かに 又 「おい 

待て」 と聲を かけた。 . 

「はい。」 • 

S は 咄嗟に ふり 返った。 が、 不安 はもう 一度 體屮に i つてき たらしかった。 

「お前に 言 ひつける 用が ある。 平 坂 下に はク ラッカ ァを資 つて ゐる せが あるた?」 

「はい。」 . 

「あ の ク ラッカ ァを 一 袋 買 つて 來 い。」 . 

「今であります か?」 • 

「さう だ。 今す ぐに。」 

一一 一 

^ A 中尉 は 曰に 燒 けた, S の 顿に淚 の 流れる の を 見の がさなかった。 I 

クュぁ , > に さんに 匕 C も v- ぅゐ を Z なな i ヽ て * かみ 6 レま 

それから 一 一三 日た つた 後、 A 中尉 はガ ン ルゥム のテェ ブル に女名前の^^紙に:!!を通してゐたノ 



て がみ ももいろ しょかんせん お ほつ か じ なら かれ ひとと ほ よ ぃン ぼん 

手紙 は 桃色の 書簡 に覺 束ない ペンの 字 を 並べた ものだった。 彼 は 一通り 請んで しま ふと、 一本 

まキ」 たばこ ひ ちゃう どまへ ちう ゐ て がみ な わた 

の卷 煙草に.^ をつ けながら、 了 度 前に ゐた Y 中尉に こ の 手紙 を 投げ 渡した。 

なん さくじつ をつ と つみ これな く みな あさ こころ お J 

「何 だ、 これ は? 『昨日の こと は 夫の S 非に て は 無 之、 皆淺 はかなる わたくしの 心より 起り し 

S ゑ なに あしか,:: すお くだ たくさ ふら ふ なほ またお こころ tl; し のち わす 

こと 故、 佝とぞ 不悪御 ゆるし 下され 度 候。 …… 尙又御 志 の ほど は 後の ちまで も 忘れ まじく』:, 

…… J - 

ちう ゐ て ::^ み も けいべつ いろ 5 か だ ぶ あいう f う ちう ゐ かほ 

Y 中尉 は 手紙 を 持った まま、 だんだん 輕 蔑の 色 を 浮べ 出した。 それから 無愛想に A 中尉の 翻 を. 

み ひや はな 

見、 冷 かす やうに 話しかけた。 

「善根 を 積んだ と fK ふ氣 がする だら う?」 

「ふん、 多少し ない こと もない.。」 

ちう ゐ かる う なが * へる まど そと なが *t る. 5 ど そと み あま な々 

A 中尉 は輕 がると 受け流した まま、 圓 窓の 外 を 眺めて ゐた。 圆 窓の 外に 兑ぇ るの は 雨 あしの 長 

うみ かれ しばら に は なに は ちう. il に. ん; ~ -, :. 

い 海ば かりだった。 しかし 彼 は 暫くす ると、 俄かに 何 かに 羞ぢる やうに かう Y 中尉に 聲を 力け た- 

めう さび は とき か は、. なん おも > 

「けれども 妙に 寂し いんだが ね。 あいつ のビ ンタを 張った 時には 可哀 さう だと も佝 とも はな 力 

つた 癖に。 …… 」 



t う-る 1 ぎ わく ち-つんよ 、ぅヒ や-つ レめ t i 、ノー 

も Y 中 はちよ つと 疑惑と も 13 ともつ かない^ 情 を 示した。 それから, 阢 とも、^^ をし すに テ で 

ブルの 上の 新開 を 請み はじめた。 ガン ルゥム の 4" に は マー; <の^ にで や^ II もゐ が" はせ なかった。 が、 

テ エブルの 上の コップに はセ 口 リイが 何 木 もさして あった。 As_, まも このが V しい セ 口 リイの ぎ 

を 眺めた まま、 やはり 卷 煙草ば かりふかして ゐた。 かう ォふ 1^ つけない に^ま- if にも 艇し 

み を 感じながら。 

2 三人 

い. つ?. う リ f-i あるかい せん を は つち ご せき ぐんかん したが _v つ ち.; -. --, ノ , 

一等 戰歸艦 X X は 或 海戰を 終った 後、 五隻の 軍艦 を從 へながら、 靜 かに へ^って.^ っヒ" 

海 はいつ か s£ なって ゐた。 が、 お^の^お g のおに は f きい^な りのお が ひ 一とつ!! あかと^ にか 

かって ゐた。 二 萬顺の X X の屮は 勿論 まだ 落ち着かなかった。 しかし それ は の 1^ だけに, ^ き 

^ ' - たし ただせう しん もの ちう ゐ , . ^, • t 

} ^きとして ゐる こと は 確かだった。 唯 小心者の K 中尉 だけ はかう^ ふ.^ にも きれき つたき-をした 

一 (一- *^ぁ に よう み い C る 

^ 力ら 伺 力 ^ を 見つけて はわ ざと そこ ここ を步 きま はって ゐた。 

か. ^!:^-せん はじ ぜんや . ^れ かス ばん ある かくとう ,,ク > 

, この 海戰の 始まる^ 夜、 彼は5.板を步ぃてゐるぅちにかすかな角燈の^^>を,見っけ、 そっと そこ 



462 



へ 歩いて it つた。 すると そこに は 年の IS ぃ軍樂 隊の樂 手が 一人 ザ 板の 上に 腹ば ひに なり、 敵の 目 

さ かくとう ひかり せいしょ よ ナノ;.' ゐ なに かんどう がくし ゆ わさ ことば 

を 避けた 角燈の 光に 聖書 を 讀んで ゐ る の であ つ た。 K 中尉 は 何 か 感動し、 こ の樂 手に 優しい 言 紫 

を かけた。 樂手 はちよ いと 驚いたら しかった。 が、 相手の 上官の 小言 を ーず はない こと を發昆 する 

た 1., ま をん な び せう う お お かれ 二とば 二た だ わ.^ がくし ゆ 

と、 忽ち 女らしい 微笑 を 浮かべ、 怯 づ怯づ 彼の 言葉に 答へ 出した。 ::: しかし その 若い 樂手 もも 

う 今では メ ェン. マストの 根 もとに 屮 つた 砲 it の爲に 死^に なって 橫 になって ゐた。 K 巾 尉 は 彼 

し, かい み とき に は し ひと し-つ い ぶんしゃう おも だ も ちう: Q じ しん 

の 死骸 を 見た 時、 俄かに 「死 は 人 をして 靜 かなら しむ」 と 云 ふ 文 草 を 思 ひ 出した。 若し K 屮尉. on 身 

は-つ だん ため とつ V- い のち うしな .A れ い し かう ふく 

も 砲 彈の爲 に 咄嗟に 命 を 失って ゐた とすれば、 —— それ は 彼に はどう-ぶふ 死よりも 幸福の やうに 

忽 はれる のだった。 

. かいせん i へ で き - ごと J 尸ん やす ちう ゐ こころ い i C- 一 せん. v-.-t ゆん ア 

けれども この 海戰 の 前 の 出來事 は 感じ 易い K 中尉の 心に 未だに はっきり 殘 つて ゐたレ 戰闘 準備 

レ J とひ いっと-つ せんとうかん -ご せキ- ぐな., ハん したが なみ たか うみ すす ひ う げん 

を 整へ た 一等 戰鬪艦 X X はや はり 五隻の 軍艦 を從 へ、 浪の 高い 海 を 進んで 行った。 すると 右舷の 

たいはう いちもん ふた ひら すゐ へ、, せん てき かんたい あ け., 1, り い,、 

大砲が 一 門 なぜか 蓋 を 開かなかった。 しかももう 水平線に は 敵の 艦隊の 擧げる 煙 も 幾す ぢ かかす 

て み すん へい ひとり はう しん うへ *T たが はや み が. つ はう 

かにた なびいて ゐた。 この 手ぬ かり を 見た 水兵た ちの 一人 は 砲身の 上へ 跨る が n 十い か、 身 輕に砲 

こう はらば ゆ りゃう あし ふた お -, そんぐ わい S つ:. で 

口まで 腹 這って 行き、 兩 足で 蓋 を 押し あけよう とした C しかし 蓋 を あける こと は 存外 {芥 易に は 出 



: 念の つ 主 , 463 



々- すん へ い 5*^ した ビ Jr6h . 

來な いらし かった。 水兵 は 海 を 下にした まま、 佝 度 も 刚足を あがく やうに して ゐた。 が、 

を擧げ て は 白い 齒を 見せて 笑つ たり もし て ゐた。 そ の うち に X X はガ うねり に ぎ を へ ¥ け は 

どうじ またう み う げんぜんたい f V- あ V > J , , 

じめ た。 同時に 又 海 は 右舷 全體へ 凄まじい 浪 を,: T びせ かけた。 それ は 勿 M あっとず ふ ii にお i ノ i 

跨った 冰 兵の 姿 を さらって しま ふ の に 足る, も のだった。 i の.^ かに & ちた ^ ハ いはい 一つお は ¥ザ を 

あ なに っー么 さけ JJ-^J 、 、 r-Q ノ, み-、 ジ ヽ 

擧げ .i: かお ほ聲に 叫んで ゐた。 ブイ は 水兵た ちの? る, S と 1 しょこ: &んヒ /Is^ ん 一.. J-,,.J つ な) し 

ュ もも ひ.' ん てき かんたい t へ ぃヒ やう -' ダ A 广->: 

力し 勿論 X X は 敵の 艦隊 を 前にした 以上、 ポオ 卜 をお ろす 訣 I に は; t: かなかった。 あ 一 は ブイに と 

りついた ものの、 見る見る 遠ざかる ばかりだった。 彬の 運命 は: f かれ ザ かれ 面が する のに I- まつ 

てゐ た。 のみなら す 繕 はこの 海に も 決して 少 いと は: ぎ はれなかった。 …… 

り;^ ヽ 3 -^. ャ,, -, ゐ こころ かいせん まへ で キ. - n と ふ- おく だ- i う つく 

V :^K\T ... に 戰 死に 麥 する K 中尉の 心 もちはこの 海戰 の, 前 の 出來: の 記 意と 對报を 作らす こゐる 

はなかった。 彼 は兵學 校へ は ひった ものの、 いっか 一 度は自 ぼ 主き の!: ^ になる こと を IS 躯し 

てゐ た。 のみなら す 兵 學校を 卒業して から も モォパ ス サン のが 說 など を Ife して ゐた。 はか 

L P, ゐ うすぐら いちめん fs つ ベ, . L つ. つ, - 

う 云 ふ K 巾 尉に は 薄暗い 一 面 を 示し 臉 ちだった。 彼 は X X に り 組んだ 後、 H デ ブトの in んに is 

ヽ I - 、 r\ 二 PI ヒス.^ 一.^ ゆ,^ とう い ことば おも だ しゃう かう ^ し ,一, J も りろん 

、てあつた 一人 生 t^sLi と 云 ふ 言葉 を 思 ひ 出し、 X X の 將校ゃ 下 士卒 は 勿 „^£、 XX その もりこ 



464 



ことば ど ほ じん かくげん かうて つ く あ おも したが が,、 しゅ しがい キへ 

^言葉 通りに H ヂプ 卜 人の 格言 を 鋼鐵に 組み上げて ゐ ると 思ったり した。 從っ て樂 手の 死骸の 前 

なに たたか を は しづ かん すゐ へい 

に は 何 か あらゆる 戰ひを 終った 靜 かさ を 感じす に は ゐられ なかった。 しかし あの 水兵の やうに ど 

い くる おも 

こまで も 生きよう とする 苦し さもた まらな い と 思 はすに は ゐられ なかつ た。 

ちう ゐ ひた ひ あせ ふ かぜ ふ ため こうふ かんばん のぼ い 

K 中尉 は 額の 汗 を 拭きながら、 せめて は 風に でも 吹かれる 爲に 後部 円-板の ハ ツチ を 登って 行つ 

じふに インチ はうた ふ まへ き れい かほ そ かんばん しくわん ひとり りゃうて うし く 

. た。 すると 十一 一 吋の 砲塔の 前に 綺 匿に 顏を 剃った 甲板 士官が 一 人 兩手を 後ろに 組んだ まま、 ぶら 

. ^ん ばん ある また まへ か し ひ レ-り ほほ ぼね たか かほ なか うつむ はう たん うし ちょくりつ 

ぶら 甲板 を步 いて ゐた。 その 又 前に は 下士が 一人 頻骨の 高い 顏を 半ば 俯, :!: け、 砲^ を 後ろに 直立 

ちう ゐ ふく わい かんばん しくわん そば あゆ よ 

して ゐた。 K 中尉 はちよ つと 不快に なり、 そ は そ は 甲板 士官の 側へ 歩み寄った- レ 

「どうしたんだ?」 

なに ふくち やう てんけん まへ べんじょ 

r^、 副 長の 點檢 前に 便所へ は ひって ゐ たもんだ から。」 

もちろん ぐんかん なか あま めづ で き ごと ちう ゐ たし 

それ は 勿論 軍艦の 中で は餘り 珍ら しくない 出來 事だった。 K 屮尉は そこに 腰をおろし、 スタン 

と はら さ げん うみ あか か. ま つき なが だ かんばんし くわん くつ おと はか 

シ ョ ンを 取り 拂 つた 左舷の 海 や 赤い 鎌な りの 月 を 眺め 出した C あたり は 甲板 士官の 靴の 昔の 外に 

ひと ご ゑ なに きこ ちう ゐ いくぶん キ- やす かん かいせんす, う 二 ころ おも 

人 聲も狗 も 問えなかった。 K 中尉 は 幾分 か 架 安 さ を 感じ、 やっとけ ふの 海戰 中の 心 もちな ど を 思 

ひ 出して ゐた。 



窓の つ 二 



465 



,, い /ノ - > . ねが いた ?. J/- かう し う と あ し 

「もう 一 度 わたくし はお 願 ひ 致します。 善行 賞 はお 取り上げに なっても かたはありません。」 

f 丄 ^1^^ あ ► , .^-んばんしくゎん はな らう ゐ. おも .f れ み あ うすぐら かれ .As 

下 丄 は 俄に 頭 を舉げ かう 甲板 士 {nl に 話しかけた。 K 中尉 は 思 はす 彼 を兑. 1- げ、 簿 暗い 彼の 鋭 

>o〈 なに し乂& へ -.i^ じ やう かん くわい: わつ かんばんし くわん り や-つて く し-つ t> ぶ 

の 上に 例 か眞劍 な!^ 情 を 感じた。 しかし 快活な 甲板 士官 はや はり 雨 手 を 組んだ まま、 靜 かに 屮ぜ. 

ある 

を步 きつ づけて ゐた" 

「^迴 な こと をず ふな。」 

「けれども ここ に 起立 し て ゐ て は わたくしの 部下に 額 も 合 はさ れ ません。 進級 の 遍れる の も覺 42 

して をり ます。」 

しんき ふ .1 サ、 いちだいじ きりつ 

「進級の 遲れ るの は 一 大_5^ た。 それよりも そこに 起立して ゐ ろ。」 

力 ス にんし く-^ ん い のち & がる たた, ん ある ちう <- り ち てき ,ハ し *<ん しくわん S- う- 

甲板 ±官 はかう 言った 後、 ^輕に 又 甲板 を や〉 き はじめた。 K 巾 尉も理 的に は 甲板 士官に:: ^いぼ 

けん か し めい 4 しん かんしゃうて 今- おも き ゎナ 

見だった。 のみならすこ の下士の名譽心を感傷的,こ円ャふ^^ポもちもなぃ訣ではなかった。 が、 おつ 

4 めた ま た かし めう もう ゐ ふ あん 

と 頭 を 垂れた 下士 は 妙に K 中尉 を 不安に した。 

「こ こ に 起立して ゐ るの は 恥辱であります。」 

下士 は 做い 聲に賴 みつ づけた。 



「それ はお 前の 招いた こと だ。」 . 

^ つ -めま う ただ りつ 

「罰 はせん じて 受ける つもりで をり ます。 唯 どうか 起立して ゐる こと は . … : 」 

ただち じょく 、-た み ひっき やうお な 

「唯 恥辱と 云 ふ 立て ま へ から 見れば、 どちらも 畢竞 同じ ことち やない 力?」 

ぶか ゐ げん うしな くる 

「しかし 部下に 威厳 を 失 ふの はわた くしと して は 苦しい のであります」 

かメ?^^;^んしくゎ.,? なん こた かし かし -み I 、.! - r-1I? ら * し》 ノ 

甲, 叛 士官 は 何とも 答へ なかった。 下士 は、, 1 1 下士 も あきらめた と见ぇ 「あります」 に 力を入れ 

ひとこと , + こち ナ ちつ ゐ ふ あん 4^ たいち yN: し 

たぎり、 ,一 言 も 言 はすに 佇んで ゐた。 K 中尉 はだん だん 不安に なり、 (しかも 又 一 面に はこの: 卜士 

の獻^ SS に羅 され ま い と 「ェ ふ氣 もない 訣で はな かつ た。 :} ぎ か 彼の 爲に首 つ て やりた い の を 感じ 

な 二 くち で とき とくしょく ことば か は 

た。 しかし その 「何 か」 も 口を出た 時には 特色の ない 言葉に 變 つて ゐた。 

r 靜か だな。」 

「うん。」 

, i くわん こヒ こんど あご ある か いせん ぜんや ちう; 5 

甲板 士官 はかう 答へ たなり、 今度 は顆 をな でて 步 いて ゐた。 海戰の前夜に"中111^-に「„^曰 木; 

り 、 とく ていねい そ あつ 一 

成 は …… 」 などと 言 ひ、 特に 叮嚀に 剃って ゐた顆 を。 …… . 

^ この f4SIi をす ました 後、 いっか 行方不明に なって しまった。 が、 投身す る ことに 勿論 當直 



-f- き ゾ- つたい で き ちが じさつ おこな /V す せ. V- たん-一 

W の ある 限り は絕對 に出來 ない のに 違 ひなかった。 のみなら す 自殺の 行 はれ 易い 石 £ ぎ 姐の 中に もゐ 

マ はんにち あ 今; ら かれ ゆく へ ,;; 6 . に- \ 

ない こと は 半日と たたない うちに 明かに なった。 しかし 彼の 行方; 爪 明に なった こと は 確かに 船の 

し かれ はは おとうと ゐ しょつ こ かれば つ くよ か: f んし くわ,、 V- い > 

死んだ ことだった。 彼 は 母 や 弟に それぞれ 遣 書 を 残して ゐた。 彼に 剖 を. g へた 甲^ 士官 は 敝のロ 

卞广, つ,., ■ ) --, ちう ゐ せ., うしん ひとい ち ぱい かれ どう. iJ や, T ち, T ゐ ヒ しん C ビ I ル 

にも 港ち 着かなかった。 K 中尉 は 小心 もの だけに 人一倍 彼に 同情し、 K 巾 尉, H 身の 飮 まない 麥: „^ 

なんで 1. し どうじ また あ ひて よ しぐ ば、 

を 何 杯も强 ひすに は ゐられ なかった。 が、 同時に 义 相手の 醉 ふこと を 心配し すに も ゐられ なかつ 

た。 

なに い ぢ し 、 

「何しろ あいつ は 一お ^ 地つ ばりだった がらな あ。 しかし 死なな くつ て も 善 いぢ やない か CV —— 」 

あ ひて いす お なんど ぐちく かへ 

相手 は 椅子から すり 落ち かかった なり、 何度も こんな 愚痴 を 繰り返して ゐた。 

ただた . い な こし 

「おれ は 唯 立って ゐ ろと 一: つた だけなん だ。 それ を 何も 死なな くった つて、 …… 」 

ナんか I* ん ていはく のち えんとつ さ うぢ きくわん へ,, ぐうぜん か し よ っナん か::^ えし 

X X の 鎭海灣 へ 碇泊した 後、 煙突の^^除にはひった機關兵は^然この下土を發化した。 彼 は 煙 

とつ なか た ひと くさり い し かれ すゐ へいふく も ち ろん よ にく や お わり 、が 

突の 中に 垂れた 一す ぢの 鎖に 縊死して ゐた。 が、 彼の 水兵服 は 勿論、 皮., や 肉 も 堯け洛 ちた 爲に" 卜 

三 : - > 

C ) カ1> こ 一" い はなし ちう ゐ つた -:1 ナ 

ぎ つて ゐ るの は 骸^ だけだった。 かう 云 ふ 話はガ ン ルゥム にゐた K 巾 尉に も 傅 はらない; |g はたかつ 

i ムム , ; i れ ふ し は, Q た ふ まへ たたす すがた おも だ ザハ つき かま 

た 彼 はこの 士の 砲塔の, ig に 佇んで ゐた姿 を 思 ひ 出し、 まだ どこかに il^ い 月の 錄 なりに かかつ 



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てゐる やうに 感じた。 • 

さんにん し ちう ゐ こころ くら げ な かれ かれら なか じんせい ぜんたい 

この 三人の 死 は K 中尉の 心に いつまでも 暗い 影 を 投げて ゐ た、。 彼 はいつ か 彼等の 中に 人生 全體 

かん だ ね /げっ えんせい, し: S ぎ しゃ ぶない ひやう ばん よ かいぐん せう しゃう ひとり かそ 

さへ 感じ 屮:: した. し しかし 年月 はこの 厭 i 主義者 をい つか 部內 でも 評判の 善い 海軍 少將の 一人に 数 

へ はじめた。 氣は 揮毫 を勸 めら れて も、 滅多に 擎を とり 上げた ことはなかった。 が、 やむ を i:^ な 

ば あ:^ かなら ぐ わで ふ か 

い 場合 だけ は必 す畫帖 などに かう 甕いて ゐた。 I . 

き厶. みよ さう がんの いろ 

君 看 双 股 色 

か た.^ ざ れば う れ ひなき にに たり 

不語 似無愁 

3 一等 戰鬪艦 XX 

ノ 「とうせんとう. A/ よこす か ぐズ, ゾリ しう ん こうじ ようい は-か , 

tl 等 戰鬪艦 X X は 橫須賀 軍港の ドックに は ひる ことにな つた。 修 緒 工事 は 容易に 涉 どらな かつ 

こ まん,、 ン たか り や- li: ん ない ぐ わい む すう しよくこう なんど いらだ - 

た。 Tl 萬啦の X X は 高い 兩舷 の: s: 外に 無数の 職工 をた からせた まま、 何度も いつにない^ 立た し 

さ をぎ じた。 が、 海に 浮かんで ゐる こと も蠣 にと りっかれ る こと を m.- へば、 むづ 岸い 氣 もす るの 

に 違 ひなかった。 



^ 横- 貌賀 軍港に は X X の 友 だち の △△ も, g 泊して ゐた。 一 萬ん 一 一千 I? の 厶厶 は X X よりもお の い 

. ,. んか丄 かれら ひろ うみ ご 七 きん \ こふ; -HiM し ス - 11 1 --, -^ h . 

軍艦だった。 彼等 は 廣ぃ海 越しに 時々 聲 のない をした。 <s は XX の ぜ^に はき! i、 0^ 

T お かお くる やす どうじ やう に i ため、. 'ど " J か 

の ザ 落ちから 蛇の 狂 ひ 易い ことに 同情して ゐた。 が、 X X を §^ 爲に J 度 も そんな は^を 5^ しゲ 

つたこと はなかった。 のみなら す 何度も 海戰 をして 來た X X にた i する" ままの にいつ もぎ- とま, 

ひて ゐた。 

すると 或 曇った 午後、 △ A は火藥 威に 火の は ひった i にき かに i!- ぃ艇 li を ずげ、 1^ ば ま:^ に 

横にな つてし まった。 X X は 勿論び つくりした。 (尤も;^!^ の g じお ち はこの X X の i へたの を i 

り てき かいしゃく 亡, が か ^-.tj ん 、 -- ノ 

理 的に 解 釋 したのに 遠 ひなかった。) 海戰 もしない <!△ のきに SfS になって しま ふ、 11 そし は!^ 

tl, や "^とん しん - くら ゐ かれ つと おどろ かく 

際 X x に は^ど:^ じられ ない 位だった。 彼 は 努めて 驚き を^し、 はるかに △△ を 蘭したり した。 

J 1 た t ほのほ けれり た C ぼ な.. ハ ただうな 1 ご ゑ た 

力 △△ は 傾いた まま、 炎 や 煙の 立ち E 升る 中に 唯^り 聲を 立てる だけだった G 

- ノ y -ん は-か のち に まん トン り やろ げん すゐ あつ うしな た 力- --: .-、 > > 

. 一一 それ 力ら:: 一は: Z たった 後、 一 ;萬噸 の X X は 刚舷の 水壓を 失って ゐた爲 にだん だん. 屮秘 もお ぎれ 

(ハ . ようす み しょくこう いよいよ しう ^ノ> こうじ - そだ 

ぎ はじめた。 この 容子を 見た 職工た ち は 愈 修縫 工事 を 急ぎ 出した。 が、 X X はいつ の にかお ,:nl 

ゆ 身 を 見離して ゐた。 △△ はま だ 年 も 若い のに □! の 前の 海に 沈んで しまった。 かう ふ 厶厶の 



おも かれ , ^やうが い すくな よろこ くる な つく 力し - ニ卞 ノ〕 力-.. > 

を 田 わへば、 彼の 生涯 は少 くと も 喜び や 苦しみ を 嘗め 盡 して ゐた X X はもう せ 曰に なった.;^ 海 1-5- の 

時 を 思 ひ 出した。 それ は 旗 もす たす たに 裂け * ば、 マスト さへ 折れて しま ふ 海 1^ だった。 …… 

一- . 'レン \リ か, なか たか かんしゅ もた かれ まへ じゅんや うかん 

T 一 萬噸の X >-は白じらと乾ぃたドックの中に高だかと艦首を^^^:けてゐた。 彼の. 前に は 巡^艦 や 

く ちくて、 なくせき しゅっこ ふ あた せんか-つてい すゐじ やう ひかう き み i > 1 

驅逐 ぎが^ 隻も 出ん して ゐた。 それから 新ら しい 潜航艇 や 水上飛行機 も 見えない こと はな 力った I 

, よ. A ん て くも よこす 、-^ 

しかし それ 等 は X X に は 果な さ を 感じさせる ばかりだった。 X X は 照ったり! g つたり する 横:^ V ノ 

" ; -1 うべ, -- A.Ji う N? め、 ま あ ひだ 力/ゆ"/ 

Ijaf ぎ を 見 1^ した まま、 ぢ つと^の 運命 を 待ちつ づけて ゐた" その 問 もや はりお のづ から 甲板の じ 

そ かへ く いくぶん ふあんかん こ _ ゾ • 

りじり 反り返って 來 るのに 幾分 か 不安 を 感じながら。 …… 

. (昭和 二 年 六月 十 =) 



I レエ ン. コ オト 

:-。 く ちる し び と ナ つ-一ん ひ ろうしき ため かぶん ひと さ とうかいだ う あ, ていしゃち やう おく 

僕 は 或 知り 人の 結婚 披露 式に つらなる 爲に飽 を 一 つ 下げた まま、 東海道の 成 停車が" へその 、の 

• ひ しょち じ ど-つし や と じ どうしゃ はし みす,' りゃう たいてい まつ しげ ) ぼ れノ, -ゃ 

避 暴 地から 自動車 を 飛ばした。 自動車の 走る 道の 兩が はは 大抵 松ば かり 茂って わた 丄り ダ^に 

ま b か ,M リ ちゃ が じ どうしゃ ちゃう どぼく ほか あるり trj 、-ん しゅじん C 

間に合 ふか どうか は 可也 怪しい のに 違 ひたかった、」 自動車に は r 度 俊の 外に 或现髮 店の 主人 も * 

ちょ かれ なつ 6 ふと みじか あ n ひげ も ぬし „?: く じ - やん キ- 

り 化せで ゐた。 彼 は 棗の やうに まるまると 肥った、 短い 顋!? の 持ち主だった" 僕 は 時 ゆ を;^ にし 

と き,.^、 かれ はなし 

ながら、 時々 彼と, 一 1^ をした。 

■c う や しふ- ひるま いうれ いで い 

「妙な こと もあります ね。 X X さんの 星 敷に は賓 間で も幽 靈が屮 _ るって- ム んで すか 」 

ひる .<li 

「晝 問で もね。」 

,,t,r こし. 少 あた むか まつや ま なが い > げん てうし あは 

僕 は. i§ の 西 W の當 つた 向う の 松 山 を 眺めながら、 善い 加 に 調子 を 合せて ゐた 

「お y お 1, の 奢 い Si に はがない さう です。 一 番多 いのは 雨の ふる 日 だって 1.ェ ふんです がピ 



3 「雨の ふる 日に 儒れ に來 るん ぢ やない か?」 

7 

4 ごじ やう だん さ いうお い い 

「御 常談 で。 …… しかし レ H ン • コォ卜 を 着た 幽靈 だって: ム ふんです。」 

じ どうしゃ な あるて いしゃ: VT やう よこ-つ t, ク / ふるり はってん しゅ ヒん わか てい 

動 車 は ラッパ を^ら しながら、 或 停車場へ 横着け になった" 僕 は 或理髮 店の 主人 に^れ、 ^ 

しやち やう なか い はた C ぼ れク しゃ に さんぷん 生へ で ひしつ 

車 場の 中へ は ひって (u つた。 すると 果して 上り列車 は 二三 分 前に 屮 I たばかりだった.」 待 <:! 室 の ベ 

ンチに は レエ ン • コ オト を 着た が 一 人 ぼんやり 外 を 眺めて ゐた。 はゲ 聞いた ばかりの 幽亂の 

はなし おも お く つ と か: つぎ わ ジし や i ため ていし や^ゃう まへ 

話 を 思 ひ 出した。 が、 ちょっと 苦笑した ぎり、 鬼. に 角 次の 列車 を r:^ っ爲に 俘 車 場 前の カツ フ H へ 

は ひる ことにした。 

それ は カツ フ ェ と- 1 ^ふ 名 を與, へる の も考へ ものに 近い カツ フ H だった. し 僕 は 隅の テ エブルに^ 

いっぱい ちう も ス 一 しろち -. -、 そ あや ^ス あら か-つし 

• り、 ココア を. 一 杯 註文した。 テ H ブル にかけ た オイル • クロォ スは 白地に 細い 靑の線 を 荒い 格子 

ひ み 人;.. - y 'すゼ たな あら は や」 く にか はく" 

に 引いた ものだった」 しかしもう 隅々 に は 薄: い 力 ンヴァ スを 露して ゐた" 僕 は 膠, い コ コ ァを 

C ひと なか み ほ: り かべ おやこどんぶり 

飲みながら、 人げ のない カツ フ ェ の 中 を 見 ま はした。 埃 じみた カツ フ H の 壁に は 「親子丼」 だの 

, 「カツレツ」 だのと 「ェふ 紙 札が 何枚 も 貼って あった。 

fi 、 P 、 、、、、 

^ 「地 玉子、 ォ ムレ ッ J 



474 



, し 力. t だ とう 力 L た-つ" ん ち 力 ゐ なか かん むぎ f たナ f ヒア あ >ビ し. *-」 V--' . J ソ -3 

僕 はかう 云.^ 紙 礼に 東海道線に 近い 田舍を 感じた。 それ は 麥白田 や キヤべ ッ iil の 問に- mim 觀 1 車 

の 通る 田舍 だった。 …… 

つぎ のぼ お つし や ひぐれ ちか ころ ぼく -, - とう G な,. 

次の 上り列車に 乘 つたの はもう 日暮に 近い 頃だった。 俊 はいつ も 二等に 乘 つて ゐた。 が、 か 

つが ふじ やう とき さんとう G 

の 都合 上、 その 時 は 三等に 乘る ことにした。 

& しゃ なか か なり あ ぼく ぜん 一 ご おな: き ん そく - 

汽車の 中 は 可 3 こみ 八:: つて ゐた。 しかも 僕の 前後に ゐ るの は大礮 かど こかへ 遠足に 〔仃 つたら し 

せう がく かう ぢ よせいと f .S きたば こ ひ , ぢ よせ >と .!< が 

い.,:^ 學 校の 女生徒ば かりだった。 僕 は卷: g 草に 火 をつ けながら、 かう 云 ふ 女生, 徒の 群れ を 眺めて 

ゐた。 彼等 は いづれ も 快活だった。 のみなら す 殆ど しゃべり is けだった。 

r 寫眞屋 さん、 ラヴ. シ インって 何?」 

る! ん そく キ- まへ しゃし ズゃ なん ちゃ に-, ご 

やはり 遠足に ついて 來 たらしい、 僕の 前に ゐた r 寫眞屋 さん」 は 何とかお 茶 を 滞して ゐ た。 しか 

^ふ.; i, ご, r つよせ や-く- ひとり』 と 7 ノ、 か CV- よ はな 4,- く e うし やう 

し I'll 五の 女生徒の 一人 はま だいろ. いろの-こと を 問 ひかけ てゐた C 僕 はふと 彼女の-! :9|; に蒂膿 ffi の 

うん たに お Hi たばく A! な じふに vi ぢ よせいと 

ある こと を 感じ、 何か顿 笑ます に は ゐられ なかった。 それから 又 僕の 隣り にゐた 十二 三の 女生徒 

ひし」 り』 f, か ぢ よけ-つし ひざ ろ i すわ かたて か ぢょ くプ だ かたて か c.,, よ ほ S 

の 一人 は 若い 女 敎師の 膝の 上に 坐り、 片手に 彼女の 頸 を 抱きながら、 片 乎に 彼女の 顿を さすって 

たれ はな あ ま と 今ん, \ ぢ よ:.: うし は な 

ゐュ に。 しかも 誰かと 話す 合 ひ 間に 時々 かう 女 教師に 話しかけて ゐた e 



5 「可愛い わね、 先生 は。 可愛い 目 をして いらっしゃる わね。」 

7 

4. j; れら tr、 ぢ よせ.., と いちにん まへ を /(な い かん あた りんご か は か 

彼等 は 僕に は 女生徒よりも 一人前の 女と 云 ふ 感じ を與 へた。 林 擒を皮 ごと 嶙 じって ゐた り、 キ 

,3- み リ C; て とし ぢ よせいと ひたり i た、 そぶ とほ 

ャラ メルの 紙を剝 いて ゐる こと を 除けば。 ::: しかし 年 かさら しい 女生徒の 一人 は 俟の側 を 通る 

とき .< れ ちし ふ み ごめん こ幺 か C ぢょ か 4^ ら 

時に 誰かの 足 を 踏んだ と 見え、 「御免なさい まし」 と變を かけた。 彼女 だけ は 彼等より もませて ゐ 

かへ f く ぢ よせい A- ?!^ く まきたよ こ く は むじゅん かん ぽノ、 じ しん 

る だけに 反って 俊に は 女生徒ら しかった。 僕は卷 煙草 を啣 へた まま、 この 矛质を 感じた 僕 自身 を 

冷笑し ない 訣には 行かなかった。 

でんとう き しゃ あるかう ぐ わい ていしゃ ぢ やう つ ?^, 、 かぜ む 

い つ か 電燈を し」 もした 汽車 は や つ と 或 郊外 の 停車場 へ ^15 い た。 僕 は 風の 斑い プラット フ ォォム 

^ 、ち ど よし わた うへ しやう せんでん しゃ く ま ぐうぜん かほ あは ある 

へ 下り、 一度 總を 渡った ヒ、 省線 電車の 來 るの を 待つ ことにした。 すると 偶然 颜を 合せた の は 或 

くわ、 し^ くし ぼ てら でス しゃ ま あ ひだ ふ けいき はな あ くん もり 

ノ%社にゐる1 !^^^だった。 僕 等 は 電車 を 待って ゐる 不景氣 のこと など を 話し 八:: つた。 T ^ は 勿 

A-A^: い もんだい つう たくま かれ ゆび あま ふ けいき えん ト ル 

論 僕な どよりも かう ームふ 問題に 通じて ゐた。 が、 しい 彼の 指に は餘 り不景 (飒 には緣 のない 十, 斗 

コ いし ゆびわ は 

古石の 指環 も 嵌まって ゐた。 

「大した もの を山欣 めて ゐ るね。」 . 

^ しゃう ぱい い とも § びわ か いよ 

^ 「これ か? これ は ハルビンへ 商寶 にれつて ゐた灰 だち の 指環 を 買 はされ たんだよ。 そいつ も个 



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は 往生して ゐる。 コ オペ ラテ イヴと 取引き が出來 なくなつ たもの だから。」 

,^'/6 しゃう せんでん にや .V, ひに キ. - しゃ くら たら --し 

僕 等の 乘 つた 省線 電車 は 幸 ひに も 汽車 ほどこんで ゐ なかった。 僕 等 は 並んで 腰をおろし、 いろ 

はな くん はる パリ つと さき とぅヶ やう かへ 

いろの こと を 話して ゐ た-〕 T 君 はつい こ の 春に 巴 里に ある 勤め先から 柬京 へ歸 つたば かりだった リ 

した^ ぽ rf. よ ひだ パ り はなし で が ふ じん .*:-„~ し かにれ うり t なし ごぐ わい > う も-,, もる つ-,) 

從 つて 僕 等の 間に は 巴 里の 話 も 出 勝ちだった。 力 イョオ 夫人の 話、 蟹 料理の 話、 御 外遊 巾の」, 殿, 

か はなし 

下の 話、 …… 

フ ラ ン ス 一 てんぐ わい 二 iH ただぐ わ N! らい フ ラ ン ス じん い ザ. -だ こく」 ん 

r 佛蘭西 は 存外 困 つ て はゐな いよ。 唯: 兀來怫 蘭 西 人と :ム ふ や つ は稅を 出した がらな い 國 おだか ら、 

內閣 はいつ も 倒れる がね。 …… 」 

「だって フ ラ ンは 暴落す るし さ。」 

しん、、 一ん よ み たま しんぶ/〕 しじ やう 二 rM ん 

「それ は 新 問 を 請んで ゐれ ばね。 しかし 向 うに ゐて見 給へ。 新聞紙 上の 日ポ なる もの はの べつに 

ぉほぢ しん だいこう, すゐ 

大地, ゃ大 洪水が あるから。」 

き をと こ ひとり ぼくら むか き 二し ぽく ふ や み 

すると レ H ン. コ オト を 着た 男が 一 人 僕 等の 向う へ來て 腰をおろ した-し 僕 はちよ つと 無ハ に 

なに、 へ き いうれ い はなし くん はな こころ かん く/ *, "つ. *s え 

なり 佝かぷ i に 聞いた 幽霊の 話 を T 君に 話したい 心 もち を 感じた C が、 は その" -1 に 杖の 柄 を 

ひだり む かほ まへ む -- ーごム ぼく. はな 

くるりと 左へ 向け、 顔 は. 前 を 向いた まま、 小聲に 僕に 話しかけた。 



7 「あすこに 女が 一人 ゐる だら う? 風 色の 毛糸の ショ オル をした、 …… 」 

4. せいやう がみ ;:> , ビ, < な 

「あの 西洋 髮に 結った 女 か?」 

ふ ろ にさ つつ かか をん な なつかる ゐざは しゃ やう 

「うん、 風呂敷 包み を 抱へ て ゐる女 さ。 あいつ はこの 复は輕 井 淨にゐ たよ。 ちょっと 洒落, れた洋 

さう- 

装な ど をして ね」 

か C ぢょ たれ めみ もが ぼく くん はな 

しかし 彼女 は 誰の 目に も 見すぼらし いなり をして ゐ るのに 違 ひなかった。 僕 は T 君と 話しな が 

か {; ちょ なが かのちよ * ゆ あ ひだ "X か かん か- M 

ら、 そっと 彼女 を 眺めて ゐた。 彼女 は どこか の 問に 氣遠 ひらし い 感じの する 額 をして ゐた。 し 

た ふ ろ し. *K つつ な^ へう に かいめん だ 

かも そ の乂 風呂敷 包 み の 中 か ら 豹に 似た 海綿 を は み 屮:: さ せて ゐ た。 

かるん て は とき リか アメリカじん をと な/、 ノ 

「輕 井澤に ゐた 時には 若い 亞. 米 利 加 人と 踊つ たりして ゐ たつけ。 モダァ ン …… 何と 云 ふやつ か 

ね。」 

キ- を. V こ ぼ,、 くん わか と々」 ^く にや-;' せん 

レ H ン • コォ卜 をい :!^ た 男 は 僕の T 君と い W れる 時にはい つか そこに ゐ なくなって ゐ た。 僕 はお 線 

てんしゃ あるて いしゃ; T やう た: ん さ ある ある い わう らい り やう,, 小 H た 

電車の 或 停車場から やはり 飽を ぶら マ-げた まま、 或 ホテル へ步 いてれ つた。 往來の 雨 側に 立って 

たいていお ほ ほく ある つ^やし おも だ 

M ゐ るの は 大抵 大きい ビ ル、、 テ イングだった 僕 は そこ を步ぃ てゐ るう ちに ふと 松林 を 思 ひ 出した。 

^ ぼ: し や めう み だ めう い 

の みならす 僕の 視野 の うちに 妙な も の を 3- つ け 出した。 妙な も の を? と 云 ふ のは艳 えす ま は 



はんと-つめい はぐるま ぼ/、 い けいけん まへ なんど も あは はぐるま しだ *. 

つて ゐる 半透明の 齒 車だった。 僕 はかう 云 ふ 經驗を 前に も 何度か 持ち合せて ゐた。 齒車は 次第に 

かす ふ なか ぼく し や ふさ なが しぱ 今 

數を 殖やし、 半ば 僕の 視野 を 塞いで しま ふ、 が、 それ も 長い ことで はない、 暫 らくの 後に は r 扪ぇ 

• 失せる 代りに 今度 は 頭痛 を 感じ はじめる、 11 それ はいつ も 同じ ことだった。 眼 称の i: 者 はこの 

さく かく ため たび/ \ ぼく せつえん めい い は ぐる, H ぼく たばこ したし はたち nh へ み 

錯覺 (?) の爲に 度々 僕に 節煙 を 命じた〕 しかし かう 云 ふ 歯車 は 僕の 煙草に 親まない 二十 前に も兑 

ぼ,、 また おも ひだり め しりょく ため かたて み >? 力 

えない ことはなかった。 僕 は 又 はじまつ たなと 思 ひ、 左の nw の; 1 力 をた めす 爲に 片手に 右の n を 

ふさ み ひだり め はた なん みぎ め まぶた うら はぐるま いく 

塞いで 見た。 左の 目 は 果して 何,, ごもなかった。 しかし 右の 目のへ J の 裏に は齒 車が 幾つ もま はって 

ぼく みぎが は しだい き み わう らい ある い 

ゐた。 僕 は 右側の ビル、、 ティ ングの 次第に 消えて しま ふの を 見ながら、 せっせと;^ 來を 歩いて 行つ - 

ふこ。 

ひ/ 

げん,、 わ/、 とき はぐるま キ- 5 づ つう のこ ぽく 

ホテルの 玄關へ は ひった 時には 齒車 ももう 消え失せて ゐ た- が、 頭痛 はま だ 残って ゐた」 僕 は 

ぐ わいた う ばう し あ-つ ついで へや ひと もら ある ざっし しゃ でんわ 

外套 や 帽子 を 預ける 次 手に 部屋 を 一 つと つて 貰 ふこ 「こにした。 それから 或雜誌 社へ. 窗話を かけて 

かね さ うだん 

金の こと を 相談した。 

けっこん ひ ろ-つし き ^^んさん はじ ぼく すみ 

1^ 婚 披露 式の 晚餐 はとうに 始まって ゐ たらしかった) 僕はテ H ブルの 隅に 坐り、 ナイフ ゃフォ 

00 

7^ うご だ しゃ ラ めん しんら う しんぶ しろ あ ふじ けい つ ご じん にん 

4 ォクを 動かし 出した。 正面の 新郎 や 新 婦 を はじめ、 白い iK 子 形の テ H ブルに 就いた 五 卜 人 あまり 



ひと もす.' ろん や, 2...- * ほく こころ あか でん レ-ぅ ひかり した ノ つうつ 

9 の 人び と は 勿論 いづれ も陽氣 だった。 が、 僕の 心 もち は 明るい. お 5-^ の 光の 下に だんだん 憂 |^) にな 

7 

4 ぼく こころ C- が ため 上な り きゃく はな かれ もやう どし し 

るば かりだった。 僕 はこの 心 もち を遁れ る爲に 隣に ゐた 客に 話しかけた。 彼 は厂度 獅子の やうに 

しろ :!!^ ひぜ 、 らう じん ?-く な し あるな だか かんがくしゃ したが 

白い 顿>ャ け を 仲ば した 老人だった。 のみならす僕も名を知ってゐた或名高ぃ漢學^^だった。 從 つて 

また ぼくら はなし こ てん うへ お い 

又 僕 等の 話 はいつ か 古典の 上へ 落ちて 行った。 

き りん いっかく じう まう,. V う 1 とり 

「麒麟 はつ まり 一 角獸 です ね。 それから 鳳凰 もフ ェ 一一 ック スと云 ふ 鳥の、 …… 」 

な だか かス がくしゃ い ぼく はなし きょうみ かん y パ、 ャ .A :„ ,含 

こ の 名高い 漢學者 はかう 云 ふ 僕の 話に も 興味 を 感じて ゐる らしかった。 僕 は 機械的に しゃべ つ 

び やうて き はくわい 4 く かス げぅ しゅん か くう じんぶつ ももろ ぐ しゅん, つ ち i4 しゃ 

てゐ るう ちに だんだん 病的な 破 壞愁を 感じ、 堯舜を 架空の 人物に したの は 勿論、 「泰 秋」 の 著者 も 

のち • かんお い ひと はな だ お/、 がくしゃ ろ こつ ふく わい へう じ やう しめ 户こ 

すっと 後の 漢 代の 人だった こ と を 話し 出し た す る と この^ 學者は 露せ に 不快な 表情 を-: 小し、 少 

ほく かほ み ほ とん とら うな ぼく はなし f よな 

しも 僕の 額 を 見す に 殆ど 虎の る やうに 僕の 話 を截り 離した。 

げ つし: i ん 二う し ,r そ せいじ C うそ t*- 

「もし 堯 舜もゐ なかった とすれば、 孔子 は譃 をつ かれた ことになる。 聖人の 謔 をつ かれる はな 

い。」 

s-f く も T ろ/ Al^ .JH ださら うへ にく くよ 

..1 僕 は 勿論 つてし まった。 それから 又 皿の 上の 肉へ ナイフ ゃフ ォォク を 加へ ようとした C する 

^ ち、 ひ うじ いっぴき しづ にく ふち う 一 ごめ ぅヒ ぼ マ、 あたま なか 、, えい-ご よ お 二 

と 小さい 蛆が 一 匹靜 かに 肉の 緣に憲 いて ゐた。 蛆は 僕の 頭の 巾に AVorm と-ぶふ 英: f^i を 呼び 起し 



^80 



まてき りん ほうわう ある でんせつて きど-つぶつ い み ことば f-tA 

た」 それ は 又 麒麟 や 風 凰の やうに 或 傳說的 動物 を 意味して ゐる 言葉に も 違 ひなかった。 街 は ナイ 

フゃフ ォォク を^き、 いっか 僕の 杯に シャン パァ 二 ュ のつ がれる の を 眺めて ゐた。 

ば X さん のち く まへ お ぼく へ や V-6 ひとげ らう ハ 

やっと 晩餐の すんだ 後、 僕 は 前にと つて 置いた 僕の 部屋 へ こもる 爲 に人氣 のない 廊> を ri^ ノ いて 

行った。 it 下 は 僕に は ホテルよりも 監獄ら しい % じ を與 へる ものだった。 しかし 幸 ひに も % ^だ 

ま うす 

けはいつ の 問 にか 薄ら い で ゐ た。 

僕 9 部屋に は飽は 勿論、 帽子 や 外套 も 持って 來 てあつた〕 僕は|.:にかけた:^!-に俊自^^"の^,":ち 

す 力た 力ん いそ へ や すみ いしゃう と だな なか はふ き や OlJ 1 ま、 ゆ 

姿 を 感じ、 .f:.^ い-で それ を 部屋の 隅の 衣裳 戶 棚の 中へ 拋 りこんだ。 それから 鏡臺の 前へ き、 おつ 

ふぶ み 巧.、 かほ .i^ つ かがみ うつ S く かほ ひ ふ した ほんぐ あら うじ , ぼく 

と 鏡に 僕の 顏を 映した。 鏡に 映った 僕の 額 は 皮膚の 下の 竹 組み を 露 はして ゐた。 虮 はかう^ ふ 僕 

の 記憶に 忽ち はっきり 浮か び 出 した。 ■ 

ぜズ と らう か で い ある い で 4.- み みどり 

僕 は戶を あけて 廊下へ 出、 どこと 云 ふこと なしに 歩いて:,:: つた。 すると 口 ツビ ィへ 出る に綠 

かさ せ たか でんとう ひと ガ ラ ス ど あ-,.」 や うつ i-- ぼく 

いろの 笠 を かけた、 の 高い スタンドの. m 燈 がー つ 硝子 戶に鮮 かに 映って ゐた。 それ は か 僕の 

こころ へいわ かん あた ほく まへ い r すわ 4" んゲ 

、七に 平和な 感じ を與 へる ものだった。 僕 は その 前の;^ 子に り、 いろいろ のこと を考 へて ゐた. - 

-ご -.1 ん すわ わ.!:: は こん ビ また W く よこ 

が そこに も 五分と は 坐って ゐる訣 に (n かなかった レ H ン. コ オト は 今.^ も 亦 僕の 横にあった 



ながい すせ なかい か fc' - . 

1 長椅子の 背中に 如何にも だら りと 脫ぎ かけて あった 

00 

4. いま かんちう ^ 

「しかも 今 は 寒中 だと 云 ふのに. ピ 

僕 はこん な こと を考 へながら、 もう, 1 度 廊下 を 引き返して つた 廊下の 隅の 給仕 だまりに は 

ひ 七り きふ じ み かれら はな ご ゑ ぼく みみ い , なん 

一人 も 給仕 は 見えなかった。 しかし 彼等の 話し 聲 はちよ つと 僕の 耳 を かすめて つた それ は佝 

とか 言 はれた のに 答へ た AU right と rK ふ 英語だった。 r ォ オル • ライ 卜」?. 1 . 伐 はいつ かこの 

ん-- わ. "み. tj 、かノ 、つか なに L> た L 

對 話の 意味 を 正確に 摑ま うと あせって ゐた。 「ォ オル。 ライト」? r ォ オル • ライト」? 付が ー體 

ォ オル. ライ 卜な ので あらう? 

^<ノ 、へ; U もちろ。 と めう ぼく 丄きみ ぼく 

の 部屋 は 勿論 ひっそりして ゐた。 が、 戶を あけて は ひる こと は 妙に 僕に は無氣 味だった" 僕 

n おも き へやな か い 力え みみ 

はちよ つと ためらった 後、 思 ひ 切って 部屋の 中へ は ひって 行った。 それから 鏡 を 見ない やうに し 

つく,^ まへ、 すこし いす とかげ か は ちか あ を が は あんらくい す 

机の 前の 椅子に 腰をおろした •」 椅子 は 蜥赐の 皮に 近い、 靑ぃマ P ック 皮の 安樂 椅子だった」 仪は 

いばん げんかうよ うし だ あるた 乂ぺん つづ ノ ) - • . 

飽を あけて 原稿用紙 を 出し、 或 短篇 を續 けようと した けれども インク をつ けたべ ン はいつ まて 

うご うご おも おな ことば ゲ 

たっても 動かなかった。 のみなら す やっと 勖 いたと 思 ふと、 同じ 言 薬ば かり 醫 き つ づ けて ゐた" 

齒 

I All riglit …… All ^ -^. : : : All right, sir …… All riglit …… 



とつぜんな だ ゎキ- でんり 卞ク、 おどろ た あが じゅ わ キ. ふみ. 

そこへ 突然 鳴り 出した の は ベッドの 側に ある 電話だった。 僕 は 驚いて 立ち上り、 受話器 を .::^ へ 

やって 返事 をした。 

「どなた?」 

「あたしです。 あたし …; 」 

あ ひて ぼく あね わすめ 

相手 は 僕の 姊の 娘だった" 

なん ■ 

「何 だ い ? どうかし たの か い ? 」 

「ええ、 あの 大 へんな ことが 起つ たんです。 ですから、 …… 大 L へんな ことが 起った もんです から、 

いま を .i ふ でんわ 

今 叔母さん にも 電話 を かけたん です。」 

r 大 へんな こと?」 - 

「ええ、 ですから すぐに 來て 下さい- - すぐにで すよ。」 

でんわ き ぼく じ ゆわ *v にん しゃてき ボ レン お ,, 

電話 は それぎ り 切れて しまった」 僕 はもとの やうに 受話器 を かけ、 1^ 射的に ベルの 釦 を^した。 

ff/ て ふる ぼく じ しん い しき きふ じ ようい こ 

しかし 僕の 手の. 震 へ てゐる こと は 僕 自身 はっきり 意識して ゐた。 給仕 は 容易に やって 來な 力った- 

まく いらだ くる かん な, -ど ボダン お うんめい ぜゾ、 やん、, -1 

4 僕 は^ 立た しさよりも 苦し さ を 感じ、 何度も ベルの 鈕を 押した、 やっと 運命の 僕に 敎 へた 「ォォ 



い こと は れ うかい 

3 ル . ライト」 と 云 ふ 言葉 を 了解しながら。 

8 

ほく あね をつ と ひ つ 一 ご とうき やう あま はな ある ゐなか れきし き せつ 

僕の 姊の夫 は その 日の 午後、 東京から 餘り 離れて ゐ ない 或 田 舍に櫟 死して ゐた。 しかも 季節に 

.v^-w^ ぼく へや まへ たんぺん か 

緣 のない レ H ン. コ オト を ひっかけて ゐた。 僕 はい まも その ホテ ルの 部屋に 前の 短篇 を 書き つづ 

ま よ なか らう か たれ とほ とき- 5^ と そと つばさ おと .^J, 、こ 

けて ゐる。 眞 夜中の 廊下に は 誰も 通らない。 が、 時々 戶の 外に 翼の 昔の 聞え る こと も ある。 どこ 

とり か し 

かに.: Ill でも 飼って あるの かも 知れない。 

二 復響 

へ や カー ぜん はち じ ごろ め さ 

僕 はこの ホテルの 部屋に 午前 八 時 頃に 目を醒 ました。 が、 ベッド をお りょうと すると、 ス リツ 

ふ し ぎ かた いちに ねん あ ひだ ぼく きょうふ ふ あ 

パァは 不思議に も片 つぼし かなかった。 それ はこの 一二 年の 問、 いつも 僕に 恐怖 だの 不安 だの を 

あた . げんし やう かた ギリシャ しんわ なか わう じ お,^ だ 

與へ る 現象だった。 のみなら すサ ンダ アル を片 つぼ だけ はいた 希 職 神話の 中の 王子 を 思ひ屮 I させ 

げ /.t やう ぼく お きふ じ よ かた ざが もら キふ 

る 現象だった。 僕 は ベル を 押して 給仕 を 呼び、 スリッパ ァの片 つぼ を 探して 貰 ふこと にした。 給 

じ かほ .せ ま へや なか さが 

^1 仕 はけ げんな 額 をしながら、 狭い部屋の 中 を 探し ま はった。 

ま 

車 「ここに ありました。 この バスの 部屋の 中に。! 



「どうして 又 そんな 所に f 仃 つて ゐ たの だら う?」 

れチみ し * 

「さあ、 一!^ かも 知れません リ」 

ぼノ、 き. じ しりぞ のち ぎう にゅう い コーヒー の まへ せう せメ し あ ぎょう くわいがん し 

俊 は 給仕の 退いた 後、 牛^ を 人れ ない 珈琲 を飮 み、 前の 小 說を化 上げに かかった。 凝 灰 3: ぬ を 叫 

かく く まど ゆき に は むか まく やす たび き なが 

角に 組んだ 窓 は 雪の ある 庭に 向って ゐた。 僕 はべ ンを 休める 度に ぼんやりと このき を 眺めたり し 

き つぼみ も ぢん ちゃうげ した とく わい ばいえん なに ぼく こころ いた あた 

た。 雪 は荅を 持った 沈丁花の 下に 都會の 煤煙に よごれて ゐた。 それ は 何 か 僕の 心に 傷まし さを與 

なが ぼく まきたばこ うつ) 力/力 

へる 眺めだった。 僕は卷 煙草 を ふかしながら、 いっか ペン を 動かさす にいろい ろの こと を考 へて 

つま こ ども なかん-つく あね をつ と 

ゐ たし 妻の こと を、 子供た ちの こと を、 就中 姊の 夫の こと を。 …… 

す:. 4 をつ とじさつ まへ はう くわ け/ぎ かう む また じつ V- いし かれ いへ や 

姊の夫 は 自殺す る 前に 放火の 嫌疑 を 蒙って ゐた。 それ も 亦赏際 仕 かたはなかった。 彼 は 家の 燒 

まへ _ ひへ か かく に ばい くわ さい 一. H けん か に ふ ぎしょ, つ ざい を か ため しっかう いうよ す. 'う 

ける. 前に 家の 價 格に 二倍す る 火災 保險に 加入して ゐた。 しかも 偽證 を 犯した 爲に 執れ^ 豫 中の 

.A らお ^く ふ おん かれ じ V- つ ぼく .v,r き やう かへ たび かなら 

體 になって ゐた。 けれども 僕 を 不安に したの は 彼の 自殺した こ と よりも 僕の 東京 へ ii る 度に 、ゼす 

ひ も み ぼく あるひ き しゃ なか やま や ひみ あるひ じ ど. つ 

火の 燃える の を 見た ことだった。 僕 は 或は 汽車の 中から 山を燒 いて ゐる 火を兑 たり、 或は 乂 自動 

しゃ なか とき さいし いつ とき は ^t-しかぃゎぃ くわ じ み . ^れ 

車の 中から (その 時 は 妻子と も 一 しょだった じ 常 磐 橋 界隈の 火事 を たりして ゐた】 それ は 彼の 

8 、- へや まへ ぼく くんじ よ かん あた わけ ゆ , 

4 i 豕の燒 けない 前に もお のづ から 僕に 火事の ある 豫感 を與 へない 訣には 一.;;: かなかった。 



車齒 



485 



二 とし つづ- くわ じ L 

「今年 は 〈j^ が 火事になる かも 知れない ぜ:」 

えんぎ わる く. ヒ たいへん けん ろノヽ 

「そんな 緣 起の 惡 いこと を。 …… それでも 火事に なったら 大變 です ね。 保險は 碌につ いて ゐ ない 

し、 …… 」 

<くら はな あ . ぼく いへ や |^,ク、 つと , うざう お 

僕 等 はそんな こと を 話し合った りした) しかし 僕の 家は燒 けす に、 11 僕 は 努めて」,: 想 を 押し 

いちど うつ j いんぎ やう らく う-ご t.v、 

のけ、 もう 一度 ペン を 動かさう とした。 が、 ペン はどうしても 一行と は樂に 動かたかった」 僕 は 

つく ゑ まへ はな うへ ころ よ 

とうとう 机の 前 を 離れ、 ベッドの 上に 轉 がった まま、 卜 ルス トイの Polikouchka を讀 みは じめ 

せ. T せつ しゅじんこう きょえいしん び やろ てき に いかう めいよ しん い キし ふくざつ せ, -,^ く も ぬし 

た。 この 小說の 主人公 は 虛榮心 や 病的 傾向 や 名 譽 心の 入り 交った、 複雑な 性格の 持ち主だった," 

かれ いっしゃう ひ き げき た せう しう せい く は ぼく い" しゃう こと 

しかも 彼の 一生の 悲喜劇 は 多少の 修正 を 加へ さへ すれば、 僕の 一 生の カリ カテ ュ ァ だった。 殊に 

かれ ひ き げき うち うんめい れいせ う かん し だい ぼく ぶ き ム だ ぼく いに じ かん 

彼の 悲喜劇の 中に 運命の 冷笑 を 感じる の は 次第に 僕 を無氣 味に し 出した。 僕 は 一 時 とたたない 

うへ と お はや まど V : や すみ ちからい つ ほん は: 

うち に ベ ッ ド の 上から 飛び起き るが 早 いか、 窓 かけの 垂れた 部屋の 隅へ 力 一 ばい 本 を拋り つけ 

た。 

「くたばって しまへ!」 - - 

お ほ いっぴき まど した へ や なな ゆかう: はし い にく い > そ,. V 

すると 大きい 鼠が 一 匹 窓 かけの 下から バ スの 部屋へ 斜めに 床の 上 を 走って 行った。 僕 は 一 足 飛 



びに バ スの 部屋へ 行き、 戶を あけて 中 を 探し ま はった" が、 ii い タツ ブ のかげ にも 凰ら しい もの 

み ぼく きふ ぶきみ あわ くつ か ひとげ らう か 

は 見えなかった" 僕 は 急に 無氣 味に なり、 慌てて スリッパ ァを 靴に 換へ ると、 人 I やの ない 廊下 を 

ある い 

歩いて 行った。 

らう か あ ひか まらす らう ごく いうう つ ぼく あたま た ..パ いだん あが お 

廊下 はけ ふ も 不相變 牢獄の やうに 憂 だった。 僕 は 頭 を 垂れた まま、 階段 を 上ったり 下りたり 

して ゐる うちにい つか コック 部屋へ は ひって ゐた。 コック 部屋 は 存外 明るかった。 が、 片側に 並 

かまど ひく まの ほ う-ご ^く とほ しろ ばう 

んだ竈 は 幾つ も 炎 を 動かして ゐた。 僕 は そこ を 通りぬ けながら、 白い 帽を かぶった コ ック たちの 

ひや ぼ,、 み かん どうじ また ぼく お ぢ つ フ、 かん かみ われ ばつ たま いい 

冷やかに 僕 を 見て ゐ るの を 感じた。 同時に 又 僕の 墮 ちた 地獄 を 感じた。 「祌 よ、 我 を 罰し 給へ" 怒 

たま なか おそ われ ほろ い き たう しゅんかん ぼく くちびる 

り 給 ふこと 勿れ。 恐らく は 我 滅びん。」 —— かう 云 ふ祈禱 もこの 瞬間に はおの づ から 僕の 辱に のぼ 

ら ない 訣には 行かなかった。 

ぼく そと で あ を うつ ゆき ど みち あね いへ 4 める い 

僕 はこの ホテル. の 外へ 出る と、 靑ぞら の 映 つた 雪解け の 道 を せっせと 姊の 家へ 步 いて 行った. レ 

みち そ こう 幺ん じゅもく みなえ だ は くろ / いっぽん ちゃう どぼくら にんげん 

道に 沿うた 公園の 樹木 は i_ め 枝 や 葉を黑 ませて ゐた。 のみなら す どれ も 一 本 ごとに r 度 僕 等 人 ii の 

ま、 うし そな また まく ふく わい きょうふ ちか はこ き ぼく 

やうに 前 や 後ろ を 具へ てゐ た。 それ も 亦 僕に は 不快よりも 恐怖に 近い もの を 運んで 來た" 僕はグ 

6 

3 ぢ ごく なか じゅもく へ- 1 しひ おも だ なら でんしゃ せんろ 

4 ンテの 地獄の 中に ある、 樹木に なった 魂 を 思 ひ 5,1 し、 ビルディング ばかり 並んで ゐる 線路の 



ある いっち やうぶ じある で さ 

^ 向う を步 くこと にした。 しかし そこ も 一 町と は 無事に 4^ くこと は 出來 なかった。 

4 

とほ しつれい 

「ちょっと 通りが かりに 失禮 です が、 …… 」 

ノ . i んボ, J ン せいふく き に じふに さん せいねん まく だま ' み -1 t , 

それ は 金鈕の 制服 を 着た 一 一士 ニニの 靑 年だった。 僕は默 つて この i^aj. を兑 つめ、 B の^のお の 

£^ ほソ、 ろ はっけん かれ ばう ぬ おお W く ュ A な 

仰に 黑 子の ある こと を發 見した。 彼 は 帽を脫 いだ まま、 if っ怯づ かう 街に^ しかけた G 

「 A さんで はいらつ しゃいません か?」 

「さう です。」 

「どうも そんな 〈湫 がした ものです から、 …… 」 

なに ご よう 

「何 か 御用です か?」 

1 r た め ぼく せんせい あ、, どくしゃ 

「いえ、 唯お 目に かかりたかった だけです。 僕 も 先生の 愛讀 者の 」 

とき ばう かれ うし ある だ ト-ん ト-、 

僕 はもう その 時には ちょっと 帽を とった ぎり、 彼 を 後ろに 歩き 出して ゐた。 先、: i^、 A 先^、 1 

■ { く つ 一ろ もっと ふく わい ことば く あく を.^ - - 

—それ は 僕に はこの 頃で は 最も 不快な 言葉 だ つ た。 , 僕 は あらゆる 14 惡を 犯して ゐ る こ と を俱じ て 

ニン - X かれら なに きく わい ぼく せんせい よ く ^く あ r ノ .モ- 

齒 ゐた。 しかも 彼等 は 何 かの 機 會に僕 を 先生と 呼びつ づけて ゐた。 僕 は そこに 僕 を嚇, る 化 もの. か を 

求 ^じすに は ゐられ なかった。 ^もの か を.. .—— しかし まの IKlk は, まぎ!^ を^ぎ せす に は. P 



488 



ぼく に さんか げ つまへ あるち ひ どうじ/ぐ-つし . ノ ことば はつべ う 

られ なかった-」 僕 はつい 二三 筒 月 前 にも 或 小さい ! 1; 人雜誌 にかう 云 ふ 雷 葉 を發 表して ゐた C 11 

ぼく げ いじ つて.,^ りゃう しん はじ い りゃう しん も .55^ く も し」 に 1 

「僕 は 藝術的 良心 を 始め、 どう 云 ふ 良心 も 持って ゐ ない。 僕の 持って ゐ るの は 神 終 だけで ある。」 



姊は 三人の 子供た ちと, 1 しょに 露地の 奧のバ ラックに 避難して ゐた。 視 色の 1 を贴 つた バ ラッ 

クの中 は 外よりも 寒い くら ゐ だった。 僕 等 は 火鉢に 乎 を かざしながら、 いろいろ のこと を 話し合 

か^だ た. '、ま あね をつ と ひといちば いや ほそ ぼく ほん C うて さ けいべつ ! は,、 さくひん 

つた。 體の逕 しい 姊の夫 は 人 一 倍 痩せ細った 僕 を 木 能 的に 輕 蔑して ゐた。 のみなら す 僕の 作品の 

ふ だっと: こうげん ぼく ひや い れ み い ケ, ど う 

不道德 である こと を 公言して ゐた。 僕 はいつ も 冷やかに かう 云 ふ 彼 を 見お ろした まま、 一度 も 打 

はな あね はな かれ ぼく r,- .-7 -,. 

ちとけ て 話した ことはなかった。 しかし 姊と 話して ゐる うちに だんだん 彼 も 僕の やうに 地狱 に, W 

ちて ゐ たこと を 悟り 出した。 彼 は 現に 寢薹 車の 中に t 靈を 見た とか fK ふこと だった。 が、 僕 は あ 

煙草に 火 をつ け、 努めて 金の ことば かり 話しつ づけた C 

「何し ろ かう r ムふ だ しする から、 何も彼も 寶 つ てし ま は うと 5^ ふ の 。」 

「それ はさう だ。 タイプ ライタ ァ など は 幾らかになる だら う。」 

「ええ、 それから 畫な ども あるし 二 



ついで あね をつ と せう グ: つ C ノ, う 

9 「次 乎に N さん (姊の 夫) の 肖像 畫も寶 るか? しかし あれ は 」 

8 

僕 は バラックの 壁に かけた、 額緣 のない J 枚の コンテ 畫を兒 ると、 迂濶 に常談 もず はれない の 

かん れきし かれ き しゃ ため かほ にノ、 くわい わ-つ ただ くちひげ のこ 

を 感じた。 礫 死した 彼 は 汽車の 爲に顔 もす つかり 肉塊に なり、 做 かに 唯 口髭 だけ 殘 つて ゐ たと か 

い はなし もちろん はなし じしん T すき み わる ナ> が ムれ ^-r ざつぐ わ 

云 ふこと だった。 この 話 は 勿論 話 自身 も 薄 氣味惡 いのに 遠 ひなかった。 しかし 彼の 肖像 畫は どこ 

くわん ぜん か くちひげ く くわう 仆-ん か げん おも 

も 完全に 描いて ある ものの、 口髭 だけ は なぜか ぼんやりして ゐた。 僕 は 光線の 加減 かと 思 ひ、 こ 一 

の 一 牧の コ ン テ畫を いろいろの 位置から 眺める やうに した" 

「何 をして ゐ るの?」 

なん ただ せう ざ うぐ わ くち . 

「何でもな いよ。 …… 唯 あの 肖像 畫は 口の ま はりだけ、 …… 」 

姊 はちよ つと 振り返りながら、 何も 氣づ かない やうに 返事 をした。 

ひげ めう うす 

「髭 だけ 妙に 薄い やうで せう。」 • 

ぼく み さく かく V- くかく ぼく ひるめし, -^J ジ 

僕の 見た もの は錯覺 ではなかった。 しかし 錯覺 ではない とすれば、 11 僕 は 午 飯の f 話に なら 

な いうちに 姊の ,^ を 出る ことにし た ) 

車 「まあ、 in いでせ う。」 



490 



lA.^ - あ を やま で 

r 乂 あしたで も、 …… け ふは靑 山まで 出かける の だから。」 

I か.,: だ ぐ あ ひ わる 

一 ああ、 あすこ? まだ 體の 具合 は惡 いの?」 

「やつば り藥 ばかり 嚥 んでゐ る。 催眠 藥 だけで も大變 だよ。 ヴ H ロナ アル、 ノィ a 十 アル、 卜リ 

ォナ アル、 ヌマ アル …… 」 • 

さんじつ ぶん のち ぼく ある リフトの ク, C バ.. 

三十 分ば かりたった 後、 僕 は 或 ビルディングへ は ひり、 昇降機に 乘 つて 三^への ぼった。 そ,. - 

. ガー フス どお ガ ラ ス ど う,, J 

力ら 或 レス 卜 オランの 础子戶 を 押して は ひらう とした。 が、 硝子 戶は 動かなかった。 のみなら す 

ていき. び や うるしぬ ふだ さが ぼく -ム 、よふく. r-* ,b -ノ マ、 ど ^ . 

そこに は 「定休日」 と 書いた 漆塗りの 札 も 下って ゐた。 僕 は 愈 不:^ になり、 砲 子戶の 1 うの テェ 

つへ りんご も み . "ち ど わ うら、 r. : J - - , " J 

ブルの 上に 林檎 や バナナ を 盛った の を 見た まま、 もう 一度 往来へ 出る ことにした。 するとが 

をと こ ふ, •> なに くわいく わつ .,-カ ?く か.,: . 

らしい 男が 一 一人 何 か 快活に しゃべりながら、 この ビ ルディ ング へ は ひる 爲に I- の 肩 を こすつ て;;:;: 

かれら ひとり ひやう し 

つた。 彼等の 一人 は その 拍子に 「イラ イラして ね」 と 言ったら しかった。 

^く わ, らい 丄 たす とほ ^ あは う- とな 

僕 は 往來に 佇んだ なり、 タク シィの 通る の を 待ち 合せて ゐた。 ク クシ ィは容 P つに 通らなかった? 

とほ かなら き くる i き K, く か...' つろ し 

のみなら すた まに 通った の は必す 黄い ろい 車だった C (この 黄い ろい ク クシ ィは なぜか, 俊に.: 父 通^ 

こ めんだ う つね ばく えんぎ い みどり み と パく あ,, V 

故 の 面倒 を かける の を 常と し てゐ た。) そ の うちに 僕 は緣起 の 好い 綠ぃ ろの^ をえ つ け、 e もに^ 卞円 



や i ぼち ちか せいしんび やう ゐん で , 

I 山の 墓地に 近い 精神病院へ 出かける ことにした 

9 

4 

「ィ ライラす る、 tantalizing Tantalus Inferno 」 

じっさい. 力 ラ ス ど > ご くだ も C なが ぼく じ しん ぼくに ど ぼくめ う 

タンタ ルス は贲際 础子戶 越しに 果物 を 眺めた 僕 自身 だ つた。 僕 は 一 一度 も 僕の 目に 浮かんだ ダ ン 

ぢ 1,1 く のろ うんてんしゅ せ なか なが また .^-t^; 

テの 地獄 を.??" ひながら、 ぢ つと 運轉 手の 背中 を 眺めて ゐた。 そのうちに 又 あらゆる ものの であ 

かん だ せ、. ち ヒ つげ ふ げいじゅつ くわが く みな い ぼく おそろ じス せい 

る こと を 感じ 出した。 政治、 赏業、 藝術、 科學、 I - いづれ も呰 かう 云 ふ 伎に はこの 恐し い 人生 

t ざっしょく ほか ぼく いきぐ る かん ま. =^ 

を隱 した 雜 色の H ナ メルに 外なら なかった。 僕 はだん だん, 苦し さ を 感じ、 タク シィの 窓 を あけ 

まな なに しん ざう かん さ 

^つたり した。 が、 何 か 心臓 を しめられる 感じ は 去らな かつ. た。 

みどり じしぐ うまへ まし ぁるせ ぃしんびゃ^^^^^ん まが よこ もやう ひ と 

綠 いろの タク シィ はやつ と 神宮. 前へ 走り かかった。 そこに は. 精神病院へ 曲る 横^が 一 つ ある 

1^ ぼ V、 ぼく でんしゃ せんろ そ な/と 

&;: だった。 しかし それ もけ ふだけ は なぜか 僕に はわから なかった。 僕 は 電車の 線路に ル. 出 ひ、 何度 

わう.^ く のち 

も タク シィを 往復 させた 後、 とう と う あ き らめ ておりる ことにした。 

く よこち やう み お ほ みち まが い に, ち; Kt- ^ 、 * 

俊 はやつ とその 橫町を 見つけ、 ぬかるみの 多い 道 を 曲って 1,0 つた。 するとい つか 553 を 問逮へ 

あ を やま? いちゃつ まへ て かれこれ I ふねん ぜん ifJ つめ せんせ,! i こ. くべつん < ^い、 ふい > - - 

T 靑山齋 場の. 前へ 出て しまった。 それ は 彼是 十 年 前にあった 夏 目先 生の. ila^ 式. 來、 一.^ も仪 はに 

齒 - 

J1- t ハ レ i.* たても つ じふ ねんぜん ぼく かう ふく す,、 な へ 1>7. 

す の 前 さへ i. つたこと のない 建物だった。 十 年 前の 僕 も 幸; i ではなかった。 しかし 少く とも. ャ和だ 



l:hi く じゃり し もん なか なが そうせきさん ばう ば せ-つ おも だ なに ぼく いっしゃう いち 

つた。 僕 は 砂利 を 敷いた 門の 中 を 眺め、 r 漱 石山 房」 の 笆蕉を 思ひ屮 I しながら、 何 か 僕の 一生 も 一 

. 段落の ついた こと を 感じない 訣には 行かなかった。 のみなら す この 墓地の 前へ 卜 年 n に 僕 を つれ 

て來た 何もの か を 感じない 訣 にも 行かなかった、 し 

ち るせ., しん. ひやう ゐん もん で のち ぽく また じ どうしゃ C キ,. かハ 

或 精神病院の 門 を 出た 後、 僕 は 又 自動車に 乘り、 前の ホテルへ 歸る ことにした。 が、 この ホテ 

げ/〉 くわん き をと こ ひとり なに ふ:、: じ けんく わ きふ じ 

ルの 玄關へ おりる と、 レ H ン • コ オト を 着た 男が 一 人 何 か 給仕と i は啼 をして ゐた。 給仕と? —— 

きふ じ みどり ふく き じ どうしゃ がか ぼく 

いや、 それ は 給仕で はない、 綠 いろの 服 を 着た 自動車 掛 りだつた。 僕 はこの ホテルへ は ひる こと 

なに 二 きつ こころ かん みちひ かへ い 

に 何 か 不吉な 心 もち を 感じ、 さ つ さと もとの 道 を 引き返して. 1;;: つた。 

It- く ぎ スざ どま で とき かれこれ ひ くれ ちか ぼく りゃうが は なら みせ め つお】 

僕の 銀座 通り へ 出た 時には 彼是 日の 暮も 近づ いて ゐた。 僕は兩 側に 並んだ 店 や::: まぐ るし い 人 

ど _H つ *c う、 うう つ こと わう らい ひと》^;.^ つみ い し 

通りに 一 層憂聽 になら すに は ゐられ なかった。 殊に 往來の 人々 の などと 云 ふ もの を 知らな レゃ 

けノ くわ ひ ある ふく わい ぼく うす あか ぐ わいく わう でんとう ひかり なか . 

うに 輕 快に 歩いて ゐ るの は 不快だった。 僕 は 薄明る い 外 光に: m 燈の 光の まじった 中 を どこ まても 

きた ある い ^< め とら ざっし つ あ ほんや > ソ、 

北へ 歩いて 行った。 そのうちに 僕 の 目を捉 へたの は雜 誌な ど を 積み上げた 本屋だった。 仪 はこの 

ほんや みせ なん だん しょだな み あ ギリシャ しんわ い . い. つ",": つ,, - v:^ 、 

本屋の 店へ は ひり、 ぼんやりと 何 段 かの 書棚 を ni- 上げた。 それから フ 布臘祌 話」 と: ぶふ 一冊の 本へ 

9 め とほ き へう し ギリシャ しんわ こども ,め か -ノ: --, 二 C* 」 

4. 目を通す ことにした。 黄い ろい 表紙 をした 「希 臉 神話」 は 子供の 爲に害 かれた ものら し 力った け 



: う ザん ぼく よ い." つぎ やう たち ま ^く う 

3 れ ども 偶然 僕の 讀んだ 一 行 は 忽ち 僕 を 打ちのめした C . 

9 

飞ー 希 偉い ッォ ィ ス の 神で も復 響の 祌に はかな ひません。 …… 」 

ぼく ほんや みせ し ひと なか あるい まが だ なく せ なか ヒ W く 

僕 はこの 本屋の 店 を 後ろに 人 ごみの 中 を 歩い て 行った C い つか 曲り 出した 俊の 北 n: 中に 絶えす 

ねら ふくしう ., ハ. み - かん 

をつ け 狙って ゐる復 響の 神 を 感じながら。 …… 

三 夜 , 

く まる. 七ん にかい しょだな でんせつ み に さんべ ー ジ め とま 

僕 は 丸 善の 二階の 書棚に スト リント ベルグの 「傅 說」 を 見つけ、 二三 IHr つつ s: を した。 それ は 

僕の 經驗と 大,. 差の ない こと を 書いた ものだった。 のみなら す 黄い ろい 表紙 をし てゐ た。 僕 は 「傅 

つ しょだな もど - 一ん ど ほ とん て あた しだい あつ ほん い つ さ つ ひ だ 

說」 を 書棚へ 炭し、 今度 は 殆ど 手當り 次第に 厚い 本 を 一 冊 引きす り 出した。 しかし この 本 も 桶し 

ゑ いちまい ぼくら にんげん か は め はな はぐるま たら ある ドイツじん あつ 

畫の 一枚に 僕 等 人 問と 變り のない、 口 鼻の ある 齒車 ばかり 並べて ゐた。 (それ は或獨 逸人の 菜め た 

せいしんび やうし や ぐ わし ふ ぼく いうう つ なか はんかうて キ せいしん おこ かん 

精神病 者 の畫 集だった。) 僕 はいつ か 憂變の 中に 反抗的 精神の 起る の を 感じ、 やぶれ かぶれに なつ 

.V ばくき やう ほん ひら い ほん かなら ぶんし 4.,;- -. なノ" 

齒 た赌博 狂の やうに いろいろの 本 を 開いて In つた。 が、 なぜか どの 本 も 必す文 か 插し査 かの 巾に 

多少の 針を隱 して ゐた。 どの 本 も? — 僕 は 何度も 請み 返した 「マダム • ボヴァ リイ」 を 手に とつ 



とき ひっき やう ぼく じ しん ちう さんかい きふ ほか かん > 

た 時 さ へ、 畢竞僕 自身 も中產 階級の ム ッ シゥ • ボヴァ リイに 外なら ない の を 感じた。 …… 

ひ くれ ちか i る ぜん にかい ぼく ほか きゃく ぼく でんとう ひかり なか しょだな あ ひだ 

日の 暮に 近い 丸 善の 一 一階に は 僕の 外に 客 もない らしかった。 僕 は 電燈の 光の 中に 書棚の 間 を さ 

> しゅうけ う い ふだ 1- か しょだな まへ あし やす みどり ヘラし いつ 

まよって 行った。 それから 「宗教」 と 云 ふ 札を揭 げた 書棚の 前に 足 を 休め、 綠 いろの 表紙 をした 一 

さつ まん め とま まん もくじ だいなん しゃう おそろ よつ て 今; ぎ わく 今よう ふ けう ん くわん 

冊の;^ へ 目を通, した。 こ の^は 目次の 第 何 章 かに 「恐し い 四つの 敵、 1 1 疑惑、 恐怖、 驕慢、 官 

うてきよ ぐ. う い ことぶ なら . ほく い ことば み はや いっそう はんかうて きせい しん おこ 

能 的 欲望」 と 云 ふ 言葉 を 並べ てゐ た。 僕 はかう 云 ふ 言葉 を 見る が 早い か、 一 3^ 反抗的 精神の 起る 

かん ら てき よ すくな ぼく かんじゅせい り も いみ やう ほか 

の を 感じた。 それ 等の 敵と 呼ばれる もの は少 くと も 僕に は 感受性 ゃ理 智の與 名に 外なら なかった- 

でんとうてきせ いしん きんだいてき せいしん ぼく ふ .A う い.^ かよ ぜズ - 

が、 倚統的 精神 もや はり 近代的 精神の やうに やはり 僕 を 不幸に する の は 愈 僕に はた まらな かつ 

ぼく まん て もち じ. g りょうよ し い ことば おも 

た。 僕 はこ の 本 を 手に した まま、. ふといつ かべ ン: 不ェム に 用 ひた S 陵 余 子」 と 云 ふ 一 W 葉 を m あ ひ 

だ かんたん あゆ まな じゅりょう あゆ .C す だ,.^ う ほ ふく ■ ききす; , 

出した。 それ は 邯鄲の歩み を學 ばない うちに 壽 陵の 步みを 忘れて しま ひ、 蛇行^ 甸 してお 鄕 した 

い かんぴ し ちう せいれん こんにち ぼく だれ め じゅりょう よし ぶ , - ヽ X 

と 云 ふ 「韓非 子」 中の 青年だった。 今日の 僕 は 誰の 目に も r 壽陵余 子」 であるのに 違 ひなかった し 

お , ザ、 お ぼく もち ぼく お ほ しょだな 

かしま だ 地獄へ 墮 ちなかった 僕 もこの ベ ン: 不 H ムを用 ひて ゐ たこと は、 —— 僕 は 大きい 書棚 を 

うし つと まう ざう よら ちゃう どぼく むか てんらん しつ t 

後ろに 努めて 妄想 を撕 ふやう にし、 丁度 僕の 向う にあった ボ スタァ の展覽 室へ は ひって 行った 

9 い V- まい たか せい きし ひとり つばさ ゆう さ にろ 

4 が、 そこに も 一 枚の ボス タァの 中には 聖ヂ ョォヂ らしい 騎士が 一 人冀の ある 龍 を 刺し殺して ゐん 



キ. - し 力 ふと 1- た ぼく て 今. 1 ひとり ち. A ゝヽゝ つら * よ" あ. lr.H f . t z 、 ,《■ \ - 

^ しかも その 騎 十-は §s 下に 僕の 敵の 一 人に 近いし かめ 衝を ¥ ば露リ てゐ た。 I- は;? ri ぎ i?,」 のお 

4 AI り: ^ぶ; - ¥ はなし おも だ てんらん しつ AJ ほ 丈ば ひ 6 か- ん く.; こ , ■ 

の 1:3? 龍の 鼓の 話 を 出し、 展覽室 へ 通りぬ けす に. f の廣ぃ 階段 を 下って (t; つた。 

巧、、 よる に ほんばし ど ほ ある とり ゆう , こと i ふス に. -- - 

僕 はもう 夜に なった 日本 橋 通り を步 きながら、 :;&龍と;!^ふ首葉を考へ つづけた。 それ は 力 俊の 

持って ゐる 说の銘 にも 遠 ひなかった。 この 視を 僕に 贈った の は 或 II い 事 Is^ だった。 m はいろ い 

ろの 事業に 失敗した 揚句、 とうとう 去年の 暮に 破産して しまった。 ,i は 一 I い!^ を が1- げ、 きま; の 

ほし ひかり なか きう す-ひ , て-: 

星の 光の 中に どの くら ゐこ の 地球の 小さい かと IK ふ こ と を、 I .仏 力つ て ど の くら ゐ き^!ぁ のお さ 

> L カス え ;し る ま に f てら ' ■ > 

レ 力と 云、 ぶこと を考へ ようとした。 しかし 晝問は 晴れて ゐた {ゃ; もい つかもう すっかり 暴つ てゐ た。 

僕 は 突然 何もの かの 僕に 敵意 を 持って ゐ るの を 感じ、 電車 線路の 1 うに ある § カツ フ ェ へ Ife す 

る ことにした。 

, つなん にが ほく ぶ.^ - 、ろ パ, f , 二: ゝ、 ゥ ., , » .. 

それ は 「避難」 に 遠 ひなかった。 僕 はこの カツ フ H の? 經藏 色の ぎに H か! に いもの を^ じ、 

一番 奥の テ H ブルの 前に やっと 樂々 と 腰をおろした。 そこに は, jjp ひ 僕の^ にゴ ヨガ "の!^ くの あ る だ 

齒 けだった。 僕 は 一杯の n コ ァを 啜り、 ふだんの やうに 卷 煙草 を ふかし 屮:: した。 H が I- の體^ ぎき 

色の 壁へ かすかに 靑ぃ煙 を 立ちのぼらせて つた。 この!! しい 色の 調和 もや はり i に は 1^ お だつ 



た。 けれども 僕は暫 らくの 後、 僕の 左の 壁に かけた ナボレ オンの 宵 像畫を 見つけ、 そろそろ 义不 

あん かん だ がくせい とき かれ ち り さいご 

安 を 感じ 出した。 ナボ レ ォ ンは まだ 學 生だった 時、 彼の 地理の ノオト • ブック の 最後に 「セ ェ ン 

す-ひ し i しる あるひ ぼくら い ぐうぜん し 

ト。 ヘレナ、 小さい 島」 と 記して ゐた。 それ は 或は 僕 等の 言 ふやう に 偶然だった かも 知れな かつ 

じ しん きょうふ よ おこ たし 

た。 しかし ナポレオン 自身に さへ 恐怖 を 呼び 起した の は 確かだった。 

ぼく み ぽくじ しん さくひん かんが だ き おく う 

僕 は ナボレ オン を 見つめた まま、 僕 自身の 作品 を考へ 出した。 すると まづ 記憶に! かんだ の は 

しゅじゅ ことば なか 二と じんせい ぢ _* 了、 ぢ っフ、 てき い ことば 

「保 儒の 言葉」 の 中の ァフ ォ リズ ム だった。 (殊に 「人生 は 地獄よりも 地獄 的で ある」 と 云 ふ 言葉 だつ 

ぢ _* フ 、へ/? しゅじ: こう よし ひで い ゑし うんめい ぼく まきたばこ 

た。) それから 「地獄 變」 の 主人公、 11 良 秀と云 ふ 畫師の 運命だった。 それから 僕 は卷煙 ics. 

い き おく のが ため なか なが ザ/、 ひ 

を ふかしながら、 かう 云 ふ 記憶から 逃れる 爲 にこの カツ フ ェ の屮を 眺め ま はした。 僕の ここへ 

なん ご ふん まへ たんじ かん あ ひだ ようす 

難した の は 五分 もた たない 前の ことだった。 しかし この カツ フ H は 短 時 問の 間にす つかり 容子を 

あらた なかんづく ぼく ふく わい い す す-一 つ, <[ 

改めて ゐた。 就中 僕 を 不快に したの は マホガ 二 ィ まが ひの 椅子 ゃテ ヱブルの少しもぁたりの^^1^ 

-' ろ かべ てう わ たも ^二 いちど ひとめ み : る なか ふ 

色の 壁と 調和 を 保って ゐな いこと だった。 僕 はもう 一 度 人目に 見えない 苦しみの 中に 落ち こむ の 

おそ ぎんく わ いちまいな だ はや そう/,、 で 

を 恐れ、 銀貨 を 一枚 投げ出す が 早い か、 匆々 この カツ フ H を 出ようと した。 . 

6 

9 に じっせんい ただ 

ギ 「もし、 もし、 二十 錢預 きます が、 …; 」 



7, 僕の 投げ出し たの は 銅貨だった。 

9 

1 ぼく くっしよ く かん わう にい ある とほ i つ? - やし なか マ. -,、 、ゝ おち 

僕 は 屈辱 を 感じながら ノ ひとり 往來 を步ぃ てゐ るう ちに ふと 遠い 松林の 屮 にある 僕の 家 を 思-じ 

屮: した。 それ は 或 郊外に ある 僕の 養父母の ではない、 唯 僕を屮 心に した % 族の 爲に 借りた 家 だ 

つた。 僕 は 彼是 十 年. 前に も かう ーズふ { ぼに 暮らして ゐた。 しかし 或 事情の 爲に 輕 率に も と:: 5^5 

た ど-つ;: J また ど れい ばク つくん ちから りこし ゆ: さし や か. H だ 

し 出した。 同時に 又奴識 に、 暴君に、 力の ない 利 已主凝 者に If り 出した。 

前の ホテルに 歸 つたの はも う 彼是 十 時 だ つ た。 す つ と い 途を歩 い て 來た僕 は 僕 の 部 厘 へ M る 

力 を 失 ひ、 太い 丸太の 火 を 燃やした 爐の 前の 檢 子に 腰をおろした。 それから 僕の 計畫 して ゐた長 

^ , fi んお、 だ , : すゐこ め いぢ いた かくじ だい たみ し; 3 じんこ-つ だいたい さんじ ふ あ i たん 

篇 のこと を考へ 出した。 それ は 推 古から 明治に 至る 各 時代の:^ を 主人公に し、 火體 三ト餘 りの 短 

篇を 時代 順に 連ねた 長篇 だった。 僕 は 火の粉の 舞 ひ 上る の を 見ながら、 ふと 宮城の 前に ある 5ii 

ざう おも だ どうざう かつす, う き す-う ギ- こころ か うま - つ- が 

像 を ひ 出した。 この 銅像 は 甲胄 を 着、 忠義の 心 そのものの やうに 高 だかと; の 上に^つ てゐ た。 

しかし 彼の 敵だった の は、 11 

齒 」 

^ ^ン、 .? !.; とほ く. や こ. ま ケ, か ば/だい お さい は き あは 」 め るせ z*< V- うこ:^ 

僕は乂 遠い 過去から HI 近い 現代へ す ベ り 落ちた。 そこへ 幸 ひに も來 合せ た の は 成 先!^ の 彫刻家 



I 



あ ひ. f-H.:: すび ろ う ど ふく き みじか や ぎ ひげ そ ぼく い, す, i た * * ゴ I 

だった。 t は 不相變 天鵞絨の 服 を 着、 短い 山羊 鬆を 反らせて ゐた。 僕 は 椅子 力ら 立ち上り 彼の 

だ て --ぎ ぼく しふくわん はんせい おく かお しふ: か k し 1 

さし 出した 手を^った。 (それ は 俊の 習惯 ではない、 パリ やべ ル リンに 牛 生 を 送った 彼の IM^ に從 

かれて ふしぎ は ちうる ゐ ひふ しめ 

. つたの だった。) が、 彼の 手 は 不思議に も c!^ 蟲 類の 皮廣の やうに 濕 つて ゐた 

きみ とま 

「君 はこ こに 泊って ゐ るので すか?」 . 

「ええ、 ::: 」 

1 仕事 をし に?」 

し, ごと 

「ええ > 仕事 もして ゐ るので す。」 

^h. か S み ぼく かれ め なか たんてい ちか へ 5_ じ やう か乂 ' : 3 

彼. はぢ つと 僕の 顔, を 見つめた。 僕 は 彼の 目の 中に 探偵に 近い, 一..^ 情 を 感じた 

ぼく へや にな & 

: 「どうです > 僕の 部屋へ 話しに 來て は?」 

f きき に 1 しかけた。 (この 羅 あしい ぎと るの はぎ 霧の ひず だ 

か L .> せう きみ へ や た-つ 力へ 

つた。) すると 彼 は 微笑しながら、 「どこ、 君の 部屋 は?」 と 尋ね 返した。 

、 リ ) ;> ュ う 」 た なら しづ よな り、 わい 一 ヌ、 じん な 力 ザく Z や 力 I 

僕 ii マ は 一親^ の やうに 肩 を 並 ベ 、 靜 かに, lis して ゐ る外^!人たち の 中 を 僕 の 部屋へ 歸 つて Ic^ つ た _ 

4 % は 街の 部屋へ 來 ると、 變を 後ろに して 腰をおろした。 それから いろいろ のこと を 話し 出した 



^ いろいろの こと を.. .11 しかし 大抵 は 女の 話 だ つ た。 ぎ はぎ した 1 にぎ 面に ぎち た ひ fv に i 

ひなかった。 が、 それだけに iiQ 醇 41 を歜 g にした。 g はい f ぎ! gi^ ざな。、 そ • 

をん な あざけ だ 

の 女 を 嘲り 出した。 

こ くちびる み た i な /つ こん 3 ぷ ソ Z ; 

rs 子さん の 脣を見 給へ。 あれ は 何人もの 接吻の 銜に 」 、 

僕 はふと n を^み、 ^^s^ に^の^ろ^^^ つめた。 ^は!! o^if に! 《 いろい I- 毅 をぎ リっ 

けて ゐた C 

なんにん せっぷん ため 

「.i^ 人 もの 接吻の 爲 に?」 

ひと おも 

「そんな 人の やうに 思 ひます がね。」 

力れ : り せう うな-つ • ほく かれ な、 しん tj^ く > ^3 . -. J -、 , , 

彼 は 微笑して 頷いて ゐた。 僕 は 彼の €: 心で は 僕の .ぼ 密を 知る II に^えす 1^ を;. して ゐ るの を 

感じた。 けれどもゃはり僕等の話は女のことを離れ.^^かった。まは歡を衝むょりも|、^«5^の|-の 

t ォ は いよいよ いうう つ 

fli レのを 恥ぢ、 愈 s^li になら すに は ゐられ なかった。 

.齒 やっと 彼の 歸 つた 後、 僕 は ベッドの: H に まがった まま、 「I は 1. 仪 ml6」 を み はじめた。 ^^ぶぉの 

^ 精神的 鬪爭は 一 ?!、 に はま, I つだった。 i はこの しおが おに ¥ へ ると、 どの くら ゐ&、 リ 4.^1-5 たか 



"-ん なた ir- .r-^,J ど-つじ A,-,,-- なみだ ぼく ^1, , !^ネ 

を 翁 じ、 いつ か^を 流して ゐた。 同時に 又淚は 僕の I 求 もちに いっか 平和 を與 へて ゐた が それ 

た-: A ぼく みぎ め いちど はん.?.' めい 11 ぐる ま かんだ _ ^ぐ? 9 ほ , 、 、 

も 長い ことではなかった。 僕の 右の 目 はもう 一度 半透明の 齒車を 感じ 出した 齒車 はや はり ま は 

りながら、 次第に 數を 殖やして 1& つた。 僕 は 頭痛の はじまる こと を 恐れ、 枕 もとに 本 を 置いた ま 

ま、 〇• 八 グラムの ヴヱ ロナ アル を嚥 み、 に 角ぐ つ. 寸 りと 眠る ことにした。 

く A め ある なが またなん によ こ ども な/にん およ 

けれども 僕 は 夢の 中に 或プ ウル を 眺めて ゐた。 そこに は 又 男女の 子供た ちが スも 泳- > だり も 

ぼく うし むか ま つばめし ある い :ゾ 01 

ぐったりして ゐた 。僕 はこ のプ ウル を 後ろに 向う の 松林 へ 步 いて 1,:: つた" すると^;_|カ後ろカら「ふ 

とうさん」 と 僕に 一 ^ を かけた。 僕 はちよ つと ふり 返り、 プ ウルの 前に 立った 妻 を 見つけた。 同時 

た. ニナ こうく わ ノ かん 

に 又 烈しい 後悔 を 感じた" 

「おとうさん、 タオル は?」 

い こ ども き 》 

「タオル は 入らない。 子供た ちに; I- をつ ける の だよ。」 

僕 は 又步み をつ づけ 出した。 が、 僕の 歩いて ゐ るの はいつ か プラット フォォ ムに變 つて ゐた。 

それ は阳 ぎの 停車場だった と 見え、 長い 生け垣の ある プラット フ ォォム だった。 そこに は乂 H と 

S い おいが く. b い とし をスな たたす かれら 5、 S み, 、 „ ひ"; >、-li, -*?r ゆ,/ パ 、 リ、、 

5 云 ふ大學 生や 年 をと つた 女 も 佇んで ゐた。 彼等 は 僕の 银を 見る と 仪の. ュ S に 歩み^り - 々に 侈 



車齒 



501 



はな 

へ 話しかけた e 

お ほく わじ 

「大火 寧でした わね。」 

「僕 もやつ と 逃げて 來 たの ピ 

俊 はこの 年 をと つ た 女 に 何 か見覺 え の ある や う に 感じた。 のみな らす 彼女 と 話して ゐる ことに 

ある S くわい - 一-つ ふん かん キ」 しゃ け,, :- り しづ ,.£ 

或 偸 快な 艇ハ奮 を 感じた。 そこへ 汽車 は 煙 を あげながら、 靜 かに プラット フォ ォム へ^ づけに なつ 

:o ぎ,: >^..--,/f ^, 、 リクつ が はしろ .2.0 た しんだい あ ひだ ある い , める しん 

た 仪は ひとり この 汽車に 乘り、 兩 側に 白い 布 を 垂らした 寢臺の 問 を 歩いて I;;: つた 。すると 或-お 

卞, -T I う ( +.. か ら, 、たか &んな ひ々 一り む よこ また ぼく ふくしう かみ 

臺の卜 一に ミイラに 近,, 裸體の 女が 一 人 こちら を 向いて 横にな つ てゐ た。 それ は 又 伎の _ 俊 響の 祌、 

あ る き や う じ ん むす め ち が 

. I 或 狂人の 娘に 遠 ひなかった。 

ご、 め さ はや おも レ-ー お ぼくへ や あ ひ. A よらす でんとう ひかり あ A 

僕 は mi を ますが 早い か、 思 はす ベッド を 飛び下りて ゐた。 僕の 部屋 は 不相變 雷- 燈の 光に 吼る 

かった。 が、 どこかに 翼の 昔 や 2:^ のきし る 音 も 聞え てゐ た。 僕 は戶を あけて 廊下へ 出、 . 前 の爐の 

ま- t そ L いす 二し おはつ. A ま だ し ふノ、 

ぶ 5; へ 急いで I:;: つた。 それから 椅子に 腰をおろした まま、 覺 束ない 炎 を 眺め 出した。 そこへ 白い 服 

き きふ じ ひとり た ぎ く は あゆ よ 

を 着た 給仕が 一 人 焚き 木 を 加へ に步み 寄った、 レ 

な/、 じ 

「何時?」 



さんじ はん 

「三時 半ぐ. らゐで ご ざ い ます c」 

む.^ f ^ アメリカ じん をん な ひとり なに ほん よ かのちよ き 

しかし 向う の n ツビ ィの 隅に は 亞米利 加 人らしい 女が 一 人 何 か 本を讀 みつ づけた。 彼女の^ て. 

とまめ み みどり ちが ぽく なに すく カス よ 

ゐ るの は i# 目に 見ても 綠 いろの ド レ ッ ス に 違 ひなかった C 僕 は 伺 か 救 はれた の を 感じ、 ぢ つと 夜 

ま ながねん び や-つ;、 なや ぬ あげ.、 つ し i らう じん 

の あける の を 待つ ことにした。 長年の 病苦に 惱み拔 いた 揚. ?、 靜 かに 死 を 待って ゐる 老人の やう 

こ。 

四 まだ? 

ぼく へや id たんぺん か あ ある ざっし おく , -3 もっと ぜ^ 1?^4ゅ;^ 

僕 はこの ホテルの 部屋に やっと 前の 短篇 を 書き上げ、 或雜 誌に 達る ことにした 尤も 僕の^ 稿 

れぅ いっしう かに 一; ひ た f. ぼく ,レ ごと かた ん ぞ ノ- なに 

料 は 一 週間の 滯在 費に も 足りない ものだった。 が、 僕 は 僕の 仕事 を片 づけた ことに 滿 足し 何 か 

せ, しんて き やう ざう ざい もと ため ぎんざ ある ほんや で 

精神的 强壯劑 を 求める 爲に 銀座の 或 本屋へ 出かける ことにした C 

ふゆ ひ ちた う、 かみく-つ ゾ、 ら . ^みく-つ ひ 力り 力 げん 

冬の 日の 當 つた ァ スフ ァ ルトの 上に は 紙屑が 幾つ もころ がって ゐた。 それ 等の 紙 清 は 光の.^ 減 

J ら まな ぼ C なに かう い かん ほんや みせ 

か、 いづれ も 薔薇の:^ に そっくりだった。 僕 は 何もの かの 好意 を 感じ、 その 本屋の 店へ は ひって 

^ い また ¥ れい ただめ がね : むすめ ひ. とり、 なに 、ズん ゐん- で; Z - - : 

5 行った。 そこ も 亦 ふだんよりも 小 綺麗だった。 唯 目 金 を かけた 小娘が 一 人何か,1^:^;と$^してゐん 



ぼ ノ、. J,.^ ば < くわ-つら * お か, Jt, 、づ ぶら よな .--k. 

3 の は 僕に は I 湫 がかり にならない こと もなかった。 けれども 僕 は 往來に 落ちた 紙屑の 瞥薇 G?^ を S し 

ひ 出し、 「アナ 卜 オル . フラン スの對 話 集」 や 「メリメ H の 書簡集」 を 1 貝 ふこと にした. レ 

ぼく に さつ ほん かか ある ノ 、に f ぐお く ま, - r ..- 

僕 は 二 W の 本 を 抱へ、 或 カツ フ H へ は ひって 行った。 それから 奥の テヱ ブルの 前に 觏 跳の 

くま ぼく か おやこ なんに よ ふヒり ト,' つ ,?4-1, W く 

來 るの を 待つ ことにした。 僕の 向う に は 親子ら しい 男女が 二人^って ゐた。 その 息 チは 伎よりも 

44 ^ ほ とん ぼく ん :ら こ々:^'とど1っし Aft * 

サ 右かった ものの、 殆ど 僕に そっくりだった。 のみなら す 彼等 は戀人 同志の やうに 颜 を沂〕 づけて; Ij^ 

, - o ほ" み すくな むすこ せいてき ははおや なぐさ あた 

し 合って ゐた 僕 は 彼等 を 見て ゐる うちに 少く とも 息子 は 性的に も 母親に 慰め を與 へ てゐる こと 

Y 、し. s」 き だ ぼく お ぼ しんわりょく ちれ . ちが , -- つ :レ 

を 意識して ゐ るのに 氣 づき 出した。 それ は 僕に も覺 えの ある 親和力の 一 低に 遠 ひなかった。 ぼ 寺 

またげ A ぜ ぢ つに あるい し いちれい ちが ぼく ま.! - くる おち、 

に 又 現世 を 地獄に する 或 意志の 一例に も 違 ひなかった。 しかし、 . I— 僕 は 又 苦しみに 陷; 9 の をき 

ノ +T やう ど ロ|ヒ「 き さい は しょかん しふ ぶ かれ しょかん しぶ な- - > L 

れ、 ド 度.^ 啡の來 たの を 幸 ひ 、「メリメ H の 書簡 壤」 を讀み はじめた。 彼 はこの 害 ^ 染 中に も,;^ 

せう W つな か ^ど ひらめ ら 一に,、 き 

の バ說の 中の やうに 銳ぃァ フォ リズム を 閃かせて ゐた。 それ 等の ァフォ リズム は の^もち を い. 

rv 、ほ、 ノ 力- で, 1 , だ えい 今やう う やす ぼく じゃくてん ひと く --r- 

つ カ鐵の やうに 巖疊 にし 屮:: した 。( こ の 影響 を 受け 易 い こと も 僕の 弱點 の 一 つ だ つた o),i- は t 一 W の 

- を は ct, なん こ い き うし - 

齒 劫お を飮み 了った 後 、「何でも 來ぃ」 と 云ふ氣 になり、 さっさと この カツ フ H を 後ろに して I;;: つた 9 

車 巧、: f; 一 f 、や ふ, る ■> かざ まど の そ い あるが くぶ,. -ゃ かダ- § 

铁は往 來を步 きながら、 いろいろの 飾り窓 を^いて 行った。 或 額 緣屋の 飾り窓. -ュべ H 卜ォヅ H 



504 



ンの 肖像 畫を揭 げてゐ た。 それ は髮を 逆立てた 天才,. そのもの らしい 肖像 畫 だった。 僕 はこの ベ ェ 

ト ォヴェ ンを^ 稽に 感ぜす に は ゐられ なかった。 

で あ かう と-つが- 、かう いらい き-つ いう お-つ ようく わがく だいが ノ、 :: う しゅ おは た -., 

そのうちに ふ と 出合 つたの は 高等 學校 以来の 舊友だ つ た。 こ の 塵^ 化學 の 大學 敎授は 大き い 中 

折れ 袍を 抱へ、 片目 だけ まつ 赤に 血 を 流して ゐた。 

「どうした、 君の 目 は?」 

ただ け つまく えん 

「これ か? これ は 唯の 結膜炎 さ。」 

! H く じ "し ご ねんい らい しんわり ぶく かん たび ぼく め かれめ Z: つまく えん おこ 

俊 はふと ヒ 叫 五 年 以來、 いつも 親和力 を 感じる 度に 僕の ini も 彼の n の やうに 結膜炎 を 起す の を 

に,, も だ なん い かれ かた たた ぼくら とも はな だ 

思 ひ 出した。 が、 何とも 言はなかった。 彼 は 僕の 肩 を 叩き、 僕 等の 友 だち のこと を 話し 出した。 

,H なし ある ぼメ、 パ 

それから 話 をつ づけた まま、 或 カツ フ H へ 僕 を つれて つた。 

「ク、 しぶり だな あ。 舜 水の 建碑 式 來だ らう。」 

, 彼 は 葉 卷に火 をつ けた 後、 大理石の テ H ブ ル 越しに かう 僕に 話しかけた。 

「さう だ。 あの シュシ ユン …… 」 

僕 は なぜか 朱舜 水と 云 ふ 言葉 を 正確に 發昔屮 I 來 なか つた。 それ は 日本語 だ つ ただけ にち よつ i 



g 僕を不 にした。 しかし 彼 はぎ 頓着に いろいろ のこと を 話して 行った。 K とつ ふお ま t 尿の こと を、 

彼の 貢った ブル • ドッグ のこと を、 リ ウイ サイ 卜と まふ 毒 瓦斯の こと を。 …… 

きみ 力 てんき ^ 、 -,、 ^ A .> じ: で 

「君 はちつ とも 書かない やう だね C 『點 鬼簿』 と 云 ふの は讀ん だけれ ども。 …… あれ は の自鉱 ぎ: 

力 V ?」 

「うん、 僕の 自敍傅 だ。」 . 

; にやうて き - ごろ か- 1: だ パ 

「あれ はちよ つと 病的だった ぜ。 この頃 は體は 善い のかい?」 

あ ひか は すく-^ り し まつ 

「不 相變藥 ばかり 嚥ん でゐる 始末 だ。」 ■ 

,ぼく ごろ ふみんし やう 

「僕 もこの 頃 は 不眠症 だが ね。」 

ぼメ、 ふ」 み ぼ,、 

「僕 も ? どうして ボは 『僕 も』 と 一一 一一 口 ふ Q だ ? 」 

きみ ふみんし やう い ふみんし やう き けん 

「だって Hf; も 不眠症 だって 言 ふぢ やない か? 不眠症 は危險 だぜ。 」 

彼 は 左 だけ 充血した nn に 微笑に 近い もの を 浮かべて ゐた。 僕 は 返事 をす る まに 「お g 症」 のシャ 

, ザ ゥ の 發昔を : 正確に 出來な い の を 感じ 出した。 

本 rli 返 ひの, 子に は 當り脉 だ。」 



JJK、 じっぷん また わ- T らい あ. る い うへ お か 人: つ ヒ き- 

僕 は 十分と たたない うちに ひとり 乂往來 を 歩いて IC: つた。 アスファルトの 上に 落ちた 紙 :5 は 

どき ぼくら にんげん かほ み むか だんぱつ をん な ひとり と-に 

時 僕 等 人^の 顏の やうに も 見えない ことはなかった。 すると 向う から 斷髮 にした 女が 一人 迎 りか 

かの ぢょ とほめ うつく め まへ き み 二 じ わ え みにく 力 は 

かった。 彼女 は 遠目に は 美しかった。 けれども 目の前へ 來 たの を 見る と、 小皺の ある 上に 酷い 颜 

にんしん ぼく も かほ ひろ よこ. VT やう <t が い 

をして ゐた。 のみなら す姙 娘して ゐる らしかった。 侯 は 思 はす 額 を そむけ、 廣ぃ橫 町 を. S つて;;;: 

しば ある ぢ いた ^?-ん だ ぼく ざ よ,、 ほか た ほ 

つた。 が、 暫 らく 歩いて ゐる うちに-持の 痛み を 感じ 出した。 それ は 僕に は 坐 浴より 外に す こと ■ 

で き いた 

の出來 ない 痛みだった。 

ざ よく ざ よ: 

「坐 浴、 —— ベ エト ォヴ H ンもャ はり 坐 浴 をして ゐた e …; 」 

ざ よく つか ノ わう に ほ たち ま ぼく はな おそ だ もち < 'ん わう らい いわう み 

坐 浴に 使 ふ 硫黄の 勻ひは 忽ち 僕の 鼻 を 襲 ひ 出した。 しかし 勿論 往來に は どこに も硫? W は见 えな 

ぼく いちど かみく-つ ば ら は な おも だ つと ある い , 

かった。 僕 はもう 一度 紙屑の 薔薇の 花 を 忍 ひ 出しながら、 努めてし つかりと ゃソ いてれ つん 

* ちじ かぐ ち ぼく ぼくへ や まど まへ つく 幺む あた せ. f 

一時間ば かりたった 後、 僕 は 僕の 部屋に とぢ こもった まま、 窓の 前の 机に, M かひ- ^らしい. 

^tl つ IK く ふしぎ げんかう にう し うへ v< し い 

說に とりかかって ゐた。 ペン は 僕に も 不思議だった くら ゐ、 すん すん 原稿 川 紙の 上 を 走って I むつ 

に V- ん じかん ち れ め み お v.- 

た。 しかし それ も 一 一三 時 問の 後に は 誰か 俊の Hr に 見えない ものに 抑 へられた やうに とまって しま 

^ 5« く えつ i まへ け. な へ <^ なか ある ^!^.)、 に r «^ぃ.^."ば:: i 

5 つた。 僕 はやむ を 得す 机の 前 を 離れ、 あちこちと 部屋の 中を步 きま はった C 佚の 誇大妄想 は 力- ン 



い とき もっと いちじる ぼく A- /;> ケろ, 1 t 1 ノゝ T.0 - \ 」 - 

^ 云 ふ 時に 最も 著しかった。 僕 は 野 氍な歡 び の^に 1^ に は fgip なければ « チ もない、 啦 1^ ハ,。 へ ン. 

5 な が だ いのち い き 

力ら 流れ出した 命 だけ あると 云ふ氣 になって ゐた。 

けれども 僕 は §: 五分の 後、 電話に 向 はなければ ならなかった。 は ぼぎ y ず をしても、 齢^ 

あいまい ことば く かへ つた と、 

カ瞹 味な 言葉 を 繰り返して 傅へ るば かりだった ■〕 が、 それ は 鬼 もお もモ オルと g えたのに II ひな. 

かった。 僕 はとうとう 電話 を 離れ、 もう 一度 部屋の 中 を步き 出した。 しかしモォルと^1^ふ-べ-^」ぎだ 

めう き 

け は 妙に 氣 になって ならなかった。 

r モォ ル —— Mole 」 . 

モ オル は 鼴 と 云 ふ 英語だった。 この 歡想も 僕に は じはなかった。 が、 は り ls、 

つづ iM ま 

sole を lamol.t に 綴り 鼠した。 ラ. モ オル は、 II 死と, ふ I 蘭き., は ま をず ?ん にした。 

し, I あね をつ と せ i ぼく せま K - , 

死 は姊の 夫に 迫って ゐ たやう に 僕に も 迫って ゐる らしかった。 けれども 華 は;^^ の!^ 1 丁/ • ,; 

笑し さ を 感じて ゐた。 のみなら すいつか 微笑して. ゐた。 この ザ I 夭し さは^の II に^る かゥ そ. 

れは僕 自身に も わからなかった。 僕 は 久しぶりに C のきへ にがち、 まとも に^の II と t ひ つた。 

^ ぞく かげ も ろん び せう 1?、 げ み > : 

僕の 影 も 勿論 微笑して ゐた。 俊はこの影を見っめてゐるぅちに5^^の傑のことを;^ひ|^した。 P 



窓 ど 
四し の 

角力く' 前 吏 

にギ の 

凝き 机? 
灰 も へ も 

岩お 歸 t 



こ な 7、 K ィ ソ じつ ひよ ゆる し あは ぼて じ しん み J 

一 1 の 俊、 —— 獨 逸人の 所謂 Doppelgaeng-el- は 仕 合せに も 僕 自身に 兑 えた こと はな 力った し 力 

アメリカ えいぐ わ はいいう くん ふ じん だいに ず ^ く ていげ. -. 一 らバ, f み, - > - , - o/ せ.". -」レ2-7ゴ- 、丄 

し 亞米利 加の 映畫 俳優に なった K 君の 夫- < は 第二の 僕 を 帝劇の 廊下に 見かけて ゐた (仪は 突^.. - 

へ i ふ じん せんだって ご あい 义 j い たう わ/、 ぉぽ y ^ ; 

君の 夫人に 「先達 はつ い 御挨接 もしませんで」 と 言 はれ、 當 惑した こと を覺 えて ゐる) それ 力ら:. V 

こ じん あるかた あし ほんやくか ぎんざ ある たばこ-や- だいに- „4Y; み-、 - - -0 

う 故人に なった 或隻 脚の 飜譯家 もや はり 銀座の 或 煙草屋に 第二の 僕 を 2^ か H てゐ た。 死 は 或は 仪 

ば、: こ J ?.、 くし も また ぼく き ぽく f^..^, ゥ うし f . 

よりも 第 J 一の tK に來 るの かも 知れなかった。 t.^ し 又 僕に 來た としても、 11 僕 は 鋭に 後ろ を 1^ け 

て 行った。 

く まど "-れ し, i 1 ナ の, ご な く --は なが とほ i つば わし なか 

組んだ 窓 は 枯芝ゃ 池, を舰 かせて ゐた。 僕 はこの 庭 を 眺めながら、 遠い 松林の 卞 

tax なん さつ みくわん せい ぎきょく おも だ あ: J 

に燒 いた 佝册 かの ノオト • ブック や 未完成の 戯曲 を 思 ひ 出した。 それから ぺ ンを とり 上け ると 

いちど あた せ, つせ つ か 

もう 一 度 新ら しい 小說を 書き はじめた。 

五 赤 光 

日の!.! は 僕 を 苦しめ 出した。 僕 は i 際 si^ の やうに 窓の 前へ カァ テン をお ろし、 聱間も 電^ を 

§ まへ 二 、 し ごと つか ィ. ギ. リ, 4 

5 ともした まま、 せっせと 前の 小說 をつ づけて In つた。 それから 仕事に 疲れる と、 テ H ヌに英 力お 



丄 ス., J くし し じん しゃう がい め とほ .>れ.: " か-つ -っ 

^ . 文 學史を ひろげ、 詩人た ちの 生;^ に 目を通した。 彼等 は いづれ も f 幸だった。 エリザベス 朝の in 

J - じん いちだい がくしゃ か あし おや: i び うへ ,- 1 マ 

人 たちさ へ、 —— 一 代の 學 者だった ベ ン • ジ ヨンソン さへ 彼の 足の 親指の ヒ に羅; ii と 力 ル セ 二 ヂ 

ぐん ゼ, い たたか はじ なが しん はいて.?. b らう お f- い ;: K く > Sn-J ん. i つ r- . 

との 箪 勢の 戰ひを 始める の を 眺めた ほど 神 經的疲 勞に陷 つ てゐ た。 はかう.! ム ふ^^の;.^ If に^ 

酷な 惡 1^ に 充ち滿 ちた 歡びを 感じす に は ゐ ら れ なか つ た。 

あるひぶ し つよ よる ぼく い しるし ぼく かしつ ,3 わ-つ , で ^^6'^.y^:l ---.0 

1^ 東 かぜの 强ぃ 夜、 (それ は 僕に は 善い 徵 だった。) 僕 は 地ド窒 を拔 けて 柱來へ 出、 老人ん を雾ね 

, , ^れ ぶる せいしょぐ わい しゃ や ね うら ひとい,' こ - つか き たう ど,、 し t し;^ うじぐ 

る ことにした。 彼に 或 聖書 會 社の 屋根 襄 にたった 一人 小 使 ひ をしながら、 析禱ゃ 讀 書に 精進して 

ゐた。 僕 等 は 火鉢に 乎 を かざしながら、 壁に かけた. H 子 架の 下に いろいろ のこと を 1 しん:: つた。 

ぜ ソ、、 t- は はっき やう ぼノ、 ナ-ち じげ ふ しっぱい まに- だ く £ つ 

なぜ 僕の 母は發 狂した か? なぜ 僕の 父の 事業 は 失敗した か? なぜ 乂 は 1^ せられた か? —— 

ノら- ひ、 みつ し .^^れ めう お ,-ー そ び う う r-< あ ひ 一」 

それ 等の. 祕密を 知って ゐる彼 は 妙に 厳かな 微笑 を 浮かべ、 いつまでも |K の 相 をした。 のみなら 

とき, <\ みじか ことば ,ピ/ 仆-ぃ る; が ; Si く や ュ うら 1 ん. や そ 11 - ,- 

す 時々 短い 言葉に 人生の カリ カテ ュ ァを 描いたり した。 僕 はこの 屋¥5|^ の ii 者 を, あ^しない;^ に 

は 行かなかった。 しかし 彼と 話して ゐる うちに 彼 も 亦 親和力の 爲に 動かされて ゐる こと を し 

-こ。 

「その 植木屋の 娘と 「K ふの は 器量 も いし、 氣 立ても in いし、 —— それ はわた しに S しくして く 



510 



れ るので す。」 

「いくつ?」 

ヒふ はち 

「ことしで 十八です。」 

, かれ もち あい し ぼく かれめ なか じ やう; 5 つ かん 

それ は 彼に は 父ら しい 愛で あるか も 知れなかった。 しかし 僕 は 彼の 目の 屮に 情熱 を 感じす に は 

かれ すす りんご き か は ,r 'へ いっかく じう すがた あらに 

ゐられ なかった。 のみなら す 彼の 勸 めた 林檎 はいつ か 黄ばんだ 皮の 上へ 一角 獸の姿 を 現して ゐた。 

ぼ: もくめ コ ー ヒ —ちゃわん ひ び たび しんわ てきどう ぶつ はっけん いっかく じう き りん ちが 

〈僕 は 木目 や 珈琲 茶碗の 龜 裂に 度た び 神話 的 動物 を發 見して ゐ た。) 一 角獸は 麒麟に 違 ひなかった G 

ぼく あるて きい ひひ やう か ぼミ くひ やくじ ふお Z だい き りんじ よ おも だ し ヽ-じ 7^ 

僕 は 或 敵意の ある 批評家の 僕 を 「九 百 十 年代の 麒麟 兒」 と 呼んだ の を 思 ひ 出し、 この 十字架の かか 

や ね うら あんぜんち たい かん 

つた 屋根裏 も 安全 地帶で はない こ と を 感じた。 

いかが ごろ 

「如 :e です か、 この頃 は?」 

r 不相 變神經 ばかり 苛々 し. てね。」 

「それ は藥 では 駄目です よ。 信者になる 氣 はありません か?」 

「若し 僕で も なれる ものなら 」 

なに ただ, いみ しん かみ こ キリス" - . しん キリスト おこな ネ せき しん 

「何もむ づ かしい こと はない のです。 唯祌を 信じ、 神の 子の 基督 を 信じ、 基督の 一む つた 奇蹐 を:!: :5 



傘 商 



511 



じさへ すれば 」 

「惡魔 を 信じる こと は出來 ますが ね。 …… 」 

「ではな ぜ祌を 信じない のです? 若し 影 を 信じるならば、 光" も 信じす にはゐ られ ないで せう?」 

ひかり やみ 

「しかし 光の ない 暗 も あるで せう。」 

ひかり やみ 

「光の ない 暗と は?」 

ぜ ソ、、 ほ, か. かれ また ぼく やみ なか ある やみ > ヒ. e; つ ひかり 

^は默 るより 外はなかった。 彼 も 亦 僕の やうに 暗の 中を步 いて ゐた。 が、 暗の ある 以上 は 光 も 

しん ぼくら ろんり ことな ただ い いって/? J タ くな -K>、 

あると; じて ゐた。 僕 等の 論理の 異 るの は 唯 かう 云 ふ 一 點 だけだった。 しかし それ は- 少く とも 僕 

こ みぞ ちが 

に は 越えられない 溝に 違 ひなかった。 …… 

, ^3カり カ^ら しょうこ き せき き せト- ノ 

「けれども 光 は- 必す あるので す。 その 證據 には奇 踵が あるので すから。 …… 奇^な どと 云 ふ もの 

はゲ でも 度た び 起って ゐ るので すよ^ 

あくま おこな f せき 

「それ は惡 魔の 行ふ奇 は。 …… 」 

また あくま い 

「どうして 又惡 魔な どと 云 ふので チ ?」 

.せ つ、、 いちに お, あ ひだ ぼく ヒ しん けいけん かれ はな いう わく かん かれ >. > し 

^はこの 一 二 年の 間、 僕 自身の 經驗 した こと を 彼に 話したい 誘惑 を 感じた〕 が、 彼から 赛 子に 



512 



つた ぼく または は せいしんび やう ゐん おそ わけ ゆ 

俾 はり、 僕 も 亦 母の やうに 精神病院に は ひる こと を 恐れない 訣 にも 行 かなかった。 

「あすこに あるの は?」 

たくま らう じん "る しょだな かへ なに ^^::ゃっじん へう じ やう しめ 

この 逞しい 老人 は 古い 書棚 を ふり 返り、 何 か 牧羊 祌 らしい 表情 を 示した。 

ぜんし ふ つみ. ばつ よ 

「ド スト ェ フス キイ 全 築です。 『i;: と 罰』 はお 讀 みです か?」 

* ほく もんろ んヒ ふねん ぜん し ご さつ した ぐ. つ ぜん かれい つみ 

僕 は 勿論 十 年 前に も 四 五 冊の ドスト H フス キイに 親しんで ゐた。 が、 偶然 (?) 彼の; 一-一:: つた 『, is- 

ばつ い ことば かんどう まん か もら うへ まへ かへ r ん.; 一う ひかり 

と 罰』 と 云 ふ 言葉に 感動し、 この 本 を 貸して 贳 つた 上、 前の ホテルへ St る ことにした。 |^ー 燈の光 

かがや ひと ど ほ お ほ わう らい ぼく ふく わい こと し びと あ たうて いわ- 

に 輝いた、 人通りの 多い 往來 はや はり 僕に は 不快だった。 殊に 知り 人に 遇 ふこと は 到" 败堪 へられ 

ちが ^ぐっと くら わう らい えし ぬすびと ある い 

たいのに 違 ひなかった" 僕 は 努めて 暗い 往來を 選び、 盗人の やうに 步 いて (む つた。 

しかし 僕は暫 らくの 後、 いっか 胃の 痛み を 感じ 出した。 この 痛み を 止める もの は. 1 杯の ウイ ス 

ぼく ある み と お せえ 

キイの ある だけだった。 僕 は 或 バァを 見つけ、 その 戶を 押して は ひらう とした。 けれども 狹 いべ 

ァの 中には 煙草の 煙の 立ち こめた 中に 藝術 家ら しい 靑年 たちが 何人も 群がつ て 酒を飮 んでゐ た。 

かれら なか みみ か,、 ゆ をん な ひとり ねっしん ひ ,く 

のみなら す 彼等の まん 中には 耳 隱 しに 結った 女が 一人 熱心に マ ンド リン を it きつ づけて ゐた。 僕 

だち ま たう わく かん と なか ひ かへ ザく かげ ? いう ゆ 

は 忽ち 當惑を 感じ、 戶の 中へ は ひらす に 引き返した。 するとい つか 僕の 影の 左右に 搖 れてゐ るの 



n を發 見した。 しかも 僕 を 照らして ゐ るの は無氣 味に も 赤い 光だった。 僕は往 ず., におち どまった。 

5 , く かげまへ た さ いう 5 ご s くお. K- かへ 

けれども 僕の 影 は, nm-. の やうに 絶えす お 右に 動いて ゐた。 僕 は 怯 づ怯づ ふり 返り、 やっと このべ ァ 

t ^ つ, J. : いろ, カラ- ス はっけん ±げ かぜ ため おも.. 1 くう ちう うご 

の 軒に 吊った 色^ 子の ラ ンタァ ンを發 見した。 ランク ァ ンは 烈しい風の 爲に 徐ろに 签屮に 動 、二」 

ゐた。 …… 

ぼく つぎ あるす, かしつ ぼ/、 まへ こ 

僕の 次に は ひった の は 或 地下室の レ スト オラ ン だった。 僕 は そこの バ ァの 前に 立ち、 ウイ スキ 

いっぽい ちう もん 

ィを 一杯 註文した〕 

「ウイ ス キイ を? Black and wllite ばかりで ございま すが、 …… 」 

ぽく ン ォ タすゐ なか い だ i ひとくち の ザく とな ク ^ -,. - 」 " 

僕 は 曹達 水の 中に ウイ ス キイ を 入れ、 默 つて 一 ロづっ 飲み はじめた。 僕の 鄰には l^Iiy がらし 

さんじ ふぜん 一 ご をと こ ふたり なに こ ご ゑ はな フランスご つか く.^ t リ せ 

い 三十 前後の が 二人 何 か 小聲に 話して ゐた。 のみなら. f 沸 蘭 西 語 を 使って ゐた。 僕は彼!^^^にせ 

なム む ぜんしん かれら し せん かん じっさい でんば 1.>5- く か.: だ 

屮を 向けた まま- 全身に 彼等の 視線 を 感じた。 それ は實 際? t 波の やうに 僕の 1^ にこた へる もの だ 

かれら たし ぼく な し ぼく うは さ 

つた。 彼等 は 確かに 僕の 名 を 知り、 僕の 噂 をして ゐ るら しかった。 . • 

M 一 .Blen ti ふ S mauvais J^ourquoi ? 」 • 

&〉 

rrNJUl.qllol ? le aiable est mort ! 」 



rOui, oui crenfe^ 」 

pt 、 f y/b ^ h-t. ^ .X だ -チ、 く も さ ひ * 一 いちまい ぎんく わ ちう し,' そと 

徴は艇 $ ^を T 牧 I 投げ出し パ それ は 僕の 持って ゐる 最後の 一 枚の 銀貨だった。 :> この 地 T 室の 外へ 

K かど ふ わ t わう らい た せう ゐ いた "つす ぼく しんけい ぢ やうぶ , - • ぜ;^ 

のがれる ことにした。 夜風の 吹き 渡る 往來は 多少 胃の 痛みの 薄らいだ 僕の 神經を 丈夫に した 仪 

おも だ なに ざ んげ よくばう かん ノ 、 ほズじ し, ん ほ, か. ' * 

は ラス コル 一一 コフを 思 ひ 出し、 何 ごと も 懺悔したい 欲望 を 感じた。 が、 それ は 僕 自身の 外に も 

I いや、 ^の t 豕" きの M にもぎ 劇 を 生じる のに 違 ひなかった。 のみなら す この 欲 ひ-えさへ SS: かど 

こ: く i んナ » じ うじし ぢゃ うぶ ぽく r め 

うか は 疑が しかった。 若し 俊の 祌經 さへ 常人の やうに 丈夫に なれば、 11 けれども 僕 は その 爲に 

は どこかへ 行かなければ ならなかった。 マ ドリ ッド へ、 リオへ、 サ マルカン ドへ、 

あるみ せ のき つ しろ こ がた かんばん とつぜん ぼく ふ あん , じ ..SJi^T-t , 

そのうちに 或 店の 軒に 吊った、 白い 小型の 看板 は 突然 僕 を 不安に した。 それ は 自動車の タイア 

つ. H. さ レ ta, うへ う ゑが ぼく しゃう へう じんこう つばさ た -ー だい メリ ンャ じん 

ァ に^の ある 商標 を 描いた ものだった。 僕 はこの 商標に 人工の 翼 を 手よりに した 古代の^ i 人 を 

お. & だ かに くう ラっ *< あが あげく たいやう ひかり つばさ 力 , > ノ * ゆ. い t, う. -I- いし 二 \ 二 、 :。 

射 ひが: した。 i は签 中に 舞 ひ 上った 揚句、 太陽の 光に 翼を燒 かれ とうとう 海中に 溺死して ゐ た。 

ぼく い S く ゆめ あ V.J わら わ -t: ゆ,., > 

マ ドリ ッド へ、 リオへ、 サ マルカン ドへ、 11 僕 はかう 云 ふ 僕の 夢 を 嘲笑 はない 訣には 行 かな か 

つた。 同" 時に 又復 響の 神に 追 はれた ォ レ ステ スを考 へない 訣 にも 行かなかった。 

5 傑 ま 9 ザ こが ひながら、 暗い 往來 を步 いて 行った。 そのうちに 或 郊外に ある 養父母の 家 を^ ひ 



だ やう ふ ぼ もちろん ぼく かへ i く ちが おそ , -.. く こ ども 

5 出した。 養父母 は 勿論 僕の 歸 るの を 待ち暮らして ゐ るのに 115^ ひなかった〕 恐らく は 僕の 子供た ち 

9 ^ > かへ. ^く そくばく あるち から お ft 

も . ! しかし 僕 は そこへ 歸 ると、 おの づ から 僕 を 束縛して しま ふ 或 力 を 恐れす に は ゐられ なか 

, なみだ みづ うへ だるま ぶね いっさう よこ また だるま ぶね ;は そこ 54*- 

つた。 運河 は 波立った 水の 上に 達磨船 を 一艘 横 づけに して ゐた。 その 又 達磨船 は^の 底から い 

ゆり t-, , なんにん なんに よ か ぞく せいく わつ ちが あ- 

光 を らして ゐ た。 そこに も 何人 かの 男女の 家族 は 生活して ゐ るのに 遠 ひなかった。 やはり し 

あ, , チ.^ -V く、 あ, まく いちど せんとうてき せいしん よ おこ よ y,l 

合- -爲に 憎み 合 ひながら。 …… が、 僕 はもう 一度 戰鬪的 精神 を 呼び 起し、 ゥ イス キイの 醉 ひを感 

じた まま、 前の ホテ ル へ歸る ことにした" レ 

またつ くも i むか しょかん しふ よ また i s く せ * くわつ りょく あん- 

僕 は 又 机に 向 ひ 「メリメ H の 書簡 菜」 を讀 みつ づけた。 それ は 又い つの 問に か 6- に 5^ 活力 を與, 

ほ ノ.、 ;产ス れん し.. けう ふー し 一-よ » J ^ 

へて ゐた。 しかし 俊 は 晩年の メリメ H の新敎 徒にな つて ゐ たこと を 知る と、 俄かに 假而 のかげ に 

) ) I- せか, ん- だ,, かれ また ぼくら やみ なか ある ひとり やみ 

ある メリメ H の^を 感じ 出した。 彼 も 亦 やはり 僕 等の やうに 暗の 中を步 いて ゐる 一人だった。 晤 

たか あんや かう ろ い ぼく おそろ ほ/? か. H く 、うう つ つす ため 

の 中 を.. 「暗夜 行路」 はかう 云 ふ 僕に は 恐し い 本に 變り はじめた。 僕 は } ぉ鬱を 忘れる 爲に r ァ 

• . / ゆい 力 し, ふ よ きんだい ぼくやう じん 1 ふじ ^ に t 

ナ トオル • フランスの 對話 集」 を讀み はじめた。 が、 この 近代の 牧羊 神 もや はり 十字架 を 荷って 

齒 ゐた。 …… 

$ い/.^, かん、 „- のち きふし ぼく ひとたば いう びんぶ つ わた かほ だ ら ひと 

一 時間ば かりたった 後、 給仕 は 僕に 一 束の 郵便物 を 渡しに 顔 を 出した。 それ 等の 一 つ は ライプ 



ほんや ぼく きんだい に ほん をん な い せ-つ ろんぶん か い かれら , 

ツイ ッヒの 本屋から 僕に 「近代の 日本の 女」 と 云 ふ 小 論文 を 書け と-ぶふ ものだった。 なぜ 彼等 は特 

r ぼく い せう ろんぶん えいご て がみ われ ノ-、 ちで:' どに ん 

に 僕に かう 云 ふ 小論 文 を 曹 か せる の で あらう? のみなら す この 英語の 手紙 は 「我々 は r.^ 日 木 

ぐ わ ノ、 ろ しろ ほか しき ざい をん な せう ざう ぐ わ まんぞく い にくひつ く は 

畫の やうに 黑と 白の 外に 色彩の ない 女の 肖像 畫 でも 滿足 で あ る」 と-. ムふ 肉舉の P • S を 加へ てゐ 

ぼノ、 い いす, ぎ やう い な おもだ 

た。 僕 はかう 云 ふ 一 行に Black and .white と 云 ふ ウイ ス キイの 名 を 思 ひ 出し、 すたすた にこの 

て がみ やぶ こんど て あた し だい ひと て がみ ふう き キー しょかんせ ス 

手紙 を 破って しまった。 それから 今度 は 手當り 次第に 一 つの 手紙の 封 を 切り、 黄い ろい 害 糊, に 

め と. て がみ か ぼくし せいねん に V.- んぎ やう よ 

目を通した。 この 手紙 を 書いた の は 僕の 知らない 靑 年だった。 しかし 二三 も讀 まない うちに 

ぢ f フ /へん い ことば ぼ,、 い-. i だ お さんばんめ ふう キ 

「あなたの 『地獄 變』 は 」 と 云 ふ 言葉 は 僕 を i 可 立た せす に は 措かなかった。 三 桥:: : に 封 を 切つ 

て がみ- ぼく を ひ き ザ: く ひといき か じじ やう もんだい よ い 

た 手紙 は 僕の 甥から 來 たもの だった。 僕 はやつ と 一 息つ き、 家事 上の 問題な ど を 請んで 1:: つた, - 

けれども それさ へ I- 恥 t へ來 ると" いきなり を 打ちのめした。 

「歌 築 『赤 光』 の 再版 を. 送ります から …… 」 . 

しゃくく わう ぼく なに れいせ う かん ?、 : や そと ひ なん らう か たれ ひと 

赤 光! 僕は佝 もの かの 冷笑 を 感じ、 僕の 部屋の 外へ 避難す る ことにした。 廊下に は 誰も 人 か 

ぼく かたて かべ おさ あるい い す : し 

げ はなかった。 僕 は 片手に 壁 を 抑へ、 やっと a ツビ ィへ步 いて 行った。 それから 椅子に 腰をおろ 

6 

1 と かくまき た f こ ひ うつ .3 キ, たばこ ぼく 

5 し、 鬼に 角卷 iPil 草に 大を 移す ことにし たし 卷堙草 は なぜか H エア. シップだった。 (僕 はこの ホー: ノ 



ひ ルへ 落ち着い てから、 いつも スタァ ばかり 吸 ふこと にして ゐた 。A ん _A の 編 一^もう ぺ」1#、 の^の? I 

へ 浮かび 川した。 僕 は 向う にゐる 給仕 を I び、 スクァ を ことにした C しかしき^ を^よ. i 

- ノ, あいにくし なぎ 

すれば スタァ だけ は 生憎 品切れだった。 

「H エア • シップな らば ございます が、 , •:: 」 • 

ゆく あたま ふ ひろ なが £ く : . 

僕 は 頭 を 振った まま、 廣ぃロ ツビ ィを 眺め ま はした。 iK の ¥ うに はお i 人 1, ぽ 一.^:^ テ エブ レを 

鬨んで 話して ゐた。 しかも gis おの T;<、 ,——^|ぃヮン .ピィスを4たぉ^^^に«|^4|し 

とキ」 ^ぼく み 

ながら、 時々 僕 を 兑てゐ るら しかった。 

ryll.s. Townsliead し 

何 か 僕の 目に 見えない もの はかう 僕に 顿 いて 行った。 ミセ ス • タウンズ へ ッド たどと, ふが は 

もす ろ ス^く し -ク、 どノ M - 

勿論 僕の 知らない ものだった。 たと ひ 向う にゐる t ダ かにしても、 1. g おは; ハら で-つ 5? り、 

はつき やう おそ ぼく 、や か、 

發狂 する こと を 恐れながら、 僕の 部屋へ, 歐る ことにした。 

-1^ ソ、 .ci,、 へや かへ あるせ いしんび やう ゐ でんん 

賓 夢 は 僕の 部屋へ 歸 ると、 すぐに 或 精神病院へ 電話 を かける つもりだった。 が、 そこへ は ひる こ 

^ ぜ くし か は SK く つた ^ : > . ; 

と は 僕に は 死ぬ ことに あらなかった〕 俊 はさん ざん ためらつ たま、 この 称」 ¥ を^ら す g こ 「まと 



七 k 氣き 

W' を L 
、 生; 



f J パ ぐう.. M/ ひら ぺ I ジ 今やう だい いっせつ ^く ほん ま すえ 

i」 を讀み はじめた。 しかし 偶 t 一 開いた 頁 は 「カラ マゾ フ 兄弟」 の 一 節だった。 僕 は 木 を il^ へた 

•h リ «^ ^ へう- め おと つみ f つ まん つみ ばつ ち^ ^く せ I にん 

のかと S 心 ひ、 本の 表紙へ 目 を 落した。 「罪と 罰」 1 * は 「罪と 罰」 に 違 ひなかった。 僕 はこの 製本 

や と ちが またと ちが ぺ ー ジ ひら うんめい び う-ご - % 1 、 

屋 の綴ぢ 違へ に、 —— その 乂綴ぢ 違へ た 頁 を 開いた ことに 運命の 指の 動いて ゐ るの を 感じ や も 

. ト/ 、 y っぺ! ジ よ *M ん, しん ふる 力 N! た 

を 得す そこ を 讀んで 行った。 けれども 一 頁 も讀 まない うちに 全身が 震へ るの を 感じ 出した。 そこ 

は 11 魔に ぎ しめられる イヴ アン を 描いた 一節だった。 イヴ アン を、 スト リン 卜 ベルグ を、 モォパ 

レ める ひ へ や ぼく じ しん 

ス サン を、 或は この 部屋に ゐる僕 自身 を。 

„ ぼく r 二 -W だね Nl 5 いみん !_.,- い ま ひとつつ のこ 

かう rl^ ふ 僕 を 救 ふ もの は 唯 眠りの ある だけだった。 しかし 催眠 劑は いつの 間 か 一 包み も 殘らす 

ぼく たうて、 ねむ くる つば, て. ? : 

になくな. つて ゐた。 僕 は 到底 眠らす に 苦しみつ づける のに 堪 へなかった。 が、 絕ひ 1^- がな 一 

. nl ヒ— も き もら うへ し ぐる う-. 一、, - - - - に, * に、 

じ、 珈琲 を 持って 來て 貰った 上、 死に もの 狂 ひに ペン を 動かす ことにした 二— 

- > f ^ > 5 < ^ でき あに 、 ^二 -ij うせつ せ かい てうし ぜん どうぶつ ケ 

七:^、 11 iii は る 見る 出來 上って 行った。 僕 はこの 小說 のせ 界を 超自然の 動物に 滿 たして ゐ 

どうぶつ 、っプ き くじ しん せう ざう ぐ わ *s が ゾ らう おもす ばべ 

た。 のみなら すその 動物の 一 ぎに 僕 自身の 肖像 畫を 描いて ゐた。 けれども 疲 徐 乙に 僕の-; § を 

ii らせ はじめた。 歡 はとうとう 机の 前 を 離れ、 ベッドの 上へ 仰向けに なった。 それから 四 五十 分 

^ . . 、に. ま. たれ ぼく みみ い ことば さ ざ や かん » ^.vv め ィ 

5 i ^ま, g つたら しかった。 しかし 又 誰か 僕の 耳に かう 云 ふ 言葉 を^いた の を 感じ 忽ち 目 を まし 



こ た 

の 

風 f そ 
景 れ 
を は 
造? 黃 
つ ば 
て ん 
ゐ だ 
る 松 ま 
も 林き 

の のし 

は 向》: 

m う 
は に 

庭!' i 海: 
の の 

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芝お る 
や 風 f 

r&l; 景:: 
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た ひ 
こ な 
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昆! f ' 
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た は 
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In il ふ メ 



9 



て 立ち上った C 



一 Jde ciiable est m。l.t」 

一; 4 う Y わい がん i ど そと ひ あ K く やう どと 1 1 k v-t 

凝 灰 5 おの 窓の 外 はいつ か 冷えび えと 明け かかって ゐた。 き はで 度 1! のまに-が ゲ 瞪もゐ ない 

slej の 中 を 眺め ま はした。 すると 向う の 窓 俯 子 は 斑ら に 外 (湫に 曇った お に!^ さ ぃ嫩则 iv」i, びて ゐ 

r つ 窓の 前へ 近づき、 

- • : 1 "ども 僕の 錯覺 はいつ 

か 僕の 家に 對 する 鄕愁に 近い もの を 呼び 起して ゐた。 

僕 は 九 時に でもな り 次第、 或雜誌 社へ 電話 を かけ、 ^ に I 勉の をした: 1^ ^の!^ へ M る^ 

し、 ん ' : 3 つく ゑ う { お かばん なか ほん げんかう お 

、七 をした。 机の 上に 置いた 飽の 中へ 本 や 原稿 を 押し こみながら。 

六 飛行機 . 

ぼべ,、;?" -tl!^ ザ" せ あるて いしやお やう おく あるひ しょち じどうしゃ と うんてん」. 9- sr 

齒 僕 は 東海道線の 或 停車場から その 奥の 或 避暑地 へ 自動車 を 飛ばした。 運 轉手は なぜか この IVJ 

^ に 古い レ H ン. • コ オト を ひっかけて ゐ たし 僕 はこの 暗合 を 無! -I にお ひ、 めて 力 ^ やつ 見ない やう 



まど そと め ひくまつ は. むか " でヒ ;. る ...L い^-"..; )?-,;,ん.^: 

に 窓の 外へ 目をやる ことにした。 すると 低い 松の 生えた 向う に、 —— 恐らく は 古い 街 に 葬式が 

れつと ま み しらま ちゃう ちん りゅうとう なか く は 々.: ん ぎん 

J 列^る の を 見つけた。 白 張りの 提灯 や 龍燈は その 屮に加 はって はゐ ない らしかった。 が、 金銀 

ざう くわ はす しづ こし ぜん-ご ゆら い 

の 造花の 蓮は靜 かに 舆の 前後に 搖 いで In つた。 ••:: 

ぼく いへ かへ のち ぼく さいし さいみんやく +.,- から に. さんに ち か なりへ い. til y: -3 r, ■ 

やっと 僕の 家へ 歸 つた 後、 僕 は 妻子 や 悩 眠藥の 力に より、 二三 日 は 可也 平和に 暮らした 佚の 

こ か、 まつばやし うへ うみ のぞ ぼく にかい つく.^ む はと 一一 幺 ふ. - 

叫 一階 は 松林の 上に かすかに 海を观 かせて ゐた。 僕 はこの 二階の 机に 向か ひ、 ,旭の 磬を 聞きな 力ら. 

f 一 f? し , ごと とり はと からす ほか すすめ えん^ は i ^ ^-^ -^. - 

午", 1 だけ 仕事 をす る ことにした。 鳥 は, 想 ゃ鸦の 外に 雀も緣 側へ 舞 ひこんだ りした それ も.^^ に 

くわい きじゃく だう い ぼく も たび 二と!?,, 、だ ー ' : 

は 偸 快だった。 「喜^ 堂に 人る。」 —— 僕 はべ ンを 持った まま、 その 度に こんな llK 葉 を ひ 屮_ した 

あるな あ,: た どんてん r- ご ぼく ある ざつ,、 わ てん か で.' ハ ー - - > f-!? • - ノ 

或 生暖かい 曇天の 午後、 僕 は 或雜货 店へ インク を 買 ひに 出かけて 行った すると その 店に ん 

、ろ 1 ろ ザで ふく わい 

でゐ るの は セピア 色の インクば かりだった。 セピア 色の インク は どの ィ ンク よりも 俊 を 不快に す 

つね ぽニ え み i.- で ひと ど ほ すく - わう らい ある 、 

るの を 常と して ゐた。 俊 はやむ を 得す この 店 を 出、 人通りの 少ない 往來を ぶらぶら ひとり^して 

, む ム. きん*.^-ん し じふ ぜん-ご ぐ わい こくじん ひ. V りかた そ. ひや と ほ i : か ォ:. 

行った。 そこへ 向う から 近眼ら しい 卜 前後の 外!: 人が 一人 肩を錄 かせて 通りかかった 彼 はこ 

す ひがい あう ざう.. i-, やう スゥ V,- デン じん かれな > ぶに:.?. i 

こに 住んで ゐる 被害妄想 狂の 瑞典 人だった" しかも 彼の 名 は ス卜リ ン 卜べ ルク だった 仪 は^と 

5 すれ違 ふ 時、 肉體 的に 何 かこた へる の を 感じた。 



ifl 齒 



521 



わ. T らい わ • つ に ん ちゃう に v.-ん ちゃう とほ ちゃう ど はんめん くろ い. 3 よ び ぽ,、 

この 往來は 僅かに 一 ニニ 町だった。 が、 その 一 ニニ 町 を 通る うちに r 度 牛 面 だけ 黑ぃ 犬. は 叫 度 も 僕 

そば とほ い よこち やう キパ い おも 

の 側 を 通って 行った。 僕 は 横町 を.^ りながら、 ブラ ッ ク • アンド • ホワイトの ウイ ス キイ を ひ 

た 14^ くろ しん おも ゾ- ザノヽ 

出した。 のみなら す 今の スト リント ベルグの タイ も黑と 白だった の を 思 ひ 出した。 それ は 僕に は 

ぐうぜん かんが も ぐう ぜ/ ぼ/、 あたま ある 

どうしても 偶然で あると は考 へられなかった。 若し 偶然で ない とすれば、 II 僕 は 頭 だけ 歩いて 

かん わ, T らい た ど みち り, かね なか にじ ノろ お 

ゐる やうに 感じ、 ちょっと 柱來に 立ち, y まった。 道ば たに は 針金の 柵の 中に かすかに 虹の 色 を 

ガ ーフ ス はち ひと す にち また そこ っぱ さ も やう う あに., 

びた 础 子の 鉢が 一 つ 捨てて あった。 この 鉢は义 底の ま はりに 翼ら しい 校樣を 浮き 上らせて ゐた。 

まつ こす V 一 すすめ なんば ま V.- が き ま ち ,、 め み J &、 ち 

そこへ 松の 拊 から^が 何 羽 も 舞 ひ 下って 來た。 が、 この 鉢の あたりへ 來 ると、 どの 雀 も i^i: 言 ひ 合 

いちど くう ちう に ノ 

はせ たやう に 一 度に 空中へ 逃げの ぼって 行った。 …… 

ぼく つま じっか ゆ に はさき とうい す 二し に は すみ かな あん なか しろ し t," 

僕 は 妻の 實 家へ 行き、 庭先の 藤 椅子に 腰をおろした。 庭の 隅の 金網の 巾に は. C い レグホ オン 種 

に はとり なんば しづ ある また ぼく あし くろい ぬ いっぴきよ 二 ぼく たれ 

の f が^ 羽 も 靜 かに 牛〉 いて ゐた。 それから 又 僕の 足 もとに は黑犬 も 一 匹 横にな つて ゐた。 僕 は 誰 

もん と と か, ぐ わい けん ひや つま はは おとう ^けんばな し 

にも わからない 疑問 を 解かう と あせりながら、 ^に 角 外見 だけ は 冷やかに 赛の母 や:? と ゆ 間 話 を 

した-」 

r 靜 かです ね、 ここ へ來 ると。」 



とうき やう 

「それ はま だ 東京よりも ね.^」 

「こ こ でもうる さ いこと は あるの です か?」 

「だって こ こも 世の中です もの。」 

つま はは い わら じつ さい ひ しょち また よ なか ちが く 

妻の 母 はかう 言って 笑って ゐた。 實際 この 避 籍地も 亦 rl の 中」 であるのに 遠 ひなかった。 僕 は 

ゎづ いちねん あ ひだ ざいあく ひ げき おこな しっく おもむ 

. 僅かに 一 年ば かりの 間に どのく らゐ ここに も, 罪惡ゃ 悲劇の 行 はれて ゐ るか を 知り 悉 して ゐた。 徐 

くわん じ や どくさつ い しゃ やうし ふうふ いへ はう くわ らうば いもうとし さん うば べん 二 

ろに 患者 を 毒殺しょう とした 醫者、 養子 夫婦の 家に 放火した 老婆、 妹の 資魔を 奪 はう とした 辯 護 

し ら ひとみ、 いへ み ぼく じんせい なか ぢ <n/、 み ことな 

士、 —— それ 等の 人々 の 家 を 見る こと は 僕に はいつ も 人生の 中に 地獄 を 見る ことに 異ら なかった- 

まち き ち ひとり 

「この 町に は氣違 ひが 一 人ゐ ますね。」 

き ちが ばか - 

rH ちゃんで せう。 あれ は氣 遠ひぢ やない のです よ。 莫翻 になって しまったので すよ」 

V- う. H つせ いち +* う ? ぼく み たび き み わる 

「早 發性 痴呆と 云 ふやつ です ね" 僕 は あいつ を 見る度に 氣 味が 悪く つてた まりません。 あいつ は 

あ ひだ い りゃう けん ば とうくわん ぜ おん まへ じ ぎ 

こ の 間 もどう 云 ふ 量 見 か、 馬頭 觀 i 昔の 前にお 時宜 をして ゐ ました。」 

「氣 味が 惡 くなる なんて、 …… もっと 强 くなら なければ 駄目です よ。」 

2 

5 「兄さん は樊 などよりも 强 いの だけれ ども、 —— 」 



、-; しゃう ひげ C つま おとうと ね どこ うへ お なほ と 5 ゑんり A、v- IK, 、ら ttL くよ 

3 無精髭 を 伸 ぼした 妻 の 弟も寢 床の 上に 起き直った まま、 いつもの 通,り遠^^勝ち に^ 等の Is に. M 

はり 出した。 

つ よ な "よ.., リ 

「强ぃ 中に 弱い ところ も あるから。 …… 」 

こま 

「おやおや、 それ は 困りました ね。」 

ゼく い つま はは み く せう わけ ゆ おとうと .-^ i 

僕 は 力う 言った 妻の 母 を 見、 苦笑し ない 訣には 行かなかった。 すると 弟 も 微笑しながら、 $1 い 

かき そと 4 つば やし なが なに はな わ., ハ .N やう,. 一 -P -J うこ と え、 ま,, -- , ,J 

垣の 外の 松林 を 眺め、 何 か うっとりと 話しつ づけた。 (この 若い 病後 0- 弟 は 時々 僕に はお! i を^し 

た 精神 そ の ものの やうに 見え る の だった。) 

めう にんげん ばな おも にんげんてきよ くばう .H*K 

1 に 人 離れ をして ゐ るかと 思へば、 人間的 欲望 もす ゐ ぶん 烈しい し、 …… 」 

一善 人 かと 思へば、 惡人 でも あるし さ。」 

ぜんあく い なに はんたい 

「いや、 善惡と 云 ふよりも 何 かもつと 反對な ものが、 一 

おとな なか こ ども 

「ぢゃ 大人の 中に 子供 も あるの だら う。」 

_| 、、「せ;^ い でんき り や >T 'きょく に た-. 

4 1 さう でもない 僕に ははつ きりと 言へ ない けれど、 …… 電 氣の兩 極に 似て ゐる のかな。 しろ 

車 反對な もの を 一 しょに 持つ てゐ る。 一 



ぼ くら お ど ろ は げ ひ か つ き ひび ^くお も そらみ あ .? つ - - 丁 ふ; ふ 

そこへ 僕 等 を 驚かした の は 烈しい 飛行機の 響きだった。 僕 は 思 はす 空 を 見上げ、 松の に觸れ 

i あが ひ かつき はっけん つばさ き ぬ めづ たんえん ひ かう き 

. ない ばかりに 舞 ひ 上った 飛 わ 機を發 見した。 それ は 翼 を 黄い ろに 塗った、 珍らしぃ§£^^^#の飛行機 

に はとり いぬ ひび おどろ . につば う に ニヒ いぬ ま 广 や; 

だった。 鷄ゃ犬 はこの 響きに 驚き、 それぞれ 八方へ 逃げ ま はった。 殊に 犬 は 吠え 立てながら、 Hie 

ま えん した 

を 捲いて 緣の 下へ は ひって しまった。 

ひ かう き お 

「あの 飛行機 は 落ち はしない か?」 

だ いぢ やうぶ にい ひ かう きび やう い び や-つ キ- し 

「大丈夫。 …; 兄 さ んは 飛行機 病と 云 ふ 病 叙 を 知 つ て ゐ る?」 

ぼく まきたば 二 ひ いか は あたま ふ 

僕は卷 煙草に 火 をつ けながら 、「いや」 と 云 ふ 代りに 頭 を 掘った。 

い ひ かう. き の ひと かう くう くうき す ぢ めん 

「ああ 云 ふ 飛行機に 乘 つて ゐ, る 人 は 高 i.^ 一の ばかり 吸つ てゐる もの だから、 だんだんこの 地面 

うへ くうき ュ: 

の 上の空 氣に堪 へられない やうに なって しま ふの だって。 … … 」 

つ 上 はは いへ うし ct., ぼく- えだ ひと う-ご まっ^ゃし なか ある り? リメ 

妻の 母の 家 を 後ろに した 後、 僕 は 枝 一 つ 動かさない • 松林の 中 を 歩きながら、 ぢりぢ り"? にな 

い ひ かう 者 は ぼく あたま うへ とほ ま た 

つて 行った。 なぜ あの 飛行機 は ほ か へ 行かす に 僕の 頭の 上 を 通った ので あ-り う? なぜ 乂 あの ホ 

ま きん- ズこ う ぼく ギ; もん くる 

テ ルは卷 煙草の H H ァ. シ ップ ばかり 赍 つて ゐ たの であらう? 僕 はいろ いろの 疑問に 苦しみ、 

4 

2 ひ レげ みち よ ある い 

5 人氣 のない 道 を 選って 歩いて 行った。 



ん ひく すた やま れか いちめん は ひいろ くも またすな やま たい 

5 海 は 低い 砂山の 向う に 一 面に 灰色に 曇って ゐた C その 乂 砂山に は ブラ ン コ のない ブラ ン コ臺が 

5 ひと た ぼく だいな か たち ま .^ぅ しゅだい おも だ 1:- さい. If たい 

一 つ 突っ立って ゐた。 僕 はこの ゾラ ン コ臺を 眺め、 忽ち 絞首 寮 を 思 ひ 出した。 赏際又 ブラ ゾ. コ臺 

からす に さんば からす みな ぼ,、 み 上た け しき しめ 

の 上に は骑が 二三 羽と まって ゐ た", 鴉はル M 僕 を 見ても、 飛び立つ il^ 色 さへ 示さなかった。 のみな 

たか からす お ほ くち? し そ、 あ たし よ こ ゑ だ 

ら すまん 屮に とまって ゐた鸦 は 大きい 嘴 を i や; へ擧げ ながら、 確かに §: たび 聲を屮 I した。 

ぼく しば か すな ど て そ べつ さう お ほ こ まが こ みぎが は 

僕 は 芝の 枯れた 砂土 乎に 沿 ひ、 別莊の 多い 小 みちを 曲る ことにした。 この 小み ちの 右側に はや 

たか まつ なか に かい もくて う せいやう か をく いっけ ズ しら た はナ ぼ,、 しス いろ 

はり 高い 松の 中に 二階の ある 木造の 西洋 家屋が 一軒 白 じらと 立って ゐる 华 il だ つ た。 (僕 の 親友 はこ 

いへ はる いへ しょう いへ まへ とほ 

の 家の こと を 「春の ゐる 家」 と稱 して ゐ た。) が、 この 家の ュ 1 へ 通りかか ると、 そこに は コンク リイ 

トの土 *f の 上に バ ス • タップが 一 つ ある だけだった。 火事 —— 僕 はすぐ にかう 考へ、 そちら を 

ある い じ てんしゃ C をと こ ひ. V り わか ちか だ 卜れ 

ないやう に 歩いて 行った。 すると 自轉 車に 乘 つた 男が 一人 まっすぐに 向う から 近づき 出した。 彼 

こげちゃ とりう ばう もう め す うへ み 

は 焦 茶い ろの 鳥打ち帽 を かぶり、 妙に ぢ つと を据 ゑた まま、 ハンドルの 上へ 身をかがめて ゐた。 

ぼく かれ かほ あね をつ と かほ かん .1! れ め まへ -ー よこ こ 

僕 はふと 彼の 額に 姊の 夫の 顏を 感じ、 彼の 目の前へ 來な いうちに 横の 小み ち へ は ひる ことにした。 

こ なか くさ もぐら もち し ^い ひと はら うへ ころ 

しかしこの小みちのまん屮にも腐った騰^^^取の死骸が 一 つ 腹 を 上に して 轉 がって ゐた。 

■jrj- なに ぼく ねら ひとあしのと ぼく ふ あん だ はんと-つめい -1 ぐる ま ひと 

何もの かの 僕を祖 つて ゐる こと は 一足 毎に 僕 を 不安に し 出した。 そこへ 半透明な 齒車も 一 つづ 



まく し さへ ビ だ ぼく いよいよ さいご とき ちか -z-v ノ ; » ^ - , 1 'サズ - - , 

っ^の 視野 を 遮り 出した。 僕 は 愈 最後の 時の 近づいた こと を 恐れながら 頸す ち を まつ 直にし 

ある 1 ± ぐる i ふ きふ ; どう^ ;^ぃ.^ォ.、ー 

て步 いて 〔n つた。 -i 車 は數の 殖える のに つれ、 だんだん 急に ま はり はじめた 同 に乂 右の 松お 

えだ ちゃう どこ ま キ. りこ ガラスす み ぜ〉、 

は ひっそりと 枝 を か はした まま、 丁度 細かい 切 子 硝子 を 透かして 見る やうに なり はじめん ^は 

ま &のー| まるの を 感じ、 何度も 道ば たに 立ち止まら うとした。 けれども 誰かに 押される やうに 立 

ど ようい 

ち 止まる こと さへ 容易ではなかった。 …… 

さんじつ ぶん C ち ぼノ、 ぼノゝ に かい あ ふむ め 、 H, ゼノヽ r に〜 

三十 分ば かりたった 後、 僕 は 僕の 二階に 仰向けに なり、 ぢ つと 两 をつ ぶった まま ^し レ!^ 

1?、 まぶた うら ぎんいろ は ね うろこ たた つばさ ひとみ 

を こらへ てゐ た。 すると 俊の 陋の 裏に 銀色 ® 羽根 を 鱗の やうに 疊んだ 翼が 一 つ w< え はじめた そ 

れは度 際 網膜の 上に はっきりと 映って ゐる ものだった。 僕 は 目 を あいて 天井 を 見上げ、 勿論 何も 

li^^li はそんな ものの ない こと を 確め た 上、 もう 1 度 目をつぶる ことにした。 しかし やはり 銀 

つ f さ くら なか うつ ぼく あ ひだの じ どうしゃ -' - 

の^は ちゃんと 暗い 中に 映って ゐた。 僕 はふと この 問乘 つた 自動車の ラ ティ ェ エタ ァ • キヤ ッフ 

つばさ おも だ 

にも 翼の ついて ゐ たこと を 思 ひ 出した。 …… 

そこへ II か櫬 flJI^Ji びく^って 來 たかと 思 ふと、 すぐに 又ば たばた S け 下りて 〔t つた。 僕 は 

^ たれ つま し おどろ からだ おこ はや ちゃう ど はし- だん * へ ら ゝ ff. I 

5 その li かの 妻だった こと を 知り、 驚いて 體を 起す が 早い か、 了 度 梯子段の", S にある 薄 P "い 茶の 



*i かほ だ つ ぶ いきぎ み , : ふ,,' 

7 へ 顔 を 出した。 すると 妻 は 突っ伏した まま、 息切れ を こらへ てゐ ると 見え、 絶えす ヨ ZZ を 震 はし 

てゐ た。 . 

「どうした?」 

「いえ、 どうも しないの です。 …… 」 

つま かほ もた むり びせ う ぶ 

妻 はやつ と 顔 を捧: げ、 無理に 微笑して 話しつ づけた。 . 

「どうもした 訣 ではない のです けれどもね、 唯 何だかお 父さんが 死んで しま ひさうな I- がした も 

のです から。 …… 」 

, せく いっしゃう なか もっと おそろ けいけん ぼく き か f'v^ 6 

それ は 僕の 一 生の 屮 でも 最も 恐し ぃ經驗 だった。 —— 僕 はもう この 先 を 書きつ づける 力 を 持つ 

l 力い なん 1, , 、つう L ? く J 

てゐ ない。 力う 云ふ氣 もちの 中に 生きて ゐ るの は 何とも 言 はれない 苦痛で ある。 まか!^ の^って 

し ころ 

ゐ る うち に そ つ と 絞め殺し て くれ る もの はない か? 

广 禾 ; - 4」 

車 



528 



530 



ある こ ゑ まへ おれ おも. にく ぜんぜんち が にんげん 

或聲 お前 は 俺の 思惑と は 全然 違った 人 問だった。 

ぼく ぽく せきにん 

僕 それ は 僕の 責任で はない。 

-1 める 二 ゑ まへ ごかい まへ じ しん け ふりょく 

或聲 しかしお 前 は そ の 誤解 に お 前 自身 も 協力 して ゐる。 

ぼく ぽく いちど け ふりょく 

僕 僕 は 一 度 も 協力した こと はない。 

ある-一 ゑ まへ -V つりう あい あるひ あい よそ ほ 

或聲 しかしお 前 は 風流 を 愛した、 11 或は 愛した やうに 装ったら う" 

僕 僕 は 風流 を 愛,. して ゐる。 

ある こ *s まへ あい ふうり う , ノ とり. - ^ん <^ 

或聲 お前 は どちら か を 愛して ゐる? 風流 か? それとも 一人の 女 か? 

ぼく ぼく あい 

僕 僕 は どちらも 愛して ゐる。 

ある-; ゑ れいせ う むじゅん おも ,ゥ, - 

或聲 (冷笑) それ を 矛盾と は 思 はない と 見えるな" 



531 



ぞく た.^^ むし! S ん おも ひと, く 、二 あ、 

僕 誰が 矛盾と 思 ふ もの か? 一 人の 女 を 愛 t する もの は, ま の i^f を I いさない かも^れ,, ^い。 

しかし それ は 古瀬 戶の 茶碗 を 愛する §覺 を 持たない からだ。 

卞る こ么 ふうり うじん んリ • 

或聲 1^ 流人 は どちら か を 選ばな け, ^ばなら ぬ。 

俊 僕 は 生憎 風流 人よりも すっと ハタ i に^まれ ついて ゐる。 しかし i おぶ に T だのお なよ, り,.: iAs 

と r, やわん えら し - 

戶の 茶碗 を 選ぶ かも 知れない。 

ある こ ゑ まぺ ふ てって 

或聲 で は お前 は不 徹底 だ。 

僕 若し それ を 不徹底と 云ぶならば、 イン フル H ン ザに g つた m も^ 凝 i を やって ゐる もの 

たれ てってい 

は; よりも 徹底し てゐる だら う。 

fc^^ - - ^ つ 一」 

或聲 もう 强 がるの はやめにして しまへ。 お は は^って ゐる。 しかし お まの; T ナる 

しゃく わいて 今-ひなん ,ハ へため -. ' 

社會的 非難 を はね 返す 爲 に そんな こと を 言 つて ゐる だけ だら う。 

く ぼく もちろん だ、.'. tra んが ス ^ 

僕 僕 は 勿論 そのつ もり だ。 第 一考へ て 見る が昏 い。 はね: きさなかった が紀 It I;! つぶされ 

てし まふ。 . 

る こる; .? へ なん い - つうく やつ . 

或聲 A^E: は^と 云 ふ圖々 しい 奴 だ。 



^は M しも li 々、しく はない。 Is 心/ 膨は琪 i いな 事に あっても 水の さはった やうに ひやひや 

として ゐる。 

ある-一る; まへ たりよ く丄ゃ T, ) I 

.0. お前 は 多 力 者の つもりて ゐ るな? 

„ ,, 一 -,, -ー T : 、ノゃ も V*. だい たりよ くしゃ 

M ^^銜はぉ?^||の.1と;-だ。 しかし fe^ の i が 者で はない。 若し:^ 火の 多 力お だった とすれ 

ば、 あの ゲ H テと ふ&と _6 やうに-! ^ ん じて 偶像に なって ゐた であらう。 

ゲ H テの sff^np つた。 

M それ は i だ。 ぉ驚ぎ!!だ。 ゲェテは|^麵は^^の年にぎ2<利へ逃走してゐる。 さ 

' * J じしん れいぐ わい ノ, 、 

うだ。 と f ェふ g はない。 あの 霧 を 知って ゐる もの はゲ H テ 自身 を 例外に すれば シュ タイ 

ンだ人 一 人 だけ だら う。 

, 、 -1 じこ, べんご じこ ベ ん ご ぐら ゐた わす ゝ D 

聽£ お のず ふこと は 自己 辯 護 だ C 自己 辯 護 位 手 易い もの はない 

- rr ベん-ご し ひ しょくげ ふ な た がす 

^ ^^iisif^ ではない。 きし ギ^い ものと すれば、 辯 護 士と云 ふ 職業 は 成り立たない 笤 

ミ J 

^ お! ^都な iii のめ! n ももう お. S を 相手に しない ぞ。 • 



" 俊 僕 はま だ 僕に 感激 を與 へる 樹木 や 水 を 持って ゐる。 それから^ g おつ & いのお;^ if 一 £ 、艇 W け ム!: 

つて ゐる。 

- X. : ま え V.- つ まへ ど,、 しゃ うしな 

或聲 し 力し あ^は 永久にお. 前の 讀者を 失って しま ふぞ。 

iJ5/、 ぼく しゃう <r い どくしゃ も 

僕 僕 は 將來に 讀者を 持って ゐる。 . 

ある 二 ゑ しゃう らい どくしゃ , 

或聲 將來の 讀者は パン を くれる か? 

ば;; ; や , , > ぼく さいか-つ げんか-つれう いちまい じふ 么ん かぎ 

僕 現^の 讀者 さへ 碌に くれない。 僕の 最高の 原稿料 は 一枚 卜^に 限って ゐた。 

ある こ ゑ まへ しさ C も 

或聲 しかしお 前 は 資産 を 持って ゐ たらう? 

ば W,">:L^^.^ ほ、 ん じょ 力 こ ひた ひ ぢ めん ぼ; げっ しう 、いかう とき ざん びやく * "ん こ 

仗 僕の 资產は 本 所に ある 猫の額 ほどの 地面 だけ だ。 ^の 月 牧 は:: 取 高の 時で も 三 .Kn 圓を 越えた 

こと はない。 

せ,^ VVf -、 まへ いへ も キJ.<だぃふ^tげ 、.上く5ん 

或聲 しかしお 前 は 家 を 持って ゐる。 それから近代文藝讀^^の 

い < わ J なぎ ぼ,、 おも きんだ, V ふん f - とくな/? "- んぜ * i 、 よう だ w,、 

僕 あの 家の 棟木 は 僕に は 重たい。 近代 文藝讀 本の 印 稅,. はいつ でもお 前に 州 立てて やる。 僕の 

^ もら し _,1 ひゃく ゑん 

种 貰った の は w 五百圓 だから。 

化 2 .„! -るヒ if i まへ とくほん へんしゃ まへ -ー 

或聲 しかし お^は あの 讀 本の 編者 だ. - それだけ でもお. 前 は ぢ なければ ならぬ。 



?i く なに • ほく は い 

僕 何 を 僕に 恥ぢ ろと 云 ふの だ? 

ある こ ゑ まへ けう いくか なかま い 

或聲 お前 は敎育 家の 仲間入り をした。 

ぼく うそ けう いくか ぽ くら なかま い 5V」 く し ごと と もど 

僕 それ は譃 だ。 敎育家 こそ 僕 等の 仲間入り をして ゐる。 僕 は その 仕事 を 取り 戾 したの だ。 

ある こ まへ なつめ せんせい で し 

或聲 お前 は それでも 夏 目先 生の 弟子 か? 

ぼく ぼく もちろんな つめ せんせい でし まへ ぶんぼく した そうせき せんせい し し 

僕 僕 は 勿論 夏 目先 生の 弟子 だ。 お. 前 は 文 墨に 親しんだ 漱石 先生 を 知って ゐる かも 知れない e 

しかし あの 氣違 ひじみ た; 大才の 夏 目先 生 を 知らない だら う。 

ある ニ么 まへ し さう い むじゅん しさう 

或聲 お前に は 思想と 云 ふ もの はない。 偶々 あるの は 矛 だらけの 思想 だ。 

!?、 ぼく しん ぼ しょうこ あ はう たいやう た" ひ ち ひ おも 

僕 それ は 僕の 進步 する 證據 だ" 阿呆 は いつまでも 太陽 は盥 よりも 小さい と 思って ゐ る。 

ある 二- 么ま へがう まん. d.4 へころ . 

或聲 お 前 の 傲慢 はお 前 を 殺す ぞ 。 

ぼく ぼく ときみ \ おも あるひ ぼく たたみ うへ わう しやう に/ げ / し 

僕 僕 は 時々 かう 思って ゐる。 —— 或は 僕 は疊の 上で は 往生し ない 人 問 かも 知れない 

4 める こ ゑ まへ し おそ み 

或聲 お-前 は 死 を 怖れない と 見えるな? • な? 

ぼく ^く し おそ し こん ^く に V / ど くび 

僕 僕 は 死ぬ こと を 怖れて ゐる。 が、 死ぬ こと は 闲 難で はない" 僕 は 二三 度 頸 をく くった もの 

3 に じふべ う くる ち あるく わい 、ひん かん く t*i く し ふく V- い • - * 

5 だ。 しかし 二十 秒ば かり 苦しんだ 後 は 或; 感 さへ 感じて 來る。 僕 は 死よりも 不快な ことに 會へは 



签 問中閱 



535 



レっ でも 死ぬ のにた めら はない つもり だ) 

ある こも $ ま ヘレ - . 

或聲 では なぜお 前 は 死なない の だ? お ま は酽ょ ar から^ても、 tgil^lf 人んで は, よ、, か? 

僕 僕 は それ も 承知して ゐる。 ヴ H ルレ H ンの やうに、 ヮグ ナァの やうに、 IT はお 1^ いなる ス 

トリン 卜べ リイの やうに。 . 

ム, め, るに; > まへ あがな 

或聲 しかしお 前は續 はない。 

僕 いや、 僕は壞 つて ゐる。 ^1: しみに まさる g が はない。 

ある 二る J Jh へ し ちく 一 - ^ 

或聲 お前 は 仕 かたのない 惡: < だ。 

ぼ"、、 むし ぜんなん し も あくに,;" , ?、 J 

# 僕 は 寧ろ 善 男子 だ。 若し 惡人 だった とすれば、 |のゃぅにれ^^3みはしなぃ。 のみな らんお 

-, ^^^^^ p よう をん な かねし ぼ . 

す輕愛 を^ 片し、 女から 金 を 絞る だら う。 

4^ る * 一 ゑ i -. あ, H う し 

或聲 ではお 前 は 阿呆 かも 知れない。 

僕 さう だ。 僕 は かも;! れ ない。 あの 「^w の p」 などと fk ふ f は i. に い のき I いた 

もの だ。 

ある こ *s うへ まへ せ ナんみ 

或聲 その上お 前 は 世間 見す だ。 



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ぼく せ けんし さいじ やつ じつげ ふか なに かう とう 

僕 . せ 間 知り を 最上と すれば、 實業象 は 何よりも 高等 だら う。 

ある こ ゑ まへ れんあい けいべつ いま み ひっき やう れんあい しじ やう しゅぎしゃ 

或聲 お前 は i 愛を輕 蔑して ゐた。 しかし 今にな つて 見れば、 畢竞戀 愛 至上 主義者だった。 

ぽく • ほく こんにち だん れんあい しじ やうし ゆぎ しゃ ぼく し じん げいじゅつか 

僕 いや、 . 僕 は 今日で も斷 じて 戀愛 至上 主義者で はない。 僕 は 詩人 だ。 藝術家 だ。 

ある こ ゑ まへ れんあい ため ふぼ さいし なげう 

,或聲 しかしお 前 は戀愛 の 爲に 父母 妻子 を拋 つたで はない か? 

ぼく そ ぼく ただ ぼて じ しん ため ふ ぼ さいし なげう 

僕 をつ け。. 僕 は 唯 僕 自身の 爲に 父母 妻子 を拋 つたの だ。 

ある 二 ゑ まへ 

或聲 ではお 前 は H ゴ ィ スト だ。 . , . 

ぼく ぼく あいにく 

僕 僕 は 生憎 H ゴ イス 卜で はない。 しかし H ゴ イス 卜に なりたい の だ。 

ある こ-;. S i へ ふ かう きんだい すうはい 

或聲 お前 は 不幸に も 近代の H ゴ崇拜 にか ぶれて ゐる。 

ぼく ぼノ 、 きんだ いじん 

僕 それでこそ 僕 は 近代 人 だ。 

ある こ. & きんだい じん こ じん し 

或聲 近代 人 は 古人に 若かない。 

ぼく こ じん *c 一い ち ど きんだい じん 

僕. 古人 も 亦 一度 は 近代 人だった の だ。 , 

ある こ ゑ まへ さいし あはれ 

或聲 お前 は 妻子 を憐 まない のか ? 

ぼく た^^ あはれ て • がみ • よ み >